イラン:イラン関連の贈賄疑惑で Statoil CEO が辞任、一方、BHP はプロジェクト参入を断念
レポートID | 1003128 |
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作成日 | 2003-09-29 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
分野 | 探鉱開発企業 |
著者 | 猪原 渉 |
著者直接入力 | |
年度 | 2003 |
Vol | 0 |
No | 0 |
ページ数 | |
抽出データ | <更新日:2003/9/29> 企画調査部:猪原 渉 イラン:イラン関連の贈賄疑惑でStatoil CEOが辞任,一方,BHPはプロジェクト参入を断念 (2003 FT 9/24, 9/27,IHT 9/24,IOD 9/15, 9/16, 9/24,Platts 9/24, MEES 9/22他) 1. StatoilがHorton Investment社(ロンドン)と締結したコンサルタント契約を巡る対イラン贈賄疑惑は,Fjell CEOの辞任に発展。 2.BHPは,Foroozan/Esfandiar沖合油田開発への参入を「技術的理由から」断念。 2. この2件は,図らずも,イランでの事業の困難性を象徴的に示す事例といえよう。米国の圧力が背景にある(?)との見方も。 1.イラン関連のStatoil贈賄疑惑はFjell CEOの辞任に発展 Statoilは9月22日,臨時取締役会を開催し, Olav Fjell CEOの辞任を決定した。取締役会は,9時間に及ぶ討議の結果,9月初めに発覚したイラン関連の贈賄疑惑による混乱を回避するためには経営トップの交代が避けられない,との結論を出すに至った。同社は,これまでに,海外E&P部門の責任者であるRichard Hubbard 氏(元BP)がノルウェー捜査当局による家宅捜索を機に辞任したのに続き,9月21日にLeif Terje Loeddesoel会長も辞意を表明しており,一挙に3名の経営陣を失うという異例の事態となった。Fjell氏の後任には,Inge Hansen CFOがCEO代行に就任した。 <贈賄疑惑の経緯> 疑惑の対象となっているのは,Statoilが2002年6月,ロンドンに本拠を置くHorton Investment社と締結したイラン関連のコンサルタント契約である。契約期間は11年で,契約金額15.2百万ドル(約17億円)と巨額の契約であり,既に5.2百万ドルが支払い済みであることをStatoilは明らかにしている。この契約が外国(イラン)政府当局者に対する違法な贈賄行為にあたるのではないかとの疑いから,ノルウェーの捜査当局(通称Okokrim)が9月11日,Statoil本社に家宅捜索を行った。Okokrimの調べは現在も続いており,ノルウェーのメディアは連日,スキャンダルを追求する報道を続けている。また,米国証券取引委員会(SEC)が非公式の調査に乗り出したこともGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 1 - セらかになった。 Horton Investmentは英国在住のイラン人弁護士Abbas Yazdi氏が代表を勤める会社だが,NIOCで要職につくMehdi Hashemi Rafsanjani氏(Rafsanjaniイラン前大統領の末の息子)とのつながりがあると伝えられている。 当局の家宅捜索を受けて,Statoilは直ちに「自社倫理基準に基づき,常に正しい行動を取ってきた」と潔白を主張する声明を発表するとともに,「疑惑払拭のため」として,Horton Investmentとのコンサルタント契約をキャンセルする決定を下した。そして,9月15日に臨時取締役会が開催 され経営陣の責任問題が協議されたが,この時は,Fjell氏が引き続きトップの地位にとどまることが全会一致で承認された。Fjell氏は1999年にCEO就任後,中東など国外での事業展開を推進するとともに,2001年6月の株式公開など重要な経営課題を処理し,経営手腕が高く評価されており,取締役会は,Fjell氏のもとで結束して危機を乗り切ることで一度は合意した。 Fjell前CEO(出所:BBC News 2003/9/23) しかし,わずか1週間後の臨時取締役会で,Fjell氏は辞任に追い込まれた。Fjell氏が過去の取締役会で疑惑に関する十分な情報開示を行なっていなかったことが判明し,一部取締役が態度を硬化させたことが理由とされる。今年初めの時点で,Statoilの社内監査役がHortonとの契約に関する問題点を指摘していたが,この事実をFjell CEOおよびLoeddesoel会長はBoardメンバーに伝えていなかったといわれる。 2.Statoilとイランの関係及び同社のイラン戦略 Statoilは,2001年にテヘランに代表事務所を設置し,2002年10月,Petropars(NIOC子会社)と,South Parsガス開発のフェーズ6-8へのオペレーターとしての参入(参入比率40%)に関する契約を締結した。これが,Horton とのコンサルタント契約の直接の「成果」(Mehdi Hashemi Rafsanjani氏がイラン側方針決定に関与?)ではないかとの疑いが持たれている。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 2 - 繼L以外にも,同社は2002年半ばに,イランの油田における戦略的増産計画案をイランに提出し,Ahwaz等の油田における調査に関わった。また,2002年12月には,NIOCとStatoilはGTL技術に関する協力に関するMOUを締結するとともに,GTLおよび上流開発の枠組みについての合意書に調印するなど,イランにおける積極的な事業展開を進めてきた。同社は,イランでの活動の当面の目標として,South Parsガス開発の未契約フェーズ(フェーズ11以降)におけるGTLプロジェクトでの契約締結を狙っていたといわれる。 Fjell 氏は,CEO辞任前の9月8日に,MEES誌のインタビューにこたえ,「われわれは,イランとの貿易拡大を進めるノルウェー政府の方針に従って,イランでの投資活動を進めている。最近のイランの核開発疑惑を巡る国際的緊張は承知しているが,政治的動向には左右されずに,慎重かつ着実に関係構築を進めていきたい」とイランでの事業拡大に自信を示す発言を行っていた。 