原油市場他:OPEC総会での原油生産上限引き下げ見送り後、石油需給緩和感増大で急落する原油価格
レポートID | 1004517 |
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作成日 | 2014-12-15 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
分野 | 市場 |
著者 | 野神 隆之 |
著者直接入力 | |
年度 | 2014 |
Vol | 0 |
No | 0 |
ページ数 | |
抽出データ | 更新日:2014/12/15調査部:野神 隆之 原油市場他:OPEC総会での原油生産上限引き下げ見送り後、石油需給緩和感増大で急落する原油価格 (IEA、OPEC、米国DOE/EIA他) ① 米国では、製油所の稼働上昇とともに石油製品の生産が旺盛となったことから、ガソリン在庫は増加傾向となり、平年幅の上限付近に位置する量となっている。ただ、留出油については、生産は増加したものの、11月中旬以降米国北東部での気温低下で暖房用需要が発生したと見られる他、ベネズエラでの製油所の操業停止で国外からの石油製品調達が活発化したことなどにより、米国での留出油在庫が減少する場面が見られた結果、平年幅の下限付近に位置する量となっている。また、製油所での原油精製処理量の増加に伴い、原油在庫の増加速度は緩やかになったものの、それでも平年幅を超過する水準は維持されている。 ② 2014年11月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国では同水準となったが、欧州においては、製油所での秋場のメンテナンス作業が前年程大規模でなかったうえ、米国で留出油在庫が減少したことや、ベネズエラでの製油所不具合に伴う国外からの製品調達の活発化により、製油所の精製利幅が改善、稼働が上昇した結果、原油在庫は若干ながら減少した他、日本においても、製油所での秋場のメンテナンス作業終了とともに原油精製処理量が増加してきたことで在庫が減少したことから、OECD諸国全体では原油在庫は減少となったが、量としては平年幅を超過したままとなっている。他方、製品については、米国では「他の石油製品」の範疇の在庫の減少が影響し製品全体でも在庫は減少したものの、欧州では製油所の稼働上昇で製品の生産が活発化したことから在庫が増加、日本でも製油所の稼働上昇とともに冬場の暖房需要期を控え灯油在庫の積み上げが進んだことで製品在庫全体が増加したことから、OECD諸国全体としても製品在庫は増加したものの、量としては平年幅下限付近に位置している。 ③ 2014年11月中旬から12月中旬にかけての原油市場においては、米国経済が改善していることを示唆する指標類や中国金融当局による金利引き下げに伴う景気回復期待の増大、米国原油在庫の減少等により、原油相場が上昇する場面も見られたものの、米ドルの上昇や日本経済の不振を示す指標類、OPEC通常総会(11月27日開催)に向けた原油生産上限引き下げに対する加盟国間での意思統一の欠如と実際の総会における上限引き下げ見送りに伴う市場での世界石油需給緩和感の増大が原油相場に下方圧力を加え続けた結果価格は総じて下落傾向となり、WTIは12月12日には1バレル当たり57.81ドルと終値ベースでは2009年5月15日以来の低水準となった。 ④ 今後OPEC産油国、特にサウジアラビア等から減産を示唆する発言が出てきたり、地政学的リスク要因面での変化で市場の石油供給途絶懸念が極度に高まったり、米国北東部に厳冬が訪れたりする、といったことがない限り、短期的にはOPEC総会での原油生産上限引き下げの見送りに伴う石油需給緩和感の払拭は困難な状況にあり、原油相場が継続的に上昇できないどころか、OPEC産油国による原油販売価格の引き下げや、市場関係者による原油価格見通しの下方修正などをきっかけとして、さらに原油価格が下落するといった展開になることも否定できないと考えられる。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? . 2014年11月27日開催のOPEC総会で原油生産上限を据え置き 2014年11月27日に石油輸出国機構(OPEC)はオーストリアのウィーンで通常総会を開催し、2011年12月14日開催の通常総会時に導入した全12加盟国で合計日量3,000万バレルの原油生産上限を据え置きとする旨決定した(表1参照)。