ページ番号1003658 更新日 平成30年3月5日

GTL最新動向-再びトラブルに見舞われたOryx Iプロジェクト-

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レポートID 1003658
作成日 2007-06-21 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG技術
著者
著者直接入力 鈴木 信市
年度 2007
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日:2007/06/21 石油・天然ガス調査グループ:鈴木 信市 公開可 GTL最新動向 ‐再びトラブルに見舞われたOryx I プロジェクト‐ 要旨: ・ Sasolが実施するカタールのOryx I GTLプロジェクトは、2007年1月末より商業稼動に入り・4月末にファーストカーゴの出荷を行ったが、トラブルに見舞われ、設計能力3.4万b/Dの25%程度の7,000‐10,000 b/Dしか生産していない。Sasolによると、この原因は、FT工程(FT;Fischer Tropsch)における想定以上のfine material生成にあるというが、fine materialが何であるかを同社は言及していない。同社は、 fine material生成の原因を追求中であるという。同社は、とりあえずの対応策を発表するとともに、 fine material生成量が減少しない限り、設計能力の生産はできない、としており、フル生産の想定可能時期についても言及していない。本件の真相如何によっては、対応に時間がかかり、同プロジェクトに深刻な影響を及ぼす可能性もある。GTLに深い経験を持つSasolのカタールOryx GTLプラントに関わる度重なる不手際は、今後の短期的なGTLビジネスの展開に、悪影響を及ぼす可能性がある。 ・ プロジェクト実施が期待されていたアルジェリアのTinrhert GTLプロジェクトは、同国のエネルギー鉱山大臣の発表によれば、中止の可能性が高くなっている。また、独自のGTLプロセスを開発し・カタールでGTLビジネスを実施しようとしていたConocoPhillipsは、方針転換を行い、ガスマネタイズに関してはLNG等旧来方法を優先し、化石資源のガス化FTプロセスに関してはCoal・Pet coke等を原料とするもので行うとして、カタールのGTLビジネスから撤退することを発表した。いづれも、その理由は、最近のCAPEXの上昇により、プロジェクトによる利益を見込むことができなくなったため、としている。産ガス国及び石油会社双方からのこのような表明は、GTLビジネスの想定されていた進展が、短期的には困難になっていることを暗示している。一方、GTL技術・ビジネスのリーダーの1つであるShellは、カタールのPearl GTLプロジェクトを予定通りに進めるとし、順調に作業を進捗させている模様である。 . 初めに 12006年は、GTLにとり、記念すべき年であった。2006年6月には、カタールのSasolによるOryx I GTLプロジェクトの稼働開始が宣言され、同年7月には、同じくカタールのShellによるPearl GTLプロジェクトの最終投資判断が行われ・プロジェクトが実施されることとなった。ところが、2007年に入り、GTLプロジェクトは出だしでつまずいている。2006年2月、既報(石油天然ガス情報2007年2月26日 「GTL最新動向-ExxonMobilによるカタールのGTLプロジェクトの中止とその考察を中心に-」)の通り、カタールのExxonMobilのPalm GTLプロジェクトがキャンセルされた。その後も、GTLプロジェクトには、明るい話題が少ない。すなわち、2007年1月末に商業生産を開始したばかりのSasol のOryx Iは新たなトラブルに見舞われており、また、GTLの新しいGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 1 - Z術開発を行い・プロジェクト推進にも意欲的であったConocoPhillipsはGTLに対する方針転換を発表し、更に、アルジェリアからはTinrhert GTLの推進中止の可能性が報じられている。 本報告では、この中でも、特に重要なSasolのOryx Iのトラブルについて、Sasolの公式報道と筆者の推定を述べる。ついでConocoPhillipsの方針転換について紹介し、カタール全体のGTLプロジェクトについてまとめ、最後に、アルジェリア、ナイジェリアのGTLプロジェクトについて、最新動向を報告する。 