ページ番号1003619 更新日 平成30年3月5日

天然ガス市場:ガス版 OPEC 構想 ―世界天然ガス市場支配の実効性は?

レポート属性
レポートID 1003619
作成日 2007-02-22 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG市場
著者 野神 隆之
著者直接入力 石井 彰
年度 2006
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ <石油・天然ガス調査グループ:石井 彰/野神 隆之> <作成日:2007/2/22> 天然ガス市場:ガス版OPEC構想-世界天然ガス市場支配の実効性は? (IEA、米国DOE/EIA、OIES他) ① 2007年1月28日イランはロシアに対して天然ガスに関するカルテル設立でロシアと協力する用意があると発言。次回のガス輸出国フォーラムで同フォーラムをガス版OPECに転換すべく提案を行う旨表明。 ② ロシアもプーチン大統領がさらに検討が必要としながらもガス版OPECに対して興味を示している他、同国とカタールとの間でも産ガス国間で協力を促進することで合意との報道。 ③ ただ、天然ガスは石油とは市場構造が異なり、個別の顧客に対して個別に価格フォーミュラが規定された長期契約が主体であることから、柔軟に価格や生産を変更することは現状では困難である。 ④ また、世界的な天然ガス市場も確立していない。天然ガス市場は大きく北米、欧州、そして極東に事実上分断されている状態であり、世界的な天然ガス需給の安定化のために国際的な協調が必要である、という認識が必ずしも産ガス国に行き渡っていない状況にある。 ⑤ さらに、天然ガスは石油や石炭と競争関係になりやすく、天然ガス価格の上昇は他のエネルギー源への代替を促進する可能性があり、この面でも課題がある。 ⑥ そして、新規長距離パイプライン、天然ガス液化施設のプロジェクトが計画中のものも含めて相当規模存在することから、人為的な価格引き上げはこれら潜在的新規プロジェクトを推進させるべく作用することが考えられ、結果として天然ガス需給の緩和、価格の下落といった影響となって現れることも考えられる。これは1973年当時の石油市場と全く異なる点である。 ⑦ 現実にはOPECですら市場支配に苦労している状況であり、天然ガスについてはさらに問題が追加されてしまうことから、少なくとも将来天然ガスに係る世界市場が成熟するまでは、ガス版OPECが創設されたとしても、世界天然ガス市場に対する支配力は限定的なものになるものと思われる。 . イランがガス版OPEC構想を提案、ロシアが興味を示す 12007年1月28日、テヘランにおいてイランの最高指導者ハメネイ師がロシアのイワノフ(Ivanov)安全保障会議書記に対し、「世界のガス埋蔵量の半分がロシアとイランに存在することから、両国でOPECのようなガスに係る協力組織を設立することができる。」としてイランが天然ガスに関するカルテル設立でロシアと協力する用意がある旨表明した(イランがなぜこのような提案をしたかについては定かではないが、ガス版OPECで主導権を握ることを希望している(他方OPECではサウジアラビアとライバル関係にあり主導権が握れていない、との指摘もある)、もしくは核開発問題で対立する西側諸国に打撃を与えることを目論んでいる、といった見方もある)。一方ロシアにおいては、プーチン大統領が2月1日に実施された記者会見でガス版OPECについて「興味深いので、考えたい。」と発言した。ただ、ロシア側はプーチGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 1 - 淘蜩摎フが「(ガス版OPECは)カルテルではなく、エネルギー資源の主要消費国に対して信頼できる供給を目指し、産ガス国の行動について協調するものである。」旨明かにしており、必ずしも厳密な意味でのカルテルを想定していないことを示唆する発言をしている他、2月6日にはフリステンコ(Khristenko)産業エネルギー大臣がガス版OPEC構想を「空想事」であると発言するなど、本構想に関して微妙な温度差が見られる。また他の産ガス国についてもアルジェリアのヘリル(Khelil)エネルギー鉱業大臣やカタールのアティーヤ(Attiyah)エネルギー産業大臣はガス版OPECについて「不可能である」もしくは「必要ない」旨発言している。 ただ、その後2月11日に行われたプーチン大統領とカタールのハマド首長との会談で、両者はガス輸入国との関係を調整するために競合する産ガス国間でさらに協力を促進することで意見が一致した。