ページ番号1004417 更新日 平成30年3月5日

ウクライナ:EU加盟の見直しと天然ガスにおけるロシアとの関係

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レポートID 1004417
作成日 2014-01-07 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 エネルギー一般天然ガス・LNG
著者 本村 真澄
著者直接入力
年度 2013
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日:2013/12/24 調査部:本村眞澄 公開可 ・2013年11月21日、ウクライナ議会は職権濫用罪で収監中のティモシェンコ前首相について国外療養を認める法案を否決した。これは、EUとの「連合協定」署名の条件とされていたもので、これによりウクライナがEU加盟のプロセスに入ることは当面不可能となった。 ・ウクライナの経済危機を克服するのにEUからの支援を多く期待できないことから、ウクライナとしてはロシアに接近し、ガス価格の低減化と経済支援により危機克服を目指す必要があった。 ・その後12月17日のロシア=ウクライナ国家間委員会において、両国首脳はガス価格を33%割引き$268.5/1,000m3とすること、ウクライナに対して$150億の金融支援を行うことで合意した。 ・これは大方の予想を覆す寛大な措置と言え、この合意の裏には何等かのウクライナ側の譲歩があったと思われるが、キエフはEU加盟を求める反政府デモで騒然としており、ウクライナにとって不利な情報は伏せられている状況である。 ・野党「ウダル」のクリチコ党首は、この合意を「ウクライナの資産をロシアに”質入れ“して得たもの」と批判し、ウクライナ側の提示した「対価」を明らかにするよう求めている。 ・ロシア側はウクライナに対して「関税同盟」への参加を求めていたが、12月の会合では特段議題にはなっていないとされる。 ・ロシアの最終的な目標は、ベラルーシにおいて成功した様に、ウクライナ国内のパイプラインの株式を取得してロシアから欧州までの単一の広域システムとして運用することにあると思われる。ウクライナの経済危機はこの熟柿戦略を有利に進めるものであり、ロシアからの経済支援はあくまでウクライナから相応の対価を求めてのものになると考えられる。 クライナ: EU加盟の見直しと天然ガスにおけるロシアとの関係 ウ 1. ウクライナのEU加盟回避を巡っての動き1 (1)EUとの「連合協定」を巡る経緯 2013年11月21日、ウィーンを訪問中のウクライナのヤヌコビッチ(Yanukovich)大統領は、「我々 は欧州統合への道を歩み続ける」と述べ、依然としてEU加盟の意欲を見せていた。11月28、29日には、リトアニアのビリュニスで「EU東方パートナーシップ首脳会議」が開催される予定で、CISからは、アゼルバイジャン、アルメニア、ベラルーシ、グルジア、モルドバ、ウクライナの6か国が参加し、29日には 1日経、2013/11/22、毎日、読売、産経、2013/11/23 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? Eクライナ、グルジア、モルドバがEUとの「連合協定(Association Agreement)」に署名する手筈になっていた。 しかし、このヤヌコビッチ発言の数時間後、ウクライナでは最高会議(国会)が職権濫用罪で収監中のティモシェンコ前首相について国外療養を認める法案を否決した。これは、EUとの「連合協定」署名の条件とされていたもので、これにより29日の署名はウクライナにとって困難となった。同日、アザロフ(Azarov)首相は、EU東方パートナーシップ首脳会議での署名の見送りを決定し、このための諸作業の停止を命じた。また、この時ロシアとの「積極的な対話」を指示したという2。 ウクライナにおいて、来年償還期限の来るIMF等向けの対外債務は82億ドルある。プーチン大統領が明らかにしたところでは、ウクライナの対ロシア系銀行Sberbank, Gazprombank, VEB, VTBの4行の債務は280億ドルある3。また、Gazpromに対する輸入ガスの未払い金は22億ドルに上っている4。 当初、ヤヌコビッチ大統領が連合協定署名を目指していたのは、EUとウクライナのビザなし渡航の実現と、これらの経済問題の解決であった。このために、ウクライナは国際通貨基金(IMF)からの150億ドルの低利融資と、ウクライナ国内のパイプライン回収の費用70億ドル、EU基準にウクライナ経済を適合させるための資金1,600億ユーロ(2,170億ドル)を求めていた。これはポーランドがEUに加盟する際に支払われた額にほぼ近い。しかし、EU側から示された支援額は6億ユーロに止まり、ヤヌコヴィッチ大統領は不満を示していた5。 ヤヌコビッチ大統領が当面の目標としているのは、2015年の大統領選で再選を果たすことである。当面の財政危機をIMF融資で凌ごうとする場合、IMFからは厳しい財政規律を課され、これが国民を不満を増幅させることは大いに予想されるところである。