2.SasolのカタールOryx I プロジェクト (1)トラブル発生 2007年5月22日、Sasolのホームページに、以下のような大意のメッセージが掲載された。 「Sasolは、カタールにて、Oryx I GTLプロジェクトを3ヶ月以上稼動させている。2007年4月にファースト・カーゴを出荷した。このサイズ及びこの複雑さの装置では予想されたことではあるが、いくつかの初期トラブルに見舞われた。スーパーヒーターのトラブルに見舞われたが、これに関しては既に解決している。 現在の生産量は、計画数量より少ない。この理由は、プロセスのFTユニットで想定以上のfine materialが生成して、これが、生産量を制約しているからである。fine materialが生成したいくつかの推定原因は特定されている。生産量回復のために、追加装置を2008年中旬までに設置する予定であり、追加装置は発注済である。Sasolは、GTLプロセス運転の長年の経験から、この問題が解決できることを確信している。しかし、fine materialの生成量が減少するまで、Oryx Iプラントの生産量は限定されたものになる。今後、適時、状況は報告していくが、少なくとも2007年9月のSasolの’year end results presentation’には報告を行う。」 この衝撃的な発表の直後、南ア市場におけるSasolの株価は、5%強下落した。 その後、Sasolのchief executiveと業界紙のインタビュー等で判明したことは、次のようなことである。 ・ 現在の生産量は、能力の25%程度で、7,000‐10,000b/D程度である。 ・ Sasolとして、このトラブルは、いわゆる初期トラブル以上の問題と認識している。 ・ 追加装置の設置には、数千万ドルかかる。但し、この対処は、現象に対する対処であって、原因に対する対処ではない。 ・ Sasolは、根本原因を調査しているが、まだ何かいえる状態には無い。したがって、この問題がいつ解決できるかも分からない。 ・ Sasolとしては、触媒に原因は無い、と信じている。 ・ このトラブルは、Sasolが追求しているその他のGTL、CTLプロジェクトには影響を与えない。 ここで、Sasolが「触媒に原因は無い、と信じている」と発言している意味は、もし、触媒にその原因があるのGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 2 - ナあれば、トラブル解決に時間がかかるため、Sasolとしては、触媒に原因は無いと信じたい、ということであろう。 (2)Oryx Iプロジェクトの概要 表1にOryx Iプロジェクトの概要を示す。 プラント場所 GTL事業者 生産規模 生産時期 Ras Laffanコンビナート QP51%/Sasol49% 34,000b/d 2007年1月末<出荷開始:2007年4月末> 現在のプロジェクトの段階 生産中 表1.Sasol Oryx Iプロジェクト 概要 ガス田 North Field ガス田オペレータ ExxonMobil(Al Khaleeg Gas Project) GTLプラントへのガス供給方式 プラント渡し GTLプラントへのガス供給量 330MMCFD 上流 その他 - 898-932百万ドル (一説には950百万ドル) 27,900ドル /bbl/d 700百万ドル Royal Bank of Scotlandを中心とする15銀行団 Technip-Coflexip 契約額675百万ドル (その後725百万ドルに変額) ディーゼル:24,000 b/d ナフサ:9,000 b/d LPG:1,000 b/d 軽油:欧州、ナフサ:アジア GTL投資金額 CAPEX/bbl/D ファイナンス GTL事業 EPCコントラクター 製品 製品市場 ガスは、900TCFの埋蔵量があるといわれるカタールのノースフィールドからのガスである。プロジェクトは、ShellのPearl GTLプロジェクトのような上流事業とGTL事業が一体化したプロジェクトではなく、原料ガスを購入してGTL事業を行う、GTLのみのプロジェクトである。プロジェクト実施主体は、QPが51%、Sasolが49%のジョイントベンチャーである。しかしながら、プロジェクト資金は全てSasolが手当てすることになっている。330MMCFDの原料ガスは、ExxonMobilがオペレーターを務めるAl Khaleeg Gas Projectから購入される。