ページ番号1003615 更新日 平成30年2月16日

メキシコ:カンタレル油田の急激な減退とカルデロン新政権の政策動向

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レポートID 1003615
作成日 2007-02-16 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発
著者
著者直接入力 佐藤 隆一
年度 2006
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日: 2007/2/16 ヒューストン事務所: 佐藤 隆一 メキシコ: カンタレル油田の急激な減退とカルデロン新政権の政策動向 メキシコの原油生産量の約60%を占めるカンタレル油田の生産量が急激に減退している。エネルギー省の発表では、2006年12月のカンタレル油田の生産量は、一年前の約200万バレル/日より50万バレル(25%)減退し、149.3万バレル/日に急落している。 本稿では、カンタレル油田の現状を概観し、カルデロン新政権がメキシコの生産量維持に向けて打ち出しはじめた政策動向についてまとめる。 (SPE、AAPG、PEMEX、Platts他) . カンタレル油田の概要 1カンタレル油田はカンペチェ湾沖合約80kmの水深約40mの浅海に位置する(図1)。同油田はメキシコ石油公社(PEMEX)により1976年に発見されたメキシコ最大の油田で1979年より生産を開始し、2005年までの原油の累計生産量は約115億バレル、随伴ガスは4.7兆立方フィートに達する。残存可採埋蔵量は約70億バレルと推定されている。 図1 カンタレル油田位置図 出所:Sanchez etal. 2005より作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 1 - ンタレル油田の貯留岩は白亜系炭酸塩岩で、発見当初の油層の平均層厚は4000ft(約1200m)、オ カ 図2 カンタレル油田地質断面図(生産開始前の油層を記載) 出所:Aquino etal. 2003他を用いて作成 イルコラム7000ft(約2100m)と驚異的なものであった(図2)。地質構造は逆断層を伴う背斜構造で、上盤側のAkal構造が油田全体の埋蔵量の約86%を占める。油の性状はAkal構造でAPI比重22度(20度~24度)の重質油であるが、深部のSihil構造はAPI比重30度と軽くなる。 カンタレル油田は最大の構造であるAkalから生産が開始され、その周辺および深部構造であるNohoch、Chac、Kutz、Sihilからも順次生産が行われている。開発初期の1982年には、わずか40坑の生産井から115.6万バレル/日の油を生産(1坑あたりの生産量は2万9千バレル/日を記録)するという、第一のピークを迎えた。その後、100万バレル/日の生産を維持することが目標とされ、1987年までは生産の維持は専ら追加坑井の掘削で達成された。 1987年から1996年までの10年間はガスリフト採油を含む150坑の生産井により、100万バレル/日の生産量(1坑あたりの生産量は7千バレル/日)が維持された。 油層は重力押し型の排油機構を主体とするため、原油の生産に伴い構造頂部にはガスキャップが形成され、その後徐々に油層圧力が低下してガス油界面も下がった(図3)。 - 2 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ンタレル油田の生産は、以下の3つのフェーズに分けられる(図3)。 カ① 1979年~1996年:「探鉱・開発フェーズ」 図3 カンタレル油田の生産フェーズ 出所:PEMEX、Sanchez etal. 2005より作成 ②1997-2005:「積極的開発フェーズ(カンタレル油田再開発プロジェクト)」 100万バレル/日で約20年に及ぶ生産の結果、油層圧力が生産初期の半分以下まで低下し、生産量の維持が困難になったため、PEMEXはカンタレル油田に対する油層シミュレーションに基づき原油の回収率を最大化させるプログラムを策定した。これは、「カンタレル油田再開発プロジェクト」と呼ばれるもので、新規に200坑を超える生産井を掘削し、さらに窒素を圧入して原油を2次回収する。陸上の新規窒素生産プラント(本邦企業の丸紅株式会社も参加する事業会社CNC:Compania de Nitrogeno de Cantarell, S.A. de C.V.)で生産された圧入窒素は、、パイプラインを介して最大12億立方フィート/日で供給される。 「カンタレル油田再開発プロジェクト」が開始された1997年以降、生産量は順調に上昇し、目標の200万バレル/日の生産は2003年に達成された。