ページ番号1004404 更新日 平成30年2月16日

世界の海洋石油開発の現状と将来像(論説)

レポート属性
レポートID 1004404
作成日 2013-12-05 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 技術探鉱開発
著者 伊原 賢
著者直接入力
年度 2013
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 世界の海洋石油開発の現状と将来像(論説) 作成日: 2013/12/5 調査部: 伊原 賢 公開可 ・ 「海底油田の世界的現状」を理解するには、需給のファンダメンタルズ、石油資源へのアクセス、技術革新、インフラ、地政学、経済条件に注視する必要がある。 ・ 本稿では、海洋石油開発の動きと日本の立ち位置、参入可能分野について考える。 (JOGMEC調査部、世界石油工学者協会SPE、各種報道資料ほか) . はじめに 11950年代に米国人のM. King Hubbertが唱えたピークオイル論は「原油の生産は資源量に制限される」ということだったが、正しくなかったことが判明した。長期的には資源は有限だが、短中期的にはそうとも言えないのだ。 生産能力の限界に筆者を含む技術者は挑戦しているところだ。Hubbertが唱えたピークオイル論は米国48州ではフィットしていたが、水深1500メートルより深い「超大水深」(例えば、ブラジルのサブソルト)での近年になってからの探鉱成功などが生産能力拡大に寄与している状態を見ると、ピークオイル論では説明に無理が生じる。米国のテキサスA&M大のStephen Holditch名誉教授が提唱した「資源量のトライアングル」は、非在来型の油やガスは地下から取り出しにくいが、その資源量は豊富なことを示している(図1の下)。しかし、非在来型の油やガスは、その生産予測が難しい。米国発のシェールガス革命も10数年前に、そのことを予測する者はほとんどいなかった。 近年、石油開発をめぐる環境の変化には、油価の高値変動、イージーオイル(在来型油田)の減退、インド・中国を中心とした新規需要市場の登場、技術者の人材入れ替え、低炭素化、産油国による資源ナショナリズムの台頭などが挙げられる。このような環境変化の下では、産油国の国営石油会社NOC(National Oil Company)の支配力と、国際石油会社IOC(International Oil Company)の力と技術トレンドとの関係は図1のようにまとめられると筆者は考えている。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 1/5 }1 在来型の油やガスの支配状況がもたらす非在来型資源へのシフト 後の原油需要に応えるには氷海や大水深(水深300メートル以深)での石油開発(図2)に加え、非在 今来型の油やガスの起源や生産技術を理解した上で、技術力・投資・人的資源の投入が必須となる。 出所: NHKテレビ 視点論点「海底油田の世界的現状」2010年8月23日放映 図2 大水深での石油開発エリア 2/5 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 960年に石油輸出国機構OPECが発足し、70年代に入ると資源ナショナリズムの高まりの中で、中東や北アフリカの産油国の石油国有化が進んだ。国際石油資本メジャーの追い出しを図った。すると、メジャーは活動の場所を求めて、70年代から政治リスクのあまりない、海に目を向けていった。初めは浅いところから、だんだんと深い所に移って行った。海底油田の開発は、油価と深いつながりがある。86年に原油の公示価格が廃止され、市場価格の時代に入って以降、90年の湾岸戦争の時に一時1バレル=30ドル台という例外はあったが、ほぼ20ドル以下という時代が長く続いた。その時代には、採算からいって、コストの高い深い海の油はとれなかったのである。その後、2003年のイラク戦争以降の原油価格の高騰で、水深300メートル以上の海底で原油を生産する、大水深油田の開発が一気に本格化した。 現代の油田開発というのはずいぶん厳しい条件の中で行われている。油田地帯と言えば中東アラブの砂漠地帯が思い浮かぶが、最近は海底油田、それも深海底油田の存在が重みを増している。海底油田からの油の生産量は世界全体の約4割にもなる。現在、世界で脚光を浴びている代表的な大水深油田は、メキシコ湾、西アフリカ沖、ブラジル沖などである(図2)。1983年からの統計では、世界全体で約600フィールドが発見され、内400フィールド程度が生産中で、発見から生産開始までの時間は7年弱かかった。生産期間の平均は13年弱である。大水深フィールドの総数の55%は北米で発見されている。ただ、埋蔵量では23%に過ぎない。一方、大水深フィールド数の17%はアフリカで発見され、埋蔵量では31%にもなる。ブラジル沖では、大水深の開発により、97年には50%程度であったブラジルの石油自給率を、2007年までの10年間で100%近くまで上昇させることに成功した。 大水深油田の開発には、技術の進歩という側面もある。ビットと呼ばれる掘管の先端を、地質情報に応じて動かす技術の進歩や、ROV、AUVと呼ぶロボットなど、遠隔操作で深海での様々な作業をこなす機器の性能が向上した。そうした機器を駆使して、海底に広範囲に広がる油井をパイプでつないで、複数の油井の原油やガスをまとめて海上まで吸い上げる、海底仕上げの技術の成熟などが大水深油田の開発を支えている。技術課題としては、油層評価、地質モデル(石油システム)、高温・高圧環境、坑井仕上げ技術、フローアシュアランス、浮遊式・海底設備が挙げられる。 