ページ番号1004514 更新日 平成30年3月5日

豪州LNG建設プロジェクトの生産性における労使関係およびプロジェクト管理(12/2訂正版)

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レポートID 1004514
作成日 2014-11-27 01:00:00 +0900
更新日 2018-03-05 19:32:42 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG基礎情報
著者
著者直接入力 片山 治
年度 2014
Vol 0
No 0
ページ数
抽出データ 更新日:2014/11/27(2014/12/2訂正版) 調査部:片山 治 公開可 豪州LNG建設プロジェクトの生産性における労使関係およびプロジェクト管理 (脚注に示す各種資料およびコンサルタント情報等) 要旨 ? 豪州では、事業毎に向う3~4年間の労働条件は労使間の団体交渉で決まる。本年は、現在クイーンズランド州・西豪州で建設中のLNGプロジェクトに係る労働条件の更新にあたる。 ? クイーンズランド州で現在建設中のLNGプロジェクトのコントラクターと労組間の労働条件交渉では、FIFO(fly-in-fly-out)1の従業員が雇用側の賃上げ等提示内容を不服としてストライキを実施したが、雇用側の妥協案(向う3年間にわたり、給与を半年毎2.5%ずつ引き上げる)で決着した模様。 ? 西豪州で現在建設中のLNGプロジェクトの建設・機材運搬等作業従事者の雇用・労働条件に関する労使交渉では、プロジェクトが遠隔地・気候の厳しい土地にあることも相まって、労働者側の賃上げおよび勤務シフトに係る要求は高い。いくつかの職種組合・労働者に係る条件は、組合側がストライキを警告するなど、協議は進展していない。 ? 以前就労ビザが不要だった沖合での外国人労働者の就労は、2013年に前政権下で必要となったが、2014年9月に連邦裁判所は再度ビザを不必要とする判決を下した。 ? 産業界側は外国人労働者の就労が容易となるとして、同判決を支持。 ? 西豪州の関連組合は、ローカル労働者の雇用が最優先されるべきだと州議会に請願中。 ? 豪州のLNGプロジェクト、ひいては豪州の全産業における生産性の向上には何が必要かにつき、いくつかの異なる見解がある。 ? 産業界および現政権-行き過ぎた好労働条件の是正が必要である。 ? 労働組合-企業のプロジェクトマネジメントが本質的な問題である。 ? 現実的には、両者、つまり労働条件面の是正、企業側のプロジェクトマネジメント、関連法制度改革全てにおいて改革が必要と考えられる。 1 遠隔地で数週間の勤務後、比較的大きな町もしくは元の住居地などに送り出して休暇を取らせる勤務(シフト)形態 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? . 国内労働者の賃金等諸条件の交渉・妥結状況および労使争議および抗議行動の例 (ア) クイーンズランド州で建設中の3つのLNGプロジェクトにおける事業労働条件更新状況 豪州では、事業(enterprise)毎に労働条件が決まる(enterprise (bargaining) agreement、以下EBA)2 3。クイーンズランド州で建設中の3つのLNGプロジェクト4におけるコントラクターと陸上石油・ガス・マイニング従業員労組(「Construction, Forestry, Mining and Energy Union」)間の、“fly in-fly out”でシフトする従業員の雇用条件交渉で、同労組は8月7~13日に向う3年間の雇用条件に関する要求に対する回答が不服としてストライキを実施。コントラクターは要求全てを受け入れず、半年毎給与を2.5%引き上げ、各種手当金も引き上げることを再回答した。 8月15日に行われた同労組の投票で会社側提示に対し54%が賛成し、それ以降ストは起きず決着した模様である5。 (イ) 西豪州のLNGプロジェクトに関わる事業労働条件更新状況 プロジェクトのオペレーターに対し港湾・海上の労組(MUA, Maritime Union of Australia)が昨年来、給与・諸条件の改善を求めて大規模な要求行動を行っている6。いくつかの条件交渉は進捗していないようである。 西豪州で現在MUAが給与・勤務体系等の労働条件を交渉している石油・ガス産業での船舶運航会社の数は22である。交渉は1年以上続いており、一部ではストライキが起こっている。あるプロジェクトでは、オペレーターが港湾(および沖合)作業のための労働力を一部海外から調達しようとしたところ、MUAが雇用関連協定に違反するとして、9月にストライキを実施すると警告した。 このプロジェクトのコントラクターとMUA間の労働条件交渉では、MUAが昨年来、給与7・諸条件の改善(向う4年間で計24.5%の引き上げなど)を求めて大規模な要求行動を行っているが、いくつか 2事業期間(通常4年)全体の賃金を含む諸条件が決まる。「次期の条件の交渉時に、労働市場の需給関係が締まっている場合など、新たな(賃金が高い)条件で妥結せざるを得なくなる。」というのが、雇用者側の主張である。 3近年豪州では組合の組織率は20%前後に低下しているが、労働組合はまだ相当の影響を持っていると言える。