イラク:新石油大臣が増産方針を表明 ~石油生産・輸出の現況と今後に関する関連情報整理~
レポートID | 1003136 |
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作成日 | 2003-10-06 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
分野 | 探鉱開発 |
著者 | 猪原 渉 |
著者直接入力 | |
年度 | 2003 |
Vol | 0 |
No | 0 |
ページ数 | |
抽出データ | <更新日:2003/10/6> 企画調査部:猪原 渉 イラク:新石油大臣が増産方針を表明 ~石油生産・輸出の現況と今後に関する関連情報整理~ (2003 MEES,IOD,PIW,Platts,WSJ,Reuters,中東事務所他) 最近のイラク石油関連動向に関する情報を整理。 ① Uloum氏が新石油大臣に就任 ② イラク石油生産および輸出の現状 ③ 当面の石油生産および輸出見通し ④ 外国石油会社の動向 1. はじめに 相次ぐ自爆テロ事件で国連のde Mello特別代表や有力シーア派組織イラク・イスラム革命最高評議会(SCIRI)指導者のMohammed Baqr Hakim師が犠牲になり,さらに,駐留米軍に対する攻撃や石油関連設備を狙った破壊活動が頻発するなど,イラクの治安情勢は一向に回復の兆しが見られない。治安の回復(および本格政権の誕生)がなければイラク復興の鍵を握る石油産業の本格的再生は実現しない,というのが石油関係者の一致した見方であるが,現実には,徐々にではあるが,イラクの石油生産および輸出は上向きになりつつある。イラクに関心を寄せる石油会社にとって,イラクへの参入可能時期は依然不透明であるが,将来の契約交渉に備え各社は情報収集の強化を図っている模様である。 本稿では,イラク石油開発動向に関する現時点での情報整理を目的として,以下の4点について,イラク石油省幹部の発言や専門家の見解,報道で伝えられた内容等を報告する。 ① Uloum氏が石油大臣に就任 ② イラク石油生産および輸出の現状 ③ 当面の生産および輸出見通し ④ 外国石油会社の動向 2. 新石油大臣に「予想外」のUloum氏が就任 9月1日,イラク統治評議会(GC)は暫定内閣の25名の閣僚名簿を発表し,注目された石油相にGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 1 - ヘ,Ibrahim Bahr al-Uloum氏(49歳)が就任した。Uloum氏は,1976年にバクダッド大学卒業後,クウェート石油省で5年間エンジニアとして勤務したあと,米国New Mexico大学で石油エンジニアリングの博士号を取得し,最近はロンドンの石油コンサルタント会社で活動していた。石油産業でのキャリアを重ねてきた人物であるが,過去27年にわたる亡命生活でイラクを離れていたことから,国内の石油部門では無名の存在であった。当初,石油相には,フセイン政権時代に石油省企画局のDirectorを務め,政権崩壊後も暫定石油省CEOとして実質的に石油行政を取り仕切ってきたThamir A. al-Ghadhban氏の就任が有力視されていただけに,無名のUloum氏の就任は予想外であるとの受け止め方が多い(Platts,IOD 2003/9/3)。 今回の暫定内閣では,民族・宗派間の融和を図る観点から,GCの25名の構成と同じく,シーア派13人、スンニー派5人、クルド人5人、トルクメン人1人、アッシリア人(キリスト教徒)1人とイラクの人口構成を反映した構成となっている。今回の人選について,組閣の過程で石油相がシーア派に割り当てられた関係から,シーア派の有力聖職者で GC のメンバーでもある Mohhamed Bahr al-Uloum氏の子息であるIbrahim Bahr al-Uloum氏が,いわば「親の七光り」で浮上したとの見方がある(同上)。 イラク石油部門は,Rashid前石油相(4月に米軍が逮捕)などフセイン政権とのつながりが深かった一部幹部を除き,要員の大半が引き続き勤務しており,イラク戦争前の体制がそのまま引き継がれている。国内石油部門で全く基盤を持たないUloum氏が,Ghadhban氏を始めとする強力なテクノクラート集団が固める石油省で実権を握るのは簡単なことではなく,「名目だけの大臣に終わる」との見方も根強いが,9月24日に開催されたOPEC総会でUloum氏はイラク代表としての大役を無難にこなすなど,ひとまず新任大臣として順調なスタートを切った。 