イラク戦争から10年 進展する石油開発 ‐IEA World Energy Outlook 2012イラク特集の意味‐
| レポートID | 1004333 |
|---|---|
| 作成日 | 2013-03-19 01:00:00 +0900 |
| 更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
| 公開フラグ | 1 |
| 媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
| 分野 | エネルギー一般基礎情報 |
| 著者 | |
| 著者直接入力 | 西村 昇平 |
| 年度 | 2012 |
| Vol | 0 |
| No | 0 |
| ページ数 | |
| 抽出データ | (BP統計等から筆者作成)※4/3日付グラフデータの一部を訂正済 ? 1 ? 更新日:2013/3/19 石油調査部:西村 昇平 年の3月20日でイラク戦争開戦から10年が経過する。イラクでは南部油田地帯での石油開発が順調に進展していることや、ペルシャ湾に新たな原油出荷施設が完成したことから、昨年より、最大で日量70万バレル程度の増産を達成している。また、OPEC内でもサウジアラビアに次ぐ第2位の石油輸出国になり、石油開発の分野では、目覚ましい発展を遂げつつある。 今イラク戦争から10年 進展する石油開発 ‐IEA World Energy Outlook 2012イラク特集の意味‐ 003年の戦争直後は、強権体制の終焉から国内はポジティブな解放ムード一色であったものの、同年8月の国連事務所(カナルホテル)爆破事件以降、その雰囲気は一変した。その後イラク国内治安は悪化の一途をたどり、2006年から2007年にピークをむかえ1週間に1000人以上の人々がテロなどで殺害されるという悲劇的な時期があった。当時から継続的にイラクの状況をウオッチしてきたが、この時の国内の劣悪な状況から考えると、昨今の増産は復興に向けた大きな前進であると感じる。 2のような石油開発での進展を支えているのは、第2期目を迎えているマリキ政権の継続的な石油政策の実施や南部油田地帯の治安が以前より回復してきている点が考えられる。一部地域の治安の回復によって、欧米人も含めた石油関係技術者がイラク国内で活動できることになったことも、増産をあと支えしている。ベーカーヒューズ社(米)の発表によると、石油開発や探鉱に必要な掘削リグが現時点で65基イラク国内に持ち込まれており、中東地域で稼働するリグの18.5%が同国で稼働している。これは、85基のリグが稼働しているサウジアラビアに次ぐ稼働数であり、イラク国内での石油開発が活発に行われている証しでもある。 こグラフ1】イラクの原油生産量の推移(単位:万バレル) 【 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 P.新たな時代の幕開け 2009年6月にバグダッドでイラク国内の油ガス田を対象にした第一次国際入札が実施された。この入札を皮切りに、エクソンモービル、BP、ロイヤルダッチ・シェルなどの石油開発大手のメジャーズがイラクの石油開発に参入を果たしている。また、メジャーズだけでなく、CNPCなどの中国勢、Lukooil、Gazpromなどのロシア勢の積極参入も際立つ。 時、私は、バグダッドで勤務していたことから、市内で開催された第一次国際入札会場にいた。今でも 当鮮明に覚えているが、世界第2位の埋蔵を誇る超巨大油田であるルメイラ油田をBPが落札した瞬間、人々の熱気の中、大きな拍手とどよめきに会場が包まれた。このBPによるルメイラ油田の落札は、70年代に油田権益が国有化され、80年代からのイラン・イラク戦争などの3度の戦争の時代、国連による経済制裁を経て、初めて外国の石油会社がイラクでの石油開発に参入する新たな時代の幕開けであった。 【表1】イラク政府が締結している油田開発契約 (イラク石油省HP及び報道から筆者作成) ? 2 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 Cラクではまだ西部砂漠地域を中心に探査・探鉱活動が十分進んでいないものの、現段階で判っているだけで、原油可採埋蔵量は世界第5位の1431億バレル(BP統計2012年)あまりの莫大な量であり、言うまでもなく、その規模は外国石油会社の投資先として極めて魅力的である。このようなこともあり、イラク政府は、第一次国際入札に引き続き、2009年12月に第二次国際入札を実施しており、結果的に11カ所の油田開発契約を欧米メジャーズを含む外国石油会社と締結することに成功している。また、第一次入札前の2008年にイラク政府は、アフダブ油田開発のみ中国政府からの政治的な支援を背景に、CNPC(中)との間で入札の手続きを取らず契約を締結している。