ページ番号1004413 更新日 平成30年2月16日

シェール革命が引き起こす米国発の自動車燃料サバイバル

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レポートID 1004413
作成日 2013-12-25 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 エネルギー一般技術
著者 伊原 賢
著者直接入力
年度 2013
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 作成日: 2013/12/25 調査部: 伊原 賢 公開可 (JOGMEC調査部、世界石油工学者協会SPE、自動車技術会資料ほか) ガソリンや軽油が主体であった自動車燃料には、有限な化石燃料と地球温暖化の観点から多様化が求められている。多様化というと、ガソリンや軽油が主役の座に留まるのか否かが気になるところだ。 米国では2006年頃よりシェール革命が起こり8年余りを経た。単位熱量あたりで比べると、2013年12月時点で価格が原油の約四分の一のシェールガスは自動車の燃料としても使える。但し、トラックやバスといった商用車に限られよう。乗用車への普及には、圧縮天然ガス(CNG)タンクの低コスト化と燃料供給インフラの整備というハードルが立ちはだかる。 水素は天然ガスよりもエネルギー密度が低いため、ハードルは更に高いのが現状である。(天然ガスを液体燃料に変える)GTL軽油はディーゼル車の燃料として競争力が見込めるが、供給量が絶対的に足りない。 一方でシェールオイルの増産が北米から世界に展開して原油の生産量が仮に増えれば、ガソリン価格の低下も期待できよう。ガソリン価格が下がれば、低燃費に対するニーズは減退し、エコカーの存在危機が揺らぐ可能性がでてくる。米国では自動車燃料の主役は、しばらく従来のガソリンと軽油で変わりないと見る。 米国の話が日本で通用するには、現在の天然ガスの調達価格の3割程度の低減と国内燃料インフラェール革命が引き起こす米国発の自動車燃料サバイバル シ の再構築などが必要となるだろう。 .シェール革命のインパクト 1あと10~20年もすれば、ガソリンで走る車はつくられなくなっている――と聞いて、「そんなことはないだろ」と思った方には、この資料は読むに値するだろう。では、「電気自動車に置き換わるってことだよね」と思った方はどうだろうかと言えば、先ほどのように思った方より、さらにこの資料は読むに値する度合いが上がるはずだ。 さて、シェールとは、書道で用いる「すずり」のような黒っぽい岩で、「頁岩」(けつがん)と呼ぶ。泥岩の一種で、1億数千万年前のシダや藻などの植物の死骸が地下に堆積し、それに圧力がかかって温度が高くなると、有機物が炭化水素に変わる。炭化水素のもとになるので「石油根源岩」という言い方もする。Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 1/14 p語で「ソースロック(source rock)」と呼び、今、この岩の中に取り残されている油やガスを取り出せるようになってきた。 では、どれくらいの隙間にあるのかというと、10-9m(ナノメートル)、それを面積に直すと10-18㎡、そういった隙間に閉じ込められている炭化水素である。 例えば地下で100の炭化水素ができた場合、石油根源岩中に留まっているガスや油は80%程度といわれている。残りの20%の炭化水素が地下で加えられた圧力と温度で非常に長い時間をかけて在来型の油・ガス田に移動していく。しかし、途中に“寄り道”をするので、その約10%、つまり全体の2%だけが在来型の油・ガス田に移動すると考えられている。この2%のうち、地上への採取分は、油で35%といわれるので、全体に占める油の地上採取分は0.7%ということになる(図1)。 一方、シェール層に対しては、水圧破砕(フラクチャリング)、水平坑井(すいへいこうせい)といった採掘技術が米国で確立されたことで開発が始まった。地下に宝があるとはいえ、80%×0(ゼロ)だったものが、ガスは25%も地上に取り出せることが現実となったことは大きな驚きであり、筆者のような資源開発の技術屋には大きな喜びとなった。ガスの場合、米国は大消費国で天然ガスを輸入していたが、2012年にはほぼ自給できるようになり、シェールガスが天然ガス消費量の35%ぐらいを占めるまでになった。この量は2012年の日本の天然ガス消費量の1.75倍に相当する。 一方、最近米国でシェールオイルというものが取り出せるようになってきた。どれくらいのものが取り出せるのかというと、7%といわれている。80%に7%を掛けると、5.6%。