ページ番号1004483 更新日 平成30年2月16日

原油市場他:地政学的リスク要因に対する市場の懸念後退等で下落する原油価格

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レポートID 1004483
作成日 2014-08-18 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
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年度 2014
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日:2014/8/17 調査部:野神 隆之 原油市場他:地政学的リスク要因に対する市場の懸念後退等で下落する原油価格 (IEA、OPEC、米国DOE/EIA他) ① 米国では製油所での原油精製処理量が高水準を維持した一方で、供給が概ねそれを下回った結果原油在庫は減少傾向となったが平年幅を超過する水準は維持されている。他方、製油所での稼働上昇に伴いガソリンや留出油の生産は旺盛であったものの需要も堅調であった結果、ガソリン在庫は安定的に推移、留出油在庫は緩やかに増加した結果、8月上旬としてはガソリン在庫は平年幅の上限付近に、留出油在庫は平年幅の下方付近に、それぞれ位置する量となっている。 ② 2014年7月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国でのシェールオイル生産増加により米国で受け入れられない軽質原油が大西洋圏で余剰気味となったこともあり、欧州での在庫は増加、日本では製油所での春場のメンテナンス作業終了に併せ原油購入を活発化させたことにより若干ながら在庫は増加したものの、米国での在庫減少で相殺されたことから、OECD諸国全体では在庫は減少となったが、量としては平年幅を超過したままとなっている。製品在庫については、欧州ではほぼ同水準で推移したものの、米国では製油所での稼働上昇に伴いプロパン等の在庫が増加した他、日本においても製油所の稼働上昇とともに石油製品の生産が増加した一方で4月の消費税増税以降ガソリン需要が不振であったことに加え冬場の暖房需要期を見据え灯油在庫が積み上がり始めたこともあり、石油製品在庫が増加となったことから、OECD諸国全体では石油製品在庫は増加となったが、量としては平年幅下限付近に位置している。 ③ 2014年7月中旬から8月中旬にかけての原油市場においては、7月中旬頃までは米国でのニューヨーク商業取引所(NYMEX)WTI原油先物契約の受渡地点であるオクラホマ州クッシングでの原油在庫減少に加えウクライナ問題を巡り米国政府が対ロシア制裁を発動したことやウクライナ上空でマレーシア航空機が撃墜されたと報道されたことによりロシアと西側諸国等との対立激化に伴うロシアからの石油供給途絶の可能性に対する市場の懸念の増大により、原油価格(WTI)は1バレル当たり105ドルを目指して上昇傾向となったが、その後はイラク、リビア、ロシア、及びイスラエル/ガザを巡る地政学的リスク要因は存在していたものの、石油供給をさらに途絶させるには至っていないことにより、市場の懸念が後退し始めたことに加え、夏場のガソリン需要期が峠を越え始めたことから、この先製油所からの原油需要が低下するとの観測が市場に発生したこと等により、原油相場は総じて下落傾向となり、8月中旬には95ドル台前半に突入する場面も見られた。 ④ 米国でのガソリン需要期も9月初めには終了するため、石油不需要期と製油所のメンテナンス作業シーズン突入を控え原油購入が不活発になってくると見られることから、石油需給緩和感が市場で増大することにより、この先原油相場には下方圧力が加わりやすくなると考えられる。他方、イラク、ウクライナ、イラン、イスラエル/ガザ、リビア等、石油供給途絶懸念を市場に発生させる地政学的リスク要因は依然存在しているが、さらなる供給途絶が発生しているわけではなく、このままいくと市場の懸念はさらに後退していく可能性がある。これらを併せると、地政学的リスク要因面での急展開により市場での石油供給途絶懸念が増大するという、いわゆる原油相場の上振れリスクは内包しているものの、総じて原油相場は下落基調となりやすいと思われる。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? . 原油市場を巡るファンダメンタルズ等 2014年5月の米国ガソリン需要(確定値)は前年同月比で0.4%程度増加の日量902万バレルと速報値(同914万バレル、前年同月比1.8%程度の増加)から下方修正された(図1参照)。5月のガソリン需要(速報値)の算出の際に同国のガソリン輸出量が2014年2月~3月時点の確定値(この時のガソリン輸出量は日量39~40万バレル程度、平均すると同39万バレル程度であった)が暫定的に利用されたと見られるものの、実際の5月のガソリン輸出量(確定値)が日量49万バレルと、暫定値を日量9万バレル程度下回っている旨判明したことにより、その分を確定段階で米国内でのガソリン需要から除外した(つまり、本来輸出に計上すべき量が暫定段階では国内需要に計上されたものを最終的に輸出に振り替え直した)ことが影響していると考えられる。他方、7月の同国ガソリン需要(速報値)は日量904万バレルと前年同月比で0.2%程度の減少となっている。当初見込みでは米国経済状態の改善もあり、2014年の7月4日の米国の独立記念日(インディペンデンスデー)の連休時には前年同期比で1.9%多くの米国民が自動車等で50マイル(約80㎞)以上旅行すると予想されていたが、ちょうどその時期の前後にハリケーン「アーサー」が米国東海岸沖を通過、東海岸沿岸に降雨をもたらしたことが、米国民の行楽活動を手控えさせ、その結果ガソリンの消費が抑制されたことが、7月のガソリン需要の不振に繋がった可能性がある。他方、米国では製油所の稼働と原油精製処理量が6月27日の週以降日量1,600万バレルを超過するなど高水準を維持した(7月11日の週には精製処理量が日量1,663万バレルに到達したが、それは1982年後半以降の米国での週間統計史上最高水準であった)(図2参照)ことに伴いガソリンの生産活動も旺盛な状態を維持(図3参照)、米国のガソリン需要を賄ったことから、当該製品在庫は7月中旬から8月上旬にかけては概ね安定して推移、8月上旬時点では平年幅の上限付近に位置している(図4参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? lobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? 2014年5月の同国留出油需要(確定値)は前年同月比で4.4%程度増加の日量394万バレルと速報値である同410万バレル(前年同月比8.6%の増加)から下方修正されている(図5参照)。これはEIAが2014年2~3月時点での輸出量(確定値)をもとに算出した数値(日量90~97万バレル、平均同93万バレル)を暫定的に5月の輸出量として使用したと見られる一方で、5月の輸出量の確定値が日量117万バレルと暫定値を日量24万バレル程度上回っていたことにより、この分が国内需要(速報値)から輸出に振り向けられたと見られることによる部分が相当程度あるものと考えられるが、それでも米国での景気回復とともに物流活動が活発化していることもあり需要は比較的堅調に推移していることが示唆される。また、2014年7月の留出油需要(速報値)は日量389万バレル(前年同月比9.0%程度の増加)であったが、これについては、米国での経済回復に伴う物流部門向け軽油需要の増加が影響している可能性はあるものの、活発化したと言われる欧州等への軽油等の輸出分が速報値の段階では米国内の需要に含まれていることもありうるので、注意が必要であろう。他方、製油所での原油精製処理量が高水準になったことに伴い留出油の生産も活発化した(図6参照)ものの、需要も堅調であったことから、留出油在庫は全体としては緩やかに増加した結果、量としては7月初旬としては平年の下方付近に位置している(図7参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? 2014年5月の米国石油需要(確定値)は、石油化学工場のメンテナンス作業による稼働低下に伴い原料となるプロパン/プロピレンの需要が前年同月比で17%程度減少するなど不振であったことが影響し、Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? 坥ハ1,852万バレル(前年同月比0.2%程度の減少)となった(図8参照)一方で、プロパン/プロピレンとともにガソリンや留出油の需要が速報値から確定値に移行する際に下方修正されたこともあり、同国石油製品需要も速報値(日量1,902万バレル、前年同月比2.6%程度の増加)から確定値に移行する段階で下方修正された。