ページ番号1004118 更新日 平成30年2月16日

ロシア:サハリン大陸棚石油ガス開発の展開と震災後の日本へのガス供給の可能性

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レポートID 1004118
作成日 2011-04-25 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発
著者 本村 真澄
著者直接入力
年度 2011
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日:2011/4/20 石油企画調査部:本村真澄 公開可 ロシア:サハリン大陸棚石油ガス開発の展開と震災後の日本へのガス供給の可能性 ・2010年におけるサハリン大陸棚開発では、サハリン-1ではOdoptu油ガス田が生産を開始し、サハリン-2ではLNGが通年で本来の能力のレベルである960万tを達成した。サハリン-3のKirinsky鉱区では、天然ガスの確認が順調に進み2012年の生産開始を目指している ・最大の懸案はサハリン-1の天然ガス開発で、政府内でLNG化の検討に着手した。 ・3月11日の東日本大震災では、福島第1原発の事故等で、発電量が大きく落ち込み、夏に向かって最大800万Kwが不足すると試算されている。今後とも原発の復旧が見込めないとすると、石油・ガスの火力発電に拠る電力回復が避けられない。特にLNG火力発電所の稼働率上昇が必要となる。 ・震災の翌日の3月12日、プーチン首相は、日本向けLNG供給の増加を指示し、次いで15日には 日本で予想されるガス需要の急増を受けて、サハリン-3をはじめとする極東でのガスプロジェクトを加速させるよう呼びかけた。但し、ロシアからのLNG輸出増は最大40万tで、短期の増分は小さい。 ・ロシアの積極的な対日接近の陰には進展しない中国との天然ガス交渉への対抗馬という期待もある。 ・日本への天然ガス供給においては、当面はLNGの輸入増に依存することになるが、需給バランスの急変によりスポット価格の高騰もあり得、LNG依存のみならずパイプライン輸入も考慮する必要がある。・価格ではLNGでは太平洋圏でのJCC連動価格となるが、パイプライン供給では欧州と同水準になると見られ、現状では20%安い水準である。更に投資では、パイプラインは新規LNGより30%安くなる。・LNGは売り手側にメリットがある。一方、パイプラインによる供給は、需要独占を生むものであり、日本にとっては、当然のこの方が有利となる。他のオプションを有することは、日本の立場を有利にする。結論として、S-1とS-3からのパイプライン輸入は日本にとって大きな意義がある。 2010年における同州のガス生産量は前年比29.5%増の246.42億m3/年であったが、埋蔵量の減退から石油生産量については4.3%減の1,476.5万t/年(約30万bbl/d)となった。サハリン-1事業では、石油生産量が15%減の700万t/年(約14万bbl/d)、ガス生産量が6.5%減の84億m3/年となっ 1 Interfax, 2011/1/28 ? 1 ? . 2010年におけるサハリン州の石油・ガス生産の現状 1月28日に、サハリン州の天然資源省が以下の通り発表した1。 1(1)生産の現状 + Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 スが、ガスについては販売先に係る問題が未解決なため、約60億m3が地中に再圧入されている。一方、サハリン-2事業では、石油生産量が9.8%増の604.7万t/年(約12万bl/dでほぼ同量が輸出された)、ガス生産量が68.6%以上増加して154億m3/年となった。 (2)輸出の現状 2010年におけるサハリン州からの石油出荷量は4%減の1,478.8万t/年であり、その内の輸出量は4.7%減の1,312.5万t/年となった。サハリン-2事業からのLNGは、日本、韓国、シンガポール、フィリピンに輸出されており、輸出量はほぼ倍増の1,000万t/年となった。なお、サハリン州から国内市場向けに出荷されたガス量は前年比1.3%増の20.32億m3/年であり、この内ハバロフスク地方向けに出荷されたサハリン-1事業からのガス量は7%増の16億m3/年となった。 なお、2009年に、日本はサハリン-1事業で生産された原油の約50%を購入している2。 (3)2011年の展望 2011年にサハリン州からは石油が1,488.5万t/年、ガスが253億m3/年生産される計画であり、その内、サハリン-1事業ではOdoptu鉱床の操業開始で増産が見込まれることから石油が744.5万t/年(約15万bbld)、ガスが91億m3/年、サハリン-2事業からは石油が技術的な理由から減産が見込まれ566.5万t/年(約11万bbl/d)に、ガスは154.26億m3/年が生産される計画である。また、2011年の石油輸出量は1,310万t/年、サハリン-2事業からのLNG輸出量は976.1万t/年、パイプライン経由の国内市場向けガス出荷量は27.77億m3/年となる見通しである。 但し、2011年1月のサハリン-1の生産実績は、他前年同期比23.7%増の日量17万5,900バレルとなっており、Odoptu油田の貢献が予想以上に大きいと思われる3。 .サハリンの鉱区ごとの事業進捗(表1、鉱区位置は図3参照) (1) サハリン-1(図1参照) 1) サハリン-1の予算承認の経緯 2010年に揉めた2010年度事業計画・予算は、当初の予定から大幅に遅れ、2010年11月29日、即ち2010年の終わる32日前に、ロシアの全権国家機関(Authorized State Body: ASB)により予算総額$27億で承認された4。これは、サハリン-1がこの年に掛った経費をほぼ追認するもの 2 2 Interfax, 2011/9/30 3 IOD, 2011/3/01 4 Vremya Novostei, 2010/11/30 ? 2 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ニなっている。 ExxonNeftegazは当初、$35億の予算を組んだが、ロシア側の全権国家機関は、2009年12月の段階でChaivo及びOdoptu鉱床の開発費の$10億は認めたものの、Arkutun-Dagi鉱床に関しては承認しなかった。このため、2010年を通じてChaivo 及びOdoptu鉱床の開発のみが先行して行われた。同様の事態は、2009年度予算の時もあり、承認に数カ月を要した。この間、2009年2月~4月にOdoptu鉱床の開発が一時中断した。最終的に2009年4月に$20億の予算が承認された5。 査院のMikahil Beskhmelnitsyn会計検査官によれば、2010年8月にExxon Neftegasが会計検出したS-1事業に係る2055年までの長期事業計画では、業績は大幅に削減されるものの、コス提トは当初の$482億から$953億に増加し、1990年代半ばに行われたFSに基づき承認された額の6.6倍になっているとのことである6。これは、ロシアで最も高額のプロジェクトとなる。 