ページ番号1004449 更新日 平成30年3月5日

ロシア:エネルギーから見たウクライナ問題

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レポートID 1004449
作成日 2014-04-23 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 エネルギー一般天然ガス・LNG
著者 本村 真澄
著者直接入力
年度 2014
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日:2014/4/21 調査部:本村眞澄 公開可 ・2014年のウクライナ問題の発端は2月22日の政変にある。クリミア問題、続いて起こったウクライナ東部での騒擾は、国際的に最も影響の大きい事象ではあるが、2月の政変から派生した事象であり、エネルギー問題から見れば周辺的な事態である。22日の政変の淵源、目的、プロセスを分析することにより、ウクライナを取り巻くエネルギー問題の解明に資することができる。 ・この政変の伏線は、2013年のロシアの対ウクライナ、対EUエネルギー政策が一定の成果を収めた事にあると思われる。政変の目的はこのロシア側の成果が政策として固定化する前に迅速に無力化することにあり、これが2015年の大統領選を待たず、2014年前半に実行された理由と推測される。 ・ウクライナ経由欧州向けのガスは比率を縮小しており、輸送面では特段問題はないが、ウクライナ向けガス価格は2009年フォーミュラに従い$485/1,000m3となり、支援国の負担増となり緊張を生む。 ・エネルギー分野で考え得る対露制裁としては、石油・ガス代金のドル送金禁止、LNG技術輸出禁止、Rosneftのセチン社長等主要国有企業要人の資産凍結・入国禁止がある。 ・メジャー各社は対露投資の姿勢に変更はなく、エネルギー経済制裁の回避をアピールしている。 ・South StreamはEUとの対話不調により計画遂行が困難な状況となっており、悲観的見解もある。 ・クリミア半島大陸棚鉱区に関して、ロシアは2015年の鉱区付与を目指すが、係争となる可能性がある。 ・対中国はより接近するものと予測され、5月下旬にはプーチン訪中時に懸案のガス価格交渉が妥結するとの観測が多い。但し、ロシアが経済性で譲歩してまで対中連携を演出するとは思えない。 ・日本の対ロシア投資に変化なし。 シア: エネルギーから見たウクライナ問題 ロ(1)ウクライナ問題の発端は何時のことか? 2014年に起きたウクライナ問題は、一般紙の受け止め方ではあたかもロシアがクリミア半島を突然併合したことが発端であるような書き振りで、これを踏まえてロシアの戦略や今後の展開の予想を論じているものが多い。しかし、実際の動きは様々の事象の連鎖であり、その中で最も重要な転換点となったものは2月22日のキエフにおける政変である。これには昨年12月に交わされた天然ガス価格の合意が伏線としてある、というのが著者の見解である(表1)。 クリミア半島のロシアによる併合は、政治上の問題として勿論重要であるが、「マイダン(広場)」.ウクライナ問題の留意点 1Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? Nーデターで出現した暫定政権がEUとNATO加盟を志向していることから、ロシア側としてクリミア半島西部に位置するセバストポリ軍港の確保、次いでクリミア半島の人口の58%を占めるロシア系住民の保護を理由として起こしたものである。その意味では派生的な事象であり、本稿ではエネルギーと関係のある点にのみ触れる。 内 容 U加盟手続きの停止。 天然ガス価格33%引き。150億ドルの金融支援 ヤヌコビッチ政権崩壊。 E前提政権の親NATO路線への対抗手段。セバストポリ軍港の維持。 事 項 合協定署名断念 ロ=ウ天然ガス合意 クーデター。 暫定政権発足 クリミア半島のロシアへの併合 東部での独立運動 連時 期 2013年 11月21日 12月17日 2014年 2月22日 2014年 3月18日 4月7日 伏 線 発 端 派 生 2013年は、ロシアのウクライナ絡みのエネルギー戦略では所期の成果を挙げた年となった。この成果を挙げたことそのものが、その後の展開の伏線になっていると見られる。 ロシアとウクライナの関係についての2013年の一連の動きを見てみる。ウクライナはEU加盟を目指す政策を方針転換し、11月21日に「連合協定」署名を断念した。12月17日にはロシアはウクライナ向け天然ガス価格を33%割り引いて$268.5/1,000m3とし、更にロシアがウクライナに対して150億ドルの金融支援を行うことで合意した。懸案であった「関税同盟」加盟の話にまでは踏み込まなかったものの、ウクライナの経済危機も当面は回避でき、ロシアとウクライナの関係はこれで安定的なものとなった。しかし、「連合協定」署名断念の「褒美」としては、大判振る舞い過ぎ、一方でロシア側が何らかの「対価」を得たのではないかとの観測がなされていたが、2014年2月22日の政変を迎え、明らかにされないままとなった。 更に付け加えるならば、2013年の6月にこれまでEUと米国が積極的に推進してきたナブッコ・パイプラインが、BP等の欧州系企業によって却下され、カスピ海のガスはBP等の操業するTAP(Trans Adriatic Pipeline)によりイタリア経由で欧州へ運ばれることになった。ナブッコ・パイプライン計画が消滅したことにより、バルカン半島からオーストリアにかけての地域は「南回廊2)伏 線-エネルギー分野における2013年のロシアの成果 (表1 2014年のウクライナ問題の発端は何時か? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? iSouth Corridor)」計画では空白となった。South Stream計画は「不戦勝」の状況となり、2014年の工事開始を待つばかりとなっていた。ロシアのパイプライン戦略にとっても一定の成果が見え始めていた年といえる。 (3)発 端-何故2014年2月に「ウクライナ政変」が起ったのか? 上記のヤヌコビッチ政権の政策転換に異議を唱えたのが、EU加盟を希望するウクライナ内部の親欧米勢力で、12月から散発的な市民デモが繰り広げられていた。ところが2月に入って、急にウクライナの右翼武装集団である「右派セクター(Pravy Sektor)」による実力行使が目立つようになり、運動は先鋭化した。2月21日には、憲法改正、大統領選の前倒しなどを取り決めたYanukovich大統領と野党陣営との「暫定合意」が成立し、仏、独、ポーランドの代表(外相)も著名したものの、同日深夜、身の危険を察知した大統領がキエフを脱出し、翌2月22日には政権が崩壊した。これは、事実上のクーデターであり、現状の変更はまさにここを起点とする。 ここで出て来る疑問は、なぜ2014年の2月に政変が起ったのかという点である。 ウクライナに西側寄りの政権を根付かせることは2004年の「オレンジア革命」以来の欧米の方針であった。Yanukovich政権の人気度からみて、2015年に予定されていた大統領選挙で再選される見込みは低いと見られていた。親欧米の大統領が誕生する可能性は十分にあったと言える。あと1年待てば、ウクライナではほぼ自動的に、そして平和裏に、西側寄りの正統政権が誕生した筈である。それを、なぜ敢えて2014年の2月に実現させねばならなかったのか?これは果たして偶発的なものであろうか? この部分は、報道で殆ど触れらることがない。しかしジクソーパズルの大事な部分のピースのように、これが嵌れば全体のピクチャーが見えて来るのではないか。