ページ番号1004460 更新日 平成30年3月5日

ロシア:ウクライナ問題以降のロシアを取り巻くエネルギー情勢

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レポートID 1004460
作成日 2014-05-27 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 エネルギー一般天然ガス・LNG
著者 本村 真澄
著者直接入力
年度 2014
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日:2014/5/27 調査部:本村眞澄 公開可 ロシア:ウクライナ問題以降のロシアを取り巻くエネルギー情勢 ・対露エネルギー制裁が論議されると見られていたG7エネルギー相会議(5月5-6日)は対露非難を行ったものの、具体的な制裁は盛り込まれず、産業界の意向が反映した形となった。 ・その後、米欧日等で実施された制裁は従来型の資産凍結、渡航禁止レベルに止まっている。 ・ロシアに投資を継続してきた主要国際エネルギー企業にとって、米国の主唱するようなエネルギー制裁は受け入れられないものであり、ロシアの被るのと同等の打撃を欧米産業界側が受けることになる。 ・ウクライナに対しては、ロシアは5月7日までに未払いのガス代金$35.08億を入金しなければ、6月から前払い制に移行すると通告した。この日、IMFからの融資$170億の内第1トランシュ$31.9億が送金された。この内、どの程度がガス代金に振り向けられるかが注目点である。 ・South Streamに関して、EUはSouth Streamは第3エネルギーパッケージに違反しているとの立場を変えておらず、Gazpromとの話し合いの目途は立っていない。一方で、出資国や通過国がその実現を強く主張しており、新たにオーストリアがその最終目的地となることでGazpromと合意した。 ・5月20日、プーチン大統領が中国を訪問し、21日、2006年以来の懸案であった天然ガスの年間380億m3、30年間の供給で合意した。これは、一般的には孤立化を深めるロシアが中国との密月を演出したものと報道されているが、長期的にロシアが取ってきたエネルギーの東方シフト政策の一環である。 ・これにより、北東アジア市場においてLNGより安価なパイプラインガスが大量に供給されることになり、中長期的にはガスの価格形成に大きな影響を与えることになる。 ・5月25日のウクライナ大統領選は、予想通りポロシェンコが54.2%を獲得して大差で勝利。選挙の2日前にはプーチン大統領もこの選挙結果を尊重すると表明していたことから、ウクライナ問題の主要部分は東部2州の問題解決へと移ることとなった。 ・今後、最大の問題は天然ガスの支払い問題であり、ロシアとウクライナは実務的な協議に入る。 前回の動向「ロシア:エネルギーから見たウクライナ問題」1では、4月17日までの事象を扱った。本編では、その後の約1か月半の動きを纏めた。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 .対露エネルギー制裁の可能性 1 2014年4月21日付け、http://oilgas-info.jogmec.go.jp/report_pdf.pl?pdf=1404_out_j_ukraine%2epdf&id=5246 ? 1 ? 1i1)G7エネルギー大臣会合の結果 エネルギー分野での対露制裁が打ち出されるのか注目されていたG7エネルギー大臣会合は、2014年5月5日-6日にローマで開催されたが、エネルギー分野でロシアに対して具体的な制裁に踏み込むことなく終了した。 G7エネルギー担当閣僚会議は、ウクライナのエネルギー安全保障に対する懸念を表明すると同時に、エネルギーを政治的な威圧の道具として利用することを非難する一方、直ちにロシアに代り得るエネルギー・ソースはないとの認識を示した。更に、ロシアに対する追加制裁導入の是非については何も決定されずに閉幕した。その他の議題として、エネルギー効率向上、LNGや再生可能エネルギー等を含めたエネルギー源の多様化、既存の供給インフラの強化に取り組むこと等の一般的な事項で合意したものの、米国産シェールガスを液化してタンカーで供給する計画に関しては開始までに時間がかかることから、ロシア産ガスに直ちに代替できる手段はないとされた2。 G7エネ相会議の後、ガブリエル独エネルギー・経済相は、ロイター通信に対して「ロシア依存を短期間で解決する方法があったら教えて欲しい」と述べるなど、ロシア依存度の低下という方針への疑問を呈した3。 伊のグイディ経済振興相「我々はエネルギー供給源の多様化に向けた戦略をとることで一致した。そのためにはインフラ整備が重要だ」と述べた4。これは、暗にSouth Streamの重要性を訴えたとも取れ、 G7のなかで足並みが揃っていないことを示している。 そもそも、EUが30%にも上るロシア産ガスへの依存度を下げようとする方針は、3月21日(金)のブリュッセルでのEU首脳会議において出た議論で、Herman Van Rompuy大統領は「EU28か国の代表は、エネルギーへの依存度、特にロシアへの依存度を、需要を抑え、効率性が上げ、欧州向けそして欧州内での供給ルートの多様化を図り、エネルギー源を拡大させることにより低下させるという明確なメッセージを発する」と述べたことにより広く知られることになったものである5。