ページ番号1004199 更新日 平成30年2月16日

ロシア:対欧州で不透明さを増すGazpromの対外政策、アジアへは秋波

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レポートID 1004199
作成日 2011-11-28 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
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媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 基礎情報
著者 本村 真澄
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年度 2011
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抽出データ 更新日:2011/11/21 石油調査部:本村真澄 公開可 この2カ月ほど、ロシア側要人の発言は中国を中心とするアジア市場への期待感が溢れており、対中交渉において強気一辺倒で来たこれまでの姿勢と大いに異なる状況となっている。 ・この理由として、GazpromとEUの関係がこのところ厳しさを増し、対抗上、アジア市場を持ち上げているという推測がある程度成り立つ。 ・具体的には欧州市場における輸出ガス価格の”gas-indexation”への要求、EUによるエネルギー政策第3パッケージ要求とNord Streamにおける不透明感、等が挙げられる。 ・一方で、中国市場では、中国への中央アジア(+ミヤンマー)からの天然ガス供給増、四川省シェールガス開発等の成功期待があり、Gazpromが有利に交渉を展開できる素地は少ない。 ・これらは、いずれも経過を見なくては結論の出せない状況であり、Gazpromも慎重な対応を取らざるを得なくなっている。 ・シア: 対欧州で不透明さを増すGazpromの対外政策、アジアへは秋波 ロ10月25日、東京で開催された第13回日経フォーラム「世界経営者会議」に招かれたガスプロムのAlexander Medvedev副社長は、「アジアは天然ガスの成長市場」と述べ、中国などとのエネルギー協力を強調すると共に、「ガスの供給国と消費国との利益が一致することが必要」と講演した。そして、日中韓でのエネルギー相互融通を行う協力関係の構築を提唱し、LNGの有望市場としてアジア展開に意欲を見せた1。 一方11月13日、ホノルルで開催されたAPECにおいて、ロシアのMedvedev大統領は「将来、ロシアは欧州向けと同量のガスを中国に輸出する可能性がある」と述べた2。 同日、同じ会議に出席したGazpromのMiller社長は、APEC参加諸国の燃料消費は2030年までに80%増加するとの見通しを示し、欧州市場を第1に、次いで供給先の分散化という観点から特にロシア東部からアジア市場への供. ロシアにとっての中国天然ガス市場 (1) ロシア側のアジア・中国市場に関する積極発言 1 1 日本経済新聞, 2011/10/26 2 Nezavisimaya Gazeta(独立新聞), 2011/11/14 ? 1 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 汲フ成長性に期待する旨述べた3。 また、RBK紙によれば、11月中旬にロシアで開催された国際会議“Russian Gas 2011”における講演で、Alexander Medvedev副社長は、2030年までに中国の天然ガス需要は3,000億m3となり、欧州需要を上回る規模となること、そして中国が自国でシェールガスを生産するようになり、LNG輸入を増やしたとしてもロシアからのパイプラインガスを必要とするだろうと述べた。 10月11、12日にはプーチン首相が訪中したものの、天然ガス価格交渉は進展が見られなかった。少なくともその時点では、ロシア側は世界の景気の回復とともに欧州ガス市場での天然ガス需要そしてガス価格の伸びを期待しており、現時点でのガスの拡販を急ぐ必要はないものと解釈された。しかし、その直後にロシア側要人がこぞって中国市場の有望性を強調する状況となっており、何らかの背景の変化があるものと推測される。 2) ロシア専門家筋の冷やかな反響 (このような相次ぐロシア側の積極発言に対して、ロシアのジャーナリズムや専門家は一様に冷ややかに見ている。彼らの冷笑的な態度はいつもながらではあるが、今回に関してはむしろロシア政府側ののめり込んだ姿勢の方がこれまでと異なる印象を与える。