総会前のOPEC事務局による見通し(総会開催前の2014年11月12日発行のOPECの月刊オイル・マーケット・レポート(MOMR:Monthly Oil Market Report)に基づく)では、2015年の世界石油需要は前年比で日量119万バレル増加するものの、他方で非OPEC産油国の石油供給量も前年比で日量125万バレル増加、またOPECのNGL及び非在来型石油資源の生産量も日量20万バレル増加すると見込んでいることから、2015年の対OPEC産油国原油需要(世界石油需要から非OPEC産油国石油供給とOPEC産油国のNGL等の供給を差し引いたもの、なおこれには世界の石油在庫変動も含まれる)が日量2,920万バレルと、2014年の日量2,945万バレルからさらに減少(図1参照)、そして、中国や欧州等でのさらなる経済減速が見込まれる中、対OPEC産油国原油需要が下振れする恐れがある一方で、原油価格も前回総会(6月11日開催)時のブレント原油価格で1バレル当たり110ドル前後の水準が11月には同80ドル前後と30%程度下落、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相がしばしば適正であるとしてきた水準である、ブレント原油価格で1バレル当たり100ドルを大きく下回るようになった。このようなことから、彼らが適正であると考える原油価格を回復するには、OPEC産油国が原油生産上限を引き下げる(現在予想される2015年の対OPEC産油国原油需要の水準からすると日量50~100万バレル程度)とともに、減産実施を遵守し世界石油需給を均衡させる意志を明確にする必要があった。 しかしながら、そのような背景に対し、今次OPEC総会では市場の均衡を回復させるため原油生産上限の据え置きを決定した。他方、OPEC加盟国による原油生産上限の遵守についても声明に盛り込まれGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? 2009年1月1日以降の生産目標(推定)2011年12月14日OPEC総会以降の生産上限2014年11月27日OPEC総会以降の生産上限①2011年11月生産量(IEA) ②2014年11月生産量(IEA) ③生産上限超過量(③-①)増産量(②-①)原油生産能力(IEA)余剰生産能力(2014年11月現在)アルジェリア1,203--1,1801,130-△ 501,17040アンゴラ1,517--1,7101,690-△ 201,800110エクアドル434--500550-5057020イラン3,336--3,6092,760-△ 8492,900140クウェート2,222--2,5002,665-1652,850185リビア1,469--550690-140850160ナイジェリア1,673--2,1001,920-△ 1802,00080カタール731--735680-△ 5573050サウジアラビア8,051--10,0009,610-△ 39012,4002,790UAE2,223--2,5202,710-1902,900190ベネズエラ1,986--2,3412,440-992,600160OPEC11ヶ国合計24,845--27,74526,845-△ 90030,7703,925イラク---2,6753,380-7053,40020OPEC12ヶ国合計-30,00030,00030,42030,225225△ 19534,1703,945注:四捨五入の関係で個々の数字の総和が合計と一致しない場合がある。出所:OPEC、IEAデータ等をもとに推定表1 OPEC加盟国原油生産上限、生産量及び減産遵守率(日量千バレル)ク、事実上減産に向けた行動を放棄するような印象を市場に与えてしまっている。 11月12日にヌアイミ石油鉱物資源大臣は、石油政策は過去数十年変わっておらず、それが今になって変更されたというわけでもなく、サウジアラビアとしては安定した石油市場及び安定した価格を望んでおり、それが生産者、消費者、そして投資家にとっていいことであり、サウジアラムコは健全な市場の過程により原油価格を決定しており、サウジアラビアが価格戦争を所望しているとの市場の観測を否定する旨発信していた。しかしながら、OPEC総会が接近するにつれ、サウジアラビア、そして湾岸OPEC諸国(クウェート、UAE等)は姿勢が変化したように見受けられる。 11月25日にはサウジアラビア、ベネズエラ、ロシア、及びメキシコのOPEC及び非OPEC主要産油国による協議が実施され、現在の原油価格は生産者にとっては良くないということで意見が一致、3ヶ月後に再度会議を開催することを決定したものの、減産については合意されずじまいであった。そして、会議に参加したロシア国営石油会社ロスネフチの最高経営責任者(CEO)であるセーチン氏は会議の後でロシアは原油価格が60ドルに下落しても減産を実施しない旨明らかにしている。