ページ番号1004488 更新日 平成30年2月16日

2014欧州シェール開発状況~商業生産に向けて多くの地固めが必要~

レポート属性
レポートID 1004488
作成日 2014-08-22 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 非在来型
著者
著者直接入力 永井 一聡
年度 2014
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日:2014/8/15 調査部:永井 一聡 2014欧州シェール開発状況 ~商業生産に向けて多くの地固めが必要~ (各社ホームページ、各種報道、他) ○米EIAの評価では、欧州全体(ロシア除く)としてのシェールガスの技術的回収可能資源量は624Tcfと見積もられている。ただし、シェール資源は各地域やその鉱床ごとに詳細な性質が異なるため、この技術的回収可能量の評価については、今後の探鉱の進捗や生産テストの結果によって大きく修正されていく可能性がある。 ○欧州では、今年発生したウクライナ危機を契機として、ロシア産天然ガスへの依存度を引き下げようとする動きが見られ、自前での天然ガス調達手段の一つとしてシェールガス開発を掲げる国もある。 ○現在、欧州で最もシェールガス開発が進んでいる国はポーランドである。しかし、ポーランドにおいても未だ商業生産には至っておらず、その進捗は当初期待されていたほど順調ではない。現在は、探鉱井の掘削を進めている段階(水圧破砕による掘削も行われており、一部の井戸ではガス生産テストを実施)であり、シェールの賦存状況や特性などのデータを積み上げている状態である。 ○次いでシェール開発の進捗が見られるのは、イギリスである。イギリス政府はシェール資源開発を推進する姿勢で、水圧破砕の環境影響評価や地域自治体との共生などを定めた規制法案を整備し、論理的な地固めの上で開発を進めるというアプローチをとっている。 ○フランス、ドイツなどでは、水圧破砕が原則禁止となっており、実質的にシェール資源開発は凍結状態となっている。 ○今後欧州でのシェール資源開発を進捗・加速させていくためには、①「欧州のシェール」に関する知見の集積、②掘削リグ数の確保、③適切な規制・税制の整備、④住民への適切な情報提供と啓蒙活動といった土台作りを行っていくことが重要である。 周知の通り、北米大陸では2000年代後半以降シェールガスの生産が急激に拡大し、「シェールガス革命」と呼ばれる、世界のエネルギー事情を大きく変動させる事態を引き起こした。現在、シェール(頁岩)からの天然ガス・石油の採掘が商業ベースで実用化されているのは北米大陸のみであるが、それ以外の各国・地域でも、北米大陸で起きたことと同様の効果を期待してシェール資源開発が進められている。 特に欧州では、今年発生したウクライナ危機を契機として、ロシア産天然ガスへの依存度を引き下げようという動きも出てきており、自前での天然ガス調達手段の一つとしてシェールガス開発を掲げる国もあGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? .欧州におけるシェール資源開発の意義 1驕Bその他にも、欧州にとってのシェールガス開発には下記のような意義があると考えられている。 ①ロシア産天然ガスへの依存度を下げ、エネルギーセキュリティを向上させる ②安価な天然ガス調達を実現させる可能性 ③減退する自国内生産量を補うことで持続的な開発を行っていく ④労働者雇用の創出と確保 こういった様々な意義を見出しながらも、シェール層分布地域を保有する国々ではシェール資源の採掘を巡って、その是非を問う議論を含め、様々な動きが起きている。また、そのような動きが進んでいく中において、シェール資源の商業化までの道のりは決して楽なものではないということも実感されつつ 2013年、米EIAは世界のシェール資源量の評価に関するレポートを発行している。図1に、欧州地域のシェール層分布、表1にこのレポートで評価された欧州各国のシェール資源(ガス、オイル)の技術的回収可能量を示す。 .米EIAによる欧州のシェール資源量評価 2ある。 図1 欧州のシェール層分布地域 出所:米EIAよりJOGMEC作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? 