また、2014年7月の米国石油需要(速報値)は日量1,960万バレルと前年同月比で2.9%程度の増加となっているが、これは、留出油需要(但し米国からの輸出相当分を含んでいる可能性がある)や「その他石油製品」が前年同月比で増加していることによるものであるが、「その他の石油製品」の需要は速報値から確定値に移行する段階で相当程度変動する場合があるので留意する必要があろう。他方、製油所での原油精製処理量が高水準を維持した一方で、米国の夏場のガソリン需要期も峠を越え始めつつあったことから、原油の輸入等の供給が低下、精製処理量を概ね下回ったことから、原油在庫は減少傾向となったが、量としては平年幅の上限を超過している状態は維持されている(図9参照)。なお、原油在庫が平年幅を超過した領域、ガソリン在庫が平年幅の上限付近、そして留出油在庫が平年幅の下方付近に、それぞれ位置していることから、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅を超過する状態となっている(図10及び11参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? 2014年7月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国での夏場のガソリン需要期がピークを迎えたことに伴う米国への輸出向けガソリン需要が欧州において発生したことで当該製品価格が上昇するとともに精製利幅が改善、当該地域での製油所の稼働が上昇したものの、その程度が限定的であった一方で、米国でのシェールオイル生産量増加に伴う同国の軽質原油Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? A入低下の影響もあり、大西洋圏で軽質原油が余剰気味となった(このようなことから、欧州の代表的原油指標であるブレントは7月8日以降終値ベースで直近での引き渡し時期(期近)の価格がより将来の引き渡し時期(期先)の価格を下回るという現象(いわゆる「コンタンゴ」)が発生している)ことから、結果として欧州での原油在庫は増加、また日本においては製油所が春場のメンテナンス作業を終了し原油精製処理量を引き上げるのに併せて原油の購入を活発化させたことにより、同国においても若干ながら原油在庫は増加したものの、米国では製油所の原油精製処理量の増加に伴い在庫が減少したことで相殺されて余りあったことから、OECD諸国全体では当該在庫は減少となったが、量としては平年幅を超過する状態は維持されている(図12参照)。他方、製品在庫については、欧州ではほぼ同水準を維持ししたものの、米国で製油所での原油精製処理が旺盛となり石油製品の生産活動が活発化した結果、プロパン等の在庫が増加した他、日本においても製油所の稼働が上昇するとともに石油製品の生産が増加したものの、4月の消費税増税以降ガソリンの需要が不振であったことに加え、冬場の暖房需要期を見据え灯油在庫が積み上がり始めたこともあり、石油製品在庫が増加したことから、OECD諸国全体でも石油製品在庫は増加となったが、量としては平年幅下限付近に位置している(図13参照)。なお、原油在庫が平年幅の上限を超過している一方で石油製品在庫が平年幅の下限付近に位置する水準となっていることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年並みの量となっている(図14参照)。また、2014年7月末時点でのOECD諸国推定石油在庫日数は57.8日と6月末の推定在庫日数である58.0日から減少している。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? シンガポールでのガソリンやナフサといった軽質製品の在庫量は、7月9日には1,000万バレルを割り込む状態となっていたが、その後水準は上下に変動したものの、8月13日には1,000万バレル強と、7月9日に比べ微増にとどまったものの、2012年及び2013年の同時期の水準は超過している。また、7月下旬よりアジア地域の複数の製油所でのガソリン製造装置がメンテナンス作業を終了し稼働を再開した反面、東南アジアや中東諸国における断食月(ラマダン、2014年は概ね6月29日~7月27日)及びラマダン明けの祭(「イードアルフィトル」(Eid Al’Fitr))を家族などで祝うための移動に伴うガソリン等の需要増加時期も終了に向かったことから、アジア市場ではガソリン需給緩和感が発生、8月に入りガソリン価格は急落、その結果ガソリンと原油との価格差も大幅に縮小した。また、ナフサについても、欧米諸国での夏場のガソリン需要期が峠を越えつつあることから、ガソリン向けに混入されるナフサの需要が低下してきたうえ、8月後半以降アジア地域において複数のナフサ分解装置がメンテナンス作業により停止する予定である他、石油化学部門においてナフサと並ぶ原料であるLPGが夏場において価格面でナフサに対して競争力を増している(冬場の暖房用需要が低下していることによるものとされる)こともあり、石油化学原料向けナフサ需要の低下観測が市場で発生したことから、アジア市場でのナフサ価格も原油Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? ソ格の下落以上に下落する傾向を示した。 シンガポールの中間留分在庫は7月9日の1,200万バレル弱から7月16日には1,300万バレル強の水準へと増加したが、その後減少傾向に転じ、8月13日には1,000万バレル強となった。これは、インドで本格的なモンスーン(雨季)シーズンの到来が遅延したことにより軽油需要が維持された(灌漑用ポンプ装置稼働向け電力供給のため発電機を稼働させる必要がある農業部門や、建設業等の産業部門における軽油需要がモンスーンシーズンに本格的に突入すると低下するとされる)一方で、7~9月にかけ、同国で複数の製油所がメンテナンス作業を実施することから、国外への軽油輸出や国外からの軽油調達に影響が発生したことに伴うものである可能性がある。このようなこともあり、例えばシンガポールの軽油価格は、7月中旬から8月中旬にかけ原油価格と比べて総じて堅調に推移した。 シンガポールの重質製品在庫は7月9日の2,100万バレル台弱から翌週には2,200万バレル台後半にまで増加したものの、その後は増減を経たものの、概ね減少傾向を辿り、8月13日には1,600万バレル台半ばと2013年4月24日以来の低水準となった。精製利幅の低迷とメンテナンス作業により欧州で製油所の稼働が不振であったことに伴い重質製品の生産が不活発になるとともに当該地域での需給が引き締まったことから、西側諸国等からアジア諸国への当該製品の流入が低下したことに加え、イランから船舶用の重油輸出が7月下旬前後から停止していること(国内の発電需要に対応するため見る向きもある)も、シンガポールでの在庫減少の背景にあると見られる。一方、7月中旬から8月中旬にかけ重油価格は原油価格下落の影響を受けたものの、価格低下が需要を刺激した側面もあり、原油価格に比べ2014年7月中旬から8月中旬にかけての原油市場においては、7月中旬頃までは米国でのニューヨーク商業取引所(NYMEX)WTI原油先物契約の受渡地点であるオクラホマ州クッシングでの原油在庫減少に加え、ウクライナ問題を巡り米国政府がロスネフチを含めたロシア企業に対して制裁を発動したことやウクライナ上空でマレーシア航空機が撃墜された旨報道されたことにより、ウクライナでの緊張緩和に向け迅速に行動しないと西側諸国等から批判されるロシアと西側諸国等との対立激化に伴うロシアからの石油供給途絶の可能性に対する市場の懸念の増大により、原油価格(WTI)は1バレル当たり105ドルを目指して上昇傾向となったが、その後はイラク、リビア、ロシア、そしてイスラエル/ガザを巡る地政学的リスク要因は存在していたものの、石油供給をさらに途絶させるには至らなかったことにより、市場の懸念Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 10 ? 2014年7月中旬から8月中旬にかけての原油市場等の状況 . 2てその下落幅は相対的に抑制されたものとなった。 ェ後退し始めたことに加え、夏場のガソリン需要期が峠を越え始めるとともに米国での原油精製処理量が低下したことから、この先製油所による原油需要が減少するとの観測が市場に発生したこと等により、原油相場は総じて下落傾向となり、8月中旬には95ドル台前半に突入する場面も見られた(図15参照)。 