欧州天然ガス・LNGの現状と見通し
レポートID | 1004447 |
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作成日 | 2014-04-17 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
分野 | 基礎情報 |
著者 | |
著者直接入力 | 永井 一聡 |
年度 | 2014 |
Vol | 0 |
No | 0 |
ページ数 | |
抽出データ | 欧州天然ガス・LNGの現状と見通し 更新日:2014/4/14 調査部:永井 一聡 (各社ホームページ、各種報道、他) ○欧州経済危機の影響が長引き経済は低迷、また、再生可能エネルギー政策や安価な石炭の流入などの影響により、欧州全体としての天然ガス需要は低迷している。2013年のEU-28ヶ国の天然ガス消費量は4620億m3であり、3年連続の減少であった。 ○2013年における欧州の天然ガス調達先は、域内生産が34%、ロシアからの輸入が29%、ノルウェーからの輸入が22%、また、LNGによる輸入は約10%となっている。 ○LNG輸入量も減少しており、欧州のLNG基地の稼働率は低い。ただし、一部の基地ではLNGの再輸出が行われており、LNG価格の高い南米・アジアが主な再輸出先となっている。 ○経済低迷からの脱却には今後数年は要すると見られており、2010年のガス需要を上回っていくのは2020年ないしはそれ以降と予測されている。 ○天然ガス長期売買契約における石油価格指標から市場価格指標への移行が進んでいる。また、既存の契約においても天然ガス価格の再交渉を行い、価格引き下げに向けた動きも活発である。 ○自動車・船舶における排出ガス規制の強化が進み、石油に対して価格面・環境面で優位性のあるLNGを輸送用燃料として活用しようという動きが高まっている。LNGを分配・供給するLNG基地はスモールスケールLNGと称され、それらのインフラ整備が進もうとしている。 ○ロシアとウクライナ間のクリミア問題を踏まえ、エネルギー供給セキュリティ確保・強化のため、より一層の天然ガスの調達多様化が指向されている。LNGによる調達、中央アジアからの天然ガスパイプライン建設推進、欧州域内のパイプラインネットワーク強化が進められている。 ○欧州の天然ガスおよびLNGを取り巻く環境や動きからは、日本にとって学ぶ点も多い。 . 欧州の天然ガス調達と需要概況 (1)天然ガス調達と需要推移 欧州では、2008年のリーマンショック、2010年のギリシャ債務問題に端を発する欧州経済危機の影響で景気が低迷しており、現在もその出口が完全に見えたとは言えない状況にある。この経済状況は欧州 1の天然ガス需要にも反映されている。また、経済状況だけではなく、各国の再生可能エネルギー政策や米国からの安価な石炭の流入も天然ガス需要にマイナスの要因となっている。 図1に欧州(EU-28)の天然ガス調達量の推移、表1に各国別の天然ガス消費量の2012-2013年比較を示す。 天然ガスの調達量(再輸出等があるため厳密には消費量と異なっている)は、3年連続で減少している。Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? V然ガスの調達の面では、もっとも割合が大きいのは域内生産で、約34%である。そして、ウクライナ問題を巡ってロシアとEUの関係が緊張しているが、EUのロシア産天然ガスへの依存度は約29%となっている。ノルウェーからの輸入は22%であった。また、天然ガス調達量に占めるLNGの割合は約10%である。 2013年の天然ガス消費量はEU全体で約4620億m3であり、前年比では1%減少となっている。なお、2013年初めの冬期間は低気温が続く厳冬であり、2013年末~2014年初めにかけては暖冬であった。輸出産業が好調なドイツは、経済状況の面でも欧州では一人勝ちと言われており、再生可能エネルギー政策と石炭火力発電の増加及びガス火力発電の減少といった動向があるものの、天然ガス消費量は6%の増加となっている。しかし、イタリアやスペインは景気も低迷しており、天然ガス消費量も大きく減少している。 欧州域内のガス生産量は減少傾向にある(図1、2)。イギリスは北海の油・ガス田の成熟化が進み生産量は減退している。オランダはこれまでガス生産量は横ばいで来ていたが、主要ガス田であるグローニンゲンガス田で減退の兆候が見られており、今後は生産調整を行っていくとされており、減少に転じていくと見込まれる。一方、EUに加盟していないノルウェーの天然ガス生産量は増加傾向にあり、今後も北海再開発やバレンツ海等フロンティア地域の開発が見込まれてことから、当面生産量は維持される見通輸入(LNG) 輸入(ロシア以外パイプライン) 輸入(ロシアパイプライン) 輸入(パイプライン) 域内生産 ※2013年は速報値 出所:EuroStat, Eurogas, BP統計, IGUのデータを基にJOGMEC作成 図1 欧州(EU-28)の天然ガス調達量推移 しとなっている。 