2010年の欧州(非CIS)への天然ガス輸出量は対前年10.8%減という状況であるが、それでも1,074億m3あり4、中国との2006年の合意輸出量680億m3(あくまで実現した場合であるが)の1.6倍となっている。そして、現下の交渉の状況では、680億m3の内、Altaiルートの300億m3もガス価格を巡って5年間迷走を続けているなど、殆ど展望が見えない状況である。この輸出契約の実現はかなりの困難があると専門紙から指摘されている。これだけでもMedevev大統領発言は無理がある。 更に、ロシア「独立新聞」は、中国市場では2015年には、ガス不足が解消されると予測している5。中国国内でのガス生産量は2010年に963億m3で、対前年13.5%増と飛躍的な増加傾向となっている6。更に輸入に関して見ると、中国は2006年からLNG輸入、2009年12月14日からトルクメニスタンからのパイプラインガスの輸入を開始した。当初は21億m3/年、2010年を通じては40~50億m3、2011年には170億m3までの増量が期待されている。 3 IOD, 2011/11/16 4 Interfax, 2011/2/08 5 Nezavisimaya Gazeta(独立新聞), 2011/11/14 6 Statistical Review of World Energy, 2011 BP ? 2 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 A入量も中長期には増加が見込まれ、中央アジアからのパイプラインによるガス輸入としては650億m3が計画されている。トルクメニスタンからの輸入量が最終的に400億m3、カザフスタンは150億m3の輸送能力を持つパイプラインを2010年12月から建設開始、ウズベキスタンとは2010年6月に100億m3のガス供給で合意している。この合計が650億m3となる7。但し、トルクメニスタンは2015年以降、対中輸出量を更に200億m3上乗せして600億m3とする構想もある8。CNPCはアムダリア右岸でPS鉱区を保有しており、当面安定的な開発投資が見込まれる。トルクメニスタンから輸入増は既定路線であり、これを阻む要因は殆ど見当たらない。 第2西気東輸パイプラインは西部では2009年12月から稼働を開始し、広州までの東部区間は2011年12月31日までに稼働を開始する。第3西気東輸パイプラインは、輸送容量は同様に年間300億m3で2013年末に稼働開始の予定である9。 更に、2013年からミヤンマーからの年間100億m3~120億m3のガス輸入が加わる。 国内では、四川省を中心にシェールガス開発が着手される10。 ロシアはガス価格の決定方式で欧州企業から仲裁裁判に持ち込まれ、前記の通り欧州市場の縮小にも直面している。中国は、10月11日のプーチン首相の訪中でも天然ガス価格の合意に至らなかったが、上記のような動きを見ると、価格以前に天然ガス需給の動向を見極めたいとの意向が見て取れる。ロシア側がむしろ、決め手を欠いている状況と思われる。 欧州市場では、従来はロシアからのガスに関しては石油製品連動(oil-indexation)ガス価格が適用されてきた。これは、先行する6カ月乃至9カ月の石油製品価格をもとにフォーミュラでガス価格を決める 7 動向(古幡哲也, 2011年8月16日)「中央アジア:中国向けのガス出荷拡大を目論む中央アジア諸国」 http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=1108_out_f_Central_Asia_To_China_revised%2epdf&id=4458 8 11月23日、Berdymohamedov大統領訪中し、2014-15年にガス輸出量を650億m3/年とすることで合意した。2011年は170億m3、2012年400億m3の計画。対露は2008年まで420億m3。このため、カスピ横断PL計画が遅れる影響も考えられる。(Kommersant, 2011/11/24) 9 PON, 2011/11/21 10動向(竹原美佳、2011年5月25日)「シェールガスの期待高まる中国~商業開発に向けた官民の動き」http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=1105_out_m_cn_shalegas%2epdf&id=4380 ? 