7月6日15時(現地時間)を以て不可抗力条項の適用を解除した、リビア東部のエス・シデル(Es Sider)石油ターミナル(原油出荷能力日量34万バレル)及びラス・ラヌフ(Ras Lanuf)石油ターミナル(同22万バレル)に対して操業継続を確約する旨東部の部族が明らかにしたと7月14日(現地時間)に報じられた一方で、7月13日以降トリポリ国際空港が武装勢力に攻撃された他、東部のベンガジではハフタル元軍将校の率いる非公式軍がイスラム武装勢力と衝突、両都市で死傷者が発生するなど、同国を巡る政情不安が増大したことから、7月14日に国連が職員をリビアから引き上げた旨明らかになったことで、同国情勢の不透明性を巡り、7月14日の原油相場に下方圧力及び上方圧力双方が加わったことにより、この日の原油価格の終値は1バレル当たり100.91ドルと前週末終値比で0.08ドルの上昇にとどまった。ただ、7月15日には、イラクでの武装勢力の暴動にもかかわらず同国の原油供給には影響が及んでいないうえ、リビアの原油生産量が日量58.8万バレルへと増加した旨7月15日にリビア国営石油会社NOCが明らかにした(7月13日時点では日量47万バレルとNOCは発表していた)ことで、同国の原油供給低下懸念が市場で低下したことに加え、7月15日に開催された米国議会上院銀行住宅都市委員会において、イエレン米国連邦準備理事会(FRB)議長が、米国連邦公開市場委員会(FOMC)で予想したよりも速やかに労働市場が改善を続けるのであれば、現在想定するよりも早期に金利引き上げを実施すGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 11 ? 驩ツ能性が高い旨発言したことから、米ドルが上昇したことにより、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.95ドル下落し、終値は99.96ドルとなったものの、7月16日には、この日中国国家統計局から発表された2014年4~6月期の同国国内総生産(GDP)が前年同期比で7.5%の伸びと、2014年1~3月期(同7.4%の伸び)から加速した他、市場の事前予想(同7.4%の伸び)を上回ったうえ、7月16日に米国エネルギー省(EIA)から発表された同国石油統計(7月11日の週分)で原油在庫が前週比753万バレルの減少と、市場の事前予想(同210~300万バレル程度の減少)を上回って減少していた他、クッシングの原油在庫も2,027万バレルへと減少、2008年11月14日(この時は1,892万バレル)以来の低水準となった旨判明したこと、翌17日も、前日にEIAから発表された同国石油統計で原油在庫が市場の事前予想を上回って減少していた旨判明したことに伴う市場での石油需給引き締まり感増大の流れを引き継いだうえ、7月16日午後(同日のNYMEX原油先物契約の通常取引終了後)米国財務省が石油会社ロスネフチを含めたロシア企業に対して制裁を実施する旨発表した他、7月17日にはウクライナ東部上空でマレーシア航空機が撃墜されたと報じられたことにより、ウクライナの緊張緩和に向け迅速に行動しないと西側諸国等から批判されるロシアと西側諸国等との対立の激化に伴うロシアからの石油供給途絶の可能性に対する懸念が市場で増大したことから、7月17日の原油価格の終値は1バレル当たり103.19ドルと原油価格は7月16~17日の2日間併せて3.23ドル上昇した。なお、7月18日には、前日(7月17日)の原油価格上昇に対する利益確定の動きが市場で発生したことが、原油相場に下方圧力を加えた一方で、7月17日夜(現地時間)イスラエルのネタニヤフ首相が、イスラム原理主義組織ハマス他パレスチナ武装勢力による砲弾攻撃を停止させるために、パレスチナ自治区のガザへの侵攻を開始する旨発表したことにより、中東情勢の不安定化に対する懸念が市場で発生したことが、原油相場に上方圧力を加えたことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり103.13ドルと前日終値比で0.06ドルの下落にとどまった。 7月21日には、ウクライナ情勢を巡り、ロシアと西側諸国等との対立の激化に伴う、ロシアからの石油供給途絶の可能性に対する市場の懸念の流れを引き継いだうえ、7月20日にリビア国際空港で武装勢力同士の衝突が発生したことで、同国を巡る地政学的リスクを市場が意識したことに加え、7月23日にEIAから発表される予定の同国石油統計(7月18日の週分)で原油在庫が減少しているとの観測が市場で発生したこと、7月22日のNYMEX8月渡しWTI原油先物取引期限を前にして市場で持ち高調整が発生したことにより、この日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり1.46ドル上昇、終値は104.59ドルとなったが、7月22日には、前日の上昇に対する利益確定の動きが市場で発生したことにより、このGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 12 ? 冾フ原油価格の終値は1バレル当たり104.42ドルと前日終値比で0.17ドル下落した(なお、この日を以てNYMEXの8月渡しWTI原油先物契約取引は終了したが、9月渡し契約のこの日の終値は1バレル当たり102.39ドル(前日終値比0.47ドル下落)であった)。翌23日は、原油相場の終値は前日終値比で1バレル当たり1.30ドルの下落となっているが、NYMEXのWTI9月渡し原油先物契約ベースでは前日終値比で0.73ドルの上昇であった。これは、イスラエルとイスラム原理主義組織ハマスとの戦闘に関し停戦の目途が立たないことから、中東情勢の不安定化と当該地域からの石油供給途絶の可能性に対する市場の懸念の流れを引き継いだ他、7月23日に、ウクライナ政府が、同国の戦闘機2機がウクライナ東部で親ロシア派勢力により撃墜された旨発表したことで、ウクライナ情勢を巡る西側諸国等とロシアとの対立激化と、それに伴うロシアからの石油供給途絶の可能性に対する不安感が市場で増大したことに加え、7月23日にEIAから発表された同国石油統計(7月18日の週分)で、原油在庫が前週比で397万バレルの減少と市場の事前予想(同260~290万バレル程度の減少)を上回って減少していた他、クッシングの原油在庫も減少し1,882万バレルと2008年11月7日(この時は1,799万バレル)以来の低水準となった旨判明したことが、上昇の背景にある。ただ、7月24日には、前日(7月23日)にEIAから発表された同国石油統計(7月18日の週分)で、ガソリン在庫が前週比で338万バレルの増加と市場の事前予想(100~130万バレル程度の増加)を上回って増加している旨判明した流れを市場が引き継いだことにより米国ガソリン先物相場が下落したことに加え、7月24日に国際通貨基金(IMF)が発表した世界経済見通しで、IMFが2014年の世界経済成長率を年率3.4%と同年4月時点から下方修正したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.05ドル下落し、終値は102.07ドルとなった。7月25日には、ウクライナ、イラク、リビア、イスラエル及びガザ地区を巡る政情不安に伴う、石油供給途絶の可能性に対する市場の懸念の流れを市場が引き継いだことが、原油相場に上方圧力を加えた一方で、7月23日にEIAから発表された同国石油統計でガソリン在庫が市場の事前予想を上回って増加した流れ、及びIMFが2014年の世界経済成長見通しを下方修正した流れを市場が引き継いだことが、原油相場に下方圧力を加えたことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり102.09ドルと前日終値比で0.02ドルの上昇にとどまった。 