ページ番号1003681 更新日 平成30年2月16日

ロシア: シュトックマン・ガス田へのTotalの参加とロシア北極海の資源ポテンシャル

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レポートID 1003681
作成日 2007-08-23 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発
著者 本村 真澄
著者直接入力
年度 2007
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日:2007/8/23 石油・天然ガス調査グループ:本村真澄 ロシア: シュトックマン・ガス田へのTotalの参加とロシア北極海の資源ポテンシャル ・シュトックマン・ガス田(埋蔵量131兆cf)の開発については、種々の技術的困難から、これまで外資を導入する方針が採られており、Norsk Hydro、Statoil(ノルウェー)、Total(仏)、Chevron、ConocoPhillip(米)の5社がパートナーの候補であったが、2006年10月にロシア政府は一旦これを破棄した。その後、交渉が再開され、2007年7月にTotalが25%参加することで合意した。 ・ライセンスはガスプロムの子会社である”Sevmorneftegaz”が100%保有し、操業を委託する「特別目的会社」をJVで設立して、Totalがその25%の株式を保有するという形態をとる。この場合、Totalはコストとリスクを負担することから権益分の埋蔵量を資産として登録できる可能性があるとされる。 ・国有石油企業(NOC)が生産ライセンスと全埋蔵量を保有する一方で、国際企業(IOC)が油ガス田権益を保有しないままコストとリスクを負担してパートナーとして参加する際、将来的に取得可能な分の埋蔵量に関してはIOCとして埋蔵量登録が可能になるというビジネスモデルは、資源ナショナリズムの高揚しいてる状況に対応した新しい形態であり、注目される。 ・バレンツ海やその東のカラ海には多くの油ガス田が既に発見されており、シュトックマンに続いて更なる開発の予定が控えている。2010年代~2020年代に、ロシアの北極海開発は活発化すると見られる。 ・国連海洋法は、200海里までの大陸棚に対する沿岸国の主権的権利を認めている。北極海の大陸棚においては、ロシアの大陸棚が270万km2と、面積的に半分強を占め圧倒的な存在となっている。また、氷象条件は、米国(アラスカ)沖、カナダ沖、デンマーク(グリーンランド)沖に比較して、ロシア及びノルウェー側のバレンツ海ではメキシコ湾流が流入し冬季も結氷しないことから遙かに優れており、シュトックマン・ガス田開発を先頭に北極海でのエネルギー開発で先行している。 ・自国の大陸棚の縁辺部については、「国連大陸棚の限界に関する委員会」の検討を経て勧告を受けるならば、200海里を超えて延伸させ、主権的権利を行使することができる。ロシアは既に2001年に同委員会に申請し、追加的に北極点までを含む海底、海底下の調査を繰り返し実施している。その主張する大陸棚の範囲は、北極点を含み、ロモノソフ海嶺からチュコト海台に至る総面積120万km2に及ぶ広い範囲である。この区域は大水深で且つ海氷の下にあり、当面は石油・ガス開発の対象とはならないが、北極海沿岸諸国は先行して法的整備を行う段階に入っている。 . ガスプロムとTotal-シュトックマン・ガス田開発へ25%参加 (1)シュトックマン・ガス田のこれまでの動き 1シュトックマン・ガス田は、ムルマンスクの北東沖合い約550km、バレンツ海のほぼ中央の水深約330mの地点に位置し、1988年にガスプロムにより発見された。可採埋蔵量は現時点で3.7兆m3(131兆cf)あり、同じロシアのザポリヤルノエ・ガス田を抜いて世界で第7位、北極海大陸棚では最大規模の超巨大ガス田である。同海域は冬季は結氷はしないが流氷が多く存在する。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 1 - Kスプロムはこれまで、総事業費300億ドルに上るシュトックマン・ガス田の開発とLNG事業について、技術力から見て単独事業が困難であることから、その49%の権益に関して、これまでノルウェーのNorsk HydroとStatoil(両社は2007年10月合併予定)、仏のTotal、米のChevronとConocoPhillipsの海外5社を対象にパートナー選定を進めていた。しかし、2006年の10月9日、パートナーを参入させずガスプロム100%の単独事業として遂行すること、及びLNGとして主に米国に輸出する計画を撤回して“Nord Stream”パイプラインでドイツを中心とする欧州へ輸出する方針とすることを発表した(図1参照、IOD, PON, 2006/10/10)。これは、相互主義に基づき各社の提案した交換用資産の内容が不十分なための決定であるという。但し、翌日のプーチン大統領談話では、交換資産の重要性を強調するとともに、LNG製造プロセスとマーケティングにおいて外資の参入を除外しない旨付け加えLNG計画も放棄していないことを明言している(Mosocow Times, 2006/ 10/11)。 