ページ番号1004341 更新日 平成30年2月16日

原油市場他:地政学的リスク要因が下支え、豊富な石油供給が上昇抑制、そのような中経済情勢を織り込んで変動する原油価格

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レポートID 1004341
作成日 2013-04-15 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
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年度 2013
Vol 0
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抽出データ 更新日:2013/4/14 調査部:野神 隆之 原油市場他:地政学的リスク要因が下支え、豊富な石油供給が上昇抑制、そのような中経済情勢を織り込んで変動する原油価格 (IEA、OPEC、米国DOE/EIA他) ① 米国では、ガソリン需要は前年同月比で増加を示しているが前年同月の需要不振の反動といった側面もある。他方、春場のメンテナンス作業もあり製油所での原油処理量の伸び悩みが石油製品の生産に影響したことから当該製品の在庫水準は低下したが、例年この時期在庫は減少傾向となることから、平年幅は超過している。留出油については、平年を下回る気温が米国北東部にもたらされたことから需要が堅調であった一方製油所での生産が低迷したことで、こちらも在庫は減少し平年並みの水準となっている。また、留出油等の需要の伸びから同国石油需要も前年同月比で増加となっている。そして、国内生産が堅調であることから原油在庫は増加、1990年7月以来の高水準に到達するとともに、平年幅を超過する状態が続いている。 ② 2013年3月末現在のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国で増加した他、日本では春場のメンテナンス作業シーズン突入に伴い製油所での原油精製処理量が低下し始めたこともあり当該在庫が増加したことが欧州での微減となった原油在庫を相殺して余りあった結果、OECD諸国全体として原油在庫は増加となり量的にも平年幅を超過したままとなっている。他方、石油製品については、米国でガソリンや留出油在庫の減少を反映して石油製品全体の在庫も減少となった他、欧州でも微減、日本においては暖房シーズンが終わりに接近したことで灯油在庫水準が低下したことが影響し同国の石油製品在庫も減少となったことから、OECD諸国全体でも石油製品在庫は減少となったが、例年この時期示す石油製品在庫の減少傾向ほどには減少しなかったことから水準自体は平年幅の上方に位置している。 ③ 2013年3月中旬から4月中旬にかけての原油市場では、3月中旬はキプロスの銀行預金課税問題で原油価格(WTI)は1バレル当たり92~93ドルでもたついたものの、3月下旬には当該問題が解決に向かい始めたことに伴い欧州債務問題に対する市場の懸念が後退したうえ経済改善を示唆する米国経済指標類が発表されたことにより原油価格は上昇、3月31日夜には一時1バレル当たり97.80ドルに到達したが、その後は米国雇用者増加数等の経済指標類が同国の経済減速を示唆したことなどにより下落傾向となり、4月12日には一時1バレル当たり90ドルに迫る場面も見られた。 ④ 原油市場では、イラン等を巡る情勢には大きな変化がないことからこの面では原油相場を下支えするという形で作用すると見られるが、ナイジェリア南部産油州での武装勢力の今後の動向によっては石油供給途絶懸念が市場で高まるとともに原油相場に影響が発生する恐れがある。また、夏場のドライブシーズンに向けた季節的なガソリン需要の増加観測に加え、景気回復と石油需要増加期待感も根強く、これが今後当面原油相場に上方圧力を加える可能性があるが、最近では米国雇用統計が不振である他住宅市場に関する指標もまだら模様になってきていることから、この面で下振れリスクが存在する。また、米国等で石油在庫が豊富であることが原油価格の上昇を抑制すると見られる。 1. 原油市場を巡るファンダメンタルズ等 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? 013年1月の米国のガソリン需要(確定値)は前年同月比で0.4%程度の増加と速報値である2.3%程度の増加からは下方修正された(図1参照)ものの増加を維持した。ただ、これは、足元の需要が根強いということを必ずしも意味しているわけではなく、2012年1月は原油価格の上昇(当時はイランのウラン濃縮問題を巡り西側諸国によるイラン原油禁輸等制裁の動きが出ており、市場における石油供給途絶懸念からWTIが終値ベースで1バレル当たり103ドル、同じくブレントが113ドルに到達するなど高水準で推移していた)もありガソリン小売価格が1ガロン当たり3.3~3.4ドル(従来型ガソリン)と1月としては史上最高水準となっていた(図2参照)ことにより当該月のガソリン需要が前年同月(つまり2011年1月)比で2.2%程度減少するなど圧迫される格好となっていたことから、それが少なからず反動という形で2013年1月の需要の増減に反映されていると考えられる。また、2013年3月の米国ガソリン需要(速報値)は前年同月比で1.9%程度の減少と2012年3月(この月も前年同月比では1.9%程度の減少であった)からさらに落ち込む結果となっている。