表1 欧州各国のシェール資源(ガス、オイル)の技術的回収可能量 国名 ポーランド フランス ウクライナ ルーマニア デンマーク オランダ イギリス トルコ ブルガリア ドイツ スウェーデン スペイン リトアニア ノルウェー 技術的回収可能量 シェールガス (Tcf) シェールオイル (百万バレル) 148 137 128 51 32 26 26 24 17 17 10 8 0.4 0 3300 4700 1100 300 0 2900 700 4700 200 700 0 100 300 0 このレポートによると、欧州全体(ロシア除く)としてのシェールガスの技術的回収可能資源量は624Tcfであり、 世界全体の技術的回収可能資源量7299Tcfの約9%と見積もられている。各国ごとに見た場合、欧州において最大のシェールガス技術的回収可能量を持つのはポーランドで、これにフランス、ウクライナと続く。 ただし、この数値の見方については少し注意が必要である。米EIAが算出した技術的回収可能量の数値は、これまでの北米大陸におけるシェールガス・オイルの生産実績から求められた回収率(シェール(頁岩)中に含まれるガス・石油のうち生産量として回収できた割合)を基に算出したものとなっている。一方、欧州地域でのシェールからのガス・石油の生産実績はいまだ乏しく、シェール(頁岩)に含まれるガス・石油のうちどのくらいの割合で生産できるか(回収率)は評価が難しいと言える(シェールは各地域やその鉱床ごとに詳細な性質が異なるため、ガス・石油の回収率や最適な掘削条件がサイトごとに異なる)。従って、この米EIAのレポートによる技術的回収可能量の評価についても、今後の探鉱の進捗や生産テストの結果によって大きく修正されていく可能性もある。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? R.欧州各国のシェール資源開発状況 (1)概況と全体感 図2に、欧州各国におけるシェール資源開発進捗状況についてまとめた。 全体的に見ても、欧州におけるシェール資源開発は、当初の期待・計画ほど順調には進んでいない。シェールガスの商業生産に至った国は未だになく、開発が進んでいる国・地域でも未だ探鉱段階と言っていいだろう。各国政府の姿勢としては、開発を推進する国も多くあるが、開発を実質凍結させている国も複数見受けられる。 特に、シェール資源開発においては、水圧破砕という掘削技術は不可欠なものであるが、同時にこれを巡っての議論がほぼ全ての国・地域で持ち上がっている。これは、水圧破砕が、薬剤を含んだ水を地中深く注入し、地層に割れ目を作っていくものであるため、地下水や地盤への影響を懸念するものである。 図2 欧州各国のシェール開発進捗 出所:各種情報を基にJOGMEC作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? i2)代表的な国の国別シェール開発状況 ①ポーランド 米EIAの評価によるシェールガスの技術的回収可能資源量は148Tcfと、欧州最大のシェールガス資源量を持つ。現在のポーランドの国内ガス供給はロシアに大きく依存していることもあり、政府はシェールガスの開発をエネルギーセキュリティの向上と経済成長の両面から重要視し、積極的に推進している。 図3にポーランドのシェール分布地域を示す。これまでの評価で最も有望とされている地域はバルト海沿岸地方(Baltic Basin)であり、探鉱・掘削活動も最も活発に行われている。 ポーランドは、現在欧州で最もシェールガス開発が進んでいる国と言ってよいが、その進捗は当初期待されていたほど順調ではない。現在の開発進捗状況は、探鉱井の掘削を進めている段階であり、シェールの賦存状況や特性などのデータを積み上げている状態と言ってよい。これまでに掘削されたシェール探鉱井は約60であり、今年中にさらに20の探鉱井掘削が計画されている。垂直探鉱井の掘削の結果有望と判断されたものにおいては、水圧破砕による掘削とガス流量試験も実施されているが、これまでのところ商業的なガス流量に至ったものはない(これまでに約20の探鉱井で水圧破砕を実施)。 現在、シェール鉱区のライセンスは約80が賦与されており、約30社の企業がシェール資源開発に参画している。代表的な参画企業は、PGNiG(ポーランド国営企業)、3Leg Resources、San Leon Energy、PKN Orlen、Chevron、ConocoPhillipsなどが挙げられる。