ここで最も強調したいのは、5.6%を在来型油田の0.7%で割ると8になる。今まで我々は気にしていなかった、資源にはならないといわれている石油根源岩を割ったり、溶かしたりすれば、在来型油田の8倍の油がとれるかもしれない。これがシェールの持つインパクトなのだ。 現にシェールガスの採掘技術を応用することで、シェールから生産される軽質油であるシェールオイルが米国のノースダコタ州やテキサス州での生産急増によって、注目されている。米国エネルギー情報局(EIA)によれば、米国のシェールオイル生産量は2011年120万バレル/日、2012年200万バレル/日と急増した。軽質油はジェット燃料やガソリンが豊富に抽出できる。米国のシェール革命は天然ガスや軽質油の生産増を通じて、同国がエネルギーの宝庫になることを示唆している。 在来型の油・ガス田は炭化水素が移動したものに対し、シェールガスやシェールオイルは石油根源岩に残留しているので、両者に成分の違いはない。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 2/14 }1 在来型の油・ガス田とシェールオイル・シェールガスの起源と生成のイメージ 出所: 各種資料より、伊原賢作成 2.天然ガス自動車 2-1.天然ガス自動車へのシフトが見られる米国 天然ガスを燃料とする自動車(NGV) には、圧縮天然ガス(CNG:Compressed Natural Gas)自動車(CNGV)とLNG 燃料自動車(LNGV)がある。両方ともエンジンに送り込む燃料は天然ガスであり、車載の限られた容量の燃料タンクに気体を充填するのか液体を充填するのかの違いである(図2、図3)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 3/14 o所: 一般社団法人 日本ガス協会提供 図2 天然ガス自動車の構造 4/14 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 }3 天然ガス自動車の燃料タンク 出所: 一般社団法人 日本ガス協会提供 じ量の天然ガスを充填する場合、CNGはLNGの1.5倍の容積が必要である。そのためCNGV は、1 同回の燃料供給で走行可能な距離が短くても支障がない公営バス、廃棄物収集車あるいは民間会社の地域配送車などに使用されている。都内でもよく見る光景である。一方、LNGV は、幹線道路沿いLNG 供給所の整備の遅れから長距離輸送には使用されず、これまではCNGV と同様の使われ方であった。 日本ではあまり報じられていないが、米国では今、クルマの燃料の天然ガスへのシフトが急速に進んでいる。その理由は大きく二つある。 一つは、NGV のほうは燃料コストがかなり安く済むことだ。米国ではシェールガス革命により天然ガス価格が大きく低下したことが背景にある。 シェールガス革命が起こったと考える2006年時点では単位熱量当たりの原油と天然ガスの価格はほぼ等しかったが、2011年には単位熱量当たりで天然ガスの価格は原油の1/5 まで下がった。このため、NGVで同じ距離を走るのにかかる燃料コストは、2006年時点ではガソリン車とほぼ等しかったのが、2011年9月に小型車(対ガソリン車)で約30%、トラック(対ディーゼル車)だと約50%も低くなったのだ。 天然ガスへのシフトが進むもう一つの理由は、環境負荷が低いことだ。NGV はガソリン車に対して約1~2割のCO2排出削減効果があるとされている。また、ディーゼルトラックに比べて天然ガストラックはNOx(窒素酸化物)やSOx(硫黄酸化物)などの排出量が大幅に低減され、黒煙やPM(粒子状物質)もほとんど排出しない。加えて、騒音・振動もガソリン車並みで、ディーゼル車より低い。また、ガソリンエンジンに天然ガスの吹き込み口を追加するだけで済み、エンジンに関してはガソリン車の軽微な改良と呼ん米国では2011年4月に、米国連邦議会にNGV普及推進法(NAT GAS ACT of 2011)が提出された。こGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 5/14 -2.米国のトラック業界で導入が進む 2で差し支えない。 フ法案は都市内および長距離輸送のディーゼルトラックのNGV への代替推進を主目的にしているが、乗用車や家庭用充填設備に対する優遇策も盛り込まれている。オバマ大統領は、この年の3月末に国内での燃料の増産、天然ガスやバイオ燃料の使用拡大および自動車の燃費改善により石油輸入量を2025 年までに3分の1削減するという計画(BLUEPRINT FOR A SECURE ENERGY FUTURE)を発表しており、このときの演説でも、この推進法案への支持を表明した。 