定常Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 3 - 桙フGTLプラントからは、ディーゼル2.4万b/D、ナフサ0.9万b/D、LPG0.1万b/Dの合計3.4万b/Dが生産されることになっている。 (3)Oryx Iプロセスの概要 GTLプロセスは、図1のように、合成ガス製造、FT合成、水素化分解・蒸留という3つの工程から成っている。 図1. GTLプロセスフロー 概念図 合成ガス工程では、天然ガスがCOとH2の混合ガスである合成ガスに転換される。次のFT合成工程では、合成ガスがC1-C100程度のひろい分布を持つ炭化水素になる。このうち、C20以上の炭化水素は、室温で固体となるワックスであるが、灯軽油留分を多く取るために、ワックスは次の水素化分解工程に導入されて炭素数のより少ない炭化水素に分解される。最終的に、これらの生成物は蒸留されて、ナフサ、灯油、軽油等の製品になる。Sasol(あるいは、SasolChevron)のGTLプロセスは、次のような3つの技術の組合せである。すなわち、合成ガス工程は、Topsoe社のATR技術(Auto-Thermal Reformer 自己熱改質器)、FT合成工程は、Sasolのスラリー床FT技術、水素化分解工程は、Chevron社のHydroCracking技術である。FT反応は発熱反応であり、かつ温度に敏感な反応であるので、除熱と温度制御が重要である。SasolのFT反応器は、除熱と温度制御に優れたスラリー床を採用している。スラリー床FT反応器の概念図を図2に示す。 - 4 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 }2.スラリー床FT反応器 概念図 スラリー床のFT技術では、反応器中に、溶媒である鉱油にFT触媒が懸濁しており、反応器下部から入った原料ガスはバブルとなり、溶媒中を上昇していく過程で、FT反応により炭化水素に転換されていく。反応熱は、溶媒を通して、反応器に導入された水蒸気管で除去される。FT触媒は、シリカやアルミナを担体とするCo系触媒が用いられる。スラリー床FT触媒は、反応・溶媒への懸濁・製品と触媒との分離等の観点から、形状や大きさに制限があり、形状は球状で、大きさは、20-200μmの範囲といわれている。また、触媒は、反応の最中に、反応器の壁・インターナル、あるいは触媒同士で激しくぶつかり合うため、そのようなストレスがかかっても磨耗しないように、充分な強度を持つ必要がある。Oryx IプロジェクトのFT工程は、1基が生産能力1.7万b/Dの生産能力を持つFT反応器2基で構成されている。1基の反応器は、径10m、高さ60m、重量2000トン以上である。Sasolは、南アフリカにて2,500b/Dのセミコマーシャルプラントを動かしており、そこから約7倍のスケールアップを行い今回の商業規模反応器としている。 (4)いままでの経緯 実は、Sasolから公式的な発表があった1ヶ月以上も前の4月10日に、Oilgram Newsでは、Oryx Iプラントの生産中断を報じていた。 Oryx Iプロジェクトは、2006年6月に稼動開始を宣言している。これは、原料ガスを用いた試運転を行うコミGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 5 - bショニングが開始された時期と考えられる。この時点では、3ヶ月後の2006年9月に商業生産開始と見られていた。しかしながら、コミッショニング時にスーパーヒーターの破損等のいくつかのトラブルが発生した結果・生産開始が遅延し、商業生産開始が宣言されたのは、2007年1月末のことである。その後、商業稼動に移行したわけであるが、関係者の間では、Oryx Iプラントは順調に動いていないとする、いろいろな噂が飛び交っていた。また、2007年4月末に、Oryx Iプラントからfirst cargoが出荷されたはずであったが、そのことがなぜSasolから大々的に報じられないのか、関係者を訝しがらせていた。このOryx Iプラントからの本年4月のfirst cargoの出荷はSasolにより確認されたが、その量も販売先も明かされていない。first cargoの量は、3万トン程度(約20万bbl)と推定されている。 (5)推定:Oryx Iプラントで何が起こったのか FT工程で生成したというfine materialとは何であるか、現時点ではSasolからの説明は無い。