また、収監中のティモシェンコ元首相を釈放した場合、彼女が2015年の大統領選に出馬するのは確実と見られ、特段誇るべき実績を持たないヤヌコビッチにとっては大きな脅威となる。向こう2年間の政治スケジュールを考えた場合、EUへの参加を急ぐ理由は弱いと言わざるを得ない。一方、ロシアの要請する「関税同盟」へ参加した場合、この1年、問題化した通商問題はひとまずは沈静化し、債務問題は暫く息つくことができる可能性が出て来る。天然ガス価格に関しても、新規の交渉余地が生まれるかもしれない。 ウクライナの外貨準備高は、10月から11月の間に8.9%下落して188億ドルとなり、昨年末からでは 2 Reuters, 2013/11/22 3 日経, 2013/11/28 4 PON, 2013/12/05 5 MT, 2013/12/04 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? /4の下落となっている。この残高では、ウクライナのすべての輸入の3か月分を賄えるのみである6。即ち、ウクライナの外貨は来年早々にも底をつくことが目に見えている。11月に入って、ウクライナ国債の利率は19.34%まで急騰した7。一方、監視機関Transparency International(TI)による腐敗認識指数で、ウクライナは175カ国中144位とバンクラデシュと同様、パキスタン、ナイジェリア、イラン、ロシア以下との評価がなされた8。 EUとの「連合協定」は、ウクライナにとって様々の経済的な可能性を狭める方向に働くことが予想されていた。これを見送り、ロシアとの関係を進展させることは、当座の経済危機を乗り越える手段としては、より現実性が高いと見なされた。 (2)関係者の主要な発言と論評 この突然のウクライナの政策転換に関する主要な関係者の発言を、下に列挙する。 Azarovウクライナ首相:「この決定はもっぱら経済的理由によるものである」(議会での説明) Boikoウクライナ副首相:「対露貿易に依存する我が国の現状では、EUへの加盟は我が国の経済に深刻な打撃を与える」 Peskovロシア大統領報道官:「ウクライナの決定を歓迎する」 Ashton EU外務・安全保障政策上級代表(外相):「署名見送りはウクライナ国民にとっても残念なことである」 一方、ワシントンポスト紙は以下のように論評している。 「ウクライナがEUとの連合協定に調印し、将来のEU加盟に道を開くことは、経済の近代化と西側からの投資、そして恐らくはIMFからの大型支援融資を実現する見通しに繋がった。他方、IMFからの支援融資を受け入れれば、ヤヌコヴィッチ氏は国民を苦しめる緊縮政策の導入を余儀なくされ、それは2015年の大統領選挙での彼の再選を難しくする可能性があった。(中略)ウクライナにとって最終的に決定的要因になったのはロシアの脅しであるように見える」9。 ウクライナが「主な貿易相手国であるロシアとの通商摩擦が相次ぎ、ロシアへの輸出が急減して国内産業が打撃を受けた」10ことは事実である。ウクライナの対ロシアの貿易額は全体の2/3にのぼる。しかし、ワシントンポスト紙はウクライナが受けるであろうIMF融資が、国民の間で不人気であるという至極全うな 6 Argus FSU Energy, 2013/12/12 7 FT, 2013/2013/12/02 8 Reuters, 2013/11/11 9 Washington Post, 2013/11/24 10 日経, 2013/11/22 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? w摘をして置きながら、ロシアの「脅し」が決定的な要因であると結論付けるのは論理の飛躍であろう。「恫喝」のみによって、他国の意思をコントロールできるであろうか。通常は、何らかの取引が介在するのではないか。事態の経緯を見る限り、ウクライナ政府がEUとの「連合協定」の署名を断念した直接のきっかけは、時系列的にティモシェンコ元首相の国外療養を認める法案を議会が否決した時点である。ロシアの「恫喝」以前に、ヤヌコビッチ政権が2015年の大統領選での再選を最優先に掲げ、有力な候補者であるティモシェンコの釈放を認めず、不人気となることが確実なIMF融資を避けたことが、今回の決定を導いたと言える。 EUのvan Rompuy大統領、Barroso委員長も共同声明で「ウクライナは短期的な考慮で、EUとの関係強化による長期的な利益を台無しにすべきでない。決断はウクライナの自由意思でなされるべきだ。圧力をかけたロシアの姿勢と行動は全く承服できない」11と、欧州人の悔しい気持ちを代弁しているが、プーチン大統領は11月26日、訪問先のイタリアのトリエステで「ブリュッセルの友人たちには激しい言葉は慎んで貰いたい」とEUを牽制した。更に、ガスの契約変更をちらつかせウクライナのEUとの協定凍結を迫ったとの見方に対して「両社の契約は2019年まで有効の筈であり、契約見直しについて協議したことはない」と否定した12。 キエフではこの後、政府の翻意を求めるデモが続いたが、ウクライナ全体の世論は必ずしもEU寄りとは言えない。ウクライナ東部は正教徒が主であり、鉄鋼を中心とする重工業は対露関係を重視している。