ページ番号1004355 更新日 平成30年2月16日

原油市場他:地政学的リスク要因に対する市場の懸念増大が原油価格に上方圧力

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レポートID 1004355
作成日 2013-06-17 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2013
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日:2013/6/16 調査部:野神 隆之 原油市場他:地政学的リスク要因に対する市場の懸念増大が原油価格に上方圧力 (IEA、OPEC、米国DOE/EIA他) ① 米国では、春場のメンテナンス作業を終了した製油所が原油精製処理量を増加させた一方米国メキシコ湾岸地域で一時的に原油輸入量が低下したこともあり、原油在庫は減少したものの量としては平年幅を超過したままである。他方、ガソリンや留出油は製油所での稼働上昇と製品生産の活発化により在庫が増加、ガソリン在庫は平年幅の上限付近、留出油在庫は平年並みの量となっている。 ② 2013年5月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、欧州では域内での石油需要不振等による精製利幅低下で製油所での原油精製処理量削減から在庫が増加したものの、米国では減少、日本でも微減となったことから、OECD諸国全体では当該在庫は減少となったが、平年幅を超過した状態は維持されている。他方、石油製品については、欧州でほぼ横這いとなった一方、米国では原油精製処理量の増加に伴いほぼ全般的に石油製品在庫が増加したことが、製油所でのメンテナンス作業が本格化した結果石油製品生産が低下したことにより減少した日本での在庫を相殺したことにより、OECD諸国全体でも石油製品在庫は増加となったが、例年この時期在庫は増加傾向を示すことから、水準自体は平年並みとなっている。 ③ 2013年5月中旬から6月中旬にかけての原油市場においては、米国や欧州、中国における経済指標類に伴う市場の景気回復の石油需要に対する展望、及び米国金融当局の緩和政策の行方に対する市場の観測が相場を上下に変動させつつ、5月31日に開催されたOPEC総会での原油生産上限据え置き決定に伴う市場の石油需給緩和予想や高水準の米国石油在庫が原油相場に下方圧力を加えた一方で、シリアやリビア、スーダン情勢の悪化といった地政学的リスク要因に伴う市場での石油供給低下懸念が相場に上方圧力を加えた結果、原油相場は当該期間の大部分は1バレル当たり91~97ドル台で推移したが、6月14日にはシリア政府の化学兵器使用を確認したとして米国政府がシリアの反体制派に武器を供与する旨示唆したことから原油相場は一層上昇、一時1バレル当たり98.25ドルの2013年初来高値に到達する場面も見られた。 ④ イランでの穏健派大統領の誕生により、今後同国のウラン濃縮問題を巡る西側諸国との対立に関して市場の懸念が多少後退するという側面はあろうが、事態が急速かつ根本的に解決するとは考えにくいことから、この面での原油相場への下方圧力は限定的であると思われる。他方、需給が緩和状態となっていることが引き続き原油相場の上値を抑制すると見られるが、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要の盛り上がりに対する市場の感覚がなお当面続く可能性があることから、この面では少なくとも短期的には原油相場を支持する方向で作用するであろう。そのような中、経済指標類の良し悪しが景気回復と石油需要の増減見通しといった側面と金融緩和の継続といった側面の双方から原油相場を変動させると見られる。このようなことから、原油相場は引き続き比較的限られた範囲内で推移すると見られるが、シリアやリビア、そしてスーダン/南スーダン等を巡る地政学的リスク要因に対する市場の懸念が以前に比べて相対的に強まっていると見受けられることから、原油価格の変動範囲が多少切り上がるといった可能性はあると考えられる。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? . 5月31日開催のOPEC総会で原油生産上限を据え置き 5月31日に石油輸出国機構(OPEC)はオーストリアのウィーンで通常総会を開催し、2011年12月14日開催の通常総会時に導入した全12加盟国で合計日量3,000万バレルの原油生産上限を据え置きとする旨決定した(表1参照)。総会前のIEAやOPECの事務局による見通しでは2013年の対OPEC原油需要(世界石油需要から非OPEC産油国石油生産とOPEC産油国のNGL生産を差し引いたもの、なおこれには世界の石油在庫変動も含まれる)がIEAで日量2,960万バレル、OPECで日量2,980万バレルと、現行の原油生産上限からそうかけ離れていない(図1参照)うえ、2013年後半は前半に比べて対OPEC原油需要が増加すると予測されている(特にOPEC事務局は日量3,000万バレルを超過すると予想している)こと、また、2012年12月の前回総会以降今次総会直前までのブレント価格が1バレル当たり概ね100ドルを超過する水準であり(図2参照)、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相がしばしば適正であるとしてきた水準(ブレント原油価格で100ドル)を上回って安定して推移しており、ヌアイミ氏は5月28日、また、アラブ首長国連邦(UAE)のマズルーイーエネルギー相も5月27日に、それぞれ足元の原油相場や石油需給について望ましい旨発言していた。