fine materialが何であるかはともかく、細かい粒子がFT工程で大量に生成した場合、溶媒・生成物と、触媒やfine materialとを分離するフィルターを短時間で詰まらせ、あるいはフィルターで分離することができず、後段の水素化分解・蒸留工程にfine materialが入っていくことも考えられる。今回のとりあえずの対処として追加設置されたのは、おそらくfine material を後段の水素化分解・蒸留工程に搬送されないようにする追加の固液分離装置であろう。fine materialの候補として考えられるのは、a.上流のATRで生成したカーボンの流入、b.高温・高圧下のFT工程で固体状態となっている副生成物、c.触媒磨耗等により生成した触媒砕片、等である。このうち、fine materialとして最も可能性が高い候補は、三番目の触媒砕片であろう。もし、触媒砕片が生成したとすれば、その原因は、d.FT反応器内に異常流が発生し、触媒に想定以上のストレスがかかったか、e.触媒そのものの強度が不足していたか、f.あるいは、d及びeの両方か、が考えられる。eの触媒強度不足の原因に関しては、g.触媒のレシピに基づき大量生産を行う工業触媒製造時の失敗による場合、h.触媒レシピそのものに問題がある場合、が考えられよう。いづれにしても、fine material生成に関して触媒にその原因がある場合、触媒を製造し直すとともに、装置を止めて・触媒を反応器にチャージし直すことが必要なことから、プロジェクトに費用と時間の両方のインパクトを与えることになる。fine material生成とは触媒砕片の発生なのか、触媒砕片の発生であるとすれば、その原因が触媒側にあるのか・反応器側にあるのか、現時点では推測するしかないが、セミコマーシャルプラントで、触媒・反応器・プロセスの実証を行い/商品生産を行っていたにもかかわらず、8倍程度のスケールアップでこのような新たな重大な問題が発生することは、通常はあまり考えられない、といえよう。 (6)トラブルの程度とその影響 反応を伴うケミカルプラントにおいて、運転初期のトラブルはつきものである。但し、Sasolがこのような異例ともいうべき発表を行ったのは、事態の深刻さを暗示しているとも考えられる。このトラブルがどのような影響を及Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 6 - レすかを、いくつかの面から検討してみよう。 ①Oryx I向けガス 原料ガスの購入契約の契約内容は、不明である。もし、Take or Pay条項があるとすれば、規定された天然ガス引取量からの不足分をも、Sasolは支払うことが必要になる。逆に、販売側のAl Khaleeg Gas Projectサイドからみれば、ガス取引量の不足に対して、ガス生産量を絞るか、あるいは他の購入先に売るかのオプションを取る必要がある。なお、Oryx I GTLプロジェクトによる購入不足分は、2007年6月からアブダビ・ドバイ向けに正式に供給が開始されたDolphin パイプラインプロジェクトに販売される、との情報もある。 ②カタール政府・QP 現時点までのところ、今回のトラブルに対する、一方の当事者であるカタール政府・QPからの発言は無い。ただ、これまでOryx Iプロジェクトを襲った一連のトラブルに関して、Sasolは、カタール政府・QPに適時・適切な情報提供を行っておらず/カタール政府・QPは今までのSasolの対応に対して不信感を持っている、との噂もある。いずれにしても、’GTL Capital in the world’を目指すとしている同国の今後のGTL戦略に対する本件の影響は不可避であろう。 ③Sasolの他のGTL・CTLビジネスへの影響 Sasolは、本件がSasolが実施計画中の他のGTLやCTLビジネスに影響を与えることはない、と主張している。 ④Shell社のPearl GTLプロジェクト 2006年7月にカタールでのGTLプロジェクトの最終投資判断がなされたShellのPearl GTLプロジェクトへの本件の影響に対して、Shellは、「当社のFT反応器は、固定床反応器である。また、Shellは、FT触媒に関して、100%自社で開発製造している。今回のSasolのようなことは、Pearl GTLプロジェクトには起こらない」とし、同社のプロジェクトは、オンスケジュールで進んでいることを強調している。 ⑤GTLプロジェクトのファイナンサー 本件は、GTLプロジェクトのファイナンサーに対して、GTL技術が現時点では未熟なものであり、ファイナンスに際しては、完工保証を取ることの重要性を再認識させた。 ⑥GTLプロジェクト GTLに関して、Shellとともに最も経験が深いSasolが行うOryx I GTLプロジェクトの度重なるトラブルは、現時点でのガスマネタイゼーションツールとしてのGTLの評価に悪影響を及ぼし、GTLプロジェクトの進展に対しては、少なくとも短期的にはマイナスの効果を及ぼす可能性があることは否めない。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 7 - .ConocoPhillipsのGTLに対する方針転換 ConocoPhillips社は、独自のGTLプロセスの技術開発を1997年より実施していた。同社の合成ガス製造プロセスは、接触部分酸化反応(Catalytic Partial Oxidation : CPOXと略す)により天然ガスを合成ガスに転換する方法を用いている。この技術は、反応器を非常に小さくし・コストも低減させると言われている。また、FT反応プロセスは、Co系触媒を用いたものを用いるものであるという。 ConocoPhillipsは、同社の独自のプロセスを用いた400b/Dデモンストレーションプラント実験を、製油所のあるオクラホマ州Ponca cityにて、2003年第3Qから実施していた。プロジェクトに関しては、2003年12月に同社はQPと16万b/DのGTLプロジェクト実施について合意(SOI)しているが、後ほど説明するように、同プロジェクトは、2005年4月から、カタール側が指定するモラトリアムのリストに挙がっていた。 ところが、ConocoPhillipsは、2006年末に、カタールGTLの計画を延期することを表明した。同社としては、今後、ガス開発においては、よりLNGに軸足を移すという。その理由としては、GTLは現在は経済性確保が困難で・クリアーなビジネスが見えないこと/現在の状況で経済性を確保しようとしてスケールメリットを追求すると、投資額があまりに莫大になることを挙げている。さらに、2007年3 月、Chairman and Chief Executive のJim Mulva氏は、GTLプロジェクトの推進を中止する代わりに、coal, bitumen, pet coke等を原料とするガス化+FTベースのプロセスに専念することを表明している。 3.カタールのNorth Fieldの埋蔵量評価とGTLプロジェクト動向 カタール政府は、天然ガス資源管理の観点から、2005年4月、North Fieldを用いるいくつかのガス利用プロジェクトのモラトリアムを発表した。その要因は、North Fieldの埋蔵量にあり、「25BCFDを100年間生産することは可能か?」という観点から、リザーバースタディーを実施するということであった。GTLプロジェクトについては、提案されていたGTLプロジェクトのうち3つのプロジェクトを、North Fieldのリザーバースタディー等の作業にあわせて、最大3年遅延させるとしていた。また、モラトリアムした3つのプロジェクトのその後の取り扱いについては、ノースフィールドの埋蔵量評価作業が終了した後に決定する、とした。決定の具体的な時期に関しては、当初予定の2007年央から遅れており、現時点では、2012年との情報がある。 現在実施中であるNorth fieldのreserveスタディーに関しては、次のような中間的コメントもある。 「North fieldのreserveは、以前に考えられていたような、homogeneousなものではないことが理解された。すなわち、フラクチャアーがあり、沢山のwellやenhanced extraction技術が必要。そのため、開発コストが上昇する。また、あまりに早いガス生産は、ガス田の寿命を短くする。」 カタールにおけるGTLプロジェクトの一覧を表2に示す。 - 8 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 表2.カタールにおけるGTLプロジェクト一覧 プレーヤー プロジェクト名 状況 Sasol (SasolChevron) Shell Oryx 1 Oryx2 ベースオイル Pearl ExxonMobil SasolChevron ConocoPhillips Marathon Palm Oryx3 - - 生産中 MOU MOU 建設中 中止 MOU 中止 意向表明 計画生産量 (千b/d) 34 668.5140(2フェーズ各70)154130160(2フェーズ各80)120生産開始時期 備考 2007.1(生産開始) 2009(遅延見込み) 2008(遅延見込み) 第1フェーズ:2010 第2フェーズ:2011 中止 モラトリアム (当初計画:2010) 中止 GTLのみのプロジェクト上流・GTLプロジェクト 上流・GTLプロジェクト 上流・GTLプロジェクト 上流・GTLプロジェクト モラトリアム (当初計画:2008) 上流・GTLプロジェクト 実施が認められていたプロジェクトの中から、ExxonMobilのPalm GTLプロジェクトが中止になり、モラトリアムされていたプロジェクトの中から、ConocoPhillipsのプロジェクトが消えている。 