このように需要は必ずしも堅調ではなかったが、春場のメンテナンス作業等の影響で製油所での原油精製処理量が3月は概ね低迷(図3参照)、ガソリンの生産も併せてもたつき気味となった(図4参照)ことから、ガソリンの在庫は4月に入るまで減少傾向となった(図5参照)。それでも例年この時期ガソリン在庫は減少傾向となることから、在庫量自体は平年幅を超過している。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? lobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? 他方、2013年1月の米国留出油需要は前年同月比で6.1%程度の増加と速報値(同8.5%減少)から大幅な上方修正となった(図6参照)。これは軽油需要が9.4%程度の増加となったことが暖房油需要の減少(前年同月比13.2%の減少)を相殺して余りあったためである。ただ、軽油の需要増加は2012年7月1日以降ニューヨーク州で暖房用に使用される留出油の硫黄分を15ppm以下とする(つまりそれは超低硫黄軽油(ULSD:Ultra Low Sulphur Diesel)に当たる)としたことに伴う部分があるうえ、2013年1月は暖房用石油製品の消費の中心地である米国北東部において平年を割り込む気温がしばしば発生した(図7参照)うえ、2012年1月は平年を超過する気温がしばしば発生ため暖房用需要が不振であったことからこの月の留出油需要が前年同月比で3.4%程度の減少となっていたため、2013年1月はその反動も発生したという側面もあるので注意が必要であろう。また、2013年3月の米国留出油需要(速報値)も前年同月比で1.7%程度の増加となっているが、これも2012年3月に平年を上回る気温がしばしば発生したことが影響し留出油需要が前年同月比で8.4%程度の減少となったのに対し、2013年3月は平年を下回る気温がしばしば発生したことから暖房用需要が増加したことによるものと見られる。他方、メンテナンス作業等に伴う製油所の稼働低下もあり留出油生産が低迷した(図8参照)ことから、留出油在庫は総じて減少傾向となり(図9参照)この時期としては平年並みの水準となっている。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? lobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? 2013年1月(確定値)はガソリン、留出油及びプロパン/プロピレン(シェールガス生産に随伴して生産されることもあり、価格が低迷していることが需要を刺激している他暖房用需要が発生したと考えられる)の需要が前年同月比で増加したこと、また、2013年3月(速報値)については、留出油とプロパン/プロピレンの需要が前年同月比で増加したこともあり、米国石油需要は2013年1月(確定値)及び3月(速報値)ともに前年同月比でそれぞれ、2.0%、1.6%の増加となっている(図10参照)。また、原油については、引き続き国内原油生産が堅調なこと(後述)が輸入の減少を相殺して余りあることから在庫は増加傾向を示した(図11参照)ものの、4月に入ってからは春場のメンテナンス作業を終了した製油所が原油精製処理量を増加させてきていることから、原油在庫の増加も鈍化しつつある。なお、原油とガソリンの在庫が平年幅を超過している一方で留出油の在庫が平年並みの水準となっていることから、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅を超過している(図12及び13参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? 2013年3月末現在のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国で増加した他日本では春場の製油所メンテナンス作業突入に伴い原油精製処理量が低下し始めたこともあり当該在庫が増加したことが欧州での微減となった原油在庫を相殺して余りあった結果、OECD諸国全体として在庫は増加となり量的にも平年幅を超過したままとなっている(図14参照)。他方、石油製品については、米国でガソリンや留出油在庫の減少を反映して石油製品全体の在庫も減少となった他、欧州でも微減、日本においては暖房シーズンが終わりに接近したことで灯油在庫が減少したことが影響Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? オ石油製品全体としても在庫水準が低下したことから、OECD諸国全体でも石油製品在庫は減少となったが、例年この時期示す在庫の減少傾向ほどには減少しなかったことから、水準自体は平年幅の上方に位置している(図15参照)。なお、原油在庫の平年幅を超過する状態が維持される一方で石油製品在庫が平年幅の上昇に位置していることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅上限付近に位置している(図16参照)。また、2月末時点でのOECD諸国推定石油在庫日数(月末の在庫量をその直後の3ヶ月間の1日当たり需要で除したもの)は60.5日と1月末の推定在庫日数である59.7日から上昇している。 シンガポールでのガソリン等の軽質製品在庫は3月14日には1,000万バレルを割り込んだものの、中国や日本などからガソリンが輸入されたこともあり、3月20日には再び1,100万バレルを超過、その後 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? ?1,000~1,100万バレル程度で推移した。