図4にポーランドのシェール鉱区とライセンス賦与状況(詳細はポーランド環境省ホームページを参照)を示す。 出所:米EIAよりJOGMEC作成 図3 ポーランドのシェール分布地域 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? }4 ポーランドの鉱区とライセンス賦与状況 出所:ポーランド環境省 ・企業撤退の動き、逆に企業間での共同開発協定も 多くの企業がポーランドのシェール資源開発に参画する中、開発から撤退する企業も出始めている。2012年にはExxonMobilが撤退、2013年にはTalisman EnergyとMarathon Energyが撤退している。2014年に入り、Totalもポーランドのシェール資源開発から撤退し、さらにENIも撤退を検討中との噂が出ている(実際ENIは2012年後半以降、ポーランドでのシェール資源開発において活動を見せていない)。 ただし、撤退する企業が相次いでいることが、ポーランドのシェール資源の有望性が低いことには直接的にはつながらない。そもそもシェール資源開発においては、掘削の最適条件は各シェール鉱床ごとに異なるため、それぞれの鉱床にて相当数の掘削を行い、その実績から膨大なデータと知見を得ることが必要とされている。現在の北米におけるシェール資源の商業化は、数百~数千の井戸の掘削実績が土台となっているものである。鉱床ごとにシェールの特性が異なるため、北米大陸でのシェール資源開発に係る知見が全てそのまま欧州またはポーランドのシェール資源開発に活用できるわけではない。つまり、これまでのポーランドにおける井戸の掘削数(約60)は、シェール資源開発の技術的な知見や掘削の最適条件を得るためには絶対的に数が足りていないのである。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? このシェールに関する知見をより効率よく集めるために、企業らも動き出している。2014年、ChevronとPGNiGは、ポーランドにおいて共同でシェール資源の探鉱活動を行っていくとする協力協定に調印した。これにより両社は、シェール鉱床に関連した地質情報を共有化し、効率よくポーランドのシェールに関する知見を集めていくことを狙っている。 ・シェール資源開発加速に向けて法規制改正実施 ポーランドのシェール資源開発を加速させるため、同政府もさらなる動きを見せている。政府にとってもシェール資源開発が当初の見込みよりも遅れていることは芳しくないことであり、開発加速に向け、法規制の整備を行った。これまでのポーランドの法規制では、探鉱ライセンスと生産ライセンスが別個のものであり将来的に生産に移行した際の生産物分与が不確実であったり、掘削のための環境承認手続きが複雑で承認までに長時間を要する、といった面で積極的な開発活動を阻害している部分があった。そこで、2014年6月、新たな地質・鉱業法が策定され、議会承認された。その要点は以下のようなものである。 ・探鉱・生産ライセンスの統合化(探鉱から生産まで権利が継続し安定的に開発参画) ・ライセンス期間は最低10、最長30年間(ライセンス有効期間を長期化し(これまでは探鉱ライセンス5年、生産ライセンスは別)、開発までの猶予期間を拡大) ・環境承認手続きの簡略化(探鉱のための井戸掘削までの期間を短縮し開発を加速) また、昨年の法規制改正検討開始当初に提案されていた、全鉱区の権益に参加する国有企業設立の案は撤回されている。 そして、現在は、この法規制改正に引き続いて、非在来型資源(特にシェールガス、シェールオイル)への税制優遇を組み込んだ新たな税制が検討・議論されている(非在来型資源への税率を在来型資源の半分に する、2020年以前には課税されることはない、など)。 ・ポーランド環境大臣の発言とその真偽 2014年6月、ポーランドの環境大臣Maciej Grabowskiは、「年内に商業的規模でのシェールガス生産が開始される可能性がある」と発言した。なお、当該井戸はPomerania地方としている。 しかし、ポーランドで操業する各企業の状況を見ても、そのように期待できる掘削結果を発表している企業は見られず、その発言内容の真偽は不明である(2014年1月にSan Leon EnegyはBaltic Basin北部Lewino-1G2垂直井の掘削で良好なガス流量試験結果を得たとしているが、その後の進捗は不明)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? ②イギリス 米EIAのレポートによると、イギリス全土における技術的回収可能資源量はシェールガスで26Tcfとされている。