【和文翻訳版】Pemex may be on the path to a breakthrough. Pity the details.
レポートID | 1004496 |
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作成日 | 2014-09-22 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
分野 | エネルギー一般企業 |
著者 | |
著者直接入力 | ヤスミン・シンクレア |
年度 | 2014 |
Vol | 0 |
No | 0 |
ページ数 | |
抽出データ | 更新日:2014/9/22 ワシントン事務所:ヤスミン・シンクレア 【和文翻訳版】Pemex may be on the path to a breakthrough. Pity the details. (BBC News, Reuters, EIA, CRS, Mayer Brown) ③企業、①エネルギー一般 ・2012年12月に就任したメキシコのエンリケ・ペーニャ・ニエト(Enrique Pena Nieto)大統領(制度的革命党:PRI)は、2013年8月に一連のエネルギー改革を提案した。同国における最も喫緊の課題の一つである国営石油会社Petroleos Mexicanos (Pemex)の生産減退に取り組むために、ペーニャ大統領は野党との間に合意を得て、同国の石油・天然ガス産業に対する民間投資を可能とする憲法改正を行った1。 ・この改革は現在法制化され、Pemexの76年にも及ぶメキシコのエネルギー産業における独占的地位を解消した。外国の石油企業は今やメキシコに参入可能であり、Pemexはこれら企業との競争に曝されることになる。国際石油メジャーのエクソンモービルや、ロイヤル・ダッチ・シェル、ロシアのルクオイルは、2015年第1四半期に実施されると言われている最初の入札への参加意欲を有する企業として名を連ねる2。エネルギー改革の実現はペーニャ政権の試金石であったが、6年間の任期の最初の1年目で達成されたのである。 ・とはいえ、安全の問題をはじめ克服すべき課題がまだ残されていることにも留意が必要であろう。 ※本稿は2014年9月3日付でホームページに掲載された“Pemex may be on the path to a breakthrough. Pity the details”(ワシントン事務所ヤスミン・シンクレア)を和文翻訳したものです。 .イントロダクション 1Petroleos Mexicanos (Pemex)は、メキシコの国営石油会社である。Pemexは1938年に設立された世界でも最初の部類の国営石油会社であり、メキシコの石油・天然ガス産業における完全な独占的地位を授けられている。Pemexは、メキシコの「ドル箱」であり 3、2013年の同国の輸出収入の13%、政府歳入の約32%を稼ぎだしている 4。Pemexはまた、メキシコの「聖牛」でもある 5。メキシコの人々は、エネルギー産業 1 Goldwyn, David L., “Mexico Rising: Comprehensive Energy Reform at Last?,” Atlantic Council, Adrienne Arsht Latin America Center, December 2013, http://www.atlanticcouncil.org/images/publications/Mexico_Rising.pdf, p. 1. 2 Grant, Will, “Mexico awards 83% of oil reserves to state firm PEMEX,” BBC News, August 13, 2014, http://www.bbc.com/news/business-28776695 , accessed August 20, 2014. 3 Samples, Tim R and Jose Luis Vittor, The Past, Present, and Future of Energy in Mexico: Prospects for Reform Under the Pena Nieto Administration (September 4, 2013). Houston Journal of International Law, Vol. 35, No. 3, p. 101, 2013. Available at SSRN: http://ssrn.com/abstract=2315306, p. 699, accessed June 16, 2014. 4 U.S. Department of Energy. Country Analysis Briefs, Mexico, April 24, 2014 (Washington, D.C.: Energy Information Administration), 1, http://www.eia.gov/countries/analysisbriefs/Mexico/mexico.pdf, accessed on July 16, 2014. (Hereafter EIA.) 5 Samples, Tim and Jose Luis Vittor supra note 2, p.699. - 1 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 フ国家による管理を革命の遺産の同義語として見做し、「石油は自分たちのもの」6という題目を唱え続けてきた 7。Pemexは、政府歳入の30%から40%をもたらしメキシコ人一人ひとりの生活に影響を与えている8。 しかし、「稼ぎ手」と「国民的なイコン」という二重の役割は、メキシコ及びPemexにとって重荷となっている。メキシコの国家財政に対する巨大な納税義務と国内石油生産量の減少への対処法を制限され、Pemexはこれまでのところプロジェクトの拡大と近代化ための投資不足に陥ってきた9。メキシコの原油生産量は過去10年間において急降下している。10年前のピーク時385万bbl/dから、2013年では290万bbl/dまで減少してきている10。この数量は凡そ100万bbl/dの喪失を意味している。