このため、この時期総じてシンガポールのガソリン価格には下方圧力を加える格好となっており、原油価格の差は縮小している。また、ナフサについては、石油化学製品市況が悪化したことによる需要低下に加え、欧州諸国での石油化学工場におけるナフサ分解処理装置のメンテナンス作業による停止に伴うナフサの引き取り量減少によりアジア方面に当該製品が流入するとの観測が市場で発生し需給に緩和感が生じたことから、アジア地域でのナフサ価格は下落傾向シンガポールでの中間留分在庫については、3月20日に920万バレル強にまで落ち込んだものの、それ以外の期間は1,000万バレルを超過する水準を維持した。欧州では平年を下回る気温で暖房油需要は比較的堅調であったにもかかわらず域内経済不振で軽油需要が低迷したことから欧州とアジア地域での価格差が十分拡大しなかったことにより当該製品が欧州に向かわずアジア地域にとどまったことが在庫水準維持の背景にあるものと思われる。そして、このような水準を維持する在庫により当該地域での軽油価格も下落してきている。 他方、重油については、中東地域の製油所でのメンテナンス作業実施による重油生産の減少により、シンガポール向け輸出が低迷したことから、当該在庫は3月20日の1,850万バレル弱から4月3日には2012年8月22日以来の低水準となる1,600万バレル強へと減少した。ただ、このため、重油製品によっては品薄感が発生、原油価格に比べて相対的に重油価格が堅調に推移したことが、アジア地域への製品流入を喚起した結果、4月10日には当該製品在庫は1,800万バレル弱へと回復している。 2013年3月中旬から4月中旬にかけての原油市場においては、3月中旬はキプロスの銀行預金課税問題で原油価格(WTI)は1バレル当たり92~93ドルでもたついたものの、3月下旬にはキプロスの問題が解決に向かい始めたことに伴い欧州債務問題に対する市場の懸念が後退したうえ経済改善を示唆する米国経済指標類が発表されたことにより原油価格は上昇、3月31日夜(米国東部時間)には一時1バレル当たり97.80ドルに到達したが、その後は米国雇用者増加数が市場の事前予想に届かないなど米国経済指標類が同国経済減速を示唆したことなどにより下落傾向となり、4月12日には一時1バレル当たり90ドルに迫る場面も見られた(図17参照)。 2013年3月中旬から4月中旬にかけての原油市場等の状況 . 2となった。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? 3月18日には、この日サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相が原油価格は当面現在の水準で推移するだろうがそれはアジアの経済成長を抑制しない旨発言したことから、この日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.29ドル上昇、終値は93.74ドルとなったが、3月19日には、この日キプロス議会が100億ユーロの国際的金融支援を実施する条件となっている同国での銀行預金課税法案を否決したことで、同国、そして欧州一部諸国の債務問題の先行きを巡る不透明感が市場で増大したことにより、この日の原油価格の終値は1バレル当たり92.16ドルと前日終値比で1.58ドル下落した。3月20日には、この日米国エネルギー省(EIA)から発表された同国石油統計(3月15日の週分)で原油在庫が前週比で131万バレルの減少と市場の事前予想(同200万バレル程度の増加)に反して減少している旨判明したうえ、3月19~20日に開催された米国連邦公開市場委員会(FOMC)で、さらに堅調な景気回復を支援するために月額850億ドルの資産購入を継続する旨決定したことで、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.80ドル上昇、終値は92.96ドルとなった(なお、この日を以てニューヨーク商業取引所(NYMEX)の2013年4月渡しWTI原油先物契約取引は終了したが、5月渡し契約のこの日の終値は1バレル当たり93.50ドルと前日終値比で0.98ドル上昇している)。また、3月21日には、この日英金融情報サービス会社マークイットから発表された3月のユーロ圏総合景況感指数(速報値)(50が景気拡大と縮小の分岐点)が46.5と2月の47.9から低下したうえ市場の事前予想(48.2)を下回ったことで、この日の原油価格の終値は1バレル当たり92.45ドルと前日終値比で0.51ドル下落したが、3月22日には、前日夕方に発表された米スポーツ用品販売最大手ナイキの2012年12~2013年2月期業績及び3月22日に発表された米高級宝飾品販売ティファニーの2012年11月~2013年1月期業績が、ともに市場の事前予想を上回ったこともあり、米国株式相場が上昇したこと、3月24日にユーロ圏財務相がブリュッセルで会合を開催し、キプロスに対する支援に関して検討するとの関係筋の情報が3月22日に報じられたことで、キプロス問題が解決に近づくとの楽観的な見方が市場で発生したことにより、ユーロが上昇Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 10 ? オた反面米ドルが下落したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.26ドル上昇、終値は93.71ドルとなった。 