図-1 イラン関係図 3.BHPはイラン開発プロジェクトへの参入断念を表明 BHP Billiton(豪)は,イランForoozan/Esfandiar沖合油田開発への参入断念を表明した。同社傘下のBHP PetroleumのPhillip Aiken CEOが9月22日,International Oil Dailyとのインタビューで明らかにした。 Foroozan/Esfandiar沖合油田開発プロジェクトは,1998年に,外資導入プロジェクトとして入Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 3 - D対象案件となり,一時,BHPが契約最有力とみられたが,条件面で折り合いがつかず,2002年5月,イラン側はNIOC子会社PetroIran Development Co.(Pedco)と契約(オペレーター,100%)を締結した。しかし,Pedcoは,単独での開発は技術的ハードルが高すぎるとして,BHPを含む外資へのファームアウトを検討中と伝えられていた。 BHPは,Pedcoと締結した技術サービス契約の作業が今夏に完了し,Pedcoとのファームイン交渉を行ってきたが,Aiken CEOによると,特に開発対象範囲を巡る両者の溝が埋まらず,合意には至らなかった。同氏は,参入断念の理由について,「技術的要因によるものであり,政治的要因ではない」と語った。直接のコメントはないが,当初,NIOCとの直接契約交渉でも問題になったバイバック契約の条件面を巡る対立が解けなかったことが大きな要因と推測される。 Aiken氏はさらに,最近のStatoilを巡るスキャンダルとの関連について,「イラン石油省およびNIOC側と我々との交渉は,すべて正しい基準に従って進められてきた」として,同社は疑惑と無縁であると強調した。 また,BHPがNIOCと共同で事業検討を行っている「イラン~パキスタン~インド間陸上ガスパイプライン」構想について,Aiken CEOは,「商業的には実施可能であるが,地政学的観点からは実施困難である」と述べた。同パイプラインについては,パキスタンのMusharraf大統領が自国を経由することを容認すると表明しているが,Aiken氏は,インドとパキスタンの政治的緊張関係が依然として継続していることから,プロジェクトの実現性について慎重な見方を示したものである。(動向記事「イランからのガス輸入計画、LNGに関して政府間合意」(2003年6月号)参照) (参考)Foroozan/Esfandiar沖合油田開発 詳細は明らかではないが,石油コンサルタント会社によると,両油田の合計生産量を現状の約40千b/d(Foroozan 40千b/d,Esfandiar ゼロ)から,合計約105千b/d(Foroozan 70千b/d,Esfandiar 35千b/d)に引き上げる計画とされる。 4.あらためて示されたイランでの投資活動の困難性 今回,同時期に明らかになったStatoilとBHPの問題は,内容的に直接の関連性はないが,図らずも,イランでの投資活動の困難性を象徴的に示す事例と言えるのではなかろうか。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 4 - i1)不透明な契約締結プロセス イランへの石油開発投資にあたり,外資にとっての最大の問題点はバイバック契約の条件面であるとする見方が一般的であるが,交渉および契約プロセスの不透明さを指摘する声も少なくない。2001年から2002年にかけて,イラン国内でPetroparsを巡る「不正」問題が顕在化し,同社や石油省幹部のみならずZanganeh石油相までが司法当局の召還対象にされたという事態は記憶に新しいところである。保守派(司法当局は保守派の牙城)と改革派(国会議員等)の政争の具にされたとの解説が有力であるが,当時,石油開発分野での経験のない国会議員(Nabavi氏)が突如Petropars会長に就任するなど,契約決定プロセスの不透明さが存在していることは否定できず,これが保守派の批判を招いた大きな要因といえよう。 また,なかなか表にでることはないが,多くの石油会社にとって,イランを始めとする産油国(多くは発展途上国)との交渉に当たっては,エージェントとのコンサルタント契約は交渉を有利に進めるための「必要悪」との認識があり,「裏金」とみなされてもやむを得ない多額の契約金(=報奨金)が支払われるケースが少なからず存在するとみられる。この事実が一度白日の下に晒されてしまえば,経営陣の進退にまで直結することが今回のStatoilのケースで証明されたわけであり,コンサルタント契約締結がいかに大きなリスクファクターとなるかを再認識した経営者も多いのではないか。 (2)見え隠れする(?)米国の影 具体的根拠はないが,この時期に,Statoilの贈賄疑惑が表面化し,BHPの参入断念表明があった背景として,核開発疑惑を巡りイランへの強硬姿勢を強める米国の存在を指摘する向きもある。 米国は最近,イランへの石油開発投資への反対姿勢を鮮明化し,各国に対し露骨に圧力をかけている。米国政府は6月に,日本政府に対しAzadegan油田開発計画への参入中止要請を行ったほか,8月には,欧州を訪問したAbraham米エネルギー庁長官が,イタリア,オランダ両国政府に対し,日本企業の代わりに両国企業(ENI,RD/Shell等)がAzadegan開発に参入しないよう要請した。このような動きの延長で考えると,米国がノルウェーの政府・捜査当局に対しStatoilに関する秘密情報を流し,さらに,豪州政府に対してもBHPにイランへの参入をあきらめさせるよう圧力をかけたという推測は,可能性としては排除できないものと考えられる。 International Oil Daily(2003/9/15)は,Statoil の疑惑は,ノルウェーの有力紙(Dagens Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 5 - aeringsliv等)の報道がきっかけで明るみになったものであり,BP出身のE&P部門責任者Richard Hubbard 氏を快く思わないStatoilの一部スタッフが,同氏追い落としを狙って,Hortonとの契約の存在をノルウェー紙にリークしたのが発端であるとする見方を紹介している。とはいえ,IODの報道も情報ソースが明らかにされているわけではなく,今のところ,事の真相は不明である。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 6 - |
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