他方、他のOPEC産油国についても同様の認識を持っているところもあり、リビア(アルシ(Arusi)石油相)、アンゴラ(バスコンセロス石油相)、ベネズエラ(ラミレス石油・鉱業相)が、総会前に原油生産上限据え置きに対して異論がない旨明らかにしており、また、他の産油国からも原油生産上限引き下げに関する明確な意思表示もなかったことから、多くの加盟国が足元の石油市場や原油生産上限に関して満足していたと考えられることから、今次総会では原油生産上限は据え置きとなったと見られる。ただ、前回総会以降OPEC加盟12ヶ国の原油生産量は日量3,000万バレルを恒常的に超過しており(図3参照)、仮に2013年5月のOPEC産油国原油生産量が年末まで継続した場合、2013年は世界石油需要を供給が日量127万バレル超過すると推定される(表2参照、6月のIEAの世界石油需給見通しに基づく)など、供給過剰となる旨示唆されることから、総会後に発表された声明では原油生産上限を順守すべき旨謳われている。また、米国では緩やかながらも景気が回復する兆候が見える一方で、欧州ではユーロ圏諸国の4月の失業率が12.2%と過去最悪を更新した他、中国でも輸出入が大幅に鈍化するなど、世界経済にはなお不透明感があることから、今後さらにそれらの情勢が急激に変化するようであれば迅速に行動し、石油市場の均衡に加え生産者と消費者にとって合理的な価格を確保すべく対策を施す旨総会で決定した。 なお、次回総会(通常総会)は12月4日にオーストリア・ウィーンにて開催される予定である。また、2014年1月1日以降のOPEC事務局長(2012年12月末で2期6年間の任期が満了する予定だったバドリ事務局長の後任の事務局長が2012年12月12日開催の総会では選出できなかったことから、バドリ現事務局長が2013年12月末までの1年間事務局長職を延長することとなった)については今次総会でGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? ヘ決定されず、これについては次回総会で選出される予定であると伝えられる。 表1 OPEC加盟国原油生産上限、生産量及び余剰生産能力(日量千バレル)2009年1月1日以降2011年12月14日2012年6月14日の生産目標(推定)OPEC総会OPEC総会2011年11月生産量2013年5月生産量以降の生産上限以降の生産上限(IEA) ①(IEA) ②増産量(②-①)アルジェリアアンゴラエクアドルイランクウェートリビアナイジェリアカタールサウジアラビアUAEベネズエラOPEC11ヶ国合計イラクOPEC12ヶ国合計注:四捨五入の関係で個々の数字の総和が合計と一致しない場合がある。1,2031,5174343,3362,2221,4691,6737318,0512,2231,98624,845---------------30,000-------------30,0001,1801,7105003,6092,7705502,1007359,7502,5202,34127,7652,67530,4391,1501,7805002,6802,8401,3801,9607259,5602,7252,45027,7503,13530,885△ 30700△ 92970830△ 140△ 10△ 190205109△ 15460446原油生産能力(IEA)(2013年5月現在)1,1901,8205102,9802,9001,5502,44077012,2702,9002,60031,9303,34035,270余剰生産能力(2013年5月現在)40401030060170480452,7101751504,1802054,385出所:OPEC、IEAデータ等をもとに推定 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? 表2 世界石油需給バランスシナリオ20121Q132Q133Q13(単位:日量百万バレル)20134Q13総需要非OPEC生産OPEC原油生産OPEC NGL生産総供給在庫変動その他89.7753.4431.306.3391.071.3089.8353.9730.436.4390.821.0089.4253.9430.846.5091.281.8691.0954.6230.896.6792.171.08*: OPEC産油国については2013年5月の原油生産量がその後も維持されるものと仮定91.8755.4230.896.7193.021.1590.5654.4930.766.5891.831.27出所:IEAデータをもとに作成 今回の総会においては、直前に原油価格が大きく変動するなど石油市場に新たな展開が発生するといったことでない限り、日量3,000万バレルの原油生産上限の据え置きが決定されるという見方が市場関係者の太宗を占めており、実際総会直前に石油市場が急変したということもなく、総会では市場の事Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? O予想通り日量3,000万バレルの原油生産上限据え置きが決定された。ただ、OPEC産油国が現在の水準である原油生産上限を維持するとすれば、米国でシェールオイルが当初の市場の予想を上回って増産されていることもあり、将来的にも現在予測されている以上にシェールオイルが増産されることを通じて世界石油供給が増加していくことにより、需給が一層緩和するのではないかとの観測が市場で発生したことから、5月31日の原油相場はWTIについては前日終値比で1バレル当たり1.64ドル、ブレントでは同1.80ドル、それぞれ下落した。しかしながら、その次の週には英領北海での油田の操業停止、欧州の経済指標類や米国での金融緩和策継続の観測等の要因により原油相場は反発、5月31日の下落を相殺したうえで、さらに上昇するという展開となったこともあり、OPEC総会での原油生産上限据え置き決定の影響が市場で持続しているようには見受けられない(後述)。