(杉田弘也「オーストラリアの労働運動:背景と現状」www.seikatsuken.or.jp/monthly/hikaku/pdf/200709.pdf) 4 QCLNG (Queensland Curtis LNG), GLNG (Gladstone LNG), APLNG (Asia Pacific LNG) 5 8月15日に同労組投票権保有者の54%が賛成。それ以降ストは起きていない。 6 Gorgonプロジェクトでは沖合の従業員はいないが、コントラクターの従業員は同組合に所属する。 7 豪州沖合の労働者の年間平均給与は183~247千豪ドル。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? フ職種関連労働者に関わる条件の協議は進捗していない。 また、港湾作業従業者(MUA組合員を含む)の雇用コントラクターMermaid Marine社長によると、彼らの平均的な労働条件は以下のようなものである。年間平均賃金20万豪ドル、6日勤務3日休日のシフト体制。6週間の有給休暇と12日間の病気休暇があり、パースまでの空路往復1回は会社が負担(使用しなくとも航空運賃は支給される)8。 同コントラクターとMUA間における向う3年間のEBAの交渉で、MUAが15%の賃上げを要求したのに対し、コントラクターは1年目に3.75%、以降消費者物価指数の伸びに合わせて修正することを提案した。協議が折り合わなくなった直後の10月15日より、MUA所属のWA州Dampier基地における港湾労働者65名(主として荷物積み下ろし作業者)が5日間のストライキを起こした。会社側はストライキによる船舶修理作業および船舶運航・海外労働力による作業への影響はないとコメントした。 ある西豪州のLNGプロジェクトのプラント建設に関わるコントラクターのうち最大手の CB&I (Chicago, Bridge & Iron)と労働者が1月に終了する現EBAにかわる契約の交渉では、現行のシフト26日勤務+9日休暇体制に関し会社側が提示する23日勤務+9日休暇体制を、労働者側(Electrical Trade Union, the Construction, Forestry, Mining and Energy Union, Mining and Energy Union, and the Australian Manufacturing Workers’ Union)は11月12日に不服とし、20日勤務+10日休暇を主張して、ストライキも辞さないとした。同プロジェクトのオペレーターの広報担当者は、本協議がプロジェクト進捗に影響は与える見込みはないとコメントしているが、ストライキが発生すれば作業への影響は避けられない9。 一方、影響はLNG関連のみならず石炭・金属資源輸出におよぶ。Pilbra湾の港湾都市Port Headlandのタグボート航行業者と雇用主Teekay Shipping社とのEBA交渉は15か月間続いていたが、諸条件に関わる協議のうち折り合いがついていなかった年間の有給休暇数につき、4週間とすることで契約交渉は11月11日に妥結した。また、Teekay Shippingのタグボート・エンジニアの労働条件の交渉窓口となっているAIMPE (Australian Institute of Marine and Power Engineers)は、賃金 8 http://www.abc.net.au/news/2014-10-15/stevedore-strike-at-dampier-port-in-the-pilbara/5815360 9 http://www.smh.com.au/business/mining-and-resources/industrial-action-looms-at-gorgon-lng-project-20141111-11kg7a.html Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? 繧ーおよび勤務形態改善を求めていた。交渉は妥結せず、エンジニア側は12日からストライキを予定していた。しかし、Teekay Shippingが連邦Fair Work Commissionに協議への仲裁を求め、AIMPEはストライキを中止。会社側提案に対し投票で決着させることとなった。 (ウ) 沖合での外国人労働者の就労について 1982年以来豪州では、排他的経済水域内のオフショアにある船舶で勤務する外国人労働者は、就労ビザは不要であったが、労働党政権下の2013年、Migration Amendment (Offshore Resource Activity) Act 2013 (Amendment Act)が制定され、「移民区域(Migration zone)」内で資源採掘・生産に携わる船舶の外国人労働者には就労ビザが必要となった。ところが、2014年9月、Migration Actはオフショア労働者には適用されない旨連邦裁判所が判決を下し、現在MUAは上告すべきか検討中である。 LNGを含む石油・ガス産業外国人労働者就労に対する産業側・現政権および労組それぞれの主張は以下のとおり。 ? ? AMMA (Australian Mines and Metals Association)およびオペレーター、同社サブ・コントラクター、現政権:「外国人労働者が、上記船舶で海外の労働者が就労し易くなることので支持する。」 