2014年1月付けの拙稿1では、ロシア側の33%という一方的なガス価格引き下げや150億ドルのウクライナ国債購入の陰には何らかの取引があった筈で、最も可能性の高いものはウクライナ国内の天然ガスパイプラインに関する権益であろうという当方の「作業仮説」について述べた。 政権転覆から間もない2月24日、ロシアのMedevedev首相がウクライナ新政権に対して、これまでの合意は個人ではなく政府間のものであり、法的な拘束性を有するものであることを踏まえ、 1動向「ウクライナ:EU加盟の見直しと天然ガスにおけるロシアとの関係」http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=1312_out_j_Ukraine_gas%2epdf&id=5041 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? u既往契約の遵守」を呼び掛けた2。しかし、ガス価格を割り引くと言う、どう見てもウクライナ側に有利な契約について、ロシア側が遵守を主張するのは可笑しな話である。 ロシア側にとって重要だったのは公開されていない何等かの「密約」の方であり、恐らくこの密約の維持をウクライナ側に呼びかけたものではないかと推測するのが妥当であろう。しかし、その後の経緯を見ると3月4日にロシア側は前年12月17日に合意した天然ガス価格の割引を停止して、2010年のハリコフ合意に基づくフォーミュラ価格とすることを決定した。「密約」は闇から闇へ葬られた可能性が高い。 このことを踏まえると、「ウクライナの2月政変はこの『ロシア=ウクライナ密約』を破棄させるためというもの」という新たな「作業仮説」が構想される。来年の大統領選挙を待っていては、この密約は機能し始めてしまう。多少、強引な手段に訴えてでも、ロシアとウクライナの合意を反故にしなくてはならないということであれば、このような急いだ対応の説明がつく。 このような対応を試みた勢力は、当然ながらかつてナブッコ・パイプラインを推進していたグループ、即ち米国とEUに近い系統であろう。その基本的な考えは、ロシアから欧州への天然ガスパイプライン網の発達を抑制し、ロシア以外のソースのガスを欧州に運ぶことである。もしも、ロシアがウクライナのパイプライン権益の一部でも持つことに成功したのであれば、これまでブラックボックスであったウクライナ内部でのパイプライン圧力もガス流量もモスクワでモニターすることが可能になる。ロシアから欧州へと延びるガスパイプラインはワンシステムとなり、Gazpromの統一した管理のもとに置かれる。能力1,200億m3の欧州へのロシアからウクライナ経由での天然ガス供給はより盤石のものとなる。既にNord Streamの稼働開始で、欧州の北半には年間550億m3のロシア産ガスが供給できる体制となった。更には、能力630億m3のSouth Streamのが稼働を開始すれば、ベラルーシ経由の320億m3、黒海のBlue Streamの160億m3も加えると合計2,860億m3と、欧州のパイプライン輸入量3,800億m3の実に75%、欧州のパイプラインによる(LNGも含めた)ガス需要8,857億m3の32%までもがロシア産で占めることが可能となる3。 これは、産業の観点から見ると結構なことではあるが、過度なロシア依存を減らすというEUの政策的立場と相容れないものとなる。実態が真逆の方向へ向かおうとしていると、この勢力には映ったことであろう。暫定政権の成立はこれを阻止する手段であったと、当方が推定する所以である。 (4)米国の構想するパイプライン戦略 2 PON, 2014/2/25 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? アの背景には、ロシアからの天然ガスパイプラインが伸展してくることは、市場をロシアの影響力が支配することだという、米国の伝統的なパイプライン戦略観があるように思われる。レーガン政権の発足した1981年、当時国防次官補であったRichard Perleは、1970年代にドイツ、イタリア等によって進められたソ連の天然ガスを自国にまで運ぶという『シベリア天然ガス・パイプライン』について米上院の公聴会において証言し、「欧州諸国がソ連のエネルギーに依存することは、米国と欧州の政治的・軍事的連携の弱体化に繋がる。ソ連の天然ガスが日々欧州に流れて来るという事は、ソ連の影響力も日毎に欧州まで及んで来るという事だ」と米国政府の懸念を表明した4。 Perleはその後、ネオコンの中心人物となり、彼のパイプラインに関する考えはそのまま米国の中心的な政策として、国務次官補を務めるVictoria Nulandにまで引き継がれている可能性がある。 1991年12月にソ連が崩壊した際に、ソ連から欧州への天然ガスは何の障害もなく、供給され続けた。即ち、ソ連が政治の手段として天然ガスを輸出していた訳ではなく、企業体であるGazpromがビジネスの手段として天然ガスを輸出していたのが実態である。国家が崩壊しても、企業は存立する。政治とは別個に、営業活動が遅滞なく進められたに過ぎない。米国のパイプラインに関する戦略観は欧州での実態にそぐわないというのが筆者の実感である。 (5)経済制裁の問題 初歩的な議論ではあるが、政治は基本的にゼロサムゲームである。当事者同士では勝つか負けるかという点に関心が集中する。ビジネスはプラスサムのゲームが基本であり、当事者はウィン・ウィン、即ちともに利益を上げなくては意味がない。対応を誤れば、双方が損害を被るというルーズ・ルーズの関係となってしまう。パイプラインによる天然ガスの供給は、供給側にとっては安定的な市場を確保できると同時に安定供給の義務を負うものであるが、一方で需要側も安定的な買い取りの義務を負うと同時に安定的な調達が保証されるという利得がある。すなわち、パイプラインによる供給は「双務的・互恵的」であり、プラスサムをもらたすインフラであると言える。パイプラインが政治の論議と馴染まない理由は、この点にあると考える。 米国主導で進められようとしている経済制裁において、エネルギー輸送にまで踏み込んだ場合には、産業界にとってはルーズ・ルーズとなる可能性が高い。 2.ロシアからウクライナへのガス供給の現状と見通し 3 BP Statistical Review of World Energy June 2013 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? i1)2013年のロシアから欧州へのガス輸出の状況 2013年のロシアから対欧州ガス輸出量は1,397億m3、一方、対FSUガス輸出量は511億m3であった5。欧州の天然ガス需要は4,850億m3であったことから、ロシア産ガスの欧州市場で占める割合は28.8%となる(但し、これには対トルコ向け輸出は含まれない)6。 ルート毎の2013年の輸出量を見ると、ウクライナ経由が840億m3で全体の55%(2014年に入って、現状では52%)、ベラルーシ経由が310億m3(320億m3まで引き上げ可能)、トルコ向けの黒海のBlue Stream経由が136億m3(160億m3まで引き上げ可能)、ドイツ向けのバルト海のNord Stream経由が230億m3(能力的には550億m3まで)となる7。但し、ウクライナ・エネルギー石炭資源省によるウクライナ経由欧州輸出量は861億m3である8。Nord Stream経由の輸出量に関しては238億m3という報道もある9。 図1ロシアからの欧州へのガス輸出量(2013年)(諸情報からJOGMEC作成) 4 Jentleson, Bruce W.