シェール特集~注目される地域の開発動向~「欧州」
| レポートID | 1004376 |
|---|---|
| 作成日 | 2013-08-23 01:00:00 +0900 |
| 更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
| 公開フラグ | 1 |
| 媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
| 分野 | 探鉱開発非在来型 |
| 著者 | |
| 著者直接入力 | 永井 一聡 |
| 年度 | 2013 |
| Vol | 0 |
| No | 0 |
| ページ数 | |
| 抽出データ | 更新日:2013/08/20 調査部:永井 一聡 シェール特集~注目される地域の開発動向~ 「欧州」 (各社ホームページ、各種報道、他) ○欧州のシェール資源の技術的回収可能量は、米EIAによると、シェールガス624Tcf、シェールオイル190億バレルと見積もられている。 ○欧州にとってシェール開発は、エネルギーのロシア依存脱却、安価な天然ガス調達、減退する在来型石油ガス生産の補てんと持続的成長、雇用の確保といった意義を持つ。 ○開発の進捗は当初の期待ほど順調ではなく、いまだ商業生産には至っていない。 ○シェール開発への政府のスタンスは、各国ごと様々であり、開発状況もこれと連動している。 もっとも開発が進んでいると思われるのはポーランドであり、ウクライナ、イギリスがこれに続く。ポーランド、ウクライナは水圧破砕による掘削も進められている。イギリスは開発を推進する姿勢(税制優遇)を見せつつも、水圧破砕に関する影響評価や自治体との共生を義務付けるなど、論理的かつ着実な基盤整備を進めている。 ○ドイツ、チェコでは、水圧破砕に関する研究と規制策定を準備しており、これが整備されるまでは実質的に水圧破砕は一時停止状態(モラトリアム)となっている。ただし、ドイツでは条件付きで水圧破砕を認める法案がまとまりつつあり、9月の議会選挙以降にその進捗が見込まれている。 ○一方、フランス、ブルガリアでは、政府として水圧破砕を禁止している。しかし、水圧破砕の環境影響評価がなされ適切な規制が策定されれば、一定の条件下でシェール開発(水圧破砕)を進めていくことを示唆する政府発言も出てきている。 ○ただし、政府のシェール開発への姿勢に関わらず、多くの国で水圧破砕に対する民衆の抗議運動が発生している。 ○今後、環境影響評価と適切な規制の整備、技術革新がなされれば、欧州地域でのシェール開発が大きく前進していく可能性もある。 ○しかし、シェール資源に関する地質情報や知見の絶対量がまだまだ少なく、さらなる探鉱が必要である。商業生産にはまだ多くの時間を要すると見られ、早くとも2020年以降になると考えられる。 .はじめに 1北米大陸でのシェール革命の影響が世界を席巻し、北米以外の各国・地域でも同様の効果を期待してシェール開発が進められている。欧州地域にも地質的にシェールが分布するエリア(堆積盆地)が存在しており、これを領土内に保有する国々を中心として活発な動きを見せている。 特に、中央・東ヨーロッパは、エネルギーの中でも天然ガスの供給源としてロシアに大きく依存する国も多く、エネルギーセキュリティの確保・向上といった面でもシェール開発には大きな意義があると言える。Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? サの他にも以下のような点において、欧州各国にとってシェール開発には意義があると考えられる。 ①ロシア産天然ガスへの依存度を下げ、 エネルギーセキュリティが向上 ②現状の長期契約・石油価格リンクの高価なガスと比較し、安価な天然ガスを入手可能 ③減退する自国内生産量を補うことで、持続的な開発が可能 ④国内労働者の雇用を確保 本稿では、欧州におけるシェール開発の進捗状況について、包括的な部分に触れつつ、各国ごとの.欧州のシェールガス資源量 2開発動向を述べる。 2013年6月に米EIAが「世界のシェールガス・シェールオイル資源量評価レポート」を発表した。今回のレポートでは、前回(2011年)のレポートに比べて評価対象としたシェール層が増加し、またシェールガスだけでなくシェールオイルの資源量についても評価されている。 このレポートによると、欧州全体(ロシア除く)としてのシェールガスの技術的回収可能資源量は624Tcfであり、世界全体の技術的回収可能資源量7299Tcfの約9%と見積もられている。 図1 欧州における主要なシェール資源分布地域 (出所:米EIAをもとにJOGMEC作成) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? \1 欧州のシェールガス技術的回収可能資源量 技術的回収可能資源量 国名 シェールガス (Tcf) シェールオイル (百万バレル) (参考) 2011EIA報告書 (シェールガス) (Tcf) ポーランド フランス ウクライナ ルーマニア デンマーク オランダ イギリス トルコ ブルガリア ドイツ スウェーデン スペイン リトアニア ノルウェー その他(ルーマニア、ハンガリー、ブルガリア)(2011版のみ) 合計 出所:米EIA(2013) 148 137 128 51 32 26 26 24 17 17 10 8 0.4 0 624 3300 4700 1100 300 0 2900 700 4700 200 700 0 100 300 0 187 180 42 - 23 17 20 15 - 8 41 - 4 83 19 19000 639 .