3月25日には、この日未明(現地時間)にキプロスが同国第二位の銀行を再編するとともに大口預金者に負担を求めることで欧州連合(EU)等からの支援を受ける旨キプロスのアナスタシアディス大統領とEUのファンロンパイ大統領が合意したこと、翌26日には、この日米国商務省から発表された2月の同国耐久財受注が前月比で5.7%増加と2012年9月(この時は同9.1%増加)以来の大幅な伸びとなったうえ市場の事前予想(同3.8~3.9%増加)を上回ったこと、また、この日米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)から発表された1月の全米20都市住宅価格が前年同月比で8.1%上昇と2006年6月(この時は同8.6%上昇)以来の高い伸びとなった他市場の事前予想(同7.9%上昇)を上回ったこと、3月27日には、この日EIAから発表された同国石油統計(3月22日の週分)で同国の原油精製処理量が増加したことから今後製油所での原油購入が活発化するとの観測が市場で増加したうえ、同じくEIAによる米国石油統計で暖房油在庫が前週比451万バレルの減少と市場の事前予想(同70~85万バレル程度の減少)を上回って減少していた旨判明したことにより米国暖房油先物相場が上昇したこと、3月28日には、この日米国商務省から発表された2012年第四四半期の同国国内総生産(GDP)(確定値)が前期比で年率0.4%の成長と2月28日に発表された改定値(同0.1%成長)から上方修正されたことにより米国株式相場が上昇したうえ、3月19日以来休業となっていたキプロスの銀行が3月28日正午に営業を再開したことで同国債務問題を巡る市場の懸念が後退したことによりユーロが上昇した反面米ドルが下落したこと、2月のOPEC産油国の原油生産量が2011年10月以来の低水準にまで低下した旨3月28日に複数の報道機関が報じたことにより、原油価格はこの週は終値ベースでは全ての取引日で上昇、上昇幅は4日間併せて1バレル当たり3.52ドルとなり、3月28日の原油価格の終値は97.23ドルと終値ベースでは2月14日(この時は97.31ドル)以来の高値に到達した(なお、3月29日は米国でのイースターに伴う休日(Good Friday)に伴いNYMEXでは取引は実施されなかった)。 また、3月31日夜間の時間外取引では原油価格が一時1バレル当たり97.80ドルと2月13日(この時は98.11ドル)以来の高値を記録する場面が見られたが、3月29日夕方(現地時間)に、ExxonMobilの操業するPegasusパイプライン(米国イリノイ州Patoka~テキサス州Nederland、輸送能力日量9.6万バレル)でアーカンソー州において原油漏出が発見され操業を停止したことにより、米国中西部での原油需給が緩和するとの観測が市場で発生したことに加え、4月1日に米国供給管理協会(ISM)から発表された3月の同国製造業景況感指数(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が51.5と2012年12月(この時は50.2)以来の低水準になった他市場の事前予想(54.0~54.2)を下回ったことから、4月1日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.16ドル下落、終値は97.07ドルとなったが、翌2日には、この日Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 11 ? ト国商務省から発表された2月の同国製造業受注額が前月比3.0%の増加と市場の事前予想(同2.9%増加)を上回ったことから米国株式相場が上昇したことにより、この日の原油価格の終値は1バレル当たり97.19ドルと前日終値比で0.12ドル上昇した。しかしながら、4月3日には、この日EIAから発表された同国石油統計(3月29日の週分)で原油在庫が前週比271万バレルの増加と市場の事前予想(同205~250万バレル程度の増加)を上回って増加していた他ガソリン在庫が前週比57万バレルの減少と市場の事前予想(同80~125万バレル程度の減少)ほど減少していなかった旨判明したことに加え、4月3日に米企業向け給与計算サービスのオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)子会社等が発表した3月の米国民間雇用者数が前月比15.8万人の増加と市場の事前予想(同20.0万人増加)を下回ったうえ同日ISMから発表された3月の同国非製造業景況感指数(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が54.4と2月の56.0から低下した他市場の事前予想(55.5~55.8)を下回ったことにより米国株式相場が下落したこと、4月4日には、この日米国労働省から発表された同国新規失業保険申請件数(3月30日の週分)が38.5万件と前週比で2.8万件増加、2012年11月24日の週(この時は39.0万件)以来の高水準に達した他市場の事前予想(35.0~35.3万件)を上回ったことに加え、4月4日に開催された欧州中央銀行(ECB)理事会後の記者会見でドラギ同行総裁がユーロ圏経済に対する下振れリスクを指摘したため当該地域の景気の先行きに対する不安感が市場で増大したこと、4月5日には、この日米国労働省から発表された3月の同国非農業部門雇用者数が前月比で8.8万人の増加と2012年6月(この時は同8.7万人増加)以来の低水準となった他市場の事前予想(同19.0~20.0万人増加)を下回ったことで、同国景気回復減速と石油需要鈍化に関する市場の懸念が増大したことから、原油価格は4月3~5日の3日合計で終値ベースで併せて1バレル当たり4.49ドル下落、4月5日の原油価格の終値は92.70ドルとなった。 