北米ではトラック輸送会社を中心に、LNG燃料牽引自動車を導入して燃料コスト削減を図る動きが出ている。牽引自動車は大型トラクターとも呼ばれ、米国では積載最重量「クラス8」(最大積載量15t以上)に分類されており、大型コンテナなどの牽引に使用されている。米国エネルギー省をはじめとするいくつかの組織において、LNG牽引自動車導入に向けての助成制度がある。 米国の天然ガス開発会社チェサピーク・エナジーおよびエンカナは、米国で自動車向けLNGの販売を始めている。これは、自社のシェールガス田から生産される天然ガスの需要増につなげるもくろみもあると思われる。 チェサピーク・エナジーは、燃料コスト削減のため自社の4,200台の小型トラックおよび子会社の400 台の大型車両を、天然ガスを燃料とする車両に順次切り替えている。さらに、掘削装置(掘削リグ)で使用しているディーゼルエンジンについても、天然ガスを燃料とするエンジンへの切替えを進めている。 エンカナは燃料コストを削減するために、自社の 1,500台の小型トラックをCNGVに順次切り替えている。また、ハイネスビル・シェールガスエリアで使用している掘削リグのディーゼルエンジンも順次、天然ガスを燃料とするエンジンに切り替えている。ハイネスビル・シェールガスエリアで操業している会社1社は 2011年4月に LNG燃料牽引自動車200台を発注し、一部の車両はすでに業務に使用されている。 米国ホンダはこれまで4つの州のみで販売していた天然ガス仕様の「シビックGX」(図4)を2012年モデルから全米で販売したほか、いすゞ自動車やFord Motor 社もNGVの販売を強化している。 図4 天然ガス自動車「シビックGX」 6/14 出所: ホンダ技研工業㈱提供 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 、した動きは日本にも波及するのだろうか。1990年当時、日本にはNGVが21台しかなく、ガススタン こドも4カ所のみという有様だった。NGVの普及を大きく加速させたのが、東京都が1999年から2000年にかけて実施した「ディーゼル車NO作戦」である。これがきっかけとなってディーゼル車からNGV への転換が進み、当時1,500台程度だったNGVは、2011年度末には4万台を超えるまでになった。表1に日本の天然ガス自動車の諸元を示す。 表1 日本の天然ガス自動車の諸元 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 7/14 全米35以上の商用空港でCNG車の活用を推進(ダラス・フォートワース国際空港内の車両は95%がCNG車) ? コスト削減を図るためトラック輸送会社を中心にLNG燃料牽引自動車(大型トラクター、大型コンテナなどの牽引に使用)の導入 ? エネルギー省の支援策 ・ 代替燃料インフラを設置した事業者(天然ガスステーション等)に対し 天然ガス供給スタンド設置コストの30%を税控除、 もしくは大規模事業者に対して導入コストの最大3万ドル、一般家庭用の設備購入には最大1,000ドルを充当するインセンティブあり ・ 天然ガス燃料(CNG、LNG)販売事業者に対して 1ガロンあたり50セントの税クレジット提供 ・ 地方自治体に対して、公共交通手段の天然ガス自動車への転換促進補助金 ・ 2012年3月7日発表のNational Community Deployment Challenge:全米10から15の都市で電気自動車と天然ガス車向けのインフラ整備。代替燃料車の購入に対する補助金交付 ? 運輸省の支援策 ・ 地方自治体に対して、天然ガスを燃料とした公共交通バス購入に必要な コストを補てんする補助金プログラム 界では1,450万台。天然ガス自動車用の国際基準があり、日本はそれを取り入れる検討を開始した 世ところである。欧州では、ガソリン車、ディーゼル車を改造した二燃料車(ガソリン+天然ガス、軽油+天然ガス)の普及を進め、基準を整備している。日本も見習うべきであろう。 NGVは日本ではCNGVが主流である。現状ではまだ大型車を中心とするディーゼル車からの転換が中心であるが、自家用車の本命はCNGVの中でも天然ガスハイブリッド自動車(CNGHV)(図5)になるかもしれない。 -3.自家用天然ガス車はハイブリッド車が本命か 2以上、米国における天然ガス自動車の普及情報を列記する。 ? 2011年 12万3000台(世界第16位、普及率0.05%未満) ? 路線バスの20~25%がCNGまたはLNG燃料 ? ゴミ収集車に占めるCNG車のシェア40%(2011年) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 8/14 }5 天然ガスハイブリッド自動車「トヨタSAI ハイブリッド」 なぜか自動車メーカーはCNGHV の開発には消極的で、東京ガスがエッチ・ケー・エスと共同で2010 年12月に市販のガソリンHVを改造したCNGHVを試作した程度だ。