これに対してTotalは、利権を持ち生産・販売によって利益を得るのが石油企業であって、下請けとして同プロジェクトに参加する意向はなく、ガスプロムは大陸棚開発もガス田からの輸送も実績がなく、オペレーターとなった場合には工期・予算とも計画通りに運ばないリスクがある(Kommersant, 2006/10/13)として、下請け企業としての参加は拒否してきた。一方で、Totalはバレンツ海でのガス田開発経験のあるStatoilや、米系メジャーズに比較して、海外にいくつかのLNG再ガス化施設を持つ程度であり、北極海の操業経験もないことから、提供できる技術という点で5社の中で最も弱いと見なされていた。 (2) Totalのシュトックマン・ガス田開発への参加 2007年の7月12日、ガスプロムはバレンツ海のシュトックマン・ガス田開発のパートナーにTotalを選択し、Totalはガス田権益は持たないが、ガス田の「特別目的会社(Special Vehicle Company)」の株式25%を保有すると発表した。これは、前日11日のサルコジ大統領とプーチン大統領との電話会談の結果を受けての方針である(PON, IOD, 2007/7/13, 日経, 産経, 2007/7/14)。TotalのCEOであるChristophe de Margerieは13日モスクワで、ガスプロムのAlexander Ananenkov社長代行、SevmorneftegazのTury Komarov社長とともに枠組合意書(Framework Agreeemnet)に調印した。「特別目的会社」は、2007年中にも設立され、ガス田の開発計画の策定、資金調達、開発工事、操業を請け負う。但し、現時点でのTotalのコミットはあくまでFSへの参加までで、最終的な投資決定は2009年以降となる(PON, 2007/7/16)。 Totalの参加は2009年から第1フェーズの25年間で、天然ガスの生産開始は2013年、第1フェーズの事業総額は推定150億ドルで、その内Totalの投資額は40~50億ドルの見込みである。Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 2 - 謔Pフェーズ終了後はロシア側へ操業会社の株式を返還することになっている。支出は2009年から2013年までの当初の4年間に集中する。 天然ガスの生産量は、2013年の生産開始時に237億m3/年、コンデンセート20.5万トン/年、プラトーとして年産710億m3/年、可能性として940億m3/年と言われている。LNGは2014年から生産開始を計画しており、第1段階で750万トン/年、コンデンセート60万トン/年、第2段階の2020年には3,000万トン/年を想定している(Interfax, 2007/5/15)。生産開始後は、Totalは現物ではなくキャッシュを受け取る。ガスプロムによれば、その後のフェーズ2~4は自社で取り組む方針である(IOD, 2007/7/16)。特別目的会社は当面ガスプロムが75%を保有するが、他の外資に対して別途24%譲渡する可能性もあり、ノルウェーのStatoilおよびNorsk Hydroの参加の観測がある。西方のバレンツ海ノルゥエー側ではStatoilのSnohvitガス田が10月生産開始予定(Totalも18.4%の権益保有)であり、ノルウェー勢は北極海での経験が豊富であることから、その技術の導入は現実性がある。 図1 シュトックマン・ガス田とNord Streamガスパイプライン(破線は計画中のもの) (3) Totalによるシュトックマン・ガス田の埋蔵量登記に関して - 3 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 Vュトックマン・ガス田の開発ライセンス・権益は、ガスプロムの子会社である”Sevmorneftegaz”*が100%保有する。同ガス田の3.7兆m3のガス及び3,100万トンのコンデンセート埋蔵量に関しては、Totalが事業リスクを背負っていることから、その25%の埋蔵量に関して自社分として登記することが可能であるとde Margerisは述べている(IOD, 2007/7/16)。 *)同社は2001年10月、バレンツ海のシュトックマン・ガス田,Prirazlomnoye油田、そして西シベリアのKharampur、Yety-Purov、Vyngayakhinの3油田を操業するために、ガスプロムとロスネフチとのジョイントベェンチャー企業として設立された。ロスネフチはロシア石油企業としては、最もガス埋蔵量が多く、ガス開発の効率化を目指したものであった。2004年12月にユコスの子会社ユガンスクネフテガスが競売に掛けられた際に、バイカル・ファイナンス・グループという無名の会社がこれを落札して注目を集めたが、入札の参加費用17億ドルを工面したのがロスネフチであり、”Sevmorneftegaz”の保有株式25%をガスプロムに買い取って貰い調達したものである。この後、ロスネフチは同グループを買収した。ロスネフチとのJVが解消されたことにより、以降同社はガスプロムの100%子会社となった。 このようなビジネス形態においては、例えば米国のSEC(Securities and Exchange Commission)基準においては、ガス田に対するコントロール力が持てないことから埋蔵量登記は困難とする見方がある(IHT, 2007/7/14-15)一方で、OIESのJonathan Sternは、投資に対する見返りが確実なことから埋蔵量登記は可能との解釈を行っている(MT, 2007/7/13)。