ページ番号1003063 更新日 平成30年2月16日

米国:SEC は "確認埋蔵量"の内容を調査へ、会計厳格化の一環か?

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レポートID 1003063
作成日 2003-02-28 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発企業
著者
著者直接入力 佐々木 育子
年度 2002
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ <更新日:2003/02/28> 著作権のため内部資料 <企画調査部:佐々木 育子> 米国:SECは “確認埋蔵量”の内容を調査へ、会計厳格化の一環か? (2002/11 IPF, 2001/9/24 OGJ, 2003/2/18 ドイツ銀行Energy Wire ,SEC Guidline) . SECは米国企業の発表する確認埋蔵量に関する情報について調査を開始。会計厳格化の一環か 12. 大手企業は業績・株価に影響する埋蔵量を低めに公表、準メジャー企業も追随の動き 1.埋蔵量評価:SEC基準と現実の乖離 SECは2002年11月、米国メキシコ湾等沖合で操業している石油企業に対し、SECへ提出する財務報告(Form 10Kなど)に明記されているメキシコ湾の確認埋蔵量(proved reserves)は、フローテストを行って確認したものであるのかどうかとの質問状を送付し、回答を求めた。SECの基準(注 1)によれば、企業が確認埋蔵量として公表するためには「フローテストを行って確認する」ことが求められている(注2)。しかし、多くの石油企業は、3次元震探技術の向上や、油層シミュレーションによって、フローテストを行ったのと同程度の精度で埋蔵量を算定することができると主張しており、コストのかかるフローテストは行わないのが通例である。特にメキシコ湾大水深ではリグが高コスト(リグレート例:200千ドル/日)であり、さらにフローテストによって産出する油ガスの処理(フレアーによる大気放出は禁止されている)が困難であることから、フローテストはほとんど行われていない。 SECは石油企業がForm 10-Kの中で開示している確認埋蔵量が、SEC基準に準拠しているかどうか、準拠していない場合はどのようなデータに基づいた埋蔵量であるかなど、事実確認のための詳細な報告を求めている。石油業界では、SEC がフローテストによって確認されていない埋蔵量の公表を問題視して、埋蔵量SEC基準をさらに厳格化するのかとの懸念が広まっているが、一方で現実に即して基準を緩めることを検討する可能性もあると見られている。SEC は一連の企業会計不祥事を受けて、エネルギー企業の企業会計にもメスを入れており、現在はもっぱらEnron、Dynergy、El Pasoなどのエネルギー取引事業を対象としているものの、今後は、上流事業の開示情報についても審査を強化したり、基準の見直しを行うものと見られている。 SECはここ数年、業界の専門家と埋蔵量定義について協議を重ねており、技術向上により埋蔵量の 1]価手法として確率論的手法がSPE/WPCなど専門機関によって認知され、広く普及してきていることを認めつつ、より堅めのSEC定義を使うことが有効であると述べている(注3)。 また、SEC基準による確認埋蔵量は、算定時(各年末日)の価格を前提にした生産に経済性があることが求められているが、油ガス価の変動性が高い昨今において、ある特定の1日を基準とした埋蔵量は投資家にとって意味がないと指摘されており(注4)、コンセンサスのある価格や過去データの平均値が適切であると議論されている(OGJ他。SPE/WPCは12ヶ月以上の平均価格を推奨)。この様に、Form 10-Kの中で開示されている埋蔵量と、各企業の判断基準による埋蔵量、及び市場で評価されている企業の価値は各々異なっており、投資家に対して上流企業の資産価値を評価するための適切な情報を開示させるというSECの目的は現実と隔たりがあると言える。 1 埋蔵量は、財務諸表には載らず、補足明細書(Supplemental Reporting)として、地域別に報告することが米国上場企業に義務付けられている(米国財務会計基準書(SFAS)第69条)。この埋蔵量の定義は、証券取引法(1934年)及びエネルギー政策・節約法(1975年)に基づき、SEC規則SX 4-10に明記されており、SECはこの解釈についてガイドラインを定め、各社の財務報告書を審査している。詳しくは末尾参考。 注SECの基準によれば、新たに発見した構造を確認埋蔵量とするには、フローテストによって確認する必要がある。