2010年度予算の審議では、6月にロシア政府やKhoroshavinサハリン州知事がオペレーターの交替まで示唆する事態となり7、更に総事業費を約$1,000億にまで引き上げたことから、10月にBeskhmelnitsuyn検査官もオペレーターの交替に複数回言及した8。これに対して、Sergei Shmatkoエネルギー相は、操業会社ExxonNeftegazの交代は議題に挙がっていないと語った。そして、エネルギー省としてはそのような問題定義は行ったこともなく、する予定もないと擁護する姿勢を示した。ただし同省は、サハリン-1事業の会計問題に関する会計検査院の提案およびコメントについては検討を行うと述べた9。 日に、全権国家機関がサハリン-1事業に係る2011年の2011年に関しては、2011年1月25業計画と予算($31.1億)を承認した10。2011年予算は、昨年末に承認されたばかりの2010年事予算を15%超えるものとなった。 2) Odoptu油田の開発事業 2010年9月29日、Odoptu油田から始めて生産開始となった。2011年には、日量3万バレル見込んでいる。掘削は、2008年にYastrebを北方に移動して大偏距掘削(Extended Reach をDrilling)の方式で開始され、生産開始時点で6坑が完了し、この時は7坑目を掘削中であった。 5 Interfax, 2010/1/21 6 Interfax, 2010/10/26 7 Vedomosti, 2010/6/28, Interfax, 6/25 8 Interfax, 2011/10/26, PAF,/RIA Novosti, 10/27, Interfax, 12/13 9 Interfax, 2011/10/27 10 Interfax, 2011/1/26 ? 3 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 {クを50%ivo油ガス田の陸上処理2011年冬までにあと3坑を掘削し、YastrebリグはChaivo油ガス田に戻る計画となっている。OP-11号井は偏距11,475m(総掘進長12,345m)で世界最大となる11。2010年10月のサハリン-1の生産量は、Odoptu油田からの生産を加え、前年同期比22%増の日量18万8,000バレルとなった。生産井が追加されると、日量5万バレルも可能とする見方もある12。 Odoptu油田から生産された原油は79kmのパイプラインを通じて、Cha設に輸送され、随伴ガスと分離され、DeKastriの輸出ターミナルへ運ばれる13。 Odotpu油田の貯留層は、Chayvo油ガス田と比較して深度が約30%深く、リグのトル強するなどの改修が必要となった。 増3)Chaivo油ガス田の今後の開発事業 Chaivo油ガス田は2005年10月に生産開始となり、まず域内供給が行われた。2006年10月からはDeKastriターミナルまでのパイプラインが完成し、原油輸出が開始された。当初、2005年の原油生産量は日量25万バレルであったが、その後急速に減退し、2010年には日量14万バレル、2011年には日量12.5万バレルまで低下すると見られている14。2011年冬に、Yastrebリグが戻ると、更に5坑を掘削して、生産井を25坑にまで増やす計画である。 一方、天然ガスの生産は、2010年に対前年6.5%減の84億m3となり、2011年には、Odoptu油ガス田からの分を加えて91億m3が見込まれている15。この内、約20億m3がKhaborosvkまでパイプラインで送られ、残りは圧入されている16。 2005年から2009年までのChaivo油ガス田の原油生送られた天然ガスは50億m3を超えている17。 4)Arktun-Dagi鉱床の開発 Arktun-Dagi鉱床は2014年の生産開始を目指し、同油田で使用されるリグの建造がロシア及び韓国で行われている。更に、Arkutun-Dagi海洋プラットフォームの上甲板に係る技術、プロジェクト管理、調達に関して、ロシア企業Sakhneftegaz Engineering LLC (SNE、豪のWorleyParsons産量は約3,200万t、またKhabarovskまで 11 The Moscow Times, 2011/1/31 12 IOD, 2010/12/13 13 IOD, 2010/9/29 14 Interfax, 2010/9/29 15 Interfax, 2011/1/28 16 Interfax, 2011/3/21 17 Interfax, 2010/1/20 ? 4 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ェ49%を保有)と$5億の契約を結んだ18。生産量は当初、2014年200万t(日量4万バレル)の見込みで19、ピーク時には450万tとなる。 図1 サハリン-1の3鉱床。Chayvo油ガス田, Odoptu油ガス田に向けての黒い破線は、Yastrebによる大偏距掘削の範囲を示す。現在、Odoptu油ガス田にて掘削作業中。 当初、サハリン-1のガス輸出に関しては、ExxonNeftegazはパイプラインによるものとし、 主たる市場を日本と想定して販売交渉がなされたが、十分な需要が見込めなかったことから、2004 )サハリン-1のガス輸出計画 5 18 Interfax, 2011/12/21 ? 5 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 N 11 月 1 日、ExxonMobilのRaymond CEO’(当時)は、日本に対する天然 ガス輸出交渉が進捗しないことから中国とも交渉を開始する旨を小泉首相(当時)に伝えた。同じ 11 月、 ExxonNeftegazとCNPCとの間でMOUが締結された。更に 2006 年 10 月 19 日にCNPCと天然ガス販売に 関する予備的合意に署名した。ここでは、ExxonNeftegazが自前のパイプラインを建設して年間 80 億m3 のガスを中国東北部に供給するというものである。 サハリン-1のPS契約にはコンソーシアム側に生産物を輸出する権利が明記されている。一方で2007年に制定された「ガス輸出法」においては、第3条で天然ガスを輸出する権利をGazpromのみと定めているが、第1条2項にはPS契約に基づいて生産されたガスに関しては同法は適用されないと定めている。しかし法的な次元での問題よりも、現実にはExxonNeftegazがサハリンから中国国境までパイプラインを敷設することは困難で、天然ガスを輸出するには、Gazpromと何らかの協調が不可欠となっている。ExxonNeftegazとしては、ロシア国内でサハリン-1のガスをGazpromに売り渡すのでなく、現在建設中のSakhalin-Khabarovsk-Vladivostk天然ガス・パイプラインにおいて第3者アクセス権を認めさせ、ウスリースク-綏芬河の露中国境まで天然ガスの所有権を維持することが、経済性においても操業の利便性においても最も優れている20。 6)サハリン-1のLNG計画 東日本大震災に際して、日本向けの天然ガス輸出に関してプーチン首相が矢継ぎ早の指示を出しているが(後述)、3月21日、エネルギー省及び関係省庁に対し、サハリン-1でのガス生産についてGazpromと共同で作業を行うよう指示した21。 