3 ? .Gazpromが直面する欧州市場との対立 (1)ガス価格の決定方式を巡る欧州企業との緊張関係 2Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 烽フであるが、2008年後半からの油価の下落局面でも、油価が下落した後も先行する高い油価の影響が残るため高いガス価格がしばらく維持されるなどの不合理が目立ったため、2010年初めには、一部のユーザーに対して最大15%までスポットのガス価格を組み込んだ値決め方式に修正した。 即ち、Vedomosti紙によれば、下記の通り3社に対して条件緩和を行った11。また、ガスプロムに近い筋によれば、西欧に対しては、殆どすべての契約に関して修正がなされているとのこと。 ・E.On Ruhrgas(独):長期契約で購入するガスの一部にスポット価格を取りこむ ・Eni(伊):2010年2月からFlexible価格とすることで合意。 ・Botas(土):Take or Pay条項の条件緩和 その後の報道では、これらの欧州向け契約に関して3年間変更するというもので、ガス供給量のうち10%から15%までをスポット価格に連動した価格で取引する取り決めであった。これにより、ガス価は25%低くなったという12。 2011年に入り英国のNBP(National Balancing Point)でのガス価格が$8~10/MMBtu(約$280~$350/1,000m3)レベルで推移して来たのに対し、一方で「アラブの春」の影響もあってBrentが高値を続け、油価連動(oil-indexation)のガス価格は$400/1,000m3近い高値を続けた。このことから、ガス価格を欧州の英国や大陸のhubにおけるガス価格に連動(gas-indexation)させるべきとの見解が強くなった。 11月中旬、パリで開催されたEuropean Autumn Gas Conference(EAGC)では、Eni, E-On, GdF Suezの3社が長期契約におけるガス価格のgas-indexationを強く主張した。E.OnのHans-Peter Floren取締役は、長期契約のガス価格設定の根拠としては、英NBP、蘭TTF、独NCGの各hubの1~2年先物を使うのが適切であると主張している。Gazpromから年間200億m3を輸入している独E.Onは、その16%に当たる32億m3がTTF hubの価格にリンクすることで合意していると言う。Eniもgas-indexationを要求しているが依然未決着である。GdF Suezはロシアから年間100億m3を輸入しており、15%が既にスポット価格にリンクしている13。 2)Nord Streamとガス購入コミットの現状 Nord Streamは、建設作業が順調に進捗し、9月6日にはパイライン建設作業が完了し、ロシ ( 11 Vedomosti, 2010/2/24 12 FT, 2010/2/26, Interfax, 2010/2/27 13 Argus FSU Energy, 2011/11/18 ? 4 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 A・バルト海に面したVyborgでのセレモニーにはPutin首相、Shloeder前独首相、Miller Gazprom社長らが参列した。11月8日に送ガスを開始し、ドイツのGreifswaldに近いLubminで催されたセレモニーには、Medvedev露大統領、Merkel独首相、Fillon仏首相、Rutte蘭首相、Oettinger EUコミッショナーらが参列しした。 図1 2011年に開通した東西の主要ガスパイプライン パイプラインは当然ながら、まだ本格稼働には至っておらず、能力一杯の年間275億m3の通ガスは2012年に達成される計画であるが、憶測を呼んでいるのが契約のコミット量である。契約は当初工事開始前の2006年になされ、竣工前の2010年に改めて契約がなされたが、増えるどころかGdF Suezなどは契約量を10億~15億m3減らしている。現状の契約は表1の通りで、輸送能力の275億m3を大きく下回り、7割程度の水準である。2012年には第2ラインが建設され550? 5 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ュm3の輸送量となるが、契約はとてもこの増量に追い付いていないのが実情である14。 一方、ウクライナの通ガス量1,200億m3の3割程度がNord Streamに振り向けられると言われているが、表1の契約がそれを含んでいるのか、別枠であるのか現状では確認できていない。