メキシコ湾にて2010年4月に発生した掘削リグ・マコンドの爆発・沈没、油流出事故は石油開発業界にとって大きな痛手となった。石油業界がこれだけの環境汚染を引き起こしたのだから、化石燃料からの脱却を目指す方向に米国が動くのではないか、というのが当時の大方の見方であった。メキシコ湾での掘削リグ数は約50基から2011年に10基まで落ち込んだが、現在事故前のレベルの50基まで戻ってきている事実からも大水深油田の開発には需要サイドからの強いサポートを感じる。事故の当事者のBP社に対しては、非常に厳しい懲罰的な規制がかけられたが、米国社会が現実にクルマ社会で化石燃料にGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 3/5 . 世界的な開発動向 2ヒ存した社会である以上、海底油田の開発制限にしても、安全面が担保できれば(暴噴防止装置BOPの機能強化、坑口のキャップ装置)、限定的な規制しか掛けられないと言うのが現実である。 2020年を見据えれば日産2700万バレルの供給増が見込まれる中で、そのうち日産1000万バレルが深海の油田開発からもたらされると期待されている。その背景となる3点は、 イ) 1バレル(159リットル)の油を深海から取るのに30ドル、難しくても45ドルで採算が取れる時代になっている。中東の陸上油田の数ドルと比べれば非常に高いのだが、今、油価が1バレル100ドルぐらいなので、その差額が利益になるわけで、経済的な合理性がある(図3)。 出所: IEA、SPE資料を基にJOGMEC調査部作成 図3 原油の可採埋蔵量と採算コスト ロ) 太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入は大事だが、エネルギー投入効率が石油や天然ガスといった化石燃料に比べ非常に悪い。エネルギー投入効率は100のエネルギーを生み出すのにどれだけのエネルギーが必要か、という割合である。石油や天然ガスは大体3ぐらい、再生可能エネルギーの場合は10ぐらい必要である。再生可能エネルギーでまかなうとしたら、その差額を補助金や料金上乗せで埋めなければ普及しない。 ハ) 石油はエネルギーだけにつかわれているのではなく、服から化粧品、日用品、化学や機械業界まであらゆる分野で使われている。エネルギーの問題に留まるわけではない。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 4/5 ネ上 よって、「海底油田の世界的現状」を理解するには、需給のファンダメンタルズ、石油資源へのアクセス、技術革新、インフラ、地政学、ローカルコンテンツ(機材・部品等の現地調達率)、経済条件に注視する必要がある。以上述べてきたように、世界的な海洋石油開発の動きに障害となる事柄は現状かんがえにくい。 3. 日本の現在の立ち位置と参入可能性 我が国のエネルギー問題を考える上で、21世紀になって10数年の間に「低炭素社会」と「高エネルギー価格」へのパラダイムシフトを切に認識するようになった。3.11後の我が国のエネルギー戦略を考える際に、「エネルギー供給の多角化と需給のベストミックス」は重要なキーワードであり、化石燃料、特に海洋石油開発に期待が集まる。既に海底油田からの油の生産量は世界全体の約4割にもなっていることも、その裏付けとなろう。 メタンハイドレートを始めとして、日本列島周辺での資源開発は近年注目されている。その商業的開発には、遠隔操作で深海での作業をこなすロボットなどの性能向上が欠かせない。日本の海運会社、造船会社やエンジニアリング会社が持つ技術を、メタンハイドレート採掘事業に取り込み検証を重ねることで国際的に通用する実のあるものにできるはずだ。 エネルギー資源はビジネス商品から、技術・商業・政治リスクがある戦略物資に変わったことを認識すれば、80年代後半から90年代の「原油価格低迷時代(13~19ドル/バレル)」に活動低迷を余儀なくされた日本企業の海洋石油開発ビジネスへの再度参入の可能性は大きく広がっているはずだ。ビジネス参入に際しては、海洋石油開発の経験に長けた欧米企業とパートナーシップを結ぶことの重要性は言うまでもない。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 5/5
地域1 北米
国1 米国
地域2 中南米
国2 ブラジル
地域3 アジア
国3 日本
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 北米,米国中南米,ブラジルアジア,日本
2013/12/05 伊原 賢
Global Disclaimer(免責事項)

このウェブサイトに掲載されている情報はエネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。

※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.

本レポートはPDFファイルでのご提供となります。

上記リンクより閲覧・ダウンロードができます。

アンケートにご協力ください
1.このレポートをどのような目的でご覧になりましたか?
2.このレポートは参考になりましたか?
3.ご意見・ご感想をお書きください。 (200文字程度)
下記にご同意ください
{{ message }}
  • {{ error.name }} {{ error.value }}
ご質問などはこちらから

アンケートの送信

送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。