ただ、4月5日にナイジェリア南部の産油州(Bayelsa州)で発生した武装勢力による警官12名の殺害に関して、当該地域での主要な武装勢力であるニジェールデルタ解放運動(MEND:Movement of the Emanicipation of the Niger Delta、元指導者Henry Okah氏の南アフリカでのテロ容疑での有罪判決に抗議し、2009年8月6日以来実施されていたナイジェリア南部でのテロ行為停止を4月5日に破棄する旨4月3日に声明を発表している)が4月7日に犯行声明を発表したことで、当該地域での石油関連施設攻撃による同国からの原油供給途絶懸念が市場で発生したこと、4月5~6日にカザフスタンのアルマトイで開催されたイランのウラン濃縮問題を巡る国連安全保障理事会理事国及びドイツとの協議が次回協議開催日程を含めイランとの合意なく終了したことでイランと西側諸国等との対立の激化に対する不安感が市場で増大したことが、4月8日の原油相場に上方圧力を加えたうえ、4月9日には、この日中国国家統計局から発表された3月の同国消費者物価指数(CPI)が前年同月比2.1%上昇と2月の同3.2%上昇Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 12 ? ゥら鈍化したうえ市場の事前予想(同2.4~2.5%上昇)を下回ったことで中国政府による金融緩和政策実施の余地が生じているとの観測が市場で増大したこと、4月9日にEIAから発表された短期エネルギー展望(STEO:Short-term Energy Outlook)でEIAが2013年の原油価格(WTI)予想を1バレル当たり93.92ドルと3月時予測の同91.92ドルから上方修正したこと、4月8日夕方に発表された米国アルミ生産最大手アルコア(2013年1~3月期業績発表の第一弾)の2013年1~3月期業績が市場の事前予想を上回ったことで今後発表される予定の企業業績に対する期待感が市場で増大したことから4月9日の米国株式相場が上昇したこと、4月10日も、この先発表される予定の企業業績に対する期待の流れを市場が引き継いだ他、4月10日に中国税関総署から発表された3月の同国輸入額が前月比14.1%と市場の事前予想(同5.2~6.0%)を上回ったことにより米国株式相場が上昇したことから、4月10日の原油価格の終値は1バレル当たり94.64ドルと、原油価格は4月8~10日の3日間で併せて1.94ドル上昇した。しかしながら、4月11日には、この日国際エネルギー機関(IEA)から発表されたオイル・マーケット・レポートでIEAが世界石油需要を下方修正したこと、翌12日には、この日米国商務省から発表された3月の同国小売売上高が前月比で0.4%減少と2012年6月(この時は同0.7%減少)以来の大きな減少幅となった他市場の事前予想(同横這い)を下回ったうえ、4月12日に発表されたミシガン大学消費者信頼感指数(4月速報値、1966年=100)が72.3と前月の78.6から低下した他市場の事前予想(78.5~78.6)を下回ったことで、原油価格は4月11~12日の2日間合計で1バレル当たり3.35ドル下落、4月12日の終値は91.29ドルとなった他、一時は90.27ドルと3月7日(この時の安値は90.22ドル)以来の低水準にまで下落する場面も見られた。 . 今後の見通し等 3月20日に行われたオバマ大統領とネタニヤフ首相との会談では、当面イランの核プログラムを外交 3的手段で解決することで合意した。また、イランが実際に核兵器を保有できる期間を1年間程度とするオバマ大統領の認識にもある程度理解を示した。2012年9月27日の国連総会でのネタニヤフ首相の演説で2013年春から夏にかけてイランは核兵器の保有が可能になることを示唆していたことで、この時期に向けイスラエルのイランに対する軍事行動の可能性が高まる恐れも従来市場にはあったが、今回の会談でイスラエルと米国がイランに対する姿勢で同調する方向性となったことから、イスラエルがイランに対して軍事行動を実行する可能性は遠のいた格好となっている。他方、3月18日の実務者協議に続き、4月5~6日にはイランのウラン濃縮問題を巡る国連安保理常任理事国及びドイツとの協議が実施されたが、イランが20%濃度のウラン濃縮活動を停止する代わりに欧米諸国による銀行取引や貴金属等の取引に対する制裁を解除する旨の提案を今回西側諸国等が行ったとされるが、イラン側の対案内容との隔たりGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 13 ? ェ大きかったことから、解決に向けた合意には至らず、具体的な次回日程も決定されなかったとされる。ただ、この結果は市場では概ね予想されたことであり、また、双方とも協議継続の用意はあるとの意向を示していることから、引き続きイラン問題については原油相場への影響としては少なくとも中立的で、原油価格のある適度以上の下落を抑制する方向で作用することはあっても、イスラエルの当該問題に対する姿勢の実質的な軟化を考慮すれば、当面この要因で原油相場が押し上げられる可能性は低いと考えられる。シリア情勢については、特段原油相場に影響を与えるような大きな動きは見られていない。ただ、ナイジェリアでは、前述の通り4月5日に南部の産油州で武装勢力による警官12名の殺害が発生しており、このナイジェリア情勢、つまり武装勢力による油田やパイプライン等の石油関連施設への攻撃状況によっては、同国からの石油供給途絶懸念が市場で高まることにより、原油相場に上方圧力を加える場面がありうるので注意が必要であろう。 