ページ番号1003130 更新日 平成30年3月5日

エジプト・パレスチナはイスラエルへのガス供給ソースとなり得るか?

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レポートID 1003130
作成日 2003-10-01 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG探鉱開発
著者 猪原 渉
著者直接入力
年度 2003
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ エジプト・パレスチナはイスラエルへのガス供給ソースとなり得るか? (2003 MEES 8/25,9/15,9/29,AOG 9/1,PIW 9/1, イスラエル The Ministry of National Infrastructure, World Markets Research Center,EIA,BG,Noble Energy各ホームページ) <更新日:2003/10/1> 企画調査部:猪原 渉 1. イスラエルのSharon首相は天然ガスを新たにエジプトから購入することを決定。BGが開発するパレスチナGaza沖合からの調達は「テロ資金への流用の恐れがある」として見送り。2. Gaza案を推すNetanyahu財務相(元首相)は国際石油企業参入のメリットを強調し,Sharon氏と対立。エジプトも「イスラエル寄り」との批判を恐れ,慎重姿勢を崩していない。 1.Gaza沖合ガスの購入見送りを決定 イスラエルのSharon首相は8月18日,今後需要急増が予想される天然ガスの新たな調達先をエジプトにすることを決定した。政府とガス購入者のイスラエル電力公社(IEC)の会議で,Sharon首相が,エジプト側との交渉を進めるようIECに指示したものである。同首相はあわせて,他の調達先候補で,BGが開発に参加しているパレスチナ自治区Gaza沖合ガス田の産出ガスについては,購入を見送るとの方針を示した。 自爆テロと報復攻撃の応酬が止まず,パレスチナ新和平案(ロードマップ)の履行が困難視され るなど,混迷を深める中東情勢がSharon首相の決断の背景にある。すなわち,同首相は,パレスチナ自治政府が得た収入が過激派に流れ,テロ資金として流用される恐れがあるとの理由から,Gaza沖合ガス田からのガス購入案を拒否した。きわめて政治的な判断であるといえるが,Netanyahu財務大臣(元首相)などの有力者がGaza案を支持するなど,イスラエル政府内部で意見の対立があるだけでなく,パレスチナやアラブ諸国からの批判を危惧するエジプトがすんなりと供給に応じる見通しにはなく,今後の見通しは不透明で紆余曲折も予想される。はっきりしていることは,イスラエルのガス事情は政治情勢を抜きにして判断することは困難であるという点である。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 1 - Q.イスラエルのガス需要と調達先候補 (1)ガス需要見通し イスラエルはエネルギー源の多様化と輸入石油への依存低減のため,発電向けを中心に天然ガスの利用拡大を計画しており,現状ほぼゼロのガス消費を2005年に40億m3/年へ,2025年には116億m3/年まで拡大し(表-1参照),エネルギー消費の供給源の25%を天然ガスとすることを目指している。 表-1 イスラエルのガス需要見通し (億m3/年) 産業用 電力用 合 計 2005 2015 2025 15.2 24.1 40 24.4517642.471.2116出所:イスラエルThe Ministry of National Infrastructure HP (注)内訳数値の計と「合計」が合わないが,そのまま(HPの内容通り)掲載した。 図-1 イスラエル,パレスチナ,エジプトのガス開発関係図 作成:企画調査部 - 2 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 i2)調達先候補 ガスの調達先としては,これまで,以下の3案が検討されてきた。 ① イスラエルの沖合Mariガス田で開発を行っているイスラエルYam Thesisグループ ② Gaza沖合鉱区で開発を行っているBGグループ ③ エジプトからの輸入 このうち,Yam Thesisは2002年にIECとの間で,2003年10月より11年間,合計180億m3(約16億m3/年)のガス供給で合意しているが,IECが当面必要とするガス供給量の半分程度にすぎないため,残り半分の調達先をどうするかが問題となる。 Yam Thesisは,米国Noble Energyの子会社Samedan(オペレーター)が47%保有する米国・イスラエル合弁企業であり,予定通り本年4Qより,開発中のMari-B沖合ガス田(確認および推定埋蔵量計1.1tcf)からイスラエル本土向けのガス供給を開始する見通しである。 3.イスラエルへの供給を渋るエジプト (1)一度はガス供給に合意したエジプト 検討が先行したのが,エジプトからの輸入案であった。エジプトでは,West Delta Deep Marine(WDDM)鉱区やRosetta鉱区など,地中海で大規模なガス田の開発が進んでおり,IECは2001年2月に,エジプト・イスラエル合弁企業East Mediterranean Gas(EMG)iと,10~15年間,15億m3/年(17 億m3/年との報道もある)のガス供給を受けることで基本合意に達した。