ページ番号1004474 更新日 平成30年2月16日

原油市場他:イラク及びリビアを巡る地政学的リスク要因に伴う市場での石油供給途絶懸念の後退で原油価格が下落

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レポートID 1004474
作成日 2014-07-14 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
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年度 2014
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日:2014/7/13 調査部:野神 隆之 原油市場他:イラク及びリビアを巡る地政学的リスク要因に伴う市場での石油供給途絶懸念の後退で原油価格が下落 (IEA、OPEC、米国DOE/EIA他) ① 米国では不具合等により稼働が低下していた製油所の操業が再開されたことにより、原油精製処理量が増加した一方で原油輸入量が伸び悩んだことから、原油在庫は減少傾向となったが、平年幅を超過する水準は維持されている。他方、製油所での稼働上昇と石油製品生産活動の活発化に伴いガソリンや留出油の生産も増加したものの需要も堅調であった結果、ガソリン在庫は安定的に推移、留出油在庫は緩やかに増加した結果、7月上旬としてはガソリン在庫は平年幅の上限付近に、留出油在庫は平年幅の下方付近に、それぞれ位置する量となっている。 ② 2014年6月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国では減少となったものの、欧州では製油所での精製利幅の低迷に伴う稼働低下から在庫が微増した他、日本でも製油所での春場のメンテナンス作業等の実施に伴う原油精製処理量の低下から当該在庫が増加したことで相殺された結果、OECD諸国全体としては増加となり、量としても平年幅を超過する状態が続いている。他方、製品在庫については、欧州では経済性の面から製油所での生産活動が不活発になり、また日本でも製油所でのメンテナンス作業の影響で石油製品の生産が低下していることから、両地域での在庫は減少となったものの、米国で増加となったことから、OECD諸国全体では石油製品在庫は増加となったが、量としては平年幅下限付近に位置している。 ③ 2014年6月中旬から7月中旬にかけての原油市場においては、6月下旬半ば頃までは、イラク北部でのイスラム教スンニ派武装勢力とイラク軍との戦闘に伴う同国からの石油供給途絶の可能性に対する市場の懸念や、米国政府による同国産コンデンセートの国外への輸出承認の報道などから、原油価格(WTI)は終値ベースで概ね1バレル当たり106~107ドル台で推移していたが、その後はイラク北部等での武装勢力の暴動が同国南部での原油生産に影響を与えていないことに加え、リビアで長期間抗議勢力により封鎖されていた東部の石油ターミナルが操業を開始する見通しとなったうえ、これまで停止していた同国南西部の油田の生産も再開されたことから、両国を巡る地政学的リスク要因に伴う石油供給途絶懸念が市場で後退したことが原油相場に下方圧力を加えた結果、原油価格は下落基調となり、7月中旬には101ドルを割り込む終値となった。 ④ 7月も後半になると、米国の夏場のガソリン需要期も峠を越え始めるので、この面では原油相場に下方圧力を加えやすくなってくるものの、イラクについては武装勢力の勢いが顕著に衰えているとは言い切れず、またイラク中央政府での新政権樹立も容易でない旨示唆されることから、同国南部での石油供給途絶の可能性が著しく低下したと市場が認識するまでにはなお時間を要すると考えられ、またリビアにおいても、石油ターミナルや油田の操業再開により増加した原油生産が持続することで、同国を巡る地政学的リスクが相当程度低下したという確信を市場関係者が持つようになるまでにはそれなりの期間が必要であると見られることにより、これらの面で原油相場が下支えされていくと見られることから、原油相場への下方圧力は当面比較的緩やかな程度にとどまる可能性がある。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? . 原油市場を巡るファンダメンタルズ等 2014年4月の米国ガソリン需要(確定値)は前年同月比で2.4%程度増加の日量898万バレルと速報値(同865万バレル、前年同月比1.3%程度の減少)から上方修正され(図1参照)、4月としては2010年(この時は日量911万バレルの需要)以来の高水準となった。4月のガソリン需要(速報値)の算出の際に同国のガソリン輸出量が2014年1月~2月時点の確定値(この時のガソリン輸出量は日量40~53万バレル程度、平均すると同48万バレル程度であった)が暫定的に利用されたと見られるものの、実際の4月のガソリン輸出量(確定値)が日量38万バレルと、暫定値を日量10万バレル程度下回っている旨判明したことにより、その分を確定段階でガソリン需要に計上した(つまり、本来国内需要に計上すべき量が暫定段階では輸出に計上されたものを最終的に国内需要に振り替え直した)ことから、その分(つまり日量10万バレル分)だけガソリン需要(確定値)が上方修正されることになるが、実際の上方修正幅は日量33万バレルとなっていることから、輸出分の修正を差し引き日量23万バレル分は実際の米国内需要の上方修正相当分、ということになる。これは、米国経済の改善(4月の同国非農業部門雇用者数は前月比で30.4万人の増加と2012年1月(この時は同36万人の増加)以来の大幅増加となった)こともあり、4月の米国自動車運転距離数が前年同月比で1.8%の増加となっていることを反映しているものと考えられる。他方、6月の同国ガソリン需要(速報値)は日量898万バレルと前年同月比で0.2%程度の増加となっているが、同月の同国非農業部門雇用者数が前月比で28.8万人の増加と同年2月以来連続して、堅調な雇用市場の回復を示していると市場に認識されるところの、前月比20万人超の雇用者数の増加を維持しているところからすると、この数値は確定値に移行する段階で上方修正される可能性もあるので、注意が必要であろう。