(グラフA参照。) A. メキシコの石油生産量は2004年にピークを迎え、その後減少傾向にある (米国エネルギー情報局(EIA: U.S. Energy Information Administration)データ、2014年4月24日発表) 出典:EIA キシコの石油産業の深刻な衰退への対応として、エンリケ・ペーニャ・ニエト(Enrique Pena Nieto)大 メ 6 Villagran, Lauren, “Long a state monopoly, Mexico’s oil sector moves to embrace outside world,” The Christian Science Monitor, August 13, 2013, http://www.csmonitor.com/World/Americas/2013/0813/Long-a-state-monopoly-Mexico-s-oil-sector-moves-to-embrace-outside-world, accessed on July 15, 2014. 7 Johnson, Keith, “Reform meets reality in Mexico’s energy sector,” The Monitor, June 27, 2014, http://www.themonitor.com/business/reform-meets-reality-in-mexico-s-energy-sector/article_7a6dc338-fe56-11e3-8747-0017a43b2370.html, accessed on July 1, 2014. 8 Samples, Tim and Jose Luis Vittor, supra note 2, p. 699. 9 Navarrete Lopez, George Eduardo (2010) Powering up: Latin America's energy challenges: the Mexican oil reform: before and after. IDEAS reports - strategic updates, Kitchen, Nicholas (ed.) SU005. LSE IDEAS, London School of Economics and Political Science, London, UK. http://eprints.lse.ac.uk/43679/, p. 43, accessed July 17, 2014. - 2 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 摎フは2013年末に憲法を修正する法律に署名、発効させ、メキシコの油ガス田の開発に外国企業が参入することを可能にした11。すなわち、ペーニャ大統領は2013年12月20日に、Pemexの1938年から76年にも及ぶ石油・天然ガス産業における独占的地位を終わらせたのである 12。皮肉なことに、ペーニャ大統領は1938年にメキシコ石油産業を国有化したのと同じ政党の出身である13。 メキシコ及びPemexの将来は密接に絡み合っており、そして米国にも影響を及ぼしている。メキシコは、石油輸出国機構(OPEC: Organization of the Petroleum Exporting Countries)の加盟国ではないが、世界の石油生産量上位10カ国の一つであり、西半球では上位3位に入る米国の重要なエネルギーパートナー国である14。カナダ、サウジアラビアに続いて、メキシコは米国への原油輸出国として3番目の位置につけている(グラフB参照)。そのため米国はメキシコのエネルギー産業改革の潜在的な影響に大きな関心を払ってきた。米国は、メキシコの最大の貿易パートナーである一方、メキシコはカナダに次ぐ米国の輸出市場である15。1994年の北米自由貿易協定(NAFTA: North American Free Trade Agreement)は、米国とメキシコとの経済的関係を強め、1993年から2013年の間で両国の貿易額は506%増加した16。 B. 米国の原油輸入国上位三カ国:カナダ、メキシコ、サウジアラビア(EIAデータ、2014年6月27日発表) 出典:EIA 10 Yo, Michael, “Mexico’s energy reform seeks to reverse decline in oil production,” EIA, May 27, 2014, http://www.eia.gov/todayinenergy/detail.cfm?id=16431, accessed on July 1, 2014. 11 Seelke, Clare Ribando, Michael Ratner, M. Angeles Villarreal, Curry L. Hagerty, “Mexico’s Oil and Gas Sector: Background, Reform Efforts, and Implications for the United States,” CRS Report R43313 (Washington, DC: Library of Congress, Congressional Research Service, January 6, 2014). 12 Goldwyn, supra note 1. 13 Goldwyn, supra note 1. 14 EIA, supra note 2. 15 Seelke, et al., page 10. 16 Ibid. Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 3 - 0世紀の最初の数十年間、主に英国及び米国の外国投資家は、1938年の石油産業の国有化に至るまで、メキシコを世界石油生産量の4分の1を生産する世界第2の石油生産国として押し上げることに貢献した17。しかし、流血のメキシコ革命(1910年-1920年)と1917年のメキシコ憲法において盛り込まれた民間産業に対する厳しい制限により、メキシコの炭化水素産業に対する投資は最終的に減少することになった18。メキシコ憲法第27条は、連邦政府に炭化水素資源の完全な所有権を認めており、「国家が[炭化水素資源]の採取を行わなければならない19」。憲法第28条は、さらに進めて「石油及び全ての炭化水素資源」と「基盤的石油化学産業」は、国家の活動上の「戦略的分野」と規定している 20。これら2つの重要条項は、無数の法律及び規則とともに炭化水素産業に関連するあらゆる活動を戦略的分野として見ており、それらの採取を国家の領分とすることを正当化している21。 メキシコ革命と1938年の石油産業国有化との間の国家介入の年月において、メキシコで活動する外国企業は動揺した。他方、政府の方針は今日においても続いているように、社会的福利計画と石油産業との境界を徐々に曖昧にしていった。また、石油に関する政策も変遷し、民間企業と協力して探鉱・開発・操業を行う国家機関を設立した。そのような政策は、Petroleos de Mexico S.A. (Petromex)の設立によって顕著となった。