もっとも、OPEC産油国全体で日量3,000万バレルという上限は定められているものの、個別の加盟国の原油生産枠が設定されているわけではないことから、今後米国でシェールオイルが現在市場で見込まれている以上に増産された場合には対OPEC原油需要が現水準よりも減少することことになり、それに従ってOPEC産油国は減産を強いられる場面もありうるが、個別に原油生産枠が設定されている場合でさえ必ずしもそれが常時順守されているわけではないのに、加盟国全体の原油生産上限しか設定されていない状況では、なおさらのこと加盟各国の原油生産上限順守に向けた努力に対するインセンティブが働きにくい状態となるため、OPEC最大の産油国であるサウジアラビアが原油生産量を増減させることにより世界の石油需給を調整する、つまり、今後サウジアラビアの原油生産が影響を受ける確率が上昇する他、やはりこのようなOPECの結束力の弱さ故、米国のシェールオイル増産への対応が後手に回るかもしれないとの市場の懐疑的な見方を払拭しきれないことにより、中期的な世界石油需給緩和感が市場で醸成されやすい状況であることには変わりはないと考えられる(なお、OPEC側では今後米国のシェールオイル生産がどの程度になるかについての調査を実施する意向であると伝えられるが、調査報告書の完成予定時期については明示. 原油市場を巡るファンダメンタルズ等 2013年3月の米国ガソリン需要(確定値)は前年同月比で0.2%の減少となり(図4参照)、速報値であ 2る同1.9%の減少からは相当程度上方修正された。ただ、それでもなお、3月の需要である日量862万バレルはこの時期としては低い数字と言わざるを得ない(2012年3月は日量863万バレルであるものの、2011年は同880万バレル、2010年は879万バレルであった)。他方、5月の同国ガソリン需要(速報値)は日量871万バレルと前年同月比で3.2%の減少となっている。これは5月としては2001年以来の低水準(確定値との比較)であり、このように季節的には夏場のドライブシーズン突入に向けガソリン需要は増されていない)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? チしているとは見られるものの、引き続き当該需要は盛り上がりに欠ける展開となっていることが示唆される。このような中、製油所は春場のメンテナンス作業を終了し稼働を上昇、原油精製処理量とガソリンの生産を活発化させた(図5及び6参照)うえ、夏場の需要期を控えて特に東海岸での輸入が増加したことから、当該製品在庫水準は上昇しており、量としては平年幅上限付近に位置している(図7参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? また、3月の留出油需要(確定値)は、日量377万バレルで前年同月比1.7%の増加となっており(図8参照)、速報値とほぼ変わらずであった。軽油需要は必ずしも堅調とは言えなかったものの、この時期米国北東部で平年を下回る気温となったことから暖房油需要が前年同月比で25.4%増加したことが留出油需要全体と押し上げる格好となった。他方、5月の当該需要(速報値)は日量384万バレルと前年同月比で2.5%程度の増加となった。5月の米国の非農業部門雇用者数が前月比17.5万人増加と市場の事前予想を上回る(後述)など、ここ最近は依然まだら模様の様相を呈しながらも米国の経済指標の中には同国経済が改善する兆候を示しているものもあるが、例年に比べて中西部での低温状態が長引いたことに伴い穀物の作付けのための農機具向け軽油需要が遅れて発生している可能性も否定できないので、現時点での堅調に見える需要が持続しない恐れもあることから注意が必要であろう。他方、製油所での原油精製処理活動が旺盛になってきていることから留出油生産も活発化している(図9参照)により、当該在庫も増加傾向となっているが、通常この時期留出油在庫は増加傾向となることから、量としては平年並Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? ンの水準となっている(図10参照)。 3月の米国石油需要(確定値)はLPGが前年同月比で12.2%程度伸びた(2012年3月が暖冬であっ Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? ス一方で2013年3月がしばしば平年割れとなる気温となったことから暖房向け需要が前年同月の不振からの反動も含めて増加したことが一因であると見られる)ことが影響し、同国の石油需要全体としても前年同月比で1.4%程度の伸びとなっている(図11参照)一方で、5月の当該需要(速報値)はガソリン需要が前年同月比で減少となったこともあり石油全体の需要としても0.5%程度の減少となった。また、原油については、春場のメンテナンス作業を終了した製油所で原油精製処理量が増加した一方で、5月31日の週には米国メキシコ湾岸地域で原油輸入量が前週比日量52万バレルの減少となった(但し翌週(6月7日)には輸入量は前週比日量63万バレルの増加と回復している)ことから、5月31日時点の原油在庫が前週比で627万バレルの減少となったことにより、5月末の在庫水準は前月末比で低下した(図12参照)が、5月24日には当該在庫量は3.98億バレルに到達しており、これは1982年の米国原油在庫の週間統計史上最高水準である他、月末値との比較でも1931年5月(この時は3.99億バレル)以来の高水準となった。その後はこのような水準からは減少しているものの、依然平年幅は超過する水準は維持されている。なお、原油在庫が平年幅を大きく超過していることから、ガソリンの在庫が平年幅上限、留出油在庫が平年並みの水準であるものの、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅を超過している(図13及び14参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? 