中国の天然ガス輸入を巡る動き
レポートID | 1004478 |
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作成日 | 2014-07-18 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-03-05 19:32:42 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
分野 | 天然ガス・LNG基礎情報 |
著者 | 竹原 美佳 |
著者直接入力 | |
年度 | 2014 |
Vol | 0 |
No | 0 |
ページ数 | |
抽出データ | 更新日:2014/7/18 調査部:竹原 美佳 中国の天然ガス輸入を巡る動き ? IEAは中期ガスマーケットレポート(2013~2019年)において、①中国は世界のガス需要を牽引する。②特に輸送部門では天然ガス自動車(NGV)追加需要の3分の1を占め、2015年までに世界最大のNGV市場になる。③国産ガス生産は伸びるが追加需要の半分しかまかなえず、当面輸入が拡大する。という見通しを示した。 ? 中央アジアパイプラインは6月に3本目(C線)が稼働、年内着工予定のD線を含む全面稼働で輸送能力は800億m3/年となる。さらにロシアからのパイプライン380億m3/年が加わることになる。LNGの受入能力は2016年頃に5, 000万トン/年(約690億m3)に達する見通し。さらに複数の計画があり全て建設されると受入能力は9,000万トン/年(1,200億m3)になるが、LNG供給は地域の経済状況や購買力に左右され、受入が進まない基地が出現している。 ? ロシアとの天然ガス合意により中国はロシアからの天然ガス供給と付随するインフラ整備計画をエネルギー長期計画に盛り込むことが可能となった。また大気汚染対策のための天然ガス転換政策を推進することが可能となった。一方、パイプラインの比重が高まることにより調達価格はパイプラインガス価格(+主要市場向け輸送費)に収れんされ、今後の対中ガスマーケティングや中国国内のガス輸入インフラ投資に影響が生じる可能性がある。 PetroChinaは国産ガス、パイプラインが主体でありLNGをバックアップととらえており、LNGについては調達の安定性を重視しているように見える。一方CNOOCは国産ガスの比率が高いわけではなく、LNG事業について上流事業を行うCNOOC Ltdとは別で親会社傘下企業による独立採算である。国内の天然ガス市場を巡る競争が激化する中、価格や柔軟性を一層追求し、PetroChinaによるパイプラインの南部ガス市場進出に備えているように見える。 ? . 中国の天然ガス需給 1 エネルギー消費国のイメージが強い中国だが実は世界6位の産ガス国であることをご存じだろうか。天然ガスの生産量は2006年の505億m3(4.9Bcfd)から2013年には1,169億m3(11Bcfd)に増えた1。生産だけではなく、確認埋蔵量も2006年の1.7兆m3(60Tcf)から2013年の3.3兆m3(115.6Tcf)へと伸びている。しかし消費は2006年の468億m3から3.5倍の1,616億m3(15.6Bcfd)へと大きく伸び、2008年にドイツを抜き、2009年に日本を抜き、米国、ロシアに次ぐ世界3位の消費国となった。2006年から2013年にかけて生産は年率9%で伸びているが、消費の伸びは14%であり、需給ギャップは拡大する一方である(図1)。2006年にLNGの輸入を開始し2007年に天然ガスの純輸入国となった。2010年にはパイプライGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? 唐ノよる輸入も開始した。2011年に台湾を抜き、日韓に次ぐLNG輸入国となった。2013年の世界のLNG輸入に占めるシェアは7%である(図2)。 2013年にはパイプラインにより273億m3、LNGにより245億m3 (約1, 800万トン)、合計518億m3(5Bcfd)を輸入した。パイプラインによる輸入が53.7%でLNGの輸入をやや上回っている。香港地域への輸出を引いた純輸入量は491億m3 (4.7Bcfd)で輸入比率は約3割である。 図 1:中国の天然ガス需給推移(2006~2013年) 図 2:世界の天然ガス消費とLNG貿易(2013年) BP Statistical Review of World Energy 2014にもとづき作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? 