しかしそこでの合意は、「ロシア産ガスへの依存度を減らす努力をする(to work to reduce reliance on Russian gas)」という具体性に欠けたものであった。このために、G7エネルギー大臣会合においては、対露依存度低下という議論が具体的な目標として共同声明には盛り込まれなかったものと思われる。 2 Reuters, 2014/5/06 3 読売、2014/5/08 4 朝日digital, 2014/5/07 5 PON, 2014/3/24 ? 2 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 月6日のG7エネルギー大臣会合での共同声明の要旨を脚注に示す6。 その後、アテネで開催されたエネルギー担当相の会議で、EUエネルギー・コミッショナーGunter Oettingerは「エネルギー分野、特にガスを制裁対象とするのは不適切」と述べ、他のEUエネルギー担当相もこれに賛成した7。このように、エネルギー分野では制裁を回避する方向にある。 2)対露追加制裁 1)米国による制裁 (4月28日、米カーニー報道官は、ロシアが4月17日の「ジュネーブ合意」を守らず、ウクライナ東部の緊張緩和に向けた具体的な行動をとっていないとして、ロシアに対して追加の制裁を科すと発表した。具体的にはプーチン大統領に近い政権幹部及びロシア経済に影響のある人物として、Kozak副首相、Volodin 大統領府第一副長官、ゲラシモフ軍参謀総長、セーチンRosneft 社長等の7 名と、Investcapitalbank, Stroytransgaz等の金融機関、エネルギー関連企業17社に対する資産凍結、域内渡航禁止。これに対してロシアのリャプコフ外務次官は「アメリカがウクライナで起きていることを完全に理解していないことを示しており、責任ある対応とは言えない」と不快感を表明、「広範な報復の手段は既に用意してあり、報復する」と述べた8。 一方、Morgan StanleyがRosneftと2013年12月にGlobal Oil Merchanting unitを売却することで合意した件に関して、米財務省はRosneftという企業体が制裁対象ではないので今回の制裁で影響を受けないとした9。 2)EUによる制裁 6 G7ローマ・エネルギー大臣会合共同声明(2014.5.05-06)の要旨 ・エネルギーは政治的な威圧や安全保障上の脅威として利用されてはならない。 ・ウクライナにおける主権と領土の一体性に対するロシアの侵害の結果として、ウクライナにおける出来事がエネルギー安産保障上に意味するところを大いに憂慮する。 ・エネルギー安全保障問題を解決するために、柔軟・透明・競争的な市場の開発、燃料エネルギー源および通過経路の多様化、インフラ近代化によるエネルギーシステムの強靭性の改善及び全体(systemic)への衝撃に耐えるための需要・供給政策を施す。 ・エネルギーを供給するための新ルートの開拓をサポートする。特に、欧州にとっての供給源の多角化の経路としての南回廊(South Corridor)の開通がある。 ・ウクライナネットワークを介するガスのフローの透明性を向上させるための協調的行動の立ち上げ等、ECによる努力を歓迎する。(以下略) 7 Argus FSUEnergy, 2014/5/22 8 各紙、2014/4/29 9 PON, 2014/4/29 ? 3 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 月28日、EUは大使級会合を開き、対露追加制裁を巡る原則で合意した。プーチン政権幹部が対象だが、名前は非公開としている。ロシア外務省は「EUは米国に命じられ対話の替わりに非友好的な態度をとった」としてこれを非難した10。 その後の5月12日、EUはロシアに対する新たな追加制裁の対象に加えた個人13人と企業2社の名前を公表した。資産凍結、渡航禁止となったのは、Volodin大統領府第一副長官ら。企業ではクリミアの石油ガス企業Chornomornefetegaz等が対象で。資産凍結される。これに対してロシア外務省は非難声明を出した11。 3)日本による制裁 4月29日の外務大臣談話において、「日本としてウクライナの主権と領土の一体性の侵害に関与したと判断される23名に対し、日本への入国査証の発給を当分の間停止する」との制裁を発表した。名前は非公開である。日本による制裁に関しては、プーチン大統領は5月23日に不快感を表明した。 .対露制裁と石油メジャーの立場 (1)各メジャーのロシア事業への取り組み 5月15日付けFTは、「エネルギーの紐帯が制裁を難しいものに」12という記事を掲載し、如何に多く 2の石油メジャーがロシア投資を進めてきたかについて記述するとともに、一方でロシアの新規開発で米国の資機材やサービスの輸出を禁止することは、ロシアに対して大きなインパクトとなる、とコロンビア大の世界エネルギー政策センター(Center for Global Energy Policy)のJason Bodoffの見解を紹介している。 これは、特にロシアが期待するシェールオイル・北極圏大陸棚開発で影響が大きい。現状の、メジャー各社がロシアで展開している共同事業の内容を表1に、地域的な分布の状況を図1に示す。重点は、北極海大陸棚と西シベリアにおけるBazhenov層と対象としたシェールオイル開発で、大きなポテンシャルがあるものの、西側技術に拠らないと対処が困難なものである。