013年5月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、欧州では域内での石油需要不振に加え米国でのガソリン需要も盛り上がりに欠く展開となっていることから、精製利幅が低下、製油所が原油精製処理量を削減していることもあり在庫が増加したものの、米国では原油 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 10 ? ク製処理量の増加もあり在庫が減少、日本でも微減となったことが相殺した結果、OECD諸国全体として当該在庫は減少となったが、平年幅を超過した状態は維持されている(図15参照)。他方、石油製品については、欧州でほぼ横這いとなった一方で、米国では原油精製処理量の増加に伴いほぼ全般的に石油製品在庫が増加したことが、製油所でのメンテナンス作業が本格化した結果石油製品の生産が低下したことから減少した日本の石油製品在庫を相殺して余りあったことにより、OECD諸国全体でも石油製品在庫は増加となったが、例年この時期在庫は増加傾向を示すことから、水準自体は平年並みとなっている(図16参照)。なお、原油在庫の平年幅を超過する状態が維持される一方で石油製品在庫が平年並みとなっていることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅上方付近に位置している(図17参照)。また、5月末時点でのOECD諸国推定石油在庫日数(月末の在庫量をその直後の3ヶ月間の1日当たり需要で除したもの)は59.0日と4月末の推定在庫日数である59.6日から減少しているが、これは夏場のドライブシーズンを反映した需要の盛り上がりが影響している。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 11 ? シンガポールでのガソリン等の軽質製品在庫は5月22日から6月5日にかけては概ね980~1050万バレルの範囲内で推移していたが、6月12日には830万バレル強の水準へと大きく減少した。これは、インドネシアなどで断食月(ラマダン、2013年は7月9日~8月7日)明けの祭(「イードアルフィトル」(Eid Al’Fitr))を家族などで祝うための移動に伴うガソリン等の需要が発生することに向けた動きに加え、インドでの夏場の休暇シーズン到来に伴う旅行のためのガソリン等の需要増加の他、同国ではHidustan Petroleum(HPCL)のVisakhapatnam製油所(原油精製処理能力日量16.7万バレル)で5月16日に、また、Baharat Petroleum(BPCL)のNumaligarh製油所(同6万バレル)で5月31日に、それぞれ火災が発生したことにより操業を停止したことに伴い、ガソリン輸入の必要性が増大したことが背景にあると考えられる。このようなこともありアジア市場でのガソリン価格は概ね5月中旬以降回復基調となっている。ただ、ナフサについては、6~7月に欧州からアジアへの製品の流入が発生するとの観測が市場で発生(米国での夏場のドライブシーズン到来に伴うガソリン需要が盛り上がりに欠けているため、春先に欧州でガソリンに混入されるナフサの需給が緩和していた(5月初め時点の欧州のアムステルダム・ロッテルダム・アントワープ(ARA)地区のナフサ在庫は前年比で50%弱多い状況になっていた)ことが影響していると見られる)ことから、ガソリンに比べると価格の回復に鈍さが見られる。 シンガポールでの中間留分在庫については、5月22日及び29日時点では900万バレル台で推移したが、6月に入って1,000万バレルを超過する水準を維持しており、需給が安定していることが窺われる。他方、中東では夏場の空調のための発電向け軽油需要が増加していることに加え、今後の断食月を控えた軽油需要の増加に備えた在庫の積み上げが必要になるとの市場の観測に加え、インドでのHPCL及びBPCLの製油所の停止、そして5月27日に台湾中油公司(CPC)高雄製油所(原油精製処理能力日量22万バレル)における脱硫装置の火災に伴う停止(7月迄停止する予定と伝えられる)により、アジア市場での軽油価格は上昇傾向となっている。 他方、シンガポールの重油在庫については、5月22日から6月12日にかけ2,000万バレルを超過Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 12 ? キる水準を維持したうえ増加傾向となった。これについては、2013年1月から中国で国内及び輸入重油に対して消費税が課されるようになったことに伴い、相対的に重油の価格が上昇した結果、同国での中小製油所が石油製品生産のための原料を重油から原油へ移行させたことから、中国で受け入れられない重油がシンガポールに向かったとの指摘がある。ただ、日本や中東での夏場の空調のための発電向け重油需要が発生していることに加え、5月29日には韓国で部品証明書偽造問題から新古里原子力発電所2号機と新月城原子力発電所1号機が停止したことから同国での重油の購入が今後活発化すると見られる中で、6月後半から7月にかけ西側諸国からアジアへの重油の流れが低下するとの観測が発生していることから、重油価格は急激ではないものの徐々に上昇する傾向が見られる。 2013年5月中旬から6月中旬にかけての原油市場においては、米国や欧州、中国における経済指標類に伴う市場の景気回復の石油需要に対する展望、及び米国金融当局による緩和政策の行方に関する市場の観測が相場を上下双方に変動させつつ、5月31日開催のOPEC総会での原油生産上限据え置きの決定に伴う市場の石油需給緩和予想や高水準の米国石油在庫が原油相場に下方圧力を加えた一方で、シリアやリビア、スーダン情勢の悪化といった地政学的リスク要因に伴う石油供給低下や低下の懸念が相場に上方圧力を加えた結果、原油相場は当該期間の大部分は1バレル当たり91~97ドル台で推移したが、6月14日にはシリア政府の化学兵器使用を確認したとして米国政府がシリアの反体制派に武器を供与する旨示唆したことから原油相場は一層上昇、一時98.25ドルの2013年初来高値に到達する場面も見られた他終値ベースでも年初来高値にあと0.09ドルという水準にまで迫った(図18参照)。 