また別の弁護士は、通常はガスプロムが全埋蔵量を登記するが、Totalが「極めて技術的な手法」を用いることによって登記出来る可能性があるとしている(PON, 2007/7/16)。 FTのエネルギー評論家Pierre Noelは、ライセンスを国有企業が100%を保有し一方で実際の操業会社にTotalが25%参加するという事業形態に関して、リスク・コスト負担、事業支配権に関しては通常の参加形態と全く同じであるにもかかわらず、本質的な違いがあり、新しい資源ナショナリズムの時代にあっては、プロジェクトの経済性を確保しつつ国有企業の支配する埋蔵量にアクセスするには、国の資源という象徴性に配慮することがビジネス上重要と述べている(FT, 2007/8/10)。 この事業形態は、同じくTotalが1997年以降イランに保有しているサウス・パースガス田のビジネス・ストラクチャーに類似していると言われる(IOD, 2007/7/13)。 (4) ガスプロムによるシュトックマン・ガス田の開発計画 シュトックマン・ガス田は、ムルマンスクの北東555kmに位置し、水深320-340mの大陸棚において1,400km2の構造面積で広がっている。ジュラ系の5枚の砂岩を貯留岩とし、帽岩は同時代の泥岩である(図2)。天然ガスの可採埋蔵量は3.7兆m3(131兆cf)、コンデンセートの可採埋蔵量は3,100万トGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 4 - 唐ナある。1988年に発見され、2006年9月に、評価7号井の掘削を完了した。 発計画については、公表されていないが、Offshore-Technology誌のwebsiteによれば3ないし4基 開のTLPまたはSpar-typeのプラットフォームを置き(図4)、そこから生産井144坑、観測井3坑、予備井9坑の合計156坑を掘削するとしている(図3,http://www.offshore-technology.com/projects/shtokman/)。8月に、ガスプロムはバルト海にあるVyborg造船プラントと、シュトックマン用の2基の掘削プラットフォーム建造の契約結んだ。価格は590億ルーブル(23億ドル)、納期は3年後の2010年である(Bloomberg, 2007/8/17)。2013年からのガスの生産開始というスケジュールから見て十分な時間を取っているというこGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 5 - 図2. シュトックマン・ガス田の地質断面図。白い部分がジュラ系砂岩層(4層)。端水は2段ある。 (Source: Offshore-Technology.com) ニであろうか。更に、4基の追加発注もあり得るとガスプロムのValery Golbyov副CEOは述べている。 図3. シュトックマン・ガス田の評価井と生産井の配置 (Source: Offshore-Technology.com) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 6 - }4 シュトックマン・ガス田のTLPとSpar-typeプラットフォーム (Source: Offshore-Technology.com) 図5. ガス田からTeriberkaの陸上施設までのパイプライン敷設概念図。海底地形はかなり平坦でない。左側のルート1が選択された。(Source: Offshore-Technology.com) - 7 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 Kス田からLNG基地のあるムルマンスク近郊のTeriberkaまで565kmの陸揚げ用のパイプラインを敷設することになる(図5)。Offshore-Technology誌のwebsiteによれば42インチ径4系列としている。圧力は井戸元で19MPであるが、途中加圧ステーションが置けないことから、基地の手前で6MPまで減衰する(同上)。フィールド・コンデンセートは井戸元で分離するが(図4)、パイプライン輸送中の減圧でもコンデンセートが形成され、天然ガスとコンデンセートの2相流でTeriberkaまで送らなくてはならない。パイプ中の液溜り(slug)が安定的なガスのフローを阻害する恐れがある。この2相流での輸送は、Snohvitガス田における150kmというのが最長記録となる見込みであるが、シュトックマンにおいては565kmと、これを遙かに凌ぐ規模である。「2相流問題」に関する懸念は、ロシア側でも指摘されている(RusEnergyのコンサルタントKrutikhin氏による)。このような条件下でのパイプライン操業は克服すべき多くの技術的問題を抱えることになる。 北極海の操業であること、水深が300mを超えること、陸地まで世界最長の区間を2相流で運ばなくてはならないこと、そしてLNGを生産すること、これらはいずれもロシアとしては未経験の技術であり、西側の技術導入が必要である。 更に、現場までの約550kmはヘリコプターでの航続距離を超えており、交替要因も資機材と同様に船で輸送することになる。