Petromexは石油の価格統制や配給を含む石油生産の完全な支配のために1925年に創設された。Petromexは、民間部門と公的部門とが混合したジョイントベンチャー企業であり、メキシコ国民のみがその株式を保有することができた。しかし、Petromexの試みも最終的には失敗に終わる22。 メキシコ憲法による煩雑な制限は、外国企業とメキシコ政府との間に緊張を産み出し、それは1938年の3月に頂点を迎えた。外国企業による不公正な労働慣行とそれに組み合わさった貧弱な石油資源の管理を理由に、ラザロ・カルデナス(Lazaro Cardenas)大統領は米国その他外国企業のメキシコ石油産 17 Hogan, Jeffrey P., Lt. Col, USMC, “Reforming Mexico’s Energy Sector to Enhance Stability,” Naval War College, October 27, 2011, http://oai.dtic.mil/oai/oai?verb=getRecord&metadataPrefix=html&identifier=ADA555290, p. 6, accessed June 17, 2014, and Samples, Tim. and Jose Luis Vittor, supra note 2, p. 715. 18 Seelke, et al., supra note 10, p. 2. 19 Parker, Dallas, Jose L. Valera, Pablo C. Ferrante, Christopher P.B. Erckert, Joh, D. Furlow, Gabriel J. Salinas, “Mexico’s President Unveils Historic Proposal to Open the Country’s Energy Sector to Private Investment,” Mayer Brown, October 21, 2013, http://www.mayerbrown.com/Mexicos-President-Unveils-Historic-Proposal-to-Open-the-Countrys-Energy-Sector-to-Private-Investment-10-21-2013/, accessed July 1, 2014. [Hereafter Mayer Brown.] 20 Perez Vazquez, Carlos, transl, “The Political Constitution of the Mexican United States,” http://www.juridicas.unam.mx/infjur/leg/constmex/pdf/consting.pdf, accessed July 18, 2014, p. 38. 21 Morales, Isidro, Ph.D., “The Twilight of Mexico’s State Oil Monopolism: Policy, Economic, and Political Trends In Mexico’s Natural Gas Industry,” Center for Energy Studies at Rice University's Baker Institute, December 9, 2013, http://bakerinstitute.org/files/4836/download/, accessed June 17, 2014, p. 14. 22 Hogan, supra note, 16, p. 6. - 4 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 .Pemexの過去 2ニにおける権益を没収した 23。失敗に帰したPetromexの残滓と国有化の混乱の中からPemexは生み出され、“El petroleo es nuestro.”(石油は我らのもの)という象徴的スローガンは全てのメキシコ国民のものとなった24。実際、メキシコ国民の大多数は天然資源を彼らの生得権に近いものと見做し、その所有権を国民のものと考えた。 メキシコの石油産業は国有化されたが、憲法に基づきPemexは依然として外国企業とのサービス契約を締結することが認められた。しかし、1958年の石油法の施行は、そのような全ての民間企業との協力に終わりをもたらした。1958年以降、キャッシュによる支払のみがサービス契約に対する対価として認められ、株式や利益による補償は完全に消え去った25。 .Pemexの現在 3石油生産国のなかでも石油産業に対する投資に関して最も煩雑で制限の多い制度のなかにありながらも、Pemexは依然として際立った存在である。Pemexは2014年のForbes誌の世界500企業の36位に位置付けている26(ブラジルの国営石油会社Petroleo Brasilero S.A. すなわちPetrobrasは28位に付けている)。ラテンアメリカのトップ500企業のうち、Pemexは2009年にPetrobrasに続いて2位に位置付け、ベネズエラの国営石油会社Petroleos de Venezuela, S.A. (PDVSA)をリードした 27。Pemexはまた、2013年で1,230億ドルの収入と530億ドルの税引前利益を有する世界で第7位の石油生産企業である28。しかし、2013年の全損失は130億ドル、2014年第1四半期では27億4千万ドルとなっている29。 しかし、メキシコは簡易な石油へのアクセスに急速に失われつつある。2013年、メキシコの原油生産量は2004年のピーク生産量の385万bbl/dから減少して290万bbl/dとなった。2014年4月時点における原油生産量はおよそ250万bbl/dであり、これは1995年以来の月別平均生産量では最低水準である30。メキシコの代替率(生産された石油・天然ガスに対する企業が保持している埋蔵量に加えられた新たな埋蔵量の割合。ビジネスを長期的に継続するためには少なくとも100%が必要とされる。)は、このEIAのデータの暗い数値を際立たせている。認定済みの石油及び天然ガス埋蔵量の代替率は、2012年の 23 Ibid. 24 Samples, Tim. and Jose Luis Vittor, supra note 3, p. 716. 25 Ibid. 26 http://fortune.com/global500/pemex-36/, accessed July 18, 2014. 27 http://rankings.americaeconomia.com/2010/500/ranking-500-america-latina.php, accessed July 18, 2014. 