2013年5月中旬から6月中旬にかけての原油市場等の状況 . 3シリア中部の反体制派が支配する都市クサイル(Al-Qusair)に対して5月19日にアサド政権に近い部 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 13 ? 烽ェ大規模攻撃を開始、激しい戦闘の末都市の一部を奪還した旨5月20日に報じられたことで、同国を巡る政情不安に対する懸念が市場で増大したうえ、5月8日以来米ドルが上昇していたことに対する利益確定の動きが発生したことにより5月20日の米国外国為替市場で米ドルが下落したことから、5月20日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.69ドル上昇、終値は96.71ドルとなった。 ただ、5月21日には、翌22日のバーナンキ米国連邦準備制度理事会(FRB)議長の同国議会上下院合同経済委員会での証言を控えて持ち高調整が発生したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり96.16ドルと前日終値比で0.55ドル下落した(なお、この日を以てニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI2013年6月渡し原油先物契約取引は終了したが、7月渡し契約のこの日の終値は96.18ドル(前日終値比0.75ドル下落)であった)。5月22日には、この日米国エネルギー省(EIA)から発表された同国石油統計(5月17日の週分)で原油在庫が前週比34万バレルの減少と市場の事前予想(同80~120万バレル程度の減少)程減少しておらず、また、ガソリン在庫が前週比302万バレルの増加と市場の事前予想(同0~30万バレル程度の減少)に反して増加していた旨判明したことに加え、5月22日に開催されたバーナンキ議長の同国議会上下院合同経済委員会での証言の際に経済状況が持続的に改善していると確信した場合には今後数回の委員会において現在行われている資産購入プログラムを縮小することは可能である旨同議長が発言した他、同日発表された米国連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(4月30日~5月1日開催分)で、経済成長が十分堅調で持続的であることを裏付ける情報が得られれば、早ければ6月の委員会で資産購入プログラムを縮小すべきであると複数の委員が表明した旨記載されていたことから、同国の金融緩和策が近いうちに縮小するのではないかとの観測が市場で増大したことにより、米国株式相場が下落するとともに米ドルが上昇したことで、この日(5月22日)の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.88ドル下落し終値は94.28ドルとなった。 翌23日には、この日英金融機関HSBCと英金融情報サービス会社マークイットから発表された5月の中国製造業購買担当者指数(PMI)(速報値)(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が49.6と4月(改定値)の50.4から低下、2012年10月(この時は49.5)以来の低水準となった他市場の事前予想(50.4)を下回ったことが原油相場に下方圧力を加えた一方で、5月22日夕方に発表された米コンピュータ製造最大手ヒューレット・パッカードの2013年2~4月期決算が市場の事前予想を上回ったうえ、5月23日に米国労働省から発表された同国新規失業保険申請件数(5月18日の週分)が34.0万件と前週比2.3万件の減少となった他市場の事前予想(34.5万件)を下回ったこと、同日米国商務省から発表された4月の同国新築住宅販売件数が年率45.5万戸と前月比2.3%の増加となった他市場の事前予想(同42.5万戸)を上回ったことにより米国株式相場が一時上昇したことに加え、5月23日に欧州委員会(European Commission)から発表された5月のユーロ圏消費者信頼感指数(速報値)(ゼロが景気拡大と縮小の分岐点)がマイナス21.9と前月のマイナス22.3からGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 14 ? ?Pしたことでユーロが上昇した反面米ドルが下落したことが、原油相場に上方圧力を加えた結果、この日(5月23日)の原油価格の終値は1バレル当たり94.25ドルと前日終値比で0.03ドルの下落にととまった。ただ、5月24日には、この日米国商務省から発表された4月の同国耐久財受注が前月比3.3%の増加と市場の事前予想(同1.5%増加)を上回ったことから、かえって米国金融当局による金融緩和策が縮小されるのではないかとの観測が市場で発生したことにより、原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.10ドル下落し、終値は94.15ドルとなった。 5月27日は、米国戦没将兵追悼記念日(メモリアルデー)に伴う休日のためNYMEXでの原油先物に関する通常取引は実施されなかったが、この日開催された欧州連合(EU)外相理事会で、英国とフランスが8月1日以降のシリアへの武器禁輸措置に反対したことから、シリア反体制派に対して両国が武器を輸出する可能性が出てきたことで、シリアの内戦激化に関する不安感が市場で増大したうえ、5月28日に発表されたスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)ケース・シラー全米20都市圏住宅価格指数(2000年1月=100)が前年同月比10.87%の上昇と2006年4月(この時は同11.17%)以来の大幅な伸びとなった他市場の事前予想(同10.20%上昇)を上回ったことに加え、5月28日に米民間調査機関コンファレンス・ボードから発表された5月の米国消費者信頼感指数(1985年=100)が76.2と4月の69.0(改定値)から上昇、2008年2月(この時は76.4)以来の高水準となった他市場の事前予想(71.0~71.2)を上回ったことにより、5月28日の原油価格の終値は1バレル当たり95.01ドルと前週末終値比でり0.86ドル上昇した。