(1986), Pipeline Politics, Cornell University Press, Ithaca, 263p. p.173 5 International Oil Daily, 2013/1/10 6 Reuters, 2014/3/05 7 PON, 2014/3/27 8 IOD, 2014/3/04 9 Itar-Tass, 2014/1/28 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? ord Streamが稼働を開始する2011年以前は、ロシアから欧州向けガスパイプラインは、ウクライナ経由の能力1,200億m3とベラルーシ経由の能力320億m3のみであり、ウクライナの占める比率は約80%あった(図2)。これが、Nord Streamの開通で50%台にまで劇的に下がってきた。ガス輸送で信頼性の低いウクライナを迂回するという当初の目的は、確実に成果を挙げている。 これに能力630億m3のSouth Streamが開通すれば、ウクライナ経由の比率は極めて低くなる。ナブッコ・パイプラインやTAPはカスピ海のガスを欧州に運ぶもので、ロシアは関係を持たないが、South Streamの開通はウクライナ迂回としての効果が大きい。 2013年12月17日、ロシアとウクライナは2014年から供給する天然ガス価格を、2013年価格から33%値引きして$268.5/1,000m3とすることで合意した。 2014年3月4日、ガスプロムは2月のウクライナ政変での状況の変化と、現実に2014年の輸図2 2011年以前のロシアから欧州向けパイプラインの状況 2)輸入ガス価格 (Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? ?Kス代金が払い込まれていないことに鑑み、割引価格を第1四半期で打ち切ることを決定した。 4月1日、GazpromのMiller社長は、ウクライナが2013年の未払い金の一部、及び2014年の供給分に関しては100%未払いであることから、第2四半期における対ウクライナのガス価格の割引き措置を停止して、2013年12月17日に合意した2014年第1四半期価格である$268.5/1,000m3における割引き分を停止することとし、フォーミュラに基づき$385.5/1,000m3に引き上げた。同日付けでNaftogaz Ukrayinyの未払い金は$17.1億に上るという。Yurly Prodanエネルギー石炭産業相は、これに対抗して2014年のウクライナのガス輸入量を当初の300-330億m3から270-300億m3に縮小する。同時に、ウクライナでの通過タリフは2009年合意よりも10%引き上げるとした10。 更に4月3日、Medvedev首相は、2010年4月のKharkov協定におけるSevastopol軍港の2017年から2042年までの25年間の租借延長の見返りとしてのウクライナに対するガス輸出税免除措置を停止する措置を承認した。新規のガス価格$485/1,000m3は直ちに適用される11。 これに対抗して、ウクライナのYurly Prodanエネルギー石炭産業相は、ロシア側の要求する2010年4月の$100/1,000m3の割り引きの返済要求に関しては無視すると述べた。ウクライナとしてはフォーミュラ基づき$387/1,000m3で支払う意向で、これ以上の値上に対してはストックホルムの仲裁裁判所に提訴する意向である。 (3)未払い代金 4月1日付けで、Naftogaz UkrayinyのGazpromに対する未払い金は$17.1億に上る12。但し、別の報道では22億ドルとされている13。2014年に入って、ガス代金は支払われていないという。GazpromのMiller社長は4月3日にモスクワでNaftogazのAndriy Kobolev CEOと、累積債務問題で協議したが結論は出なかった。 4月9日、プーチン大統領は閣議で、ウクライナへのガス輸出について、全額前払いとする方針を示し、ウクライナ側と協議に入るよう外務省に指示した14。GazpromとNaftogazとの契約書には、翌月の7日までに払い込みできない場合は前払い方式とするとの規定がある。 10 PON, 2014/4/02 11 PON, 2014/4/04 12 PON, 2014/4/02 13 PON, 2013/12/05 14 各紙、2014/4/10夕 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? 月10日、Putin大統領はEUの18か国首脳に書簡を送付し、ウクライナのガス代金滞納問題に関して共同で対処するよう提案した。現状では、ロシアのみが債務問題に対処している状況である。これは、ウクライナへのガス供給が停止した場合に、欧州各国に影響が出ることを念頭に協力を求めたものである15。プーチン大統領は、前日の燃料エネルギー会議において、「キエフのクーデター暫定政権の合法性を認めるブリュッセルがドルでもユーロでもびた一文も出していないのに、その正統性を認めていないロシアだけが実質的にウクライナの経済を支えているのは大いなるパラドクス」と述べた。 4)ウクライナ国内ガス価格 3月26日、ウクライナ政府はIMFと協議の結果、ウクライナ国内のガス価格を4月1日に産業用を29.1%、5月1日に民生用を56%引き上げることで合意した16。更に、2018年に向けて価格引き揚げを予定しており、Yatseniuk政権の人気低下の引き金になることは確実である17。 ( (5)ウクライナのガス逆走輸入ルート 2013年は、ウクライナへポーランドから年間11.3億m3、ハンガリーから8.7億m3、価格は$337/1,000m3($9.32/MMBtu)と報じられている。ガスの逆走はRWE Supply & TradingとNaftogazの間で2012年5月契約これは、ロシア産ガスの過剰輸出分が逆走されたものである。4月15日、独の公益企業RWEは、ポーランド経由ウクライナに向け本年最初の送ガスを行った。ポーランド経由は最大100 億m3 まで輸送可能である。スロバキア経由を入れると250 億m3/1,000m3も可能になるという18。 このガスは元はロシアから輸入されたガスの過剰分である。欧州ではガス販売において「仕向地条項(Destination Clause)」はないので、転売は勿論可能であるが、ロシアがいつまで過剰な量の輸出をポーランド等に対して行うのかは不明である。現状では、ロシア側によるこれに関する特別の対策は報じられていない。 15 各紙、2014/4/11 16 PON, 2014/4/04 17 PON, 2014/3/27 18 PON, 2014/4/16 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? i6)ウクライナ内部でのエネルギー関係者の処分 Yanukoich政権に近い人物に対する捜査が進行している。 3月21日、暫定政権のウクライナ内務省はバクリンNaftogaz社長を汚職容疑で拘束した。同社に絡んで約40億ドルの汚職があったとされる19。 またウクライナ検察当局は、スタビツキー元エネルギー石炭産業相に対する犯罪捜査を開始した。 Yanukoich前大統領の支持者で実業家のセルヒー・クルチェンコ氏に対する捜査と関連していると見られている20。 7)South Streamの見通し ECの代表団は3月11日に予定されていたモスクワ訪問を取りやめた。これは、ウクライナ情勢を受けてSouth Streamの法的問題とNord Streamの全容量活用に関する議論に関して延期することとしたものである21。 