一方、西部はカソリックが多く、親欧州の気風が強く、ユーシェンコ前大統領、ティモシェンコ元首相も西部の出身である。キエフの社会学国際研究所が9月に実施した調査によると、EU加盟賛成が40%、ロシア、カザフスタン、ベラルーシで作る関税同盟への加盟賛成が35%となっている13。同じ機関が11月中旬に実施した調査では、EU加盟支持が39%、関税同盟加盟支持が37%となり、より伯仲した結果となっている14。 (3)ウクライナのガス価格はどうなるか? EUとの連合協定を見送った後、ヤヌコビッチ大統領はウクライナの輸入ガス価格に関して、ロシアが現在欧州へ売っているガス価格である$370/1,000m3から輸送費見合いの$70を減じた$300/1,000m3 11 共同, 2013/11/26 12 共同, 2013/11/27 13 毎日, 2013/11/30 14 毎日, 2013/12/05 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? フ価格が適切であると述べた15。更に、ウクライナのスタビツキー(Eduard Stavytsky)エネルギー石炭産業相は、ガス価格に関して2014年には10%から15%の値引きを期待すると述べた16。 これを受けて、シュバーロフ第1副首相が、ガスプロムのウクライナ向けガス価格を引き下げる用意があると述べたため、ガスプロムの株価(ADR)は、12月2日、先週末比3%下落と3カ月ぶりの安値を記録した17。 12月3日から5日まで中国を訪問したヤヌコヴィッチ大統領は、中国側から黒海のセバストポリでの大喫水港建設計画に約80億ドルの投資の可能性を引き出し、年間40億m3の石炭由来合成天然ガス(SNG)プラント建設計画で合意するなど、ある程度の成果を得た18。その帰路、6日にソチに立ち寄りプーチンとの会談に臨んだが、この場でガスプロムは、ガス価格の値引きは、「幼稚で初心な」考えであり、 政治の行使とガスプロムの商業的な活動を結び付けることはないと突っぱねた19。すくなくともガスプロムは2009年の契約を前提とする立場であり、ウクライナとの政治的な取引に関与することは慎重に避けている。 2013年のウクライナへ輸出されたガス価格は、$401-402/1,000m3である20。これは2010年4月のハリコフ合意で、セバストポリ(Sevastopol)基地の使用権を2017年から25(+5)年延長する見返りにガス価格を$100値引きした後の値である(後述)。 ウクライナは、ポーランドから日量440万m3(16億m3/年)、ハンガリーから日量400万m3(14.6億m3/年)を輸入しており、価格は欧州価格の$370/1,000m3となっている。これは、Nord Stream等で輸出された余剰のロシア産ガスが巡ってきたもので、皮肉というほかない。最近EUとはスロバキア経由でも購入することで合意している。但し、供給開始は2014年の9月1日でウクライナ側は、EUの対応を批判している21。 (4)12月17日のロシア=ウクライナ首脳会談 ロシア=ウクライナの首脳会談は、第6回ロシア=ウクライナ国家間委員会として12月17日にモスクワで行われた。この結果、ガス価格は33%引きの$268.5/1,000m3となり、加えてウクライナ政府の発行するユーロ債$150億をロシアの国民福祉年金が買い取る形での金融支援がなされた。両国は、長期契約 15 MT, 2013/12/04 16 Interfax, 2013/12/03 17 サンケイビズ、2013/12/04 18 East & West Report, 2013/12/12 19 FT, 2013/12/06 20 Interfax, 2013/12/03 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? フ締結を目指して引き続き協議する。この他、貿易、航空、運輸、農業分野での協力協定が結ばれた22。 このガス価格は、GazpromとNaftogaz Ukrainyによる 2009年の天然ガス販売契約に対する、追加契約(Supplementary Agreement)として結ばれており、実務レベルでの決定である23。一方、これに対抗してEU側も、ウクライナにこれまで示して来た約$8億の支援額を積み増すことを検討している。 これに対して、野党「ウダル(UDAR)」のクリチコ(Vitali Klitschko)党首は、この合意を「ウクライナの資産をロシアに”質入れ“して得たもの」と批判している24。 ウクライナが求めていたガスの値引きは、前述の通り10%から15%であった。これに対してロシア側の提示した値引き率は33%であり、更に$150億の金融支援が付いている。即ち、この合意は、専門家から見ても破格の好条件であり、ロシア側から一方的になされたとは考えがたい。キエフでは反政府デモが続いており、ウクライナ側は自ら提示した「対価」を公表する訳にいかないという状況があるものと考えられる。 但し、ここでの話し合いではガスの供給量までは合意しておらず、今後の実務協議に委ねられている。