よって、技術協力が制裁対象となると、これらの開発は事実上頓挫すると思われる。但し、同氏は、制裁を加えるにしても、既往の進行中のプロジェクトを対象とすることは不可能で、精々新規プロジェクトが対象となるであろうとしている。 5月22日、サンクトペテルブルグで開催された国際経済フォーラムに対しては、オバマ政権は各企業 10 各紙、2014/4/29 11 読売、2014/5/13 12 Ed Crook, Energy ties pose conundrum on use of sanctions, FT, 2014/5/15 ? 4 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ノ対して首脳級の参加の自粛を呼びかけたが、BPからはBon Dudley(米国籍)、Totalからはde Margerie、R/D ShellからはBen van Beurdenが、米国の警告を無視して参加した。ExxonMobilは、Rex Tillerson社長は不参加だがNeil Duffin副社長が参加した。更に、この場でBPはRosneftと、TotalはLukoilとシェールオイル探鉱のJVに調印し、一部で予想される対露技術・資機材制裁に影響されないとした13。 対立しているのは、欧米とロシアではなく、欧米の政治と産業であるように見える。 ExxonMobil 米 ・Rosneftと2011年協力で合意。 Bazhenov シェールオイル、北極海・黒海開発、極東でのLNG事業 R/D Shell 英蘭 ・Gazprom と2010 年協力協定。北極海開,S-2 LNG GazpromNeft Bazhenov 開発 Statoil ノルウェー ・Rosneftと2012年協力,Barents海、オホーツク海探鉱、重質油シェールオイル開発 Total 仏 ・NovatekとYamal LNG を推進、ハリヤガ油田のPS契約 Eni 伊 ・Rosneftと 2012年協力協定。バレンツ海と黒海で探鉱。South Streamで協力 BP 英 ・BP 株式19.75%を TNK-BPを売却して取得 国 主 要 な 事 業 表1 ロシアと主要外国石油企業との共同事業(FT、2014/5/15に加筆) 図1 ロシアと主要外国石油企業との共同事業(FT、2014/5/15に加筆) 13 IOD、2014/5/23 ? 5 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 Q)ExxonMobilの動き 米国によるセーチンRosneft社長への制裁は、当初から予想されたことであるが、今後ビジネス的には大きな制約となる可能性がある。 (ウォールストリートジャーナル(WSJ)の報道によると、ExxonMobilのDavid Rosenthal IR担当副社長は、Rosneft のIgor Sechin 社長が米国の制裁対象者リストに加えられたことについて、「ExxonMobilは、2014年に計画されている活動は計画通り進めている。ExxonMobilは全ての制裁を遵守する。Rosneftという会社そのものは制裁対象となっていない。我が社は多年にわたり、何十億ドルを北極海のエネルギー資源の開発に費やす予定だ」と述べている14。 一方、Rosneftは5月5日、同社の取締役会がExxonMobilとのLaptev海およびChukchi海での共同事業4件を承認したとの声明を出した。これら事業は、石油が豊富に賦存する以下の4つの地域、即ちLaptev海大陸棚のAnisinsk-NovosibirskとNorth-Wrangel-2、およびChukchi海大陸棚のNorth-Wrangel-2とSouth-Chukchiである。同取締役会は2014年4月末、これら4事業のそれぞれの関連取引に係る資金面の評価を行い、JV、オペレーター、資金調達、および炭化水素の取引などを規定する互恵協定を承認した。2014年4月、RosneftとExxonMobilはLaptev海のUst-Leninskoye地区およびChukchi海大陸棚のNorth-Wrangel-1地区において協力することで合意した15。現状では、合弁事業による大陸棚開発は着々と進められている。 3)Eniの動き RosneftとEniは、黒海大陸棚 (Val Shatsky)の西Chernomorskyライセンス鉱区で2015-2016年に掘削予定の2つの構造を選択した。本事業のオペレーターで、RosneftとEni Energy(ルクセンブルグ登記)のJV であるShatskmorneftegaz が、2015-2016 年にMariya-1、およびSevero-Chernomorskaya-1試掘井を掘削する予定である。Val Shatskyでは約10の構造の特定が済んでいる。Rosneftは2012年4月、Eniと西Chernomorsky鉱区、およびBarents海の2鉱区を共同開発することで合意している16。 (? 6 ? 14 Interfax, 2014/5/05 15 PAF/RIA. 2014/5/05 16 Interfax, 2014/5/06 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 R.