その後、EniのScaloni CEOは議会において、「イタリアにとってロシア産ガスは30%でしかなく、ロシアからのガスがなくとも生きて行ける。TAPによりアゼルバイジャンのガスが入る」と発言し、South Streamの将来に関して悲観的な見通しを述べた。但し、この発言の背景には今後の交渉を有利にするための戦術といった憶測も一部にはある。一方、Wintershallのジーレ会長は「ウクライナでの出来事はSouth Streamのような代替の供給ルートの必要性を示している」と発言している22。 (その後の3月27日、Federica Guidi伊産業相は、ロシアのクリミア併合でSouth Streamの建設は危機に晒されていると述べ、ドイツの強気の姿勢に比べ、イタリアでは悲観的な見方が増えている23。 EU側は、South StreamはEUの第3エネルギー・パッケージに定めるところの①生産と輸送のアンバンドリング、②第3者アクセスの保証、の2点に違反しているとして、現在ロシアと協議中してきたが、クリミア併合問題で両者が対立している限り、事態の打開は困難となる。 Gazpromは黒海区間パイプ調達に関する第2段階の入札が3月14日に実施され、住友商事グループ40%(伊藤忠丸紅鉄鋼等)、露OMK(35%)、Severstal(25%)が落札した。契約金額は8億ユーロである。なお第1回は1月19日に実施され、ロシアとドイツ勢が落札している。黒海では4本のパイプが敷か 19 MSN産経ニュース、2014/3/25 20 フジサンケイ・ビジネスアイ, 2014/3/26 21 IOD, 2014/3/12 22 Vedomositi, 2014/3/24 23 IOD, 2014/3/28 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 10 ? 月6日、第1次の対ロシア制裁が大統領令として発表された。対象は、ロシア政府高官・軍関係者、及びウクライナ前政権の一部当局者で、全面制裁を見送ることで一定の配慮としたとされる。 内容としては、①ウクライナの民主制度を侵害する個人・団体が米国内に持つ資産の凍結、②該当する個人や団体への査証(ビザ)の発給停止、米国への渡航の禁止。オバマ大統領は制裁の理由として、「ウクライナ政府の承諾なくクリミア半島での政権を主張する人物が、ウクライナの平和や安全、安定、主権、領土保全などを脅かすことが米国の外交政策、国家安全保障にとって危機となっている。この脅威に対処することを宣言する」というもの。 ロシアがウクライナ東部への軍事行動を起こした場合には、追加制裁を検討するとしている。大統領令となった理由は、議会承認を経ずに直ちに実施可能。議会における「弱腰」外交批判の噴出を避けるためである。 ・第2次制裁(3月17日) 米国の制裁では、米国内でのロシアの資産凍結や米国への渡航禁止措置を取るとしている。資産凍結の対象となるのは、ウクライナのヤヌコビッチ前大統領やクリミア自治共和国・アクショーノフ首相などのクリミアの分離主義勢力の指導者ら計4人。米国への渡航禁止の対象となるのは、プーチン大統領の最側近であるロゴジン副首相、スルコフ大統領補佐官、マトビエンコ上院議長らロシア政府要人7人。 ・第3次制裁(3月20日) 対象個人を産業界にも拡大し、20名を追加した。エネルギー産業に近い人物としては、チムチェンコ(NOVATEK、Gunvor(欧州向け石油仲買業)大株主)、ローテンベルク兄弟(プーチン大統領柔道仲間、Gazprom向けPL業拡大中)、コヴァルチュク(バンク・ラシーヤ(民間銀行:政権幹部の財布と言われている)を保有)、ヤクーニン(ロシア鉄道総裁)等が含まれる。 れる予定である24。事態の遅れは日本の産業界にも影響を与えている。 .各国の対応と予想される投資環境の変化 3(1)対ロシア制裁 1)米国による制裁 ・第1次制裁(3月6日) 24朝日、2014/3/15 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 11 ? Uは3月6日、緊急首脳会議を開催し、3段階の対ロシア制裁の検討を開始した。当面の決定事項として、緊張緩和が実現しなければロシアとのビザ自由化交渉を凍結する。今後の検討事項として、プーチン政権幹部の資産凍結、渡航禁止措置の可能性のあることを警告した。 ・第2次制裁(3月17日) 欧州連合(EU)は、すでに査証(ビザ)なし渡航の交渉中断などの措置を取っているが、17日にブリュッセルで外相理事会を開き、第2段階としてロシアやクリミアの当局者ら21名のEU域内への渡航禁止や、在欧資産を凍結する内容の制裁措置を決めた。 ・第3次制裁(3月21日) 更に12名を対象に追加。但し、ロシア産業界の対象者・企業は非公開。英国はタックスヘイブンであり露企業も多く登記されているとされるケイマン諸島、ヴァージン諸島に対して独自の制裁を検討する動きがある。 3)その他OECD諸国による制裁 カナダ、日本、豪州はそれぞれ独自の制裁を実施した。3月18日、EUから1日遅れて発表された日本による対ロ制裁では、査証発給緩和協議凍結、投資・宇宙・安全保障分野での協定の締結交渉の開始凍結が盛り込まれている。 2)ロシア側の対抗措置(3月20日、24日) ( ロシアは、米国に対しては米共和党の重鎮ジョン・マケイン上院議員ら9人に対する入国禁止を発表し、カナダに対しては政府幹部13名の渡航を禁止し、対抗措置とした。但し、欧州と日本に対しては制裁措3)各国の対ウクライナ支援 真先に支援を表明したのは米国であるが、その内容は10億ドルの債務保証というもので、額の少なさが注目された。一方、EUは110億ユーロ規模の包括支援策を用意している。日本は3月下旬に1,500億円の経済支援を決めたが、その内訳は円借款1,100億円、IMFに連携した金融支援と (置は発動していない。 2)EUによる対ロシア制裁 ・第1次制裁(3月6日) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 12 ? オて100億円の借款、貿易取引補償枠300億円(2年間)である25。 IMFは140億~180億ドルの融資枠を設定しており、既に実務協議に入っているが、当然ながら厳しい財政規律が課されることとなり、逆さやとなっているウクライナ国内のガス価格も、IMFの指導の下に引き上げられる。 1)英国での議論 欧州における見解が一枚岩でない証左として、英国におけるテレビ討論の例が挙げられる。 3月27日、英国BBCによるテレビ討論会で、英国独立党(UKIP)のNigel Farage党首はNick Clegg副首相(自由民主党)に対して、「英国はウクライナにおいてEUの帝国主義的、膨張主義的な行動を助長し、結果的にロシアによるクリミア併合を招いた。率直に言って、ウクライナでEUは手を血で染めた。私はプーチンを支持するものではないが、ロシアの熊をつつけばどう反応するか分かりそうなものだ」と発言した。番組後の投票ではFarage支持が57%、Clegg支持が36%であった26。但し、これは討論全体の印象であり、ウクライナ問題に対する評価ではない。 英国独立党はEUからの脱退を党是に掲げ、Farage党首は熱烈なEU批判者として知られている。なお、保守党のキャメロン党首も、再選された場合、2017年にEU加盟の是非を問う国民投票を行うと明言している。 2)米における制裁の逆影響の論議 米議会では、ロシアに部品供給を依存する軍需産業や宇宙産業が対露制裁の結果マイナスの影響を受けるとの懸念が広がっている。米軍が軍事偵察衛星を打ち上げる主力ロケット「アトラス」はロシア製エンジンを搭載する。NASAにとって、ロシアのソユーズロケットは国際宇宙ステーション(ISS)への唯一の輸送手段で、3月26日に打ち上げられた。