翌2010年10月には、ガス田を対象とした第三次国際入札、さらに、2012年5月には未探鉱鉱区を対象とした第四次国際入札が実施され、それぞれの入札で外国石油会社と契約を締結することに成功している。 .IEA World Energy Outlookがイラクを特集 2 ここ最近、イラクは、エネルギー業界で再び国際的な注目を集めている。昨年10月、IEA(国際エネルギー機関)は、国際的なエネルギー分野の指標となっているWorld Energy Outlook 2012(WEO)においてイラクのエネルギー部門が、世界のエネルギー市場の安定と安全保障に多大な貢献を成し得るとの報告を発表した。IEAは、2035年にかけて今後も世界の1次エネルギー需要は中国、インドを中心に増大していき、それら追加需要への原油追加供給拠点として、イラクが最も重要な存在になると主張している。昨年前半からイラクは、石油開発の進捗が順調であることから大増産を達成していて、ついに昨年7月にイランの生産量を追い越し、サウジアラビアに次ぐOPEC内で第2位の原油生産国となっている。 表2】IEAのイラクの原油生産見通し (万バレル/日) 【 中心的シナリオ 高水準ケース 遅延ケース 年 2011 2020 原油生産 原油輸出 270 190 610 440 2035 830 2020 920 2035 1050 2020 400 2035 530 630 710 790 270 380 (出展:IEA World Energy Outlook 2012) ※World Energy Outlook 2012 イラク特集は、以下アドレスより無料でダウンロード可能。 http://www.worldenergyoutlook.org/media/weowebsite/2012/iraqenergyoutlook/Fullreport.pdf ? 3 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 i出展:IEA World Energy Outlook 2012) た、IEAはイラクからの増産が世界のエネルギー安全保障をもたらすとも指摘している。今のところ、現 ま状で世界市場における余剰原油生産能力は、大まかに見積ると日量400万バレル弱で、事実上OPECに依存していて、大半はサウジアラビアによるものである。当座、イラク政府に余剰生産能力を意図的に確保する政策的重要性はないが、将来的にイラクが余剰能力を保持すれば、世界のエネルギー市場に新たな信頼感をもたらすことに繋がる。特に、原油を輸入に頼っている日本にとって、エネルギー政策上、重要な指摘である。 のレポートを取り纏めたのは、国際的にも著名なIEAチーフエコノミストのファティ・ビロル(Fatih Birol) こ氏で、ガドバン・イラク首相顧問(元石油相)をはじめとするイラク政府の関係者やIEAが世界各国から招聘した専門家の協力のもと作成されている。私自身もイラク戦争後にバグダッドで勤務していた経験があることもあり、IEAからの要請でこのレポートの作成に関わっている。このイラク特集の編成を検討するための国際会議に出席した際、会議の冒頭、ファティ・ビロル氏が今回のイラク特集は、まだ復興途上であるイラクを支援することも一つの目的としている旨述べたことが大変印象的であった。今後の国際市場でのイラクの重要性だけでなく、イラク国内のエネルギー事情、インフラの状況、課題、今後の原油・天然ガスの生産計画を分析して報告にすることによって、イラクの投資環境に関する適切な理解を可能し、イラクへの国際的な投資を促進したいとの想いを感じた。 011年IEAが発表したWEOでは、世界のエネルギーミックスにおける天然ガスの重要な役割を“Are we 2entering a golden age of gas?(ガスの黄金期到来か)”として報告しており、この報告は国際的に大きな反響を得ることになり、世界がシェールガスをはじめとする天然ガス資源の重要性に目がむけられるきっかけとなった。また、ファティ・ビロル氏は、これまでフォーブス誌のエネルギー分野に最も強い影響力のあ? 4 ? 【グラフ2】2035年における追加増産量(中心的シナリオより) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 髏「界の7人にも選出されている。このようにエネルギー分野に於いて極めて強い影響力のあるファティ・ビロル氏がWorld Energy Outlookでイラクを特集する意味は大きく、その報告内容が注目されていた。 EAが取り纏めたWorld Energy Outlook 2012のイラク特集において最も注目される点は、イラクの原油 I生産が今後2035年までにどのように伸びていくかという見通しである。