0%5%10%15%20%25%30%(100)1003005007009001,1001,3001,5001,7001,9002006年2008年2010年2012年2014年1-3月国産ガスLNG輸入パイプラインガス輸出消費成長(%)(億m3/年)新華社China OGPにもとづき作成パイプライン(国際取引)21%LNG取引10%国内取引・自家消費69%世界の天然ガス消費(2013年)天然ガス消費(2013年)3兆3476億m3日本37%韓国17%中国7%台湾5%欧州・ユーラシア16%米国1%その他17%世界のLNG貿易(2013年)世界のLNG貿易(2013年)3,253億m3? 主な天然ガス輸入事業者:国有石油企業3社 中国における天然ガスの主な輸入事業者は国有石油企業3社(PetroChina、CNOOC、Sinopec)である。PetroChinaは2013年の中国のLNG輸入の3割、パイプラインガス輸入のほぼ100%を占める。CNOOCはLNG輸入の7割を占める(図3)。Sinopecは間もなく山東省青島の受け入れ基地が完成しLNGの輸入を開始する予定である。この他2013年には民間の都市ガス事業者広東九豊(Jovo)がマレーシアからLNGを数カーゴ輸入した模様である。同社は広東省東莞に小型の受入基地(受入能力100万トン/年)を保有しているが、断続的な稼働状態の模様である。また新疆広匯はカザフスタン東部のZaysanガス田の上流権益を保有しており2、中央アジアパイプライン(後述)ではなく、Zaysanガス田から新疆アルタイ市吉木乃(Jeminay)の自社小型液化プラント(液化能力5万トン/年)向けに建設した118.5kmのパイプラインにより天然ガスを約1.5億m3輸入した。 パイプラインとLNGを合わせた最大の輸入相手先はトルクメニスタンで輸入の47%を占め、ついでカタールが輸入全体の18%を占めている。パイプラインによる輸入はトルクメニスタン、ウズベキスタン、カザフスタン、ミャンマーの四カ国から行っている。LNGはカタールの他、豪州、インドネシア、マレーシアのGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? 最大の輸入相手国:パイプラインはトルクメニスタン、LNGはカタール ?図 3:中国の主な天然ガス輸入事業者(2013年生産比率、輸入、契約) 企業年報、各種資料にもとづき作成 PetroChina64%Sinopec16%CNOOC6%外資等14%天然ガス生産02004006008001,0001,200PetroChinaSinopecCNOOC国産ガスLNGパイプライン億m3億m3gルクニスタンは2010年1月に中国向けの輸出を開始した。2013年に約623億m3(6Bcfd)を生産し、そのうち6割を輸出した。中国向けは輸出の6割(約(240億m3)を占めた。中国の他ロシア向けの輸出が24%、イラン向けが11%である。 中国がトルクメニスタンから輸入する天然ガスの2割はPetroChina(CNPC)が同国で保有する上流権益のガスである。CNPCは2007年にトルクメニスタンのアムダリヤ右岸Bagtiyalyk鉱区でPS契約を締結し、2010年に生産を開始した。CNPCによると2013年11月時点の同鉱区における天然ガス処理プラントの能力は65億m3/年で、2013年通年で52億m3/年を中国向けに輸送した3。2014年4月には第2処理プラントが完成し、処理能力は90億m3/年となった模様である4。 ウズベキスタンは2012年9月に中国向けの輸出を開始した。2013年に約552億m3(5.3Bcfd)を生産し、そのうち2割程度を輸出した。中国向けは輸出の3割(約29億m3)である。 トルクメニスタンやウズベキスタンの天然ガスは、トルクメニスタンからウズベキスタンとカザフスタンを経て中国新疆コルガスまで総延長約1,800kmの中央アジアパイプラインにより運ばれる。同パイプラインはCNPCが通過各国とのジョイントベンチャーにより建設した。2009年末に1本目(A線)が、2010年にGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? 1)中央アジアからの天然ガス輸入:増強中 (図 4:中国の国別天然ガス輸入(2013年) China LNG Weekly他にもとづき作成 LNGについて長期契約を締結している。 豪州9%マレーシア7%インドネシア6%カタール18%トルクメニスタン47%ウズベキスタン6%ミャンマー0.4%カザフスタン0.3%ポートフォリオ・スポット7%本目(B線)が稼働し、輸送能力は300億m3/年となった。2014年6月に3本目(C線)が稼働し、新疆にガスが届いた。C線はA・B線に並行し建設されており、当初の輸送能力は70億m3/年だが2015年までに250億m3/年とする計画である。全面稼働後、中央アジアから中国向けのパイプライン輸送能力は550億m3/年となる。