ウクライナのガス問題 (1)前払い方式への移行措置 5月3日、Novakエネルギー相はウクライナが5月7日までにガス代金を払わない場合には前払い制に切り替えると表明した。この場合、Gazpromが6月分のガス代金を事前請求し、5月末までにウクライナが前払いした分だけを6月に供給する。ウクライナの滞納額は35億ドルにのぼり、この2か月は殆ど支払われていない。4月28日に、Yatsenyuk首相は、ロシアが現行の$485/1,000m3ではなく、1-3月に行われた$268.5/1,000m3の割引価格を(今後も)適用するなら滞納額の22億ドルは速やかに返済すると表明したが、Gazpromはこれには応じていない17。 このYatsenyuk首相の発言は鉄面皮なものとも受け取れるが、昨年12月17日の合意事項に何がしか基づいて言っている可能性も考えられる。12月17日の33%のガス価格割引合意の影には、何がしかの裏取引があったと当方は推察してきたが、ウクライナ側がこのような裏取引は実現されていると認識しているとしたら、Yatsenyuk首相は正当な発言をしている可能性もある。現状の報道ではそのような状況は見当たらないが、今後真相が出て来る可能性に備えておく必要はある。 こうして5月7日の前払い移行期限が来たが、ウクライナ政府はこれを無視し、前払い方式へ移行することとなった。6月からの給ガスの請求書は5月16日にGazpromから発行され、5月31日までにウクライナ側から払い込まれた額に相当する量のガスのみが供給される。未払い額は、Gazpromによれば$35.08億に上る18。 (2)IMF資金は未払いガス代金に充当されるのか? 5月7日、ウクライナ政府は国際通貨基金(IMF)がその前の週に承認した170億ドルの緊急融資から第1回トランシュ(分割融資)の31億9000万ドル(約3250億円)を受け取ったと発表した。月末までにさらに30億ドルを受け取る見通しである。ウクライナ国立銀行のクービフ総裁は5日、IMF融資の第1回分31億9000万ドルのうち10億ドルは同国の金・外貨準備に加えられ、通貨の下支えに使われると述べた。この結果、21億9000万ドルが、ガスプロム向け債務の返済に充てられる可能性があることになる19。 5月12日、ロシアのYanovskyエネ省次官は、ガス価格に関して何等かの譲歩は考えるが、それは 17 毎日、2014/5/05 18 IOD, 2014/5/09 19 WSJ, 2014/5/08 ? 7 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 揩フガス未払い代金を清算し、借金を払ってから話し合うと述べた20。 5月2日、ワルシャワで露エネルギー省・Gazprom、EC、ウクライナエネルギー省による3者会談が開かれ、ガスの未払い問題が協議されたば合意に達しなかった。5月12日にはブリュッセルで再度3者会談が開かれたが、依然として合意に達していない21。 5月15日、プーチン大統領は、18か国の消費国政府首脳宛てて、ウクライナのガス未払い金は35億800万ドルになっており、未払いが続けば6月からウクライナ向けガス供給を止めざるを得ないとの内容の2回目の親書を送った。2006年の対ウクライナ送ガス停止では、欧州が騒然となったことから、2009年には事前にガス停止の可能性を欧州各国に周知せしめて批判回避を図った経緯があるが、今回も同様に事前の周知を図ったものと思われる22。 (3)ガスの逆走 4月15日のRWEからに引き続き、5月下旬にはHungary からのガス逆走が開始予定である。ガスの引きとり量は最大年間70億m3となる。Slovakiaからは年間80億m3で、9月1日から供給の予定である23。 (4)ウクライナ企業への米国人の参加 5月13日、米国のBiden副大統領の息子でNew Yorkにある法律会社Boies, Shiller & Flexnerの弁護士Hunter Bidenが、ウクライナ最大のガス生産会社Burisma Holdingsの法務担当役員に就任した。同社の生産量は2013年末で11,600boe/dであり、主にDnieper-Donetsk, Cartpthian、 Azov-Kuban地域でガス田を操業している。この報道は、かなりの驚きを以て受け入れられた24。 South Streamに15%の権益を持つ独Wintershallの親会社であるBASFは4月10日、Gazpromが信頼できる供給元であるとして、South Streamを支援する方針を明らかにした25。 4月17日、欧州議会が「(エネルギー)調達先の多角化をはかるべき」として、South Streamの建設.制裁の影響を受ける可能性のあるプロジェクト (1)South Streamの現況 4 20 PON, 2014/5/13 21 IOD、2014/5/13 22 朝日, 2014/5/17 23 IOD, 2014/5/19 24 IOD,, 2014/5/15 25 East & West Report, 2014/4/14 ? 8 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ?~を求める決議を行ったが、これに対しては通過ルートにあたるブルガリアからは、同国のコバチエフ欧州議会議員が「計画を中止するならば、EUは損害賠償をするべきである」と反発する一方、ストイネフ・エネルギー相も「建設計画は対露制裁の犠牲になりつつあるが国益のために抵抗する」と発言した。 