また、プーチン大統領の説明では「関税同盟」に関する議論はないとのことであり、ガスの値下げがガス輸出税の免除によるものではなく、あくまで政策的決定と思われる。 .2009年以降のウクライナのガス動向 ロシアとウクライナのガスを巡る動きに関して、2005年以降の欧州各国におけるロシア産天然ガス価格の推移を表1に示す。 2また、ウクライナを通過するロシアの天然ガスパイプラインを図1に示す。以下、2009年の第2次ロシア=ウクライナ天然ガス紛争以降の動向を、以下に追跡しておきたい。 (1)対露輸入天然ガス価格の推移 1)2009年1月の合意 2009年1月の第2次ロシア=ウクライナガス紛争の終結した1月18日に、プーチン、ティモシェンコ両首相(当時)が、天然ガス価格を油価連動とすること、2009年第1四半期を1,000m3 21 Interfax, 2013/12/03 22 日経, 産経, PON, 2013/12/18 23 Interfax, 2013/12/17 24 共同, 2013/12/18 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? 魔スり$360/1,000m3とすること、天然ガス売買契約は11年間の長期契約とすることで、合意に漕ぎ着けた25。翌19日、Naftogaz Ukrainyとガスプロムの間で契約が調印された(写真)。紛争の発端となった2008年12月の交渉では、ロシアが$250/1,000m、ウクライナが$235/1,000m3を主張して決裂したもの。2008年後半から油価は大幅な下落基調にあり、これを反映したガス価は2009年を通じて下落すると見込まれ、通年では$250/1,000m3以下になると予想された。 年 2005 2006 2008 2007 293 260 217 210 100 130 170 230 - 110 250 245-285 90 190 130-145 92-94 85 115-155 46.68 46.68 50 95 80 110-160 110 63 60 110 110 54 EU Estonia Latvia Lithuania Belarus Ukraine Moldova Georgia Azerbaijan Armenia 表1 2005-2013年のロシア産ガス価格の推移(RusEnergy情報による)。2010年以降のグルジアのガス価格は、アゼルバイジャン産とロシア産の合わせた価格。 369 340 340 353 128 180 250 235 - 110 401 2010 276 319 319 330 180 260 253 *(167) - 174 2011 372 315 310 367 265 329 341 (175) - 200 2013 370 2012 415 420 420 491 166 424 394 (186) - 200 写真:2009年1月19日のガスプロムのNaftgazの合意 ティモシェンコ首相は、「この合意はウクライナの勝利である」と宣言したが、一方でユーシェンコ大統領はこれを「ウクライナの敗北」と呼び、大統領令違反で捜査するとまで宣言して批判した。2010年にヤヌコビッチが新大統領に就任すると、不当に高い価格で天然ガスの輸入・輸送契2009 308 267 311 296 151 259 237 - - 154 ? 7 ? 25 IOD, 2009/1/21. Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 汲ム、国家に損害を与えたとしてティモシェンコ元首相に対する刑事捜査が開始され、2011年4月に同容疑で起訴された。その後、キエフの地区裁判所は、同年8月5日、公判中のティモシェンコ元首相を審理妨害容疑で再逮捕を認めた。 図1 ウクライナを通過するロシアからの天然ガスパイプライン 2)2010年 2010年2月25日にヤヌコヴィッチ新政権が発足し、この時ウクライナはロシアに対してガス価格の減額を要望した。Serhiy Tihipko副首相は3月18日に、2010年第1四半期のガス価格 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? 305/1,000m3、第2四半期 の$320と契約上定められていることに関して、ベラルーシ並みの$168を要求した。また、買い取り契約量についても、2009年1月の契約によれば520億m3であったものを、337.5億m3へ削減を要求した。なお、ベラルーシは自国内のパイプラインシステムをガスプロムに売却したことから、この見返りにこのような低い価格となっているのであって(後述)、政治的な慰撫策というものではない。 これを受けて、3月24、25日にプーチン、アザロフ両首相がモスクワで会談し、4月16日にガスプロムMiller社長とウクライナBoikoエネルギー相(当時)がガス価格の引き下げで合意したと伝えられた。これはヤヌコビッチ大統領の提案に沿うものと言われている。これにより第1四半期が$305/1,000m3、第2四半期$330/1,000m3のところを$200/1,000m3程度になる見込みとなった26。 