生産量のピークは2004年で、年間平均213万バレル/日を記録している。 ③2006年以降: カンタレル油田は2006年より本格的な減退フェーズに突入した(図4)。2005年末の約200万バレル/日の生産量から2006年12月には50万バレル/日に減退し(前年同月比25%の減退)、149.3万バレル/日に急落している(年間の平均生産量は179万バレル/日)。今年2007年1月には160万バレル/日とGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 3 - 瘧ア改善したとの報道もあるが、急激な減退を示しているのは確かのようである。今後は、原油の回収率を最大化させつつ、如何に減退量を小さくするかが鍵となる。 2000年以降のカンタレル油田の生産量は、図4に示すようにメキシコ全体の約60%を占めて推移している。2003年から2005年の3年間は生産量200万バレル/日を維持していたが、2006年に入ってからの1年間で急激な減退を示している。 この1年間のPEMEXからの発表・幹部の発言を時系列で比較すると、PEMEXの減退予測を遥かに上回る規模で進行していることが推測される。 具体的には、わずか1年前の2005年12月時点では「2006年末の予想生産量は190.5万バレル/日(6%減退)、2007年が168.3万バレル/日、2008年が143万バレル/日(適切な投資を前提)」と予測されていた(http://www.pemex.com/index.cfm?action=content&sectionID=8&catID=428&subcatID=3679: 2月14日時点でもPEMEXのホームページのf)にて確認可能)。その後、2006年11月には、当時のLuis Ramirez Corzo社長が「2006年は年平均で180万バレル/日(10%減退)まで減退し、今後2007-2015年の間は毎年14%減退すると見込まれる」と大幅な下方修正を行っている。続いて、今年2月7日、Jesus Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 4 - 図4 カンタレル油田およびメキシコの原油生産量 出所:PEMEXより作成 . カンタレル油田の現況と減退規模の予測 2eyes Heroles新社長も「2006年の平均生産量は179万バレル/日に終わり、2007年は平均で153万バレル/日を見込んでいる」と伝えている。 このような下方修正の理由を考察するには、カンタレル油田の現況を技術的に見る必要がある。PEMEXが2005年6月にSPEで発表した論文(Sanchez etal. 2005)では、基本的にカンタレル油田の再開発プロジェクトの成功が述べられているが、注目すべき記述として「ガス油界面(GOC:Gas Oil Contact)の低下速度は年間230フィート(約70m)に速まった」ということがある。図3のプロットでも想像できるが、2007年の現時点でガス・油界面は恐らく2400m以深まで低下していると考えられる。一方、油水界面は生産に伴い上昇を続けており、Sanchez etal. 2005では「油水界面が当初の3200mから2005年時点で 約2650m(8700フィート)まで上昇した」ことを報告している。 すなわち、生産開始時にオイルコラムが約2100mであった巨大油田(Akal構造)は、既にオイルコラムで10分の1の200m程度まで縮小している状況にある(図2,5,6)。そのため、生産井は構造中心部に位置する坑井から次々に窒素のガスキャップの中に入り、逆に構造縁辺に位置する坑井は水没するなど、生産に寄与できる坑井数が激減していると推定される。 図5 カンタレル油田(Akal)の地質構造図 (現時点の油層を予測) 出所:Mitra etal. 2005他を用いて作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 5 - フような重力押し型の排油機構は一般に油の回収率は高いが、オイルコラムが薄くなって減退に転 こじた場合は急速に枯渇に向かうものである。したがって、筆者は今後さらに急激な減退が進む可能性が高いと考える。昨年9月にカンタレル油田関係者から小耳に挟んだ「カンタレルは死に体」という言葉からも、その厳しい状況が窺える。現在PEMEXは、追加坑井の掘削やSihil構造など周辺構造からの生産を含めて、緩やかな減退となるよう最大の努力を続けていると考えられるが、今後はその成果を注目する図6 カンタレル油田地質断面図(現時点の油層を予測) 出所:Aquino etal. 2003他を用いて作成 段階になる。 