これはイギリスの国内消費の10年分に相当する。シェールオイルについてはこちらも技術的回収可能量で7億バレルとしている。 また、イギリスのDECC(Department of Energy and Climate Change)もシェール資源の評価スタディを行っている。こちらは国内のシェール分布地域を3地域に分けて評価(図5および表2)しており、それぞれの原始埋蔵量を評価している(技術的回収可能量ではない)。ただし、経済的および技術的に回収可能な資源量は、実際に掘削を行わないと評価できないとしている。 イギリスにおけるシェールガス開発は現在探鉱段階であり、水圧破砕は過去2011年に1回行われたのみである。その際、近隣地域で二度の小規模地震が発生し、これを受けて開発作業が一時中断された。イギリス政府は掘削を行っていたCuadrilla Resources社に対し原因分析のレポートを要請し、同社は、この地震は水圧破砕により誘発された可能性が高いが、その発生要因の組み合わせは極めてまれであり、将来同じサイトで再発することないだろう、と結論付けている。これを受けて、2012年12月にイギリス国内でのシェールガス探鉱の再開が許可されている。現在は主に在来型(水圧破砕ではない)の掘削方法で探鉱井の掘削を進めているが、水圧破砕による掘削作業の計画もいくつか提出されている。 表2 各シェール分布地域の資源量評価 評価対象地域 原始埋蔵量 Midland Valley ガス49.4~134.6 Tcf 石油32~112億bbl Bowland Basin ガス822~2281Tcf Weald Basin 石油22~85億bbl 出所:イギリスDECC 出所:イギリスDECC 図5 イギリスのシェール分布地域 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? ・イギリス政府はシェール資源開発推進、ただし規制等の基盤整備を重視 イギリス政府はシェール資源開発を推進する方向である。ただし、水圧破砕の環境影響評価や地域自治体との共生などを定めた規制法案を整備し、論理的な地固めの上で開発を進めるというアプローチをとっている。具体的には、探鉱井掘削における環境影響評価の義務付け、シェール資源開発の探鉱井を掘削する地域の自治体に税を支払うこと(水圧破砕井1本につき10万ポンドを操業者が地域自治体に納付)などを提案している。また、シェールガス生産への課税を優遇する(シェールガス生産に課される実効税率を30%とする(在来型は62%))など、シェールガス開発を支援する動きを見せている。 また、シェール井掘削で必要となる水平坑井の際に他人が所有する土地の地下に侵入することについて、申請手続きに係る規制緩和(土地所有者の許可を必要としない)に向けた法改正も計画されている。 ・大企業のイギリスシェール資源開発参画 これまで、イギリスのシェール資源開発は、Cuadrilla Resources、Dart Energy、IGas Energy、Egdon Resourcesといった、どちらかというと中小規模の企業らによって進められてきたが、2013~2014年にかけて資金力のある大企業がイギリスのシェール資源開発へ参入してきている。中小規模企業側にとってみても、資金力のある大企業の参入は業界全体としての開発加速につながると見ており、歓迎の意を見せている。 2013年6月 CentricaがBowland鉱区の権益25%取得 2013年10月 GDF Suezが13鉱区の権益25%を取得 2014年1月 Totalが2鉱区の権益40%を取得 ・6年ぶりの陸上ライセンスラウンド 2014年7月、イギリス政府は2008年以来6年ぶりとなる第14回陸上ライセンスラウンドを開催した。このライセンスラウンドはシェール鉱区を含むものとなっており、前回のライセンスラウンドから6年を要したのも、シェール資源開発による環境影響の調査を詳しく行ってきたことに起因している。 この陸上ライセンスラウンドでは、陸上鉱区をSEA地域(Strategic Environmental Assesment Area)と設定し、開発による環境影響を適切に評価することが求められる。