ただ、5月29日には、この日国際通貨基金(IMF)が2013年及び2014年の中国の経済成長見通しをともに7.75%と4月16日時点の見通しである2013年8.0%、2014年8.2%から下方修正したことで、同国石油需要鈍化に対する懸念が市場で増大したことに加え、米国金融当局による金融緩和策縮小に関する観測が市場で増大したことから米国株式相場が下落したことにより、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.88ドル下落、終値は93.13ドルとなった。翌30日には、この日EIAから発表された米国石油統計(5月24日の週分)でガソリン在庫が前週比151万バレルの減少と市場の予想(同80万バレル程度の減少~10万バレル程度の増加)に反して減少している旨判明したうえ、5月30日に米国商務省から発表された2013年1~3月期の同国国内総生産(GDP)(改定値)が年率2.4%と4月26日から発表された速報値から下方修正されたことに加え、同日米国労働省から発表された米国新規失業保険申請件数(5月25日の週分)が35.4万件と前週の34.4万件(改定値)から増加した他市場の事前予想(34.0万件)を上回ったこと、同じく同日全米不動産業協会(NAR)から発表された4月の同国中古住宅成約指数(2001年=100)が106.0と前月比0.3%の増加にとどまった他市場の事前予想(同1.1~1.5%増加)を下回ったことで、米国金融当局による金融緩和策継続に対する観測が市場で増大したことから米ドルが下落したことにより、5月30日の原油価格の終値は1バレル当たり93.61ドルと前日終値比で0.48ドGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 15 ? 居繽クしたものの、翌31日には、この日開催されたOPEC総会で日量3,000万バレルの原油生産上限据え置きを決定したことから将来的に世界石油需給が緩和するとの観測が市場で発生したことに加え、5月31日にシカゴ購買部協会から発表された5月のシカゴ地区製造業景況感指数(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が58.7と4月の49.0から上昇し2012年3月(この時は59.7)以来の高水準となった他市場の事前予想(50.0)を上回ったうえ、同日から発表された5月のミシガン大学消費者信頼感指数(1966=100)(確定値)が84.5と4月の76.4から上昇し2007年7月(この時は90.4)以来の高水準となった他市場の事前予想(83.7)を上回ったことで、米国金融当局による金融緩和策縮小観測が市場で増大したことから米国株式相場が下落したこと、そして5月31日に欧州連合統計局(ユーロスタット)から発表された4月のユーロ圏失業率が12.2%と3月の12.1%から上昇し過去最悪となった旨判明したことにより、5日31日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.64ドル下落、終値は91.97ドルとなった。 6月3日には、この日英領北海Buzzard油田(生産量日量20万バレル)が先週末の機器の不具合で6月3日に生産量がゼロにまで減少した旨操業者であるNexenが発言したことに加え、同日マークイットから発表された5月のユーロ圏製造業購買担当者指数(PMI)(改定値)(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が48.3と5月23日から発表された速報値(47.8)から上方修正されたこと、6月3日に米国供給管理協会(ISM)から発表された5月の製造業景況感指数(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が49.0と2009年6月(この時は45.8)以来の低水準となっていた旨判明したことで、米国金融当局による金融緩和策が継続するとの観測が市場で増大したことから米ドルが下落したことにより、6日3日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり1.48ドル上昇し終値は93.45ドルとなったものの、翌4日には、6月5日にEIAから発表される予定の同国石油統計(5月31日の週分)でガソリン及び留出油在庫が増加を示しているとの観測が市場で増大したうえ、米国金融当局による金融緩和策縮小に対する市場の根強い観測から米国株式相場が下落したことにより、この日の原油価格の終値は1バレル当たり93.31ドルと前日終値比で0.14ドル下落した。 しかしながら、6月5日には、この日EIAから発表された同国石油統計(5月31日の週分)で原油在庫とガソリン在庫がそれぞれ前週比で627万バレル、37万バレルの減少と、市場の事前予想(原油同40~100万バレル程度の減少、ガソリン50~100万バレル程度の増加)以上に、もしくは事前予想に反して減少している旨判明したこと、6月6日も前日に発表されたEIAによる米国石油統計における原油在庫減少の流れが引き継がれたうえ、6月6日に開催された欧州中央銀行(ECB)理事会後の記者会見でドラギ総裁が2013年内には域内景気は回復するとの見方を示したことで、ユーロが上昇した反面米ドルが下落したこと、6月6日に英領北海Buzzard油田(6月3日に生産が停止したが週央には正常操業に戻る予定である旨同日同社が発表していた)が機器の不具合で再び生産を停止したとNexenが発表したことで、欧州を中心とする石油供給低下懸念が市場で発生したこと、さらに、6月7日にGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 16 ? ヘ、この日米国労働省から発表された5月の同国非農業部門雇用者数が前月比で17.5万人の増加と市場の事前予想(同16.3~17.0万人の増加)を上回ったことにより、原油価格は6月5~7日の3日間で併せて終値ベースで1バレル当たり2.72ドル上昇、6月7日の終値は96.03ドルとなった。 