また、米国では6月後半には、それまで不具合等で停止していた、複数の製油所の装置が操業を再開したことから、原油精製処理量もそれに従って増加傾向となった(図2参照)ことに伴いガソリンの生産活動も活発化した(図3参照)こともあり、夏場のドライブシーズンに伴い発生したガソリン需要を賄った結果、当該製品在庫は6月中旬から7月上旬にかけては概ね安定して推移、7月上旬時点では平年幅の上限付近に位置している(図4参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? lobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? 2014年4月の同国留出油需要(確定値)は前年同月比で2.6%程度増加の日量397万バレルと速報値である同404万バレル(前年同月比4.3%の増加)から下方修正されている(図5参照)。これはEIAが2014年1~2月時点での輸出量(確定値)をもとに算出した数値(日量90~116万バレル、平均同105万バレル)を暫定的に4月の輸出量として使用したと見られる一方で、4月の輸出量の確定値が日量117万バレルと暫定値を日量12万バレル程度上回っていたことにより、この分が国内需要(速報値)から輸出に振り向けられたと見られることによるものと考えられる。また、2014年6月の留出油需要(速報値)は日量380万バレル(前年同月比3.5%程度の増加)であったが、これについては、米国での経済回復に伴う物流部門向け軽油需要の増加が影響している可能性がある。他方、製油所での原油精製処理量が6月後半に回復してきたことに伴い留出油の生産も増加してきた(図6参照)ものの、需要も堅調であったことから、留出油在庫は緩やかに増加した結果、量としては7月初旬としては平年の下方付近に位置している(図7参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? 2014年4月の米国石油需要(確定値)は、ガソリン及び留出油需要の伸びが全体を牽引したことから日量1,878万バレル(前年同月比1.2%程度の増加)となり、またガソリン需要が速報値から確定値に移行Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? キる際に上方修正された結果、同国石油製品需要も速報値(日量1,845万バレル、前年同月比0.6%程度の減少)から確定値に移行する段階で上方修正された(図8参照)。また、2014年6月の米国石油需要(速報値)は日量1,882万バレルと前年同月比で0.5%程度の増加となっているが、これは、ジェット燃料や留出油の前年同月比での需要増加がプロパン/プロピレン(2013~14年が厳冬であったことに伴う暖房用需要の増加等による市場での需給逼迫感の増大により上昇した価格が6月の時点においても残っているように見受けられることから、それが需要に影響している可能性がある)及び「その他の石油製品」の前年同月比での需要減少で相殺されたことによるものである。他方、製油所での原油精製処理量が増加した反面、原油輸入が低迷したこと(特にサウジアラビアからの原油輸入が6月に入って前月比で有意に減少しているが、これが同社が出資する米国Motiva EnterprisesのPort Arthur製油所の装置不具合による操業停止(6月4~18日)によるものなのか、それとも米国での高水準の原油在庫をサウジアラビアが考慮してものなのか現時点では判然としない部分があるので、今後の米国のサウジアラビアからの原油輸入量の推移については留意しておく必要があろう)から、同国の国内原油生産は6月から7月にかけ増加した(例えば6月6日の週は日量846万バレルであったが、7月4日の週は同 851万バレルとなっている)ものの、原油在庫は減少傾向となったが、量としては平年幅の上限を超過している状態は維持されている(図9参照)。なお、原油在庫が平年幅を超過した領域、ガソリン在庫が平年幅の上限付近、そして留出油在庫が平年幅の下方付近に、それぞれ位置していることから、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅を超過する状態となっている(図10及び11参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? 2014年6月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国では製油所の原油精製処理量の増加に伴い在庫は減少となったものの、欧州では精製利幅の確保が困難であることにより製油所の稼働を低下させていることもあり在庫が微増、日本においても製油所が春場のメンテナンス作業等を実施している影響で原油精製処理量が低下したことから当該在庫が増加となったGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? アとで、米国での減少分を欧州及び日本での増加で相殺した結果、OECD諸国全体としては当該在庫は増加となり、量としても平年幅を超過する状態が続いている(図12参照)。他方、製品在庫については、欧州では経済性の問題で製油所での生産活動が不活発になった結果、また、日本でも製油所でのメンテナンス作業実施の影響で石油製品生産が低下していることから、両地域において当該在庫は減少となったものの、米国では製油所での生産活動の活発化により在庫が増加となったことから、OECD諸国全体としては石油製品在庫は増加となったが、量としては平年幅下限付近に位置している(図13参照)。なお、原油在庫が平年幅の上限を超過している一方で石油製品在庫が平年幅の下限付近に位置する水準となっていることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年並みの量となっている(図14参照)。また、2014年6月末時点でのOECD諸国推定石油在庫日数は57.5日と5月末の推定在庫日数である57.3日から若干増加している。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? シンガポールでのガソリンやナフサといった軽質製品の在庫量は、6月11日に1,000万バレル台後半となって以降1,000万バレル台で推移していたが、7月9日には1,000万バレルを割り込んだ。