しかしながら、7月28日には、イラク及びリビアにおいて政情不安にもかかわらず、両国からの石油供給に殆ど影響が出ていないことにより、石油供給途絶懸念が市場で後退したうえ、7月28日に全米不動産業協会(NAR)から発表された6月の米国中古住宅成約指数(2001年=100)が102.7と5月から1.1%低下、市場の事前予想(前月比0.5%上昇)を下回ったこと、7月29日には、この日米国カンザス州のGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 13 ? offeyville製油所(CVR Refining が操業、原油精製処理能力日量11.5万バレル、クッシングから原油を調達)が火災により操業を停止したことで、クッシングでの原油需給が緩和するのではないかとの観測が市場で発生したこと、また、7月29日に欧州連合(EU)での大使級会議において、ロシア政府系金融機関による新規発行株式及び債券購入や同国での石油開発に関する先端技術供与禁止等を決定したものの、短期的な世界石油需給への影響は限定的との観測が7月30日の市場で増大したこと、7月30日にEIAから発表された同国石油統計(7月25日の週分)でガソリン需要が前年同期比で減少を示していたことから、当該需要の弱さを市場が意識したことにより、米国ガソリン先物相場が下落したこと、7月31日には、この日CVR Refiningが7月29日に火災で操業を停止したCoffeyville製油所につき8月26日にかけ4週間操業が停止したままとなる可能性がある旨明らかにしたと伝えられたことで、同製油所に原油を供給するクッシングでの原油需給緩和が長引くとの観測が市場で発生したことに加え、7月30日夕方に米格付会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、同日期限の国債金利支払いを実施できなかったアルゼンチンにつき選択的債務不履行と認定したこと、7月31日EU統計局(ユーロスタット)から発表された7月のユーロ圏消費者物価指数(CPI)(速報値)が前年同月比で0.4%の上昇と2009年10月(この時は同0.1%の低下)以来の低水準となった他市場の事前予想(同0.5%上昇)を下回ったことを受け、7月31日の米国株式相場が下落したこと、8月1日も、前日(7月31日)にCVR RefiningがCoffeyville製油所につき4週間操業が停止したままとなる可能性がある旨明らかにしたことで、同製油所に原油を供給するクッシングでの原油需給緩和が長引くとの市場の観測の流れを引き継いだことから、原油価格は7月28日~8月1日にかけては全ての日において前日終値比で下落、8月1日の終値は1バレル当たり97.88ドルと、5日合計で4.21ドルの下落となった。 ただ、8月2日には、イラクにおいて、イスラム教スンニ派武装勢力イスラム国(IS:Islamic State)がイラク北部のクルド人の居住する都市に加え2油田を掌握した旨明らかになったことで、同国の政情不安と石油供給途絶の可能性に対する懸念が市場で再燃したことに加え、8月1日夕方に発表された米投資会社バークシャー・ハザウェイの2014年4~6月期業績が市場の事前予想を上回ったことから、8月4日の米国株式相場が上昇したことにより、8月4日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.41ドル上昇、終値は98.29ドルとなった。8月5日には、翌6日にEIAから発表される予定の同国石油統計(8月1日の週分)で同国製油所の精製稼働率が低下しているとの観測が市場で発生したこと、そして果たして8月6日には、この日EIAから発表された同国石油統計において、同国製油所の精製稼働率が前週比で1.1%の低下と6月6日の週(この時は同2.9%の低下)以来の大幅な低下となったことで原油需Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 14 ? vの減少観測が市場に発生した他、クッシングでの原油在庫が前週比で8.3万バレル増加していたことで当該地点での原油需給緩和を市場が意識したことから、8月6日の原油価格の終値は1バレル当たり96.92ドルと原油価格は8月5~6日の2日間で併せて1.37ドル下落した。しかしながら、8月7日には、オバマ米大統領がISに対し空爆の実施を検討している旨、同日ニューヨーク・タイムスが報じたことで、イラクを巡る地政学的リスク要因に伴う同国からの石油供給途絶懸念が市場で再燃したこと、8月8日には、8月4日から実施されていたロシア軍によるウクライナと国境を接する地域での軍事演習がこの日終了した旨報じられたことで、ウクライナを巡るロシアと西側諸国等との対立激化に対する市場の懸念が後退したことにより、米国株式相場が上昇したことから、原油価格は8月7~8日の2日間併せて0.73ドル上昇し、8月8日の終値は97.65ドルとなった。 8月11日には、8月13日にEIAから発表される予定の同国石油統計(8月8日の週分)で原油在庫が減少しているとの観測が市場で発生したことにより、この日の原油価格の終値は1バレル当たり98.08ドルと前日終値比で0.43ドル上昇したが、8月12日には、この日国際エネルギー機関(IEA)から発表されたオイル・マーケット・レポートで、IEAが、大西洋圏で石油供給余剰が発生するなど世界の石油需給状況が予想よりも良い状態である旨指摘したことで、石油需給緩和感を市場が意識したことに加え、同じくこの日独非営利民間調査機関欧州経済研究センター(ZEW)から発表された8月のドイツ景況感指数(ゼロが景気に対する楽観的観測と悲観的観測の分岐点)が8.6と、7月の27.1から低下した他、市場の事前予想(17.0~18.2)を下回ったこと、8月11日にイラク後継首相に指名されたアバディ氏に対し、同日のオバマ米大統領に加え、8月12日にイランとサウジアラビアが支持する旨明らかにしたことで、イラク政府の結束が強化されるとの市場の観測に加え、リビアのラス・ラヌフ石油ターミナルで7月6日の操業再開以降で初めてタンカーが原油を船積みしつつある旨NOCが8月12日に明らかにしたことで、イラク及びリビアからの原油供給途絶懸念が市場で後退したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.71ドル下落し終値は97.37ドルとなった。8月13日には、前日の原油相場下落に対して値頃感から買い戻しが入ったことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり97.59ドルと前日終値比で0.22ドル上昇したものの、翌14日には、リビアのエス・シデル石油ターミナルが数日中に原油輸出を再開する旨、8月14日にNOCが明らかにしたことで、同国からの石油供給途絶懸念が市場で後退したことに加え、8月14日にEU統計局(ユーロスタット)から発表された2014年4~6月期ユーロ圏域内総生産(GDP)(速報値)が前期比で横這いとなり市場の事前予想(同0.1%の増加)を下回ったこと、8月14日にオバマ米大統領が、イラクでISから攻撃を受け同国北部シンジャール山に避難し孤立したとされGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 15 ? スクルド人少数勢力ヤジディ教徒(ゾロアスター教などの影響を受けておりISはこれを敵視している)に対し地上からの救出作戦を実施しない旨明らかにしたこと(後述)で、同国の政情不安激化と石油供給途絶の可能性に対する市場の懸念が後退したことで、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり2.01ドル下落、終値は95.58ドルとなった他、一時は95ドル台前半に突入する場面も見られた。ただ、8月15日には、この日ウクライナ政府が、8月14日夜以降自国領内に侵入したとされるロシア軍の装甲車列に対してウクライナ軍が攻撃し大半を破壊した旨明らかにしたことで、ウクライナ及び西側諸国等とロシアとの対立が激化することによる、ロシアからの石油供給途絶の可能性に対する市場の懸念が増大したうえ、8月15日にFRBから発表された7月の同国鉱工業生産が前月比で0.4%の増加と市場の事前予想(同0.3%の増加)を上回ったことにより、この日の原油価格の終値は1バレル当たり97.35ドルと前石油市場に関連する地政学的リスク要因については、さらなる大規模な石油供給途絶は発生していないものの、根本的な解決までにはなお時間を要するものが存在する。 イラク(国内情勢については図16参照)については、7月中旬以降も19日及び22日にバグダッドのシーア派住民が居住する地域でテロが発生した(19日には26名、22日には33名がそれぞれ死亡したと伝えられる)が、それらのテロ行為につき7月23日に、ISが犯行声明を発表している他、8月6日にもバグダッド北東部でテロが複数発生しているなど、バグダッドにおける治安も少なくとも改善しているとは言い難い状況である(但しISの進撃開始以前と比べて大幅に悪化しているわけではないとの指摘もある)。また8月3日には、ISが、北部にある同国最大のモスルダムを掌握したことに加え、北部の3都市、そして油田(Ain ZalaとBatma、原油生産量は合わせて日量3万バレルとされる)を制圧したと報じられた他、8月に入り、ISはイラク北部のキリスト教徒やヤジディ教徒に対して迫害を加えていると伝えられるようになった。これに対して、8月7日夜(米国東部時間)にはオバマ大統領がイラクにおける米国民及び米国の利害、そしてヤジディ教徒の人道的支援上、必要であればISに対して限定的な規模での空爆を実施することを承認した旨発表、8月8日午後(現地時間)にはイラク北部(クルド自治区のアルビル(米総領事館が存在する他米軍事関係者が駐留)の南西にある、ISが掌握していた都市のマフムールと伝えられる)で空爆を開始した(以降8月17日まで空爆は連日実施されている)。