ページ番号1004513 更新日 平成30年2月16日

バルト海周辺地域における LNG チェーン構築に向けた動き(11/26 訂正版)

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レポートID 1004513
作成日 2014-11-21 01:00:00 +0900
更新日 2018-02-16 10:50:18 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 基礎情報
著者
著者直接入力 永井 一聡
年度 2014
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日:2014/11/21(2014/11/26訂正版) 調査部:永井 一聡 バルト海周辺地域におけるLNGチェーン構築に向けた動き (各社ホームページ、各種報道、他) ○バルト海周辺地域では、①天然ガスのロシア依存度低減と調達源多様化のためのLNG導入、②船舶への排出規制強化への対応としてのLNG利用、という二つの背景から、LNG受入基地および船舶向けLNG充填ステーションの建設計画が数多く立ち上がっている。 ○リトアニアでは、同国初のLNG受入基地であるKlaipedaのFSRU Independenceの建設・設置が完了し、2014年12月より正式な操業を開始する計画で、バルト三国における天然ガスのロシア依存低減のための大きな一歩を踏み出した。 ○フィンランド、エストニアの二国は、フィンランド湾を挟んで両国それぞれがLNG基地を建設するとともにBalticConnectorと呼ぶガスパイプラインで連結し、ガス供給セキュリティ強化に向けた計画について合意がなされた。 ○バルト海沿岸の各港湾は、連携してLNGバンカリング向けのインフラ整備(船舶燃料用LNG充填ステーションの建設)を計画している。 ○天然ガスを中心としたエネルギーの供給セキュリティ強化と船舶における環境規制対応に向け、バルト海周辺地域全体でLNGチェーンの構築が進められようとしている。 バルト海沿岸の各国(スウェーデン、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニア、など)で、LNGの導入・利用に向けた多くのプロジェクトが進められている。 その原動力となっているのは、主に以下の二. はじめに 1つの背景によるものである。 ①ロシア産天然ガスへの依存度低減とガス供給セキュリティ強化 ⇒エネルギー調達源多様化のためのLNG導入 ②バルト海における船舶への排出ガス規制強化※ ⇒LNGバンカリング(船舶用燃料としてのLNG利用)の進展 バルト海沿岸の各国は天然ガスの大部分をロシアに依存しており(特に、フィンランド、エストニア、ラトビア、リトアニアは100%ロシアに依存)、ウクライナ問題によって改めて注目されることとなったように、EU加盟国としてエネルギー供給セキュリティ強化に向けた天然ガスのロシア依存度低減・調達源多様化が求められている。その調達源の一つとして挙げられているのが①のGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? NGである。②については、2015年から、IMO(国際海事機関)による船舶への環境規制の中で、排出規制海域(ECA)に指定されている北海・バルト海(他に北米大陸沿岸もECAに指定)におけるSOx(硫黄酸化物)の排出規制が強化されることを受けたものである。 2.バルト海周辺地域のLNG受入基地操業・建設計画 現在、バルト海周辺地域で操業中のLNG受入基地は、スウェーデンのストックホルム近郊Nynashamn基地(LNGタンク容量20,000m3)およびノルウェーFredrikstadのOra LNG基地(LNGタンク容量6,500m3)のみである。しかし、図1及び表1に示すように、小規模なものも含め、数多くのLNG受入基地の操業・建設計画が提案されている。これらのLNG基地は、近隣地域向け天然ガス供給ならびに天然ガスのロシア依存低減を目的としたものであると同時に、バルト海地域でのLNGバンカリング向けインフラ整備の一環としても位置付けられている。 出所:各種情報を基にJOGMEC作成 図1 バルト海周辺地域のLNG受入基地 ? 2 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 \1 バルト海周辺地域のLNG受入基地一覧 基地名・場所 国 操業 開始 参画企業 主要設備・能力 Ora LNG ノルウェー 2011 Skangass Nynashamn スウェーデン 2011 AGA(Linde Group) Lysekil Goteborg Gaevle Hirtshals Hamburg Pori Rauma Tornio Turku Inkoo (Finngulf LNG) 〃 〃 〃 デンマーク ドイツ フィンランド 〃 〃 〃 〃 Paldiski Tallinn エストニア 〃 2014 Skangass 2015 Swedegas 2016 2018 2015 2016 2017 2017 2018 2019? 2019? 2019? Skangass N.A. Bomin Linde Gasum AGA(Linde Group) Manga LNG Gasum Gasum BaltGaas Vopak Riga ラトビア 2016 Latvenergo Klaipeda リトアニア 2014 Klaipedos Nafta Swinoujscie ポーランド 2015 (GAZ-SYSTEM Polskie LNG S.A). タンク容量:6,500m3 気化能力:1.5億m3/年 タンク容量:20,000m3 気化能力:5億m3/年 タンク容量:30,000m3 気化能力:3億m3/y タンク容量:20,000m3 気化能力:5億m3/年 タンク容量:30,000m3 気化能力:3億m3/年 N.A. N.A. タンク容量:30,000m3 タンク容量:10,000m3 タンク容量:50,000m3 タンク容量:30,000m3 気化能力:1億m3/年 N.A. N.A. N.A. タンク容量:180,000m3 気化能力:50億m3/年 タンク容量:170,000m3 気化能力:40億m3/年 タンク容量:320,000m3 気化能力:50億m3/年 Kaliningrad ロシア 2018 Gazprom N.A 出所:各種情報を基にJOGMEC作成 リトアニアKlaipeda基地(FSRU Independence) リトアニアでは、天然ガスのロシア依存低減・調達源多様化による供給セキュリティ強化を目的として、同国初のLNG受入基地が起ち上がろうとしている。