会談後プーチン大統領は「ガス・カルテルを設立することを排除しない」旨発言したと伝えられる。但しプーチン大統領はガスに関するカルテルについては「更なる検討が必要」であり、「ガス輸出国は、自分たちの利益を防衛し、消費者との関係を調整するために行動したいだけである」ことを示唆するなど、慎重な姿勢も示した。イラン側は4月にカタールのドーハにて開催が予定されている第6回ガス輸出国フォーラム(GECF:Gas Exporting Countries Forum、後述)でガス版OPEC構想について提案する予定であ. ガス輸出国フォーラムとは 2ることを明らかにしている。 ガス輸出国フォーラムは2001年より原則年1回の割合で、産ガス国による大臣会合を開催している。主な目的は以下の通りである。 (1) 産ガス国間、産ガス国と消費国間、政府とエネルギー関連産業間での対話を指向することにより相互利益に関する考え方を醸成すること (2) 調査を推進したり意見を交換したりするための基礎を提供すること (3) 安定的で透明性のあるエネルギー市場を形成すること この背景としては、特に近年欧州で天然ガス市場の自由化が進展しつつあり、2001年4月には欧州委員会が、欧州各国とロシアのガスプロムとの間で締結されていた天然ガス供給契約中の仕向地条項について、欧州ガス市場における競争を制限しているとして、調査及び交渉を開始したこともあり、産ガス国側から不満が出てきたこと、北米、欧州及び極東に大きく分断されていた天然ガス市場が将来的には統合する可能性が出てきたこと、2000年前後に行われた大手国際石油会社を中心とした再編により、エネルギー産業への影響力が拡大してきていることなどがあるのではないか、と指摘されている。このような流れの中、2002年にアルジェリアで開催されたGECF大臣会合の時には、仕向地条項に関する作Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 2 - ニ部会を発足させることが決定したりもした。 前述の通りGECF大臣会合は2005年までほぼ年1回の割合で開催されてきた(表1参照)が、GECFはOPECと違って恒久的な事務局を持たず(大臣会合の準備は開催国が行ってきた)、参加国にも変動があるほか、ロシア等正式参加かオブザーバー参加か曖昧な国もあった。加えて、近年天然ガス価格が上昇しつつあったことや、参加国の関心事項が多様であったこともあり、会を重ねるにつれ、参加国の興味も低下、2006年3月前後にはベネズエラで第6回大臣会合が開催される予定であったが、結局これは開催されずに終わった。また仕向地条項に係る作業部会もその進捗状況は思わしくなく、最終的にはロシアとアルジェリアは仕向地条項については欧州委員会の要求を受け入れることになった。 表1 GECF大臣会合の実績開催年月日2001年5月19~20日開催場所テヘラン(イラン)第1回第2回2002年2月1~3日アルジェ(アルジェリア)第3回2003年2月4~5日ドーハ(カタール)第4回2004年7月4~5日カイロ(エジプト)参加国アルジェリア、ブヌネイ、インドネシア、イラン、マレーシア、ナイジェリア、オマーン、カタール、ロシア、トルクメニスタン、ノルウェー(オブザーバー)アルジェリア、ボリビア、ブヌネイ、エジプト、インドネシア、イラン、リビア、マレーシア、ナイジェリア、オマーン、カタール、ロシア、ベネズエラアルジェリア、ブヌネイ、エジプト、インドネシア、イラン、リビア、マレーシア、ナイジェリア、オマーン、カタール、ロシア、トリニダード・トバゴ、UAE、ベネズエラ、ノルウェー(オブザーバー)アルジェリア、ブヌネイ、エジプト、インドネシア、イラン、リビア、マレーシア、ナイジェリア、オマーン、カタール、ロシア、トリニダード・トバゴ、UAE、ベネズエラ、ノルウェー(オブザーバー)第5回2005年4月25~27日ポート オブ スペイン(トリニダード・トバゴ)アルジェリア、ブヌネイ、エジプト、赤道ギニア、イラン、マレーシア、ナイジェリア、カタール、ロシア、トリニダード・トバゴ、UAE、ベネズエラ、ノルウェー(オブザーバー)出所:The Gas Exporting Countires Forum: Is it really a Gas OPEC in the Making (OIES)他 前述の通りロシア、イラン、そしてカタールがガス版OPEC設立に興味を示している模様である。これらの国の天然ガス埋蔵量は世界の27%、生産量の56%、輸出量の25%を占める。またGECF参加経験国では天然ガス埋蔵量は75%、生産量は45%、輸出量は55%を占めるが、その輸出量は世界生産・需要量の14%に過ぎない。