なお,その他の石油部門の人事動向として,連合国暫定当局(CPA)が9月22日に,ConocoPhillipsの元幹部(Executive VP)Robert Mckee氏を,Phillip Carroll氏(元Shell)の後任としてCPAの石油部門上級顧問(任期6ヶ月間)に任命した。同じく,元BP幹部でアゼルバイジャンAIOC社長を務めたTerry Adams氏が,CPAの石油部門顧問に就任した。 3.イラク石油生産および輸出の現状 ~生産量は180万b/d,輸出は90万b/dまで回復~ イラク戦争により4月に15万b/dまで落ち込んだ原油生産量は,5月以降徐々に増加し,8月には平均105万b/dまで回復した(MEES 2003/9/22)。その後も原油生産は増加しており,Uloum石Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 2 - 羡鰍ヘ9月24日,OPEC総会が開催されたウイーンで記者会見し,「9月に入り原油生産量は180万b/d程度まで回復している」と述べた。 MEES(2003/9/22および9/29)によると,現状のイラク原油生産能力は約195万b/d(その内実際の生産量は180万b/d程度)に達しており,生産量の内訳としては,輸出(全量が南部Basra Light)が100万b/d,国内消費475千b/d,発電設備向け7~8万b/d,北部油田向け再圧入20~25万b/dとみられる。 また,北部と南部油田別でみると,PIW(2003/9/15)によれば,Rumaila油田を中心とする南部油田の生産量は9月第1週に130万b/dを達成したのに対し,Kirkukなどの北部油田は約52万b/d にとどまっている。石油コンサルタント会社の報告によると,イラク戦争前の油田生産能力は,南部油田が約150万b/d(内Rumaila油田125万b/d),北部油田は約100万b/d(内Kirkuk油田80万b/d)であり(*),北部の生産回復の遅れが際立っている。北部では,イラク戦争「終結」後,パイプラインや石油関連施設を狙った約20件の破壊活動が起きており,現在も不安定な治安状況が続いていることが,生産回復遅れの大きな要因である。Kirkuk-Ceyhan(トルコ)パイプライン(輸送能力120万b/d)の再開の目途も立っていない。一方,南部では治安は比較的安定しており,順調に生産を回復してきた。ただし,南部油田でも,電力供給不足という生産阻害要因を抱えている。 (*)動向記事「「フセイン後」のイラク石油開発動向の現時点での見通し」(2003/3/27作成)参照 現状の原油輸出については,PIW(同上)は,9月の積み出し予定量に基づく平均輸出量が約86万b/dであると伝えている。これらは全量ペルシャ湾Mina al-Bakr積出ターミナル(実質積み出し能力120万b/d)からの出荷である。ペルシャ湾のもうひとつの出荷基地であるKhor al-Amaya積出ターミナル(能力40万b/d)の操業再開も近いとみられている。 また,同じくPIWによれば,原油輸出が再開された7月24日以降9月末までの平均輸出量は約625千b/dであり,その内50万b/dが米国向け出荷となっている。 4.今後の原油生産および輸出見通し ~2004年1Q末の生産量は280万b/dへ~ イラクの今後の原油生産および輸出の拡大見通しについて, OPEC総会時にUloum石油相が,および9月8,9日にドバイで開催されたMiddle East Petroleum and Gas Conference (MPGC)でGhadhban石油省CEO(現在は「次官」の位置付け)が見解を述べている。イラクが積極的な増産計画を打ちGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 3 - oしたことで,OPECは9月24日の総会で90万b/dの「予防的」減産を決定した。 両氏の見解を総合すると,今後の見通しは概略以下のとおりである。 (cid:190) 生産能力は,現状の180万b/dから2003年末に200万b/d,2004年1Q末に280万b/d(Ghadhban氏は300万b/dとコメント)が達成されるだろう。さらに,その後,2005年末に(湾岸戦争前の水準を超える)350-400万b/d,最終的には600万b/dを目指す計画である。 (cid:190) 輸出は近く100万b/dレベルに達し,2003年末に150万b/d,2004年1Q末に180万に達する。 Ghadhban氏は,上記目標達成のための具体的アプローチとして,以下のポイントを挙げた。 (cid:190) 300万あるいは350万b/dまでの増産は原油の輸出代金などでまかなえるが,それ以降の増産(2ndフェーズ)には大きな投資が必要となり,外国石油会社(IOC)の参加が望まれる。 (cid:190) 350万から400万b/dまでの増産は,石油省の統括管理のもと主にEPC契約により実施されよう。400万から600万b/dまでの増産は,未開発油田の新規開発により進められる。 (cid:190) 石油開発は,中央政府(石油省)による統合管理(centralized management)により実施される。 (cid:190) 下流分野については民営化を進めるが,上流は民営化対象外。上流資源はあくまでイラク国民の資産である。 (cid:190) 発電での利用,近隣諸国(クウェートを想定?)へのガス輸出による収入源として,今後,ガス開発を推進する。 (cid:190) (会議後の会見での質問にこたえ)IOCとの契約形態については,PS契約とDP契約(開発生産契約:バイバック契約の類似形とされる)の両方が検討対象となる。IOCサイドの利益についても十分考慮の上,契約方式を決定したい。 5.外国石油会社の動向 ~12月にバグダッドで国際会議開催予定も慎重な企業多い~ イラク石油省は,IOCとの協議を出来るだけ早期に開始したい意向であり,本年10月下旬にジュネーブで開かれるイラク石油部門の復興に関する会議で,石油部門の復興事業の概要について説明する予定である。また,Uloum石油相はウイーンでの会見で,12月上旬にバグダッドで国際石油会議を開催し,代表的なIOC各社を招待する予定であることを明らかにした。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 4 - 一部のIOCは既にイラク側とのコンタクトを開始しており,ChevronTexacoやTotalの幹部がウイーンでイラクのOPEC代表団(団長:Uloum石油相)と接触した模様である。また,Eniは数週間前にイタリア軍機に調査団を同乗させバグダッド入りし,イラク石油省とコンタクトしたと伝えられている(WSJ 2003/10/1)。フセイン政権時代に,TotalはMajnoonおよびBin Umar油田開発で具体的交渉を行っており,EniもNasiriyah油田開発への参入交渉を行ったことから,条件が整えば先行メリットをいかして早期契約を図りたいとの思惑を有していることは十分考えられる。 今のところ,開発案件で契約に結びつくような具体的な動きはないが,最近,Western Desert(西部砂漠)の探鉱案件で以下のような動向が伝えられた。まず,Pertamina(インドネシア)が9月9日,前政権時代の2002年4月に契約を調印した西部砂漠Block3について,10月より探鉱作業を開始する予定と発表した。さらに,アイルランドの小規模石油会社Petrelが,西部砂漠Block6において机上および衛星写真による調査を実施中(探鉱契約未契約)と伝えられたが(IOD 2003/10/1),いずれも,専門家の間では特にインパクトのあるニュースとは受け止められていない。 一方で,現時点でイラクへの投資で具体的検討に入ることに慎重な姿勢を崩していない会社も多く,BPやRD/Shellは,イラク石油相との会談は実施していないと強調した。また,ExxonMobilのLee Rayond会長はロイター通信のインタビューにこたえ,「イラクへの石油投資は,あまりに政治情勢が不安定でありリスキーである」として,早期投資の可能性を否定した(Reuters 2003/9/28) 。また,ノルウェーのSteensnaesエネルギー相は,「イラクから招待を受けたが,当面,同国を訪問する予定はない」と言明し,StatoilとNorsk Hydroの2社も現時点でイラク石油開発へ参入する予定はないとコメントしている(IOD 2003/9/8)。これらの会社は,具体的交渉の時期はまだ先のことと判断しており,当面,治安・政治状況をにらみながら,情報収集を粛々と行うという姿勢と考えられる。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 5 - Cラク主要油田位置図 Kirkuk油田 Kirkuk油田 *Ahdab油田 *Ahdab油田 **西部砂漠 **西部砂漠 *Majnoon油田*Majnoon油田*Nahr Umar油田*Nahr Umar油田*Nassiriyah油田 *Nassiriyah油田 *West Qurna油田*West Qurna油田Rumaila油田Rumaila油田無印:生産中油田 *:既発見未開発油田 **:未探鉱油田 作成:企画調査部 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 6 - |
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