これを受け、エネルギー省のSergei Kudryashov次官は、サハリン-1でのガス生産について年末までにExxonNeftegazと合意することを期待と述べた。同次官によると、エネルギー省は現在、ロシア極東へのガス供給増加及びアジア太平洋市場向けLNG供給拡大のため、サハリン-2のLNGプラントへ第3トレインを追加建設することを検討している22。 次いで4月7日にサハリンの現地紙が報じたところでは、ロシア政府内で、サハリン-1のLNG計画を推進することを目的にワーキング・グループが設置されることになり、サハリン島内にLNG 19 IOD, 2011/3/01 20 拙稿「ロシア:サハリン-ハバロフスク-ウラジオストック・パイプラインの将来展望 」(2009/8/19)http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=0908_out_i_Vladivostok%2dPipeline%2epdf&id=3396 21 Interfax, 2011/3/21 22 Interfax, 2011/3/30 ? 6 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 vラントを建設し、ガス化学プラントを併設するという。ロシア政府の意向がLNGに主眼があるものと思われる23。Vedomosti紙の同じ日の報道によれば、サハリン-1に関する全権国家機関(ASB)では、①独自のLNGプラント建設、②ガス化学工場の建設、③中国へのパイプラインでのガス供給、④サハリン-2のLNG基地での第3トレーン建設、の4案が検討され、ExxonNeftegazが③の中国へのパイプラインでのガス供給を、政府筋が①あるいは④のLNGプランと建設を押しているとのことである。そして、アナリストの見解として、中国へのパイプライン建設は、LNGプランと建設よりもコスト的に30%安くなるが、パイプラインによる中国のみ1カ国への供給は、広域の市場を確保できるLNGに比して戦略的に明らかに劣るとしている24。 (2)サハリン-2 Gazpromがサハリン-2 LNGプラントの第3トレイン向けのガスを探していると、サハリン-2のオペレーターであるSakhalin Energyが述べた。第3トレインの操業開始にはサハリン-2からの残りの埋蔵量で可能であるが、将来的には不十分となる。Khoroshavinサハリン州知事は、サハリン-3の鉱区が生産開始となり、更にサハリン-1のガス開発が再び活性化すれば、第3トレイン向けのガス供給が手配されるとの見解を示した25。 現状では、PrigorodnoyeにあるLNG基地の第3トレーンへ供給するガスとして、サハリンー3とサハリン-1の双方が考えられている。その後のKhoroshavin知事の発言によれば、第3トレーンは容量500万t/年で2015年完成を見込んでいる。サハリン-2の追加ガスで年間200~460万t分のLNG可能であるが、それ以外にサハリン-1のガスを第3トレーンへ供給するべく交渉中とのことである26。 4月12日に、GazpromのMiller社長とShellのPeter Voser CEOは、サハリン-2の日本向けLNGの出荷量の引き上げの可能性について話し合った。サハリン-2のLNG出荷は、2009年3月から始まった。2009年における国別の出荷比率を図2に示す。日本向けは、55%であった27。生産されるLNGに関してはその殆どが結ばれた13件の契約でカバーされており、日本向けを増やす場合には、日本のLNGユーザーがUQT (Upward Quantity Tolerence) のオプションを行使して 23 PON, 2011/4/11 24 Vedomosti, 2011/4/11 25 RusEnergy, 2011/3/28 26 PON, 2011/4/20 27 Sakahlin Energy, Annual Review 2009 ? 7 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 齊椏Iに引き取り分を増加させる方法が通常である。この場合既存契約先への輸出量を減らすことになるが、Shellはアジアの他のLNGソースで補償する考えである28。 図2 サハリン-2LNGの2009年の国別出荷比率(出典:Sakahlin Energy, Annual Review 2009) Kirinsky鉱区は、2008年に東Odoptu鉱区、Ayash鉱区とともに、Gazpromが無競争でライセンスを取得し、2009年7月から5坑の試掘を行った。鉱区の中央やや西にあるKirinsky構造では4坑が掘削され、天然ガス埋蔵量の賦存が確認された。鉱区南部に位置するMynginsky構造は2011年に掘削の予定である。 3月15日に国家鉱量委員会がKirinskoyeガス田のC1+C2埋蔵量を1,360億m3と認定した。同 28 Interfax, 2011/4/12 ? 8 ? 3)サハリン-3 1)Kirinsky鉱区 (Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 z床からの生産量は40-45億m3/年で推移するものと見られる。さらに1年以内に埋蔵量が2,600億m3追加され、生産量は54億m3/年となる可能性がある。同鉱床からの生産開始は2012年第2四半期の予定となっている29。これは、Sakhalin-Khaborovsk-Vladvostokパイプラインに繋ぎ込まれ、Vladivotokまで運ばれる計画である。 一方、鉱区東部のSouth(Yuzhno)-Kirinskoye鉱床では、2010年に1坑掘削し、2枚のガス層を発見した。推定資源量(C3+D1+D2)は2,600億m3であり、S-3事業の鉱区全体では約5,000億m3と見られている30。これは当初推定されていた7,200億m3を大きく下方修正した値である。 Kirinsky 鉱区の今後の開発に関して、同鉱区のオペレーターであるGazprom Dobycha Shelf (GDS) の策定した計画は、以下の通りである31。2011-2012年にKirinskyガス田からの生産を開始し、Sakhalin-Khabarovsk-Vladivostok(SKV)パイプラインへ供給する。2012年に5億m3、2坑の試掘井を生産井に転用。2015年には4坑を追加して生産量を42億m3とし、2022年までの6年間プラト―を維持する。その後、同鉱区のSouth Kirinskyガス田, Mynginskyガス田(計3億toe)の生産に繋げる。生産はFMC Technologies(米)とGazpromの設計による海底仕上げとし、海岸まで28kmの多相流パイプラインを経て、陸上パイプラインによりガス処理ユニットに運び、水、コンデンセート、ガスに分離する。ガスは95km北方のSKVパイプラインの始点となるSakhalin Compressor Stationに至る。コンデンセートはサハリン-2の石油パイプラインに入れる案があったがSakhalin Energy社が品質の変動を嫌って反対しており、RosneftのKomsomorsk-na-Amure製油所(容量日量12万バレル)が引き取る可能性が高い。 