海象は荒れ勝ちであり、操業の困難さは他の油ガス田の比ではない。 (5) シュトックマン・ガス田開発に係わるガスプロムの予算 ガスプロムの2007年度予算は、昨年12月に対前年比43%増の197.8億ドル(5,317.8億Rb)とし、その内、シュトックマン・ガス田の2007年の開発予算は、6.36億ドル(171億Rb)とされ(PON, 2006/10/27)、12月に承認された。しかし、暖冬で欧州におけるガス販売量・販売価格ともに低迷したことから、2007年5月に一旦予算を約30%削減し、シュトックマンに関しては3.20億ドル(86億Rb)とほぼ半減の扱いとなった。その後、8月に入って2007年度に関して再び予算を当初認可予算の47%増の307億ドル(7,793.5億Rb)と増額することを決定したが、この内シュトックマン・ガス田に関しては削減したまま据え置きとなった(Interfax, 2007/8/10)。これは、シュットックマンの生産開始が当時いわれた2011年から2013年(LNGは2014年)になっており、特段急いで開発する必要性がないためと思われる。 (5) サルコジ-プーチン時代のロ仏関係 今回の合意は、サルコジ・プーチンの両大統領の電話会談によるものであり、両者の緊密な関係が成果を挙げている例と言える。この合意に際しては、サルコジ大統領がGaz de France(GdF)の権益やSuez社の保有する米国マサチューセッツ州Everett、ベルギーZeebruggeのLNG再ガス化施設の一部権益譲渡を約束したとの噂がある(IOD, 2007/7/19)が、ガスプロムは直ちにこれを否定しGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 8 - ス(Moscow Times, 2007/7/19)。 とは言え、欧州における基本的な流れとして、ドイツやイタリアに続いて、ロシアとフランスとの関係もより緊密化を強めていることは確実である。サルコジ大統領の当選前のことであるが、 2006年12月19日、GdFは天然ガスの長期供給契約でガスプロムと合意している。これは、契約を2030年まで延長し、既往契約量である年間120億m3をNord Streamの稼働開始を受けて2010年から更に25億m3上乗せし、また2007年10月からフランス国内のエンドユーザーに対して年間15億m3を上限にガスプロムが直接販売できるとするものである(PON, IOD, 2007/12/20)。これは、2005年から2006年にかけての、ドイツ、オーストリア、イタリア等とのガスプロムの長期供給契約の最後となるものであるが、ロシアと欧州主要国とはガスの取引を通じて、いずれも緊密な関係に入っている。 . バレンツ海・カラ海におけるロシアの石油・ガス開発と資源ポテンシャル 2(1)バレンツ海での油ガス田開発の動き(図6) バレンツ海では、シュトックマン・ガス田が最大であるため、当初からこのガス田の開発が最優先であったが、長期的には他の油ガス田の開発も視野に入っている。 ロシアの独立系ガス企業Sintezは、ガスプロムに対してバレンツ海の有望鉱区を所有する子会社Sintezneftegazの株式の50%+1株を譲渡することを提案した。対象鉱区は既発見のAdmiral Teysky油ガス田(推定埋蔵量:石油21億バレル、天然ガス21兆cf)及び未試掘のPakhtusovsky構造である。これは連邦地下資源局(Rosnedra)がライセンスの取り消しを検討し、一度はSintezが裁判に訴えて却下させたものの、連邦地下資源局からは再度ライセンスの取り消しを迫られているためで、ガスプロムに探鉱・開発を委ねようとするものである(IOD, 2007/8/08)。ノルウェーとの係争海域内にも油田が存在すると言われる。 更に、カラ海ではヤマル半島の北西大陸棚に、ヤマル半島ガス田列の延長上にRusanov、Leningradの2つの巨大ガス田が発見されており、Bovanenkovガス田が2010年頃に生産開始となった後、海底仕上げによって同ガス田を起点とするYamal-Europeパイプラインへの繋ぎ込みが可能となる。ヤマル半島には、Bovanenkovの近隣の陸域に2つの未開発巨大ガス田(Kurzenstern、Kharasavey)があることから、開発順序としてはこれらの後になり、時期の特定は困難であるが、2020年代の開発対象と言えよう。 同じくSevmorneftegazがライセンスを保有するペチョラ海のPrirazlomnoyeは、2008年の後半に原油生産を開始する予定である(PON, 2007/8/16)。 - 9 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ロシアの北極海における石油・ガス資源量に関しては、アメリカ内務省・地質調査所が2000年に行った調査(USGS 2000)がある。表に見るとおり、基本的に石油は多くなく、バレンツ海及び西シベリア(West Siberia)の海域、即ちカラ海の天然ガス資源量が抜きんでており、合計してロシアの北極海大陸棚だけで、石油は38億バレル、天然ガスが650兆立方フィート(石油換算で約1,000億バレル)と報告されている。多くの報道で、石油・ガスの埋蔵量を100億ト(CNN/AP, 2007/8/02)、即ち約730億バレルとしているが、整合性のある推定である。 