東南アジアや中東諸国における断食月(ラマダン、2014年は概ね6月29日~7月27日)及びラマダン明けの祭(「イードアルフィトル」(Eid Al’Fitr))を家族などで祝うための移動に伴うガソリン等の需要増加に伴う需給引き締まり感が市場で発生する中、インド、マレーシア及びシンガポールなどで製油所がメンテナンス作業の実施や不具合の発生で装置を停止したことに伴い、自国内での石油製品の生産低下と国外からの輸入の増加の可能性に対する観測が市場で発生したこともあり、ガソリン価格は原油価格に比べて堅調に推移した。また、ナフサについては、ガソリン需要の増加に伴いガソリン向けに混合されるナフサの需要が増加するのではないかとの市場の見方や、精製利幅の低迷に伴う欧州での製油所の稼働低下により、欧州からアジアに向けたナフサの流入が減少するのではないかとの観測が市場で発生したことから、アジア市場でのナフサ価格は原油価格の下落に比べて緩やかな傾向を示した。 シンガポールの中間留分在庫は6月11日の1,100万バレル強の水準から6月25日には1,300万バレルへと増加したが、その後減少、それでも7月9日には1,200万バレル弱と6月11日の水準を上回る状態となっている。中国やインドでの経済減速で軽油需要が抑制されていることが、在庫増加の背景にあると考えられる。そして需給が緩和気味となっていることもあり、例えば軽油価格は原油価格に比べて軟調になる傾向を示している。 シンガポールの重油在庫は6月11日の2,100万バレル台後半の水準が、7月2日には2,300万バレルを超過する量へと増加したが、7月9日には2,100万バレルを割り込むところまで減少した。精製利幅の低迷とメンテナンス作業により欧州で製油所の稼働が不振であったことに伴い重油生産が低迷した結果当該地域での重油需給が引き締まったことから、西側諸国等からアジア諸国への重油の流入が低下Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? オたことで、シンガポールでの重油在庫が減少する場面が見られたものの、他方、これまで重油を使用していた中国の中小規模製油所で原油の使用が認められたこともあり、同国での重油需要が盛り上がらないうえ、一時重油価格が高水準となっていたことから船舶向け需要も抑制されてしまった格好となったことから、シンガポールの重油価格は概ね原油と連動する形で推移した。 2014年6月中旬から7月中旬にかけての原油市場においては、6月下旬半ば頃までは、イラク北部でのイスラム教スンニ派武装勢力とイラク軍との戦闘に伴う同国からの石油供給途絶の可能性に対する市場の懸念や、米国商務省による同国産コンデンセートの国外輸出承認の報道などから、原油価格(WTI)は終値ベースで概ね1バレル当たり106~107ドル台と9ヶ月ぶりの高値からそう離れない水準で推移していたが、その後はイラク北部を中心とした武装勢力の暴動が、同国南部での原油生産に影響を与えていないことに加え、リビアで長期間抗議勢力により封鎖されていた東部の石油ターミナルが操業を開始する見通しとなったうえ、これまで停止していた同国南西部の油田の生産も再開されたことから、両国を巡る地政学的リスク要因に伴う石油供給途絶懸念が市場で後退したことが原油相場に下方圧力を加えた結果、価格は下落基調となり、7月中旬には101ドルを割り込む終値となった(図15参照)。 2014年6月中旬から7月中旬にかけての原油市場等の状況 . 2 6月16日には、イスラム教スンニ派武装勢力「イラクとレバントのイスラム国(ISIL:The Islamic State of Iraq and the Levant)」(「イラクとシャームのイスラム国(ISIS:The Islamic State of Iraq and al-Sham)」等と言われることもある)のイラク北部諸都市制圧及びバグダッドへの南進の動きに伴う同国からの石油供給Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 10 ? r絶の可能性に対する市場の懸念は継続しているものの、国内原油生産が増加している一方でイラクからの原油輸入が減少している米国の原油市場への影響は限定的との認識も市場で発生し原油価格の上昇を抑制したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり106.90ドルと前週末終値比で0.01ドルの下落にとどまったが、6月17日には、この日国際エネルギー機関(IEA)のファンデルフーフェン事務局長が、現時点でイラク北部でのイスラム教スンニ派武装勢力による暴動は同国南部の石油生産に影響していない旨示唆したこともあり、イラクからの石油供給途絶懸念が市場で後退したこと、翌18日には、この日米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)から発表された同国石油統計(6月13日の週分)で、クッシングの原油在庫が10週間ぶりに増加していた他、同国製油所の精製稼働率が87.1%と3月21日の週(この時は86.0%)以来の低水準となっていた旨判明したことで、原油価格は6月17~18日の2日間併せて1バレル当たり0.94ドル下落し、6月18日の終値は105.97ドルとなった。ただ、6月19日には、イラク政府軍とイスラム教スンニ派武装勢力との間で同国最大のバイジ(Baiji)製油所(原油精製能力日量30万バレル)の支配権を巡る戦闘が継続する中、6月19日にオバマ米大統領がイラクに対して最大300名の軍事顧問を派遣する旨発表したことで、同国情勢の先行き不透明感に対する懸念が市場で増大したこと、6月20日には、この日Enterprise Products Patnersから、Seawayパイプライン(米国クッシング~フリーポート、輸送能力日量40万バレル)が4日間のメンテナンスを終了し操業を再開した旨の発表があったことで、クッシングでの原油需給引き締まり観測が市場で再燃したことに加え、6月20日のニューヨーク商業取引所(NYMEX)の7月渡しWTI原油先物契約期限を前にして持ち高調整が市場で発生したことにより、原油価格は6月19~20日の2日間で併せて1バレル当たり1.29ドル上昇(6月20日は前日終値比では0.83ドル上昇)、6月20日の終値は107.26ドルとなった。(なお、NYMEXの7月渡しWTI原油先物契約取引はこの日を持って終了したが、8月渡し契約のこの日の終値は1バレル当たり106.83ドル(前日終値比0.78ドル上昇)であった)。 