東京ガスの試算では、ガソリンHV より24%、一般のガソリン車より62%もCO2排出量を削減できるという。 米国のシェールガス革命の結果、世界の天然ガス供給能力は過剰になり、2011年3月11日に発生した東日本大震災の前には、天然ガスの国際スポット価格が単位熱量当たりで原油の半値に近い10ドル/MMBtu(MMBtu=25.2万kcal)程度にまで下がった。この天然ガス価格を元に、1km走行当たりの燃料コストを計算すると、ガソリン車11.40円/ガソリンHV5.70円に対し、CNGHV は3.12円とかなり抑えられる。東日本大震災後に日本が大量の天然ガスを火力発電用に購入したため、天然ガスのスポット価格はピーク時には18ドル/MMBtu に上昇し、現在は16ドル/MMBtu 程度で推移している。ただ、この価格は安全性を担保した原子力発電所の再稼働が実現されたなら、徐々に落ち着いていくだろう。 IEA(国際エネルギー機関)は、2011年11月に発表した「World Energy Outlook」2011年版において、前年まで2035年に3,000万台としていたNGVの普及(予測)台数を7,500万台に引き上げた。次世代自動車としてあまり注目されないCNGHV だが、この予測値の意味するところを日本の自動車業界も真剣に考えるべきではないだろうか。 以上まとめると、CNG車はガソリンエンジンベースなので、ディーゼルに比較して熱効率は劣る。しかしながら、燃料価格が十分安価であれば、ランニングコストがディーゼルに比較して低くなり、一定量は普及するだろう。LNG車はCNG車の航続距離を伸ばすという点では重要だが、インフラ(LNGを車に充填する場所)をどの程度整備できるか、即ち常にマイナス160℃に保つ保冷性能に優れた燃料タンクの実現がポイントだろう。常温でどんなに圧力をかけても液化しないLNGを一般ユーザーが適切に管理できるかが留意点となる。従ってLNG車はCNG車より実用化へのハードルが高い。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 9/14 .ガソリン自動車 3-1.逆オイルショックは本物か 米国は自動車販売台数世界一の座を中国に奪われた。それでも世界2位を占める大市場である(2011年中国1853万台、米国1304万台)。米国市場を抜きにして、日本の自動車メーカーの成功は語れない。 シェールオイルの急増産によりガソリンが安くなるとすれば、米国のクルマユーザーは強気になり、立派なクルマが嗜好される。これに呼応したクルマ作りをしないと、日本の自動車メーカーは流れに乗り遅れることとなる。 米国では原油や天然ガスを狙う掘削リグは1800基ほどが稼働している。需給で価格が左右され下げ止まっている天然ガスに対し、国際的に金融商品化して高値がつく原油を狙う掘削リグ数は天然ガス狙いの数を2010年に追い越した。米国では、「シェールガス革命」から「シェールオイル革命」にシフトした。今後の生産量予測は多くの会社が実施しているが、予測を発表して3ヶ月も経つと、それよりも高い実績が発表されるので、どの予測も信用されなくなっている。米国におけるシェールオイルの生産急増による中東やアフリカへの石油依存の低下によって、2020年までに米国の原油生産量はサウジアラビアを抜いて世界一になるという国際エネルギー機関IEAの予測もある。 原油は極めて運びやすい商品である。実際に運ばないまでも、実需に関係の薄い金融商品であるため、裁定取引によって自然に同じ価格に落ち着く。これが原油指標としての米国のWTI価格、中東のドバイ価格、欧州のブレント価格の位置付けであった。ところが、2011年頃からWTI価格はドバイ価格やブレント価格に対して、下方に5~10ドル/バレルの差で推移している。それだけ、シェールオイルの生産量の大きさが原油価格に影響を与えてしまう日が来たことを意味している。シェールオイルは軽質油に加え、天然ガスや天然ガス液(NGL)が各々全体の2割ほどを占める。NGLは極めて軽い揮発性の油でガソリンの成分に近い。このため、WTI価格を介さずに、実際に安いガソリンが出回るという形でガソリン価格を押し下げる可能性がある。しかし、この可能性は北米内に留まろう。シェールオイル開発における成功の鍵は、地質データの蓄積や地下資源の所有権の自由度にあるからだ。軽質油中心であるシェールオイルはジェット燃料やガソリンが豊富に抽出できることが魅力だ。米国において「逆オイルショック」が起きるサポート材料となろう。 