メキシコが石油ガス政策を変更 76年ぶり外資に開放へ(短報)
レポートID | 1004434 |
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作成日 | 2014-03-06 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
分野 | 基礎情報探鉱開発 |
著者 | 伊原 賢 |
著者直接入力 | |
年度 | 2013 |
Vol | 0 |
No | 0 |
ページ数 | |
抽出データ | 作成日: 2014/3/6 調査部: 伊原 賢 公開可 (JOGMEC調査部、メキシコ石油公社ペメックス、在メキシコ日本大使館、IPDほか) メキシコの石油産業の改革はペーニャ・ニエト大統領の悲願でもあり、また長い間成し遂げられなかった改革を達成したという一種の遺産づくりのために強力に推進された。財政や国民経済の観点からも、石油産業を中心としたエネルギー改革を進めるインセンティブが強かった。 2013年末にエネルギー改革法は成立したものの、外資を導入するための具体策を定めた2次法制は現在進行中の国会審議に委ねられており、その全貌が見えてくるのは、2014年下半期以降と見る。 キシコが石油ガス政策を変更 76年ぶり外資に開放へ(短報) メ 近年のメキシコにとって最大の課題であった、エネルギー改革に向けた憲法の部分改正が2013年12月20日に、ペーニャ・ニエト大統領によって公布された。憲法修正は20日付の官報に掲載され、21日に発効した。2013年8月に提出されたエネルギー改革法案は、エネルギー部門の国家独占体制が失われると認識する石油労組や左翼系野党からの反対を受け、議論に長い時間を費やした後、ようやく国会にて承認された。若き大統領は、国民の将来にとって歴史的かつ重要な改革であり、メキシコの発展に向けた新たな時代が始まると述べた。 . はじめに 1(出所:El Economista, 2013.12.11) 1/5 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 . 油田開発の現状と課題 メキシコは膨大な炭化水素資源を有し、油と天然ガスの確認可採埋蔵量は138億バレルと世界17位を誇る(BP統計、2012年末)。減退してきた確認可採埋蔵量もようやく2011年から100%を上回る回復を見せてきたが、新規油田の油田発見よりも既発見の3P埋蔵量(確認+推定+予想)から1P埋蔵量(確認)への組み換えに過ぎないという厳しい指摘もある。 メキシコでは油田の国有化が始まった1938年3月18日から70年代までは陸上油田からの生産が主であったが、80年代から現在までの原油生産は洋上油田が主となり、生産量を伸ばし、累計原油生産量は400億バレルに到達している。 メキシコの原油生産プロファイル(1960年から) キシコのエネルギー省が2013年4月に公表した原油の生産予測からは、既存油田からの生産量 メは2020年までに3割減少する見通しとなっている(原油生産量(除NGL/天然ガス液):2011年250万バレル/日 → 2020年175万バレル/日)。生産量を現状維持するとしても、今から僅か6年で、新規油田開発の成果を上げる必要がある。 しかしながら、メキシコの油田開発を一手に引き受けるメキシコ石油公社(Pemex:以下ペメックスと呼ぶ)には重い税負担がのしかかる。生産油ガスの売上総額の71.5%から、探鉱投資額の一部、採掘コスト、ほかの税や負債の合計を引いた額がメキシコ政府に召し上げられるのだ。 EBITDA(税引き前利益に支払利息と減価償却費を加算。他人資本を含む資本に対してどの程度のGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 2/5 Lャッシュフローを産みだしたかの利益概念)は非常に良く、他の巨大企業と比べても高い。しかし、手元に残るお金は収入に対して極わずかとペメックスは経済的にパラドックスな存在となっている。2011年にはEBITDA(849億9000万米ドル)の内81%を税や基金として国に納付した現実がある。これを石油産業関係者は、「メキシコ政府は金持ちなのに、ペメックスは貧しい男」と皮肉を込めて呼ぶ。 さて、新規油田開発の成果を上げる切り札とされるのが、深海の油田開発とシェール資源の開発だ。2011年、ペメックスはアメリカ合衆国に接する海上の国境の近くのペルディト(Perdido)エリアにおいて油を発見。第1の発見井Trion-1号井において2.5億~5億バレルの軽質油が賦存する可能性があると、2012年半ばに発表した。カルデロン前政権に対して、堆積盆地全体では100億バレルの賦存可能性を進言するニュースにつながったのだ。ペルディトエリアに対する期待は2012年末Supremus-1号井にて1億2500万バレルの埋蔵量が見つかったという発表により、更に強められた。次の井戸Maximino-1の結果は「冠の中の宝石」と評価。ペメックスは2013年から2017年にかけて、メキシコ湾の深海に計32坑の探鉱井を掘削中である。しかし、深海では探鉱に伴うコスト・リスク・複雑性を考えれば、深海開発に十分な知見を持つ会社とのパートナーシップが、ペメックスの深海開発の鍵となろう。シェール資源に目を転じると、ペメックスはメキシコのシェール資源を原油換算で約600億バレルと推定(オイル53%、ガス47%)している。 3. エネルギー改革法 メキシコは1938年の油田国有化宣言以降、ペメックスが国内で民間企業と共同で事業を行うことを禁じてきた。採掘技術や資金メカニズムを向上させるために民間企業と手を組むことは世界的に行われており、ペメックスはそれができない唯一の石油公社であった。 昨年12月に交付されたエネルギー改革法のポイントは次の4点にまとめられる。 ? エネルギー改革により、ペメックス単独では採算が見込めず、行われてこなかった深海油田やシェールオイル・ガスの開発が進むと期待。 ? 国家債務を増加させることなく投資資金や最先端技術を調達することで、埋蔵量の増加や、国家的経済競争力の引き上げに貢献。 ? 