欧州におけるシェール開発を取り巻く状況 3(1)概況 欧州におけるシェール開発は、当初の期待・計画ほど順調には進んでいない。 各国ごとに細かく見るとその開発進捗状況や政府のスタンスは異なるが、概況としては以下の通りである。 ・シェールガスの商業生産には至っていない ・開発が進んでいる国・地域でも未だ探鉱段階 (一部の国では水圧破砕を実施) ・多くの国で水圧破砕に対する民衆の抗議活動が発生 ・シェール開発への法律・規制は整備中の国が多い ・政府として開発を推進する国も多い (←エネルギー(≒天然ガス)のロシア依存脱却) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? E水圧破砕を禁止、または一時停止している国がある また、EUとしてシェール開発を念頭に置いた包括的な対応はなく、水圧破砕についても特に規制は定められていない。従って、各国が各国がそれぞれシェールガス開発事業への対応(適用される規制)を行っている状況となっている。これは、シェールガスの開発における一連の手順(ライセンス賦与、試掘、評価、生産)が、既存のEU法との間に重大なギャップがないとしたためで、在来型の炭化水素開発と同 前述のとおり、欧州地域でのシェール開発は、先行している北米地域に倣って進めようとしているも、その進捗状況は大きく遅れている。これには、以下のような背景・理由に伴うものと考えられる。 ①シェール開発の歴史が浅く、存在する資源量やその分布についての知見・ノウハウが足りない 2)欧州地域でシェール開発が進んでいない理由(北米地域との違い) (様の規制が適用される。 (地質構造・技術的知見の蓄積が少ない) ②地質構造が複雑で、技術的難易度が高い (ガス貯留層の深度は北米の1.5倍と言われており、ある地域では地温勾配が激しい) ③シェール分布地域と人口密集地域が近い(北米ではシェール分布地域は広大な原野が多く、環境的難易度が異なる) ④ガスパイプラインネットワークが充実しておらず、掘削する井戸からのアクセス性が悪い (北米は歴史的にガスパイプラインネットワークが充実しており、掘削した井戸からのアクセス性が良い) ⑤掘削リグ数が少なく、開発速度に制約がかかる(欧州:70~80基 ⇔ 北米:約2000基) ⑥地下資源の帰属者が国家・州であるため、地権者の開発動機につながらない (⇔北米では地下資源は土地所有者に帰属している) ・欧州最大のシェールガス資源量 .欧州各国のシェール開発状況 4(1)ポーランド シェールガスの技術的回収可能資源量は148Tcfと、欧州で最も大きい(ただし、2011年のEIAレポートでの評価量187Tcfからは減少)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? E政府による積極的な開発推進 ポーランドの国内ガス供給はロシアに大きく依存している。そのため、ポーランド政府はシェールガスの開発をエネルギーセキュリティの向上と経済成長の両面から重要視し、積極的に推進している。2013年4月の段階で109のシェールガス探鉱ライセンスが賦与されており、ChevronやConocophillipsといった大企業や、3Leg Resources、San Leon Energy、国営企業PGNiGなどが活動を行っている。政府は、国営ガス企業による開発を推進するため、国営企業への出資を要請するなど、開発支援の動きも見せている。 ・現在の開発状況 ポーランドは、欧州でもっともシェールガス開発が進んでいる国と言ってよいが、その進捗は当初期待されていたほど順調ではない。現在の開発進捗状況は、探鉱井の掘削を進めている段階であり、水圧破砕による掘削も既に行われているが、まだまだ掘削された井戸の数は少なく、模索中といった言葉の方が適切かもしれない。こ図2 ポーランドのシェール資源分布地域 出所:米EIA れらの掘削は、シェールガスと併せてシェールオイルを狙ったものも含まれている。しかし、未だ商業的な規模のガス・石油の流量を確認するには至っていない。2013年においても、国内で41の探鉱井を掘削する計画としているが、2013年8月現在において12の探鉱井の掘削にとどまっている。 Chevron CEOは、ポーランドでのシェールガス商業生産は2020年以降になるとコメントしている。 ・シェール開発に係る規制状況 ポーランド政府は、シェール開発推進の姿勢から、水圧破砕に対する規制はなく、実質的に全面的に許可されている状況である。一方、ポーランド政府はシェール開発に係る新たな規制・法案をGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? 闥?ナある。