他方、11月26日にヌアイミ氏やUAEのエネルギー大臣であるマズルーイ氏は、市場はそれ自身で調整される旨表明、さらにヌアイミ氏は、湾岸OPEC産油国は原油生産上限に関しては合意に至っている旨説明するなど、減産実施に対して否定的ともとれる見解を示すようになった。また、同日にはOPEC産油国関係者が今次総会において原油生産上限の引き下げは決定されない旨明らかになった。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? アのような中、OPEC総会が開催されたが、総会の場では一部加盟国から日量150万バレルの減産が提案されたとされるが、サウジアラビアやクウェート、UAE及びカタールといった湾岸OPEC産油国が米国産シェールオイルの増産を懸念、原油価格を引き下げることで米国のシェールオイルブームに対して戦わなければならないことにより減産には否定的な姿勢を見せたことから、原油価格下落抑制のためにOPEC産油国による生産調整を希望するOPEC加盟国(イラン及びベネズエラ等と思われる)は必ずしも湾岸OPEC産油国の意向には賛成ではなかったと見られるが、OPEC産油国同士の結束を優先させた結果サウジアラビア等の考えに同意、最終的には原油生産上限の引き下げは見送りとなったことに加え、原油生産上限を遵守する旨の文言も声明に盛り込まれないことになった。ただ、シェールオイルは後述の通り開発・生産コストは1バレル当たり80ドル以下が大半である一方で、湾岸OPEC産油国等一部加盟国を除くOPEC産油国やロシアといった産油国の財政均衡価格は100ドルを超過していると推定される(図2参照)ことから、サウジアラビアの決定は、米国のシェールオイルブームに対する戦いを挑む前に、他のOPEC産油国やロシアに対して戦いを挑む格好となっているものと考えられる。 なお、次回総会(通常総会)は2015年6月5日にオーストリアのウィーンに於いて開催される予定である。また、今次総会では、ナイジェリアのアリソン・マドゥエケ(Alison-Madueke)石油相が2015年1月1日から1年間OPEC議長を務める他、バドリOPEC事務局長が2015年12月31日まで引き続き事務局長を務めることも決定された。 今次総会においては、原油生産上限の引き下げ等の減産措置を決定し、石油需給均衡のための調整にOPEC産油国が乗り出さなければ、2015年に向け石油供給過剰感が強まることから、原油相場が下落すると市場では見られていたが、果たして総会では原油生産上限の引き下げが見送られ、OPEC産Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? 綠曹ノよる石油需給調整役の事実上の放棄が対外的に示されたことから、やはり石油供給過剰感が市場で強まった結果、11月28日(なお、11月27日は米国原油先物市場は感謝祭(サンクスギビング・デー)の休日により通常取引は実施されなかった)にはWTIの終値は1バレル当たり66.15ドルと11月26日の終値比で1バレル当たり7.54ドル(10.2%)の大幅な下落となった。さらに、12月12日のWTIの終値は同57.81ドルと、OPEC総会の結果の影響は現在に至るまで続いている(後述)。また、今回の総会で、減産に関する合意が事実上加盟国間で得られなかったことから、市場ではOPECは機能不全に陥ったとの認識を持つようになっている。このため今後原油価格の低迷が継続する中で、OPEC加盟国間で減産実施の機運が高まることにより総会で実際に減産が決定しても、市場のOPEC産油国に対する信頼が失われていることもあり、本当に減産するのかという懐疑的な見方が根強く残ることになり、減産決定後、少なくとも数ヶ月間継続して減産が遵守されるといったことでないと、市場がOPEC産油国に対する信頼感を取り戻して石油需給引き締まり感から先物市場において原油の購入を進めるようにはなりにくいと考えられる。 他方、米国のシェールオイル開発・生産コストは1バレル当たり60~80ドル程度が20%弱、40~60ドル程度が60%強、残りの大半が40ドル以下となっている(但し、これについては多少異なる見解もあるようである)。OPEC総会前の時点では、2015年は米国では原油生産量が日量100万バレル程度増加すると見込まれており、その殆どがシェールオイルであると推定される。同国でのシェールオイル生産量は、2014年の日量450万バレル程度(推定値)が2015年には同550万バレル程度(同)になると見られるので、原油価格が60ドル程度になれば、その20%程度のシェールオイル生産が開発・生産において採算割れとなり実現しないことになると予想されるため、この場合2015年の同国シェールオイル(及び原油)生産量前年比とほぼ同水準になると考えられる。