例外としてその油ガス層が検層、コア分析に基づき生産性があると判断され、同じフィールドに生産中もしくは生産性がテストによって示された類似した油ガス層がある場合は、確認埋蔵量として認められることがある(SECガイドライン)。 2 注3 業界で普及している埋蔵量評価のガイドラインは、SPE(Society of Petroleum Engeneer)/WPC(World Petroleum Conference)/AAPG(AmericanAssociation of Petroleum Geologists)ガイドライン(2001年)とSECガイドラインの二つがある。現在では、SPE/WPC/AAPGが認めている確率論的手法がプロジェクトベース、ユニットベースで広く利用されるようになってきている。SPE/WPC/AAPG は、SEC 基準の確認埋蔵量は、実質的に、少なくとも 90%の確率(probability)と読み替えることができるとしている。一方、SEC は、ガイドライン等により確率論的手法の利用を禁止すると明記しておらず、この採用に前向きであると伝えられる。しかし、ガイドラインでは、確率論的手法を用いる場合には、より堅めの「SEC 定義であるLowest Known Hydrocarbons(既発見の炭化水素の最も低い構造レベルまでを確認埋蔵量とみなす)などが有効であり、認められる」と述べている(SECガイドライン)。 4 石油会社同士を比較することが目的であれば、年末の価格であろうが、平均価格であろうが、一定の油価・ガス価を適用すればできる。しかし、他の業界の会社と、石油会社を比較する場合、「資産評価」が重要であるので、"どの価格"が使われるかが重要である。 .企業側は公表する確認埋蔵量の数値に保守的 注 注 2埋蔵量は石油企業の主要な資産であるが、SEC の認める会計基準に基づく確認埋蔵量は‘堅めの数値’となる。このため、上述のように従来から上流企業の資産価値が株式市場で十分に評価されていないという議論があった。確認埋蔵量は様々な業績の指標(埋蔵量リプレースメント、発見コ 2Xト、開発コスト、買収コストなど)や借入金の利息・金額の算定基準となり、さらにそれらの指標に基づく株価形成の重要な要素となる。しかし、最近ではスーパーメジャー等の大手石油企業が、公表(Form 10-kにおいて開示)する確認埋蔵量を低めに抑える傾向が強まっている。これは、財務に余裕があり、且つ他企業との埋蔵量比較はあまり意味がない(各社とも保有する埋蔵量規模がすでに莫大であること、及び開発条件が油田毎に千差万別で合計値にあまり意味はないことなど)ので投資家も注目していないためと見られる。各社は、開発コストに見合うだけの量を確認埋蔵量として公表し、全体として発見・開発コストを3-4ドル/bblに抑えればよく、それによって将来の埋蔵量の上方修正に余地を確保できる。ExxonMobilは(投資家向け)年次報告書の中で、2001年末の確認埋蔵量を216億boeと報告しており、一方で同社はメキシコ湾、カスピ海、西アフリカ、中東など莫大なポテンシャルを持つ地域に優位なポジションを確立していて、民間企業としては最大の資源ベース(720億boe)を持つと述べている。また、同社の2001年の追加埋蔵量は18億boe、過去10年の追加埋蔵量は180億boeであり、埋蔵量リプレースメントコストは4.15ドル/boe(5年平均)、既存油田の埋蔵量成長は704百万boe/年(5年平均)と報告されている。 一方、準メジャー規模の企業、特に上流専業企業にとっては、埋蔵量が企業価値の大きな割合を占めており、確認埋蔵量の大きさ自体でも競争しているため、株価維持や資金調達のために、‘堅めの埋蔵量’に基づいて自社が評価されるのを好まない。ここ数年、準メジャー等が、未開発確認埋蔵量(Proved Undeveloped Reserves)を開示情報として過剰に報告し、その後大幅に下方修正を行って株価を下落させている問題が指摘されてきた(John S.Herold他)。しかし最近では、準メジャー企業も、投資家の信頼を得るため、公表する確認埋蔵量に堅めの数字を採用したり、外部専門家による評価(audit)を取り入れるようになってきている。Encana、Nexenは100%、Apache、EOG Resources、Devonは60-70%の確認埋蔵量が第三者機関による評価を受けており、同業他社もこれに続くと見られている。 .埋蔵量とは? 3 Pemexは2002年9月、SEC基準に準じて計算した確認埋蔵量を公表した。Pemexがこれまでに発表してきた石油埋蔵量は、1995-1998年は500億bbl、1999年は280億bbl、2000年は269億bbl、そして今回は前年から半減して188億bblとなり、過去数年で4割以下に減少している。