MUA:「国外労働者を優先して雇用するとオペレーターが2003年に西豪州州民と交わした契約に反する。」 ? MUAの西豪州支部を初めとする同州4大労組10は、「オペレーターおよびサプライヤーが、建設・現場作業サブコントラクター起用において、契約11に基づくオーストラリア人労働者優先が徹底されていない」と州議会に請願。 ? AMWU:「西豪州で現在建設中のプロジェクトで50万トンの鉄骨枠組組立者の起用に際し、ローカルの労働者を優先するよう働きかけたが、96%の作業が海外労働者に行き、多くの国内労働者が仕事を失った。同社とコントラクターは沖合での就労ビザ取得に関する法令457を利用 10 Leaders of the WA branches of the Maritime Union of Australia (MUAWA), Australian Manufacturing Workers Union (AMWU), Construction, Forestry, Mining and Energy Union (CFMEU WA C & G) and Electrical Trades Union (ETU) 11 Gorgon Gas Processing and Infrastructure Project Agreement Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? オてプラント建設地に多数の外国人溶接工を配置した。」 (参考)現在西豪州で建設中のあるLNGプロジェクトでは、費用増の主要因は、LNG液化プラント建設地(島)での環境規制によるガスの二酸化炭素分離・地中貯蔵のための費用や島と陸地を行き来する人・モノの移動および衛生検査の煩雑さ等による生産性の低下、人件費の高騰、豪州ドル高である12。また、スケジュールの遅延の理由としては、当初の計画が楽観的過ぎたという見方がある。そしてこれは、人件費等のさらなる増加にもつながっている。 2. 豪州での石油・ガス産業および全産業の生産性向上への取り組み (ア) 人件費高騰の主要因の一つとされる賃金等条件の労使交渉制度およびその是正の動きについて Mckinseyによると、豪州LNGプロジェクトとカナダの(非在来型)LNGプロジェクトの損益分岐費用を比較した場合、前者が$12.0/mmbtu、後者が$10.5/mmbtuであり、その差$1.5/mmbtuのうち$0.2/mmbtuを人件費起源の生産性の向上で解消できるとしている。人件費起源の生産性向上のために、労使等双方が主張する是正策は以下のようなものである。 A) 労働関係諸制度の整備を求める動き 豪州の事業に係る費用を低減するためには、柔軟かつ移動可能な労働力を促進するために、関連政策・法制度を整備するのが最重要課題だとする意見は産業界に多く見られる。 Hays Oil & Gas Salary Guide によると、2013年の豪州の石油・ガス探鉱生産関連国内労働者の年間平均賃金は16万3千7百米ドルで、本Guideが対象とする53カ国のうち2番目に高い13。対象各国での外国人労働者の賃金についても、豪州は16万4千ドルと高く第1位である。また、豪州の石油生産者業界団体であるAPPEA (Australian Petroleum Production and Exploration Association)は、豪州の資源・鉱山部門のコスト高の主要因を以下のとおりとしている。 ? ? 労働力需要(特に技術専門職および単純労働従事者)に対する供給が少ない 勤務地がしばし僻地にある。 12 SMH 2014/12/13 http://www.smh.com.au/business/another-2b-cost-blowout-for-gorgon-lng-20131212-2za5u.html#ixzz3IecnVbuy 13 1位はノルウェーの17万9千2百ドル、最下位はベトナムの2万6千6百ドル。2012年は豪州が第1位で2位がノルウェー。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? ? 豪州では歴史的に労組が強力である。 内外における競争力を高めるために、いくつかの取り組みがなされてきたが、前政権(労働党)時に逆行した。 同協会は石油上流部門の生産性向上を目的に、賃金是正のための方策を含む法的枠組み改正の要請を以下のとおり連邦政府に対して行った。これは、現在建設中ならびに新プロジェクトの基地が今後北部準州中心となることを前提に検討されたものである。 ? ? ? ? 事業毎、職場・職種組合毎、数年毎に労働条件を定めることを規定した、2009年フェア・ワーク法(Fair Work Act 2009)の変更 国内北部のインフラの整備・活用および行政手続きの簡素化 真に産業が関与し労働者の移動、生産性、安全性を考慮した国レベルの就労ライセンス 1958年移民法(Migration Act 1958)にある、「保護された経験」および「保護された資格」からエンジニアリングに係る職種及び資格を対象外とする。 ? ? The Department of Immigration and Boarder Protectionは、ビザ457が最大限柔軟にかつ迅速に応用され、熟練移民を必要とする産業界に対応し協力的であること。 