GazpromのMedvedev副社長は「新しいガス、即ち現行の欧州向け供給量の枠外で供給されるガスがどの位の量を占め、どの位の量がウクライナ経由のルートから振り向けられるのかは、来年末までに判明するであろう」と語った15。政策アピールに絶好の場でありながら、歯切れの悪い表現に終始している状況は異様と言える。 新規の550億m3の供給増は欧州市場での供給過剰をもたらすと懸念されて来たが、受け入れが追い付いているか不明であり、供給過剰が現実のものになりつつあることを示している。 会社名 Dong Energy E.On Ruhgas Gas de France Suez Gazprom Marketing & Trading Wingas(BASF/Gazprom) 表1 合 計 Nord Streamにおける天然ガス購入契約15 デンマーク国 独 仏 英 独 2006年契約量 1Bcm/y3.3-42.54919.8-20.5同2010年 同 同 1-1.5 同 同 18.3-19.5 3)EUの第3エネルギー・パッケージとNord Stream 更にEUは、エネルギー市場改革の第3パッケージの履行をロシアに対して強く求めている。即ち前記の長期契約の変更に加え、Nord Streamに関してはGreifswaldでの陸揚げ以降の延長部分での第3者アクセスを求め、Gazpromはこれの免除を求めてロビー活動を続けている。両者の関係は先鋭化しており、11月にEUエネルギー・コミッショナーであるGunther Oettingerは、ロシアに対して「エネルギーを政治的武器に使っている」と非難し、ロシアに対抗するためにEU諸国の戦線の構築を呼びかけた。さすがに、これにはEU側にもロシアに同情する国も現れ、ドイツのMerkel首相は第3パッケージの変更をOettingerに求めている16。11月8日のNord Streamの開通式典の席上でも、Merkel首相はOettingerに対して(首相は彼をECに推挙した当人でもあるのだが)、EUのエネルギー戦略を 14 Argus FSUE, 2011/11/18 15 Vedomosti, 2011/11/09 16 同上 ? 6 ? (Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 pートナーたちにとってより理解し易いものとするよう要請したという17。 このような議論はOettingerの前任者のAndris Piebalgsの時もあったが、現在は第3パッケージが2011年3月から義務化されている点で状況がロシアにとってより厳しくなっていると言える。一方で、欧州の需要増を踏まえた施策として、第3エネルギー・パッケージの政策的な有効性に関しては依然として欧州内、特に企業において議論があり、冒頭に記したロシアによる中国重視発言は、このような議論に一石を投じようとする意図がある可能性がある。 .「東方ガス・プログラム」の見直しの動き 3 今年に入って、「東方ガスプログラム」見直しの報道が続き、対中ガス供給を再検討するのではとの観測が流れた。但し、先に記した最近のロシア政府要人の中国市場重視とは相容れないことになる。実際のところはどうなのか、依然として不明確である。 2007年、ユーラシアの東部において天然ガスの生産・輸送を規定した「東方ガス・プログラム」が策定された(内容に関しては「付録」参照)。ここでは、Vostok-50計画、即ちウスリースク(Ussuriysk)経由で、中国へ年間380億m3、韓国へ同120億m3合計500億m3を輸出するという計画になっている。 但し、その後の東シベリア・ロシア極東での天然ガス開発が、これに基づいて順調に進められたとは言い難い。特に、中国への天然ガス輸出に関しては、2006年3月に基本的な合意を見たものの、ガス価格等の詳細の詰めは一向に進捗を見せなかった。 2011年3月11日の東日本大震災を受けて、プーチン首相は直ちに日本へのLNG供給増を指示したが、その後も北東アジア市場の動向に注意を払っている。3月19日、サハリンを訪問したプーチン首相は、エネルギー省、天然資源省、Gazprom及び鉱区権者に対し、東方ガスプログラムについてアップデートした提案書を作成するよう指示した18。RBK紙によると、プーチン首相は透明性があり長期展望に基づいた価格政策に向けて努力することの重要性を強調したとのことである。これは、日本向けを優先し、中国向け年間380億m3という輸出目標を見直す内容であると、この時点では受け止められた。 