また、米国は極端にガソリンにかかる税金が安く、税抜きの本体価格を合計した販売価格は、ほかの国よりも大幅に安い。極論だが、ガソリンの本体価格が半分に下がった場合を想定する。税金はガソリンの量に対してかかる。とすると、税込みでは米国は4割減に対し日本は3割減だ。自動車ユーザーの消費行動に大きな影響を与えるのは、車が生活の足である米国から始まると考えられる。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 10/14 Kソリンが安くなると、ユーザーの気持ちも大きくなる。燃費志向が強まってきた車選びから、風向き変化の可能性がある。大きい、速い、豪華なクルマが求められるのであれば、それに応じた品揃えをしておく必要がある。エコカー一辺倒ではビジネスチャンスを逃してしまうかもしれない。 米国工場で「シェール革命」で沸き立つ中西部向けに何を作るかだが、安定して売れているエコカー(カムリ、アコード、アルティマほか)に集中していては、シェール革命がもたらしたチャンスを逃してしまう。 重視すべきは、大型のピックアップトラックだろう。シェールガス・オイルの採掘業者、農場・牧場経営者、コンサルタントほか、この地域の富裕層の生活には大きな荷台が欠かせない。それが一つの象徴(アイコン)になってしまえば、実際に荷台が必要でない人も荷台のある大型ピックアップトラックに憧れる。舗装をしていない所を走る頻度も高い。中西部はテンガロンハットをかぶり、ワークブーツを履いた人達が消費の主役である。もともと大らかな人達なのに加え、シェール景気で気が大きくなっている。筆者も中西部のオクラホマ州とテキサス州に計6年住んでいた土地勘からもそう感じる。 実は、米国のベストセラー車は以前からピックアップトラックである。2013年2月の販売台数(Ford社の1位ピックアップトラック「Fシリーズ」5万4489台、GM社の1位ピックアップトラック「Silverado」4万1643台、Chrysler社の1位ピックアップトラック「Dodge Ram Pickup」2万3289台)を見れば明らかだ。これらビック3とも1位はピックアップトラックで、2位を1万台以上引き離している。ピックアップトラック3車種の合計は11万9421台で、米国でのホンダの販売台数を超えている。ピックアップトラックは単価が高い。米国メーカーの主な収益源はピックアップトラックなのだ。この状態は今も変わっていない。 この分野で日本メーカーは全く戦えていない。2013年2月の販売台数はトヨタの「Tundra」が7306台。日産の「Titan」は1634台、ホンダの「Ridgeline」は1301台に過ぎない。戦えない理由に、エンジンのV6(6気筒)主流があげられよう。この差は米国メーカーが採用しているV8エンジンが日本メーカーにとって「リストラ対象」であり、あまり力を入れたくない分野なのだ。但し、米国ではV6ハイブリッドはV8に比べて商品力が落ちることは覚悟しなければならない。日本人にとっては、ハイブリッドのモーター分だけ上のクラスと考えるかもしれないが、米国人の排気量・気筒数崇拝は根強いことを忘れてならない。 Fシリーズ、Silverado、Dodge Ram Pickupとピックアップトラックの米国市場には磐石のヒット車種が待ち構えている。後発の日本メーカーが追いすがって存在感を示すには、ブランド構築力、デザイン力、技術力と持てる力の全てを投入する必要があろう。 「逆オイルショック」が起きれば、単価、数量とも見込める市場がこれから出現するだろう。ピックアップGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 11/14 -2.ピックアップトラックの人気 3gラックの人気は米国の一部ユーザーに限られたものなのか、世界的な展開を見せるのか、「シェール革命」の行く末にも注目したい。 .水素や液体燃料の可能性 4シェールガスなどの天然ガスから水素(H2)や液体燃料(GTL)を造り、それらを自動車燃料に使おうというアプローチもある。 H2については、シェールガスの主成分であるメタンから比較的低コストで造ることができるので、シェール革命は「H2を燃料とする燃料電池車の普及を後押しする」との見方もある。しかし、これは簡単にいきそうにない。H2は天然ガスよりもエネルギー密度が低いので、より高圧で圧縮して自動車に貯蔵しなければならない。結果、H2タンクのコストがCNGタンク以上となる。加えて、燃料自動車そのものが開発途上である。環境に優しい再生可能エネルギーからとり出せるH2の割合を、現在の数%から化石燃料からの割合(95%以上)にどれだけ近づけるべくコストダウンが図れるかも課題となろう。