現在のOPEC諸国(アンゴラ除く)の石油埋蔵量が世界の75%、生産量が42%、輸出量が51%の占有率となっているが、1973年にOPECが国際カルテルとして最初に台頭したときは、世界生産量の55%、貿易量の87%、であり輸出量は世界生産量の49%にも達していた。 GECF参加国は現在のOPEC加盟国の市場集中度とほぼ同等になっていることから、ガス版OPEC結成によって世界の天然ガス産業における産ガス国の支配が強まるのではないか、との懸念が一部メディアで報じられている。ここではガス版OEPCが天然ガス市場に対し実効的な支配が可能なのかどうかについて考察したい。 確かに埋蔵量、生産量、輸出量についてはGECF参加国の市場占有率は、OPECと同等になるが、1973年当時のOPECに比べれば、世界市場における存在感ははるかに小さく、また石油と天然ガスでは市場・産業の構造が相当程度異なっている。まず天然ガスを開発し、販売するには、パイプライン施設や液化施設、受入施設が必要となり、高度に資本集約的な部分も多いが、天然ガスの国際貿易に係るGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 3 - . ガス版OPEC-その実効性は? 3jは石油と比べて相対的に浅いことから、価格を維持すべく例えば減産を実施する、ということになると投下資金の回収、すなわち債務返済に大きな影響が生じる危険性が高い。 また、天然ガス契約は依然として原油等に連動した価格フォーミュラを含む長期契約が主流となっている。スポット取引は北米や英国といった限られた市場などでは普及しているが、特に大陸間貿易について見れば、最近増加してきたとはいえ、LNG取引の13%程度(2005年)である。従って、国際的に移動可能なスポット天然ガスは、世界生産・需要量の1%以下に過ぎず、またLNGによる貿易は世界の天然ガス貿易の約4分の1程度となっていることから、世界の天然ガス貿易に占める(大陸間貿易を可能とするような)流動性の高いスポット取引割合でも数%程度と推定され、極めて限定的である(図1参照)。このため価格維持のために、このようなスポット取引による輸出量を調整することには限界がある他、長期契約では価格フォーミュラを容易に変更することはできず、また数量を変更することについても、容易に訴訟に発展することが考えられることから、柔軟な生産調整のための手段とはなりにくい。また価格フォーミュラも契約ごとに異なっていることから、維持すべき目標価格の設定にも困難が伴うことが予想される。 図1 世界の天然ガス貿易(2005年、単位:%)3.422.873.8パイプラインLNG(長期)LNG(スポット)出所:BP統計他から推定 さらに、スポット取引比率が約40%もあり、長距離輸送コストが著しく低い石油と違い、天然ガスは世界単一市場がそもそも確立していない。天然ガスの主な輸出は北米、欧州、極東の限られた消費国に向かっているといったように中心となる天然ガスの国際的な流れが高輸送コストのために事実上分断されており(図2参照)、また特定の国との長期契約が主流であることから、数量や価格に関する交渉は依然2国間で行われる、ということも多く、天然ガス価格の安定化のために国際的な協調が必要である、という認識が産ガス国に広く行き渡っている、という状況ではない。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 4 - }2 天然ガスの主な市場 北米市場 欧州市場極東市場 出所:BP統計他 一方、自動車や航空機のように石油以外の代替的なエネルギー源が乏しい需要が需要の大半を占める石油と違い、天然ガスは発電や産業部門での消費が主流であり、石油や石炭、原子力といった代替エネルギー源との競争に晒されている。現在の様に温暖化ガス排出にかかる環境規制が強くない場合、天然ガスの需要の短期価格弾力性は石油よりも一般的に大きく、例えば英国や米国では2005年の天然ガス価格高騰により、天然ガス需要が大きく減退した(石油需要も価格高騰により減退してきているが、天然ガスほどではない、これはやはり輸送部門という代替エネルギー源を持っていないことも一因であるものと見られる、図3、4、5、6参照)。このため、仮に価格引き上げために天然ガスの供給量を調整できたところで、他のエネルギー源への転換が推進されてしまう可能性がある。 