またCNPCによると2014年中に4本目(D線)を着工予定である。輸送能力は250億m3/年でルートはこれまでと異なりカザフスタンを経由せずウズベキスタンからタジキスタン、キルギスタンを経て中国に入る。CNPCは2020年までに4本を全面稼働させ輸送能力を800億m3/年とする計画である。 中国はトルクメニスタンと650億m3/年、ウズベキスタンと100億m3/年、カザフスタンと50億m3/年、合計800億m3/年の売買契約を締結している。トルクメニスタンからの将来の主要供給源はGalkynyshガス田である。1期(100億m3/年)は2013年9月に生産を開始した。2期(300億m3/年)は2013年9月にCNPCがEPCを受注しており2018年末に完成予定である。同ガス田開発に対し中国国家開発銀行が融資を行っており、1期と2期のガスは主に中国に向かうものと思われる。 図 5:トルクメニスタンの天然ガス輸出ルート (「20XX年、トルクメニスタンの天然ガスは海を越えて輸出されているだろうか?―トルクメニスタンの最近の情勢と内陸に位置する豊富な天然ガス資源の輸出方法についての考察―」石油天然ガスレビュー 2014年1月) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? ミャンマーは2013年9月に中国向けの輸出を開始した。2013年に約131億m3(1.3Bcfd)を生産し、そのうち7割(約85億m3)をタイに輸出した。中国向けは2億 m3にとどまった。主要供給源はミャンマー沖合のShweガス田で、ミャンマーのチャウッピューから雲南省瑞麗まで793kmのミャンマー~中国パイプラインにより運ばれる。同パイプラインはCNPCがミャンマーとのジョイントベンチャーにより建設した。輸送能力は120億m3/年である。ミャンマーと中国は2008年に50億m3/年の売買契約を締結している。輸送能力と契約量のギャップは大きな謎である。2013年は伸び悩んだが、2014年1~5月の輸入量2)ミャンマーからの天然ガス:増強中 (は9億m3に伸びた。 中国は2013年に245億m3(約1,800万トン)のLNGを輸入した。2012年の1, 470万トン/年から大きく伸びている。2013年後半に3基地(広東珠海、河北唐山、天津FSRU計920万トン/年)が相次いで稼働した。10基地(3,470万トン/年)が稼働中である。建設中の基地は6基地(計1,600万トン/年)あり、Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? 図 6:ミャンマーから中国向けの天然ガスパイプラインルート 各種情報にもとづき作成 3)LNG:増強中、経済状況や購買力による地域差鮮明に (C南洋浦基地(計500万トン/年)が8月に、年内に山東青島基地が稼働予定である。2016年頃に中国のLNG受入能力は5, 070万トン/年(約690億m3)に達する見通しである。売買契約は4,330万トン/年で合意段階のものが860万トン/年、計5,190万トン(約700億m3)ある。 図 7:中国の主な天然ガスパイプライン、LNG受入基地 各種情報にもとづき作成 の他複数のLNG受入基地建設計画があり、全て実現すると受入能力は9,000万トン/年(1,220億m3)に達する。しかしLNG供給は地域の経済状況や購買力に左右される。図8の通り南部(特に広東省)におけるLNGの優位性が際立つ。南部の広東省は元々資源供給地から距離があり、また輸入石油製品を利用していたため高価な輸入LNGへの適応も比較的スムーズに進んだ。発電や産業用の需要が高く、稼働中の2基地(大鵬、珠海)に加え2基地(迭福、掲陽)が建設中である。環境問題で遅れているがPetroChinaも深?で受け入れ基地を計画している。東部においても江蘇省の基地は調達価格が高いにGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? こ 烽ゥかわらず輸入開始から2年で基地受入能力の7割に達した。しかし同じ東部でも浙江省の基地は丸2年が経過したが江蘇に比べ伸び悩んでいる。さらに厳しいのは2013年11月に稼働した北部天津のFSRUである。11月21日のコミッショニングカーゴ受け入れを含め2カーゴしか受け入れていない。コストが高く事業者のCNOOCは天津市政府に補助金を申請している模様である。 IEAは2014年6月に中期ガスマーケットレポート(“Medium-Term Gas Market Report 2014”以下、MTGMR2014)を発表した。需要について、2013~2019年の世界のガス需要増加分の3割を占め、世界のガス需要を牽引すると評価した。また大気汚染対策などにより産業、発電、輸送部門の需要が伸び、2019年までの5年間でほぼ倍増の3, 150億m3に達するという見通しを示した。