8月10日にはクルド人勢力の治安部隊「ペシュメルガ」がマムフール等の都市を奪還した(一方8月11日にはISがバグダッド北東Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 16 ? 日終値比で1.77ドル上昇している。 . 今後の見通し等 3?120~130㎞にある都市「ジャラウラ」を制圧した)旨伝えられる。また8月11日には米国務省が、ペシュメルガに直接武器を供与することを決定した旨発表した(但し同日、米国政府関係者は既にCIAはペシュメルガに直接武器を供与している旨明らかにしている)。さらに8月12日には米国のヘーゲル国防長官が、アルビルに米軍事関係者130名を派遣した旨明らかにしており(これ以外にも米国政府は6月以降800名程度を派遣済みで、この派遣で駐留する米軍事関係者数は935名となった)、これがISから攻撃を受け同国北部シンジャール山に避難したものの、ISにより包囲されたとされたヤジディ教徒に対する、地上からの救出作戦の準備ではないかとする見方も市場で発生したが、8月14日には、オバマ米大統領は、米国による空爆等で武装勢力による包囲は事実上解消したとして、当該地域での救出作戦を実施しない旨明らかにした。このように、米国での空爆により、ISの進撃はある程度抑制はされていると見られるものの、米軍の空爆は米国人関係者の保護と人道的支援に限定されており、ISの勢力を大きく削ぐことにはならないと見られている。他方、クルド自治区で活動する外国石油会社は作業を一時中断するとともに、不要不急の労働者の避難を開始した、と8月12日に伝えられるが、同国の原油生産量は7月が日量300~312万バレルと6月の日量310~324万バレルからそれほど低下していない(低下した原因は南部での荒天とされる)など、原油生産の中心である南部地域にはISの影響は及んでいないことが示唆される。 図16 イラクの主な情勢及び主要な油田等(2014年8月15 日現在) 出所:各種資料をもとにJOGMEC調査部 増野伊登作成 ? 17 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 シ方、7月24日には、イラク連邦議会はクルド人勢力出身のマスーム氏を大統領に選出したが、首相の選出(大統領が議会の最大会派から指名)については紆余曲折を経ることとなった。イスラム教シーア派勢力を優遇することにより、スンニ派及びクルド人勢力のみならずシーア派勢力内からも退陣の要求が発生していたマリキ首相(最大会派に所属)は、8月10日夜(現地時間)にそのような要求を拒否、首相職続投に意欲を見せた他、8月11日にはイラク最高裁判所がマリキ首相の率いる会派が議会での最大会派であると判断した。しかしながら、同日マスーム大統領は連邦議会のアバディ副議長(マリキ首相と同じアッダワ党に所属)を後継首相に指名、30日以内に政権を樹立するよう指示した。これに対して同日マリキ首相側はこの決定が憲法に反しているとして反発、8月13日には司法判断を仰ぐ旨表明したものの、8月11日にはオバマ大統領等がアバディ氏を後継首相として指名したことに対して歓迎及び支持する旨の意を表明した他、8月12日には、イラン(最高指導者ハメネイ師の代理人であるシャムハーニ師)及びサウジアラビア(ファイサル外相)がアバディ氏を支持する旨示唆したことに加え、8月13日にはマリキ首相が所属するアッダワ党がアバディ氏を支持する旨明らかにしたうえ、同日イラクのイスラム教シーア派最高権威シスタニ師がマリキ首相に対して退陣を要求するなど、マリキ首相に対するイラク国内の支持は低下していった。そして8月14日には、マリキ首相が後継首相候補であるアバディ氏に対して支持するとともに、自分は退陣する意向を表明している。このように、一時は分裂状態に陥っていたイラク政権も結束する兆候が見えてきたことで、ISの進撃をさらに抑制する展望も開ける可能性が出てきていることから、この面では今後アバディ氏が他の勢力と融和しつつ政権を樹立できるかにもよるが、以前と比べてイラクの南部地域での油田の原油生産にISの進撃の影響が及ぶ可能性が低下したとの市場の認識も発生しやすくなっていると見られる。そのような意味では、事態の急展開と南部地域での油田生産の停止可能性といったリスクは依然として存在はしているものの、この先状況がこのまま市場におけるイラクの石油供給途絶懸念を後退させる方向で進展するということであれば、原油相場の上方圧力(もしくは下支えする格好で作用する圧力)が低下することになると考えられる。 ウクライナでは、6月30日の午後10時(現地時間)を以て政府が停戦期間を終了し、政府軍が同国東部の親ロシア派勢力の掃討を開始した。そしてそのような中、7月13日にはウクライナと国境を接するロシア南部ロストフ州ドネツクに砲弾が着弾し死者が発生するなどしていた。7月14日にはウクライナ東部ルガンスク州上空でウクライナ軍の輸送機1機が撃墜されたとウクライナ政府が発表、これがロシア領内から発射されたミサイル(地対空ミサイル)である可能性がある旨の見解を明らかにした(ルガンスク州では7月14日に別のウクライナ軍戦闘機を撃墜したと親ロシア派勢力が示唆しており、また7月16日夜(現Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 18 ? n時間)には、ウクライナ上空でロシア機がウクライナの攻撃機を撃墜した旨ウクライナ政府側が発表している(7月17日にはロシア側はこれを否定している))。また7月14日にはロシア軍がウクライナとの国境地帯での軍部隊を1~1.2万人に増強している(6月半ばには1,000人未満に減少していた)旨の認識をNATO軍当局者が示した。そのような中、7月16日夕方(米国東部時間)に米国財務省が、ロシアがウクライナでの速やかな緊張緩和への努力が不十分であるとして、ロスネフチ、ノバテク、ガスプロムバンク、対外経済銀行(VEB)の4社に対して米国での資金調達や金融取引を制限する(それ以外にロシア軍事関連産業従事者やウクライナでの親ロシア派要人に対して資産凍結や取引禁止、渡航禁止の制裁を実施する)という制裁を課す旨発表した。米国政府は、今後の状況によっては、さらに制裁を追加する旨明らかにしている。また、7月17日にはウクライナ東部上空を飛行していたマレーシア航空機が撃墜されたと報じられており、ウクライナ政府側は親ロシア派勢力の地対空ミサイルによるものと主張している一方で、親ロシア派勢力はウクライナ政府による撃墜と主張、またロシアのプーチン大統領はウクライナ東部で軍事行動を行うウクライナ政権に責任がある旨7月17日に発言している。そして7月17日のマレーシア航空機墜落事件後も、ウクライナ軍と親ロシア派勢力との戦闘は継続した。7月21日には、ウクライナ東部ドネツク州の州都ドネツクに対して砲撃が加えられた。一方で、7月23日には、親ロシア派勢力がウクライナ軍の戦闘機2機を撃墜したと報じられている。また、7月24日には、米国務省のハーフ副報道官が、ロシア領内からウクライナ軍拠点に向け砲撃が行われている旨明らかにしており、ロシアがウクライナに対して直接的な軍事介入を行い始めていることが示唆された。7月29日には、欧州連合(EU)の大使級会合で、ロシアへの追加制裁実施を決定した。主な内容は、①ロシアの政府系金融機関が新規に発行する株式・債券などの購入を禁止、②ロシアとの新規の武器売買契約を禁止、③石油開発に対する先端技術の供与を制限、④プーチン大統領に近い個人や企業を資産凍結の対象に追加、というものであり、7月31日のEU官報公示により即時発動であることが示された。他方、8月3日までに、ウクライナでは、政府軍が親ロシア派勢力に対して軍事行動を展開した結果、親ロシア派勢力の掌握範囲は大幅に縮小、ドネツクとルガンスクの両地域の分断にも成功したと伝えられる。しかしながら、8月4~8日にロシア国防省がウクライナと国境を接する地域を含む地域で大規模な軍事演習を実施した他、8月6日には、NATOが、ウクライナ国境地帯に約2万人のロシア軍が集結した旨明らかにしており、これがウクライナに対して人道的支援等の平和維持を名目として、ロシアのウクライナへの直接介入を行う準備をしている兆候と西側諸国等に受け取られた。また、8月6日にはロシアのプーチン大統領は、ウクライナ問題に関連してロシアに制裁を実施した諸国からの農産物の輸入を制限する大統領令に署名するなど、ロシアも西側諸Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 19 ? 蒼凾ノ対して制裁を実施している。8月11日には、ウクライナ軍はロシアがウクライナと国境を隣接する地域に4.5万人の軍隊を集結させている、と明らかにしていたが、同日プーチン露大統領はウクライナ東部に関してロシアと赤十字国際委員会(ICRC)が協力して人道的支援を実施する方針を表明した。