ページ番号1003119 更新日 平成30年2月16日

原油取引のユーロ化は当面ない

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レポートID 1003119
作成日 2003-08-28 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者
著者直接入力 小田 路子
年度 2003
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ <更新日:2003/8/28> <企画調査部:小田路子> 原油取引のユーロ化は当面ない 産油国のなかでもイスラム諸国の一部で原油取引をユーロ建て決済にする考えが出ているが,原油の国際取引における価格体系は米国 WTI 価格を中心に動いているので,現行のドル体系からユーロ体系(2003 IOD, Reuters, ITCのHP,その他) に移行することは考えにくい。 1.原油市場のユーロ決済の動き 多くの原油の国際取引は,為替リスクに晒されている。国際取引の約4分の3は米国以外との取引である。2003年上半期,米国の中東関与に対する反発とドル安/ユーロ高による不利益が相まって,アジアや中東諸国の産油国の一部で原油取引をドル建てからユーロ建て決済に移行すべきであるとの主張が出てきた。 マレーシアのマハティール首相は(Badawi副首相代読),6月のアジア石油ガス会議において,産油国は為替不安定化を回避するため,「ドル表示の原油価格が見直される時にきている1」として原油取引のユーロ化を示唆。同国PetronasのMarican社長も「我々は,石油及びガスの代金をユーロで受け取ることを模索」「しばらく時間を要するが,ユーロ化を検討中2」と発言した。また,インドネシアもユーロ化の可能性に言及し,「同国経済においてドル基軸であることから変更の計画はない3」とコメント,2002年には業界筋の話として,イランがユーロ建て支払いへの変更を検討していることを伝え4,ユーロ化の話はイスラム圏のアジアや中東を中心にして少しずつ広がりつつあるようにも見られている。 これまでにイスラム圏ではイラクが国際取引をユーロ建て決済を行っていた。フセイン元大統領は,2000年10月末に国連に対し,Oil-for-Food計画下における原油取引の支払いをユーロ建てでも行えるように要請,同年11月からユーロとドルのどちらかで納金できるようになった。入金実 1 Reuters 2003年6月16日付け 2 International Oil Daily 2003年7月7日号 3 International Oil Daily 2003年4月23日号 4 Reuters 2002年8月19日付け Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 1 - ムでは,ロシアや欧州のトレーダー・石油会社との取引が大半なため約3分の1がユーロ建てであった。 イラク戦争に伴う反米の高まりとドル安/ユーロ高を受け,6 月にはカタール石油相のAttiyah OPEC議長もこの点について言及,「ドル安はOPEC諸国の石油収入を縮小させて輸入側に有利に働くが,世界の基軸通貨としてドルに変わりはない」「一時的にユーロ高になっても,また反対にドル高になる時があるかもしれない」として,OPECとしてユーロ化を望んでいないことを強調した。 2.ユーロ決済の合理性 多くの産油国は,原油輸出をほぼ国営会社が管理していることから決済通貨の変更はさほど難しい問題ではない。特に,中東産油国の場合,欧州とは距離的に近く物の貿易量も対米を上回る(表1)ため,原油のユーロ決済はある程度合理的と考えられる。しかし,アジア地域の場合は,域内や米国との取引が主流であり,インドネシアの発言通り各国の国際収支はドル基軸となり,どこまでユーロ決済が合理的なのか疑問が残る。 表1.輸出入における相手別取引額の割合 (2001年,UAEのみ2000年) 中東産油国 イラン輸入輸出サウジ輸入輸出カタール輸入輸出UAE輸入輸出 EU米国0%10%20%30%40%50%60%Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 2 - Aジア産油国 マレーシア輸入輸出インドネシア輸入輸出南米産油国 ベネズエラ輸入輸出EU米国0%5%10%15%20%25% EU米国0%10%20%30%40%50%60%70%80% (出所 http://www.intracen.org/index.htm,UAEについてはhttp://www.bis.org/publ/bppdf/bispap17c.pdf)      中東産原油場 3.米国 NYMEX を中心とした国際原油市 今後,産油国においてユーロ決済の割合が高くなったとしても,現在の原油の市場連動制から判断して,価格がユーロ北米産建てで決定されるような「原油市場のユーロ化」は想像し難い。 なぜなら,世界の原油価格は米国NYMEX(ニューヨーク商品取引所)のWTI 先物価格を中心に成り立っていることからである。 図1.世界の原油価格システム 米国WTI原油(NYMEX)- 3 - 西アフリカ産中南米産Brent原油Oman原油アジア産Dubai原油価格連動Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 サ在の国際市場の大枠は,米国のWTI先物価格が,欧州地域の指標のBrent価格を牽引し,さらにそれがアジア地域のDubai価格を牽引する形であり,それらの価格はすべてドル建てである。またそれに倣うその他の原油価格もすべてドル建て価格で値がついている。(図1参照) また,80年代後半まで独自価格で販売していたサウジやイランなどの中東諸国の価格も,1987年に市場連動システムに変更し,国際市場の枠の中で価格決定を行うようになった。現行の中東原油の価格体系は,米国向けはWTI価格,欧州向けはBrent価格およびアジア向けはDubai価格とOman価格に連動するシステムである。実質的には,全面的に米国WTI価格(ドル建て市場)に連動するシステムといえる。したがって,中東やアジアの産油国はドルペッグによって収入を安定化させており,ドル準備も高くマレーシアでは外貨準備の70%をドル,5%程度5を(表2)ユーロで保有する。 表3.サウジの販売価格 *月次の政府調整金は,仕向け値ごとに月間で事前に発表される。 米国向け価格 = WTI価格±月次の政府調整金 欧州向け価格 = Brent価格±月次の政府調整金 アジア向け価格 =(Dubai価格+Oman価格)/2±月次の政府調整金 年では,そのNYMEXに連動する傾向はさらに強まっているようにみられる。90年代前半までは、WTI市場とBrent市場の2大市場によって構成されているとみられていたが,90年代後半 近に,金融市場のグローバル化と米国経済の好況により米国への資金流入は目覚しく拡大し,NYMEXへの資金流入も大きく増加,その一方で,Brent原油やDubai原油は生産量の年々の減退で流動性を失ってきており,米国WTI原油価格の先導力は強まっている。 このような状況を念頭にして原油市場のユーロ化を考えると,原油市場がユーロ化することはまず考えられない。たとえば,何らかの理由で中東諸国が市場連動制度の価格システムを放棄したり,あるいはヨーロッパで金融市場が目覚しく発展して世界の金融市場を制覇したりするなどの動きになれば,原油市場のユーロ化も現実的な話となろうが,今のところそのような動きは見受けられない。 5 AWSJ 2003/07/21 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 4 - ユーロ化を主張する国が出てきている。たしかに,主要なイスラム諸国でユーロ化が進めば他の諸国にも広がる可能性があり,それは米国を刺激するであろう。しかし,原油市場のユーロ化はそれほどシンプルなものではない。なぜなら,原油の国際取引の価格体系は,すべて米国中心のドル建て相場の上に成り立っているからである。イスラム諸国など一部地域でユーロ化が起きたとしても,ユーロ建て価格体系に移行していくことは想定し難い。 表2.マレーシアの外貨準備比率(推定) (2002年末,333億ドル 世界全体の1% IMF統計) ドル 円 ユーロ シンガポールドル その他 70% 15% 5% 5% 5% AWSJ 2003/07 /21より作成 とめ まGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 5 -
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2003/08/28 小田 路子
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