一方、オーストリアのOMVは4月29日、モスクワでGazpromとオーストリア国内でのSouth Steam の建設計画を進める協定を締結した。これは同国のBaumgarten中継基地を中欧の天然ガス供給拠点とする計画である26。2013年6月に、オーストリアを最終目的地とするNabuccoパイプラインが選択されなかったことから、オーストリア側は南欧-バルカン半島地域で唯一残った計画であるSouth Streamに対してオーストリアを最終目的地とするよう求めていた。ウクライナ問題が進展するなかでのこのようなSouth Stream推しの動きは、同プロジェクトが危機に晒されていることを意識してのものと思われる。 5月に入り、6日のG7エネルギー相会議の後の記者会見で、議長を務めた伊のグイディイ経済発展相は、South Streamについて「事業を全面的に支持しており、欧州の多くの国々にとっても政策的に重要だ」と言い切った27。一時期、ドイツに比べてイタリア側の弱気な発言が目に付いたが、その後はイタリア勢は、意気軒昂な発言に戻った。 また、Eni傘下のEPCコントラクターであるSaipemは、South Streamの海底区間第2線の建設サポート業務を、事業主体のSouth Stream Transportから受注した。受注金額は4億ユーロ、2016年完成を目指す。海底区間の最大水深は2,200m以上、総延長は931kmである28。 なお、Saipemは第1線の建設を20億ユーロで受注している。 2)Yamal LNG Yamal LNGプロジェクト自体は、順調に進捗している。問題は、LNG技術に関する米国保有技術が (先行き禁輸対象となるような事態が発生するかである。 4月4日、Yamal LNG ConsortiumとベルギーのFluxysは、北極航路(Northern Sea Route)の使えない冬季にアジア方面へLNGを輸出するために、ZeebruggeのLNGターミナル経由で積み替え輸送することで合意した。北極航路の使用可能期間は4か月であり、残りの8か月はZeebruggeからのLNGがSuez経由でアジアへ輸出されることになる29。 26 読売, 2014/5/06 27 読売, 2014/5/08 28 East & West Reort, 2014/5/12 29 PON, 2014/4/07 ? 9 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ワた、この4月には千代田化工建設(Chiyoda Corporation)が、Yamal-LNG事業のプラントのEPCを請負うコンソーシアムに加わった。当該プラントのガス液化トレーンのEPC請負契約は2013年4月、Technip(フランス)とJGC(日本)のコンソーシアム(Technipが権益の60%を保有)が獲得したが、その前に実施されたFEEDにCB&I(米国)およびSaipem(イタリア)、NIPIgazpererabotka研究所(ロシア)と共に千代田化工建設も、参加していた。FEEDが完了した後、Yamal-LNG事業(Novatek:60%、Total とCNPC:20%)のオペレーターであるNovatek は、EPC の請負業者の選定に入り、Yamal-LNG事業のプラント建設業者選定の入札には、Technip/JGC、CB&I/Saipem/Chiyoda、およびStroyGasConsulting(ロシア)とPetrofac(英国)のJVの3つのコンソーシアムが参加し、Technip/JGCが落札したものである。これに改めて千代田化工建設が参加し、EPCの請負業者としては、Technip:50%、JGCと千代田化工が25%ずつのコンソーシアムで行われることになった30。 5月23日、NovatekとGazpromは、Gazprom Marketing and Trading(GM&T)がYamal LNGを年間300万t購入することで合意した。これでYamal LNGの売却先はほぼ決まったとされる。一方で、GM&TはインドのGailと2012年、年間250万tのLNGを20年間供給することで合意していることから、このソースとしてYamal LNGが適用されるものと思われる31。 5.中国とのガス問題 (1)露中首脳会談前の予測 5月20-21日のプーチン大統領の上海訪問に関して、380億m3/年、30年間のガス供給契約が調印される見込みで、この時点で98%合意しているとYanovskyエネルギー省次官が出発前に述べていた。これには、パイプライン建設のみならず東シベリア・極東でのガス田開発も含まれる。ここで調印できない時は、22-24日のサンクトペテルブルグの国際経済フォーラムで調印される可能性があるとして、必ずしも合意について楽観視していなかった32。 Gazpromに近い筋は、パイプライン「シベリアの力(Silu Sibiri)」建設費約300億ドルは中国側の前金ではなく融資で賄われ、融資の元本返済と金利支払いはガスにより行われる見込みと述べた。Bragoveshchenskを経由する東方ルートを採用する(図2参照)。供給開始は2019年。採算性の確保 30 Interfax, 2014/4/03 31 IOD, 2014/5/27 32 IOD, 2014/5/13 ? 10 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 フためには、中露国境で$360/1,000m3とする必要がある33。