そしてこの場合OPEC総会前の時点で2015年に予想される、OPEC産油国が現状の原油生産量を維持した場合に想定される、供給が需要を超過する量(IEAデータに基づけば、それは日量約147万バレル)の相当程度を解消することになるので、ある程度の長さの時間軸を考慮すれば、原油相場はこの60ドル程度の水準で下落が一段落する可能性がある(勿論これは、季節的な要因等で一時的にこの水準を割り込んで原油相場が推移するということを否定するものではない)。しかしながら、掘削を既に完了し、あとは仕上げるだけというような坑井からはこの先シェールオイルの生産が行われると考えられる他、シェールオイルを開発する石油会社の中には、原油価格が下落してきたことで、開発及び生産コストの低い鉱床での事業に集中し効率よく作業を実施したり、既に確保した鉱区や資機材の費用を回収すべくシェールオイルの開発及び生産を推進したりするGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? iまた、その過程での企業努力の結果、開発・生産手法の効率化が進み、コストの低減が一層進むこともありうる)結果、原油価格の下落に比べて生産の減少速度が遅いといった事態が発生しうる。実際米国の石油開発のための水平坑井掘削(つまりこれは主にシェールオイル開発・生産を目的としたものである)のための掘削装置稼働数は原油価格の下落に対して現時点では明確に減少傾向を示しているわけではない(図3参照)。このため世界の石油需給の引き締まる時期が遅れ、原油相場に下方圧力が加わる期間が長引く、といった展開も考えられる。また、需給が相対的に引き締まる結果、原油相場に上方圧力が加わっても、その過程でシェールオイルの開発・生産コストを徐々に原油価格が上回っていくことにより、再びシェールオイル鉱床での開発・生産が活発化し、原油相場に下方圧力を加えてくる結果、価格の上昇が抑制される、といった状況が発生する可能性もある。このように、地政学的リスク要因に伴う市場での石油供給途絶懸念が極度に上昇したり、米国北東部に厳冬が訪れ暖房用石油製品需要が急増したりするといったことがない場合、今後OPEC産油国間での減産の機運が盛り上がらなければ、少なくとも原油相場が抑制される環境が発生しやすいものと考えられる。 ただ、一方で、開発・生産コストが高水準の在来型油田やオイルサンド等の新規プロジェクトについては、原油価格下落に伴い今後投資判断が遅延することなどにより、将来的な石油供給低下(つまり、石油開発作業が遅延する結果当初見込んでいた時期に石油供給が開始されない、ということ)の要因となりうる他、産油国の緊縮財政による政情不安の発生と市場での石油供給途絶懸念の増大の可能性を含め、中長期的には原油価格上昇の潜在性を内包している点に注意が必要であろう。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? . 原油市場を巡るファンダメンタルズ等 2014年9月の米国ガソリン需要(確定値)は前年同月比で1.9%程度減少の日量878万バレルと速報値(同869万バレル、前年同月比2.9%程度の減少)から上方修正された(図4参照)。9月の同国からのガソリン輸出が速報値の段階では日量36~45万バレル程度(平均推定同39万バレル)と6~7月の月間輸出量(確定値)が暫定的に使用されていたと見られる一方で、9月の輸出確定値は日量34万バレルと速報値を日量5万バレル程度下回っており、この分が速報値から確定値に移行する段階で国内需要に算入されたことが上方修正の一因と考えられる。また、前年同月比で1.9%程度の減少となっていることについては、自動車の燃費効率の改善が影響しているといった部分はあろうが、米国での9月の自動車運転距離数は前年同月比で2.3%の増加と比較的堅調に伸びていることから、2014年10月のガソリン需要(速報値では日量896万バレル(前年同月比0.1%増加))が確定値に移行する段階で上方修正される可能性があることに留意する必要があろう。11月の同国ガソリン需要(速報値)は日量916万バレルと前年同月比で2.7%程度の増加となっているが、同国のガソリン価格が10月以降顕著に下落傾向となったことから、購入が刺激されている可能性が考えられる。他方、米国では冬場の暖房シーズン到来に伴う暖房用石油製品需要期に突入したこともあり、原油精製処理量も増加(図5参照)、軽油や暖房油といった留出油の在庫低迷(製油所の秋場のメンテナンス作業実施に伴う生産活動の鈍化に加え国内での穀物収穫のための農機具向け需要の発生などが背景にあると見られる)の結果、留出油の精製利幅が改善されたことにより、当該製品の生産が促進されたことに合わせガソリンの生産も進んだこと(図6参照)から、同国のガソリン在庫は増加傾向を辿り、12月上旬時点においては平年幅上限付近に位置する量となっている(図7参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? lobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? 