Gazpromの操業子会社のGazpromNeft Shelfによれば、サハリン-3事業からのガス生産量を2020年までに160-180億m3/年とする計画である32。 なお、Khoroshavin知事によれば、Kirinskyガス田はガス埋蔵量2,000億m3、コンデンセート3,000万tである33。 2)Venin鉱区 Venin鉱区は、Rosneftが100%の権益を保有していたが、2006年に韓国のKNOCが参加の意思を表明しMOUを締結した。但し、これは1年後破棄され、2007年、中国のSinopecが25.1% 29 Interfax, 2011/3/21 30 Interfax, 2011/3/21 31 Argus FSUEnergy, 2010/10/22 32 RusEnergy, 2011/3/25 33 PON, 2011/4/20 ? 9 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 フ権益を取得して参加した。オペレーターはVeninneftである。 2007年から3坑の試掘がなされ、北Venin構造でガス徴を確認していた。2013年まで探鉱ライセンスが延長され、2012年には最終投資決定に向けた評価井が掘削予定となっている。RN-Shelf-Far East(Rosneft子会社)によると、Veninsky鉱区からのガス生産(年間約16-17億m3)が2017年に開始される可能性がある。この場合、陸上からの傾斜掘りによる。当該鉱区のC1+C2カテゴリーのガス埋蔵量は約490億m3となっている34。別の報道では、石油1億6,940万t、天然ガス2,581億m3となっている35。 1坑(4)サハリン-4 サハリン-4は、Astrakhanov鉱区とWest Shmidt鉱区とからなり、前者においては、Rosneftが2000年にAstrakhan構造に試掘したもののドライであった。後者での探鉱事業を行うために、BP(49%)とRosneft(51%)の合弁企業Elvari Neftegazが設立され、2007年に2坑が掘削されたがいずれも失敗し、2009年3月に鉱区を返還した。Astrakhanov鉱区にはGazpromが関心を持っていると言われている36。 5)サハリン-5 サハリン-5の最南部に位置するKaigano-Vasyukansky鉱区では、これまでに石油埋蔵量4,400万t、ガス埋蔵量450億m3を発見しているが商業生産には十分ではない。水深は100m以上あり、開発にはかなり厳しい条件である。RN-Shelf-Far East(Rosneft子会社)のBrodsky社長によれば、 (埋蔵量を増加するために探鉱は継続していく意向で、ライセンス期間も延長され、目標達成に向けた事業方針を決定しているとは語っている37。Rosneftは全体の埋蔵量の確認に向けて2012年までに追加の評価井を掘削する計画である38。 6)サハリン-6 ( 34 Interfax, 2011/3/28 35 East & West Report, 2011/4/11 36 Henderson, James, The Strategic Implications of Russia’s Eastern Oil Resources, Oxfrod Institute for Energy Studies, WPM 41, January 2011. http://www.oxfordenergy.org/pdfs/WPM41.pdf 37 Interfax, 2011/3/28 38 Interfax, 2011/3/21 ? 10 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 rals Energyの子会社Petrosakhは、2011年2月に有効期限切れとなったサハリン-6事業のPrigranichny鉱区に係るライセンスの延長申請は行なわず、鉱区を返還した。代わりに、同社は陸上のOkruzhnoye油田の開発に専念する方針で、5月から計2坑井の掘削を開始する計画である。Urals EnergyはPetroSakhの権益97.2%を保有しており、2010年5月に負債$3,430万の担保として、PetroSakhの権益と別の石油・ガス資産Arkticneftの権益100%を石油貿易会社Petraco Oil Companyに提供している39。 PetroSakhは、本来は1991年に陸上のOkruzhnoye油田の開発のためにAlfa-Ekoの子会社として設立された会社であるが、2004年にAlfa-Ecoが英国のUrals Energyに買収された。Urals Energyは2008年の金融危機で資金繰りが悪化し、Sberbankからの借入金$6.3億の返済が困難になりYurykh Neftegazdovychaの株式35%とDulisma油田を同銀行に譲渡し、Urals Energyとしては、Petrosakhaの事業に注力することになったものである。 図3 サハリンの鉱区とS-1, S-2の石油・ガスパイプライ 39 Interfax, 2011/3/21 ? 11 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 xxonMobil(30%) SODECO(30%), ONGC(20%),SMNG(11.5%) Rosneft (8.5%) Sakahlin Energy Gazprom*(50%+1) Shell(27.5%-1), Mitsui(12.5%), Mitsubishi(10%) *2007年参加 Gazprom Rosneft(74.9%)、 Sinopec(25.1%) Gazprom Elvari Neftegaz Rosneft(51%), BP(49%) GazpromNeft Elvari Neftegaz Rosneft(51%), BP(49%) 総投資額 $170億。2005年10月原油ガス生産開始。2006年DeKastriから輸出開始。生産量約16 万b/d(`09)。ガスの販売先未定。2010年9月Odoptu生産開始 総投資額 $100 億→$200 億。Phase-1;1999PA-A (Molikpak)生産。Phase-2; PA-B, Luni からPrigorodnoyeへ石油ガスパイプライン(800km)建設。2009 年3 月LNG 960万t/y生産開始。 93年Mobilが落札。特段の探鉱実績はなし。04年1月ライセンス発行見送り。Gazpromが09年6月取得。Rosneft 100%。07年Sinopec参加。07年から2坑試掘。ガス徴。93年Texacoが落札、97-98年3D地震探鉱。。08年Gazpromが取得、09年7月から5坑試掘。10年8月南Kirinskyガス田発見。 Astrakhanov鉱区においてRosneftが00年に試掘。2007年2坑不成功。2009年3月鉱区返還。 2007年TNK-Sakhalinから取得。地質調査、2009年鉱区返還 98年BP参加。$50億負担。02年探鉱ライセンス取得。試掘3坑成功Pela Lache(04),Udachnaya(05), South Kaigansky(06)。