十億cf図3 米国天然ガス需要と価格666564636261605958ドル/百万Btu1098765432200120022003200420052006需要価格出所:BP統計他より推定 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 5 - 坥ハ百万バレル図4 米国石油需要と価格ドル/バレル21.020.820.620.420.220.019.819.68070605040302010200120022003200420052006需要価格出所:BP統計他より推定十億cf図5 英国天然ガス需要と価格ドル/百万Btu9.59.49.39.29.19.08.98.898765432200120022003200420052006需要価格出所:BP統計他より推定日量百万バレル図6 英国石油需要と価格ドル/バレル1.841.821.801.781.761.741.721.708070605040302010200120022003200420052006需要価格出所:BP統計他より推定 また、天然ガス供給については、長期パイプラインや液化基地など計画中なものも含めて潜在的な新規プロジェクトが数多く存在しており、仮にガス版OPECで価格維持のための生産調整を実施したとしても、中期的にそのような潜在的プロジェクト推進を刺激することから、供給能力が増大し、それが天然ガスGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 6 - 汲ノ関して緩和圧力を、価格に対して下方圧力を加えることになる可能性がある(潜在的なプロジェクトが全て実現してしまうと当面LNG需給はかなり緩和することになる、図7参照)。具体的な潜在新規案件には、アラスカ、ないしボーフォート海から米国本土までの長距離パイプライン、カスピ海(特にトルクメニスタン)からEUまでの長距離パイプライン、豪州・パプアニューギニア・ペルー・赤道ギニア等からのLNGがある。これは、1973年のOPECによる最初の人為的価格引き上げ時に、代替油田開発が全く見えていなかった状況と根本的に異なる点である(結果的には、アラスカ、北海その他が出現したが)。 100万トン図7 世界LNG需要と液化設備能力見通し400350300250200150100500200520062007200820092010LNG需要LNG液化設備能力(計画含む)出所:天然ガス関係資料他より推定 また、産ガス国の関心も多様である。ロシアやアルジェリアは欧州市場での安定的な収益確保に興味を持っており、例えばEUによる長期契約の撤廃や仕向地条項の撤廃方針に反対していたが、他の欧州向け輸出がメインでない産ガス国はそのような事項に興味を示さなかった(このため前述の仕向地条項に係る作業部会の活動は低調であったとされる)。一方で、既に大型の天然ガス液化施設に係る投資を行っているカタールは、現在では天然ガスを殆ど輸出していないイランと将来的には消費国市場において競合することになる可能性がある。このような状況から、ガス版OPEC加盟国間での意見調整も容易にはいかない可能性がある。ガス版OPECへの参加国が多くなればなるほど、世界の天然ガス埋蔵量、生産量、そして輸出量に占めるガス版OPEC加盟国の割合が増大するが、その一方で意見調整は極めて困難になってくるのである。また、ロシア、アルジェリアとも、他地域に輸出をしようのない長距離パイプラインによる輸出が太宗を占めており、輸出国がバーゲニング・パワーを持つのと同程度に、買い手側もバーゲンニングパワーを持つ。この状況は、冷戦時代における核戦略の「相互確証破壊」と同じ安定的ゲーム構造であり、一方的な価格引き上げ等は困難である。今回のガス版OPECの提唱者であるイランは、現時点で事実上ガスを輸出しておらず、また近い将来輸出できる見通しも立っておらず、その提唱動機が不明である。 また、OPECは、そもそも1960年前後に世界の石油産業を牛耳っていた大手国際石油会社による石Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 7 - 精ソ格の値下げ、すなわち資源国側からすると「搾取」に対抗するという「正義」実現の目的で設立されたが、今回のガスOPEC構想にはそのような正当性は全く見られないので、この点からも堅固な国際協力体制の形成・維持は困難である。OPECの設立当初は世界の石油需給が緩和基調であったことから、設立後10年間程度は世界石油市場への支配力も限定的であった。それでも石油需給に逼迫感が出てきた1970年代初頭にはOPECは市場に対する支配力を増大させ(OPEC加盟国の世界原油輸出量に占める割合は1973年には87.3%に達した)、1974年の第4次中東戦争に伴うアラブ輸出国機構(OAPEC、OPECの主要中東湾岸産油国も加盟)の非アラブ友好国に対する石油禁輸が石油スポット価格の上昇に寄与し、それが結果的にOPECの公式販売価格の引き上げに寄与した。