014年9月の同国留出油需要(確定値)は前年同月比で4.9%程度増加の日量391万バレルと速報値である同377万バレル(前年同月比1.1%程度の増加)から上方修正されている(図8参照)。9月の留出油輸出についてEIAは速報値時点では暫定的に日量121万バレル程度と見込んでいたものの、実際の輸出量は日量109万バレルと暫定値を日量12万バレル下回っていたことから、この分が輸出から国内需要に振り替えられたと見られることが、速報値から確定値への移行段階で上方修正の一因となっているものと考えられるが、この月は鉱工業生産を含め同国経済が比較的良好な状態にあり、製造業者からの輸送や在庫積み上げ等が行われたとされることが、留出油需要の伸びに貢献していると考えられる。他方、2014年11月の留出油需要(速報値)は日量382万バレルと、前年同月比で1.9%程度の減少を示しているが、米国経済がこの時期顕著に減速しているという兆候も見られないことから、当該需要は速報値から確定値に移行する際に上方修正される可能性があるので注意が必要であろう。一方、製油所では稼働が上昇するとともに留出油の生産活動も活発化してきた(図9参照)ものの、11月中旬以降しばしば米国北東部で気温が平年を下回る程度にまで低下し暖房用燃料需要が発生したと見られる他、ベネズエラ等の製油所不具合(後述)に伴う国外からの留出油調達活動の活発化から当該製品の輸出が行われた可能性があり、留出油在庫は11月半ば前後に一時低下、その後増加傾向となったが、量としては12月上旬としては平年幅下限付近に位置している(図10参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? 2014年9月の米国石油需要(確定値)は、留出油やジェット燃料の需要が前年同月比で増加した一方で、ガソリン、重油(他の燃料への転換により重油の需要は近年減少傾向にある)、及び「その他の石油製品」の範疇の需要が前年同月比で減少していることで相殺して余りあったことから、日量1,904万バレルと前年同月比で1.1%程度減少した(図11参照)。この中でも「その他の石油製品」の範疇が速報値(日量396万バレル)から相当程度下方修正された(確定値は同358万バレル)ことにより、同月の石油製品需要(確定値)も速報値(日量1,926万バレル、前年同月比ほぼ横這い)から下方修正されている。また、2014年11月の米国石油需要(速報値)は日量1,992万バレルと前年同月比で0.8%程度の増加となっているが、これはガソリンに加え「その他石油製品」の範疇が前年同月比で相当程度増加したことが影響している(なお、9月同様「その他の石油製品」の範疇は、速報値から確定値に移行する際に相当程度修正される可能性があるので注意が必要であろう)。他方、製油所での原油精製処理量の増加とともに、Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 10 ? ッ国の原油在庫は製油所のメンテナンス作業実施に伴う稼働低下と原油精製処理量減少の時期に比べると増加速度が緩やかになってきているが、それでも量としては平年幅の上限を超過している状態を維持している(図12参照)。なお、原油在庫が平年幅を超過する水準となっており、ガソリンが平年幅上限付近に位置する在庫量、そして留出油在庫が平年幅の下限付近に位置する状況となっていることから、原油とガソリンを合計した在庫は平年幅を超過、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は平年幅上限付近に位置する状態となっている(図13及び14参照)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 11 ? 2014年11月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国では同水準となった一方で、欧州においては、製油所での秋場のメンテナンス作業が前年程大規模でなかったうえ、米国で留出油在庫が低迷したことや、11月1日にベネズエラのCardon製油所(原油精製処理能力日量31万バレル)が荒天による停電で停止、11月4日にはCandon製油所に隣接するAmuay製油所(原油精製処理能力日量64.5万バレル)も電力や蒸気の供給に不具合が発生したことにより操業を停止、その後両製油所とも操業は再開したものの、11月19日現在減産中(Amuay製油所が40%弱、Cardon製油所が80%強程度の、それぞれ稼働率)であることに伴い、同国の製品供給不足に対処するため、国外からの軽油等の調達を活発化させたことにより、欧州での製油所の精製利幅が改善、稼働が上昇した結果、当該地域での原油在庫は若干ながら減少した。