そして4月21日、メドヴェージェフ大統領がウクライナ東部の工業都市ハリコフを訪問し、.ガス価を今後10年間、$330/1,000m3以下では30%削減し、$330以上の価格になった場合には値引き額は$100/1,000m3を上限とし、見返りに黒海のセバストポリ軍港の使用権を2017年から2042年まで25年延長(5年延長のオプション付き)することで合意した。値引き額は今年は$36.5億となる27。30%の削減はガスの輸出関税の免除で対応、即ちロシア国家が負担し、ガスプロムの収入に変化はないとされる28。 4月27日、ウクライナ議会はこの合意を批准したが、ウクライナ憲法は外国軍の駐留を禁止しており、この部分の調整が残った29。同年の秋になって、2010年3月に締結した契約では、ガス価格を$100/1,000m3分カットされており、これが機能していることから、2011年のガス紛争はないとSergei Tigipko副首相が明言した30。 3)2011年 2010年は比較的平穏に過ぎたウクライナ=ロシア関係であったが、2011年は「アラブの春」やリビア問題でブレントの油価がバレル当たり$100を超えるようになると(図2)、先行9カ月の石油製品価格をもとに決められるウクライナのガス価格も高騰するようになり、再び両国関係は軋 26 International Oil Daily, 2010/4/19)。 27 PON 2010/4/22 28 Vremiya Novostei, 2010/4/23 29 PON, 2010/ 4/28 30 PON, 2010/10/06 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? ン始めた。2011年のガス価格は、1,000m3当たり第1四半期$263、第2四半期$297、第3四半期は$355、第4四半期には$400と予測され、ウクライナ政府は10月15日を期限に価格交渉に入り、不調に終わればドイツのE.Onや RWEにならい仲裁所へ提訴も辞さない姿勢をとることとした31。 図2 2003年から2012年までの油価の変遷(各種資料からJOGMEC作成) 第3四半期のガス価格が$354/1,000mまで高騰したことを受け、9月2日、ヤヌコヴィッチ大統領は2009年のロシアとの天然ガス供給契約を一旦白紙に戻し、ロシアと新契約を結ぶ方針を打ち出した。ウクライナはガス価として$200/1,000mを要求した32。 11月15日、ロシアとウクライナ両大統領はガス価格を$220-230/1,000m3のレンジとすることで合意と一旦は報じられた33が、実際の交渉では両者の差はかなり開いてきた。12月23日、ガスプロムのMiller社長とBoikoエネルギー相がサンクトペトロブルグで協議に入ったが不調で、26日、ガスプロムがウクライナ向け天然ガス交渉に関して1月15日に再開と発表した。2012年第1四半期にはガス価格がEUと同等の$416/1,000m3の見通しとなったが、ウクライナは$250/1,000m3 31 IOD, 2011/9/02 32 Morningstar, 2011/9/05 33 Interfax, 2011/11/15, The Moscow Times, 2011/11/16 ? 10 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ェ限度と主張した34。 4)2012年 油価の高止まりが続き、ガス価格も1,000m3当たり$400を付ける状況の中で、ウクライナ政府は、この対策として石炭依存度を高め、ロシアからの年間ガス輸入量を2011年の400億m3から2012年に270億m3に減らして、ロシアへの過度な依存を避ける方針を宣言した。1月のガス価格は、$416/1,000m3($11.8/MMBtu)となっていた。この月の購入量は19.4億m3で年間に直して233億m3という水準である35。 3月28日、ウクライナの国有ガス会社Naftogaz Ukrayinyは自国の天然ガスパイプラインネットワーク・地下貯蔵設備の評価作業を行う事とし、入札の結果、Baker Tilly Ukraineがこれを担当し、8月1日に結果を出すこととなった。このことが、パイプラインシステムのロシアへの売却を考慮に入れてものかは不明である。同国のパイプライン・システムは年間1,100億m3のガスを欧州に輸送し、$20億の通過料をウクライナにもたらしている。2009年、EUはパイプラインの改修に$26億の出資を約束し、見返りにNaftogazの生産、輸送、供給への分割(unbundling)を求めた経緯があり、報道はこれへの対応を匂わせていたが、対ロシアの株式売却を想定した可能性も否定できない。ウクライナ議会はこの評価作業を承認した。なお、パイプラインシステムのガスプロムによる評価額は$20億と報じられた36。 7月に入ってロシア側は、ウクライナに対して、安いガス価格を希望するならウクライナ国内のパイプラインシステムであるGTS(Gas Transportation System)の株式を提供するよう要求し、GTSの資産評価を巡って両者は対立状態になった37。