軍需大手ロッキード・マーチン社などは野党共和党を中心に強い影響力を有する。他に、多額の対露投資を抱える航空機、エネルギ4)欧米側での異論 (ー業界も制裁強化に反発を強めている27。 (5)エネルギー業界等からの反応 25日経、2014/3/25夕 26 EUbusiness, 2014/3/31 27日経、2014/4/02 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 13 ? 3月以降、メジャー各社の代表がウクライナ問題に関してそれぞれ言及している。これらに共通しているのは、対ロシア投資に関して見直す考えのないことである。メジャー各社はいずれも、現状維持を望み対ロシア制裁に関しては慎重であると言える。 1)BP ウクライナ危機を巡り、米国がロシアへの経済制裁を呼び掛ける中、BPはロシアにおける自社の投資を100%支持すると、3月4日に開催された投資家説明会で(米国人の)Bob Dudley社長が述べた28。BPはRosneftの株式を20%弱保有している。 また、BPはロシアでのビジネス運営を管理するポジションを設置する方針を発表した。BP役員のDavid CampbellがRosneftの第2位株主代表として将来的な事業を見る。同氏は追って、BP Russiaの社長(現Scott Sloan)にも就任する29。 その後の4月10日、BPのBob Dudley CEOはロンドンでの年次株主総会において、緊迫するウクライナ情勢を念頭にBPはロシアと西側との橋の役割を果たすと述べた。BPはロシア陸域探鉱でRosneftと将来的にJVを設立する計画を持っている30。 2)Total 3月4日、ヒューストンで開催されたIHS CeraWeek会議の会場でChristophe de Margerie社長は、ロシアは常に投資家にとってある種のリスクがあると見なされてきたが、Totalはロシアで長年活動しているとし、NovatekやYamal LNG社との共同事業に影響はないと述べた31。 更に4月に入って、TotalはLukoilと西シベリアのBazhenov鉱床の開発での協力に係る覚書を締結した。LukoilのVagit Alekperov社長は、「LukoilはBazhenovで2014年に10万tを生産する計画だ」と述べた32。 4)ExxonMobil 3月5日、ExxonMobilは緊迫したクリミア半島情勢を理由にウクライナ領の黒海にあるSkifska鉱区の開発を停止する一方で、ロシアにおいては問題なく事業を進めており、今後も影響はないものと考えていると米国NYでRex Tillerson社長が述べた。Exxonは2014年後半にSakhalin1事業のArkutun-Dagi鉱床(6億bbl)からの石油生産開始を計画するなど、ロシア事業において変化は 28 Reuters, 2014/3/04 29 PON, 2014/4/02 30 PON, 2014/4/11 31 IOD, 2014/3/05 32 Interfax, 2014/3/29 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 14 ? ネいとMark Albers上席副社長は語っている。またExxonはクリミアに近いロシア領の黒海にあるTuapsinskiy鉱区において試掘井の準備を行っており、2014-2015年に1坑を掘削する計画である33。 5)Siemens ハーグでのG7緊急首脳会議の2日後の3月26日、SiemensのケーザーCEOは、プーチン大統領と公邸で会談し、同社が長年のビジネス関係を尊重したいと考えており、事業計画における「短期的な混乱」に過剰な注意を払ってはいないと指摘した。ロシア国営鉄道のヤクーニン社長が米国からの制裁対象の人物となっている点に関して提携プロジェクトに影響はあるかとの記者団からの質問に対して、「我々はロシア企業と信頼し合える関係を維持する」と答えた。同CEOはこの訪問に関してドイツ政府は事前に把握しており、政府からの圧力はなかったことを明らかにした34。 更に4月4日、South Stream Transport B.V.とSiemensは、South Streamのブルガリアでの上陸地点における情報伝達システムと自動制御装置等を供給することで合意した35。これは、South Streamの危機説が流れる中での対抗措置と思われる。 6)原油トレーダー 米ゴールドマン・サックス、バンク・オブ・アメリカ(BOA)、モルガン・スタンレーのアナリストらは、ロシアによるクリミア侵攻に関して、「経済的な打撃が大きいために、欧州がロシア産原油・天然ガスの禁輸措置を支持することはない」との見方を示している。エネルギー調査会社ペトロマトリックスのマネジングディレクターのオリビエ・ジェイコブ氏は「欧州はエネルギー貿易でロシアとの関係が十分に深い。ロシアからの原油、天然ガス液、石油製品の輸入がいずれも約30%と大きい」と述べた36。 7)東京ガス 4月1日、東京ガスの広瀬新社長は、日立-鹿島ガスパイプライン(60km)を最優先事業に挙げ、2016年3月稼働開始、ガス輸入量は年間100万tとする計画に付け加えて、長期的な考えとしてロシアからの海底パイプラインによるガス輸入による供給ソース分散化を挙げた。但し、東京ガスのシステムの長期的な計画にはタイミング的には連動しないとした。昨今のロシアとウクライナの問題に関して問われ、広瀬社長はLNGの供給ソースとしてロシアは資源基盤が強く、地理的に近いことから重要と認識し、ウク 33 IOD, 2014/3/06 34 Reuters, 2014/3/27 35 Interfax, 2014/4/04 36 Lananh Nguyen フジサンケイビジネスアイ, 2014/3/07 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 15 ? 宴Cナ問題はあくまで「政治の問題」とした37。 8)その他日本企業の対応38 「経済制裁になればビジネスに大きな影響の出る可能性がある」(三井物産) 「電力供給に直接影響はないとみているが、LNGの動向を注視したい」(東京電力、LNG輸入の約10%をサハリンに頼る) 「制裁内容によっては部品供給や完成輸出が滞りかねず、ロシアでの生産、販売に影響がでる恐れがある」(トヨタ自動車) 「ルーブル安によるロシア経済の悪化が自動車販売に影を落とす」(三菱自動車) 6)対露エネルギー制裁の可能性 3月24日、ハーグでのG7緊急首脳会議で、ロシアが事態を悪化させた場合、「経済的に重大な影響」を与える経済制裁の実施を警告。ロシア産天然ガスや石油に対する制裁にあたり、供給源の多様化など「エネルギーの安全保障」をG7が共同で強化するため、エネルギー担当相会議を開催することで合意した39。この時期は5月上旬、開催場所はローマである。 (エネルギー分野で考え得る対露制裁としては、まず、イランに対して行ったと同様の石油・ガス代金のドル送金禁止措置がある。このような動きに対抗してGazpromNeftは、従来から国際的エネルギー市場で決済通貨として最も使われている米国ドルでの決済を停止し、ユーロへ切り替えることについてユーザーと話し合っているという40。その他、LNG技術輸出禁止、Rosneftのセチン社長等主要国有企業要人の資産凍結・入国禁止等が議論されている。 ここで考えうる最もインパクトの大きい制裁は、ドル決済を禁止することによるロシアの石油・ガスの輸出の制限であるが、これによるエネルギー価格の上昇は避けられず、欧米諸国も相応の痛手を被ることとなる。