IEAは、この点を議論するために中心的シナリオ(Central Scenario)を設定しており、イラクの原油生産が現在の日量約300万バレルの水準から2020年には倍の日量610万バレル、2035年には日量830万に達するとしている。また、これら2035年のイラクの追加増産量は560万BDに達し、プレソルト層開発が進むブラジルやオイルサンド、シェールオイル開発が進むカナダからの原油増産を遥かに超える世界で最も大規模な増産が見込まれるとしている。 【グラフ3】イラクの原油生産見通し (単位:千バレル/日) (筆者作成:IEA World Energy Outlook 2012、イラク石油省HP、報道等) ? 5 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 サもそも、なぜイラクと思われる方もいると思うが、イラクでの油田やガス田開発の最大の特徴は、ほとんどの油ガス田は既に発見され莫大な埋蔵が確認されていて、採取のために技術的な困難も要さず、容易で低廉なコストで原油や天然ガスの採取が可能であることである。世界中の多くの探査リスクや地質的リスクの少ない場所における原油や天然ガスの開発は既に実施されており、イラクのような場所はほとんど存在しない。石油開発業界では、最近米国を中心に脚光を浴びているシェールガスやシェールオイルのようなシェール資源開発や大水深と呼ばれる水深1000m以上の沖合での石油開発が主流になってきている。 れまで採取が困難とされていた地層などでの開発・生産は、非在来型資源開発と呼ばれ、技術的なチ こャレンジを要するために、開発にはこれまでの油ガス田開発に比べ高いコスト負担が必要とされる。場所や諸条件によってコストは変わるので一概には言えないが、北米でのシェールガスの開発コストは、バレル換算で24~40米ドル程度、シェールオイルに関してはさらに高くバレル当たり40~70米ドルという水準である。一方で、イラクをはじめとする中東での石油開発は在来型資源開発と呼ばれ、開発コストはバレルあたり2~6米ドル程度で、シェール資源開発と比べると極めて低い水準なのだ。つまり、北米を中心としてシェールガスやシェールオイル開発が活発化している背景には、イラクの様に簡単且つ低いコストで生産が可能な油田やガス田からの資源を取りつくしてしまったことや高油価水準などの後押しもあり、シェールガス等の資源開発に移ってきたという事情がある。 近のイラクでの石油開発ビジネスでは日本勢も健闘している。JAPEX(石油資源開発)がイラク南部ガ 最ラフ油田の権益、INPEX(国際資源開発)が第10鉱区の権益を取得することに成功している。さらに三菱商事、ロイヤルダッチ・シェルからなるJVは、南部油田から産出される随伴ガスやLPGを回収して、イラク国内だけでなく将来的にはLNGとして出荷する事業の権益を取得している。日本企業のビジネスは、石油開発だけに留まらず、2003年のイラク戦争後実施された日本政府の1500億円規模のODAでは、豊田通商(旧トーメン)をはじめとし、丸紅、日立、住友商事などの日本企業が発電所などの電力関連施設や国内通信施設などを建設している。また、最近では自動車販売、鋼管、プラント制御機器、病院建設、医療機器販売でも日本企業はイラクでのビジネスで確固たる地位を確立しつつある。 般的に、石油開発は、投資コストが高い割に探鉱の失敗等の投資リスクの高いビジネスとされていて、 一.イラクでの石油開発の魅力とビジネス 3? 6 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 サれに耐えうる企業の資産規模、様々なリスクに対するマネージメントが必要とされている。そして、そのリスクに見合うだけの高いリターンを得られるというのが一般的なビジネスモデルである。石油開発の世界では数10億円かけて井戸を掘っても原油が出てこないことはよくある話だが、イラクではこの部分のリスクが低いと考えられているのだ。その一方で、イラクには、特有のリスクが存在している。 在イラクでのビジネスに携わっている企業は、イラクでの不安定な政治、まだ十分回復していない行 現政機能、関連法制度整備の遅れなどに直面しており、これらに起因してイラク政府の意思決定がスムーズに行われないケースが増えており、それに伴う経済的な損失リスク軽減が課題となっている。また、イラク戦争後の治安は依然として不安定で、国内でのビジネスでは、資機材の輸送や事業地警備のためのコストが高騰し、事業に関連する保険料率も高い水準で、事業費に占める治安リスクに対応するためのコストの割合が高いという点が特徴的である。また、万が一、イラクで石油開発等に従事する技術者等が反抗勢力によって殺害される等の事案が発生した場合に、包括的な企業コンプライアンスに影響を受ける可能性もある。