よって、H2の自動車燃料としての普及はかなり先(2030年以降)になりそうである。 GTLはGas To Liquidsの略で天然ガスから液体の炭化水素を造る技術や、その技術で造った合成油(GTL軽油など)を指す。GTLプラントで造られたGTL軽油は、硫黄分が少ない良質な自動車燃料となる。原油価格が高止まりし、天然ガス価格に低下傾向が見られる中で、天然ガスを扱いやすい液体燃料にして付加価値を高めるものである。そのため、天然ガスと原油の単位熱量あたりの価格差が大きいほど利益を上げやすくなるギャップビジネスとなる。GTLに関しては、基本的に軽油のディーゼルに混ぜて、そのまま利用可能である。燃料の着火性がよい、スモークの排出が低い、硫黄分ゼロの特徴を積極的に利用して、エンジンシステムを構築すれば、軽油利用エンジンシステムに比べて数%の燃費改善は可能であろう。しかし、大きな問題がある。供給量が絶対的に足りない。米国で新設・計画のGTLプラントが稼働したところで、GTL軽油の生産量は米国の軽油消費量と比べると微々たるものに過ぎず、通常の軽油に少々混ぜる程度で、自動車燃料の一翼を担うには力不足である。 .自動車燃料サバイバル 5自動車燃料として求められるのは、今まで述べてきたように「燃料費」、「供給量」、「エネルギー密度」、「CO2削減」、「インフラ整備」の5項目と考える。5項目に対して、筆者が把握している情報を基に、(シェール革命後)考えられる自動車燃料の現状での比較評価をまとめたのが表2である。筆者は化石燃料の採掘が専門で自動車燃料そのものの専門家ではないので、表の内容に齟齬が含まれているかもしれない。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 12/14 ソリンや軽油が主体であった自動車燃料には、有限な化石燃料と地球温暖化の観点から多様化が ガ求められている。多様化というと、ガソリンや軽油が主役の座に留まるのか否かが気になるところだ。即ち、自動車燃料サバイバルに関係者の注目が集まる。 さて、本資料のまとめに入ろう。単位熱量あたりで比べると、2013年12月時点で価格が原油の約四分の一のシェールガスは、米国では自動車の燃料としても使えている。但し、トラックやバスといった商用車に限られよう。乗用車への普及には、CNGタンクの低コスト化と燃料供給インフラの整備というハードルが立ちはだかる。H2は天然ガスよりもエネルギー密度が低いため、ハードルは更に高い。GTL軽油はディーゼル車の燃料として競争力が見込めるが、供給量が絶対的に足りない。 シェールオイルの増産が北米から世界に展開して原油の生産量が仮に増えれば、ガソリン価格の低下も期待できる。ガソリン価格が下がれば、低燃費に対するニーズは減退し、エコカーの存在危機が揺らぐ可能性がでてこよう。米国では自動車燃料の主役は、しばらく従来のガソリンと軽油で変わりないと見るのが妥当だろう。一方、日本では自動車用のエンジンについては、平成に入って以降6回の排出ガス規制強化があり、2016年にNOxの規制強化が予定されている。規制値だけ単純に比較しても、1994年の規制と比較してもNOxは1/15、PMは1/70となる。同時に2015年に重量車用の燃費基準改訂が予定されており、排出ガス規制強化と燃費向上を同時に行ってきた。よって、ガソリンと軽油は米国と同様、主役の座をしばらくは渡さないと見る。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 13/14 表2 自動車燃料の比較 ネ上 エコカーで先んじたハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)に加え、水素を燃料とする燃料電池車(FCV)が次世代自動車の覇権争いをしている構図は2013年11月に開催された東京モーターショーやロサンジェルスモーターショーでも明らかとなった。リチウムイオン電池を搭載した先進的な電気自動車やハイブリッド自動車の国際安全基準の整備は進んでいくだろう。 しかし、シェールガス革命の米国から世界への進展度合いを見極めないと、自動車燃料の覇権争いは理解できないだろう。今後の次世代自動車の開発・普及の動向が注目される。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 14/14
地域1 北米
国1 米国
地域2 アジア
国2 日本
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 北米,米国アジア,日本
2013/12/25 伊原 賢
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