不成功1。 Petrosakhaに対しては、入札によらずラインセンス付与。陸と海に跨る鉱区。05年Okruzhnoy構造の試掘で油兆。 Block Pogranichny Petrosakh(97%), Sakahlin Oil(3%) 表1 サハリン 1~6プロジェクトの現況 (2011年3月現在) 鉱区権者(%) 備 考 プロジェクト Sakhalin -1 ブロックと 油ガス田 Odoptu, Chaivo, Arkutun- Dagi 石油・天然ガス埋蔵量 325MMt (2.3Bbbl) 485 Bcm (17.1Tcf) 150MMt (1.1Bbbl) 500Bcm (17.7Tcf) (EO)*70MMt,30Bcm (A)*97MMt, 37Bcm *49Bcm **453MMt (3.2Bbbl) 500Bcm (17.7Tcf) 41MMt 135Bcm *600MMt, 600Bcm Sakhalin -2 Luni, Pil'tun- Astokh Sakhalin -3 E.Odoptu Ayash Venin Kirinsky Sakhalin -4 Astrakhanov Shmidt Lopukhovsky East-Shmidt (Kaigansko- Vasyukansky) ogranichny Pogranichny-Trough, Okruzhny P Sakhalin -5 Sakhalin -6 出所:各種公表資料から *Rosneft、**Gazprmによる予想埋蔵量。サハリン-1,2は確認埋蔵量 ? 12 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 R. 東日本大震災を受けてのロシア側の動き 3月11日の東日本大震災での福島第1原発事故により、日本のエネルギー事情が大きく変化することが予想されることから、ロシア政府も早速に日本向けのメッセージを発している。特に、日本の火力発電において、LNG火力は3割を占め最大である40ことから、LNG需要の伸びが注目されている。 (1)震災直後のプーチン首相以下ロシア側の動き プーチン首相は震災翌日の3月12日、日本から要請があればサハリン-2からの日本向けLNGの供給量を増やすよう指示した。そして、「日本は隣人であり、友人である。いかなる苦難があろうとも、我々は信頼できるパートナーであらねばならないし、地震と津波で供給能力の落ちた日本へのエネルギー供給で最善を尽くさねばならない」と述べ、セーチン副首相、Sergei Kiriyenko国営原子力企業Rosatom社長、Rusulan Tsalikov非常事態省第1次官にこの旨指示した41。 セーチン副首相は同じ12日、プーチン首相からの指示に基づき、地震及び津波に見舞われた日本に対し、即座に15万tのLNGを供給し、石炭の供給量を増やす用意があると述べた。セーチン副首相によれば、SUEK及びMechelは日本への石炭供給を300~400万トン増加することを検討中である。ロシアはまた、海底電線により日本へ電力を供給することもできるとしている42。 セーチン副首相によると、ロシア政府は14日に日本の経済産業省に書簡を送り、炭化水素を含む物資供給方法について協議することを提案したという。協議が順調に進めば、Gazpromが4月と5月にLNGを各20万t(計6カーゴ、40万t)出荷するとのこと。サハリンプロジェクトに参加しているその他の企業と追加協議を行い、日本との契約条項の一部を変更する必要があることを、セーチン副首相はメドベージェフ大統領に報告した。恐らくこれは、日本側のユーザーが増量オプション(UQT, Upward Quantity Torerance)を発動し、一方で輸出量に余力がないことから、日本以外への輸出に関して減量して貰うべく交渉する必要を述べたものと思われる。 一方、ロシアガス協会のValery Yazev会長は、スワップによって日本へのLNG供給を増やす可能性があると述べたと、Itar-Tass紙が報じた。Yazev会長は、その方法例として、マレーシアやインドネシアからヨーロッパ市場に送られているLNGについては、ロシアから欧州向けのパイプラ 40火力発電 65% (天然ガス29%、石炭25%、石油他11%)原子力発電 26%、水力発電 8%、新エネルギー他 1% 41 Interfax, 2011/3/12 42 Interfax, 2011/3/12 ? 13 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 Cンガスで補い、東南アジアで余剰のLNGを日本に向ける方法を挙げた(注:この実態に関しては不明)。Yazev会長は、ロシアには日本向け供給量を増やすのに“十分な埋蔵量”があると述べた。ここでは、セーチン副首相は、4月と5月に計画されている各10万tのLNG供給に加え、石炭の供給量を増やし、6,000MWの電力をロシア極東から供給する用意もあると述べた43。 3月15日になり、プーチン首相は日本の原発事故を踏まえロシア極東でのガスプロジェクトの「凍結」を解除し、加速するよう呼びかけた。また、サイトに掲載されたコメントの中でプーチン首相は、日本の原子力発電の大幅な停滞が長期化するのは明らかであり、サハリン-3等極東でのガスプロジェクトを加速させることを検討する必要があると述べた44。 次いで17日、Shmatkoエネルギー相は、サハリン-2にLNGプラントの第3トレーンが建設されれば、日本向けLNGの増量が可能で、2015年建設は現実的でパートナーと早急に具体的なスケジュールと供給量を検討させると述べた45。 また、RD ShellのVoser CEOは日本を支援するためのLNG供給に関して日本政府と協議中であると述べ、外国石油企業も検討に入った46。 (2)サハリンに乗り込んだプーチン首相からの提言 3月19日、プーチン首相はかねてからの予定通りサハリンで開催されたロシア極東における石油・ガス開発会合に参加し、ロシアから欧州向けのパイプライン経由のガス供給量を今後100日間において60億m3(日量6,000万m3、LNG換算420万t)増加させ、その代わりに欧州向けのLNGを100万t/月以上、日本向けに振り分けるという提案をした47。ロシア産欧州向けLNGの実態は明らかでないが、Gazpromの100%子会社であるGazprom Marketing and Trading社が大西洋圏で保有しているLNGタンカーを日本市場に振り向け、一方、市場の縮小で苦しんでいた欧州市場へのパイプラインでの供給を増加させるという一挙両得の戦略である可能性がある。 3月20日、プーチン首相は日本の複数企業に対してKovyktaとChayandaのガス田開発事業への参加を提案した48。 43 Prime Tass, 2011/3/14 44 International Oil Daily, 2011/3/16、日本経済新聞、3/17 45 Interfax, 2011/3/17 46 共同、2011/3/16 47 IOD, 2011/3/22 48 The Moscow Times, 2011/3/21 ? 