特に輸送部門では、中国は天然ガス自動車(NGV)追加需要の3分の1を占め2015年までに世界最大のNGV市場になると評価した。供給については世界有数の産ガス国であり在来型の発見や天然ガス価格引き上げを受けて2019年までに65%増え1,930 億m3に伸びる。しかし国産ガスは新規需要の半分しかまかなえず、当面輸入が拡大するという見通しを示した。シェールガスについては本格的な開発は2020年以降としており、Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? .IEA中期ガスマーケットレポート:高まる中国の存在感 2図 8:省別LNG受入推移(2009~2014年1-5月) China LNG Weekly他にもとづき作成 0100200300400500600700広東福建上海江蘇浙江遼寧河北天津2009年2010年2011年2012年2013年2014年1-5月万t/年ワた石炭SNG(石炭ガス化+メタネーションによる代替天然ガス)について地方振興と低品位炭の活用という目的から複数の計画が立ち上がっている一方、環境への影響(温室効果ガス排出や水の問題)があると言及している。 2014年5月21日、ついにロシアと中国が天然ガス売買契約を締結した。契約量は380億m3/年(LNG約2,800万トン)で段階的に増やす。契約期間は30年である。供給開始は2018年となっているが、実際はチャヤンダガス田の生産開始後の2019年以降にずれこむと思われる。 主要供給源は東シベリアのチャヤンダガス田(埋蔵量約1.5兆m3≒50Tcf)である。価格は未公表だが石油価格連動で、国境価格が350~380ドル/千m3(9~10$/MMBtu) とされる。主要供給市場は中国東北部、北京・天津・河北、揚子江デルタである。北京や上海向けにはタリフ2~3$/MMBtuが上乗せされる。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? 図 9:IEAによる中国の天然ガス需給シナリオ IEA (MTGMR2014, WEO2013)にもとづき作成 .ロシアとの天然ガス契約締結の意義と影響 3(1)契約の概要 01000200030004000500060002013年2015年2017年2019年2025年2030年2035年生産需要億m3/年IEAMTGMR2014IEA WEO2013ロシアの天然ガスはチャヤンダガス田から新たに建設する“Power of Siberia”パイプラインにより供給される。パイプラインのルートはチャヤンダガス田から東に向かいブラゴヴェシチェンスクで中国国境(黒竜江省黒河)に南下、中国東北部を経て北京・天津・河北地域ならびに上海等揚子江デルタに向かう。まだルート詳細は固まっていない模様だが、中央アジアパイプラインと同様ロシアから中国国境まで2,000km前後、中国国内についても2,000km程度のパイプラインを建設する必要がある。 今回の合意により中国は次の五か年計画から晴れてロシアからの天然ガス供給と付随するインフラ整備計画を盛り込むことができるようになった。また大気汚染対策のための天然ガス転換政策を推進することも可能となった。中国が2013年9月に公表した「大気汚染防止行動計画」 では石炭の一次エネルギーに占める比率を2017年までに65%に抑制するという目標が設定されている。小規模ボイラー(産業・家庭)の天然ガスボイラーへの転換や、老朽化した石炭火力発電プラントの天然ガス火力(CCGT)への転換が奨励されている。特に三大都市圏(北京、揚子江デルタ、珠江デルタ地域)は重点対策地域に指定Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 10 ? 図 10:Power of Siberia 中国向けルート (2) 中国における契約締結の意義 JOGMEC作成 ウれている。中国の石炭消費の5割は発電向けだが中国の電力消費は日本の約5倍あり、8割を占める安価な石炭火力の比率を短期間で下げることは不可能だ。しかし新規(追加)発電設備容量に占める石炭火力の比率はすでに減少傾向にあり、緩やかなリプレースが進むと思われる。IEAなどによると中国の天然ガス需要は2035年には現在の3倍の5, 400億m3を超える見通しであり、中国にとり中央アジアとロシアの天然ガスはたとえシェールガスの開発が進んだとしても長期的に不可欠な供給源であると思われる。 (3)露中天然ガス合意による影響 :①対中マーケティングへの影響 2013年はパイプラインの輸入比率が53%、LNGの輸入は47%であったが、現在の長期契約ベースに今回のロシアとの契約量を加えると、パイプラインの輸入比率が68%、LNGの輸入は32%となり、契約ベースでパイプラインガスの比率が大きく高まる。