バレンツ海は陸域で発達しているティマン=ペチョラ堆積盆地の、カラ海は西シベリア堆積盆地の北方延長にあたり、堆積物の時代は新しくなって行くが、基本的に同様の地質条件を有している。Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 10 - 図6. ロシア側北極海大陸棚付近の主要ガス田(JOGMEC作成) 2)ロシアの北極海大陸棚の地質ポテンシャル (サして、陸域の非常に豊富な炭化水素ポテンシャルが北方海域まで延びている。より東方のラプテフ(Laptev)海、そして東シベリア海は大陸棚を形成しているが、バレンツ海、カラ海と異なり、陸上に大規模な堆積盆地の発達がなく、堆積物の厚さは十分ではないと思われる。 表: ロシアの堆積盆地別埋蔵量:北極海の資源量は石油換算で約1,000億バレル 堆積盆地 Timan-Pechora Volga-Ural Barents Sea West Siberia East Siberia North Sakhalin Others Total 石油(単位10億バレル) 未発見埋蔵量 合計 海域 5.7--2.50.30.355.23.52.8-2.42.68.34.911.177.4陸域 5.7 2.5 - 51.7 2.8 0.2 3.4 66.3 既発見 埋蔵量 9.8 21.2 0 93.4 2.3 1.4 9.4 137.5 既発見 埋蔵量 24.382.870.01,051.635.222.2124.11,410.2% 7 3 0 714 3 11 天然ガス(単位兆cf) 未発見埋蔵量 海域 合計 - - 249.1 403.9 - 54.3 63.5 770.8 陸域 52.13.9-239.163.03.136.8398.052.1 3.9 249.1 642.9 63.0 57.5 100.2 1,168.7% 5 0 21555 5 9 ロシアの海洋石油ガス開発、特に北極圏大陸棚への取り組みに関して、現状では政策において不透明な面を多く残している。まず、地下資源法の改正に関しては、2006年に下院に提出したものの取り下げたまま一向に進まず、今後の海洋鉱区でのライセンス付与のスケジュールが立っていない状況である。また、東シベリアと同様の石油抽出税の免除措置を北極海において適用するか否かという問題に関しては、フリステンコ産業エネルギー大臣が前向きで、プーチン大統領も5月には海洋に関してこれを適用する可能性を排除しないと発言しているが、具体的な検討に関する情報はまだ報道されていない。 海洋油ガス田開発を担当できるロシア企業は、カスピ海でルクオイルの活動があるが、それ以外ではサハリン大陸棚のサハリン-1、3、5で実績のあるロスネフチと、バレンツ海で先行しているガスプロムの2社に絞られる見込みである。外国企業の参入は排除されないとのフリステンコ産業エネルギー相の発言があるものの、外国企業が参入するに当っては、単独での進出は困難でこの両社による選択に委ね3)ロシアが現在考える大陸棚石油ガスの開発政策 (Source: USGS (2000) られる見込みである(PON, 2007/8/16)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 11 - R. ロシアによる長期的な北極海大陸棚調査 (1)最近の動き ロシアの調査船Akademik Fedorov号が砕氷船の先導で2007年8月1日北極点に到達し、2日から3人乗りの深海調査船2隻(Mir-1, Mir-2)を潜行させ、北極海のロモノソフ海嶺(Lomonosov Ridge)付近を調査した。この時、水深4,261mの北極点に到達し、海底土壌を採取するとともにチタン製の国旗を設置した。これに先行して、5月には”Arctica- 2007”と称する調査が、ロモノソフ海嶺周辺での海底調査とサンプル採取を行っている(Itara-Tass, 2007/8/07). 米国のTom Casey国務省副報道官は8月2日「法的な意味はない」とコメントし、カナダのPeter Gordon MacKay外相も同日、「15世紀ではない」と不快感を表明した。またカナダのStephen Harper首相は、自国の北極圏に出向き2箇所の軍事基地を建設する計画を公表した(IHT, 2007/8/13)。デンマークのHlege Sander科学技術相は、「北極圏でのデータ収集活動と旗を立てたことは関連性がない」と述べた(Moscow Times, 2007/8/16)。デンマークは、8月12日、ロモノソフ海嶺がグリーンランドに接続しているか否かを調査するため、科学チームを北極に派遣した。ノルウェー外相は、「ロシアは国連海洋法に則って調査した。国旗を立てたことは象徴的行為に過ぎず、ロシアにとっても他国にとっても何ら権利上の意味はない」と冷静な反応である(PON, 2007/8/10)。 今回の潜水計画の主導者であるArtur Chilingarov下院副議長(海洋科学者でもある)は、ロシア大陸棚の最北端にあたり排他的経済水域の確定の必要があると述べており、このような調査を通して大陸棚延伸主張のための地球科学的データの収集の拡充を図る方針である。 ロシアは、2001年、既に200海里の大陸棚の延長を国連の「大陸棚の限界に関する委員会」(CLCS: Commission on the Limits of the Continental Shelf)に申請したが却下されており、今回の調査は再申請のための新規の情報収集を行うのが目的と見られる。