Australian Jobs Act 2013の一部として導入されたプロジェクト事業者への追加義務をなくす。 B) プロジェクトマネジメント力の強化を求める動き 人件費に係る生産性の向上において、企業側は賃金レベルを、組合側は企業のマネジメント力を引き合いに出す傾向がある。豪州のLNGプロジェクトの費用増および進捗遅延は、事業計画および執行(プロジェクトマネジメント)に係る問題も存在すると言われている。2014年5月にシドニー大学のビジネス・スクールで労使関係を専門とするBradon Ellem教授は、豪州のあるLNGプロジェクトにつき、事業費高騰の要因として人件費の影響は小さなもので、事業遅延ひいては不十分なプロジェクト管理が最も深刻であると指摘する報告書を発表している。 3. おわりに 豪州の労使交渉の難しさの要因として以下の要因が考えられる。①最も新しい労使妥結結果を引き合いにしてさらに良い条件を得ようとする「ラチェットrathet」が慣習化していること、②企業の利益Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? ェ増えているのに労働者がそれと同様の賃上げがないのは不公平だと考える習慣が根強いこと、③コントラクターおよびサブコントラクターには終身雇用制は基本的になく、高労働条件を最大限享受したいという考えが働くことである。 背景はさもありながら、豪州LNGが米国を初めとするLNG輸出プロジェクトに対する競争力を高めるには、人件費の高騰を防ぎ、また生産性を向上させることは、全体から見れば一部ではあるが、重要な課題であることは間違いない。 McKinseyは2014年7月の報告書で、豪州の鉱業部門(石油ガスの探鉱・生産を含む)の生産性は米国のそれと比べてもそん色はないとしているが14、LNG関連部門に特化した定量的な分析はない。その一方、McKinseyは2013年5月の報告書で、豪州LNGプロジェクトは費用の2,3割削減で世界での競争力が獲得できるとしている15。 短・中期的には「豪州では現在建設中以降の新規プロジェクト(既存・新規プロジェクトの拡張を含む)が実現する可能性は極めて低い」という見通しが有力となっている。その理由の一つには、現在LNGプラント建設中で稼働開始を向こう数か月・数年内に控えるクイーンズランド州および西豪州における計6つののLNGプロジェクトでは現在EBAを更新中で、向う数年間はその労働条件が固定されることがある。したがって、期間中に他のプロジェクトが立ち上がり、労働市場が緩和されてもその恩恵は受けられないことになる。その一方、主として北部準州がベースとなるプロジェクトについては、EBAの締結・更新はこれからであり、競争力の向上に期待できる面もいくつかある。 一つ目、豪州の資源・鉱山部門の停滞が長引き、石油・ガス上流部門およびLNG部門における労働力需給関係の緩和が見込まれること。二つ目は、現在シェルが先導しているFLNGプロジェクトでは、2番目以降のプロジェクトで設計・建設などにおいて漸次単価費用の低減が期待されること。三つ目はFLNGは船体・液化施設ともに海外で建造されていること、四つ目は国内の組み立て繋ぎ込み作業(沖合)の就労ビザが免除される可能性があることである。五つ目は、豪州マイニング部門全体の労働力需給の緩和が進行していることと、複数のLNGプロジェクトの建設終了で豪州国内LNGおよび上流部門の労働力および資材の需要が低下し、費用が低下する可能性があることである。 14 Compete to Prosper: Improving Australia’s global competitiveness, July 2014, McKinsey Australia 15 Extending the boom: Improving Australian LNG productivity and competitiveness, May 2013, McKinsey & Company Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? ネお、カナダ・アジア太平洋基金が豪太平洋経済協力委員会と共同で作成(オーストラリア国立大教授に再委託)した豪州LNGに関する報告書16は、産業界のマネジメント面の努力、労組等による労働条件面の是正、州・連邦政府等の制度面での改革それぞれに焦点を当て、カナダは豪州の事例から学ぶべきとしている。 実際にそのような教訓から学ぶ動きが実現し、豪州内外でより経済性のあるプロジェクトが立ち上がることを祈念する。 16 Australia’s Experience in Developing an LNG Export Industry, Sep 2014, Asia Pacific Foundation of Canada Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ?
地域1 大洋州
国1 オーストラリア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 大洋州,オーストラリア
2014/11/27 片山 治
Global Disclaimer(免責事項)

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