現代では、戦乱状態に近い場所においてイラクでの油田開発のような大規模な投資活動が展開された事例は初めてで、イラクでのビジネスはまだ誰も経験したことのない新たな領域への挑戦と言える。イラクでの石油開発などの投資ビジネスでは、治安の混乱、周辺国の不安定要素、現地治安の問題等が存在することから、企業のポートフォリオの中で地政学リスクへのチャレンジを必要とするフロンティア事業と位置付けられることがある。 かし、このようなマイナス面がある一方で、IEAの原油増産見通しに象徴される通り、世界でのエネル しギー市場からみると、とりわけ原油に関しては極めて増産ポテンシャルの高い国であることが分る。つまり、増産するためには、上流開発を継続し、さらに原油出荷インフラを整備する必要があり、そこにビジネスチャンスを見出すことができる。IEAの報告の中では、想定される投資額は、年間投資必要額はこの先10 年が最大で、IEAの想定する中心的シナリオ通り石油開発が進む場合、年平均250 億ドル以上の投資が発生し、エネルギー分野への投資額の累積は5,300 億ドル超になるとしている。特に、上流開発に関連するプラント建設、パイプライン建設、油田開発に伴い発生する随伴ガスの活用事業、LPG、LNG関連施設、電力関連施設の整備は、まだ十分に進んでおらず、今後イラクが原油並びに天然ガスの生産を伸ばすに従い、これら施設建設の需要が急速に伸びることになるだろう。 違いなく、石油開発は、イラクで最も進展している投資ビジネスである。そこで得られる情報やイラク政 間府関係者との人脈は、他のビジネス分野においても有益に活用できる可能性がある。最近、石油開発権? 7 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 vの一部資産売却の動きもある。イラクでのビジネスの潮流に乗るための足がかりとして、石油開発への新規参入は有益である。イラクでのビジネスを 5年、6年という短期的な視点でみると地政学的なリスクの高いビジネスとの結論が導かれるかもしれないが、IEAの将来の見通しのように、今後10年、20年という中長期のスパンでイラクでのビジネスを考えことができる場合、同国はエネルギー・ビジネスにおいて世界の中で最もポテンシャルの高い国であるといえるのではないか。 .最近のイラク石油開発の注目点 6最近のイラクでの石油開発における注目点は、世界最大の石油開発企業であるExxonMobilのイラク中央政府とクルド地域政府の関係である。2011 年11 月11 日付のFinancial Times 紙は、クルド筋の話として前月にExxonMobil(米エクソンモービル社)がクルド地域政府と油田開発に関する探査探鉱契約を締結したと報じた。それまで中央政府は、クルド地域政府(KRG)が独自に実施する石油開発を違法であるとしており、同地域政府と契約を締結した企業の中央政府域での開発案件参加を認めず、入札への参加資格も取り消すという対応をとってきた 。ExxonMobil は、既に中央政府域で実施されている第一次入札案件である西クルナ/フェーズ①案件の開発契約をオペレータとしてイラク石油省と締結していたことから、ExxonMobil がKRG と契約したことによる中央政府の対応が注目されている。 の後、イラク政府はExxonMobil に対し、同社のKRG と締結した契約は違法だとの立場を示した上で、 そ同社に対し中央での事業かクルドでの事業のどちらかを選択するべきであると申し入れを行っていた。ExxonMobil のKRG との契約報道から1 年以上が経過し、ここ最近ExxonMobil が現在中央政府と締結している超巨大油田の西クルナ/フェーズ①案件の権益をCNPCやプルタミナへ売却する動きが明らかになってきている。昨年末、ExxonMobil は、権益取得の可能性のあるすべての企業に対し、西クルナ①の油層情報等に関するデータルームを公開した模様である。ExxonMobilが実際に権益を売却するかどうかは、CNPCなどの企業の提示条件と折り合いが付けられるかやイラク政府がそれを了承するかによる。また、ExxonMobilが権益を売却するう場合、そのすべての権益を売却するか、一部を売却するのかも注目される。 xxonMobil が西クルナ/フェーズ①案件から距離をとり始めていることによる影響も出つつある。世界を E代表する石油開発会社であるExxonMobil は、リーディング・コントラクターとしてイラクの超巨大油田の開発に携わっているだけでなく、特に南部油田地帯への海水の圧入水輸送事業を取り仕切っていた。? 8 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 RG との契約が明るみに出た後、ExxonMobil は、イラク側との協議を踏まえ、海水の圧入水輸送事業から外れることになった。