ページ番号1002869 更新日 平成30年2月16日

サウジアラビア:Gas Initiative プロジェクトはサウジ側設定期限までの交渉決着は困難か?

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レポートID 1002869
作成日 2001-11-29 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発
著者 猪原 渉
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年度 2001
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ <更新日:2001/11/29> <企画調査部:猪原> サウジアラビア:Gas Initiativeプロジェクトはサウジ側設定期限までの交渉決着は困難か? (E&P動向記事「Gas Initiativeプロジェクトの概要と今後のスケジュール」(2001/8/7)参照) (2001 PIW 10/29,11/12,ECOMP 10/26,11/9,WPA 11/12) 1.サウジ側が「実施契約」の締結期限と定めた12月16日までの交渉決着は困難な情勢。 2.ガス埋蔵量に関するリスクヘッジ,適用されるロイヤリティー及び税制の問題,下流部門の契 約条件など,交渉課題が山積している。 1.プロジェクト「実施契約」の交渉に遅れ サウジアラビアの天然ガス開発プロジェクト(”Gas Initiative”)は,本年12月16日が「実施契約」(Implementation Agreement)の締結期限と定められていたが,外国石油企業(IOC)との交渉が難航しており,期限までの交渉決着は困難な情勢となりつつある。 サウジは6月3日に,プロジェクトへの参加企業として選定されたIOC8社との間で「初期契約」(Preparatory Agreement)を調印し,その後,各社とプロジェクトの詳細交渉(Project Definition Program)を進めてきた。当初の予定では,ラマダン前の11月11日までに,プロジェクトの全般内容(「コアベンチャー」No.1~3の範囲,スケジュール,契約条件等)について合意にこぎ着け,その後1ヶ月のラマダン期間中に契約文書を作成し,ラマダン明けの12月16日に調印するという段取りとなっていたが,11月下旬時点で,IOCとサウジ側が合意に達したとの情報は伝えられていない。 コアベンチャーNo.1(南Ghawar地域開発プロジェクト)及びNo.2(紅海地域開発プロジェクト)のリーダー会社としてIOC8社の中で主導的立場を担うExxonMobilは,6月に初期契約に調印した際にRaymond CEOが「本プロジェクト全体で,15-18%の利益を確保可能」と述べるなど,交渉の先行きに楽観的な見方を示していたが,交渉の難航という状況に直面し,11月上旬にRaymond 氏がリヤドを訪問,アブドラ皇太子を始め,Saud外相(IOCとの交渉を統括する閣僚委員会の委員長を兼ねる),Al-Assaf財務相,Yamani工業経済相と相次ぎ会談して,事態の打開を図ったものの,合意Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 1 - ノは至らなかった模様である。 2.対象鉱区のガス埋蔵量に対する不安がネック,IOCは既存ガス田とのスワップを要求 交渉が難航している最大の要因は,IOC 各社がアクセスできる対象鉱区のガス埋蔵量が不明確であり,当初予想に比べ不十分ではないかと考えられている点である。 3件のコアベンチャーの中で最大規模といわれるコアベンチャーNo.1についても,推定ガス埋蔵量は当初予想を下回るのではないかと見られている。コンソーシアムを構成する各社(ExxonMobil,RD/Shell,BP,Phillips(*))は,「対象鉱区のプロジェクト経済性が不十分と判明した場合,対象外の既発見鉱区とのスワップを可能とする」ような保証を要求しているといわれている。しかし,サウジ政府の基本方針は,「IOCの開発対象は未発見のガス田に限定し,Saudi Aramcoが保有する既発見ガス田(埋蔵量214tcf)についてはIOCの開発対象外とする」というものである。また,元々外資開放に否定的だったSaudi Aramcoが既得権益の縮小につながる上記要求を簡単にのむことも考えにくく,サウジ側の事情からみれば,このスワップの実現は困難と思われる。