しかし、この規制法案 は、政府のシェール開発の掌握度合を強める意義が強く、投資家や開発参画企業からは批判も大きなものとなっている。例えば、「シェール開発ライセンスの有効期間を5年プラスオプション2年とする」といった項目が含まれ、これは在来型よりも長期の開発期間を要するシェール開発にとって十分ではないとの見方が多い(探鉱で成功しても生産開始時にはライセンスが切れる可能性もある)。また、「全てのライセンスにおいて資本株式を保有し意思決定に参加する権利を持つ国営企業の創設」といったことも規定されており、政府が将来的なシェールガス開発における利益を確保したい考えを示している。 ・相次ぐ企業撤退 上記に示したように、これまでの探鉱結果が思わしくないことから、ポーランド国内でのシェール開発から撤退する企業が現れてきている。2012年にはExxonMobilが、2013年には、Talisman EnergyおよびMarathon Energyが撤退した。 しかし、この企業撤退がポーランドのシェール開発に見込みがないことを直接示しているわけではない。もともとシェール開発には多くの探鉱井掘削が必要であり、これまでの掘削数が十分ではないためにシェール資源の量や分布についての情報が不足している。今後の掘削と解析によって徐々にポーランドのシェール資源の見通しが明らかになってくると考える。 出所:BP統計 出所:米EIAよりJOGMEC作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? i2)ウクライナ ・資源量 シェールガスの技術的回収可能資源量は128Tcfであり、欧州で3番目に大きな資源量である。 ・政府の方針 ロシア産天然ガス輸入への依存からの脱却とエネルギーの独立を目指し、政府としてシェール開発を推進している。政府の戦略・方針として、多くの小規模オペレータではなく、少数の大規模プレーヤーに大きなライセンス鉱区を与えるとされている。地元企業を犠牲にしてさえ、海外からの投資を加速させ、できるだけ短期にシェール開発をさせたいというのが政府の意向である。 また、ウクライナの生産物分与契約では、輸出制限がなく、開発者は生産したガス・石油を自由に輸出ができる。2013年1月24日Shellは50年の生産物分与契約に調印した(探鉱権は2012年8月に獲得)。Chevronとも生産物分与契約を協議中である。 ・開発状況 既に探鉱井の掘削は行われており、JKX Oil & Energyらによって水圧破砕も実施されている。政府の意向としても今後探鉱井掘削を加速させていくとしている。関係者によると、あと4~5年で試験生産に移行したい考えである。 しかし、Shellの水圧破砕計画に対して、環境団体らによる抗議運動も発生している。 出所:BP統計 出所:米EIAよりJOGMEC作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? i3)イギリス ・資源量 米EIAのレポートによると、イギリス全土における技術的回収可能資源量はシェールガスで26Tcfとされている。これはイギリスの国内消費の10年分に相当する。 また、イギリスのDECC(Department of Energy and Climate Change)もシェール資源の評価スタディを行っており、2013年6月、イングランド北部のBowlandおよびHodder Shaleのガス資源量の調査結果を発表した。、原始埋蔵量を1328Tcf(37.6Tcm)とし、経済的および技術的に回収可能な資源量は探鉱掘削を行わないと評価できないとしている。 ・政府の方針 政府はシェール開発を推進する方向である。ただし、水圧破砕の環境影響評価や地域自治体との共生などを定めた規制法案を整備し、論理的な地固めの上で開発を進めるというアプローチをとっている。具体的には、探鉱井掘削における環境影響評価の義務付け、シェール開発の各探鉱井ごとにそれぞれの地域自治体に100000ポンドを支払うこと、生産段階では利益の1%を地域自治体に支払うことといった項目を提案している。 また、2013年7月、イギリス政府は、シェールガス生産における収入に課される税率を30%(在来型のガス生産の税率は62%)とする法案を発表し(現在公聴手続き中)、税制の優遇によってシェールガス開発を支援する動きを見せた(在来型の炭化水素生産税は62%)。 ・開発状況 これまでに334の陸上鉱区のライセンスが授与されている。また、2014年には第14次の図3 イギリスのシェール資源分布図 出所:英DECC Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? 、上ライセンスラウンドが開催される見込みである。 2011年に国内で初のシェールガス井がLancashire地域で掘削された際、近隣地域で二度の小規模地震が発生し、これを受けて開発作業が一時中断されていた。イギリス政府は掘削を行っていたCuadrilla Resources社に対し原因分析のレポートを要請しており、このレポートによると、この地震は水圧破砕により誘発された可能性が高いが、その発生要因の組み合わせは極めてまれであり、将来同じサイトで再発することないであろう、と結論付けられている。