ライセンスを付与された企業は、その鉱区内で掘削作業を行う際には事前に適切な環境承認・許可の取得が必要となる。 このライセンスラウンドの応札締切は2014年10月28日となっている。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? }6 イギリス第14回陸上ライセンスラウンドの鉱区図 出所:イギリスDECC ③ドイツ ドイツのシェールガス技術的回収可能資源量17Tcfとされている。 ドイツでは長らくシェールガス開発に伴う水圧破砕に関する議論が続けられており、水圧破砕の実施については一時的な禁止措置(モラトリアム)となっていた。2013年秋に議会総選挙が行われ、水圧破砕の是非についての議論がようやく進捗すると思われていたが、2014年7月、ドイツ連立政権が出した結論は引き続きの実質水圧破砕禁止というものであった。環境省および経済省が発表した水圧破砕に係る基本原則(ガイドライン)Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 10 ? つまり、実質的に2021年までは水圧破砕禁止が継続されるというものであり、ドイツにおけるシェールガス開発は停滞する可能性が高い。ただし、2021年の規制見直しについては、技術的なデータ・知見に基づくものとされており、そのデータ収集のために限定的に水圧破砕を実施していく可能性はある。 ④フランス 米EIAレポートによるシェールガスの技術的回収可能資源量は137Tcfと見積もられており、欧州ではポーランドに次ぐ資源量を持つ。しかし、フランスでは2011年6月、政府が水圧破砕技術の禁止を採択し、世界初のシェールガス開発(水圧破砕)禁止国となった。この法律採択の以前に、シェール資源開発に係る探鉱ライセンスが賦与されていたが、いくつかのライセンスについては取り消された。残るライセンスについても在来 型の石油・ガス探鉱に限定するといった処置がなされた。 しかし2013年に提出されたフランス議会の報告書において、水圧破砕の禁止について科学的な証拠と経済的な価値に基づき再考すべきとの見解が発表されており、今後条件付きでシェール資源開発が進められる可能性はある。併せて、産業大臣から、将来的には国営企業によってシェール資源開発をコントロールされるべきとの発言がなされている。 また、地下水汚染の懸念をなくすために、水を使わない破砕技術の適用可否が議論されており、プロパンを破砕流体として用いるプロパンフラッキングが注目されている。 このようにフランス国内では、これまでの盲目的なシェール資源開発禁止政策に疑問が投げかけられている状況でもあり、今後はシェール資源開発に対する国としての姿勢が議論されていく可能性がある。 は概ね以下のような内容である。 ・シェールガス採掘のための水圧破砕は原則禁止 (ただし在来型ガス向けはOK) ・水資源保護地域の水圧破砕は禁止 ・2021年に本規制の見直し実施 欧州のシェール資源開発はまだ黎明期であり、商業生産までにはまだ多くの活動・時間が必要である。その中でも、開発加速と継続的な生産のためには、以下のような基盤整備がなされることが重要な要素となるだろう。 ①「欧州のシェール」に関する知見 欧州地域に広がるシェール自体の実力やスイートスポットの分布を把握し、これに最適な掘削条件を見つけGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 11 ? .欧州シェール資源開発の加速に向けた必要基盤 4ネければならない。そして、そのためにはより多くの実掘削とそこからのデータ収集・解析が必要である。そして、場合によっては参画企業間での情報共有を進めることも、効率的な開発につながると考える。 ②掘削リグ数 開発加速のためには多くの井戸掘削が必要で、そのためには多くの掘削リグが必要である。商業生産段階に入ってからも安定的に生産を継続するためには、定常的に井戸掘削を続けなければならない。実際、商業生産を実現している北米には約2000の掘削リグが稼働しているのに対し、現状欧州が保有するリグは約100基ほどに留まる。掘削リグ数を増やしていくことは開発速度に直結する。 ③適切な規制・税制の整備 シェール資源開発の進捗速度は、各国政府・機関による規制や税制に大きく左右される。