他方、今後も米国、欧州、中国で、それなりの経済指標類が発表される他、既に2013年1~3月期を中心とした米国等企業業績発表シーズンに突入しており、今後も比較的多数の企業において当該業績の発表が予定される。これらの要因が株価に影響、それが原油相場にも波及するといった展開になると考えられるが、他方、株式相場では景気回復期待が増大していることから、発表される経済指標類等の材料の中で株式相場を押し上げる方向で作用する要因を織り込みやすく、その結果株価が上昇することと併せ、原油相場に上方圧力が加わることが予想される。但し石油需給上の問題(後述)で、株価上昇程原油価格が上昇しないことも考えられる。また、この面でのリスクを挙げるとすれば、4月16日に国際通貨基金(IMF)が発表する予定の世界経済見通し(World Economic Outlook)であろう。ここで、2013年以降の世界経済見通しが下方修正されるようだと、株価上昇が抑制される他、それがEIA、OPEC、IEA等の石油市場予測に織り込まれることで原油相場が影響を受けるといった展開も考えられる。 さらに、世界石油需給であるが、米国の原油生産が4月5日の週に日量718.1万バレルと1992年7月3日の週(この時は日量722.1万バレル)以来の高水準、また米国原油在庫も4月5日に3.89億バレルと1990年7月27日(この時は3.92億バレル)以来の高水準となっている(また、これ以外に4月5日の水準を超えるのは1990年7月13日(この時は3.90億バレル)だけである)など、米国の石油需給の緩和が目立つ状況となっている。このようなことが原油相場の上昇を抑制する格好となっており、原油価格がこのまま上昇を続け年初来高値(1月30日の1バレル当たり98.40ドル)を超過してそれを持続するには、余程市場を強気にさせる材料が相次いで出てこない限り難しいのではないかと考えられる。ただ、これから米国では夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入することで、製油所のガソリン生産のための原油処理量増加と原油購入の活発化を市場が意識することから、この面では原油相場が上昇する余地はまだあるものと考えられる。しかしながら、市場では、5月末以降の小売り段階でのガソリンGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 14 ? v期が接近してくるにつれ、さらに先(つまりガソリン需要期の終了と石油不需要期入り)が視野に入ってくるため、この季節的な石油需要の盛り上がりによる原油価格への上方圧力もそう遠くない時期に減退してくると見られる。そうなると、前述の米国での石油需給緩和感に加え2013年の世界石油需給バランスが緩和基調であると市場が認識しやすい(表1参照)うえOECD諸国の石油在庫日数も高水準で推移する可能性がある(図18参照)こともあり、原油市場に大きな影響を与えうる地政学的リスク要因が顕在化するといった事態に陥らない限り、夏前に原油相場に対して下方圧力が加わってくる恐れがあるものと考えられる。 表1 世界石油需給バランスシナリオ20121Q132Q133Q13(単位:日量百万バレル)20134Q13総需要非OPEC生産OPEC原油生産OPEC NGL生産総供給在庫変動その他89.7853.3631.316.1590.821.0489.8853.9430.456.2390.620.7489.5153.9730.446.2790.671.16*: OPEC産油国については2013年3月の原油生産量がその後も維持されるものと仮定91.0754.5530.446.5791.560.4991.8155.3730.446.6192.420.6190.5854.4630.446.4291.320.75出所:IEAデータをもとに作成また、米国中西部での製油所の原油の引き取りの活発化とクッシングでの原油在庫低下に伴う需給引き締まり観測でWTI価格には上方圧力が加わりやすいのに対し、欧州での債務問題等による石油需要の低迷からブレント価格がもたつきやすいことで、両者の価格の変動が引き続きちぐはぐになる恐れが . 米国LNG輸出の可能性について考える 4あるので留意する必要があろう。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 15 ? ト国ではここ数年シェールガスが増産される一方でLNG輸入が減少、天然ガス価格も一時100万Btu当たり2ドルを割り込み、当初LNGを輸入するために建設された受入基地の稼働率が全米平均で10%程度と低迷した。このため、受入基地に液化装置を設置するといったことを中心に、米国でLNGの輸出を行うべく基地の建設計画が複数策定され、それらを合計すると2013年4月2日時点で最大日量約300億立方フィート(LNG換算年間2.3億トン)に上る。そうなれば、2012年に8,700万トン余りのLNGを輸入した日本にとっては相当量のLNGが米国内天然ガス価格連動型のもので置き換えられることも可能となるので、米国からのLNG輸出が開始されるまで待てばいいということにもなりうるのだが、果たしてそうだろうか。ここでは、今後の米国からのLNG輸出の可能性について考察を試みたい。 米国では、2012年1月19日にEIAにより同国からのLNG輸出に関する報告書が発表されたが、そこでは①米国からの天然ガスの輸出は米国内での天然ガス価格の上昇をもたらす、②天然ガス輸出に反応して国内生産が増加するので需給は均衡する、③価格が上昇した場合発電部門で天然ガスから石炭へのシフトが発生することため需給が調整される、④天然ガス消費が減少しても消費者は天然ガスや電力に対する支出が増加する、といった旨記載されていた。