Renaissance Capital は総投資額$ 850億、中国へのガス輸出価格$380/1,000m3、割引き率10%でIRR が12%との試算を示した34。Gazpromに近い筋は、価格交渉は中国国境渡しで$360~$400/1,000m3という値を軸に交渉されていると報じられている35。別の報道では、従来Gazpromとしては$9.75/MMBtu($351/1,000m3)が最低ラインと言われていた。また、ガス田開発・パイプライン建設の経済性の為には$11/MMBtu($396/1,000m3)のレベルが必要とも言われていた36。 いずれの試算でも、ガス価格としては$360/1,000m3以上が必要となるとしていた。 2)露中首脳会談での結果 5月20日、プーチン大統領は上海を訪問し、同地で21日に開催される「アジア信頼醸成措置会議 (図2 北東アジアにおけるパイプライン分布図(JOGMEC作成) 33 Vedomosti, 2014/5/16 34 Kommersant, 2014/5/21 35 Vedomosti, 2014/5/21 36 IOD, 2014/5/22 ? 11 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 iCICA)に先立ち首脳会談を行い46の文書が署名されたが、その中にガス供給に関する合意文書はなかった。Novatekは、Yamal LNGから年間300万tを引き取るSPA(Sales and Purchase Agreement)を締結した。価格はJCC リンクである。これに関連して、中国開発銀行とVEB (Vnesheconombank)、Gazprombank間で$269億の同プロジェクトへの融資に係るMOUが調印された。同じくTimchenkoが32.3%を保有するSiburがSinopecとともに中国にゴム製造工場の建設で合意した。また、RosneftとCNPCは天津に日量32万バレルの処理能力を有する製油所を2020年から稼働開始することで合意した。Rosneftはこれに18.3万バレル/日(57%)の原油を供給する。RosneftとSinopecは1,000万t/年の原油を10年間供給する契約を結んだが、前払い金についてはまだ合意できていない。予定されているRosneft民営化で株式の19.5%が公開予定であるが、中国の参加が期待される37。 その日の夕刻、GazpromとCNPCが進めているガス交渉に関してミレル社長が多忙を極めていることから、セチンRosneft社長が「政府代表として」説明した。これは交渉が依然として継続していることを、周知させるためのものである。プーチン大統領は中国向けガス輸出の原料基盤となる鉱床にガス産出税免除の適用を提案し、中国側は13%の付加価値税の免除を検討する意向を示した。これにより、双方が合意を目指していることを示すものである。但し、東シベリア・極東の鉱床には既に通常の税率の10%の水準の特恵的税率が適用されており、仮に税率が0%になっても契約期間の30年間で10億ドルの節税にしかならないとの指摘もある38。 3)5月21日の天然ガス供給契約の合意 5月21日早朝4:00にGazpromとCNPCは天然ガス供給で合意した。主な内容は以下の通り39。 (供給量:380億m3/年 期 間:2018年~2020年に供給開始、30年間 供給ソース:東シベリアのChayanda及びKovyktaガス田 ルート:「東ルート」で「シベリアの力」パイプライン経由Bragoveshchenskから中国へ(図2参照) 契約条件:石油・石油製品連動価格、take-or-pay条項あり 前払い金:今回公表されず 37 IOD, 2014/5/21 38 Kommersant, 2014/5/21 39 IOD, 2014/5/22 ? 12 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 $220億 中国側 ガス価格:未公表であるが、一部の報道では$387/1,000m3という推測値が発表されている40。一般紙で は、供給天然ガスの総額が$4,000億とされていることから単純に逆算して、$350/1,0000m3を目安としているが、当初の5年間は輸送量の立ち上がり期間であり、輸送ガスの総量は380億m3×30年を下回るものであることが考慮されていない。 合意の関する専門機関の評価を挙げる41 。 ・Renaissnace Capital: ガス価格は、送ガス量が容量一杯に達するまで3-4年かかることも考慮すると、$370-380/1,000m3程度となる (前記のVedomosti紙と若干異なる推測をしている)。 ・Investcafe:ガス価格は$350-370/1,000m3と見られ、ロシアにとって受け入れ可能なレンジである。 ・IHS Energy:最終合意の価格は、中国が望んだものよりもロシアが望んだレベルに近い。 このように、3者とも似通った判断をしており、ロシア側が大幅な譲歩をしたとは見ていない。 この合意に関して、一般紙では「双方の焦り重なる、国際孤立を回避」といった見出しを打ったところもあったが42、2013年秋の交渉でも合意直前と言われており、合意は時間の問題であった。急転直下合意に至った訳ではなく、昨今のウクライナ問題が合意の後押しをしたという見方は当たらない。