しかし,Gas Initiativeをハイ・リスク案件と位置付けるIOC側が,リスクヘッジ策としてスワップまたは同等の保証の確保に固執した場合,交渉がさらに長期化する可能性もある。 (*):Phillipsと Conocoは,11月18日,合併を発表した。 3.ロイヤリティーの扱いが焦点,適用税率も不明 プロジェクトの財務条件についても,交渉が続いている。サウジ側が導入を強く求めているロイヤリティー(鉱区使用料)の扱いをどうするかが,交渉のポイントである。 サウジ側の立場から見れば,ロイヤリティーは,プロジェクトの収益性やガス田の生産性に関係なく政府に一定の収入を保証するという点で望ましい制度である。他の産油国の事例では,英国では1990年代初めまで12.5%のロイヤリティーが課せられていたし,その他の国でも,ガスプロジェクトに対しては,開発の難しさを考慮して,一般的に石油プロジェクトより低い率(2~5%程度)のロイヤリティーが石油会社に課せられている。 これに対し,石油会社は伝統的にロイヤリティーの導入を好まない。所得税や法人税と異なり,ロイヤリティーは利益に関係なく生産開始日から適用され,元来リスクのあるプロジェクトの経済性に悪い影響をもたらすからだ。今回,IOC 各社は,一定のロイヤリティーの導入には理解を示しているが,その見返りとして税率の低減等の優遇措置が得られることを条件としているという。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 2 - 一方昨年サウジは,外国資本投資の促進を目的とした外国投資法の改正を行い,外国資本に対して適用される法人税率を従来の45%から30%に低減したが,ガスプロジェクトに対しては,高い税率の適用(「85%」との報道も)を検討しているといわれており、税率の優遇を求めるIOC側の要求とは大きな隔たりがある。また,収益性の異なる3つのコアベンチャーに対して一律の税率を課すことに対しても,IOC側は疑問を呈しているという。 4.Saudi Aramcoと同等の税制適用が可能か? Gas InitiativeプロジェクトにおけるSaudi Aramcoの位置付けについて,サウジのある高官は「各コアベンチャーにSaudi Aramcoが参加し一部権益を保有することになる」と発言しているが,問題は,IOCにSaudi Aramcoと同じ条件の税制が適用されるのかという点である。Saudi Aramcoに対する税制はこれまで公表されていないが,国営企業として様々な優遇措置を適用されていることは十分予想される。IOC側にはSaudi Aramco並みの条件が確保されれば,プロジェクトのリスクはかなり低減されるとの見方もある。しかし,現状,一般投資案件においては,外資に対する法人税が30%に低減されたとはいえ,サウジ国内資本はZakat(喜捨税:約2.5%)のみ徴収されるという極端な二重税制となっており,Gas Initiativeへの適用税制がIOCの期待通り「平等な」条件となるかどうか,見通しは不透明である。 さらに,Saudi Aramcoに対するequityが,キャッシュで支払われるのか,現物(生産ガス等)で支払われるのか,という点も契約条件を詰めるに当ってのポイントである。後者となった場合,プロジェクトリスクの拡大は避けられない。 5.下流部門にも様々な検討課題 Gas Initiativeは,天然ガスの開発に加え,発電,海水淡水化,石油化学などの下流関係の開発も重要な部分を構成する複合プロジェクトであるが,下流部門でも様々な検討課題が発生している。 (1)プラント建設の時期 下流設備の建設が上流のガス生産設備よりも先行した場合,採算の悪化は避けられず,ガス生産開始までのつなぎとしてSaudi Aramcoの既存ガス田からの供給を受けるとしても供給価格の設定など面倒な問題が生じる。 (2)電気,水などの売買価格の設定 現在,電気,水料金は政府のコントロールのもと,低料金に設定されており,Gas InitiativeにGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 3 - 燗ッ等の政策が取られた場合,IOCにとって,プロジェクトの利益の抑制要因となる可能性が高い。 (3)プラントの建設立地 サウジ側が提示している建設予定地は,周辺人口が非常に少なく工業地帯からも遠く離れた僻地であるため,IOC側が立地の一部変更を要請しているといわれる。 6.今後の見通し 交渉が遅れていることについて,サウジ側は「交渉の過程において,意見の相違が起こるのはやむを得ない」としており,IOC側も「250億ドルという巨大な投資規模を考えれば,リスク軽減のため慎重な交渉を行うことは当然のこと」とコメントしている。