これを受けて、2012年12月にイギリス国内でのシェールガス探鉱の再開が許可されている。 現在は、探鉱井の掘削を進めている段階であるが、これらの探鉱井は在来型の(水圧破砕ではない)掘削方法によって掘られている。しかし、民衆の間での水圧破砕に対する抗議活動が発生しており、このような水圧破砕ではない井戸の掘削に対しても抗議団体による妨害活動が行われている。 ・Centricaの参入 これまでどちらかというとベンチャー系企業によってシェール開発が進められていたが、2013年6月にCentricaがCuadrillaからシェール探査ライセンスを購入し、イギリスのシェール開発活動に参入した。これによって資金力のある企業がシェール開発に参画することとなり、開発進捗の加速が期待されるところである。実際、イギリス国内のシェール開発の先頭を行くCuadrillaも、資金力のある企業の参入を歓迎している。 出所:BP統計 出所:米EIAよりJOGMEC作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? i4)ルーマニア ・資源量 技術的回収可能資源量は51Tcfである。欧州では4番目の資源量となる。これはルーマニア国内ガス消費量の100年分であるとしている。 ・政府の方針 政府がシェールガス開発を懇願する一方、水圧破砕に対する民衆の抗議運動がたびたび発生している。抗議活動を受け2013年3月までシェール開発の一時凍結を行っていたが、解除されている。 ・開発の状況 Chevronがルーマニアで多くの権益を保有している。Chevronに対して水圧破砕反対の抗議運動が複数回発生しており、沈静化のための開発方針の説明も行われている。Chevronは現在、黒海沿岸地域の二次元地震探査およびルーマニア北東地域における探鉱井掘削を計画している。国営企業Petromも保有する国の基本分析を始めている。 出所:BP統計 出所:米EIAよりJOGMEC作成 (5)スペイン ・資源量 米EIAレポートによるシェールガスの技術的回収可能資源量は8Tcfである。 ・政府の方針と開発状況 スペイン政府としてはシェール開発を推進する姿勢でかつ支援することを表明しており、シェールガス探鉱における環境影響評価を義務付ける規制の修正を発表した。しかし、各自治州政府の動きはGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 10 ? l々なものとなっている。カンタブリア州において、2013年4月、飲料用水の汚染の懸念から同地域における水圧破砕の使用を禁止する法律を可決した。一方、バスク州でも、環境団体の抗議活動のために探鉱活動を一時停止している。しかし、他のシェール鉱区を持つアラゴン州、アストゥリアス州、カスティーリャ・イ・レオン州などでは水圧破砕は禁止されていない。 スペインのシェールガス開発には、Repsol、BNK Petroleum、San Leon Energyらが参画しライセンスを賦与されている。 出所:BP統計 出所:米EIAよりJOGMEC作成 (6)リトアニア ・資源量 米EIAによるシェールガスの技術的回収可能資源量は0.4Tcf、シェールオイルは3億バレルとされている。 ・政府の方針と開発状況 リトアニアのガス供給はすべてロシアに依存していることから、政府はシェールガス開発を推進している。政府は、環境法にシェールガス探鉱・生産に関する新たな規制を加えている。これは、環境影響評価の義務付けと、放射性または毒性物質の使用の制限、排水の貯蔵に関する規制となっている。 2012年6月に同国初のシェールガス探鉱ライセンスの入札が行われ、Chevronが唯一札を提出したとされる。ライセンスが賦与されたという公式の発表はないが、Chevronは、50%の株式を保有するLL Investicijosを通じてリトアニアでの探鉱井の掘削を計画している。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 11 ? o所:BP統計 出所:米EIAよりJOGMEC作成 (7)ドイツ ・資源量 技術的回収可能資源量17Tcfである。 ・政府の方針と開発状況 ドイツ政府が掲げる脱原子力政策、ロシアとノルウェーからのガス輸入に大きく依存しているエネルギー産業、在来型のガス埋蔵量の減少といった背景の下、エネルギー自立の意義から、新たな資源としての期待はされている。 現状は、政府として水圧破砕に関するスタディとこれを規制する法制度の整備とが併せて行われている。この法案では、水圧破砕は水資源の保護区域では行わず、かつ必ず環境影響評価を行った上で水圧破砕を実施し、使用する流体の成分の開示を義務づけるという、一定の条件下での水圧破砕を許可するものである。しかし、この法制度の整備は2013年9月の選挙以出所:BP統計 出所:米EIAよりJOGMEC作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 12 ? ~に延期されており、それまでは実質的にシェール開発は一時停止(モラトリアム)状態となっている。 