28 Webber, Jude and John Paul Rathbone, “Energy: back to black,” Financial Times, June 23, 2014, http://www.ft.com/intl/cms/s/0/b14f4110-f546-11e3-91a8-00144feabdc0.html, accessed July 18, 2014. 29 Williams, Adam, “Mexico Oil Opening May Release Gusher for Foreigners,” Bloomberg Markets Magazine, May 13, 2014, http://www.bloomberg.com/news/2014-05-13/mexico-oil-opening-may-release-gusher-for-foreigners.html, accessed June 10, 2014. 30 Yo, Michael, supra note 9. - 5 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 04.3%から2013年の67.8%へと落ち込んだ31。 Pemexは明らかに課題に直面している。Pemexの全盛期は莫大なカンタレル沖合油田が発見された1970年代であった32。カンタレル油田はメキシコにおいて発見された油田のなかでも最大のものであり、メキシコに恩恵をもたらしてきた。1970年代に生産が開始されて以来、カンタレル油田はメキシコの財源に約5千億ドルを収めてきた33。しかし、カンタレル油田その他沖合油田の自然減退の帰結としてメキシコの原油生産量は減少することとなった34。 メキシコの石油産業の改革の必要性は、過去何十年にもわたって理解されてきた。幾人かのメキシコ大統領はメキシコのエネルギー産業の改革を試みてきたが、最も有名なのは中道右派の国民行動党(PAN: Partido Accion Nacional)のフェリペ・カルデロン(Felipe Calderon)前大統領が2008年に行ったものである。カルデロン大統領の提案は法制化されたが、中道派の制度的革命党(PRI: Partido Revolucionario Institucional)が主導するメキシコ議会反対派によって骨抜きにされてしまった。しかし、Pemexの「稼ぎ手」と半ば宗教的な「偶像」としての二重の役割はもはや受け入れられなくなっていた。国内レベルでは、メキシコは福利厚生プログラムから麻薬対策に至るまでのあらゆる事業に対して石油収入に依存していた。政府による重税負担によって、Pemexは1998年以来赤字操業が続き、負債が増加した。政府はPemexからの収入に深く依存する一方で、Pemexが技術や探鉱の分野に再投資するのを妨げたのである35。 何十年もの間、エネルギー改革は「タブー」であった 36。石油生産量の減少とともに、Pemexは投資や技術、熟練労働者を必要とした。これらの要素は、Pemexに新しい「生産性の文化」を浸透させるとともに、改革へのきっかけを開くはずのものであった37。2012年のメキシコ大統領選挙の選挙期間中、PRIのエンリケ・ペーニャ・ニエト氏は公にメキシコのエネルギー産業の改革を支持する立場で選挙運動を行った。大統領に就任後、ペーニャ氏は2013年8月12日にメキシコ上院に対してエネルギー改革に関する憲法修正提案を明らかにした 38。氏の提案は「戦略的分野」のリストから炭化水素開発の分野を取り除き、Pemexが探鉱・開発プロジェクトにおいて国際企業との間で利益分与契約の締結を可能とするものであった。この改革提案の下では、Pemexはまた、石油精製、石油・天然ガスの輸送、石油化学製品の生産を 31 Barrera, Adriana, Alexandra Alper, Lisa Shumaker, “Mexican capacity to replace oil, gas reserves falls in 2013 ? Pemex,” Reuters, May 15, 2014, http://www.reuters.com/article/2014/05/16/mexico-pemex-idUSL1N0O203620140516, accessed June 27, 2014. 32 Seelke, supra note 10, p. 2. 33 Samples, Tim. and Jose Luis Vittor, supra note 2, p. 703. 34 EIA, supra note 3. 35 Samples, Tim. and Jose Luis Vittor, supra note 2, p. 707. 36 Zissis, Carin, “2014Mexico City Blog: Energy Reform Panel and Hydrocarbons Undersecretary Lourdes Melgar,” Americas Society/Council of the Americas, May 12, 2014, http://www.as-coa.org/events/2014-latin-american-cities-conferences-mexico-city/blogs/2014-mexico-city-blog-energy-reform-panel-and-hydrocarbons-undersecretary-lourdes-melgar, accessed July 1, 2014. 37 Ibid. 38 Mayer Brown, supra note 15. - 6 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ワむ下流分野においても民間企業との契約が可能となっていた39。 ペーニャ大統領の提案はPANの別の提案の発表の後すぐに発表された40。PANの改革案はペーニャ大統領の改革案よりも更に進んだもので、石油・天然ガスの上流及び下流分野を民間部門の投資と競争に開放するものであった41。PANの提案は、民間企業に対してメキシコのエネルギー産業を最も広く開放するものであった42。PRIとPANとの連合はすぐに2013年12月に議会の承認を可能とした。左派の民主革命党(PRD: Partido de la Revoluccion Democratica)は、Pemex行う事業についての民間企業の関与には全て反対した。 最終的に改革案はメキシコ議会を通過し、PRI-PAN連合の後ろ盾の下で大多数となる31州の州議会によって承認され、改革は実現した。