ロシアの契約量は全体の2割を占める。 現在中国の天然ガス調達価格は主に5種類に分かれている。2013年の実績では、2008年以前に締結 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 11 ? 図 11:2013年の天然ガス輸入実績と現在の長期契約量(ロシアを追加) 各種情報にもとづき作成 02004006008001,0001,2001,4001,6001,8002,0002013年輸入長期契約ロシアカザフスタンミャンマーウズベキスタントルクメニスタンポートフォリオ・スポットロシア(LNG)カナダパプアニューギニアカタールマレーシアインドネシア豪州億m3オたLNG契約が2割強(平均5ドル/MMBtu) 、2008年以降に締結したLNG契約が2割弱(平均17.8ドル/MMBtu)、ポートフォリオ・スポットLNGが約1割(平均16ドル/MMBtu)、中央アジアパイプラインの輸入が5割(平均9.5ドル/MMBtu)、ミャンマーからのパイプラインガスが少量(約12ドル/MMBtu)である。しかし2018年以降ロシアからの輸入380億m3が加わると、10ドル/MMBtu前後の中央アジア・ロシアからの供給が6割を超える。ただしこの10ドル/MMBtuは国境渡しの価格であり、主要市場である北京や東部上海への輸送価格(タリフ)を2~3ドル/MMBtu追加する必要があり、今後中国の天然ガス調達価格はロシア・中央アジアの契約価格プラスタリフ(2013年実績では12~13ドル/MMBtu)に収れんされるのではないか。 図 12:天然ガス輸入実績・価格、2020年頃の長期契約 各種情報にもとづき作成 価格の収れんはシティゲート価格によってもたらされるかもしれない。2013年の7月に中国は天然ガス価格制度を見直した。国産天然ガスと輸入パイプラインガスの産業向け(非民生)卸価格を15%引き上げた。また各地域のシティゲート価格について前年の消費量を上回る増加分(incremental demand)について“追加価格”を設定した。ロシアのガスの主要市場である北京、天津、河北地域の追加価格は13.5ドルGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 12 ? 0510152005001,0001,500LNG契約(~08年)LNG契約(08年~)LNGポートフォリオ露・中央アジアミャンマー2013年輸入2020年契約輸入価格億m3$/MMBtu国境渡し価格主要市場向け+タリフ2~3ドル^MMBtu、揚子江デルタの追加価格は14.3ドル/MMBtuである(表1)。タリフを加え12~13ドル/MMBtuのロシアのガスは何とかなるが、これを上回る代替源は競争力が低下し、値下げを余儀なくされ、その結果シティゲート価格から割り戻される輸入価格に落ち着く可能性がある。 カタールのMohamed al-Sadaエネルギー相は6月に訪中し国家発展改革委員会徐紹史(Xu Shaoshi)主任などとエネルギーや産業について協議した模様である。露中合意の影響とは言い切れないが、 2009年にCNOOCとPetroChinaがカタールとHoAを結んだが価格の高さを理由に成立しておらず、今回の訪中で交渉再開を働きかけたと見られている5。 表 1:ロシアからの輸入ガス主要市場のシティゲート価格 図 13:中国の天然ガス価格改革(2011年12月、2013年7月) 国家発展改革委員会通知等にもとづき作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 13 ? 前年消費追加北京、天津、河北9.713.5揚子江デルタ(上海)10.514.3珠江デルタ(広東)11.814.3Aガス輸入インフラへの影響 前述の通り中国には複数のLNG受入基地建設計画があり、全て実現すると受入能力は9,000万トン/年(1,220億m3)に達する見通しである。しかしロシアからの天然ガス輸入により東北、北京・天津・河北、揚子江デルタなど揚子江以北のLNG受入基地が影響を受ける可能性がある。LNG受入基地は拡張計画が進まず、また米国のような低稼働率の基地が出てくる可能性がある。ただし、天然ガスの需給ギャップが拡大する中国において、経済的に見合わない再輸出を行う可能性は低い。 .LNG契約のトレンド 4最近中国は複数のLNG売買契約を締結した(表2参照)。2013年5月にCNOOCはBGと供給源を特定しないポートフォリオLNG売買契約500万トン/年(20年間)を締結した。CNOOCによると本契約は油価とHenry Hub価格のハイブリッドである6。 