その後の7月21日、Gazpromは、「東方ガス・プログラム」の進捗状況について検討し、カムチャッカ及びサハリンでのガス供給・分配ネットワーク建設が計画通り進んでいることを確認し、以下の優先事業の継続を決めた19。 17 同上 18 Interfax, 2011/3/19 19 Gazprom website、2011/7/21、Interfax, 2011/7/21 ? 7 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 サハリン-ハバロフスク-ウラジオストク(SKV)間のガスパイプライン建設 - Kirinskoyeガス田(サハリン-3)のインフラ開発、同ガス田の陸上生産設備とサハリン・ガスコンプレッサー・ステーションを繋ぐパイプライン敷設 - Kirinsky海上鉱区の地質調査 - カムチャッカのKshukskoye及びNizhnekvakchiskoyeガス田のインフラ開発 - 東シベリアChayandaガス田での総合地質調査及びインフラ開発 さらに、「東方ガスプログラム」の調整の一環として、ロシア東部にある有望な生産設備のリストを作成して2011年Q4に役員会へ提出するよう指示が出された。ここで注目されるのは、Kovyktaガス田、中国、韓国への輸出用パイプラインに関する言及が一切ないことであった。 一方、11月に来日したGazpromのAnanenkov副社長付け顧問で最もガス政策に詳しいと言われるMastepanov氏は、「東方ガスプログラム」に関して、見直しはなく計画通りに進捗するとの見解を示した。これが「見直し」の程度、即ち抜本的な見直しではなく、手直し程度であれば、特段の計画変更にあたらないと言っているのか、Gazpromでも叩き上げグループを束ねるAnanenkov副社長が、「東方ガスプログラム」見直しの動きを牽制しようとしているのかは不明である。 但し、次章に述べるようにGazprom内で異なる意見が存在する可能性がある。確実に言えることは、Gazpromの対外政策が甚だ分かりにくくなっているということである。 .サハリン・極東の動向 (1)サハリン-2LNGの第3トレイン問題 サハリン-2のオペレーターであるSakhalin Energy社は、LNGの生産能力を増強し、2010年末には1,000万tを生産した。本年の生産は1,080万tとなる見通しである20 。 4本年10 月25 日、Gazprom 副社長のAlexander Medvedev は、ガス輸出を所管するGazpromexport社長としての立場から、サハリン-2事業の共同事業体が、間もなく3基目のLNGプラント建設に係る決定を行う見込みであり、サハリン-2事業に係る権益を保有するShell、三井物産、三菱商事が当該LNGプラント拡張事業に参加する優先権を得るだろうと語った。サハリン-2事業でのLNG生産量能力は公称960万t/年であり、東日本大震災以降、LNG需要の増大が見込まれることから、新規市場を確保すべく第3トレインの追加によりLNGの生産能力の50% 20 Interfax, 2011/10/07 ? 8 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 g大が話し合われてきた。東日本大震災後、Gazpromは既存契約とは別に追加で5隻分(32.5万t)のLNGを日本向けに供給している。日本のLNG輸入量は2011年に12.2%増の7,860万t/年となり、2012年には8,160万t/年となると見込まれている21。 サハリン-2のガス埋蔵量だけでは第3トレインでのLNG生産量には不足であり、サハリン-1または3から埋蔵量を流通して貰う必要がある。実際、そのような計画がサハリン州のホロシャ―ビン知事から提案されたことがあり、隣接域のプロジェクトにとっては大きな影響を与える計画案となっていた。 しかし、11月15日に開かれたロシア・ガス会議の席で、Gazpromの「東方ガスプロジェクト」を統括するViktor Timoshilovはサハリン-2の株主が既存の2基のトレインからの安定した生産を望んでいることを理由に、第3トレインの建設は根拠がなく無責任な話であると述べた22。 サハリン-2のLNG事業計画に関して、同じGazpromで異なった見解が発表されているのは、驚くべき事態である。社内で2つの異なった勢力によるせめぎ合いが展開されている可能性がある。 他鉱区の天然ガスをサハリン-2のLNG第3トレインに使うというのは、他の天然ガスの輸出余力を奪うものであることから、これに反対するというのは、他鉱区の天然ガス輸出余力を温存したいという考えと思われる。