カタールは、GTL Capital in the worldになる、という看板は下ろしていないものの、当面の間、当初の見込みより大幅にGTLプロジェクトは減少することになろう。すなわち、生産能力として、当初目標に掲げていた70万b/D@2012という数字が、現時点では、SasolのOryx I GTLプロジェクトとShellのPearl GTLプロジェクトを併せた量の17.4万b/D@2012になると考えられる。 4.その他のGTLプロジェクト (1)アルジェリア Tinrhert GTLプロジェクト アルジェリアのSonatrachは、2004年12月、上流開発と統合したGTLプロジェクトの計画を発表した。これは、リビア国境近くのTinrhert フィールドの油ガス田開発(ウェットガス田・油田開発等)と湾岸(場所はArzewが有力)での36,000b/D GTLの一体化プロジェクトであり、上流を含めた合計コストとして30億ドルという投資金額が予想されていた。このTinrhert GTLプロジェクトに対して、2005年4 月にアルジェリア政府はテンダーを開始し、これに対して、Statoil/BHP/PetroSA、Shell、SasolChevronの3社(チーム)が入札を表明していた。 ところが、2007年に入り、現時点では本プロジェクトの経済性は成り立たないとして、Shell及びBHPが入札の意向を撤回した。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 9 - 齦禔Aアルジェリアのエネルギー鉱山大臣であるChakib Khelil氏は、2007年4月、Gas exporting Countries ForumでTinrhert GTLプロジェクトに対して、以下のような発言をしている。 「アルジェリアは、Tinrhert GTLプロジェクトを中止する決定をするかもしれない。その理由は、3.6万b/DのGTLがあまりに高すぎるからだ。」 なお、Statoil、SasolChevronは、引き続きTinrhert GTLプロジェクト実施の意欲を示しており、また、Shellも、Tinrhert GTLプロジェクトからは撤退するものの、アルジェリアでのGTLプロジェクト実施に関しては興味を持っている、と発言している。いづれにしても、最近のプラントコスト上昇が、本プロジェクトの進展に関しても、影響を与えている。 (2)ナイジェリアのEscravos GTLプロジェクト Escravos GTLプロジェクトは、ナイジェリア国営石油会社(NNPC;Nigerian National Petroleum Corporation)とChevronがナイジェリアの随伴ガス300MMCFDを利用して、OryxIプロジェクトに用いている同等のプロセスにて、GTLを34,000b/D生産するものである。現時点の稼動開始予定は、2009年12月と言われている。 現在、EGTLプラントはKBRをコントラクターとして建設中であるが、地元労働者の暴動等に見舞われ、度々中断している。 このEGTLプロジェクトの進捗に関して、2007年4月に、 NNPCのgroup managing director のKunso Kupolokum氏による、「EGTLは2006年末時点で、32%完成している」との談話があった。本発表の真偽のほどは定かではないが、EGTLプロジェクトは、建設段階のトラブルを被りつつ、粛々と進められている、と考えら以 上 れる。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 10 -
地域1 グローバル
国1
地域2 中東
国2 カタール
地域3 アフリカ
国3 アルジェリア
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル中東,カタールアフリカ,アルジェリア
2007/06/21 鈴木 信市
Global Disclaimer(免責事項)

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