14 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 月22日、セーチン副首相は河野雅治駐ロシア日本大使を呼び、現在危機状態にある日本を支援するために、日本の電力部門向けLNG輸送が最優先事項であると語った。Gazpromが既にガス輸送に関して日本側との協議を開始しているが、更にロシアからは石油や石炭の供給も可能であるとした。更に、先のプーチン発言を踏まえChayanda、Kovykta両ガス田の開発に関する参加提案も出た。当該会合には、エネルギー省のSergei Kudryashov次官、同省Andrei Shishkin次官、Gazprom副社長Alexander Medvedev、Rosneft社長Eduar Khudainatov、UES社長Boris Kovalchukが同席した49。 河野大使との会談の後、セーチン副首相は、ロシアと日本は両国間の相互利益、信頼、長期的コミットメントに基づくエネルギー協力に係るワーキング・グループ(WG)の設立を計画していると語った50。 表2 ロシアから日本へのエネルギー供給提案(各種報道から作成) 提案日 提案者 3月12日 プーチン首相 12日 セーチン副首相 対象地域 サハリン-2 サハリン-2 ヤクーチャ 海底 サハリン-2 4ロシア政府 LNG ロシアガス協会 サハリン-3 プーチン首相 シュマトコ・エネ相 サハリン-2 サハリン-2 プーチン首相 プーチン首相 東シベリア サハリン-1 プーチン首相 セーチン副首相 事業内容 LNG供給増加 LNGを15万t供給 SUEK、Mechelに石炭供給増 海底電線の敷設 月、5月にLNGを20万t(2カーゴ)供給 LNGスワップによる対日供給増 ガスプロジェクトの加速 LNGの第3トレーンの建設でLNG増量 LNGを月100万t以上日本に振り向け Kovykta、Chayandaガス田へ事業参加 (Gazpromと共同でガス生産協議) 河野註露大使にLNG供給とガス田開発打診エネルギー協力に関するWG設置提案 日本向け石油輸出900万t/年を倍増 14日 14日 15日 17日 19日 20日 21日 22日 3月22日、セーチン副首相はロシアは2011年の日本向け石油出荷量を前年実績の910万t/年から倍増の1,800万t/年とし、石油製品出荷量を350万t/年から450万t/年とすることもできる 49 Interfax, 2011/3/22, Komersant, Vedomosti,3/23 50 MT, 2011/3/23 ? 15 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ニ述べた51。2010年の日本のロシアから原油輸入量は対前年63%増の日量26.5万バレル、年間で1,320万tと報じられており52、セーチン発言で引用されたこの数字は意味不明である。但し、2011年に日本がロシアから1,800万tを輸入することは、倍増ではないが高々36%増であり、ESPO原油における日本の輸入比率の引き上げ、及びサハリン-1,2からの引き取り増で十分可能な量と思われる。 4月16日、サハリン-2から容量6.5万tのLNG船”Grand Aniva”(Sovcomflot保有)が東電富津火力発電所に到着した。これは追加供給分とされている53。 4月20日、Sakhalin EnergyによればLNGの積み出しを月12から15cargoへ増産すると発表した。生産能力の108%で稼働させ、2011年のLNG生産量は1,080万tを見込む。保有する3隻のLNGタンカーは日本向けで、通年で144隻のところ、本年は6隻多い150隻になる見込みである54。通常サハリン-2で資料されている”Grand Aniva”クラスのLNG船であれば、容量は1船当たり6.5万tで、6 cargo増やすとなるとLNG40万tになる。これは、3月14日のセーチン副首相発言と符合する。 ロシア以外からも、日本のLNG需要増を見込んだ動きが出ている。 韓国政府は13日、発電用のLNGを韓国内での受容に影響が出ない範囲で、日本に緊急融通し、後日返却を受けることを決定した55。翌14日、Kogasは日本に向けて、LNGを毎月100万t~150万t物量スワップ方式で融通することを明らかにした56。 インドネシアのBP Migasは14日、必要に応じて日本向けLNG供給を増やすと述べた57。その後の発表では、5月までに東京電力に3隻と東北電力向けに4隻のLNG船、合計40万tを、年内に18隻、100万tを出荷の予定である58。 RD ShellのVoser CEOは15日、日本を支援するためにLNG供給に向け準備に入ったことを明 51 Interfax, 2011/3/22 52 International Oil Daily, 2011/2/01 53 読売, 2011/4/16 54 PON, 2011,4/20 55 朝日、2011/3/14 56 電気新聞、2011/3/16 57 ビジネスアイ、2011/3/15 58 日経、2011/4/19 ? 16 ? 3)ロシア以外の国からのLNG供給オファー (Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 轤ゥにした59。更に、22日までにブルネイ、サハリン、ナイジェリアからのLNG船9隻を日本に向かわせた。 カタールの国営カタールガスのカリッド・アルサニCEOは、4月5日、火力発電用にLNGを追加供給する方針を明らかにした60。カタールガスは7,700万tという同国のLNG生産能力の内、4,200万tを保有。日本向けに年間600万tを輸出している。更に4月16日、カタールガスは日本に対して、今後1年間で約400万tのLNGを追加供給することで合意した61。 これらの国と比較して、短期に対応できる規模という点で、LNGにおいて後発のロシアは圧倒的に不利な立場にある。日本におけるLNG市場の新規拡大を、手を拱いて見ている訳にはいかず、多少でも市場確保につなげる為に積極的に動いているということと思われる。 東京電力は3月25日、LNGのスポット調達の量が、3月~4月分に関して約100万tとなり、5月については既存LNGプロジェクトの増量とスポット契約で60万~70万tの追加調達を進めていることを明らかにした62。当面は、カタール、次いでインドネシアからのスポット玉が集中的に調達されているものと思われる。なお、夏場の暑さの残る9月までこの調達方針で行くと、3月からの7カ月で約400万tのLNGを調達することとなる。なお、現状では石油よりもスポットLNGの方が価格が安いので、石油火力よりもLNG火力が優先的に稼働されている。 4.日本にとっての新規のエネルギー確保政策の在り方 (1)震災以降の日本の火力発電と製油所の現状 3月24日時点の東京電力の供給能力は3,850万kw、同社の停止中の火力発電所としては、広野(380万kw)、鹿島等(760万kw)、東扇島(100万kw)があり、順次回復させることにより、4月末までに4,200万kw、更に夏には4,650万kwまで復旧させる方針である。しかし、夏のピーク時需要は5,500万kwと予想されており、ピーク時に850万kw(LNGで約800万t)が不足すると発表された。但し、猛暑であった昨年は7月末の最大需要が6,000KWまで達した。