ただ、結果的には短・中期的には石油価格の引き上げに成功したものの、その後の消費国における省エネルギーの進展、非OPEC産油国による石油生産量の増大等もあり、1986年には原油価格は暴落してしまい、その後OPEC加盟国は財政赤字に苦しむことになった。このようにカルテルによる市場支配は持続可能でないことが多い。他にも銅輸出国政府間協議会(CIPEC:Intergovernmental Council of Countries Exporters of Copper)という国家間カルテル組織があるが、これについても市場支配は成功していないと言われている。このように事実上世界市場が形成されている石油市場におけるカルテル(OPEC)ですら、市場支配は容易ではないのが実情であり、天然ガスにおいては、国際的なスポット取引の活発化や柔軟な取引形態、石油との連動性の薄い価格決定メカニズムや価格の透明性を伴う世界的な天然ガス市場の発達がなされない限り、少なくともその実効性は限定的であり、仮に設立されたとしても、ガス版OPECは当面の間は名目的な存在にとどまってしまう可能性が高いものと考えられる。また仮に世界天然ガス市場が発達したとしても、天然ガスは石油に比べると他のエネルギー源と競合しやすいので、市場支配に係る実効性を向上させるにはさらなる困難が予想される。そもそも、ミクロ経済学においては、カルテルの長期的維持は例外的な場合を除いては困難と理論的にはされているが、特に私企業ではない主権国家同士による国際カルテル形成とその維持は、カルテル維持に必須である抜け駆けに対する懲罰が殆ど不可能であり、また各国の国益が必ずしも輸出収入の増大のみではないことが私企業間のカルテルとは大きく異なり、余計に困難とされている。 ただ、ガス市場の自由化が既に進展しつつある欧州においては、多額の初期投資を適切に回収するために、天然ガス供給契約条件(例えば第三者アクセス権の適用除外)に関し、産ガス国が集団になることによって消費国に対して交渉力を引き上げる手段の一つにはなりうる可能性がある(それでも欧州へ大量に天然ガス輸出を行う産ガス国以外の産ガス国が、このような事項に対して関心を持つかどうかは未知数であり、前述の仕向地条項撤廃のように交渉力向上の面でも効果が限定的となる結果に終わることもありうる)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 8 - ]って、当分の間、名目上はともかく、実効性のある国際カルテル結成はきわめて困難であると結論せざるを得ない。特に、アジア太平洋市場においてはそうである。 以上の議論から、消費国・需要家と上流投資者にとって以下のことが言えよう。 ・ 消費国・需要家:穏健なる警戒感を持ちつつ、資源国側のカルテル形成の動きや、一方的な価格引き上げ等、契約条件、取引条件の改悪の動きに対しては、臆することなく毅然として購入の(部分的)打ち切り、他ソースへのシフト等のカウンターメジャーの意志を示すべきと考えられる。 慌てたり、過剰反応を示すことは、資源国側に、非現実的な自信を深めさせて自ら墓穴を掘ることになりかねない。この場合、中長期的には、資源国側が何れ軟化せざるを得なくなると考えられるが、短期的なダメージを被るおそれ、不必要なトラブルに巻き込まれる可能性がある。 ・ 上流投資者:OPECはカルテルとしてよりも、一方的な国有化等の資源ナショナリズムのプラットフォームとしてより強力に機能した歴史に鑑みれば、ガス版OPECの動きに対しても、純粋のカルテル行為よりもこの危険性の方が大きいと考えられる。従って、資源ナショナリズムに対抗する対抗措置、例えば他地域案件への投資シフト意欲を常時示すこと、契約侵害に対しては断固として訴訟意志を示す事、或いは若干大がかりな話となるが、潜在的投資者の間で、問題行動を起こす資源国に対する高度技術・高度マネジメントノウハウの提供について慎重に扱う事の協定・申し合わせの追求(例えば、今次提唱者のイランのLNG案件に対して)、等が考えられ、これらを事態が発生する前に資源国側に情報発信する事が考えられる(事後では効果が薄い)。 .インプリケーション 4Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 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2007/02/22 野神 隆之 石井 彰
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