6005004003002001000[ 10億m3 ] 天然ガス調達量 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? \1 EU-28ヶ国の天然ガス消費量 2012-2013比較 天然ガス消費量 [10億m3] ドイツ イギリス イタリア フランス オランダ スペイン ベルギー ポーランド ルーマニア ハンガリー オーストリア チェコ スロバキア アイルランド ポルトガル 2013 88.5 79.2 68.7 46.1 40.3 30.9 17.0 16.3 11.6 9.3 8.3 8.1 5.1 4.6 4.3 2012 83.2 79.2 73.4 45.6 39.5 33.6 17.2 16.3 13.4 10.1 8.9 8.0 5.1 4.8 4.6 前年比 増減 [%] +6.0% +0.0% -6.8% +1.1% +2.0% -8.7% -1.2% +0.0% -15.5% -8.6% -7.2% +1.2% +0.0% -4.3% -7.0% 天然ガス消費量 [10億m3] ギリシャ フィンランド デンマーク クロアチア リトアニア ブルガリア ラトビア ルクセンブルグ スウェーデン エストニア スロベニア キプロス マルタ EU-28合計 2013 3.8 3.4 3.3 2.8 2.6 2.5 1.4 1.3 1.1 0.7 0.7 0.0 0.0 438.3 2012 4.4 3.6 3.5 2.9 3.2 2.6 1.5 1.2 1.2 0.6 0.8 0.0 0.0 442.9 前年比 増減 [%] -15.8% -5.9% -6.1% -3.6% -23.1% -4.0% -7.1% +7.7% -9.1% +14.3% -14.3% - - -1.0% ※出所:Eurogas イギリス ノルウェー オランダ 出所: BP統計 0199019952000200520102015図2 欧州域内の主要ガス生産国の生産量推移 (イギリス、オランダ、ノルウェー) 14012010080604020[ 10億m3 ] 天然ガス生産量 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? i2)天然ガス輸入元割合 欧州の天然ガスの輸入元(EU域外、LNGも含む)について図3に示す。2013年は速報値であるため、ロシア、ノルウェー以外の国別については未記載である。 2012年はノルウェーからの輸入が最も多かったが、2013年はロシアからの輸入が最大であった。これは2013年前半にノルウェーの複数のガス田で不具合が発生し生産量が減少していたことや、欧州企業らのGazpromに対する交渉でロシア産ガスの価格が引き下げられたことが原因だと思われる。 2012年 4% 2% 2% 9% 14% 34% 35% 2013年(速報) ロシア ノルウェー アルジェリア リビア 北・南米 カタール その他 22% 34% 44% ロシア ノルウェー ロシア・ノルウェー以外 出所: BP統計、Eurogas、Gazprom、Gasscoのデータを用いてJOGMEC作成 図3 欧州の天然ガス(LNG含む)輸入元割合(2012年、2013年) (3)LNG 図4に欧州のLNGの輸入量推移を示す。2011年以降、天然ガス需要の低迷を反映してLNGの輸入量も減少している。2013年の欧州のLNG輸入量は約3400万トンであり、2012年より約30%近く減少している。LNG基地の稼働率は低く、欧州全体の平均稼働率は約20%となっている(図5)。 一方、一部のLNG基地では再輸出が行われており、再輸出量は増加傾向にある(図6)。欧州では、天然ガス需要の減退と安価な石炭の流入により、ガス市場価格が下がっている上に価格競争力の面でも天然ガスは弱くなっており、LNGを輸入しても再ガス化して販売する利益性が小さくなっている。この打開策として、欧州よりも価格が高い北東アジアや南米向けに再輸出し、転売により利ザヤを稼ぐというビジネスが行われるようになっているのである。このLNGの再輸出先は、2013年の実績として、南米が多く、一部がアジア地域となっている。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? }4 欧州のLNG輸入量推移 図5 欧州のLNG基地稼働率推移 出所: Gas Infrastracture Europe 20082007出所: BP統計、IGUのデータを基にJOGMEC作成 20112009201020122013その他欧州 イギリス スペイン イタリア フランス ベルギー 7000600050004000300020001000輸入量,万トン 02003200420052006 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? Xペイン ポルトガル オランダ フランス ベルギー 出所: GIIGNL 4.543.532.521.510.50[ 百万トン ] LNG再輸出量 20082010201120092013図6 欧州におけるLNG再輸出量推移 2012.