また、日本においても、製油所での秋場のメンテナンス作業が終了に向かうとともに原油精製処理量が増加してきたことに伴い原油在庫が減少Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 12 ? オたことから、OECD諸国全体では原油在庫は減少となったが、量としては平年幅を超過する状態は継続している(図15参照)。他方、製品在庫については、米国ではガソリン在庫は増加、留出油在庫は微減であったものの「他の石油製品」の範疇の在庫の減少が影響し、石油製品全体としても在庫は減少となった一方、欧州では製油所の稼働の上昇に伴い製品の生産が活発化した結果、ガソリン、中間留分、及び重油の在庫が増加したことに伴い製品在庫も全体として増加、また、日本でも製油所での生産活動の回復に伴い冬場の暖房需要期を控え灯油の在庫の積み上げが進んだことにより製品在庫全体としても増加となったことから、OECD諸国全体としても製品在庫は増加したものの、量としては平年幅下限付近に位置している(図16参照)。なお、原油在庫が平年幅の上限を超過している一方で石油製品在庫が平年幅の下限付近に位置する水準となっていることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年並みの量となっている(図17参照)。また、2014年11月末時点でのOECD諸国推定石油在庫日数は58.7日と10月末の推定在庫日数である59.1日から低下している。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 13 ? シンガポールでのガソリンやナフサといった軽質製品の在庫量は、11月12日時点では1,100万バレル台半ばであったものが、その後1,000万バレル台後半~1,100万バレル台前半で推移した後、12月10日には1,000万バレル台後半となり、概ね一定の範囲内で変動した。ただ、9月後半にメンテナンス作業のため操業を停止したインドネシアのCilacap製油所(原油精製処理能力日量34.8万バレル)が11月17日に操業を再開したこともあり、ガソリン価格は11月中旬~12月中旬においては総じて原油価格よりも下落の度合いが大きかったが、それでも、11月25日に台湾プラスチック工業(Formosa)の残差油流動接触分解装置(RFCC)装置(処理能力日量8.4万バレル)が停止し、それが3週間前後継続するであろう旨明らかになったことで、当該装置停止後しばらくの間は需給逼迫感から原油価格が下落する中でもガソリン価格が相対的に維持される場面も見られた。また、ナフサについては一時中国化工集団公司(Sinopec)の石油貿易子会社ある中国国際石油化工公司(Unipec)が購入を活発化させたことで、原油価格に対してナフサ価格が相対的に底堅い動きを示す場面が見られたが、この動きはその後鎮静化した一方で、石油化学工業部門でナフサと競合する液化石油ガス(LPG)が米国からの輸出活発化による需給緩和感からナフサに対する競争力が衰えないことがナフサの需要を抑制する格好となったことで価格に下方圧力が加わった結果、ナフサは原油価格に比べて軟調に推移する場面も見られた。 シンガポールの中間留分在庫水準は11月12日には1,100万バレル台前半であったが、12月10日においては800万バレル台半ばと減少傾向を示した。日本等での冬場の暖房シーズンに伴う灯油需要期到来により、製油所では灯油の生産に重点が置かれ、生産された灯油が日本等で在庫として積み上げられる一方で、ジェット燃料や軽油の生産や輸出が影響を受けていることが、在庫減少の背景にあると考えられる。ただ、11月25日に発表された日本の2014年12月~2015年2月の3ヶ月予報において、エルニーニョが発生する可能性が高いために、北日本では平年並み、東日本以西では平年を超過するGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 14 ? C温が予想される旨発表されたことや、11月27日に開催されたOPEC総会後の原油価格の下落傾向から、アジア地域の中間留分価格の下落がどこで落ち着くかに関して、市場が様子見となったことに伴う買い控えが発生した結果、例えば軽油やジェット燃料は原油価格と比べて若干ながら下落の度合いが大きくなる傾向が見られた。 