この圧入水輸送事業は、総事業費は120 億ドル以上と見積もられており、250万BD の処理済みの海水を輸送するものである。河川からの取水が認められていない石油開発案件では、圧入水を確保することは極めて重要であり、貯留層の状態にもよるが開発初期には自噴が期待できるものの、イラク南部での開発にて計画通り増産していくためには水圧入が必要不可欠である。現在はSOC(南部石油公社)が圧入水輸送事業をマネージメントしているものの、SOC にはこのような大規模事業のマネージメント経験がないことから、中長期的なイラク政府の原油増産計画に遅れが生じる可能性がある。 xxonMobil と同じようにイラク中央政府と開発契約を締結していたにもかかわらず、Gazprom(バドラ油 E田:オペレータ)、TOTAL(ハルファヤ油田:ノンオペレータ)は KRG と契約を締結している。また、これまで中央政府域での石油開発で関心を示し、入札資格を取得していたChevron、Repsol、Hess、MarathonもKRG と契約を締結している。KRG では空きの鉱区がほとんどなくなっているので、既に参入している事業者からの権益所得という形での参入になると思われるが、Statoil、CONOCO、BG などの大手もKRG での事業に関心がある模様であるとの情報がある。ExxonMobil の資産売却が円滑に行われれば、さらにイラクに参入する石油開発事業社に入れ替わりが起こる可能性がある。 月12日にイラク石油省は、ナシリア油田開発と近隣に製油所を建設・運営する統合事業の事前入札 今資格審査結果を発表しており、上流分の資格ではないものの、下流分の入札資格をクルド地域政府と契約を締結しているTOTALが取得したと発表している。この発表が、即座にイラク中央政府のクルド地域政府での石油開発契約に関する姿勢を変えたと言えないが、今後イラク政府がクルドで石油開発契約を締結している石油開発会社に対して、どのような方針を示してくるかが注目される。 .メジャーズの一部がクルド地域政府と契約を結ぶ理由 7特にExxonMobil、TOTAL のような石油開発メジャーズが、最近、中央政府域での開発からクルドにシフトしている理由は、メジャーズのポートフォリオの変化、中央政府との契約上の収益性の低さ等が考えられる。これまでメジャー企業は、下流事業(精製、販売、石油化学)と上流事業のシナジー効果を活かして、石油・ガス価格の変動のリスクにも耐えうるようなビジネスモデルを確立していた。しかし、最近の長引く高油価水準によって潤う石油開発産業に、新たな潮流が生まれた結果、企業にもよるがメジャーズ? 9 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 綠bェ続く中で、メジャーはかつてないほどの収益を上げており、その8 割から9 割は上流部門で稼 原いでいるのが実態である。その高い収益性を反映して投資額は、8 割~9 割が上流事業に振り向けられており、上流シフト(特に探鉱案件狙い)を鮮明化させている1 。つまり、イラクでの事業の参入当初は、各油田からの生産量は100 万BD 以上が期待できることから当初は“量的な確保”を思考してイラクの事業に参加していた企業が、ここ最近の下流産業の不振(需要の低迷)や高油価水準に支えられ、比較的小さな油田の生産量でも高い収益をあげられるという状況になった。このことによって、イラクでの事業の最大の魅力である量的なものにメジャーズが魅力を感じなくなってきたことが、クルドへのシフトの主要な理由と考えるのが自然であろう。一部専門家の中からは、イラク国内の治安上の問題等が指摘されているが、ExxonMobil がイラク事業に参入した2009 年から現在の治安状況に大きな変化はなく(むしろ改善)、クルドとの契約を選んだ主要な理由とするには合理性がない。 た、イラクでの事業は “量的な確保”では他国での事業を圧倒するが、これまでのイラク政府との石油 ま契約形態は、サービス契約(役務の提供)であって生産物の所有権が担保されていない。サービス契約の場合、油田自体が100 万BD 生産していたとしても米国証券取引所の規定上、各企業の生産量等としてカウントできるのはごく一部のみ(数%)となってしまう。一方、KRG が行っている開発契約はPS 契約(生産分与契約)となっており、契約内の一定の取り分や、埋蔵量を自社の生産量や資産として株式市場にて自社のポートフォリオとして計上することができる。イラクでの中央政府域からクルド地域へのメジャーズの動きは、量的な確保というよりは収益性の高い事業へのシフトし、少しでも自社のポートフォリオとして株式市場で計上できる生産量・埋蔵量を増やし、自社株の資産価値を高めようとするメジャーズののポートフォリオに変化が起こっている 。 