ペーニャ大統領は、2013年12月20日に憲法を改正する法律に署名し、発効させた。この改革においてもPemexが依然として国営企業のままであることに留意することは重要である。Pemexは民間化されなかったのである。 この改革に含まれるいくつかの重要な要素は以下のとおりである: ? 4種類の石油・天然ガス探鉱・開発契約モデルの創設:サービス契約、利益分与契約、生産分与契約、ライセンス契約。 ? 中央銀行によって管理されるメキシコ石油基金の設立。 ? 国家による地下の炭化水素資源の所有権を維持する。しかし民間企業に一旦これらの資源が採取された後には所有権を認め、会計目的のために埋蔵量を報告することを認める。 ? 下流分野の民間投資への開放。 ? 民間企業が参加する入札の前にPemexにメキシコの資源の優先的取り置きを認める(ラウンド・ゼロ)。 ? Pemexを国営会社のままとする一方、予算の自立性を与え、役員会から労働組合の代表者を除く。 Pemexは、新たなプロジェクトに関して他の民間企業と競争して入札を行わなければならない。この改革はまた、エネルギー省(SENER: Energy Secretariat)と国家炭化水素委員会(CNH: National Hydrocarbon Commission)の規制権限を拡大した。Pemexはラウンド・ゼロにおいて、とりわけペルディド・フォールド・ベルト(Perdido Fold Belt)とラカチ(Lakach)天然ガス鉱区の保持と開発を望んでいること 39 Seelke, supra note 10, p. 3. 40 Mayer Brown, supra note 15. 41 Mayer Brown, “Sweeping Mexico Energy Reform Proposal,” August 2, 2013, http://www.mayerbrown.com/Sweeping-Mexico-Energy-Reform-Proposal-08-02-2013/, accessed July 18, 2014. - 7 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 tァクト・ボックス* メキシコにおける3つの主要政党 メキシコは複数政党制度を採用している。すなわちメキシコには2つ以上の支配的な政治政党が存在している。 - 国民行動党(PAN: Partido Accion Nacional):1939年設立。中道右派。かつては上院で最大の政党 *であった。 - 民主革命党(PRD: Partido de la Revoluccion Democratica):メキシコにおける3つの主要政党のうちで比較的最近に結成されたもの。1989年設立。中道左派。メキシコシティを長く支配していた。 - 制度的革命党(PRI: Partido Revolucionario Institucional):エンリケ・ペーニャ・ニエト大統領が所属する政党。3度の党名変更の下で71年以上に渡ってメキシコ議会を支配していた。中道。メキシコ上院の多数派政党。 .ラウンド・ゼロ--欲しいものリスト 4ラウンド・ゼロは3月21日に開始された手続きであり、そのためにPemexは探鉱・開発のために継続して保持することを希望する地域のリストをSENERに提出した。このリストは事実上Pemexの「欲しいものリスト」である 43。当初このリストの内容は公開されなかったものの(CNHは後に詳細を公表した)、Pemexは83%の確認・推定埋蔵量(2Pとして知られる)を保持し、残りの17%を政府に譲渡することを希望した44。ラウンド・ゼロは、国際石油メジャーを含む他の石油企業に対して、将来のいずれの資源を入札によって提供するかを決定するものであった 45。Pemexの「欲しいものリスト」ということは、Pemexがカンタレル(Cantarell)やクー・マルーブ・ザープ(Ku-Maloob-Zaap)といった浅海鉱区の保持を希望するであろうことを意味した。これら2つの鉱区は、合計してメキシコの生産量の半分を構成している46。アナリスト達は、Pemexがこのリストの中から何を除外しているかについてより関心を有していた。特に、Pemexは大水深及びシェール層は強力な「手持ちカード」ではないと判断し、その開発のためには民間企業とのジョイントベンチャー形成の可能性に委ねることとした 47。このような地域には、チコンテペック(Chicontepec)やペルディド(Perdido)が含まれる。SENER高官は、ラウンド・ゼロには「いくつかの大水深地域、シェール 42 Frederick, James, “Mexico’s PAN party presents reform to break oil, power monopolies,” Business News Americas, August 1, 2013. 43 Webber, Jude, “Pemex wish list signals start of Mexican energy reform,” Financial Times, March 20, 2014, http://www.ft.com/intl/cms/s/0/e0a5c578-b019-11e3-b0d0-00144feab7de.html?siteedition=intl#axzz2x5xghHT8, accessed August 8, 2014. 44 Harrup, Anthony, “PEMEX Seeks to Keep 83% of Proven, Probable Reserves,” Wall Street Journal, March 25, 2014, http://online.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304679404579459782160606454, accessed August 8, 2014. 45 Ibid. 46 Webber, supra note 38. 47 Noon, Chris, “Pemex plays to strengths with wish list,” Interfax Natural Gas Daily, March 31, 2014, http://interfaxenergy.com/gasdaily/article/7487/pemex-plays-to-strengths-with-lsquowish-listrsquo, accessed August 8, 2014. - 8 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 を表明している。 月30日、SENERは改革の実行方法を規定した下位法をメキシコ議会へと提出した4950。