ただ、6月8日に中国税関総署から発表された5月の同国輸出額が前年同月比1.0%増加、輸入額が同0.3%減少と、市場の事前予想(輸出同7.3~7.4%増加、輸入同6.0~6.6%増加)を下回った他、6月9日に中国国家統計局から発表された5月の同国鉱工業生産が前月比9.2%増加と市場の事前予想(同9.3~9.4%増加)を下回ったことで、同国経済減速と石油需要鈍化に対する市場の不安感が増大したことに加え、6月10日に英領北海Buzzard油田が6月8~9日にかけ正常操業に復帰したと見られる旨Nexenが明らかにしたことで欧州を中心とする石油供給低下懸念が市場で後退したこと、翌11日には、この日開催された日本銀行政策決定会合で日銀が低金利での金融機関への融資拡充を見送ったことで、各国中央銀行による景気刺激のための金融緩和策への方針が転換されるのではないかとの観測が市場で発生したことで、6月11日の原油価格の終値は1バレル当たり95.38ドルと価格は6月10~11日の2日間で併せて終値ベースで0.65ドル下落した。しかしながら、6月12日には、米国金融当局による金融緩和政策を巡る不透明性の中、市場関係者が持ち高を調整したことから、米ドルが下落したことに加え、6月12日にリビアの油田及び輸出港での抗議活動で同国の生産量が日量100万バレルを割り込んだ旨同国国営石油会社NOCが明らかにしたと報じられたこと、また、6月12日にスーダンが公式に南スーダンに対して6月9日から60日以内に原油輸送を削減する旨通知したと報じられたこと、翌13日には、この日米国商務省から発表された5月の同国小売売上高が前月比0.6%の増加と4月の同0.1%増加から加速した他市場の事前予想(同0.4%増加)を上回ったことに加え、同日米国労働省から発表された同国新規失業保険申請件数(6月8日の週分)が33.4万件と前週比で1.2万件の減少となった他市場の事前予想(34.5~34.6万件)を下回ったことから米国株式相場が上昇したこと、また、6月13日夕方に米国のロード大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が記者会見で、米国が超えてはならない一線であるとされる化学兵器の使用をシリア政府軍が反体制派に対して行ったことを確認したと発表したことで、今後米国がシリアの反体制派に対する武器供与を実施する旨示唆されたことから、今後の中東情勢不安定化と当該地域からの石油供給途絶に関する懸念が6月14日の市場で増大したこともあり、原油価格は6月12~14日の3日間で併せて1バレル当たり2.47ドル上昇し、6月14日は97.85ドルと終値ベースでは2013年1月30日(この時の終値は97.94ドル)の2013年初来高値に次ぐ高値となった他、一時は1バレル当たり98.25ドルと2013年初来高値に到達する場面も見られた(それまでの年初来高値は1月30日に到達した98.24ドルであった)。 4. 今後の見通し等 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 17 ? Cラン大統領選挙は6月14日に1回目の投票が実施されたが、保守穏健派のロウハニ(Rohani)最高安全保障委員会元事務局長が過半数を得票したことにより、21日の決選投票を待たずして当選を決めた。このため、イランのウラン濃縮問題を巡る西側諸国等との交渉については若干進展の余地が生まれるとの観測も市場に出てくるため、原油相場に多少の影響が生じる(つまりそれはイランを巡る地政学的リスクの後退による原油価格下落という形になって現れると考えられる)こともありうる。ただ、実際は、大統領が誰になっても同国最高指導者ハメネイ師の影響力は大きくは変わらないため、イランのウラン濃縮活動が即座に中止される確率は高くないと見られることから、イランの大統領選挙結果による原油相場への下方圧力は限定的なものにとどまる可能性がある。 一方、シリアに関しては、シリア政府が小規模の化学兵器を使用した旨米国政府が確認したことから今後反体制派への武器供与を含めた支援に乗り出すとの観測が市場で根強くなると見られることにより、この面では原油相場を下支えする度合いが強まると予想される。また、リビアにおいては、油田や輸出港における抗議行動の結果2012年央には日量160万バレルであった原油生産量が日量100万バレルを割り込んでいるとリビア国営石油会社NOCが明らかにしている。このため、これ以上同国から抗議行動が継続し同国の原油生産量に影響を及ぼすようだと夏場のガソリン需要期と重なり軽質低硫黄原油の供給が低下するとの不安感が市場で発生、特にそれがブレントに上方圧力を加えてくる恐れがある。さらに、6月12日にはスーダンが公式に南スーダンに対して6月9日から60日以内に原油輸送を削減する旨通知した。このため、南スーダンでの原油生産(日量22.5万バレルと伝えられる)が今後減少する恐れがあることから、この面でも原油市場での供給低下(もしくは途絶)懸念が増大し、それが価格に織り込まれる可能性も考えられる。 他方、経済情勢については、引き続き米国の金融緩和政策に対する方向性が不透明であることから、同一の経済指標が、景気の回復具合に伴う石油需要の増減という側面と米国金融当局による金融緩和政策の行方という側面の両面で、相反する圧力を原油価格に加えることになろう。