7月第2週にプーチンとヤヌコヴィチがGTSに関して協議した。ウクライナと2009年に交わされた長期契約では、この時点でガス価格は石油価格連動で$426/1,000cmとなり、ウクライナはこれを$250/1,000cmとすることを求めた。これに対する見返りとして、ロシアはGTSの権益を要求した。契約でのガス購入義務量は520億m3であるが、take-or-pay契約の中でDQT(Downward Quantity Torelence)として最大20%減の416億m3まで引き下げるオプションもあるが、ウクライナ側の求める270億m3ではペナルティが発 34 Reuters, 2011/12/26 35 IOD, 2012/2/09 36 PON, 2012/3/29 37 IOD, 2012/7/04 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 11 ? カすることになる38。この2-3週間後には、監査会社Baker Tilly UkraineがGTSの資産評価結果を出すので、これにより大きな妥協が生まれる可能性があると期待されたが、この件の報道はこれを境に全く途絶えた。恐らくは交渉が不調に終わったものと思われる。 結局、ウクライナのロシアからのガス輸入量は、ウクライナ側の主張する通り、2012年は上半期実績120億m3、通年で270億m3を予定したが、実績は244億m3となった39。ウクライナ・エネルギー省は2013年には、245億m3とする方針である。一方で、豊富にある石炭の利用は増加した40。 もう一つの懸念である職権乱用罪で禁錮刑判決を受けて服役中の ユリヤ・ティモシェンコ(Yulia Tymoshenko)前首相(51歳)からの訴えに関しては、2012年8月29日、ウクライナ最高裁がその上訴を棄却した。 最高裁は、2009年にロシアと天然ガス売買契約が交わされた当時、前首相には、 契約締結の権限はなかったとの判断を示した。 最高裁は、政治的迫害を受けたとの前首相の訴えに根拠はないとの判断を示すとともに、 先に出された禁錮7年と罰金1億9000万ドル(約150億円)の判決の正当性も認めた。 この最高裁の棄却により、ティモシェンコ前首相のウクライナにおける法的対抗措置は尽きたことになる。被告側はストラスブールの 欧州人権裁判所(European Court of Human Rights)に申し立てる方針に切り替えた41。 5)2013年 このようなガス価格と引き取り量を巡る対立のまま、両国は2013年を迎えた。 1月26日、NaftgazはGazpromから天然ガスの引き取り量未達分の違約金$70億の支払い請求を受けた42。Gazpromは、2009年の契約によりウクライナは最低でも416億m3の購入義務ありと主張するところ、2012年の実績は249億m3であった。 2月7日、Stavitskyエネルギー石炭産業相は、Gazpromの違約金要求に対して「根拠がない」として支払を拒否した。翌2月8日、Miller社長とBoiko副首相が会談するが議論は平行線であった43。 8月24日の独立記念日において、ヤヌコビッチ大統領は11月にリトアニアのビリニュスで開催 38 Nefte Compass, 2012/7/19 39 PON, 2013/1/14 40 日経産業新聞、2012/10/02 41 http://www.afpbb.com/article/politics/2898042/9433564 42 毎日, 2013/1/31 43 Interfax, 2013/2/08. 日経、2013/2/11 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 12 ? ウれるEU首脳会議で政治的な提携と自由貿易に関する協定に調印すると公約した。これに対して プーチン大統領は22日、ウクライナとEUの自由貿易はロシア製品を締め出す恐れがあるとして、「保護主義的な措置」を取らざるを得ないかもしれないと警告した。ウクライナはAzarov首相を26日、モスクワに派遣した。一方、EUの多くの国は、ヤヌコビッチの2010年就任以来の民主的な改革ペースに失望し、政敵であるティモシェンコ前首相の収監を政治的な動機による見せしめとして非難するなど、EU側からの支持は薄れる結果となった44。 11月に入り、メドヴェージェフ首相は以下の通り、ウクライナに対して、ガス代金に関して「前払い」にする必要性にまで言及する発言を行った。「Naftogaz Ukrainyのこれまでのロシアからのガス調達に対する支払い期日を超えた債務があっても、現時点で欧州へのガス供給は問題なく実施される。Naftogazは2013年に8月にロシアから調達したガスの代金$8.82億を10/1までに支払うと主張しているが、何も支払われていない。もし債務を完済しないのであれば、現行の契約の規定どおり、将来的にはウクライナにガス供給をする場合は、前払いしなくてはならなくなるであろう。ロシアがやろうとしていることはごく当然の行為であり、ウクライナがガスの代金を支払えば避けることが出来るものである。しかし、支払期限を永遠に延ばし続けることは出来ない。