なお、シェール開発のライセンスはこれまでに12が賦与されている。 しかし、同国のビール醸造業者(ドイツビール協会)から、水資源の汚染を懸念しての水圧破砕反対運動が起こっている。 8)フランス (・資源量 米EIAレポートによると、技術的回収可能資源量137Tcfと見積もられており、欧州ではポーランドに次ぐ資源量を持つ。 ・水圧破砕禁止の政策 2011年6月、フランス政府は水圧破砕技術の禁止を採択した。これにより、世界初のシェールガス開発(水圧破砕)禁止国となった。それまでに賦与されていたシェール鉱区探鉱ライセンスについては、試掘の中止または在来型に限定した開発のみ許可するとし、いくつかのライセンスが取り消された。 しかし最近、フランス議会の報告書において、水圧破砕の禁止について科学的な証拠と経済的な価値に基づき再考すべきとの見解が発表されており、今後条件付きでシェール開発が進められる可能性はある。併せて、産業大臣から、将来的には国営企業によってシェール開発をコントロールされるべきとの発言がなされている。 出所:BP統計 出所:米EIAよりJOGMEC作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 13 ? i9)ブルガリア ・資源量 米EIAによるとシェールガスの技術的回収可能資源量は17Tcfとされている。 ・水圧破砕禁止国 国内天然ガスほぼ輸入で、輸入元はロシア一か国のみであることから、当初(2011年)は北東部のNovi Pazarでのシェールガス探鉱に力を入れようとしていた。しかし、水圧破砕に対する小規模な抗議行動が発生し、2012年1月に議会は水圧破砕の禁止を採択した。これに伴い政府は、Chevronに対し2010年に与えたシェールガス探鉱ライセンスを撤回した。水圧破砕の全面禁止により、多くの鉱区での在来型資源に対する作業にも影響が出たことから、2012年6月、在来型資源に対する水圧破砕の禁止を一部緩和している。 最近になり、現在の環境大臣Iskra Mihaylovaが、水圧破砕の禁止は問題を解決する手段とはなりえず、適切な環境規制と影響把握の研究がなされれば安全なシェール掘削ができると発言している。 出所:BP統計 出所:米EIAよりJOGMEC作成 (10)チェコ ・資源量 シェール資源量の正確な見積もりは行われていないが、いくつかの地域では資源の存在が有望視されている。 ・政府の方針と開発状況 政府は、2014年中ごろまで新たなシェールガス探鉱の停止としている(モラトリアム)。このモラトリアム期間中に水圧破砕を含め探鉱活動の影響について分析を行い、法制度を整備したい考えである。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 14 ? o所:BP統計 出所:米EIAよりJOGMEC作成 .各国のシェール開発状況のまとめ 5欧州各国におけるシェールガス開発の進捗状況を以下にまとめた。また、各国のシェール開発に参画する主な企業についても下記に示す。 図4 欧州各国のシェール開発状況(JOGMEC作成) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 15 ? 表2 欧州各国のシェール開発に参画する主な企業 主な参画企業 Chevron, Total, ConocoPhillips, PGNiG, 3Legs, San Leon, Mitsui E&P, Cuadrilla Shell, Chevron, Hutton, Eni, Iskander Chevron Cuadrilla、IGas、Centrica, Dart, Alkane Chevron, Petrom, Romgaz, MOL Repsol, San Leon, BNK 現在開発禁止または一時停止 ポーランド ウクライナ リトアニア イギリス ルーマニア スペイン ドイツ チェコ フランス ブルガリア ・全体として積極的推進をするも、これまでの探鉱結果は思わしくなく、 期待した成果が出ていない状況である。 ・イギリス、ドイツは、水圧破砕に係る規制を、実施の枠組みとして整備している状況である。この整備が完了し、水圧破砕に関する正確な理解が進めば、シェール開発の進展が期待される。 ・現在水圧破砕を禁止している国でも、理論的なアプローチによる影響評価が改めて行われる可能性があり、これらの国においても開発に向けて前進する可能性がある。 ・シェール開発で先行する北米においては、水以外などの流体による破砕技術(環境汚染の原因を発生しない)が開発されつつあり、こういった技術革新が水圧破砕の議論を解決する可能性もある。 ・しかし、シェール資源に関する地質情報や知見の絶対量がまだまだ少なく、さらなる探鉱が必要であることも事実である。 商業生産にはまだ多くの時間を要すると見られ、早くとも2020年以降になると考えられる。 以上 .欧州シェール開発のまとめと今後 6Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 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