むしろロシア側としては、安易な妥協を図れば、それは制裁によってロシアが弱い立場に追い込まれているという印象を国際的に与えかねないだけに、極力避けようと努めたと思われる。ロシアの弱体化は更なる制裁の誘惑を生む。$370/1,000m3といったガス価格レベルでの合意は、東シベリア・ガス開発を経済的に推進して行くうえで維持しなくてはならない水準であり、政治的な思惑によるのではなく、あくまで経済合理性を貫いた結果であると言える。 4)合意に関する評価 (投資額:ロシア側 $550億(ガス田開発、パイプライン、コンプレッサー) 5)周辺地域に対する影響 短期的には特段の影響はないが、中長期としてガスの対中供給が本格化する2020年代には影響は 40 Vedomosti, 2014/5/22 41 PON, 2014/5/22 42 朝日, 2014/5/23 ? 13 ? (Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ー在化して来ると思われる。まず、ガス価格が$15/MMBtu前後で推移する北東アジア市場において、$10/MMBtu前後の価格のガスが年間380億m3(LNGにして年間2,770万t)という、サハリン2の3倍弱の規模で供給されることから、ガス価格の下方圧力として確実に機能し始めると言える。LNGのアジアプレミアムの終わりの始まりになるとの見方もある43。 これは、隣国にも影響を与えずには置かない。日本の隣で$10/MMBtu前後の値段で天然ガスを輸入する国があった場合、日本はいつまでも$10数ドルの高価なLNGのみに固執するだろうか。サハリンからのパイプライン輸入の議論が活発化するものと思われる。 加えて、「シベリアの力」パイプラインが本格稼働をすれば、当然パイプライン沿線上の中小規模のガス田にも開発のチャンスが巡ってくる。これらは競ってこのパイプラインへガス供給を始めようとするであろう。RosneftのIgor Sechin社長は5月20日に、「Rosneftは『シベリアの力』ガスP/Lの送ガス能力を増強するという決定がなされたら、同P/Lへのアクセスが認められることを期待している。我々は既に東シベリアおよび極東で保有する鉱床(複)でのガス生産量の見通しをエネルギー省に提示した。同パイプラインの送ガス能力にこれらの数字が組み込まれるのであれば、皆がこのパイプラインを通じガスを輸出するべきである」と述べた44。これは、東シベリアで操業している企業の考え方を代弁している。 日本企業が参画している東シベリアのプロジェクトにおいても、天然ガスに関してはこれまで圧入か、現場での発電用程度の利用しか実現性がなかったが、今後は輸出できる可能性も出て来る。 また、今回ロシアと中国が強い紐帯で結ばれたとしても、これは中国の独占が進むことを意味しない。ロシアとしては、当然バランスをとるために、拡大均衡として、日本等への投資勧誘を活発化させるであろう45。東シベリアでの新規のガス田開発も日本にとってメニューに入る。 こうしてみると、今回の合意は日本のエネルギー安全保障にとっても追い風となるものである。 (了) 考】2014年のウクライナ問題を巡る経緯(その2) 参 4月20日、ウクライナ東部スラビャンスクの検問所で銃撃戦、3名が死亡、3名が負傷。ロシア外務省は 【ウクライナの民族主義グループ「右派セクター」が襲撃に関与したとして非難。右派セクターは声明でこ 43 ガスエネルギー新聞, 2014/5/26 44 Interfax, 2014/5/20 45 電気新聞, 2014/5/22 ? 14 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 黷ロ定。 4月21日、バイデン米副大統領がキエフ訪問。ガスの逆走、シェールガス開発等で協力。 4月22日、トゥルチノフ大統領代行は東部での反テロ作戦の再開を軍と治安機関に命令。スラビャンスク近くで、拷問・殺害された親暫定政権の地方議員2名の遺体が発見されたことが作戦再開のきっかけ。 4月25日、東部ドネツク州で欧州安保協力機構(OSCE)の軍事調査団13名が親ロシア派に拘束される。27日夕刻、1名を健康上の理由で解放。 4月27日、ウクライナ暫定政府の保安局の特殊部隊員3名がドネツク州で親ロシア派武装集団を検挙しようとして逆に拘束される。ドネツクで親ロシア派が国営テレビラジオ局を占拠。ロシアのテレビ局の放送再開を求める。 4月28日、ドネツク州のコンスタンチノフスカの警察署と市役所が親ロシア派により占拠。 4月28日、ハリコフ市のケルネス市長が銃撃され重体。市長は「地域党」所属。 4月28日、プーチン大統領は「ロシア=ウクライナの関係は、ロシアの軍需産業にとって大きな意味があり、関係継続を望む」と発言。米国による対露追加制裁での軍需産業へのハイテク製品の輸出制限に、ウクライナが追随する可能性を懸念して。 4月29日、ルガンスクで州政府庁舎が親露派武装集団に占拠される。 4月30日、Yatsenyuk首相は5月25日の大統領選に併せて、地方分権などを問う住民投票の実施を検討していることを明らかに。東部への懐柔策か。 4月30日、Oleksandr Turchynov大統領は、「東部の一部で支配権を失っている」と初めて正式に認める。今後の暫定政権の役割は、親露派武装勢力の勢力圏拡大を抑えることと語り、強制排除を行う方針を事実上撤回。親露派との和解を模索46。 