東電はLNG火力の復旧を急ぐとともに、LNGガスタ―ビン発電設備10基(260万kw、即ち火力発電1か所分)を稼働させる方針である。また、三菱重工はガスタービン生産を、年間20基のところを36 59 東京、2011/3/16夕 60 日経、2011/4/06 61 共同, 2011/4/17 62 電気新聞、2011/3/28、日経, 3/25 ? 17 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 薰ワで増やす63。 その後、4月15日に東京電力が発表したところでは、電力需要がピークとなる7月末の時点で、電力供給は現状から3割増しの5,200万kwになるとし、これまでの4,650万kwを上方修正した。不足分は300万~800万kwとなる。増加分の550万kwの内、ガス火力発電としては姉崎、袖ヶ浦、千葉の3発電所でのガスタービンの新設で120万kw、他揚水発電が上乗せされた。他に火力発電所5基の復旧で11万kwが回復した64。 100万kw発電するのに必要なLNGは約100万tとされ65、消失した原子力からの発電分を、これまではミディアム、ピーク対応であったガスまたは石油火力発電所の稼働率アップにより補うしかない。当面は日本におけるLNG需要は900万t増加するとFetch Ratingsは見ている66。また、CERAは、被災した原発、石炭火力の半分を補う量として年間900万tのLNGが必要との見方を示した67。 LNGに関しては、ロシアに続いて仏のTotalも日本向けのスポットLNGのカーゴを振り向けることをコミットした。Totalによれば、日本は現状では年間220万tのLNGが追加で必要であり、今後は短期的には年間400万~500万t、長期的には700万~1,000万tのLNGが必要になると予測している68。 (2) 日本のLNG追加需要 これだけのLNGを供給するには、供給実績のあるLNG輸出国から、増量オプション(UQT)を行使し、更に不足分についてはLNGのスポット玉の供出を求めることになる。図4には、2010年の日本のLNG輸入比率を示した。 前記の通り、日本へのLNG輸出拡大に最も意欲的なのがロシアである。ロシアは、2009年3月に、Prigorodnoyeにあるサハリン-2のLNG基地から漸くLNG輸出を開始したばかりである。 2009年にロシアは661万tのLNGを生産したが、これは世界全体(2億4,277万t)の2.7%に過ぎ 63 日経, 2011/3/25, 産経, 3/26, 電気新聞, 3/28 64 日経、2011/4/16 65 ガスエネ新聞、3011/3/23 66 日経、2011/3/24 67 ガスエネ新聞、2011/4/01 68 Intranational Oil Daily, 2011/4/14 ? 18 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ネい69。この年、日本はロシアから277.2万tのLNGを輸入し、日本でのシェアは4.3%となった70。2010年には、ロシアからのLNG輸入量は603.1万tとなり、シェアは8.6%と急成長した71。LNG後発国としてのロシアは、そのシェアの拡大を目指している。 中期的にLNGの生産増を図るには、Prigorodnoyeのサハリン-2LNG基地で第3トレーンを急ぎ建造し、サハリン-2の増産分或いはサハリン-3キリンスキー鉱区のガスをLNG化することが考えられる。サハリン-1のガスをこの第3トレーンでLNG化して日本に振り向ける案も検討するようプーチン首相は指示した。しかし、これとても最低5年を要する事業である。 図4 日本のLNG輸入における2010年のソース比率。ロシアは2009年に初めてLNG輸出国となり日本のLNG輸入量の4.3%を占め、翌2010年にはこれが倍増した。 3)日本にとっての東シベリア天然ガス田開発への参画要請 ( 3月22日に河野註露大使がセーチン副首相から提案を受けたチャヤンダ、コビクタのガス田への参加 69 BPStatistical Review of World Energy, June 2010 70 World Gas Intelligence, 2010/2/10 71 ibid , 2011/2/09 ? 19 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ヘ、長期的な事業であり、今回の震災で生じたエネルギー供給ギャップの解消とは直接には関係がない(図5参照)。チャヤンダ油ガス田(ガス埋蔵量44兆cf、石油埋蔵量5億バレル)はGazpormが権益の100%を保有し、2010年から生産井の掘削が開始されている。2014年には石油の生産を開始し、ESPOパイプラインで搬出する計画である。2016年には、Yakutia-Khabarovsk-Vladivostokパイプラインが完成して、これにより極東地域に搬出されることになっている。この事業に関心を寄せるロシア以外の企業が今後現れる可能性はある。 コビクタ・ガス田(C1 57兆cf、C2 22兆cf)は、先月Gazpromが権益を取得したばかりであり、今後の開発スケジュール、搬出のためのパイプライン計画など必ずしも明らかでない点が多い。また、中国への輸出用に充当するというロシア高官の発言もあり現時点では関心を寄せる外資はない。ガス田の開発 計画を精査する必要がある。 図5 参加提案のあった東シベリアのチャヤンダ・ガス田、コビクタ・ガス田 ? 20 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 鴻Vア側によるChayanda及びKovyktaガス田への参加勧誘は、現在ガス価格交渉を巡って膠着している中国CNPCにとっては、大きな脅威となるとの見方がある72。これらのガス田からのガスは、紆余曲折があるにせよ将来的には中国へ輸出されるものというのがこれまでの中国側の見方であったが、今回の提案により、日本の資本参加を募る以上は、日本への供給を志向するものと受け止められる。4月14日から中国海南島で開催されたBRICs首脳会議で、原材料供給も議論されたが、中露首脳は、これまで2011年央に合意するとされていた天然ガス価格に関して、年末までに合意することを希望すると声明を発表し、天然ガス価格交渉が依然膠着であることを隠そうとしなかった。このような、ロシ極的な対日接近は、北東アジアにおけるエネルギー事情の潮目の変化を物語っている。 ア側による) サハリンのガスの輸入はLNGにすべきかパイプラインにすべきか サハリン-2のLNGは長期契約が主体であり、日本に優先的に回せる量には疑問があるが、サハリン-3のガスを加えてLNG事業を拡大することは、ロシアにとっては優先的な選択肢となっている。ロシア産LNGは本年2 月分のCIF価格で$9.79/MMBtuであるのに対して、カタールのLNGは価格競争力がある。ロシアにとっては、LNGの$13.26/MMBtuと割高73で、ロシア産にとっては十分に売枠の拡大を目指すことは、意義のある戦略である。 一方、未開発のままに残されているサハリン-1のガスに関しては、ロシア側はLNG化の検討に入ったところである。