ここ数年、同社はSPE/WPC基準による埋蔵量評価を取り入れており、さらに米国での債権発行のためSEC基準に準拠した第三者機関による確認埋蔵量算定を行ったと見られている(Auditor:NSAI: 3etherland Sewell &Associates, Inc、D&M:DeGolyer & MacNaughton)。過去には国家財政や国内経済を担うPemexが国際金融市場からの資金調達などのために、「政治的に」埋蔵量を増やしてきたとも指摘されている(ドイツ銀行)。最近では、旧ソ連地域等の埋蔵量も西側石油会社が利用する評価手法が取り入れられつつあり、信頼度が高まってきているといわれるが、ドイツ銀行はロシア高官の発言として、「ロシアの民営化された上場企業が欧米企業の会計基準に準じた埋蔵量を発表している」が、現在でも「ロシアの埋蔵量は国家機密である」とのコメントを明らかにしている。BPはTNKの株式取得(2003年2月発表)の査定において、TNKの外部監査済み埋蔵量(Auditor:Miller & Lentz)を15%下回る自社評価を下している。こうしたことから、欧米企業とその他地域の企業の評価には、なお開きがあると推測される。 欧米企業のSEC基準に準拠した確認埋蔵量も、解釈の余地を生じ、SECが主張するほど投資家が企業を比較する上で十分に適切とはいえない状況である。ましてや、国に帰属するOPEC等産油国国営企業の埋蔵量は、会計、技術等の基準が米国会計基準とは異なり、且つデータの量も探鉱が非常に成熟した米国ほど多くはない実態において算出された数値である。埋蔵量は経済条件や契約上の財務条件によっても大きく変化するものであり、統一的な埋蔵量評価手法の導入や不確実性を除去した埋蔵量が算出不可能な現実においては、埋蔵量というものが現実のごく一部しか表しておらず、単純に比較検討するには難しいことを認識する必要がある。 4ECガイドラインの確認埋蔵量定義は、証券取引法(1934年)及びエネルギー政策・節約法(1975年)に基づきSEC規則Accounting Rules Form and Content of Financial Statements Regulation S-X Rule 4-10(http://www.law.uc.edu/CCL/regS-X/SX4-10.html)に規定されている。 また、ガイドラインは、SEC Accounting and Financial Reporting Interpretations and Guidanceに掲載されている(http://www.sec.gov/divisions/corpfin/guidance/cfactfaq.htm - P279_57537)。 <SEC規則SX 4-10及びSECガイドラインによる埋蔵量定義の概要> SECガイドラインによる確認埋蔵量の定義 確認埋蔵量(proved reserves) 1. 将来、合理的な確実性をもって回収されること 2. 現在の経済条件及び操業条件(*)のもとで既発見の油ガス層から回収されること (*)現在の価格及びコスト、現在の技術、実際の生産や確実なフォーメーションテストによって裏付けられた経済的な生産可能性 開発埋蔵量(proved developed reserves) 1. 既存設備・操業方法で既存の坑井から回収されると期待される埋蔵量 2. 増進回収によって期待される埋蔵量、但しパイロットテストの成功か設置されたプログラムのオペレーションが技術的・経済的に成功した場合のみ認められる 未開発埋蔵量(proved undeveloped reserves) 1.既に生産性が確認されている構造で、新たな場所(acreage)であっても追加的な坑井により回収されるされる蓋然性が高い埋蔵量 2.再仕上げにかなりの投資が必要な既存坑井から回収される埋蔵量 3.増進回収技術により、同じエリアの同じ油ガス層において効果的な実際のテストが実施されている場合に回収が期待できる埋蔵量 められる情報開示の内容(SFAS) 求上場企業は、米国財務会計基準書(SFAS)第69条によって以下の情報開示が義務付けられている。 分析の条件:価格(各年度末、上昇させず一定の価格)、コスト:一定、割引率:10%) 6. 確認埋蔵量の割引キャッシュフロー分析の条件変更 過去の情報 1. 石油ガスの確認埋蔵量(開発済み/未開発を分類) 2. 石油・ガス生産活動に関連する資産化されたコスト(capitalized cost) 3. 資産の取得、探鉱、及び開発活動のために発生したコスト 4. 石油ガス生産活動の操業結果 5. 確認埋蔵量の割引キャッシュフロー分析 来の情報 将 5
地域1 グローバル
国1
地域2 北米
国2 米国
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル北米,米国
2003/02/28 佐々木 育子
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