FSRU(浮体式貯蔵・再ガス化設備)形式を採用し、韓国の現代重工で建造されたFSRU Independence(図2)が2014年10Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? ・獅ノKlaipeda港に到着・設置され、2014年12月に正式な操業開始予定となっている。LNGの気化ガスはリトアニア国内のガスグリッドに送られるが、これはバルト海沿岸国にとって、天然ガスのロシア依存低減に向けた大きな一歩に位置づけられている。 なお、このFSRU Independenceは、リトアニアの国営ガス会社Klaipedos Naftaがノルウェーの海運企業Hoegh LNGから傭船したもので、現在の契約における傭船期間は10年間、傭船料は1日あたり189000ドル(年間6890万ドル)だとしている。LNGの調達については、Statoilと5年間の売買契約を締結しており、価格はイギリスNBP指標であるとしている。 図2 LNG船(左)を受け入れるFSRU Independence(右) 出所:Klaipedos Nafta ・フィンランドとエストニアによるLNG受入基地およびBaltic Connectorガスパイプライン建設計画(図1のFinngulf LNG、PaldiskiまたはTallinn) フィンランドとエストニアは、フィンランド湾を挟んだ対岸にそれぞれLNG基地を建設し、両基地をBaltic Connectorと呼ぶガスパイプラインで連結計画を挙げている。これらLNG基地はさらに欧州域内に広がる天然ガスグリッドと連結することで、両国のエネルギー供給セキュリティを強化することを狙っている。この計画を巡っては、これまで両国間で多くの協議がなされGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? トきたが、2014年11月にフィンランド側に大規模なLNG受入基地、エストニア側には小規模な基地を建設することで合意された。フィンランド側のLNG基地はInkooに建設される可能性が高いが、エストニア側についてはPaldiskiとTallinnそれぞれにLNG基地建設が提案されており、政府はそれぞれのプロジェクトについての分析・検討を継続している。これらLNG基地およびBaltic Connectorガスパイプラインの操業開始は2019年を見込んでいる。 IMO(国際海事機関)による船舶を対象とした世界的な排出ガス規制強化※に伴い、北米と共に排出規制海域(ECA)に指定された北海・バルト海地域では、LNGを船舶用燃料として利用していこうとする動きが高まっている。現状では、既にノルウェーを中心に、40隻程度のLNG燃料船(図3)が運航されている。 .バルト海におけるLNGバンカリング拡大の動き 3図3 LNGローリー車からのLNG供給を受けるLNG燃料船 出所:LNG in Baltic Sea Ports Projects ここで、図4にノルウェー船級協会(DNV)によるバンカリング(船舶燃料)向けLNG需要 見通しを示す。DNVは、2020年には全世界でLNG燃料船は1,000隻に達し、LNGの総需要は400~700万トン/年になると見込んでいる。欧州およびバルト海地域だけでも140~220万トン/年まで拡大すると予測している。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? }4 2020年における船舶燃料向けLNG需要見通し(単位:トン/年) (欧州に記載の青字は2012年需要) 出所:DNV バルト海周辺地域では、環境性・経済性に優れたLNGを従来の主要船舶燃料である重油・軽油 の代替燃料として活用するため、各国の港湾が連携してLNGバンカリングの拡大に向けたインフラ整備を進めていこうとする動きがある。 図5にバルト海周辺地域におけるLNGバンカリング用充填ステーションの計画を示す。これらのバンカリング用ステーションでは、LNGを直接輸入、または大規模なLNG受入基地からの分配供給を受け、LNGバンカリング用設備にてLNG燃料船またはLNGバンカー船へLNGの積み込みを行う(図6:船舶燃料向けLNG供給チェーンのイメージ)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? }5 バルト海周辺におけるLNGバンカリング用充填ステーション建設計画 出所:Baltic Ports Organization 図6 船舶燃料向けLNG供給チェーンのイメージ 出所:JOGMEC作成 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? S.まとめ バルト海地域の各国では、天然ガスのロシア依存低減と船舶用燃料としてのLNG活用拡大に向けて、LNG受入基地およびバンカリング用充填ステーションの建設計画が多数進められている。 特に、船舶用燃料としてのLNG利用については、需要拡大のためにはインフラが必要だが、インフラ投資を進めていくためには需要拡大が必要、という所謂鶏と卵の関係であると言える。しかし、IMOの排出規制強化が進み、環境性・経済性に優れたLNGが規制クリアのための手段ともなることから、バルト海地域の港湾は連携してLNGバンカリングのためのインフラ整備を進めようとしている。 現時点ではまだ計画段階のものが多数だが、これら建設計画の実行によりインフラの整備が進み、バルト海地域においてLNGチェーンが構築されれば、10年後、20年後にはバルト海を航行する IMO(国際海事機関)は海洋汚染防止条約(Marpol条約)に基づき船舶からの排出ガス規制を定めている。排出ガス規制は一般海域と排出規制海域(Emission Control Area:ECA)に分類され、それぞれに規制値が設定されている。SOxの排出規制海域として、北米と共に北海・バルト海が指定されており、2015年からはECAにおけるSOxの規制値が、燃料油中の硫黄濃度で0.1wt%(従来は1.0wt%)へとその規制が強化される計画となっている。 船舶の大部分がLNG燃料船になっているかもしれない。 ※IMOによる船舶の排出規制強化 (出所:各種資料よりJOGMEC作成) 図7 IMO排出規制地域(ECA) 以上 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ?
地域1 欧州
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国・地域 欧州
2014/11/21 永井 一聡
Global Disclaimer(免責事項)

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