これにより、ロシアは現状の270万km2の200海里大陸棚に加え、120万km2を追加したい意向である。 (2)北極海の海象・氷象条件 北極を廻る諸国の中で、大陸棚の面積の広さと、それに伴う地質条件、そして海象・氷象条件すべての面において、ロシアが最も恵まれている。 BBC放送の資料(2007/8/01、図10)によれば、2005年における夏季の極冠の広がりは、グリーンランドやカナダのクインエリザベス諸島までを覆っているのに対し、ロシア側大陸棚はタイミル半島沖合いからSevernaya Zemlyaに至る範囲を除けばかなり広い範囲が海氷のない海である。これは、地球の自転によって発生するコリオリ力により、反時計回りとなる北半球では進行方向に対Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 12 - オて垂直に右方向に「見かけの力」が加わり、自転方向から見て後ろ側となる東側海岸へ向かって流氷が動かされるためであり、特にグリーンランド東岸では氷の問題が深刻である。更に、バレンツ海はメキシコ湾流の影響で冬季も結氷せず、ムルマンスク港は世界で最も北に位置する不凍港である。西シベリアの北方延長であるカラ海も冬季の通行不可の期間は1~2ヶ月であるという。 図7は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の行ったプレスリリース中のもので、北極海の海氷分布が過去最小となった2005年9月の面積を、2007年8月に既に切っているというもので、氷の最も融ける本年9月に向けて、更に極冠が縮小するのは確実である(宇宙航空研究開発機構プレスリリース, 2007/8/16)。 2005年9月22日 2007年8月15日 図7 北極海の流氷分布。2007年の氷象は、これまでの最小となった2005年9月を上回るスピードで縮小しており最小記録を達する見込み(宇宙航空研究開発機構プレスリリース, 2007/8/16) 3)国連海洋法条約における大陸棚とロシア北極海における適用 国連海洋法(UNCLOS:UN Convention on the Law of the Sea)においては、排他的経済水域 ((EEZ)を基線から200海里までと規定し(第57条)、そこにおける海中、海底、海底下の資源に対して主権的権利(Sovereign Right)を有するとしている(第56条)。 一方、大陸棚においては、「探査し天然資源を開発するための主権的権利を行使する」(第77条)と定めている。大陸棚は領土の「自然の延長(natural prolongation)」であり、領土に対する主Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 13 - ?の効果として当然かつ始原的に存在する固有の権利(inherent rights)を有するというもので、主権的権利が及ぶ天然資源の範囲は、(1)海底及びその下の鉱物その他の非生物資源並びに(2)定着性の種族(sedentary species)に属する生物に及ぶ(第77条4項)としている。但し、排他的経済水域と異なり、「海中」の資源に対する権利を有さない。 沿岸国の大陸棚の定義は、基本的に大陸棚縁辺部の外縁までである。これは棚、斜面、コンチネンタル・ライズの海底で構成されるが、太洋底と海洋海嶺は含まない(76条第3項)。大陸棚外縁までが狭くて200海里まで伸びていない場合には「距離基準」を適用して、200海里までを大陸棚とする(76条第1項)。 陸棚縁辺部が200海里を超えて延伸している場合には以下の方法(Formulae)で最大延伸で 大きる範囲を示すが(76条第4項)、これは無制限でなく、一方で以下のような制限(Constraints)を同時にかけて制限以内に収める(76条第5項)。 ・方法(Formulae):大陸斜面脚部(勾配の急変する箇所)から①堆積層厚が脚部からの距離の1%、②大陸棚斜面の脚部から60海里、の内いずれか遠い方。 - 14 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 図8.大陸棚の定義(出所:海上保安庁website) E制限(Constraints):①領海基線から350海里以内、②水深2,500mの等深線から100海里以内、の内いずれか遠い方 以上の関係を図8に示す。 沿岸国が大陸棚の延伸を主張するに当たっては、国連の「大陸棚の限界に関する委員会」に基本的な科学データを提出して、検討され勧告を受けてようやく大陸棚の範囲が決定する。 (4)北極海の海底地形と国連海洋法による考え 北極海は、ロシア、アメリカ(アラスカ)、カナダ、デンマーク(グリーンランド)、ノルウェーの5カ国がとり囲んでおり、それぞれが200海里までの排他的経済水域を保有している。北極海の海底地形を図11(Wikipediaからの引用)に示す。ここで際立つのは、ロシア側の地形的な大陸棚の広がりである。200海里までの範囲で、面積は約270万平方キロメートルに達する。これに比較すると、アラスカ沖とグリーンランド沖は面積的にも極めて小さい。 ロシアは、基線から200海里の大陸棚(排他的経済水域)に関しては、ノルウェーとの境界画定を残している。