3. カルデロン新政権の政策動向 カルデロン大統領は、昨年12月の就任後、真っ先にGeorgina Kessel 新エネルギー大臣、PEMEXのJesus Reyes Heroles新社長の両経済学者を任命し、エネルギー政策を重視する姿勢を打ち出した。特に、PEMEX の社長には、PEMEXの生え抜きの生産技術者であるLuis Ramirez Corzo氏から、元エネルギー大臣、元駐米大使でもある大物Jesus Reyes Heroles新社長(父親も1964年~1970年のPEMEX社長)を据えており、カルデロン新政権のPEMEX改革にかける意気込みが伝わってくる。 Jesus Reyes Heroles新社長は、2月7日に就任後初めての会見を行い、カンタレルの減退を補うための以下の方策を発表した。 - 6 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 E短期的には、カンタレル油田の沖合に位置する「Ku-Maloob-Zaap油田(ク・マロブ・サップ油田)*1」の生産量を現在の41.7万バレル/日から2008年末には78~80万バレル/日に増産する計画。 *1ク・マロブ・サップ油田の原油増産プロジェクトには、みずほコーポレート銀行を幹事行とする民間金融機関13行が総額6億ドルを限度に資金提供。国際協力銀行は同民間金融機関との間で保証契約を調印。 ・中期的にはチコンテペック盆地の油田群を開発する計画(現在の7万バレル/日から2015年には66万バレル/日に引き上げる)。 ・上記の2地域を中心とする探鉱開発計画を実現するため2012年までの間、毎年150億ドルが必要。「ただし、近年実施されてきた開発資金を賄うPidiregasプロジェクト(民間資本を活用した長期インフラ整備プロジェクト)では莫大な借金蓄積されたため、抜本的な税制改革が必要」と述べている。 また、長期的にはメキシコ湾大水深の開発が必要であることは、前政権でも伝えられているものであるが、1月下旬にカルデロン新大統領は一歩踏み込み「米国との国境に位置するメキシコ湾大水深における探鉱開発のため、米国とネゴシエーションを行うチームを組成するプランがある」ことを語っており、米国政府およびメジャー等に対する具体的メッセージとして注目される。それに呼応してか、2月7日、Jesus Reyes Heroles新社長は「従来のMSC(Multiple Service Contract)を改正するものとして、新規に油田が発見された際の高い報酬を参加企業に与えることを含む新サービスコントラクトを現在PEMEX内で作成中」と述べており、近い将来何らかの外資に向けた新規提案がなされると考えられる。 そのほかの探鉱開発活動の動向としては、1月2日のPEMEXによる「チコンテペック盆地における坑井掘削作業の入札」の発表、2月2日のPEMEXによる「メキシコ湾大水深において7050平方キロメートルにおよぶ広大な面積の3次元地震探鉱作業の入札」の発表などの比較的大きなニュースがあり、昨年の大統領選挙の年にやや停滞してきたPEMEXの探鉱・開発活動が一気に動きはじめた印象がある。 以上のように、フォックス政権下でエネルギー大臣を務めた経験のあるカルデロン大統領は早速新たなエネルギー政策が打ち出しつつあるが、筆者は特に技術と資金が必要な「メキシコ湾大水深の探鉱開発」や外資導入に向けた「新規MSC」の動向を注視していく必要があると考える。 以上 参考文献 Aquino, J.A.L., The Sihil Field: Another Giant Below Cantarell, Offshore Campeche, AAPG Memoir 78 (2003) Mitra, S., Three-dimensional structural model of the Cantarell and Sihil Structures, Campeche Bay, Mexico, AAPG Bulletin, v.89, pp.1-26 (2005) Sanchez, J.L., Nitrogen Injection in the Cantarell Complex: Results after Four Years of Operation, SPE 97385 (2005) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 7 -
地域1 中南米
国1 メキシコ
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,メキシコ
2007/02/16 佐藤 隆一
Global Disclaimer(免責事項)

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