4月30日、プーチン大統領は英キャメロン首相、伊レンツィ首相と電話協議。暴力の自制などを定めた「ジュネーブ合意」を遵守することで合意し平和的解決で一致した。 5月2日、訪米中のメルケル首相はオバマ大統領とホワイトハウスで会談、5月25日のウクライナ大統領選をロシアが妨害した場合には、金融や防衛などの主要産業を対象とした追加制裁を行うことで一致。 5月2日、スラビャンスクでの暫定政権の軍事作戦で死者。親露派側は10名以上死亡と主張。 5月2日、オデッサで住人同士の衝突で、親露派が逃げ込んだ労働会館に火炎瓶が投げ込まれ火災が発生、46名死亡。2月のキエフでの衝突以来最大の事件。ロシアメディアは「右派セクター」による犯行 46 毎日, 2014/5/01夕 ? 15 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ニ。 5月3日、メルケル首相訪米。ウクライナで5月25日に予定される大統領選が国際的に承認される形で実施できない場合、ロシアに経済制裁を行うことで合意 5月3日、スラビャンスクで拘束されていた全欧安保協力機構(OSCE)の軍事監視団12名全員が解放。現地入りしたロシアのルーキン前連邦人権問題代表が明らかに。 5月4日、プーチン大統領とメルケル首相が電話会談、ウクライナ暫定政権と東南部の親露派代表が直接対話する機会をもつこと、全欧安保協力機構(OSCE)が役割を果たすことが重要との考えを示す。 5月5日、ドネツク州スラビャンスクで暫定政府軍と親ロ武装勢力の間で銃撃戦があり、兵士4名脂肪、30名負傷。 5月5,6日、ローマでG7エネルギー相会議。 5月7日、OSCE議長国スイスのブルカルテル大統領が訪ロ、プーチンと会談。暴力停止、緊張緩和、対話の実現、選挙の実施の4項目からなる「工程表」を提案。共同記者会見で、プーチンは①5月11日に予定されている「ドネツク人民共和国」独立を問う住民投票の延期、②ウクライナ国境に結集したロシア軍の撤収、③親露派代表と暫定政権が「平等な立場で対話」するための円卓会議の設置を訴え。但し5月25日のウクライナ大統領選に関しては「国民の権利が保障されるか不明の状態では何の解決にもならない」と懐疑的。 5月8日、ドネツク、ルガンスク東部2州の親ロシア住民は住民投票を計画通り実施すると決定。ECは「正当性、合法性がなく誰も結果を認めない」と批判、中止を要求。 5月8日、ロシア外務省は暫定政府が親露派の強制排除をやめず、親露派との対話を拒否するならば大統領選は無意味。一方、暫定政権のパルビー国家安全保障・防衛会議書記(スボボダ党首)は「対テロ作戦を続行する」として、対話は拒否。 5月8日、プーチン大統領が6月6日に仏で予定されているノルマンディー上陸作戦70周年記念式典に出席と露大統領府が発表。(式典にはオバマ大統領、メルケル首相も参加予定)。 5月10日、メルケル独首相とオランド仏大統領は、5月2日にメルケル首相がオバマ大統領と合意したと同様に、ウクライナで5月25日に予定される大統領選が国際的に承認される形で実施できない場合、ロシアに経済制裁を行うことで合意 5月11日、ドネツク州とルガンスク州で地域の独立の是非を問う住民投票実施。問いは「人民共和国の国家独立を支持するか」。ロシアは選挙監視団を送らず。即日開票の結果が、ドネツク州では投票締め? 16 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 リりから1時間半後に発表。有権者数332万人、投票率74.87%、賛成89.07%、反対10.19%、無効0.74%。ルガンスク州では、投票率約81%、賛成96.2%、反対3.8%。一方、ウクライナ内務省の推計による投票率はドネツク州で32%、ルガンスク州で24%程度。 5月12日、EU外相会議。対露追加制裁の発表。 5月14日、暫定政府がキエフで「円卓会議」を開催し、ウクライナの分裂を回避することで一致した。親ロシア派は招かれず。 5月15-16日、モスクワで国際エネルギー・フォーラム(IEF)の閣僚級会合が開催。公式議題はシェールガス田や、低炭素経済への移行、などが話題。プーチン大統領は、18か国消費国政府首脳宛て2回目の親書。「ウクライナのガス未払い金は35億800万ドル、未払いが続けば6月からウクライナ向けガス供給を止める」 5月17日、ハリコフで第2回「円卓会議」 5月20日、プーチン大統領が上海訪問。露中首脳会談。 5月21日、天然ガス供給に関して露中合意。 5月23日、プーチン大統領は、「ウクライナの人々の選択を尊重する。新政権とも仕事をしたい」と述べ、大統領選の結果を受け入れる姿勢を示す。 5月24日、日本の対露制裁に関して驚きを表明。「領土問題も中断する積りなのか」と強い不快感を表明。一方で、ロシアには交渉の用意があるとも発言。 5月25日、ウクライナ大統領選。元外相のペトロ・ポロシェンコ候補が得票率54.2%(5月26日、開票率90%時点)で当選。 ? 17 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。
地域1 旧ソ連
国1 ロシア
地域2 旧ソ連
国2 ウクライナ
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,ロシア旧ソ連,ウクライナ
2014/05/27 本村 真澄
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