特に、石油、ガスのそれぞれ約30%をロシアに依存する欧州は、別途の供給先を開拓せねばならず、制裁の積りが逆効果になりかねない。米国に比べて欧州側は制裁に慎重であると、種々の報道で伝えられている。前述の通り、メジャー等の産業界は、いずれもロシアとの関係が深く、現行の投資を維持したい方針である。 37 PON, 2014/4/02 38 電気新聞, 2014/3/06 39各紙、2014/3/25夕 40 MT, 2014/4/10 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 16 ? V)対中国天然ガス交渉への影響 3月27日、ロシア国家安全協会(Russian National Security Foundation)のKonstantin Simonov会長はイルクーツクの国際石油・ガスフォーラムで個人的見解と断った上で、クリミア半島のロシア編入の動きを巡る現在の政治情勢、および欧州がエネルギー資源の供給ルート多様化を計画していることを背景に、露中政府は2014年4月ないしは5月にロシアから中国への天然ガス供給に係る契約を締結する可能性が非常に高いと見ていると述べた41。 (またGazpromのValery Golubev副社長も同じフォーラムで、2014年6月までに中国とのガス供給に係る交渉を終結する可能性があると述べた。KovyktaおよびChayandaガス田を資源基盤とすることを検討中であるが、価格フォーミュラ、供給量については既に決定したものの、ガス価格については、依然としてはっきり決まっていないしている42。 オックスフォードエネルギー研究所のJonathan Sternは、「ウクライナ編入問題を巡っての欧州との急速な関係悪化は、ロシアに中国とのガス供給契約の締結での妥協を促す可能性がある。Gazpromがもし2014年末までに契約を締結できなければ、Putin大統領はRosneftに中国とのガス交渉を任せる可能性がある」と述べた43。 GazpromのAlexei Miller社長とArkady Dvorkovich副首相による訪中団が4月9日北京して、露中のガス供給を巡る協議に入っており、アナリストは契約がようやく締結されるとの確信を強めている44。 クリミア半島は当初ロシア領であったものが、1954年にウクライナ系ロシア人であるフルシチョフ第1書記によりウクライナへ編入された経緯があり、ロシア人が過半を占める。 3月16日、クリミアでロシア編入の住民投票が実施された。投票率83.1%、支持率96.77%であった。即ち住民の80.4%が支持したことになる(投票そのものの信憑性には一定の留保が必要であ(1)クリミア半島での住民投票の概要 .クリミア半島を取り巻く動き 4 41 Interfax, 2014/3/27 42 Interfax, 2014/3/27 43 IOD, 2014/3/28 44 Interfax, 2014/3/31 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 17 ? ?、が)。ロシア系58%が殆ど賛成票を投じたとすると、ウクライナ系30%の内22.4%、即ち比率にして75%が賛成票を投じたと思われる。ロシアとウクライナの給与や年金水準、観光地としてのクリミアの魅力等を勘案しても、ウクライナ系のロシア領への帰属容認の姿勢は大きな示唆を与えるものである。 一方、クリミアに駐留していたウクライナ兵1万8,800人の内、ウクライナでの軍務継続を希望した者は4,300人(23%)で、これらの兵士はウクライナへ帰還した。他の77%の兵士はロシア側に投降した45。報じられている政治的な緊張に比して、この投降率の高さは異様ともいえる。これは、先の住民投票の結果とも整合性があり、政治的には意味のある数字である。 2)クリミア沖黒海鉱区の付与に関して 3月18日のロシアによるクリミア半島の編入で、クリミア沖合鉱区の去就が注目を集めている。これまでChernomorNaftogaz Ukraineが、アゾフ海、オデッサ沖で操業して来た(図3参照)。2013年の生産量は16.51億m3で、対前年比40.6%増。2015年は30億m3目標。本社はSimferopol。黒海とアゾフ海に11ガス田、4ガスコンデンセート田、2油田を保有。ロシア側アゾフ海にも同名の会社あり。以下、ウクライナ側に帰属していたクリミア沖各鉱区の概要に関して記す46(図2)。 ・Skifskaガス田:ExxonMobil(40%), Shell (35%), Petrom(15%, OMVのルーマニア子会社), Nadra Ukrainy(10%)。但し、4月1日Shellは同国から撤退を表明。ExxonMobilは3月に事業停止を宣言。期待埋蔵量3兆cf。2012年8月にExxonMobil等が落札した。総事業費は$120億。2017年前にも生産開始。80-100億m3/年。 (・Prykerchenskaya鉱区:Eniが交渉中。ボーナスの支払いはまだで影響受けず。2013年11月、EdF、Vody Ukrainy, ChornomorNaftogazとともにPSAを交す。また、Vanko Energyも同鉱区でPS契約を結んでいる。鉱区内にSubbotina油田、Abiha,Mayachna油ガス田あり。 クリミア半島大陸棚をロシアがどう扱うかに関して、3月31日にSergei Donskoy天然資源相は具体的な結論が出ていないと発言したが47、4月3日には、連邦地下資源利用庁(Rosnedra)長官との会合の際に、クリミア半島大陸棚の個別の炭化水素鉱区が2014年および2015年のライセンス計画に含まれる可能性がある、と述べた。合計44の鉱床があり、内訳は石油鉱床10、ガスコンデンセート鉱 45 毎日, 2014/3/26 46 PON, 2014/3/20 47 Interfax, 2014/3/31 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 18 ? ー7、およびガス鉱床27である。黒海大陸棚には5つのガス鉱床と3つのガスコンデンセート鉱床があり、アゾフ海大陸棚には6つのガス鉱床があるとした48。今後、この大陸棚はロシア管轄となる可能性ががあるが、一方で紛争化のリスクが生じている。 図3 クリミア沖鉱区図(出典:ChernomorNaftogaz) 3)クリミア半島への新規ガスパイプライン ロシアNovakエネルギー相は、KrasnodarからSevastopolまで400km、100億m3のガスパイプライ(Russkaya)からンを総工費$10億で敷設するか、またはSouth Streamの出発点であるAnapa Sevastopolまで総工費2-3億ドル、100kmのパイプラインを引くことを検討している49(図4参照)50。 ( 48 Interfax, 2014/4/03 49 PON, 2014/4/02、Vedomosti, 2014/4/01 50 Vedomosti, 2014/4/01 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 19 ? P)プーチン演説の要旨 3月18日、ロシアがクリミア及びセバストポリ市の併合を行うにあたり、以下の通り演説した。 「1991年、ウクライナがソ連からの独立を宣言する時には、『民族自決の原則』を掲げた。今、クリミアにおいて民族の自決が採用されない根拠は何か。2008年2月にコソボがセルビアから独立宣言した際、セルビアは同意しなかったが独立は承認された。