この法案の通過の見込みは、PANの政治家が審議の席を立ったため暗雲が立ち込めた 51。また、審議日程が6月に終了し再開が9月となることも法案成立のリスクとなった52。しかし11時間にも及ぶ審議の結果、メキシコ下院は7月29日にこれらの下位法を通過させ、歴史的なエネルギー改革の最終的な承認のための道を切り開いた。下院での法案通過後まもなくして上院でも同法案は通過した。8月6日、自ら引いた期限から3ヶ月後に上院は、賛成78、反対26で憲法改正を実行する下位法を通過させたのである53。 ペーニャ・ニエト大統領は、この新しい法律を8月11日に署名、発効させ、メキシコのエネルギー市場を民間企業に開放するスケジュールを更に進めた。ペーニャ大統領はまた、8月末までに新たな天然ガスパイプラインシステムの構築を早めることを述べた 54。ペーニャ大統領はさらに、この新しい法律を適用するのに必要な規制・監督機関の設立を実行に移すことも約束した 55。SENERは、9月17日までにラウンド・ゼロに関する決定を下すことを予定していたが、実際には予定より1ヶ月早く、8月11日の週のう.ラウンド・ゼロ?上流権益の配分 6ちに結果を発表した。 8月13日の水曜日、SENERはPemexの希望通りに83%の2Pリザーブの保持を認めた。他方で、31%のプロスペクティブリソーシスを保持するというPemexの希望は21%まで削減されて叶えられた56。SENERはPemexの大水深及びシェール開発の分野での能力不足を疑ったと言われている。Pemexはまた、保持がガス、チコンテペックといった非在来型、浅海域のいくらか」が含まれるだろうと述べている48。 5.次のステップに向けた前進 48 Ibid. 49 Gomez, Jr., Christian, “Get the Facts. Secondary Laws for Energy Reform Presented to Mexico’s Senate,” Americas Society/Council of the Americas, April 30, 2014, http://www.as-coa.org/blogs/get-facts-secondary-laws-energy-reform-presented-mexicos-senate, accessed July 1, 2014. 50 PEMEX Round Zero, http://sener.gob.mx/webSener/rondacero/_doc/Round%20Zero.pdf, accessed August 18, 2014. 51 Business News Americas staff reporters, “Mexico energy debate stalls as PAN walks out,” Business News Americas, June 19, 2014 52 Johnson, Tim, “Mexican opposition hold energy reform hostage,” Christian Science Monitor, June 20, 2014, http://www.csmonitor.com/World/Americas/2014/0620/Mexican-opposition-holds-energy-reform-hostage, accessed July 15, 2014. 53 Williams, Adam, and Eric Martin, “Mexico Passes Final Rules to Open Oil Industry to Private Firms,” Bloomberg, August 7, 2014, http://www.bloomberg.com/news/2014-08-07/mexico-passes-final-rules-opening-oil-industry-to-private-firms.html, accessed, August 7, 2014. 54 Harrup, Anthony and Laurence Iliff, “Mexico Hastens Energy Ovehaul,” Wall Street Journal, August 12, 2014, http://online.wsj.com/articles/mexico-hastens-energy-overhaul-1407803143, accessed August 12, 2014. 55Stevenston, Mark, “Mexico opens its fuel industries to investors,” Washington Times, August 12, 2014, p. A8. Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 9 - 咜メされた地域を認められて「満足」であったと言われている 57。Pemexは、保持が認められた資産のなかの10プロジェクトの開発を進めるために、民間企業とのジョイントベンチャーの形成を模索する意向である58。このラウンド・ゼロによる配分は、Pemexに9万エーカーをカバーする206億bbl原油相当(BOE: barrels of oil equivalent)の2Pリザーブを付与した。ラウンド・ゼロは確認埋蔵量として、Pemexに124億5千bbl原油相当(BOE)を付与した59。 Pemexがジョイントベンチャーを模索する10プロジェクトは、4つのエリアから構成される。第1のグループは、陸上及び沖合の成熟鉱区であり、二次回収の最適化を進めることが目的である。第2のグループは3つの重質油生産鉱区であり、高い技術力が必要とされる。これらのエリアには、アヤトシル(Ayatsil)、テケル(Tekel)、ウィトズィル(Uitzil)が含まれる。第3のグループは、ラカチ鉱区の巨大な天然ガス層であり、最低でも68億ドルの投資が必要と言われている。第4のグループは、ペルディド地域における大水深鉱区である。このペルディド地域は5億bbl原油相当が賦存していると予測されており、今後8年間で110億ドル以上の投資が必要と言われている。 鉱区の発表に加えて、SENERはこれまで入札で付与されていた統合探鉱・生産契約(CIEP: Integrated Exploration and Production Contract)と資金公共事業契約(COPF: Financed Public Works Contract)を、探鉱・開発活動に係る新しい契約形態に変更することを発表した。アナリスト達は、この契約変更は2段階に分けて進められると指摘している。