欧州のガス需要見通し 2 図7に欧州のガス需要の見通しを示す。 Base Caseは現在のエネルギー政策が継続するケース、Environmental Caseは経済成長とエネルギー効率化が進むとともに原子力エネルギーが再生可能エネルギーに置き換わっていくケース、Slow Development Caseは経済低迷からの脱却が進まずエネルギー効率化も進まないケースである。 いずれのケースにおいても、経済低迷からの脱却には今後数年は要するという予測になっており、Base Case とEnvironmental Caseでは将来的には天然ガス需要が増加していくとしている。しかし、それでも2010年のガス需要を上回るのは2020年ないしはそれ以降と予測されている。 Base CaseEnvironmental CaseSlowDevelompents Case出所: Eurogas 2010201520252035図7 欧州の天然ガス需要見通し 7006005004003002001000[10億m3 ] 天然ガス需要 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? R.欧州のLNG基地 図8および表2に欧州のLNG基地(計画中含む、ただし具体的な操業開始予定年が分かっているもの)を示す。 西ヨーロッパの既存のLNG基地は上記に述べたように稼働率が低く、また、景気が低迷する以前に建設が計画されたものもあるが、東ヨーロッパおよびバルト海沿岸地域に多くのLNG基地建設計画がある。東ヨーロッパ諸国は天然ガス需要の多く(国によってはほぼ100%)をロシアに依存しており、供給セキュリティ向上のためロシア依存度を低減することを目的としたものが多い。また、バルト海沿岸地域については、IMO(International Maritime Organization:国際海事協会)による船舶の排出ガス規制の強化に伴い、LNGを船舶用の燃料として活用していくことを念頭においたインフラ計画でもある。 図8 欧州のLNG基地 出所: JOGMEC作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? Teesside GasPort(EBRV) Dragon LNG South Hook LNG アイルランド Port Meridian/Offshore(LNGRVs) Shannon LNG Fos-Tonkin (Fos-sur-Mer) Montoir-de-Bretagne フランス Fos-Cavaou スペイン スペイン Dunkirk Fos-Faster Barcelona Huelva Cartagena Bilbao Sagunto LNG El ferrol LNG (Reganosa) El Musel (Gijon) Tenerife (カナリア諸島) <Expansion> ポルトガル Gran Canaria (カナリア諸島) Sines Panigaglia(la spezia) Isola Di Porto Levante (Adriatic LNG)/Offshore(GBS) イタリア Livorno - Toscana(FSRU) Falconara LNG LNG MedGas Terminal - Gioia Tauro Porto Empedocle Malta(FSU) Krk island LNG, Omisalj/Offshore (FSRU) Adria LNG Fiere Revithoussa AGRI LNG Project, Constanta Black Sea LNG Marmara, Energlisi Aliaga, Izmir Vassilikos マルタ クロアチア アルバニア ギリシャ ルーマニア ウクライナ トルコ キプロス2007200920092016201719721980201020152019196919881989200320062011200720142017201820031971200920132018201720182018201620172016200020202014199420062015Excelerate EnergyBG 50%, Petronas 50%Qatar Petroleum 67.5%, ExxonMobil 24.15%, Total8.35%West Face CapitalHESS LNG, Poten & Partners Elengy (GDF SUEZ100%) Elengy (GDF SUEZ100%) Societe du Terminal Methanier de Fos Cavaou: Elengy (GDF SUEZ100%) 72%, Total28%EDF 65%, Fluxys 25%, Total 10%,Vopak 90%, Shell 10%EnagasEnagasEnagasEnagas 40%, RREEF 30%, EVE 30%Saggas(Union Fenosa Gas(ENI 50%, Gas Natural FenosaXunta de Galicia 10%, Commonwealth Bank 26%,Union Fenosa Gas(ENI 50%, Gas Natural Fenosa50%) 21%, Grupo Tojeiro 18%, Caixa Galicia 10%,Sonatrach 10%, Caixanova 5%EnagasGasCan (Endesa 47.18%,Enagas 41.94%, Sodecan 10.88%)GasCan (Endesa 47.18%,Enagas 41.94%, Sodecan 10.88%)Ren AtlanticoSnam (CDP 29.97%, ENI 20.23%, その他 49.8%)Terminale GNL Adriatico Sri (ExxonMobil 70.7%,Qatar Petroleum 22%, Edison 7.3%)OLT Offshore LNG Toscana (E.ON GlobalCommodities 46.79%, IREN 46.79%, OLT EnergyToscana 3.73%, Golar LNG 2.69%)Api Nova EnergiaSorgenia&Iride 51%, MedGas 49%Enel 90%, Stabiumi Family 10%EnemaltaPlinacro, JanafE.ON Global Commodities 39.17%, OMV 32.47%,Total 27.36%, Geoplin 1.0%Gruppo FalcioneDESFAAGRI (SOCAR, GOGC, ROMGAZ, MVM)ウクライナ政府, Naftogaz Ukrainy, KOGASBotasEgegaz LNGDEPAGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? 表2 欧州のLNG基地とその計画(操業開始年が分かっているもの) 国名 ノルウェー スウェーデン フィンランド エストニア ラトビア リトアニア ポーランド ドイツ オランダ ベルギー イギリスプラント名受入開始年会社および参加者(所有割合) Ora LNG, Fredrikstad Nynashamn Lysekil Gothenburg Joddbole or Tolkkinen Pansio Harbour Tornio Harbour Paldiski Muuga,Tallinn Riga Klaipeda (FSRU) Swinoujscie Hamburg(small scale) Rostock Gate LNG, Rotterdam Zeebrugge Isle of Grain20112011201420152019201520162015201720162014SkangassAGA GasSkangass, PreemSwedegas, VopakGasumGasumOutokumpuBalti GaasElering, VopakLatevenergoKlaipedos Nafta2014年Polskie LNG(Gaz System)20142016201119872005200820102015-2016 <expansion,Phase 2> <expansion,Phase 3> <expansion,Phase 4>Bomin Linde LNGVopak, Gasunie, Verbundnetz Gas AGVopak 47.5%, Gasunie 47.5%, OMV 5%FluxysNational Grid S.欧州の天然ガス事業動向 (1)欧州の天然ガス市場と天然ガス価格引き下げに向けた動き 欧州大陸部の国々では、天然ガス長期売買契約において、歴史的に石油製品(重油、灯油など)の価格に連動して天然ガスの価格を決定する方式が主流である(逆にイギリスは歴史的に市場価格連動(NBP)によるガス取引が確立)。しかし、近年大陸部でもガス取引市場が登場・拡大してきており、これらのガス取引市場は基本的にスポット取引に使用されている。 近年の原油価格高騰と、欧州経済の低迷に伴うガス需要減少により、長期売買契約における石油連動 のガス価格が高騰し、逆にスポット価格が低下するという状況が発生した。