そして、8月12日には、ロシアのラブロフ外相が、ロシアのウクライナ向け人道的支援物資につきウクライナ政府が受け入れに同意した旨明らかにしたと伝えられ、当該物資を積載したトラックがウクライナ国境に向け出発したと報じられた。そのような中、8月13日には、プーチン露大統領がウクライナ南部のクリミアを訪問、8月14日にはウクライナ停戦に向け全力を尽くす旨演説したが、8月15日にウクライナ政府が、8月14日夜以降自国領内に侵入したロシア軍の装甲車列に対してウクライナ軍が攻撃し大半を破壊した旨明らかにした。ただ8月16日深夜にはウクライナ政府はロシアからの人道的支援物資をICRCの監視の下で受け入れる旨発表している。一方で8月15日にロシアとウクライナ両政府は、両国に加え仏独の外相による会合を8月17日にベルリンで開催することで合意した旨ウクライナ大統領府が発表している。 このようにウクライナを巡る情勢は大きく改善する兆しを見せておらず、むしろロシアの石油産業を標的とした制裁に欧米諸国は動きつつある(また、7月30日には、先進7ヶ国及び欧州連合(EU)の首脳が、ウクライナへの方針を修正しなければ、ロシアに対してより厳しい制裁を課する旨警告する声明を発表している)。しかしながら、これまでのところロシアからの石油供給の途絶は発生しておらず、また欧米の追加制裁措置によっても、即座にロシアからの石油供給が減少に向かう可能性は低いと市場は考えている(禁輸措置により原油価格が跳ね上がることから欧州諸国にとってこれは痛手であり、また禁輸措置によりロシアの原油収入が低下することからロシア政権にとってもこれは痛手となることから、双方とも禁輸措置をそう簡単には実施できないとの市場の考え方がある)。そしてこのような市場の考えは少なくともごく短期的は継続する可能性があると見られることから、この面では原油相場を下支えする(但し事態が膠着するかウクライナとロシアとの間で緊張緩和に向けた動きの兆候がでてくるようであれば、むしろ原油相場下支えの圧力は弱まることもありうる)ことはあっても、上方圧力を継続的に加えるには力不足であると考えられる。ただ、この先ウクライナへの介入がロシアによって行われること等により、西側諸国等との対立が激化するようだと、原油相場の下落を抑制させるか、展開によっては上方圧力を加えうるというリスクも内包していると思われる。 イランについては、ウラン濃縮問題を巡る西側諸国等との最終合意のための交渉において、双方の主張に隔たりが大きいことから、7月18日に当初の交渉期限であった7月20日から11月24日へと約4ヶ月間期限を延長することで合意した。他方、7月21日までにはイランが保有していた20%程度の濃縮Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 20 ? Eランを全て軍事転用できない形へ転換する作業を完了した。このため、イランに対して2,800億円分の国外からの原油支払代金の凍結が解除された。一方、8月4日にアラグチ外務次官が、次回のウラン濃縮問題を巡るイランと西側諸国等との協議が9月の国連総会に際しニューヨークで開催される可能性がある旨明らかにしている。このように、イランのウラン濃縮問題に伴う西側諸国等の対立は概ね以前と比べて石油市場関係者の懸念を増大させる方向には作用していないように見受けられる。ただ、同国でのウラン濃縮問題が根本的に解決されたわけではなく、イランへの制裁が完全に解除され、原油増産への途が明確に開かれているわけでもない(8月16日にはイランのザリフ外相は、当該問題の細部を含めた合意には11月24日の期限を超えた期間が必要である旨示唆したと報じられている)ので、イランを巡る地政学的リスク要因も、一時のホルムズ海峡封鎖の可能性のように極度に石油供給途絶懸念を高めることはないものの、原油相場をある程度下支えする形で作用すると考えられる。 一方、イスラエルは7月17日夜(現地時間)にガザ地区に向けイスラム原理主義組織ハマス等による砲撃を阻止するために地上侵攻を開始する旨発表した。これについては、イスラエルとハマスとの間で何度か双方で一時停戦に合意し実施したものの、停戦期間終了後は戦闘を再開するなどしていた。ただ、8月4日未明にはイスラエルが同日午前10時から7時間の停戦を発表、さらに同日イスラエルとハマスが、エジプトの提案した72時間の停戦案に合意、8月5日午前8時(現地時間)に発効した。他方イスラエルはハマスが建設したイスラエル攻撃用のトンネルの破壊作業が完了したとして、8月5日にはガザ地区からイスラエル軍を撤退させた。また、8月11日午前0時1分(現地時間)には再度72時間の停戦を実施、8月13日には停戦を5日間延長することで双方が合意し、8月17日からは本格停戦に関する協議をエジプトのカイロで実施する旨報じられる。このように両者間ではこれまで戦闘と停戦を繰り返してきたが、実際には周辺産油国への原油生産等には影響を及ぼしていないことから、この面ではこの先原油相場への上方圧力を継続的に加えるとは考えにくい(但し本問題は根本的に解決したわけでないことから、相場をある程度下支えする可能性はあると思われる)。ただ、イランの革命防衛隊がハマスを支援する旨発表した旨、同国の報道機関が7月31日に報じるなどしており、今後イスラエルとハマスと間での戦闘が激化、イラン関係者を巻き込んで事態が複雑化するようだと、イランのウラン濃縮問題にも影響するとの懸念が市場で発生するため、本件についても、原油相場への上振れ、もしくは下落抑制リスクを抱えていると考えられる。 リビアについては、エス・シデル及びラス・ラヌフの両石油ターミナルに関して7月6日に不可効力条項の適用が解除され、ラス・ラヌフ石油ターミナルで操業再開以降初めてタンカーが原油を船積みしつGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 21 ? ツある旨NOCが8月12日に明らかにしている(同日中に出港)他、エス・シデル石油ターミナルが数日中に原油輸出を再開する旨8月14日にNOCが明らかにしている。また、東部の石油ターミナルであるズエイティナ(Zueitina)石油ターミナル(4月28日に不可抗力条項適用が解除されたが、その後油田からの原油供給の関係で概ね遊休状態になっていたとされる)に原油を供給する東部の一部の油田が操業を再開し始めていると7月19日に伝えられる。さらに、同国南西部のエル・フィール(El Feel)油田及びエル・シャララ(El Sharara)油田が操業を再開したことで、原油生産量が5月29日の日量15.5万バレルから7月15日には日量58.8万バレルにまで増加した旨NOCや同国石油相代行が示唆している。そして、これらにより、同国からの石油供給途絶懸念が市場で後退する格好となっている。ただ、7月12日にブレガ石油ターミナル(原油出荷能力日量6万バレル)で警備隊による抗議活動が発生し同ターミナルの操業が停止した(なお、7月22日には警備員との間で当該施設の封鎖解除につき政府と合意、7月24日には同ターミナルにタンカーが到着し原油輸出のための船積みを開始する旨伝えられている)他、ズエイティナ石油ターミナルでは、警備員が1年間の給与未払いを理由に当該石油ターミナルの操業に反対しているうえ、NOC取締役の交代も要求するなど、依然として抗議活動が完全に終結したわけではないことが示唆される他、7月15日に日量58.8万バレルであったリビアの原油生産量が7月22日には日量45万バレルにまで低下した旨NOCが明らかにしており、同国の原油生産量が順調に回復していくかどうかについては不透明な部分も多い。 加えて、同国では8月4日に北東部のトブルクで暫定議会が招集されたものの、国内の政治情勢も不安定なままである。7月13日以降同国のトリポリ国際空港が武装勢力により攻撃された他、東部のベンガジではハフタル元軍将校の率いる非公式軍がイスラム武装勢力と衝突、両都市で死傷者が発生するなど、同国を巡る政情不安が増大したことから、7月14日には国連が職員をリビアから引き上げた旨明らかになった。また、Totalはトリポリに駐在している外国人従業員全員をリビアから避難させたと同社広報が7月18日に明らかにした他、7月23日の武装勢力間での衝突では貯蔵燃料タンクが被弾し炎上、7月27日夜(現地時間)にも燃料貯蔵施設が被弾し炎上するなどしている。このような治安の悪化を受け、7月26日には米国はトリポリの大使館を一時閉鎖すると発表するなど、混乱が続いている。このようなことから、同国情勢についても、依然として根本的に解決したわけではないので、この面では原油相場をこの先もある程度は下支えする可能性があるものと考えられる。 地政学的リスク要因については、それ自体根本的に解決したものは少ないため、程度の差こそあれ原油相場を下支えするといった面で作用していくと考えられるが、実際に石油供給途絶が発生する兆候がGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 22 ? ゥられないことから、さらなる石油供給途絶の可能性に対する市場の懸念はむしろ後退してきているように見受けられる。