6月23日には、イラク北部を中心としたイスラム教スンニ派武装勢力による暴動が南部の油田地帯での原油生産活動に影響を与えていない旨示唆されたことにより、同国からの石油供給途絶懸念が市場で後退、これまでの原油価格上昇に対する利益確定の動きが市場で発生したこと、また、翌24日には、この日シリアの戦闘機がイラク西部を空爆し少なくとも50名が死亡した旨ウォールストリートジャーナルが報じたことで、中東情勢不安定化の世界経済への影響に対する懸念が市場で発生したこともあり、米国株式相場が下落したことから、6月24日の原油価格の終値は1バレル当たり106.03ドルと原油価格は6月23~24日の2日間併せて1.23ドル下落した。ただ、米国商務省産業安全保障局がPioneer Natural Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 11 ? esourcesとEnterprise Products Partnersに対し米国産コンデンセートを国外に輸出することを承認した旨6月24日夕方にウォールストリートジャーナルが報じたことにより、米国での原油需給引き締まり観測が6月25日の市場で発生したことから、この日(6月25日)の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.47ドル上昇し、終値は106.50ドルとなった。 しかしながら、6月25日にイラクのルアイビ石油相が、7月のイラクからの原油輸出が6月に比べて増加するとの見解を示したこともあり、同国北部を中心としたイスラム教スンニ派武装勢力による暴動が、南部の油田地帯での原油生産活動に影響を与えていない旨示唆されたことにより、同国からの石油供給途絶懸念が市場で後退したこと、同じく6月25日に米国商務省から発表された2014年1~3月期同国国内総生産(GDP)成長率(確定値)が年率2.9%の減少と、5月29日に発表された改定値(同1.0%の減少)から下方修正され、2009年1~3月期(この時は同5.4%の減少)以来の大幅な減少幅となった他、市場の事前予想(同1.7~1.8%の減少)を下回ったことが、翌26日の原油相場に影響を与え続けたうえ、6月26日にリビア国営石油会社NOCが、同国南西部のエル・フィール(El Feel)油田(同油田は警備員による抗議活動により操業が停止した旨5月16日にNOCが明らかにしていたが、6月16日に抗議活動が終了したことから生産を再開した旨石油省が発表したと伝えられている)の原油生産量が日量10.5万バレルへと増加したことに伴いリビア全土の生産水準も日量30万バレルへと上昇した旨明らかになったことで、同国からの石油供給途絶懸念が市場で後退したこと、6月26日に米国商務省から発表された5月の同国個人消費支出(PCE:Personal Consumption Expenditures)が前月比で0.2%の増加と市場の事前予想(同0.4%の増加)を下回ったこと、6月26日に発表されたPCEが市場の事前予想を下回ったことに加え、6月26日にブラード(Bullard)米国セントルイス連邦準備銀行総裁が、2015年3月までには米国は金利引き上げを実施すべきであるとの自説を改めて述べた(3月19日の米国連邦公開市場委員会(FOMC)終了後の記者会見ではイエレン米国連邦準備理事会(FRB)議長は2015年春には金利引き上げを実施する可能性がある旨示唆していた)ことで、米国金融当局による早期金利引き上げ観測が市場で発生したことにより、米国株式相場が下落したこと、6月27日には、イラク北部を中心としたイスラム教スンニ派武装勢力による暴動が南部の油田地帯での原油生産活動に影響を与えていない旨示唆されたことにより、同国からの石油供給途絶懸念が市場で後退している流れを引き継いだことにより、6月27日の原油価格の終値は1バレル当たり105.74ドルと、原油価格は6月26~27日の2日間併せて0.76ドル下落した。 6月30日には、イラクを巡る地政学的リスク要因が南部の油田地帯での原油生産活動に影響を与えていないことに伴う、同国からの石油供給途絶に対する市場での懸念後退の流れを引き継いたことで、こGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 12 ? フ日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.37ドル下落し、終値は105.37ドルとなった。7月1日にも、イラクからの石油供給途絶懸念が市場で後退している流れを引き継いだことが、原油相場に下方圧力を加えたが、7月1日に中国物流購買連合会及び中国国家統計局から発表された6月の同国製造業購買担当者指数(PMI)(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が51.0と5月の50.8から上昇したうえ、同日英大手金融機関HSBC及び英金融情報サービス会社マークイットから発表された6月の同国製造業PMI(改定値)(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が50.7と5月の49.4から上昇したことで、同国経済が安定化しつつあるとの認識が市場で広がったことが原油相場に上方圧力を加えたことにより、この日の原油価格の終値は1バレル当たり105.34ドルと前日終値比で0.03ドルの下落にとどまったものの、7月2日には、この日リビア東部の部族が同国のエス・シデル(Es Sider)石油ターミナル(原油出荷能力日量34万バレル)及びラス・ラヌフ(Ras Lanuf)石油ターミナル(同22万バレル)につき、同日付で操業を再開する旨明らかにしたことで、同国からの石油供給途絶懸念が市場で後退したこと、また7月3日には、イラクからの石油供給途絶懸念が市場で後退している流れを引き継いだうえ、7月3日未明(現地時間)には、リビアのサニ首相代行が、リビア政府が東部部族との間で、東部の部族が封鎖していた同国のエス・シデル及びラス・ラヌフの両石油ターミナルをリビア政府に明け渡すことで合意するとともに、同国での石油危機の終結を宣言した旨報じられたことで、同国からの石油供給途絶懸念が市場で後退したこと、7月3日に米国労働省から発表された6月の同国非農業部門雇用者数が前月比で28.8万人の増加と市場の事前予想(同21.2~21.5万人の増加)を上回ったうえ、失業率も6.1%と2008年9月(この時は6.1%)以来の低水準となったことから、米国金融当局による金利引き上げ開始時期が早まるのではないかとの観測が市場で発生したことにより、米ドルが上昇したこと、米国南東部海岸沖にあるハリケーン「アーサー」(Arthur)が米国北東部へと向かいつつあることで、当該地域に荒天がもたらされることにより、7月4~6日の米国独立記念日(インディペンデンス・デー)に伴う連休時期における米国民の自動車等を利用した外出に影響を及ぼしガソリン等の石油需要が低下するのではないかとの観測が市場で発生したことから、原油価格は7月2~3日の2日間で1バレル当たり合計1.28ドル下落、7月3日の終値は104.06ドルとなった(なお、7月4日は、米国独立記念日(インディペンデンス・デー)に伴う休日により、NYMEX原油先物契約に関する通常取引は実施されなかった)。 