さらに、アメリカシェールガス革命の影響で行き場を失ったカタール産のLNGが市場価格で欧州に流れ込んだこともあり、長期契約のガス価格とスポット市場のガス価格の差が増大した。これにより、長期売買契約を持つ大手ユーティリティ企業の経営に大きな痛手を与えた。 こういった中で、2009年頃から各企業はガス生産者(売主)と価格見直しの再交渉を活発化させていった。この価格見直しにあたっては、あくまでも天然ガス価格の低減が目的であったが、石油価格連動方式の非合理性についても強く認識させられることとなった。 詳しくは、JOGMEC資源情報レポート「欧州における天然ガス購入価格見直しの動き(大貫憲二)」「欧州における脱石油価格連動に向けた新たな長期ガス売買契約の締結状況(筆者著)」を参照されたい。 この動き・流れは現在も続いており、欧州における天然ガスの長期売買契約においても、石油価格指Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? Wから市場価格指標への移行(市場価格指標の割合の増加)が進んできている。現在欧州が購入する天然ガスの約半分は市場価格指標とも言われている。そして、既存の契約においても天然ガス価格を再交渉し、価格引き下げに向けた動きも活発である。 最近合意された天然ガス価格交渉について以下に記す。 ①RWE⇔Gazprom 2011年8月 RWEがGazpromに対してガス価格を巡って仲裁手続き起ち上げ 2013年6月 仲裁手続きにより、RWEがガス価格過払いに伴う払い戻し(約10億ユーロと言われる)を獲得(ガス価格引き下げ) ②DEPA⇔Gazprom 2014年3月 天然ガス価格について15%の引き下げで合意 (2013年6月~2016年まで遡及して有効) ③ENI⇔Statoil 2013年7月 天然ガス価格を巡る仲裁手続起ち上げ 2014年2月 価格条項見直しで基本合意(仲裁手続き凍結) 2014年3月 価格条項見直しで最終合意市場価格指標を導入と見られる 欧州では天然ガス需要の低迷に伴い、LNG使用量も減少し、LNG基地の稼働率も低くなっている。 また、天然ガスは、発電用燃料の領域で、補助金のついた再生可能エネルギーや、安価な石炭にシェアを奪われるという事態にも陥っている。 一方、輸送業界では、自動車へEuro6規制導入、船舶へのIMO規制強化(SOx、NOxの排出規制海域(ECA)の指定)といった、排出ガス規制の強化が行われている。従来の輸送用燃料である石油製品の価格が高止まりしている中、石油に対して価格優位性を持ち、環境性にも優れたLNGを輸送用燃料として活用しようという動きが高まっている。これは稼働率の低迷するLNG基地を有効活用する意味でも新たなビジネスモデルとなるものである。 現在、輸送用燃料としてLNGを分配・供給するLNG基地はスモールスケールLNGと称され、インフラ整備が進もうとしている。図9にスモールスケールLNGの進展状況を示す(Gas Infrastracture Europeが発行しているSmall Scale LNG Mapの抜粋)。 2)スモールスケールLNGへ (Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 10 ? o所: Gas Infrastracture Eurpe 図9 欧州地域のスモールスケールLNG基地 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 11 ? T.ロシアクリミア問題を踏まえた欧州の動き ~天然ガス調達多様化へ~ ロシアとウクライナ間のクリミア問題を受け、EUは既に一部ロシアに対する制裁を行っているが、さらなる事態悪化への対応としてアメリカと共にロシア制裁の強化を示唆している。そして、EUの首脳らは、ロシア経済の重要な基盤でもある天然ガスに対し、EUのロシア産ガス輸入を縮小することに合意したとされている。 また、逆にロシアは、ウクライナのロシアに対するガス料金不払いへの対応として、ロシアからの天然ガス供給の停止の可能性もあるとしている。 欧州各国は従来よりエネルギー供給セキュリティ確保・強化を優先課題としているが、このような状況を不磨、より一層の天然ガスの調達多様化を指向している。具体的な対応としては、LNGによる調達、中央アジアからの天然ガス供給のためのパイプライン建設推進、欧州域内のパイプラインネットワークの強化といったものである。 中央アジアからの天然ガス供給については、アゼルバイジャンの巨大ガス田Shah Denizガス田開発が大きな焦点となっている。