ここ最近イラクは、2011年の日量270バレル程度の水準から、2012年後半には最大日量320万バレルの水準まで大幅増産を達成している。この増産を支える要因は、主に第一次入札対象のルメイラ油田、ズベイル油田における開発の進捗、ペルシャ湾にある南部出荷設備の一部完成がある。いくつかの課題は存在するものの、イラク南部のルメイラ油田、ズベイル油田等での開発は順調に進捗していることもあり、既存の出荷設備を上回る生産能力を有しており、特に南部海上出荷設備や陸上パイプライン、貯 1 JOGMEC動向 スーパーメジャー:「スケール」から「クオリティ」へ, 市原, 2012/11/05 ? 10 ? 各社経営陣の思惑が垣間見られる。 .まとめ 5Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 蔵タンク等の整備が進めば、さらに日量数百万バレルの増産に対応可能な状況である。今後、イラクがさらに増産してくる可能性は高い。 ジネスという視点だけでなく、冒頭で余剰生産能力に関し述べた通り、イラクと世界のエネルギー安全 ビ保障は密接な関係が存在している。このようなこともあり、日本政府はイラク戦争後3500億円を超える円借款をイラクに供与していて、その資金の一部がイラク南部の海上原油出荷施設及び海底パイプライン建設に充てられている。この事業は、日本オイルエンジニアリング社(JOE)が中心になり実施されており、復興途上のイラク政府だけでなく、世界の原油市場への貢献が期待されることから、米、英政府をはじめとする国際社会からも高い評価を得ている。近い時期に完成が予定されており、日量100万バレル前後の原油がペルシャ湾に浮かぶ出荷施設から輸出されるようになると、主にアジア市場向けの原油供給がさらに増えることになる。 EAの報告書ではイラクが潜在的に持つ炭化水素資源の開発とその結果得られる収入を効果的に管理 Iできれば、同国の社会経済的発展の原動力になり得る。逆に失敗すれば、イラクの復興が妨げられるとともに、世界エネルギー市場は混乱状態に向かうとものとしている。IEAの報告では、今後の世界の原油需要は、中国、インドを中心に大幅に伸び、IEAの新政策シナリオでは2011年に日量8800万バレルで2020年には日量約 9900万バレル、2035年には1億400万バレルになるとされている。このような需要の増大を満たすためには、新たにアジア向けに原油を追加供給可能な拠点が必要であり、その追加供給分に対してイラクが最大の貢献者になり得る。このようなことが、IEAがWorld Energy Outlook 2012でイラクを特集することになった最大の理由でもある。 (IEA World Energy Outlook 2012より) ? 11 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 サしてIEAが当報告書の中でイラクでの大規模増産が達成されない場合、同国の復興が妨げられるとともに、世界エネルギー市場は混乱に向かうと述べている事情はこの部分に存在している。さらに、イラクからの増産が達成されず、原油市場が逼迫した場合、IEAのWEOでは2030年の新政策シナリオにおける油価が15USD/バレル程度高い水準になる可能性があると指摘されている。 のようなイラクの復興の遅れや原油増産の失敗が国際的な原油市場にもたらす影響は甚大である。原 こ油輸入の約80%をホルムズ海峡の内側に出荷拠点のあるサウジアラビア、イラク、UAE、カタールなどに依存している日本は、地域情勢安定化のためにエジプトやシリアなどの中東北アフリカ諸国をODAや投資ビジネスによって支援していくことは重要であるが、イラクに関してはこれら地域情勢の安定化に基づく視点に加え、国際的な原油市場の安定化や日本のエネルギー安全保障という観点でも、さらにインフラ建設や人材育成などを通して継続的に復興へ貢献していく価値があるのではないか。また、IEAの報告ではイラクの政治的安定の確立や人材育成も成功が鍵となると指摘している。この指摘に関しては、イラクにおける石油産業の発展には、その産業に対する支援だけでなく、それを根底から支える基本的な社会開発がまだ不十分であることを意味している。 ラク戦争から10年が経過した今、我々はイラクだけでなく我々自身の現状を再認識した上で、我が国 イのエネルギー分野の安全保障の問題も踏まえ、今後のイラク復興との関わりを考えていく必要がある。 以上 ? 12 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)石油調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 |
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