大統領は炭化水素の所有権は国有のまま維持し、国家主権を強化すること、透明性を保証することを強調(中東で見られる利権契約の可能性はない)。 ? 石油・ガスの探査・採掘において国が民間企業と契約を締結する際は、住民との協議・監査の下で実施。石油基金の創設とペメックス取締役会からの石油労組排除も特筆。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 3/5 。後は2次法制の整備が必要となり、国会が再開した今年2月4日から取り組みが本格化している。但し、法整備や外国企業の体制準備も考えると、メキシコ政府は外国企業がエネルギー分野へ参入できるのは2015年以降とする。 現在進行中の国会審議を通じて、原油生産の減退やペメックスの責任の大きさ、ペメックスの財政的・技術的な課題に対処するためには外国企業の技術導入やリスクの共有が必要であり、外国企業を惹きつけるPSC(生産物分与契約)の導入が期待される。石油契約上の経済条件(原油価格リンクの期待報酬)や埋蔵量の財務諸表への資産計上の可否の詳細が投資にあたっての関心事となろう。また、ペメックスの操業や財務能力の向上を前提とした一層の独立性を確保するための措置が取られ、ペメックスの生産減少に伴い政府収入(政府歳入の30%)も減少しているため税制改革も行われるだろう。ペメックスの投資の判断も政府の意向に左右されるような構造であったが、改革によりペメックスは海外の石油会社と同様な会社(State-productive company)に移行することが期待される。新しい体制の下ではペメックスは政府から独立した形となり、ペメックスは必要に応じて子会社を設立し、民間の石油会社とパートナーを組む形になるであろう。その場合の政府との契約主体はペメックスが行うこともあれば、民間石油会社が行うこともある。 メキシコ湾の深海油田では、米国側の海域では既に80社以上の国際企業が採掘活動を実施し日量100万バレル以上を生産しているが、メキシコ側では1バレルも生産されていない。米・メキシコ沖合開発協定が昨年12月19日に批准され発効の準備が整った。深海油田の開発にはJV(ジョイントベンチャー)組成も含め5-8年の期間を要する。米国テキサス州南部のイーグルフォード・シェールエリアと同じ埋蔵地帯がメキシコ北東部まで続くと考えられているにもかかわらず、メキシコ側では炭化水素生産は行われていない。イーグルフォードでは日量200万バレル以上が生産されている。深海油田、シェールオイル・ガスの分野に精通した企業によって開発を行うことで、メキシコの日量生産(現在は250万バレル)を押し上げることが可能というわけだ。 上流開発の会計制度も変更となる予定であり、これまで政府が石油収入の約70%を徴収していたのに対して、新制度の下では、ロイヤリティや法人税といった費目で国際的な慣習に沿った、政府への税納付が行われる予定である。生産原油の所有については、サービス・利益分与契約が国家へ帰属、生産分与・ライセンス契約においては、契約の内容により石油会社への帰属となるが、埋蔵原油の所有についてはメキシコへの帰属は変わらない。新しい組織体制の下では、新しい組織の設立、新しい役割の付与が行われる。エネルギー省SENERは、新たに契約のタイプやモデルのデザインを行い、国家石油委員会CNHは地質情報等の技術情報の取りまとめ、入札の実施や契約の署名、契約の管理を行う。財務省は会計条件を設計し、サービス契約や利益分与契約の場合にはState Trader(国)がGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 4/5 s場のマーケティングをサポートする。上流開発による政府の収入、契約への対価支払い等は石油基金が執り行う。 この改革で重要な点は、今後、ペメックスはメキシコ政府の収入源の確保の責任を負わなくなることにある。政府が必要とする財源は、政府自らが契約を用意、管理、運営して確保する。短期的には政府の財源は引き続きペメックスの生産分からの収入に依存することになるが、長期的には他の石油会社が行う生産からの財源が増えていくことを期待している。 4. 今後の動き 改革の議論は良い方向に向かっているが、メキシコの国内には依然資源の民営化に対して根強く反対している勢力が存在し、2015年の中間選挙に向けて予断は許されない。改革の究極的な目的は外資を呼び込むことであり、法制が彼らにとって魅力的に映らなければ、それは改革の失敗を意味する。また、新しい法制度の下でいくつかの組織及び権限の整備を短期間で行うことは課題である。更に、16万人もの職員を抱えるペメックスを2015年12月20日までに文化的側面も含めて変えることも非常に困難な課題となる。改革によって損を被る人も存在するからだ。ローカルコンテンツのルールについても整備されていくであろう。外資勢にとっては早期に参入すればリスクは高いが、それなりの対価は得られるであろう。逆にリスクを見極めて遅く参入すれば、当然ながらその対価は低くなる。 エネルギー改革法は成立したものの、外資を導入するための具体策を定めた2次法制は現在進行中の国会審議に委ねられており、その全貌が見えてくるのは、2014年下半期以降と見る。今後の改革の主なタイムラインは次の通りである。 2014年3月20日 ラウンド・ゼロ(ペメックスが引き続き開発を行う鉱区を申請) 2014年4月19日 2次法制の公布 2014年9月16日 エネルギー省SENER によるラウンド・ゼロの承認 2015年12月20日 新ペメックス発足 参考資料> <毎日新聞社「週刊エコノミスト」、メキシコが石油ガス政策を変更 76年ぶり外資に開放へ、2014年2月18日、伊原賢 以上 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 5/5 |
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このウェブサイトに掲載されている情報はエネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。
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