7月7日には、イラク北部を中心としたイスラム教スンニ派武装勢力による暴動が南部の油田地帯での原油生産活動に影響を与えていない旨示唆されたことにより、同国からの石油供給途絶懸念が市場で後退している流れを引き継いだうえ、7月6日にリビア国営石油会社NOCが同日15時(現地時間)を以Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 13 ? トエス・シデル及びラス・ラヌフの両石油ターミナルにおける不可抗力条項の適用を解除する旨発表したことから、同国からの原油輸出が今後増加していくとの観測が7月7日の市場で発生したこと、7月6日に米国大手金融機関ゴールドマン・サックスが米国金融当局の金利引き上げ時期予想を以前の2016年1~3月から2015年7~9月へと早めた旨明らかにしたことで、同国での早期の金融引き締まりを市場が意識し、米国株式相場が下落したこと、7月4~6日の米国独立記念日(インディペンデンスデー)の休日を含む連休時期に米国東海岸をハリケーン「アーサー」が通過したことにより、当該地域における自動車旅行が一部取り消されたことに伴うガソリン需要の低迷の可能性に対する懸念が7月7日の市場で発生し、米国ガソリン先物相場が下落したこと、7月8日も、イラクからの石油供給途絶懸念が市場で後退している流れを引き継いだうえ、リビア南西部のエル・シャララ(El Sharara)油田が操業を再開し(同油田は2月20日夜(現地時間)に、油田から原油を輸送するためのパイプラインが抗議勢力により停止したことに伴い、操業を停止したままとなっていた)、徐々に増産中である旨、7月8日に同国国営石油会社NOCが明らかにしたことで、リビアからの原油生産が今後さらに増加するとの観測が市場で発生したこと、7月9日についても、イラク及びリビアに関する地政学的リスク要因に対する市場の懸念後退の流れを引き継いだうえ、7月9日にEIAから発表された同国石油統計(7月4日の週分)でクッシングの原油在庫が前週比で45万バレル増加していた他、ガソリン需要が前週比で日量23万バレル減少していた旨判明したことから、7月9日の原油価格の終値は1バレル当たり102.29ドルと、価格は7月7~9日の3日間合計で1.77ドル下落した。7月10日には、これまでの原油相場下落に対する利益確定の動きが市場で発生したことに加え、7月10日に米国労働省から発表された同国新規失業保険申請件数(7月5日の週分)が30.4万件と前週比で1.1万件減少、市場の事前予想(31.5万件)を下回ったことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.64ドル上昇し、終値は102.93ドルとなったものの、翌11日には、イラク及びリビアに関する地政学的リスク要因に対する懸念後退の流れが再び市場に現れたことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり100.83ドルと前日終値比で2.10ドル下落した。 イラクにおいては、6月10日のイスラム教スンニ派武装勢力の同国北部の都市モスル制圧及びバグダッドに向けた進撃開始以来、南部油田地域での原油生産は影響を受けておらず(イラクの油田等の位置に関しては図16参照)、この面で一時期高まった市場での同国からの石油供給途絶懸念は後退しているように見受けられる。ただ、実際には同国の政情が安定化する兆しが見えるという状況でもない。イラクGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 14 ? . 今後の見通し等 3Rは武装勢力に掌握された北部の諸都市を奪還すべく引き続き武装勢力と戦闘中と言われており、両者の戦況は一進一退の様相を呈している(なお、6月29日には、武装勢力(ISIL)の指導者であるバグダディ指導者が「イスラム国」(IS:Islamic State)の樹立を宣言している)。また、バグダッド周辺におけるテロ行為も散見され、当該地域の政情も不安定なままである。他方、7月1日に召集されたイラク連邦議会は、議長を選出することなく休会した。同国のイスラム教スンニ派勢力やクルド人勢力は、イスラム教シーア派勢力を優遇するマリキ首相に対して退陣することを希望しているが、マリキ首相は7月4日に続投を希望する旨明らかにしており、シーア派勢力以外の勢力の反発を招いた他、シーア派勢力内からも批判の声が出ている。そして7月7日には、7月8日に予定されていた議会の再開が8月12日に延期、その後7月8日には再開日を7月13日に繰り上げることにした旨報じられている(そして実際に7月13日に議会は開催されたが、そこでも議長は選出できず、次回は7月15日に議会を開催するとしている)。そのような中、クルド自治区では、イラクから独立すべきかどうかに関しての住民投票を実施すべく、同自治区のバルザニ議長が7月3日に自治区議会に準備を要請している(数ヶ月以内の実施を要請と伝えられる)他、7月10日に改めてマリキ首相を批判している(また、他方でクルド自治政府軍は同国北部のキルクーク(Kirkuk、2013年の原油生産量は日量26万バレルとされる)及びバイ・ハッサン(Bai Hassan、同18万バレルとされる)両油田を掌握した旨7月11日にクルド自治政府は発表している)こともあり、同国においては政権樹立までにはなお紆余曲折を経る可能性があるなど、イラク連邦政府の機能に支障が生ずる可能性は依然存在している。