このようなことから、これらの要因は、依然として石油供給に影響を与える事態が発生すれば、原油相場を上昇させるといった、いわゆる「上振れリスク」を内包しているものの、そのような事態が発生しなければ、この先においては、少なくも相場を上昇させるには力不足になってくるうえ、関係産油国からの石油供給途絶に対する懸念の後退が継続する結果、原油相場を下支えする圧力も相対的に弱まるといったことも想定される。 他方、米国に関する経済指標類は引き続き景気回復と石油需要増減の側面、及び米国金融当局による金利引き上げ時期に関する市場の観測という側面の双方から原油相場に圧力を加える結果、相場を変動させるものの、上昇もしくは下落傾向を形成するまでには至らないものと考えられる。また、米国金融当局者の金利引き上げ時期に対する方針を含めた金融政策に関する見解も、原油相場の変動要因として作用すると考えられる。その意味では8月22日に予定されている米カンザスシティー連邦準備銀行の開催する経済シンポジウム(カンザス州ジャクソンホール)におけるイエレンFRB議長の講演内容によっては原油市場が反応することもありうる。他方、今後米国等での2014年4~6月を中心とする期間に対する業績発表は峠を越えることから、この面では株価を通じての原油相場への影響は限定的となってくるであろう。 一方、中国であるが、7月の同国輸出は前年同月比で14.5%の伸びを示し市場の事前予想(同7.0~7.5%の増加)を上回る一方で、輸入は前年同月比で1.6%の減少と市場の事前予想(同2.6~3.0の増加)を下回るなど、同国の経済情勢はまだら模様であるが、経済減速の兆候が発生した場合には中国政府による景気刺激策が実施されるとの観測が市場で根強いことから、同国の経済指標類については、経済が改善していることを示唆していれば、原油相場に対して上方圧力を加える場面が見られうる反面、経済が減速していることを示唆しても、中国政府による景気刺激策実施の期待が市場で高まる結果、原油相場への下方圧力は限定的となる可能性がある。 欧州については、2014年4~6月期のユーロ圏GDPが前期比で横這いとなるなど、減速感が発生している。そして7~9月期には、7月31日に発動したウクライナ問題を巡るEUによる対ロシア経済制裁の、欧州経済への負の影響も発生し始めると見られることから、この面で原油相場に下方圧力を加えてくる場面が見られることも考えられる。 石油需給ファンダメンタルズについては、米国での夏場のドライブシーズンに伴うガソリン等自動車用燃料需要期は9月1日の米国レイバーデーの連休(8月30日~9月1日)を以て終了する。当該連休Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 23 ? ヘ夏場のドライブシーズン最後の行楽時期となることから、米国では一時的にガソリン需要が盛り上がる結果、ガソリンや原油の相場が下支えされる場面が見られる場合がありうるものの、製油所としてはレイバーデー以降の秋場の不需要期とメンテナンス作業シーズン突入を視野に入れつつ、稼働と原油精製処理を低下、その結果原油購買行動が鈍化することから、この面で石油市場関係者の心理が冷え込み続けるものと考えられる。このようなことから、ガソリン先物価格に下方圧力が加わるとともに、原油相場にも下落圧力が加わる確率が高まると考えられる。 なお、大西洋圏では既にハリケーン等の暴風雨シーズンに突入しており(暴風雨シーズンは例年6月1日~11月30日である)、特に8月後半以降10月前半迄は最もハリケーン等が発生しやすい時期となる。ハリケーン等の暴風雨は、進路やその勢力によっては、米国メキシコ湾沖合の油田関連施設に影響を与えたり、また、湾岸地域の石油受入港湾施設や製油所の活動に支障を与えたり(実際に製油所が冠水し操業が停止することもあるが、そうでなくても周辺の送電網を切断することにより、製油所への電力供給が停止することを通じて操業が停止するといった事態が想定される)、さらには、メキシコの沖合油田操業活動や原油輸出港の操業等が停止することにより米国での原油輸入に影響を与えたりする(米国メキシコ湾岸地域はメキシコから日量80万バレル超程度(2013年)の原油を輸入している)。他方、米国北東部にハリケーン等の暴風雨が進むようだと、当該地域での交通インフラが麻痺することにより、ガソリンや軽油需要に負の影響を与える恐れもある。現時点では、米国メキシコ湾地域の油田や製油所の操業活動等に大きな影響を与えるような暴風雨は発生していない他、従来から2014年の大西洋圏でのハリケーンシーズンについて平年よりも不活発な暴風雨の発生を予想していた予測機関の中には、暴風雨の発生個数予想を下方修正してきているところも出てきている(表1参照)など、この面では必ずしも市場を神経質にするというものではない。それでも、このような予報に反してハリケーン等の活動が活発化する場合もありうることから、今後のハリケーン等の実際の発生状況やその進路、そしてその予報等に留意すべきであろう。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 24 ? 表1 2014年の大西洋圏でのハリケーン等発生個数予想熱帯性低気圧(命名されるもの)うちハリケーンとなるものうち強い勢力*のハリケーンとなるもの2014年4月10日 コロラド州立大学9312014年5月22日 米国海洋大気庁(NOAA)8-133-61-22014年6月2日 コロラド州立大学10412014年7月31日 コロラド州立大学10412014年8月7日 米国海洋大気庁(NOAA)7-123-60-2平年(1981~2010年平均)12.06.03.0*:カテゴリー3(風速時速111マイル(時速178km))以上のハリケーン出所:機関資料をもとに作成S体としては、石油需給ファンダメンタルズ上は、原油相場に下方圧力を加えやすい状況となってきており、地政学的リスク要因で新たな材料が出てこないと、原油相場は下落しやすい展開となりうるが、地政学的リスク要因が根本的に解決しているわけではないので、この面での展開によっては原油相場を石油輸出国機構(OPEC)は7月10日に、国際エネルギー機関(IEA)は11日に、それぞれ2015年の石油需要及び供給見通しを発表した。ここでは、2014年1月7日に既に2015年見通しを発表しているEIAを含め2014年及び2015年の世界石油需要及び供給見通し等の特徴などにつき述べることとしたい(但しデータはOPECが8月8日に、IEAとEIAが8月12日に、それぞれ発表したものに基づくものとする)。 まず、需要についてであるが、2013年7月(つまり、IEA及びOPECが初めて2014年見通しを発表した時期)の2014年の世界石油需要増減見通しは前年比で日量104~124万バレルの増加(IEAが同121万バレル(前年比1.3%)、EIAが同124万バレル(同1.4%)、OPECが同104万バレル(同1.2%)の、それぞれ増加)と予想されていた。他方、現時点での2014年の世界の石油需要増減見通しは前年比で日量105~112万バレルの増加(IEAが同105万バレル(前年比1.1%)、EIAが同112万バレル(同1.2%)、OPECが同110万バレル(同1.2%)の、それぞれ増加)となっている(図17参照)。この中でOPECは世界石油需要増加見通しを上方修正している格好となっているが、これは米国での景気回復に伴う石油需要の増加を見込んだことにより2014年2月及び3月に世界石油需要を上方修正したことによるものである。IEA及びEIAは当該需要の増加について下方修正しているが、これは2013年7月時点でのIMFによる2014年の世界経済成長率見通しが年率4.0%であったものの、その後中国やインドの2014年の経済成長率が下方修正された(2013年前半時点では2014年には中国が8.2%、インドが6.2%の、それぞれ成長を達成すると見られていたが、現時点では中国が7.4%、インドが5.4%の、それぞれ成長にとどまると考えられている、なお、IMFでは2014年7月の世界経済見通し発表に際し経済成長予測方法を変更していることから、細部における厳密な比較を行うことは困難である点に留意されたい)ことなどから、現時点での世界経済成長見通しが年率3.4%となったことにより、石油需要の増加についても中国やインドを含めたアジア発展途上国について下方修正を施した他、2014年3月21日に実施したロシアによるウクライナのクリミア共和国編入以降、欧米諸国等による対ロシア制裁とロシアでの経済Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 25 ? 