つまり、経済が改善することを示唆する指標類が発表されれば、景気が回復するとともに石油需要が増加するという期待が市場で増大することから原油相場に上方圧力が加わる反面、金融緩和政策が縮小するという観測が市場で発生することから、インフレ懸念が市場で後退することにより米ドルが上昇するとともに原油価格に下方圧力が加わるという展開もありうる一方で、経済が悪化することを示唆する指標類が発表されれば、景気が減速するとともに石油需要が鈍化するという予想が市場で増大することから原油相場に下方圧力が加わる反面、金融緩和政策が継続するという観測の市場で発生することからインフレ懸念が市場で増大することにより米ドルが下落するとともに、原油価格に上方圧力が加わるという展開もありうる。このようなことから、経済情勢といった面では、原油相場は変動しつつも、上下双方へ傾向が発生しにくい状況がGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 18 ? アくと見られる。ただ、6月18~19日にはFOMCが開催される予定であるが、これが原油相場に影響を及ぼす可能性があるので注意が必要であろう。つまり、当該委員会において経済の改善とともに金融緩和策の後退が議論(ないし委員会後の記者会見でバーナンキ議長等が示唆)されるようだと、市場における金融緩和後退観測が増大するとともに、米ドルが上昇、原油価格により大きな下方圧力を加えてくるといった展開も考えられる。 他方、需給であるが、米国では既に夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に入っているが、メモリアルデーの連休を含む6月7日までの4週間の同国ガソリン需要は日量880万バレルと、これはこの時期としては2001年(6月8日までの4週間、この時は日量860.6万バレル)以来の低水準となっている。このように需要は例年ほど盛り上がってはいないものの、季節的には需要は増加してきており、この面では原油相場をそれなりに支持はしていると見られる。ただ、2013年の米国の夏場のドライブシーズンは9月2日のレイバーデーで終了となるため、小売りの段階ではまだ3ヶ月弱程ガソリン需要期が残っていることになるが、製油所の段階では7月4日の独立記念日を過ぎると夏場のドライブシーズンも残り少なくなったとの感覚が広がるとともに、秋場のメンテナンス作業時期を控えて製油所が稼働を引き下げるとともに原油精製処理量が低下、それに伴って原油購入活動が不活発になってくることから、この時期前後からこの面で原油相場に下方圧力を加わりやすくなると考えられる。 ただ、6月に入り大西洋圏ではハリケーン等の暴風雨シーズンに入った(シーズンは11月末に終了)。ハリケーン等の暴風雨は、進路やその勢力によっては、米国メキシコ湾沖合の油田関連施設に影響を与えたり、また、湾岸地域の製油所の活動に支障を与えたり(実際に製油所が冠水し操業が停止することもあるが、そうでなくても周辺の送電網を切断することにより、製油所への電力供給が停止することを通じて、製油所内の施設自体に被害が及んでいなくても、操業が停止するといった事態が想定される)、メキシコの油田操業活動や原油輸出港の操業等が停止することにより米国での原油輸入に影響を与えたりする(米国メキシコ湾岸地域はメキシコから日量100万バレル程度の原油を輸入している)。2013年の大西洋圏でのハリケーンシーズンは平年よりも活発な暴風雨の発生が予想されている(表3参照)こともあり、この面では市場を神経質にしやすい。このようなことから、今後のハリケーン等の実際の発生状況やその進路、そしてその予報等に留意すべきであろう。 表3 2013年の大西洋圏でのハリケーン等発生個数予想熱帯性低気圧(命名されるもの)うちハリケーンとなるものうち強い勢力*のハリケーンとなるもの2013年5月23日 米国海洋大気庁(NOAA)2013年6月3日 コロラド州立大学平年(1981~2010年平均)*:カテゴリー3(風速時速111マイル(時速178km))以上のハリケーン13-201812.07-1196.03-643.0出所:各機関資料をもとに作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 19 ? S体としては、イランでの穏健派大統領の誕生により、今後同国のウラン濃縮問題を巡る西側諸国との対立に関して市場の不安感が多少後退するという側面はあろうが、事態が急速かつ根本的に解決するとは考えにくいことから、この面での原油相場への下方圧力は限定的であると思われる。他方、需給が緩和状態となっていることが引き続き原油相場の上値を抑制すると見られるが、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要の盛り上がりに対する市場の感覚がなお当面続く可能性があることから、この面では少なくとも短期的には原油相場を支持する方向で作用するであろう。そのような中、経済指標類の良し悪しが景気回復と石油需要の増減見通しといった側面と金融緩和の継続といった側面の双方から原油相場を変動させると見られる。このようなことから、原油相場は引き続き比較的限られた範囲内で推移すると見られるが、シリアやリビア、そしてスーダン/南スーダン等を巡る地政学的リスク要因に対する市場の懸念が以前に比べて相対的に強まっていると見受けられることから、原油価格の変動範囲が多少切り上がるといった可能性はあると考えられる。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 20 ?
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2013/06/17 野神 隆之
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