このように、イラクを巡る情勢は依然として不安定な状態が続くと見られることにより、イラクからの石油供給途絶の可能性に対する市場の懸念を完全に払拭することは当面難しいと考えられることから、この面では原油相場を少なくとも下支えする他、バグダッドが武装勢力によって脅かされるような展開になれば、原油相場に上方圧力が加わる可能性も否定できないものと思われ Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 15 ? }16 イラクの主な情勢及び主要な油田等(2014年7月13 日現在) 出所:各種資料をもとにJOGMEC調査部 増野伊登作成 ウクライナについては、6月20日(現地時間午後10時)に同国政府が親ロシア派勢力に対して1週間(20~27日午前10時(現地時間))の一方的停戦を発表、親ロシア派勢力にこの期間内に武装解除をするよう呼びかけた。続いて6月21日にはプーチン露大統領が親ロシア派勢力に対して停戦を呼び掛け、6月23日には親ロシア派勢力も6月27日までの停戦に合意、またプーチン大統領は6月24日にはウクライナへのロシア軍派遣を承認した3月1日のロシア議会上院での決定を取り消すよう要請したと伝えられ、停戦期限である6月27日には、ウクライナ政府と親ロシア派勢力間で和平協議が行われ、停戦期限を6月30日午後10時まで72時間延長する旨決定した。しかしながら、6月30日午後10時(現地時間)を以て、ウクライナ政府は親ロシア派勢力が停戦に関する合意に違反した(停戦期間に親ロシア派勢力側から108件の攻撃を受け、ウクライナ軍事関係者27名が殺害された旨7月1日に明らかにしていた)Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 16 ? ニして、停戦の延長はしないことを決定(停戦期間中に親ロシア派勢力が軍事体制の再建を行っているため、停戦延長をすべきでない旨の意見がウクライナ国内で提示されていたと伝えられる)、同国東部の親ロシア派勢力に対する攻撃を再開した。7月4日にはポロシェンコ大統領が親ロシア派勢力に対して7月5日に停戦に関する協議を提案したものの、その後も政府軍は親ロシア派勢力に対する攻撃を継続した(この結果7月5日の停戦協議は事実上延期され、また7月8日にはウクライナのヘレテイ国防相が、親ロシア派勢力が完全に武装を解除するまでは停戦に関する交渉は実施しない旨明らかにしている)。7月5日には親ロシア派勢力が掌握していた同国東部ドネツク州スラビャンスクをウクライナ軍が奪還。7月7日には親ロシア派勢力が掌握していたロシアとの国境地帯の検問所をウクライナ軍が全て奪還した他、ウクライナ軍は親ロシア派勢力が退却した先であるドネツク及びルガンスクの2都市を包囲しつつある。他方、攻撃を続けるウクライナは親ロシア派勢力に対して武装解除を呼びかけるなどの対話を試みる姿勢を示しているものの、7月10日には親ロシア派勢力を掃討すべくウクライナ軍がドネツク及びルガンスクに対する空爆を開始した。一方、親ロシア派勢力もこの2都市においてウクライナ軍との停戦を拒否し徹底抗戦する姿勢を示していることもあり、両者間で停戦に関する交渉が間もなく開始されるという兆候はなく、また、西側諸国においても、ロシアが速やかにウクライナの停戦に向け行動しなければ追加制裁を実施する旨の姿勢を示していることから、ウクライナ情勢は原油相場に対して少なくとも下方圧力を継続的に加えるようなことにはならず、むしろこの面でも価格を下支えしやすいものと考えられる。 イランについては、7月2日からオーストリアのウィーンに於いてウラン濃縮問題を巡る最終合意につき、西側諸国等(国連安全保障理事会常任理事国5ヶ国にドイツを加えた6ヶ国)との協議を実施しているが、ウラン濃縮のための遠心分離機の大幅削減を求めている西側諸国側に対して、イラン側が遠心分離機の増加を求めているとされるなど、両者のウラン濃縮活動に関する見解は依然として大きく隔たっており、最終合意に向けてはなお時間を要する状況と見受けられる。このようなことから、当該協議は6ヶ月程度延長される可能性があるとの指摘も見られるようになってきている。このような状況から7月20日の期限までに両者が最終合意に至る可能性もそれほど高くないと考えられることから、この面でも原油価格を大幅に押し下げる圧力として作用する可能性は低く、むしろこれも原油価格を下支えする方向で作用すると考えられる。 リビアについては、2013年7月下旬頃から部族による抗議行動のため封鎖されていたエス・シデル及びラス・ラヌフの両石油ターミナルについて部族から政府へと明け渡しが行われ、7月6日には両ターミナルにおける不可抗力条項の適用が解除された。また南西部においても抗議活動の影響で停止していGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 17 ? スエル・シャララ油田及びエル・フィール油田も操業を再開しつつある(このため、同国の原油生産量は日量47万バレルに到達したと7月13日にNOCは明らかにしており、これはNOCが5月29日に発表した同15.5万バレルの3倍強となっている)。このようなことから、リビアでの石油供給途絶に対する市場の懸念も低下してきているが、従来から同国では抗議行動が終結しても石油生産及び出荷関連施設の操業が順調に再開されないことが繰り返されてきたことから、市場関係者による、同国の原油生産(及び輸出)に対する信頼感が著しく低下してしまっている。また、現時点においては、同国ではマイティグ首相(5月25日に議会により選出されたが、その選出方法につき6月9日に同国最高裁判所が違憲である旨の判断を下している)の他に、3月11日に議会により解任されたゼイダン前首相の代行として指名されたサニ首相代行(前国防相)も事実上首相として行動するなど、同国中央政府の権限体制が分裂気味となっていることもあり、同国での各部族に対する統制が確保できない(7月13日にも同国トリポリの空港で大規模な衝突が発生している)結果、抗議活動が再発し油田の生産が影響を受けないとも限らない。さらに、東部においては、石油ターミナルの封鎖に伴い長期間に渡り石油ターミナルに原油を供給する油田の生産活動も停止していたことから、メンテナンス等の関係から油田の生産再開と増産が円滑に行うことができるかどうかについても不透明である(増産までには数ヶ月を要する恐れがあるとの見方もある)。このため、実際に石油ターミナルの操業が再開され、原油の船積みと輸出が実施され始め、それに伴い同国の原油生産が増加、かつそれらが相当期間持続し、同国の地政学的リスクが相当程度低下したと市場が確信を持つようになるまでは、原油相場に持続的かつ相当程度に下方圧力を加えるといった展開にはなりにくいのではないかと考えられる(7月12日には同国東部にあるブレガ(Brega)石油ターミナル(原油出荷能力日量11万バレル)が抗議行動により閉鎖された旨NOCが発表するなど、依然として同国の石油生産・出荷関連施設の操業状態は不安定であることが覗われる)。 