EssonNeftegazは、市場までの距離からの当然の帰結として日本に対してパイプライン供給を考えていたが、2004年にこれを断念し、中国へのパイプライン輸出を目指した。現在時点で、サ販ハリン-1のガスの扱いについても、前提なしで改めて広範に議論する必要があるだろう。 前記の「パイプライン建設は、LNGプランと建設よりもコスト的に30%安くなるが、パイプラインによる1国のみへの供給は、広域の市場を確保できるLNGに比して戦略的に明らかに劣るとしている74」というロシアのアナリストの見解は輸出国側の見解であり、裏返せば消費国側にとって、天然ガスをパイプラインで受け取る場合には、需要独占を生むことになり、戦略的により有利ということである。1970年代西欧各国がソビエト連邦産のガスを輸入する際にもこのような視点が重視された。 更に、価格について見ると、LNGでは太平洋圏でのJCC連動価格となるが、パイプライン供給では 72 Nefte Compass, 2011/4/21 73 World Gas Intelligence, 2011/4/13 74 Vedomosti, 2011/4/11 ? 21 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 積 (4「州と同水準になる。これは現状ではJCC連動価格20%安い水準である。更に投資では、前述の通りパイプラインは新規LNGより30%安くなるので、供給側、需要側双方にとって、PrigorodnoyeLNG第3トレーンを建設するよりも、日本向け天然ガスパイプラインを敷設する方が容易である。 でのここで一般から常に提示される疑問は、ロシア産ガスをパイプラインで受け取ることにリスクがあるのではないかという点である。ロシア側が、一方的に送ガスを停止することはないか、という疑念である。先掲のVedomostiの記事と正反対の見解が世の中にはあるということである。 2006年、2009年のウクライナのケースは、これまでも詳述したように、パイプライン通過国であるウクライナが、天然ガス価格の引き上げ(市場価格への移行)を拒否し、無契約状態のまま天然ガスを一方的に抜き取ったことからロシア側が供給停止をしたことに起因するもので、パイプラン通過国のリスクによるものである75。供給国側の問題ではない。 イ基本的に、パイプラインによる天然ガスの供給国と需要国は信頼関係で結ばれており、お互いに相手を裏切ることはできない性質を持っている。ロシア経済の専門家であるMarshall Goldmanは、これを「パイプラインにおける相互確証抑制(MAC: Mutual Assured Control)」と呼ぶことを提唱している76。これは、軍事用語の相互確証破壊(MAD:Mutual Assured Destruction)77をもじったもので、パイプラインが引かれた以上は、消費国が生産国に対して買い取り義務があるのは天然ガス売買契約の「テイク・オア・ペイ条項」があることから当然であるが、生産国も消費国の生殺与奪の権利を握っているのではなく、天然ガスを売って収入を得るためには安定供給を志向する他ないという考えである。あらゆるエネルギーというものは「燃料間競争」に晒されていることから、供給側がもしも恣意的に供給ストップといったユニラテラルな行動に及んだ際には、消費国側は別途の燃料を調達し、これまで建設された消費国へのパイプラインは信用を失い再び使用されることはないと予測される。この故に、パイプラインを巡っての関係国間の破滅的な闘争は自制 75 拙稿「繰り返されたロシア・ウクライナ天然ガス紛争」石油天然ガスレビュー、2009年No.2 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=200903_001a%2epdf&id=2561。拙稿「ロシアは信頼に足らないエネルギー供給国か-政治的に脚色・報道された対ウクライナ・ガス紛争」石油天然ガスレビュー、2006年No.2、http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=200603_001a%2epdf&id=656 76 Goldman, Marshal I.(2008), Petrostate, 邦訳 マーシャル・I・ゴールドマン「石油国家ロシア」日本経済新聞社、367p. 77 相互確証破壊とは、核兵器を保有して対立する陣営のどちらか一方が相手に対し戦略核兵器を使用した際に、もう一方の陣営がそれを確実に察知し報復を行うことにより、一方が核兵器を使えば最終的に双方が必ず破滅する、という状態を指し、報復として自分にも核弾頭が降ってくる事を承知で核攻撃を命令できる国家首脳は存在しない状況となる(Wikipedia, 航空軍事用語辞典等による) ? 22 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 Iに回避されるというのが「相互確証抑制」の考え方である78。 この「相互確証抑制」の考え方は、パイプラインにある本来的な性質の一つで、供給側がユニラテラルな立場を押し付ける道具とはなりえず、双方向の利益を保証する手段と言えるものである。パイプラインというものがエネルギーを利用した政治的な「武器」としてよりも、むしろ地域の「安定装置」として機能すると考える根拠となるものである。 Barnes et al(2006)79は、エネルギーにおけるジオポリティクスの議論において、それぞれの当事者の利益は重要であるが、協力関係から得られる共同の利得も同様に重要なものとなると、天然ガスパイプラインにおけるプラスサムの面を強調している。エネルギーは通常は売買契約に基づいて供給されるものであるから、需要側、供給側双方にとって利益となるものでなくてはならないことは自明であると言える。 このような性質を前提に、サハリン-1からの天然ガス輸入のあるべき姿を、震災後の日本のエネルギー構造を再構築する上で、改めて検討する必要があろう。 (了) 78 Goldmanは同著書の中で、ウクライナはこの「相互確証抑制」が機能しなかった例として挙げているが、同所執筆後の経緯を見ると、政権交代を経て、両国は安定的な関係に推移しており、Barnes et al(2006)の主張が説得力を持つと判断する。 79 Barnes, J., Hayes, M. H., Jaffe, A.M. and Victor D.G., Introduction to the study, p.5 in Victor, D.G., Jaffe, A.M. and Hayes M.H. eds. (2006), Natural Gas and Geopolitics, From 1970 to 2040, Cambridge University Press ? 23 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油企画調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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2011/04/25 本村 真澄
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