ウクライナが経済的に困難な状況にあることは理解しているが、供給した分については、支払わなくてはならない」45。 11月8日、UkrTransGazがNaftogazに対して、突然ロシア産天然ガスの輸入の停止を命じた。欧州への供給は特段影響は受けなかった。ウクライナは欧州に日量2.19億m3(800億m3/年)のロシア産ガスを輸送している46。しかし、11月15日になって、Naftogazがロシア産ガスの輸入を再開した47。ウクライナ側には確固たる対応策がなく、狼狽気味とも取れる対応である。 .ロシアによる「関税同盟」設立の動き (1)自由貿易協定48 2011年10月18日にサンクトペテルブルグで開催されたCIS政府首脳評議会会議において「自由貿 4 44 Reuters, 2013/8/24 45 Interfax, 2013/11/01 46 Reuters, 2013/11/11 47 Moscow DJ, 2013/11/15 48 田畑伸一郎(2012)、「CISの枠組みにおける自由貿易地域創設の歩み」、ロシアNIS調査月報、2012年4月号、p.10-17 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 13 ? ユ地域条約」が調印された。調印国は、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ、モルドバ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、アルメニアの8か国である。これは、1994年4月15日にCIS加盟12カ国で調印された「自由貿易地域創設協定」を踏まえてのものであるが、当初は、各国が自由貿易の例外品目に指定する商品が非常に多く、批准国の少ないことから実質的に発効していなかった。特に、ロシアが石油・ガスに課している輸出関税はCIS諸国に対しても免除されていなかった。 輸出入品に対する課税は、通常は「仕向地主義課税原則」、即ち輸入品に対してなされるのが原則である。これに対して、輸出品に対して課税するのを「原産地主義課税原則」という。1996年にロシアは輸出関税を一旦は原則撤廃しているものの、ロシアのような資源輸出国にとっては、資源への物品税が重要であることから、石油・ガスに関しては原産地主義をとってきた。これに対して、ウクライナなどは仕向地主義課税原則を主張してきた。 変化が見られたのは、2004年8月で、税法典の改正が行われ、石油・ガスを仕向地主義の例外とする文言が削除され、2005年1月1日からロシア、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタンの4か国で、例外のない仕向地主義課税原則に移行することで合意した。但し、ロシアがCIS向けの石油・ガス輸出関税を実際に廃止する段階にまで至っていない。 (2)「関税同盟」の設立まで 関税同盟とは、一定の地域内の関税や貿易障壁をなくし、さらに域外から輸入する物に対する関税や通商規則を、各締約国で全て実質的に同一にする同盟のことを指し、自由貿易協定(FTA)と並んで、地域貿易協定のひとつとなっている。自由貿易協定との違いは、自由貿易協定が関税や貿易障壁をなくすにとどまるのに対し、関税同盟では域外から輸入する物への関税や通商規則までを各締約国で同一する点にある49。 ロシアとベラルーシ、ロシアとカザフスタンはともに長大な国境線を有し、関税同盟域外国からの輸入が、様々の陸路を通って入ってくる。この時、3か国間の税関手続きが撤廃されれば、こうした域外国からのトランジット輸入に関して最終仕向地での輸入関税の徴収が困難になるため、予め3か国間で輸入関税の統一的な徴収・分配は方式を定めておく必要があり、ここに関税同盟の重要性が位置づけられる50。 49 「マネー事典」による 50 今野雄五(2010)、「最近のロシアの経済情勢~ロシア・ベラルーシ・カザフスタンの関税同盟の始動と今後の展望~」みずほ欧州インサイト、2010年2月17日発行 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 14 ? 世界的にも関税同盟は数多く結ばれているが、ここではロシアの提唱するものに関しては、固有名詞として「関税同盟」と括弧付きとした。 当初の「関税同盟」は1995年、ロシア・ベラルーシ・カザフスタンで設立され、その後キルギス、タジク参加した。更に2000年、これを「ユーラシア経済共同体」へ改組したが、十分に機能するところまでいかなかった。ロシア、ベラルーシ、カザフスタンの3か国は2007年、改めて「関税同盟」創設条約を結び、2010年7月6日をもって、ロシア、ベラルーシ、カザフスタン3か国の「関税同盟」がスタートした。 3)ロシアからの「関税同盟」参加の呼びかけ 12月12日、プーチン大統領は年次教書演説の中で、ウクライナに対して、ロシアが主導する「関税同盟」への参加を改めて呼び掛けた51。 ウクライナがEUとの「連合協定」の締結を凍結しても、ロシアとして特段の「褒美」を与える義務はない。但し、「関税同盟」に入ることにより、ウクライナがその制度的恩恵を受けることは可能である。 