続いて2012年12月5日には、EIAが米国民間調査機関NERAに委託して作成した、米国からのLNG輸出の同国経済に対する影響とLNG輸出量見通しに関する報告書(Macroeconomic Impacts of LNG Exports from the United States、以下「NERA報告書」と呼ぶこととする)が発表された(本報告書については、2012年3月、そして同年9月に発表が延期される旨明らかになったが、米国では2012年11月6日に大統領選挙が予定されたことから選挙戦に影響するような報告書の発表を延期したと見る向きもある)。その報告書では、米国からのLNG輸出の制限を加えないことが同国の経済便益を最大にする、と結論付けられた。但しこれは、現在計画されている米国からのLNGが実際に無制限に輸出されることを意味するわけではない。当該報告書では、様々なケース分類が行われているが、その全てが現実に即しているわけではないため、なるべく現実に即した想定ケースを選び出すことが重要になってくる。そのような視点で見てみると、報告書には国際エネルギー情勢に関し、日本や韓国が原発から全て天然ガス火力発電に転換したりするかどうか、そして、計画されている北米外の天然ガス液化施設が建設されたりするかどうか、という前提がある(表2参照)が、ここでは、日本をはじめとする各国の現状に完全に沿ったシナリオは見当たらないものの、日本は原子力発電所の再稼働を目指すものの、その稼働に時間を要することも考えられる他、韓国においては原子力発電が天然ガス火力発電に転換する可能性は低く、他方で計画されている米国以外の天然ガス液化施設が建設される、という、いわゆる「需要ショックケース」(Demand Shock Case)がもっとも現実に近いと考えられる(なお、日本も韓国も原子力発電が全てガス火力発電に置き換えられず、また、計画されている米国以外の天然ガス液化施設が建設されるという「国際参照ケース」(International Reference Case)もGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 16 ? カ在するが、その場合には、米国産LNGに対して十分な需要が発生しない結果、米国からのLNG輸出も行われないと予想されている)。この場合、米国から輸出されると予想されるLNG量は2035年時点で年間1.37兆立方フィート(日量37.5億立方フィート)になる。これはLNG換算で約3,000万トン弱であるが、これが欧州、中国・アジア、日本・韓国にほぼ均等に輸出される結果、それぞれが、約1,000万トンを輸入することが示されている。 表2:NERA報告書における国際エネルギー情勢シナリオ 出所:Macroeconomic Impacts of LNG Exports from the United States これは、そもそもシェールガス開発が容易な地域でまず開発が進み、徐々に難易度の高い(高度な技術を必要とする以外に水資源やインフラ整備等が必要な場合も含む)鉱床での開発・生産に移行していく結果、技術的な進歩等を伴わないと開発・生産コストが上昇、そしてそのコストを賄うだけの米国内での天然ガス価格が必要になることから、それに応じて将来的には米国内での天然ガス価格が上昇し(また、そもそも米国内でのシェールガス開発・生産コストは概ね100万Btu当たり4~6ドルと言われており、4ドルを割り込むような天然ガス価格は持続が不可能、という側面もある)、それが米国から輸出されるLNG価格に反映される、という背景があると考えられる。因みに市場関係者の将来の価格に対する認識を示した代表的なものに先物曲線(将来引き渡される商品の売買価格)があるが、NYMEX米国天然ガス価格の先物曲線は、引き渡し価格が現時点では安いが将来に向けて上昇、2025年時点では100万Btu当たり7ドルに到達している(図19参照)。これに液化燃料費(サビーン・パス天然ガス液化施設の場合天然ガス価格の15%分)、液化施設使用料(100万Btu当たり概ね3ドル)、タンカー運賃(同3ドル)を加えると日本への到着価格が同14ドル程度になる。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 17 ? 他方、米国では別途シェールオイルが増産基調になっている。こちらは、シェールガスと比べて開発・生産コストは高いが、それでもシェールオイルの開発・生産コストは概ね1バレル当たり40~70ドルと言われており、現在の原油価格がWTIでも1バレル当たり90ドル台という状況であれば、なお生産が進む余地がある。このようなことから、同国でのシェールオイルの生産は上振れしており、この結果、米国での原油生産量や原油在庫が高水準となっている他、OECD諸国の原油と石油製品を合わせた在庫も前述の通り潤沢であることを示すなど世界の石油需給が緩和する傾向が見られ、将来的にもこのような世界石油需給の緩和から原油価格が押し下げられていくと市場では考えられ始めている。原油価格の先物曲線を見るとNYMEXのWTIで2021年に1バレル当たり83ドル程度、ブレントで2019年に91ドル程度となっている(図20参照)。このような原油価格に連動した形での日本到着LNG価格は100万Btu当たり14ドルを割り込む程度になると試算される。 