米国での経済指標類や米国金融当局要人による発言(7月15~16日にはイエレンFRB議長が米国上院銀行委員会及び下院金融サービス委員会で証言を行う予定ある)については、景気回復による石油需要増加期待が原油相場に上方圧力を加える反面、金利引き上げ等の金融引き締めに伴う余剰資金減少観測が原油相場に下方圧力を加えることから、引き続き価格に対して攪乱要因的に作用するものの、上下傾向を形成するまでには至らないであろうと考えられる。また、既に米国では7月8日夕方のアルコアから2014年4~6月期の企業業績が発表になっているが、この業績についても同国の株式相場に影響を与えることなどを通じて原油相場を変動させることもありうる。他方、中国での指標類については、6月の同国輸出額が前年同月比で7.2%の伸びと市場の事前予想(同10.4~10.6%の増加)を下回るなど、Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 18 ? ッ国経済が順調に回復しているという印象を市場に与える状況ではないが、一時のように輸出額が前年同月を割り込むという状態でもなくなっているなど安定化しつつある兆しも見えている他、さらなる中国経済減速が明らかになれば同国政府が景気刺激策を実施するであろうとの期待も市場に発生していることから、今後当面発表される中国の経済指標類に関しては、経済の改善を示唆するものであれば、原油相場に対して上方圧力を加える反面、経済の減速を示唆するものであっても、原油相場の下落幅は限定される可能性があるものと考えられる。 米国では、引き続き夏場のガソリン需要期であるが、既に7月4~6日の独立記念日(インディペンデンス・デー)の連休(この時期が最もガソリン需要が盛り上がると言われているが、今年はこの期間に米国北東部にハリケーン「アーサー」が通過したこともあり、米国民による自動車旅行の取り消しに伴いガソリン需要が影響を受けるとの懸念が市場に発生している)を過ぎており、7月後半頃には夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期も峠を越え始めるとともに、製油所においても秋場のメンテナンス作業実施と原油精製処理量の低下が視野に入ってくることにより、原油の購入が不活発になってき始めることもあり、市場での石油需給の引き締まり感は徐々に後退していくと見られることから、この面でガソリン及び原油相場には下方圧力が加わりやすくなっていくと考えられる。 また、大西洋圏では既にハリケーン等の暴風雨シーズンに突入している(暴風雨シーズンは例年6月1日~11月30日である)。ハリケーン等の暴風雨は、進路やその勢力によっては、米国メキシコ湾沖合の油田関連施設に影響を与えたり、また、湾岸地域の石油受入港湾施設や製油所の活動に支障を与えたり(実際に製油所が冠水し操業が停止することもあるが、そうでなくても周辺の送電網を切断することにより、製油所への電力供給が停止することを通じて操業が停止するといった事態が想定される)、さらには、メキシコの沖合油田操業活動や原油輸出港の操業等が停止することにより米国での原油輸入に影響を与えたりする(米国メキシコ湾岸地域はメキシコから日量80万バレル超程度(2013年)の原油を輸入している)。他方、米国北東部にハリケーン等の暴風雨が進むようだと、当該地域での交通インフラが麻痺することにより、ガソリンや軽油需要に負の影響を与える恐れもある。現時点で予測機関から発表されている予測では、2014年の大西洋圏でのハリケーンシーズンは平年よりも不活発な暴風雨の発生が予想されていることもあり、この面では必ずしも市場を神経質にするというものではない。それでも、このような予報に反してハリケーン等の活動が活発化する場合もありうることから、今後のハリケーン等の実際の発生状況やその進路、そしてその予報等に留意すべきであろう。 全体としては、米国の夏場のガソリン需要期が峠を越え始めることに伴う、季節的な石油需給の緩和Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 19 ? エで原油相場に下方圧力が加わりやすくなるものの、イラクやリビア等を巡る地政学的リスク要因に対する市場の懸念が残ることにより、原油相場を下支えする格好となりやすいことから、少なくとも当面は、原油相場の下落があったとしても較的緩やかなものになる可能性があると考えられ、また現在存在する政情不安要因を含め、地政学的リスク要因を巡り市場における石油供給途絶懸念を高める事態が発生すれば、原油相場に上方圧力が加わるといった展開もありえよう。 米国では、冬場の暖房シーズンに伴う天然ガス需要期が終了し、不需要期に突入した。天然ガス価格は2014年2月24日には100万Btu当たり6.5ドル付近にまで上昇したものの、その後6月下旬までは概ね4ドル台後半で推移した(図17参照)こともあり、天然ガスの生産は2011年の時に見られたような顕著な増加を示したというわけではないものの、それでも緩やかには増加した(図18参照)(これについては、米国でのテキサス、ルイジアナ、ニューメキシコ、ワイオミング及びキシコ湾沖合を除いた地域で生産が伸びていることから、天然ガス輸送パイプライン等のインフラが整備されつつある同国北東部のマーセラス・シェール鉱床を中心としたところでのシェールガス生産増加が寄与しているものと推測される)。一方で、米国では2014年4~6月は概ね平年並みの気温となった(但し5月は一部地域で気温が低下する日が見られたため、民生用(つまり暖房用)天然ガス需要が増加した可能性はある)こともあり、発電量が前年とほぼ同水準で推移したことからガス火力発電所の稼働が上昇しなかった他、同国の天然ガス価格は発電部門における石炭コストとほぼ互角(図19参照)、という状態であったことから、発電部門では石炭から天然ガスへの燃料転換は促進されなかった(図20参照)こともあり、需要の伸びも限定的であった(図21参照)。このようなことから、同国での天然ガス需給は緩和する方向に向かい(図22参照)、2014年5月9日から6月27日にかけては同国の地下貯蔵量は8週間連続前週比で1,000立方フィート以上の増加を示した(これは1993年末以降の同国週間統計史上最長のものである)。