ウクライナがより安価な天然ガス(及び石油)を手にする方法として当面考え得るのは、主たる輸出元で (あるロシアとの間のガス販売契約を改定するか、関税を撤廃・削減することが考えらえれれる。現在のガス販売契約は2009年1月19日に締結され、締結者のティモシェンコ元首相が収監されている事実からも、ウクライナにとってかなり不利な内容となっている。これを緩和する策として、翌2010年のハリコフ合意があり、$100/1,000m3が引かれている。しかし、この見返りにウクライナ側はセバストポリ軍港の租借を25年延長する条件を呑んだ。今後も、一旦結んだ契約を改定するためには、何等かの条件を提示する必要があるが、これはウクライナが順次、有力な切り札を失ってゆくことを意味する。 一方で、関税同盟に加盟することにより、関税の撤廃・削減が実現するならば、これが最も即効性がある。もしも、ウクライナがロシアのガス輸出税の30%の免除を完全に受けられるとすると、現行のガス価格が$500/1,000m3であるので、免税分は$150、更に2010年のハリコフでの合意により$100の割引きがあり、ウクライナのロシアからのガス価格は$250/1,000m3となる。これは、現状でウクライナが望んでいるガス価格の水準である。 但し、前述の通り1994年4月に自由貿易地域創設協定がCIS12か国で締結されたが、1999年4月の「同修正・増補議定書」でロシアは石油・ガスを仕向地主義課税原則の例外として、原産地主義をとり、 51 Reuters, 2013/12/12 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 15 ? ヤ接税収入を手放さなかった52。よってウクライナとしては、この関税率をロシアと交渉する必要が出て来る。本論冒頭で、10%~15%のガス価格の値引きというのは、この関税率の引き下げの結果を指すものと思われる。 4)ロシアが最終的に望むもの ガス価格に引き下げを求めるに当たって、ウクライナは何等かの譲歩材料を提供する必要がある。ロシ (アが欲しいものは、ウクライナ国内でパイプラインシステムであることは明らかである。ガスプロム本社のパイプライン操業パネルには、国内はもとより、欧州までのパイプラインが逐一情報を伝えているが、ウクライナ国内のみは、流量、圧力等の操業に関する情報を見ることができないでいた。全体の監視を妨げる原因が、このウクライナの独自主義であった。また、ウクライナ国内でのウクライナ側のパイプライン独占が、ガス交渉においてウクライナの立場を強くさせていた要因でもあった。ガスプロムは幾度となくウクライナ国内パイプラインへの資本参加を打診して来たが、ウクライナ側は国内法で、外資の参入を禁止して対抗して来た。 一昨年、稼働開始したノルドストリームや、来年から工事開始となるサウスストリームはいずれもウクライナ迂回を目的とするもので、これによりウクライナの戦略的な強みを殺ぐ目的がある。ロシアは、このようにして交渉上の立場を有利に導きつつ、更なる決定打として、ウクライナ内のパイプラインへの経営参加を目指している。 ガスプロムにとって、同様の地域で成功例がある。ベラルーシである。2006年12月、経済危機に陥ったベラルーシは、国営パイプライン会社であるBeltransgazの株式50%をガスプロムに25億ドルで売却することで合意し53、2007年から2010年までかけて売却が実行された。ベラルーシでのガス価格は輸送費を引いた対欧州価格に対して、2008年67%、2009年80%、2010年90%、2011年100%となっている。残りの50%は、2011年に売却され、ベラルーシのパイプラインシステムは完全にロシアの支配下に入ることとなった。表1に見る通り、2006年~2010年と2012年のベラルーシにおけるガス価格のみが安くなっている理由は、パイプライン売却代金の一部が引かれているためである。このことを実現するために、ロシアは実に6年もの歳月を掛けている。ウクライナに対しても、粘り強い交渉を続けて行くものと思われる。 (了) 52 田畑伸一郎(2012)「CISの枠組みにおける自由貿易地域創設の歩み」ロシアNIS調査月報、2012年4月号、p.10-17 53 Gazprom’s website, http://www.gazprom.com/press/news/2007/august/article63904/ Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 16 ?
地域1 旧ソ連
国1 ウクライナ
地域2
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地域5
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地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,ウクライナ
2014/01/07 本村 真澄
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