このように、将来的には少なくとも米国産天然ガス価格は上昇方向、そして世界原油価格は下落方向に向かうと市場では考えられていることから、米国産天然ガス価格に連動した(米国からの輸出)LNG価 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 18 ? iと原油価格に連動したLNG価格の差は今日指摘されるほど大きなものとはならない可能性があり、その結果、米国からのLNG輸出も世界のLNG価格競争に巻き込まれることにより、自然と輸出総量が制限される、ということが実際想定される展開となろう。ただ、NERAによる報告書において2035年で日量37.5億立方フィートの米国からのLNG輸出という予想においては、将来天然ガス価格が上昇するという一方で、原油価格も上昇するという前提に基づいており、それでも米国からのLNG輸出は世界のLNG輸出基地建設との競争に巻き込まれる結果、経済性の面で輸出量が制限を受ける旨示唆されているが、将来的に原油価格が下落するということになれば、原油価格連動型LNG価格が下落することが予想されるため、同国からのLNG輸出量はさらに下振れする可能性がある。他方、このシナリオは、2011年版の米国年次エネルギー展望(AEO2011:Annual Energy Outlook 2011、2011年4月26日発表、なおそれに先立ち早期発表版(Early Release)が2010年12月16日に発表されており、基本的なデータは正式発表時に引き継がれている)に基づいている。既に現在AEO2013(早期発表版)が2012年12月5日に発表されており、例えば2010~2035年のシェールガス生産量がAEO2011の場合の25~50%増となっていることから、最近米国では2020年までに概ね日量60億立方フィートのLNGが輸出されるのではないかとの議論が多く聞かれるようになっている。これはLNGに換算すると年間約4,600万トンに相当する。ただNERA報告書に基づけば、米国から輸出されるLNGは欧州、中国・インド、韓国・日本で、約3分の1ずつとなるので、韓国・日本で年間約1,500万トン強のLNGが流入するということになる。仮にその全量を日本が輸入するとして(ただ、韓国は既にサビーン・パス(Sabine Pass)天然ガス液化施設からLNGを年間350万トン引き取ることになっているので、実際には韓国の米国からのLNG輸入量が皆無になるわけではない)、2012年の日本のLNG輸入量が年間8,700万トン余りであるので、もしそのうちの1,500万トンが米国産LNG(米国産天然ガス価格連動型LNG価格)に置き換わるとすれば、全体の17%程度が割安な価格で調達できるということになる。2012年の日本の平均輸入LNG価格が100万Btu当たり16.80ドル程度、対してもし今米国本土から米国産天然ガス価格連動型LNGの輸入が開始された場合(ただ、現在NERA報告書に対する意見公募が2013年1月24日午後4時30分(米国東部時間)に締め切られ、また2月25日午後4時30分(同)には公募された意見に対する反論期間も終了したが、米国エネルギー省では、それらの意見を検討している段階であり、サビーン・パスLNG輸出基地プロジェクト以外には米国当局からLNG輸出許可や天然ガス液化基地建設許可が得られているわけではなく、実際当該LNGが日本向けに輸出を開始するのは早くても2017年ということになるので、これは少し楽観的な見方、ということになろう)、2012年の米国産天然ガス先物価格は100万Btu当たり2.83ドルであるので、米国から輸出されるLNGの日本到着価格は、100万Btu当たり9.25ドル程度(2.83ドル+2.83ドル×15%(液化燃料代)+3ドル(液化施設使用料)+3ドル(タンカー運賃))になるため、原油価格連動型のLNGにGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 19 ? 艪ラて約45%割安ということになる。従って、全体の17%分を置き換えた米国からのLNGがこの分だけ割安ということなので、日本のLNG輸入コスト全体を7.7%押し下げる効果がある。ただ、実際には前述の通り将来的には米国産天然ガス価格は上昇すると考えられている反面、世界の原油価格は下振れするリスクを抱えていることから、米国から輸出される米国産天然ガス価格連動型LNGの日本到着価格と原油価格連動型のLNGの日本到着価格の差は縮小する方向に向かう可能性があり、従って前述の日本のLNG輸入コストの7.7%の引き下げ効果というのは最大限の水準であり、将来的にはこれよりも低下する恐れがと考えられる。もちろん、日本の為替レートが円安に振れれば、さらにコスト削減効果は低下することになろう。 従って、米国産シェールガスを含む天然ガスによる、米国産天然ガス価格連動型LNGの輸入を行うこと自体は供給源の多様化という観点から間違っていないと思われるわけであるが、それだけでは万全ではない恐れもあるため、引き続き資源の自主開発と廉価な資源の獲得、省エネルギー政策を含めたエネルギー源の多様化、そして単一エネルギー源における供給源や供給方法の多様化を推進していくのが肝要であると考えられる。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 20 ?
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2013/04/15 野神 隆之
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