2014年3月、TotalとCNOOCは習近平主席の欧州訪問中にLNGのcooperation agreement を締結、現行の売買契約(100万トン/年)に加え100万トン/年の追加契約ならびにLNGバリューチェーンにおける協力で合意した。供給源はIchtysとYamal LNGとされる7。 2014年4月、SinopecはPetronas(Progress Energy)が計画中のカナダPacific Northwest LNG projectの権益15%取得で合意。権益見合いの生産量(LNG180万/t)を少なくとも20年引き取る他Petronasと300万t/年のLNG購入で合意。また、Sinopecは権益15%のうち5%を発電大手華電にファームアウトした。華電は中国東部沿海にLNG受入基地を建設し発電向けに受け入れることで複数の沿海部地方政府と交渉中とされる。 2014年5月、CNPCと露Novatek、Yamalから300万トン/年のLNG売買契約を締結した。油価連動とされるが詳細は不明である。 2014年6月、CNOOCはBPとLNGの長期供給に関する基本合意書(HoA)を締結した。BPのLNGポートフォリオにより、2019年から20年間最大約150万トン/年のLNGを供給する8。BPのポートフォリオソースとして米Freeport LNG、インドネシアタングー(第3トレイン)、豪Browse、トリニダード・トバゴなどがある。複数メディアによると、取引額は120億ポンド(約2兆1,000億円)に相当する。価格条件について非公表だが、ヘンリーハブベース+固定要素であり、BPの投資や輸送コスト、マージンを十分にまかなえる条件という見方がある一方で12ドル/MMBtu以下のアジアにおける割安な契約という見方もある。契約の詳細は当事者にしかわからない上、諸条件が変動し得ることに留意する必要があるが、もし現Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 14 ? ンの条件で12ドル/MMBtu以下の契約であれば主要市場でロシアのガスに競合できる価格と言える。 表 2:最近締結したLNG契約 プレスリリース他各種情報にもとづき作成 中国におけるLNG契約(現在の契約ベース)で5割を占めるCNOOCは上流権益の取得のみならずポートフォリオやハイブリッド契約を志向しているようにみえる。PetroChinaは国産ガス、パイプラインが主体でありLNGをバックアップととらえており、LNGについては調達の安定性を重視しているように見える。一方CNOOCは国産ガスの比率が高いわけではなく、LNG事業について上流事業を行うCNOOC Ltdとは別で親会社傘下企業CNOOC Gas & Powerによる独立採算である(PetroChinaのLNG受入基地の運営は同社傘下の崑崙能源が行っている)。国内の天然ガス市場を巡る競争が激化する中、輸入LNGが主体のCNOOCは価格や柔軟性を一層追求し、PetroChinaによるパイプラインの南部ガス市場進出に備えているのではないか。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 15 ? 買い手売り手契約量(万t)備考2013年5月CNOOCBGポートフォリオ500油価・Henry Hub連動2014年3月CNOOCTotalポートフォリオ増量100→2002014年4月SINOPECPacific Northwest LNG(Petronas)最大300(HoA)2014年5月CNPCYamalLNG3002014年6月CNOOCBPポートフォリオ最大150油価+Henry Hub連動? 1 新華社China OGP 2 中国:輸入LNGインフラ整備の現状、輸入LNG需要変動要件ならびにLNG先物・現物取引への取り組み(石油天然ガス資源情報2014年1月) 3 CNPC 2013/12/19 4 CNPC 2014/4/22 5 IOD 2014/6/4、The Peninsula 14/6/25 6 http://www.cnooc.com.cn/data/html/chinese/channel_369.html 7 ICIS 2014/4/3 8 PON・IOD 14/6/20、DGR14/6/18他 図 14:事業者別天然ガス輸入(2013年輸入実績、長期契約締結ベース) 各種情報にもとづき作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 16 ? 02004006008001,0001,2001,400LNG(13年輸入)パイプライン(13年輸入)LNG(長期契約)パイプライン(契約)PetroChinaSinopecCNOOC億m3 |
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