このガス田からの供給については、TANAP(Trans Anatorian Natural Gas Pipeline)、およびTAP(Trans Adriatic Pipeline)というパイプラインによってギリシャ、イタリア等を介して西欧諸国へガスを送るSouthern Corridor計画(南回廊計画)が進められている(図9)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 12 ? AP:2019年操業開始予定 TANAP:2018年操業開始予定 輸送能力 100億m3/年 (200億m3/年まで拡張可能) 輸送能力 第一期(2018):160億m3/年 第二期(2023):240億m3/年 第三期(2026):310億m3/年 Shah Denizガス田 (アゼルバイジャン) 図9 Southern Corridor計画 出所: BPホームページ また、東欧諸国では特にロシアへの天然ガス依存度が高く、従来よりロシア依存からの脱却が課題として挙げられている。そのため、東欧諸国でのLNG基地建設計画が進んでおり、ポーランドとリトアニアは今年中にそれらが操業開始予定である。また、ウクライナ経由でのロシア産ガスの供給が停止した場合のリスク対応として、西欧側(北海やオランダの天然ガス田や西側LNG基地からのLNG気化ガス)からの天然ガス逆送を可能とするパイプラインの整備も進められており、ポーランドは従来とは逆方向の流れであるドイツ・チェコからのガス輸送を可能とするシステムの整備、ハンガリーもスロバキアとの間でガスパイプラインを整備中である。また、ポーランドやウクライナ、ルーマニアなどが自国でのシェールガス開発を促進しているのもロシア依存からの脱却が大きな理由となっている。 ○東欧諸国のLNG基地建設計画 ・ポーランド: Swinoujscie基地が2014年操業開始予定 ・リトアニア: Klaipeda基地(FSRU)が2014年操業開始予定 ・フィンランド&エストニア:それぞれLNG基地建設予定(2015)&パイプラインにて連結 ・クロアチア:Krk island基地(2016)およびAdria LNG基地(2017)建設予定 ①経済低迷、再生可能エネルギー政策と安価な石炭の流入により、天然ガスの価格競争力は失墜し、.まとめとインプリケーション 6Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 13 ? 「州の天然ガス需要は依然として低迷している。 これは、アジアおよび日本においても、LNG価格の高止まりが続けば、天然ガス需要は増加するどころか減少していく可能性があることを示している。そういった状況は天然ガスの売主(上流企業)・買主(下流企業)の双方にとってプラスとはならない。 ②欧州の一部のLNG基地ではLNG再輸出事業を活発に実施しており、再輸出先は南米、アジアといったLNG販売価格が高い地域となっている。 しかし、再輸出が行われているということは仕向地条項の制約に縛られているということを意味している(一旦規定されたLNG基地に受け入れることで仕向地制約の適用を外している)。仕向地条項を撤廃できれば(LNGを自由に仕向け変更できるようになれば)、欧州のLNG市場と他の地域のLNG市場の統合に近づくこととなり、世界のLNG価格が収斂していく可能性がある。 ③欧州における天然ガス価格引き下げに向けた動きは継続しており、天然ガス長期売買契約においても市場価格連動の割合が増加している。また、Gazpromのように石油価格連動の価格体系においても係数変更による価格引き下げが進んでいる。 これは、欧州ユーティリティ企業がこういった交渉をおこなわなければならないほど切羽詰まった状況に追い込まれたことによるものであり、交渉が成功している要因は、市場取引が拡大してきていること、および調達源に選択肢(パイプライン輸入、域内生産、LNG)が存在しているからである。 日本の場合、調達源としては現状LNGのみであるために価格交渉力が弱くなっている。ロシアからのパイプラインやメタンハイドレートなどの新規供給源が生まれれば、LNG価格の交渉においても幅が広がっていくと思われる。 ④欧州における自動車や船舶での排出規制の強化や石油価格の高止まりによって、輸送用燃料としてのLNG利用の計画が進められており、新たなビジネスモデルとしてスモールスケールLNG建設に向けた動きが活発になっている。日本では排出規制の強化が欧州ほど進んでおらず(IMOの排出規制排出海域の指定なし)、また、アジアプレミアムと言われるようにLNGの価格優位性も乏しいことから、現状、輸送用燃料としてのLNGにはそれほどのインセンティブは見られない。 ⑤EUと各天然ガス調達企業は、ウクライナ問題に鑑み、天然ガス供給セキュリティ強化のため、調達の多様化を指向している。調達手段として、LNGや中央アジアからのガスパイプラインネットワークの建設・強化が進められようとしている。 以上 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 14 ? |
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