最初の段階は11の契約の変更について2014年8月から12月にかけて行われ、第2の段階はまた別の11契約について2015年に変更が行われる。Pemexはこれによって新しい契約形態をこれらの既存契約に適用し、新しい好条件の財務条件を利用す.ラウンド・ワン 7る60。 ラウンド・ワンは、外国の探鉱・開発企業がメキシコの上流部門に参入するためのプロセスを規定している。2014年11月にメキシコ政府は、契約形態、構造及び財務条件に対する外部コメントを得るために 56 Alire Garcia, David, Tomas Sarmiento and Adriana Barrera, “Mexico assigns Pemex 83 pct of 2P reserves, 21 pct of prospective resources,” Reuters, August 13, 2014, http://www.reuters.com/article/idUSL2N0QJ1IU20140813, accessed August 13, 2014. 57 Montes, Juan and Laurence Iliff, “Pemex to be well provided for in Mexican Energy Overhaul,” Wall Street, Journal, August 12, 2014, http://online.wsj.com/articles/pemex-to-be-well-provided-for-in-mexican-energy-sector-overhaul-1407875457?KEYWORDS=pemex, accessed August 13, 2014. 58 Iliff, Laurence, “Mexico Outlines Plan to Open Some Oil Reserves to Foreign Companies,” Wall Street Journal, August 13, 2014, http://online.wsj.com/articles/mexico-outlines-plan-to-open-some-oil-reserves-to-foreign-companies-1407957987?KEYWORDS=pemex, accessed August 13, 2014. 59 Alire Garcia, David, “FACTBOX: Mexico’s Round Zero and Round One oil projects,” Reuters, August 14, 2014, http://in.reuters.com/assets/print?aid=INL2N0QJ2Z620140813, accessed August 18, 2014. 60 Alire Garcia, David and Tomas Sarmiento, “UPDATE 3-Mexico hopes to lure $50.5 billion in historic oil tender,” Reuters, August 13, 2014, http://www.reuters.com/article/2014/08/13/mexico-reforms-energy-idUSL2N0QJ1MG20140813, accessed August 20, 2014. - 10 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 アれらの素案を発表する予定である。2015年2月には、入札のための一連の資料が発表され、契約の締結は同年5月から9月の間に予定されている。入札に供されるのは全部で169鉱区であり、うち探鉱段階の鉱区が109鉱区、生産段階の鉱区が60鉱区となっている。ラウンド・ワンにおいて発表された対象鉱区は、メキシコ政府が産業界のフィードバックを得て変更する可能性がある。メキシコは、ペーニャ・ニエト大統領の現政権の任期である2018年までに毎年少なくとも1回は公開入札を実施する意向である61。入札にあたってはCNHが入札及び契約締結を所管する。 新しい法律は以下の契約形態を規定している。(i) サービス契約、(ii) ライセンス契約、(iii) 利益分与契約、(iv) 生産分与契約、である62。 i. ii. iii. iv. サービス契約: 全ての生産物は政府に帰属し、支払はキャッシュでのみ支払われる。 ライセンス契約: 契約者は井戸元において全ての生産物を引取り、所有する。契約者は、サインボーナス、探鉱料金、ロイヤルティ、生産物価値の一定割合を政府に支払わなければならない。これらの支払は、契約者が負っている税金とともに全てキャッシュで支払われる。 利益分与契約: 契約者は全ての生産物をCNH傘下のマーケティング企業に持ち込む。これら生産物の販売収入はメキシコ石油基金へと納められる。メキシコ石油基金は政府に負っている支払額を保管する。契約者は毎月、費用回収分と利益の割当分の支払をキャッシュで受ける。 生産分与契約: 契約者への支払は、費用回収分と操業利益の割当分相当の支払を生産物の現物で受け取る。 ロイヤルティに関しては、原油1bbl当たりの価格として決定される。原油価格が48ドル以下の場合には、ロイヤルティ率は7.5%となる。原油価格が48ドル以上になった場合には、以下のフォーミュラが適用される。 [(0.125 × 1bblあたりの価格)+1.5]% このフォーミュラに従えば、1bbl当たりの契約価格が100ドルの場合には、ロイヤルティは14%となる63。 ラウンド・ワンに関するプレスリリースの完全版は以下で入手可能である(但し西語)。 http://www.sener.gob.mx/portal/Default_blt.aspx?id=2921 61 Montes, Juan, “Mexico Opens Energy Sector to Private Investors,” Wall Street, Journal, August 7, 2014, http://online.wsj.com/articles/mexico-opens-energy-sector-to-private-investors-1407392884?KEYWORDS=PEMEX, accessed, August 7, 2014. 62 Mayer Brown, “Analysis of Mexico’s New Hydrocarbons Legal Regime,” Mayer Brown, August 14, 2014, http://www.mayerbrown.com/files/Publication/69fe7acd-ca5b-4d1c-a172-31678b13ec06/Presentation/PublicationAttachment/75b0fe83-d4a2-4523-b8e2-3f7ae78102a7/UPDATE-Analysis-of-Mexicos-New-Hydrocarbons-Legal-Regime.pdf, accessed August 18, 2014. 