このようなこともあり、一時は5年平均比を約54.7%下回っていた同国の天然ガス地下貯蔵量は、7月4日の時点では27.6%下回る状況にまで改善してきている他、2014年の大西洋圏でのハリケーンシーズンが平年に比べて不活発であるとの予報が発表されていることもあり、米国メキシコ湾岸等での当該時期における天然ガス供給途絶の可能性に対する不安感も緩和してきていることから、市場での天然ガス需給逼迫懸念も後退、6月下旬にかけ100万Btu当たり概ね4ドル台後半で推移していた天然ガス価格は、6月下旬以降は下落傾向となり、7月10日前後には同4.1ドル台となっている。ただ、天然ガス価格の下落が継続Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 20 ? . 世界天然ガス市場動向 4キれば、発電部門において石炭から天然ガスへの燃料転換が発生する可能性が高まる他、米国では7~8月は夏場の冷房のための電力需要を賄うために発電部門での天然ガス需要が堅調となることが予想され、その結果地下貯蔵量の増加度合いが減速する恐れがあることから、EIAは、いわゆる同国での天然ガスの地下貯蔵量増加の終了時期である10月末(つまり冬場の暖房シーズンの開始直前)時点での地下貯蔵量を3.43兆立方フィートと2005年10月末(この時は3.19兆立方フィート)以来の低水準になると見込んでいることもあり、同国の天然ガス価格のさらなる下落余地は限られる恐れがあるので注意が必要であろう。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 21 ? lobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 22 ? 一方、欧州では、暖冬であったこともあり、2013~14年の冬場の暖房需要期終盤には、前年同期の倍程度の天然ガス在庫水準を確保できていた。また、その後の春場の気候も概ね平年並みであり暖房向け天然ガス需要が抑制されたこと、米国では天然ガス価格が発電部門における石炭コストを冬場に超過する場面も見られたものの、その状況は持続せず、総じて互角の水準となっていたことから、同国発電部門での天然ガスから石炭への燃料転換もそれほど進まなかったと見られることにより、2012年のように天然ガス価格が石炭コストを大幅に下回った時に比べれば勢いは鈍化しているものの、引き続き米国から欧州へ石炭輸出がそれなりに行われたと推測されることもあり、石油製品価格に連動する形で売買される天然ガスの取引形態が色濃く残っている欧州では、炭素排出権価格を併せても石炭のほうが天然ガスよりも安価になっていたことから、発電部門においては、石炭が利用され続けた(図23参照)こともあり、当該地域での天然ガス需要は不振であった(図24参照)。さらに、ウクライナがロシアに対して負う天然Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 23 ? Kス支払代金の支払い債務につき、6月16日の支払い期限までに支払いを実施しなかったことから、同日を以てロシアからウクライナへの天然ガス供給は停止したものの、ロシアからウクライナを経由して欧州に向かう天然ガス供給には影響は出ていない他、アジア諸国でLNGスポット価格が下落したこと(後述)により、欧州からアジアに向けたLNGの輸出に対するインセンティブが機能しにくくなったことに加え、カタールから英国にLNGが輸出された(図25参照)(アジア地域でのLNG価格を維持するため、と見る向きもある)。このようなことから、欧州での天然ガス貯蔵は順調に増加する(図26及び図27参照)とともに、市場では需給の緩和感が醸成されたことから、例えば4月の時点では100万Btu当たり概ね8ドル台であったと推定される英国の天然ガス価格は下落基調となり、7月中旬には同6ドルに迫ると推定される水準となるなど、2010年8月下旬以来の安値となっている。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 24 ? 他方、アジアについては、2月初旬にはLNGのスポット価格が20ドルに迫り、活発な売買が行われてGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 25 ? 「ることが示唆された(1月23日に2~4月の日本の気温が全国的に平年並みか平年を下回るとの予報が発表されたこともあり、LNG在庫の再充填のための調達が活発化したことに加え、ブラジルでは渇水のため水力発電所の稼働が低下、その代替として天然ガス火力発電所向けLNG需要が増加したことが一因であると考えられる)。しかしその結果アジア諸国では天然ガスの調達が進んだ他、5月25日にはパプア・ニューギニアのPNG LNGプロジェクトからのスポットLNGの供給が当初の10月から繰り上げて開始された(9~10月の長期契約顧客向け供給開始まではスポットLNGとして供給すると言われている)。また、韓国では原子力発電所の再稼働でガス火力発電所向け天然ガス需要が低下したことから、LNGについて長期契約分を含めて引き取りを抑制する努力をし始めた一方で、日本においては4~5月の気温が平年よりも高めに推移したこともあり暖房向け需要が伸びなかったうえ、4月25日には、6月にも南米ペルー沖で「エルニーニョ現象」(海面の水温が上昇する状態が続く現象)が発生することに伴い、日本では北日本で冷夏になる恐れがある他、他の地域では平年並みの気温になる旨の5~7月の予報が発表されたことにより、冷房向け電力需要の大幅の伸びが発生するとの観測も後退したことに加え、ブラジルでは降雨による貯水量の上昇に伴い水力発電の稼働低下に対する懸念が緩和したことから、消費国におけるLNGの購入意欲が減退した。このようなことから、アジア地域でのLNGスポット価格は下落傾向となり、7月上旬には100万Btu当たり11ドルを割り込むなど、2011年3月中旬以来の低水準となっている。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 26 ?
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2014/07/14 野神 隆之
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