交渉の長期化は避けられない状況と思われるが,双方とも,交渉の行方について悲観的な見方をしているわけではなく,多少時間をかけてでも,両者が納得できる合意が形成されるまで,粘り強く交渉を続ける意向である。 <Gas Initiative概略図> Midyanガス田Midyanガス田TabukTabukBarqanガス田Barqanガス田サウジアラビアサウジアラビアJubailJubail紅海紅海Umm Luj,al-WajhUmm Luj,al-WajhリヤドリヤドYanbuYanbuGhawar油田Ghawar油田HawiyahHawiyahHaradhHaradh 探鉱 探鉱Rub al Khali砂漠Rub al Khali砂漠Shaybah油ガス田Shaybah油ガス田Kidanガス田Kidanガス田探鉱探鉱Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 4 - エas Initiativeの概要>(2001年6月時点でのサウジ側構想) コアベンチャー1 【南Ghawar地域 開発プロジェクト】 総投資額 参加企業 内容 コアベンチャー2 【紅海地域開発プロジェクト】 総投資額 参加企業 内容 コアベンチャー3 【Shaybah地域開発 プロジェクト】 総投資額 参加企業 摘要 Shaybah,Kidan油ガス田の生産ガスが処理対象。 地域),広さ100千km2以上 BP(25%),Phillips(*)(15%) Hawiyah,Haradhガス田及びRub Al Khaliの ・約150億ドル ・ExxonMobil(リーダー,35%),RD/Shell(25%), <ガス上流> ・新たなガス探鉱の実施 →対象地域:Rub Al Khali砂漠北部一帯(南Ghawar ・ガス生産・集荷設備の建設 ・ガス処理・NGL分離設備の建設 →Hawiyahに建設。処理能力28億cfd。Ghawarの ・液体ガス輸送設備の建設 <下流その他> →Jubail(ペルシャ湾岸)及びYanbu(紅海沿岸)に南Ghawar産ドライガスを原燃料とする下記設備建設 ・発電プラント(2000MWクラス×2基) ・海水淡水化プラント(能力:300百万ガロン/日) ・石油化学プラント(能力:2百万T/年) ・約50億ドル ・ExxonMobil(リーダー,60%),Occidental(20%) <ガス上流> ・北部紅海地域既発見未開発ガス田の開発 →Midyan(陸上),Barqan(海上),Umm Luj(陸 上),al-Wajh(陸上)各ガス田の開発及びガス 処理設備の建設 <ガス中流,下流その他> ・上記ガス田よりTabuk,Yanbuまでのパイプライン建設・発電プラント,海水淡水化プラントの建設(紅海沿 岸ガス田近辺及び新規開発地域) ・約50億ドル ・RD/Shell(リーダー,40%),TotalFinaElf(30%) Conoco(*)(30%) Marathon(20%) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 5 - 燉e <ガス上流> ・新たなガス探鉱(Rub al Khaliの一角約90千km2) ・Kidanサワー・ガス田開発のFS ・Shaybah油田随伴ガス(推定埋蔵量10tcf,生産能 力6億cfd)処理及び輸送設備の建設 <ガス中流,下流その他> ・Shaybah及びKidanよりHawiyahプラント(コアベンチ ・石油化学プラント,発電プラント(1100MW),海水 淡水化プラント(75百万ガロン/日)の建設 ャー1)までのガスパイプライン建設(ドライガスは al-Uqair向け,NGLはJubail,Yanbu向け) 注(*):ConocoとPhillipsは,11月18日,合併を発表した。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 6 -
地域1 中東
国1 サウジアラビア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
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国5
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地域10
国10
国・地域 中東,サウジアラビア
2001/11/29 猪原 渉
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