63 Vera, Manuel and Andrew S. Farris, “Mexican President Signs Historic Energy Reform Into Law,” National Law Review, August 18, 2014, http://www.natlawreview.com/article/mexican-president-signs-historic-energy-reform-law, accessed August, 18, 2014. - 11 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 Gネルギー改革は、米国企業からの新規投資をもたらしうる。それはメキシコにも、76年間そこから閉めだされてきた外国企業にとっても相互の利益となる。しかし、関心を有するこれら企業にとっての潜在的危険信号となるものが存在している。外国企業は、メキシコが開発から得られる税金の徴収を有利にするために現地子会社の設立が求められる。他方で、メキシコにとっては、米国との国境での開発に当たってはPemexが最低20%の株式を保持して開発に参加することが求められており、特にメキシコ湾からの生産の恩恵を得ることも織り込まれている 64。ローカルコンテンツルールもまた、煩わしいものになるかもしれない。発表された当初の下位法案では、民間企業は2025年までの間、全供給品の25%をメキシコ企業から調達することが求められていた。その後のメキシコ議会での審議において、この割合は35%まで引き上げられた65。 .安全の問題 8さらに、メキシコの上流部門への新規参入に当たっては、大企業であれ中小企業であれ安全の問題について認識しておかなければならない。2014年の最初の5ヶ月間において、米国南部のテキサス州と境を接するメキシコのタマウリパス州(Tamaulipas)では506件もの殺人事件が発生している66。テキサス南部に位置するイーグルフォードシェール層は、タマウリパス州、ヌエボ・レオン州(Nuevo Leon)、コアウイラ州(Coahuila)まで広がっている67。これらはメキシコにおいてはブルゴス盆地(Burgos Basin)として知られる(地図参照)。このような地域に伴う高いリスクは、投資を妨げるかもしれない。企業やその従業員達は、パイプラインからの違法な抜き取りや燃料の盗難、誘拐、恐喝、殺人などを経験することになるかもしれない。このタマウリパス州における暴力の度合いは時には戦争地域におけるそれになぞらえられることもある 68。投資家はまた、陸上におけるインフラストラクチャーの安全性の課題にも直面することになるだろう。アナリスト達は、前述の州において、麻薬カルテルや組織犯罪が深く浸透していると指摘している。 64 Colman, Zack, “Why the U.S. could be the big winner of Mexico’s energy reforms,” Washington Examiner, August 8, 2014, http://washingtonexaminer.com/why-the-u.s.-could-be-the-big-winner-of-mexicos-energy-reforms/article/2551835#, accessed, August 8, 2014. 65 Harrup, Anthony and Laurence Iliff, “Mexico Hastens Energy Ovehaul,” Wall Street Journal, August 12, 2014, http://online.wsj.com/articles/mexico-hastens-energy-overhaul-1407803143, accessed August 12, 2014. 66 Flannery, Nathaniel Parish, “Will Security Problems Hamper Mexico’s Energy Boom?” Forbes, August 18, 2014, http://www.forbes.com/sites/nathanielparishflannery/2014/08/18/will-security-problems-hamper-mexicos-energy-boom/, accessed August 19, 2014. 67 Cattan, Nacha and Adam Williams, “Drug Gangs Attacking With Tanks Block Mexican Shale Boom,” Bloomberg, June 12, 2014, http://www.bloomberg.com/news/2014-06-12/drug-gangs-attacking-with-tanks-block-mexican-shale-boom.html, accessed August 20, 2014. 68 Ibid. - 12 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 <Lシコは260億bbl原油相当を埋蔵していると言われている。民間企業にとっては、生産分与契約と利益分与契約が今や期待され、メキシコ政府はエネルギー改革が何十億ドルもの外国投資を惹きつけることを期待している。メキシコは2018年までに505億ドルの投資を得ることを希望している70。エネルギー改革はまた、Pemexが競争力をもった企業に変革する環境をも整えることになった。 (了) 69 http://pubs.usgs.gov/fs/2004/3007/fs-2004-3007.html 70 Alire Garcia, David and Tomas Sarmiento, supra note 57. - 13 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 出典: 米国地質調査所(U.S. Geological Survey (USGS))69 .むすびに 9地図:ブルゴス盆地 lobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 14 - |
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