ロシアは、両国大陸棚が北極に近いことから、経線にそった分割を主張している。これを「セクター主義」と称する。一方、ノルウェーは中間線論を主張している(図6)。但し、その他の地域では問題なく油ガス田開発を進めることができる。他の海域では特段の係争はない。 ロシアは北極海において最大の大陸棚を有しているが、更にその外側に連続するロモノソフ海嶺の周辺および、アルファ海嶺周辺を含む約120万平方キロメートルの広い範囲に対して、大陸棚の延長を主張すると見られている(BBC, 2007/8/01)。 バレンツ海、カラ海の大陸棚縁辺部の延長には、ガッケル(Gakkel)海嶺が横たわるように伸張しているが、これは大西洋中央海嶺の北極海における北方延長の部分で、地質学的には海洋地殻の形成される海洋底の湧き出し口、即ち海底海嶺(Submarine Ridge)である。大陸棚縁辺部には太洋底と海洋海嶺は含まない(76条第3項)とあり、ガッケル海嶺はここでの海洋海嶺と解されることから、BBCの資料(図10)を見る限り、これについてロシアは特段、大陸棚の延長であるとの主張は行っていないと解される。 一方、これに200海里離れて併走するロモノソフ海嶺は、大陸地殻によって形成されていると言われる。ロモノソフ海嶺は、長さ1,800km、幅60~200km、最浅部で954m~1,400m、海洋底からは3,300~3,700m高く聳え立つ地形高所となっている。ロシアは、ロモノスフ海嶺の両側に大陸棚斜面の脚部から60海里まで大陸棚の延伸を主張しているものと思われる。制限条項によれば、①領海基線から350海里以内、②水深2,500mの等深線から100海里以内の内、いずれか遠い方と定められておGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 15 - 閨Aこの内、水深2,500kmの等深線から100海里までという制限条項に抵触するまでには至らない。BBCの資料(図8)では、ロモノスフ海嶺の西側の大陸棚斜面の脚部から60海里までの線を示しているものと思われる。 ロモノソフ海嶺から東方へは、北極点を含みアラスカとの大陸棚上の境界線まで直線で大陸棚の延伸の主張がなされている。図11に見るとおり、この海底にはアルファ海嶺やチュコト海台が大陸棚の延長部分としてあるように見える。海底地形や堆積物の厚さの詳細は不明であるが、大陸斜面の脚部をこれらの海底地形の高所の外縁においていると見られる。この外縁を前提に、セクター主義に則って、相手国との間の経線まで主張していると見られる。 76条第6項には以下のような規定がある。 「陸棚の限界は海底海嶺(Submarine Ridge)の上では基線から350海里までとし、一方大陸縁辺部の自然の構成要素である海底の高まり、即ち海台(plateaux)、海膨(rises)、キャップ(caps)、堆(banks)及び海脚(spurs)には6項の規定は適用しない。」 これによれば、海底海嶺は350海里までであるが、「海底の高まり(Submarine elevation)」に対しては、350海里または2,500m等深線の外側100海里の内、広い方が適用される(棚橋学「日本周辺海域における大陸棚延伸、限界確定の問題点」、学術の動向、2005.2)。ロモノソフ海嶺が、「海底海嶺」と見なされ350海里までの限界とされ北極点付近が除外されるのか、「海底の高まり」とみなされ北極点付近まで大陸棚縁辺部の延伸が認められるのかについては、まだ結論が出されていない。 この解釈を巡っては詳細な論争があり、「大陸棚延伸のための科学技術ガイドライン(1999)」が公開されているが、ロモノソフ海嶺は「海底海嶺」の項とも、「海底の高まり」の項ともしっくり来ない。同ガイドラインに海嶺の扱いは”case-by-case basis”で扱うのが適切との表現がある。 細かい部分では議論を残しており、かつセンシティヴな問題でもある。 今回の調査は、海底の堆積物が採取の他に、海底地形と地震探鉱による広域の海底下の地質構造の調査がなされているものと思われるが、これはこのような国連海洋法に係わる議論に供するためのデータ取得活動と思われる。 (5)ロシア政府の対応 ロシアは2001年12月20日、北極海沿岸国の中では先頭を切って国連の「大陸棚の限界に関する委員会」に対して、大陸棚の延伸に関する科学的なデータを提出した。これに対して同委員会は、2002年6月、地球科学的な詳細データの補足を指摘し、またベーリング海では米国と、オホーツク海南Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 16 - 狽ナは日本と、バレンツ海ではノルウェーとの調整を要請した。特に科学データが不十分との見解は、大陸棚調査に当たり、申請を控えていた各国の政府機関に大きな影響を与え、調査密度やレベルを飛躍的に高める必要性を認識させた。2007年8月のロシアによる北極点付近の調査は、これら一連の追加調査の一環である。ロシアの大陸棚限界延伸の申請期限は、2009年5月である。(6)他国の調査活動 ノルウェーは、大陸棚境界に関する文書を2006年11月に国連に提出済みである(PON, 2007/8/10)。ノルウェーの主張は領有するスバールバル(Svalbar)諸島を基線に200海里を主張するものと思われる。 