国際司法裁判所は2010年7月22日付け文書で『安全保障理事会は一方的な独立宣言について一律禁止とする結論は出さない』、即ち『国際法は独立宣言について適切な禁止というものを規定していない』としている。また米国がコソボ審理において裁判所に提出した2009年4月17日付け文書には『独立宣言は国内法に違反することが度々起こるがそれは国際法に違反していることを意味しない』と記されている」 2)クリミア併合における国際法上の問題 このような議論に対して、中谷和弘は以下のように論じている51。 「人民の自決権」(国連憲章第1条2項)52は、植民地からの独立と独立以降では異なり、住民図4 クリミア半島までのロシアからの天然ガスパイプライン計画(JOGMEC作成) 4)クリミア併合に関する法的な議論 ( 51 日経2014/3/25経済教室 52 国連憲章 第一条 国際連合の目的は、次のとおりである。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 20 ? 兜[に基づくクリミア編入は自決権ゆえに直ちに正当化できる訳ではない。植民地を脱して以降の既存の国家内での自決問題には国際法は基本的には関与しない。外国(ロシア)の介入に基づいてなされる分離は本国(ウクライナ)の領土保全の侵害と内政干渉という国際法違反となる(第2条4項)。本国の同意53なしになされる住民投票は一般に国際法上の効力を有しない。2008年のコソボのセルビアからの独立に関する国際司法裁判所の2010年の勧告的意見では「独立宣言が違法な武力行使と関連する場合には宣言自体が違法」だが「国際法上独立宣言を禁止するルールはなく、コソボの独立宣言は国際法に違反しない」。クリミア共和国政府からの要請という理由は、同国を承認したのがロシアのみで正当化できない。一方、ロシア政府は条約等で再三にわたってウクライナの領土不可分を確約している。 一方、岩下明裕は、国際法は国家主権の尊重原則(国内問題不干渉、領土保全)と人民の自決権、人権の尊重、人道的干渉という2つのルールが常に緊張関係を以てせめぎ合ってきたと述べている。これのバランスをとるために、人民の自決権原則の行使は、それが平和的になされた時のみに受け入れられるという「ヘルシンキ原則」があるが、ユーゴスラビア連邦ではクロアチア独立に対するドイツの加担、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紛争でのEU・米の介入とセルビアに対するロシアの支援、コソボ自治州の独立における米国の介入といった動きは、「ヘルシンキ原則」を無力化した。今回、ロシアはクリミアに住むロシア人の自決権を国家主権の尊重原則より上位に置く一方で、米欧は法理を盾に、「力による領土併合」は国家主権を蹂躙する明確な国際法違反としており、攻守ところを替えた状態である。「ヘルシンキ原則」というレジームの崩壊と見なすのか、ロシア側の言う「引き起こされた事態に対応しているだけ」という理由でクリミアを「例外」と見なすのか、論争が続いていると見る54。 (了) 2. 人民の同権及び自決の原則の尊重に基礎をおく諸国間の友好関係を発展させること並びに世界平和を強化するために他の適当な措置をとること。 第二条 3 すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危くしないように解決しなければならない。 4 すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政冶的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。 53 ウクライナ憲法 第73条「ウクライナの領土の変更はすべてウクライナ国民による投票によってのみ解決される」 54 北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター、研究員の仕事の前線(2014年4月4日)http://src-h.slav.hokudai.ac.jp/center/essay/20140404-j.html Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 21 ? 考】 2014年のウクライナ問題を巡る経緯 参 ・2月11日、ウクライナ安全保障会議は、パイプラインシステムに対する威嚇があるとの報告を受け、エネルギー省は監視を強化する。3か月目に入ろうとする国内の騒擾を見ての決定55。 ・2月21日、ヤヌコビッチ大統領と野党陣営が合意文書に署名。憲法改正、大統領選前倒しで合意。合意文書には、EUの仏独ポーランド代表(外相)も著名、但し露ルキン人権問題代表は署名せず。深夜、大統領はキエフ脱出。 ・2月22日、ヤヌコビッチ政権崩壊。ウクライナ最高会議(国会)は、ヤヌコビッチ大統領を解任。大統領はドネツク空港からの出国できず。 ・2月23日、ウクライナ最高会議(国会)は、野党のトゥルチノフを大統領代行に選出。プーチン・メルケル電話協議。「ウクライナの領土保全を支持」で一致。EUのアシュトン外務・安全保障政策上級代表(外相)は「急速な変化が起きている」と述べるにとどめる。EUが支持した野党指導者が21日の与党間合意を守らなかったことから、EUは影響力を行使できない状況。 ・2月24日、Medvedev首相はウクライナとの既往契約は、特定個人と交わしたものではなく法的拘束力のある政府間合意であり、遂行されなければならないとした56。 ・2月27日、ロシアがヤヌコビッチの身柄保護。ウクライナは旧野党勢力による内閣が発足、第1党「祖国」の指導者ヤツェニュクが首相に就任。 ・2月28日、ロシア南部のロストフナドヌーでヤヌコビッチが記者会見。欧米諸国を批判。 ・2月28日、オバマ米大統領「ロシアの軍事介入には代償が伴う」と警告。 ・3月1日、プーチン大統領はウクライナでのロシア系住民の保護を目的としたクリミアでの限定的な軍事作戦の実施を上院に提案し、上院は全会一致で承認。オバマ大統領の警告を一蹴。 ・3月1日、ガスプロムはウクライナ向けのガス輸出価格を引き上げる方針を発表。Gazpromはウクライナに対してガス代金債務15.5億ドルの支払いを要求(毎日、2014/3/04) ・3月3日、ICE Futures Europeの英ガス先物4月限は10%上げ、2011年9月以降で最大の上昇率。オランダのガス先物4月限も10%、ドイツのNet Connect Hub価格は8%上昇。(Bloomberg, 2014/3/04)。但し、翌日以降、油価、ガス価は沈静化へ。 55 IOD, 2014/2/13 なお、ウクライナのガスパイプラインは38,600km、コンプレッサーステーションは72か所、地下貯蔵施設は12基。 56 PON, 2014/2/25 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 22 ? 【E3月4日、米財務省はウクライナ支援パッケージの一つとして、10億ドルの債務保証を表明(Bloomberg. 2014/3/04) ・3月4日、Gazpromは2014年第2四半期からの対ウクライナのガス価格に関して、約$400/1,000mとする方針。ウクライナのGazpromに対する未払いは$20億。(PON, 2014/3/05) ・3月16日、クリミアでロシア編入の住民投票。投票率83%、支持率96.77%。 ・3月17日、クリミア自治共和国議会は、住民投票の結果をふまえて独立を宣言し、ロシア編入に加え、クリミア内にあるウクライナ国家機関の活動停止や、資産の接収などを決議。通貨をロシアのルーブルに変更。これを受けて米国と欧州連合(EU)は17日、渡航禁止や資産凍結など対露追加制裁を発動。 ・3月18日、ロシアとクリミアが国家併合条約に調印。 ・3月24日、ハーグでのG7緊急首脳会議で、ロシアが事態を悪化させた場合、「経済的に重大な影響」を与える経済制裁の実施を警告。ロシア産天然ガスや石油に対する制裁にあたり、供給源の多様化など「エネルギーの安全保障」をG7が共同で強化するため、エネルギー担当相会議を開催することで合意(各紙、2014/3/25夕) ・3月25日、内務省は武闘派極右集団「右派セクター」幹部で手配中のムズイチコ(Muzychko)を、拘束を試みた警官に発砲したため殺害したと発表。同派代表ヤロシはアバコフ内相の即時辞任を要求。また同日、民族主義政党「自由」に属するテニュフ国防相代行を、クリミア半島から撤退したことを受け解任。欧米の懸念に対応したもの(日経、2014/3/26夕) ・3月27日、国連総会本会議で「ロシアがウクライナ南部クリミア半島編入の根拠とした住民投票を無効とし、編入を認めない」決議案。賛成100(提案国40)、反対11(ロシア、シリア、北朝鮮、ベネズエラ、キューバ)、棄権58(中国、インド、ブラジル、南アフリカ)、欠席24(トルクメニスタン、イスラエル)。 ・3月25日、フォンデアライエン独国防相「ウクライナのNATO加盟は議題にならず」 ・3月27日、右派セクターの1,000人以上が、幹部Muzychko射殺に抗議して国会に殺到。アワコフ内相代理らに辞任要求。 ・3月28日、米ロ首脳電話協議。オバマ「ロシア軍の即時撤収が外交的解決の条件」、プーチン「国境付近での軍の展開はロシア系住民保護が目的であり軍事侵攻の意図なし。沿ドニエステルのロシア系住民(3割)の地位については懸念」 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 23 ? E3月30日、ラブロフ外相が国営テレビで「地域が幅広い権限を持つ連邦制を採用した新憲法制定」を呼びかけ。ウクライナ新政権は反対。これに対してTimoshenkoは「連邦制を認めると1ダースのクリミアができる」と警戒感。同日夜、パリで両外相会議。ラブロフ「事態をどうエスカレートさせないかについて双方が提案を持ち寄った」 3月31日、カラーシン露外務次官「ウクライナ大統領選の正当性は実施の条件による(容認へ)」。・国境に展開したロシア部隊の一部撤収。 ・4月1日、ガス価格の値引きを破棄、$268.5/1,000m3から$385.5/1,000m3へ。仏、独、ポーランドの3か国外相がウクライナに対して過激派の武装解除を要求。ロシアのカラーシン外務次官はこれを歓迎。フォイマン墺首相「ウクライナは欧露を橋渡しする中立国へ(NATO加盟を否定。対露配慮)」 ・4月1日、NATO外相会議。バルト・ポーランド共同防空を強化。ウクライナと理事会 ・4月2日、NATO外相がグルジアと理事会開催。米国とEUがエネルギー安全保障の会合。 ・4月3日、ガス価格を$485/1,000m3へ引き上げ。 ・4月7日、ドネツク州で親露派勢力が「ドネツク人民共和国」の設立を宣言。5月11日までに投票。(日経、2014/4/08) ・4月7日、ハリコフ州で「ハリコフ人民共和国」設立。翌日排除、(日経、2014/4/09) ・4月9日、プーチン大統領は閣議で、ウクライナへのガス輸出について、全額前払いとする方針を示し、ウクライナ側と協議に入るよう外務省に指示(各紙、2014/4/10夕) ・4月10日、Putin大統領はEUの18か国首脳に書簡を送付し、ウクライナのガス代金滞納問題に関して共同で対処するよう提案した。ウクライナへのガス供給が停止した場合に、欧州各国に影響が出ることを念頭に協力を求めたもの(各紙、2014/4/11) ・4月11日、ワシントンで開催されたG20(20カ国・地域財務省・中央銀行総裁会議)で、共同声明。IMFによる2年間で総額$140億~$180億の金融支援を歓迎。危機感を共有し、ロシアも支援に協力的(日経, 2014/4/11, 13) ・4月13日、米国CIAのジョン・ブレナン長官がキエフを(偽名で)極秘訪問。 ・4月14日、武装勢力に対する投降期限が朝9時。(動きなし) ・4月15日、夕方、暫定政権の特殊部隊がクラマトルスクの軍用空港で親露派武装勢力の強制排除。親ロシア派4名が死亡。スラビャンスクには500人規模の内務省部隊が投入。事態は重大局Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 24 ? ハに。Medvedev首相「ウクライナは内戦の瀬戸際にある」(各紙、2014/4/16) ・4月16日、オデッサ州で親露派が「オデッサ人民共和国」創設を宣言。(毎日、2014/4/17) ・4月17日、ジュネーブで米、露、EU、ウクライナ外相級4者協議。事態の鎮静化を求めることで一致。欧州安保協力機構(OSCE)の査察を導入。 暫定政権の主な顔ぶれ】 【Olexander Turchynov (暫定の大統領):ティモシェンコの側近。 Arseniy Yatsenyuk (首相) : ティモシェンコ側近、「祖国」幹部、外務大臣、中央銀行総裁を歴任。 Oleksandr Sych (副首相):Svoboda党員(Svobodaはかつてのウクライナ社会民族党)。中絶反対運動家。 Andriy Parubiy (国家安全保障理事会会長): Svobodaナチス党の創設者。 Dmitry Yarosh (内務安全保障理事会副会長): 「右派セクター(Pravy Sektor)」の代表。 Arsen Avakov (内務大臣):裏工作の専門家。 Andriy Deshchitsya (外務大臣) : Tetyana Chernovil (役職不明) : 超ナショナリスト。 Igor Tenyukh (防衛大臣) : Svobodaシンパ(しかし所属はしていない) Sergey Kvit (教育大臣) : Svoboda党員 Andriy Mokhnik (環境大臣) : Svoboda党員 Igor Shvaika (農務大臣) : Svoboda党員 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 25 ? 02.3%98.8%80.5%63.4%60.0%54.3%54.0%52.8%52.2%49.1%43.4%39.9%19.9%17.1%5.7%0%0%0% ロシア産ガス輸入量各国の消費量各国消費に占めるロシア産ガスの輸入量割合欧州でのロシア産ガスの占める割合】 【BCMFinlandBelarusCzech RepublicSlovakiaUkrainePolandGreeceTurkeyAustriaHungaryBelgiumGermanyItalyFranceNetherlandsIrelandSpainUnited Kingdom 3.1 18.3 6.6 3.8 29.8 9.0 2.3 24.5 4.7 4.8 7.3 30.0 13.6 7.32.1 - -- 3.118.68.26.049.616.64.246.39.09.716.975.268.742.536.44.531.478.3Total 185.9 541.2(出典:BP統計) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 26 ?
地域1 旧ソ連
国1 ウクライナ
地域2 旧ソ連
国2 ロシア
地域3 欧州
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,ウクライナ旧ソ連,ロシア欧州
2014/04/23 本村 真澄
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