エジプト・シナイ半島のEl AlishからイスラエルのAshkelonを結ぶ沖合パイプラインを建設しガスを供給するとの計画であるが,2 年以上経過した現在も最終調印はなされていない。パレスチナ紛争の激化によって,国内外から「イスラエル寄り」との批判を受けることを恐れるエジプトがプロジェクトの実行に及び腰になっているためである。 今回のイスラエルの決定について,MEES(2003/9/29)によると,EGPC(エジプト国営石油会社)のIbrahim Saleh会長がIECのEli Landau会長宛に書簡(9月10日付)を送り,エジプト産ガスをイスラエルへ供給する用意があることを伝えた。しかし,エジプト政府は明確な意思表明を行っ i EMG出資比率:EGPC 60%,Merhavグループ(イスラエル),Hussein Salim(エジプト人実業家)各20% Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 3 - トおらず,供給に応じない可能性も指摘されている。 (2)Arab Gas Pipelineは順調に動き出す イスラエルとのビジネスが進まない一方で,今年7月に,エジプトとヨルダン南部のAqabaを結ぶ新しいガスパイプラインが完成した。エジプト国内のEl Arish~Taba陸上パイプライン(255km)と両国を結ぶTaba~Aqaba海底パイプライン(15km)から成る全長270kmの同パイプラインは,Arab Gas Pipeline(AGP)計画の第1フェーズにあたるものであり,今後,ヨルダンに加え,シリアやレバノン,キプロス,トルコへのエジプト産ガスの供給を目指し,数年の間に順次延伸される計画である。エジプトは中東諸国との関係を重視する姿勢を強めており,イスラエルを完全に迂回するルートであるAGP計画に注力することで,「イスラエル離れ」の姿勢を対外的に印象づけようとしている。 4.イスラエル有力閣僚はBGのGaza沖合ガス田からの供給を支持 エジプトの慎重姿勢が強まる中で,新たな調達先候補として浮上してきたのが,Gaza沖合ガス田である。Gaza沖合ガス田(推定埋蔵量1.7tcf)は,BGが1999年にパレスチナ自治政府と25年間のガス探鉱・開発に関する契約を調印しガス開発を進めてきたものであり,BGはIECに対し,イスラエル向けに 15~20 億 m3/年のガス供給が可能との提案を行った。イスラエル社会基盤省(The Ministry of National Infrastructure)のParitzky大臣やNetanyahu財務大臣(元首相)は,Gaza沖合からのガス調達を支持したが,上述の通り,Sharon首相はこの提案を拒否し,エジプトとの再交渉を命じた。 Netanyahu財務大臣やParitzky社会基盤大臣は,有力な国際石油企業をイスラエルのガス市場に参入させることのメリットを強調している。Blair首相がBGへのバックアップを表明している英国との関係強化により国際的孤立を回避したいという政治的思惑に加え,BGと競合させることでYam Thesisのガス価格を下げさせようという狙いがある。 また,BGイスラエルのField社長は,Netanyahu,Paritzky両大臣の強力な支持を背景に,イスラエルへの供給は十分実現の可能性があると述べ,巻き返しを目指す姿勢を強調した。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 4 - T.今後の見通し パレスチナ紛争が沈静化しない状況下では,エジプトがイスラエルへのガス供給に応じる可能性は低いものと思われ,一方でSharon首相がGaza沖合ガスの調達に踏みきる見込みも薄いことから,当面,この問題は膠着状態が続くとの見方が有力である。 そのような中で,EMGがBGからGaza沖合ガスを購入し,イスラエルに販売するという新たな案の検討も取り沙汰されている。エジプトとすれば,エジプト産ガスをイスラエルに販売するのではない上,民間企業の取引という形態であれば政府への批判がかわせるとの読みがある。また,イスラエルにとっては,パレスチナがイスラエルへの供給を停止した場合でも,エジプトからの輸入に切り替えることが可能で,供給安定性が高まる。 また,エジプト,パレスチナからのパイプラインによるガス購入は,ともに政治的理由により困難であるとの見方から,近い将来,イスラエルは,深刻なガス・電力不足に直面する恐れがあり,早期にLNG輸入に踏み切らざるを得ないとの見方も出ている。MEES(2003/9/15)によると,イスラエル政府は,Ashkelon,Haifaを受け入れ基地の候補地とするなど,既にLNGプロジェクトの検討に入っている。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 5 -
地域1 アフリカ
国1 エジプト
地域2 中東
国2 イスラエル
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アフリカ,エジプト中東,イスラエル
2003/10/01 猪原 渉
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