ロモノソフ海嶺と大陸棚が接していると思われるカナダとデンマークは、2006年4月から共同で調査を実施している(East & West Report, 2007/8/06)。 米国は、3隻の大型砕氷船を保有しているが、その1隻を北極海に出航させるべく準備に入った(産経、2007/8/04)。但し、北極海の沿岸国の中では、唯一米国のみが国連海洋法条約に調印したものの、批准をしていない(図9)。 その他、ブラジルとオーストラリアが2004年に、ニュージーランドが2006年に申請を済ませている。 北極点を含む地域まで大陸棚の延伸が認められたとしても、北極点を中心に通年の氷が張っており、当面は金、ニッケル等の金属資源の対象とはなっても石油・天然ガスの開発対象とはなりえない。北極海沿岸各国は、長期的は将来を睨んで、法的な問題についての整備をまず図る段階にある。 図10 国連海洋法条約の批准国(緑色)、未批准国(黄緑色)、未調印国(灰色) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 17 - 図10. 北極海での各国の大陸棚とロシアの延伸主張部分 ①北極点、②ロモノソフ海嶺、③200海里大陸棚外縁、 ④ロシアの主張する200海里以遠の大陸棚 白い部分は2005年夏の海氷の範囲 出典:BBC News (2007/8/01) 図11. 北極海の海底(Wikipedia)- 18 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ヮQ 考>国連海洋法第76条で展開されている大陸棚の定義 1 沿岸国の大陸棚とは、当該沿岸国の領海を超える海面下の区域の海底及びその下であってその領土の自然の延長をたどって大陸縁辺部の外縁に至るまてのもの又は、大陸縁辺部の外縁が領海の幅を測定するための基線から200海里の距離まで延びていない場合には、当該沿岸国の領海を超える海面下の区域の海底及びその下であって当該基線から200海里までのものをいう。 2沿岸国の大陸棚は、4から6までに定める限界を超えないものとする。 3 大陸縁辺部は、沿岸国の陸塊の海面下まで延びている部分から成るものとし、棚、斜面及びコンチネンタル・ライズの海底及びその下で構成される。但し、大洋底及びその海洋海嶺又はその下を含まない。 4(a) この条約の適用上、沿岸国は、大陸縁辺部が領海の幅を測定するための基線から200海里を超えて延びている場合には、次のいずれかの線により大陸縁辺部を設定する。 (1)ある点における堆積岩の厚さが当該点から大陸斜面の脚部までの最短距離の1パーセント以上であるとの要件を満たすときにこのような点のうち最も外側のものを用いて7の規定に従って引いた線。 (2)大陸斜面の脚部から60海里を超えない点を用いて7の規定に従って引いた線。 (b)大陸斜面の脚部は、反証のない限り、当該大陸斜面の基部における勾配が最も変化する点とする。 5 4(a)の(1)又は(2)の規定に従って引いた海底における大陸棚の限界線は、これを構成する各点において、領海の幅を測定するための基線から350海里を超え又は2,500メートル等深線(2,500メートルの水深を結ぶ線をいう。)から100海里を超えてはならない。 6 5の規定にかかわらず、大陸棚の外側の限界は、海底海嶺の上においては領海の幅を測定するための基線から350海里を超えてはならない。この6の規定は、海台(plateaux)、海膨(rises)、キャップ(caps)、堆(banks)及び海脚(spurs)のような大陸縁辺部の自然の構成要素である海底の高まりについては、適用しない。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 19 - 沿岸国は、自国の大陸棚が領海の幅を測定するための基線から200海里を超えて延びている場合には、その大陸棚の外側の限界線を経緯度によって定める点を結ぶ60海里を超えない長さの直線によって引く。 8 沿岸国は、領海の幅を測定するための基線から200海里を超える大陸棚の限界にかんする情報を、衡平な地理的代表の原則に基づき付属書Ⅱに定めるところにより設置される大陸棚の限界に関する委員会に提出する。この委員会は、当該大陸棚の外側の限界の設定に関する事項について当該沿岸国に対し勧告を行う。沿岸国がその勧告に基づいて設定した大陸棚の限界は、最終的なものとし、かつ、拘束力を有する。 9 沿岸国は、自国の大陸棚の外側の限界が恒常的に表示された海図及び関連する情報(測地原子を含む。)を国際連合事務総長に寄託する。同事務総長は、これを適当に公表する。 10 この条の規定は、向かい合っているか又は隣接している海岸を有する国の間における大陸棚の境界画定の問題に影響を及ぼすものではない Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油・天然ガス調査グループが信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 20 -
地域1 旧ソ連
国1 ロシア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,ロシア
2007/08/23 本村 真澄
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