上振れさせてしまうというリスクが存在していると言えよう。 2015年世界石油市場見通しが示唆するもの . 4笂且相?ョへの影響の可能性を織り込んでロシアの石油需要を下方修正する動きが見られたことに伴うものである。 そして、このような事象が2015年にまで継続すれば、同年の世界石油需要の増加見通しも下方修正を免れない恐れが増大すると考えざるを得ない。現時点での各機関の2015年の世界石油需要増加見通しによれば、前年比で日量121~140万バレル(IEA日量132万バレル(前年比1.4%)、EIA同140万バレル(同1.5%)、OPEC同121万バレル(同1.3%))の増加となり、2014年のそれに比べて増加が加速すると予想されている。これはIMFが2015年について世界経済成長見通しを年率4.0%と2014年の同3.4%から回復すると見込んでいることと一致する。しかしながら、米国では確かに最近雇用者数が順調に増加を続けるなど景気回復基調であるが、同国では自動車の燃費効率改善が続いていることから、石油需要が経済成長に併せて大幅に増加を加速するとは考えにくい。ただ、中国等のアジア発展途上国での経済が回復すれば、軽油等の石油需要もそれに伴い増加が加速する可能性が増大するであろう。この面では当該地域の経済成長が現時点のIMFの予測に基づけば2015年は6.7%と2014年の6.4%からは加速することにはなる。ただ、2013年前半時点では当該地域の2014年の経済成長は6.7%と予測されていたところ、現時点では6.4%へと下方修正されるなど、時間の経過に伴い経済成長の下方修正が行われるという傾向は継続していると見受けられる一方で、IMFは中国の2015年の経済成長率を7.1%と2014年の7.4%から減速すると見込んでおり、中国と密接な経済関係のあるアジア経済に対する下振れリスクは依然払拭できない状況である。また、欧州では2014年4~6月期の域内GDPが前期比で横這いとなるなど、7月末発動のユーロ圏諸国の対ロシア制裁発動を待たずして経済が減速しつGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 26 ? ツある。さらに、対ロシア制裁によりロシアと経済面等で関係の深い欧州諸国の経済に影響が及び、そしてそれが長引くようだと、2015年の欧州地域の経済も下振れするとともに当該地域での石油需要の伸びも鈍化するといったリスクもあるので注意が必要であろう。 他方、世界石油需要におけるOECD加盟国と非OECD加盟国との比率であるが、2014年においては、IEAは非OECD加盟国がOECD加盟国を比率で初めて上回ると予想しているのに対し、EIAとOPECは2014年については僅差でOECD加盟国が非OECD加盟国を上回ると予想している。ただ、2015年については、IEA、EIA、及びOPECのいずれもが非OECD諸国がOECD諸国を比率の面で上回ると考えている。 非OPEC産油国の石油供給見通し(NGL等を含む)については、2014年は前年比で日量150~177万バレルの増加(IEAで前年比日量158万バレル、EIAで同177万バレル、OPECで同150万バレルの、それぞれ増加)と各機関は見込んでいる(図18参照)。これは2013年7月時点の予測である前年比で日量114~159万バレルの増加(IEAで前年比日量129万バレル、EIAで同159万バレル、OPECで同114万バレルの、それぞれ増加))から上方修正されている。非OPEC産油国石油供給増加の大部分は米国及びカナダ(IEAで前年比日量144万バレル増加、EIAで同162万バレル増加、OPECで同140万バレル増加)、特に米国(IEAで前年比日量120万バレル、EIAで同135万バレル、OPECで同112万バレルの、それぞれ増加)におけるものである。そして、米国での石油生産量も2013年7月時点(IEAで前年比日量69万バレル、EIAで同82万バレル、OPECで同56万バレルの、それぞれ増加)から相当程度上方修正されている。これは、米国でシェールオイルが当初予想よりも順調に増産されていることが背景にある。なお、その他の非OPEC産油国においては石油生産が比較的堅調に伸びるのはブラジル(IEAで前年比日量15万バレル、EIAで同8万バレル、OPECで同16万バレルの、それぞれ増加)など限定的と見ている。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 27 ? 2015年についても各機関は非OPEC産油国の石油生産量が前年比日量109~127万バレルの増加(IEAで前年比日量120万バレル、EIAで同109万バレル、OPECで同127万バレルの、それぞれ増加)とそれなりに伸びていくと見込んでいる。そしてここでも大部分は米国とカナダ(IEAで前年比日量95万バレル、EIAで同113万バレル、OPECで同100万バレルの、それぞれ増加)、特に米国(IEAで前年比日量74万バレル、EIAで同107万バレル、OPECで同82万バレルの、それぞれ増加)の伸びが引き続き顕著であり、シェールオイルの増産が非OPEC産油国の石油供給に影響を与え続けることが示唆される。なお、その他の非OPEC産油国での石油生産の伸びは2015年においてもブラジル(IEAで前年比日量8万バレル、EIAで同2万バレル、OPECで同20万バレルの、それぞれ増加)など限定的である。 そして、非OPEC産油国石油供給の伸びが世界石油需要のそれを上回るうえに、OPEC産油国のNGL等の供給も伸びていくことから、世界石油需要から非OPEC産油国石油供給とOPEC産油国のNGL等を差し引いた、いわゆる対OPEC石油需要量等(「Call on OPEC」、但しこれ以外に在庫変動も含まれる)はIEA、EIA、及びOPECともに2014年から2015年にかけ2013年に比べて相当程度低下したままとなると予想される旨示される(図19参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 28 ? さらに、IEAの予測を用いて2015年の世界石油需給シナリオを描いてみる(OPEC産油国原油生産量は2014年7月時点のものを維持すると仮定する)と2015年は2014年以上に供給が需要を超過することになる(表2及び3参照)。その結果リビアやイランで事実上の原油の減産が行われている状況が継続したとしても、OECD諸国石油在庫日数は現在から2015年後半にかけ増加傾向となる(図20参照)。他の条件が一定であれば、世界石油需給が緩和方向に向かうことにより原油価格に下方圧力を加えやすくなると見られる。但し、地政学的リスク要因に伴う産油国からの石油供給途絶懸念の市場での増大等原油価格の下落を防止する要因の影響力が強まれば、この限りではないことに留意する必要があろう。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 29 ? 表2 世界石油需給バランスシナリオ(2014年)(単位:日量百万バレル)20131Q142Q143Q144Q142014総需要91.6391.4691.7493.4594.0492.68非OPEC生産54.6755.7956.1756.2556.7856.25OPEC原油生産30.4629.9930.0530.4430.4430.23OPEC NGL生産6.266.326.356.456.466.39総供給91.3992.1092.5693.1393.6892.87在庫変動その他-0.250.630.82-0.32-0.360.19出所:IEAデータをもとに作成*: OPEC産油国については2014年7月の原油生産量がその後も維持されるものと仮定表3 世界石油需給バランスシナリオ(2015年)(単位:日量百万バレル)20141Q152Q153Q154Q152015総需要92.6892.8793.1294.7495.2294.00非OPEC生産56.2556.9357.1957.5958.0857.45OPEC原油生産30.2330.4430.4430.4430.4430.44OPEC NGL生産6.396.666.666.696.726.68総供給92.8794.0394.2994.7295.2394.57在庫変動その他0.191.161.17-0.030.010.57出所:IEAデータをもとに作成*: OPEC産油国については2014年7月の原油生産量がその後も維持されるものと仮定Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 30 ?
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2014/08/18 野神 隆之
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