但し、これが中国や韓国への輸出ガスのソースとしたいのか、或いは、Vladivostokに計画しているLNGへの供給ソースとして活用したいという考えであるかは、現時点では結論を見いだせない。 (2)サハリン各鉱区の動きと天然ガス輸出余力 周辺地域への天然ガス供給ソースとして、サハリンは重要である。1,3鉱区の石油ガス生産の現状と、ガス輸出の可能性について以下に見る。 1) サハリン-1 サハリン-1事業の2010年の石油生産量は、昨年比7.3%増の753万t。2010年9月のOdoptu鉱床での生産開始により生産量が増えた。2011年のOdoptu生産量は165万tとなる見通しである。Chayvo鉱床の生産量は2010年の630万tから2011年は588万tに減少する。2010年にDe-Kastri港から出港した全75隻のタンカーの内、日本向けは35隻。他は、韓国8隻、タイ2隻、ニュージーランド1隻、韓国Yeosu経由アメリカ向けが29隻。石油の平均輸出価格は$606.8/ 21 Reuters, 2011/10/25 ? 9 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 狽ナあった。随伴ガスの2011年の販売量は、2010年の16億m3から2011年は26億m3に増加する計算だが、実際の需要量によって決ってくる23。 問題は、現状では圧入されている約60億m3の随伴ガスが、SKVパイプラインの稼働開始で、どの程度、Vladivostokまで送られるようになるかである。 2) サハリン-3 Gazpromが行うS-3事業Kirinsky鉱区のMynginskaya構造で、探鉱井(1坑)からガスおよびガス・コンデンセートが確認された。Kirinsky鉱区内で鉱床が発見されたのは、2010年9月のSouth Kirinskoye鉱床(C1+C2ガス埋蔵量:2,600億m3、コンデンセート可採埋蔵量:2,990万t)に続く2番目。Kirinskoye鉱床のガス埋蔵量はC1:750億m3、C1+C2:1,370億m3に増加し、コンデンセート可採埋蔵量は860万tが1,590万tに増加しており、2012年からの生産開始が見込まれている24。米国のFMC Technologies社が同ガス田の海底生産システムに関して契約を結んでいる。これも、Vladivostokまでの供給ソースとして期待されている。 但し、2017年以降は東シベリアのChayandaガス田が生産開始となり、ヤクーチャ-ハバロフスク-ウラジボストク(YKV)パイプラインで、年間250億m3が供給されるようになる。これら競合するガスソースがあり、それらの利用の比率や、対中国向けとなる分等に関する発表は一切なく、「東方ガスプログラム」のようなスキームとはならないのではないかとの疑念が生じる。また、「東方ガスプログラム」では特段計画されていない対日ガス供給が、どの程度の規模で想定されているかも、依然不明である。 極東における天然ガスフローの計画自体が不透明な状況に置かれている。 3)対韓国の天然ガス供給 またMedevede副社長は、同社は既に韓国および北朝鮮のパートナーとそれぞれ事前協定を締結しており、ガス供給に係る主要条件については韓国側と交渉中であるとした。9月15日に韓国Kogasと締結したロードマップによれば、当該作業は2012年1月までに完了し、2012年半ばに主要契約が締結され、2017年にはガス供給が開始される見込みである。北朝鮮の石油省との合意に従い、同国内におけるガス・パイプライン建設はGazpromが担当することになるとのことであ ( 22 IOD, 2011/11/16 23 Interfax, 2011/10/13 24 Interfax, 2011/10/06 ? 10 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ?25。 5.まとめ ・欧州でのGazpromの立場は、個別事業においては、例えばNord Streamの竣工など、基本的には長期的な安定した供給ソースとして十分に強固な存在基盤を有しているものの、第3エネルギー・パッケージの発動等、政策次元で制約的な施策を突き付けられている。 ・中国のガス市場においては、トルクメニスタンからのガス輸出が一方的に増加する一方で、露中交渉はこの5年間全く進捗していない。中央アジアからの天然ガス供給は増加する傾向にあり、更に中国国内でのガス生産増、四川省でのシェールガス開発期待などから、Gazpromの参入余地は狭められる傾向にある。 ・サハリン-2でのLNG増産に関しては、Gazprom内部で、その方針を巡って対立がある可能性があり、極東での天然ガスフロー全体に関する対外政策も不透明さを増している印象がある。 ・対EUでは制約要因を抱えつつも、いくつかの国、エネルギー企業とは密接な関係を有していることから、慎重に局面の打開を図って行くものと思われる。 ・アジア地域に関しては、対日、対韓で一定の進捗はあるが、対中国ではトルクメニスタンに大きく出遅れている状況であり、改めてその重要性を確認しつつ、中国への参入を呼び掛けている。対中交渉でのこれまでの強硬な対応が軟化しつつある状況と思われる。 録] 「東方ガスプログラム」について 付 [ ウラジオストク向けのパイプライン建設は2007年9月に承認を受けた「東方ガスプログラム」(図1)に基づくものであり、その原型は1990年の”Vostok Plan”にまで遡り得る。このプログラムの正式な名称は「中国その他のアジア太平洋諸国へのガス輸出を考慮した東シベリア及び極東における統一ガス生産・輸送・供給システム構築計画」といい、2002年7月16日付けロシア連邦政府令第975-R号に基づきガスプロムを東シベリア、極東における全ての天然ガス事業のコーディネーターに指名し、計画の策定にあたらせた。 25 読売, 日経, IOD, 2011/9/16, Itar-Tass,2011/10/26 ? 11 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 vログラム策定には5年掛かり、2007年6月15日、政府燃料エネルギー部門委員会(Commission on the Fuel and Energy Sector, FES)の承認を経て、6月19日に閣議で承認、そして9月3日に産業エネルギー省省令第340号26で承認され、9月7日に公表された27。 その概要は、図7-7に示したように、サハリン、東シベリア(ヤクーチャ、イルクーツク、クラスノヤルスク)に4つの天然ガス生産センターを確立し、イルクーツク、クラスノヤルスクは主に域内と統一ガス供給システム(UGSS)への供給に向け、域内供給と太平洋諸国に対する輸出をサハリンとヤクーチャ地域が担うというものである。サハリンからはハバロフスク、沿海地方まで供給される。総投資額は2.4兆ルーブル(940億ドル)と見込まれる。 ハバロフスク、ウラジオストク等の極東での天然ガス需要は年間60億m3であるが、「東方ガスプログラム」によれば、ウラジオストクまで年間500億m3以上のガスが供給される計画となっている。この余剰分は、同プログラムに記されたVostok-50計画によれば、ウスリースク(Ussuriysk)-綏芬河経由でパイプラインにより中国へ年間380億m3、更に韓国に対して年間120億m3輸出されるというもので、両者合計して500 億m3となる。「Vostok-50 計画」とは、西(Zabaikalsk-満州里)や中央(Blagoveshchensk-黒河)からではなく東のウスリースク-綏芬河(すいふんが)経由で、年間500億(50 billion)m3のガスを供給するという意味である。 対中国年間380億m3という量は、2006年のプーチン大統領(当時)の訪中で既に合意しているレベルである。韓国に関しては、2008年9月に李明博大統領が訪ロした際に、Kogas-ガスプロム間の覚書として、2015年から30年間、パイプラインならば年間100億m3/、LNGならば750万tを供給することで合意しており〔中央日報、2008/9/30〕、「東方ガスプログラム」にほぼ沿った内容となっている。 26 産業エネルギー省省令第340号(http://www.minprom.gov.ru/docs/order/87/print) 27 ロシア産業エネルギー省website, Vedomosti, 2007/9/07, Interfax, 9/10 ? 12 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ネ 上 図2 「東方ガスプログラム」に記された主要な天然ガス生産センターとパイプライン計画(2008年版) ? 13 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
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2011/11/28 本村 真澄
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