また、環境保護の観点でも、秩序ある開発を行っていくための規制は重要である。 参画企業にとって、インセンティブが働かなければ、地質自体に魅力があっても活動は進まない。併せて、地域住民や自治体にとってもインセンティブがなければ、参画企業の活動に対して理解を示せず、結果と して開発は進まなくなってしまう。 ④住民への適切な情報提供と啓蒙活動 法規制と合わせて、地域住民自身がシェール資源開発を正しく理解することも重要である。欧州各国ではシェール資源開発、特に水圧破砕というものに対して多くの抗議活動が発生し、企業の活動が停止してしまう事象も起きている。そして、抗議活動に参加している住民がシェール資源開発に対して正しく理解していない場合も多々ある。参画企業や政府機関は、その土地の住民に対して適切に情報提供を行い、シェール資源開発の実態や意義についても正しく理解させていく必要がある。 現状では、仮に商業生産が実現したとしても、欧州におけるシェールガス生産コストは、リグの調達コストや技術サービスコスト等を考えると、7~10ドル/MMBTUと試算されている。これは北米大陸のそれに比べると約2倍に達するものである。欧州の2014年の天然ガス価格は、例えばイギリスのNBPは6~10ドルの間で推移した(2014年8月現在、約7ドル/MMBTU)。 今のコストのままでは、欧州のシェールガス生産はコスト的に競争力に乏しく、地場産天然ガスとして安定的に生産していくためには、今後の技術発展や知見集積に伴う地中からのガス回収率向上などによるコスト低減が必要にGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 12 ? (1)欧州のシェールガス開発のコスト .その他参考情報 5ネる可能性が高い。 (2)欧州のシェールガス生産量予測(参考情報) 欧州のシェール資源開発はまだ始まったばかりで、シェール自体の実力も不明瞭な状態であるが、既に欧州地域のシェールガス生産量を予測している企業もある。 フィンランドのコンサルタント会社であるPoyry Management Consultingは、EU-28におけるシェールガス生産量について、開発が妥当な速度で進むケースと、開発が急速に進むケースとでシナリオを分けつつも、予測を行っている(図7)。ただし、この予測は今後のシェール資源開発の進捗によっては大きく異なっていく可能性もある。 しかし、現在のところ、欧州におけるシェール資源が本格的に商業生産に移行するのは2020年以降という見方が有力である。 開発妥当ケース 開発加速ケース 出所:Poyry Management Consulting 図7 EU28のシェールガス生産量予測 以上 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 13 ?
地域1 欧州
国1
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 欧州
2014/08/22 永井 一聡
Global Disclaimer(免責事項)

このウェブサイトに掲載されている情報はエネルギー・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、機構が作成した図表類等を引用・転載する場合は、機構資料である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。機構以外が作成した図表類等を引用・転載する場合は個別にお問い合わせください。

※Copyright (C) Japan Organization for Metals and Energy Security All Rights Reserved.

本レポートはPDFファイルでのご提供となります。

上記リンクより閲覧・ダウンロードができます。

アンケートにご協力ください
1.このレポートをどのような目的でご覧になりましたか?
2.このレポートは参考になりましたか?
3.ご意見・ご感想をお書きください。 (200文字程度)
下記にご同意ください
{{ message }}
  • {{ error.name }} {{ error.value }}
ご質問などはこちらから

アンケートの送信

送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。