シンガポールの重質製品在庫は11月12日には1,800万バレル強の水準であったが、その後1,600万バレル台後半~1,900万バレル程度の間で推移したが、12月10日には1,800万バレル台半ばと11月12日に比べて微増となった。市場では、11月7日に発生した、デンマークの大手船舶燃料販売会社OW Bunkerの破綻(シンガポール子会社であるDynamic Oil Tradingの社員による不正行為が発端であるとされる)により、OWの保有する船舶燃料が差し押さえられる恐れが生じたことに伴い燃料購入者が代替手当を行わなければならなくなるとの観測が市場で発生したことに加え、船舶燃料販売者の一部が購入者に対する信用条件を厳しくしたことから、市場での当該燃料の流動性が大幅に低下したことで、11月中旬から下旬にかけては、重油価格は原油のそれに比べて相対的に堅調に推移したものの、OPEC総会後は原油価格の下落が続いたことから重油価格も併せて下落、その下落の落ち着き先に関して買い手が様子見の姿勢となったこともあり、重油価格は原油価格に比べて大きく下落する結果となっ2014年11月中旬から12月中旬にかけての原油市場においては、米国経済が改善していることを示唆する指標類や中国金融当局による金利引き下げに伴う景気回復期待の増大、市場の事前予想に反した米国原油在庫の減少等により、原油相場が上昇する場面も見られたものの、米ドルの上昇や日本経済の不振を示す指標類、OPEC通常総会(11月27日開催)に向けた原油生産上限引き下げに対する加盟国間での意思統一の欠如と実際の総会における原油生産上限引き下げ見送りに伴う市場での世界石油需給緩和感の増大が原油相場に下方圧力を加え続けた結果、価格は総じて下落傾向となり、WTIは12月12日には1バレル当たり57.81ドルと終値ベースでは2009年5月15日以来の低水準となった。(図18参照)。 2014年11月中旬から12月中旬にかけての原油市場等の状況 . 3た。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 15 ? 11月17日には、この日日本の内閣府から発表された2014年7~9月期の同国国内総生産(GDP)(速報値)が前期比で年率1.6%の減少と4~6月期の同7.1%の減少に続き、2期連続の減少となった他、市場の事前予想(同2.1~2.2%増加)を下回ったことに加え、11月17日にドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が、欧州議会での証言で、国債の購入を含め追加金融緩和策を実施する用意がある旨発言したことで、ユーロが下落したこともあり、米ドルが上昇したこと、翌18日には、11月27日に開催される予定のOPEC通常総会を前にして加盟国間での原油生産上限引き下げに関しての意見統一の兆候が見られないことから当該総会での結果を市場が悲観したことにより、原油価格は11月17~18日の2日間で、併せて1バレル当たり1.21ドル下落し、11月18日の終値は74.61ドルとなった。11月19日には、この日イラクのクルド人自治区エルビルの政府関係機関庁舎の外で自動車爆弾が爆発し少なくとも5名が死亡した旨報じられたことで、イラクを巡る地政学的リスクの高まりと石油供給途絶の可能性を市場が意識したことが原油相場に上方圧力を加えた反面、11月19日に発表された米国連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(10月28~29日開催分)で、米国外経済及び金融状況がさらに悪化した場合には、米国の中期的経済成長が下振れする恐れがあるとの見解が示された旨判明したことが、原油相場に下方圧力を加えたことにより、この日の原油価格の終値は1バレル当たり74.58ドルと前日終値比で0.03ドルの下落にとどまった。11月20日には、この日米国フィラデルフィア連邦準備銀行から発表された11月のフィラデルフィア地区製造業景況感指数(ゼロが当該部門拡大と縮小の分岐点)が40.8と10月の20.7から上昇、1993年12月(この時は41.2)以来の高水準となった他、市場の事前予想(18.3~18.5)を上回ったことに加え、11月20日に全米不動産業協会(NAR)から発表された10月の同国中古住宅販売件数Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 16 ? ェ年率526万戸と9月の同517万戸から上昇、2013年9月(この時は同526万戸)以来の高水準となった他市場の事前予想(同515~516万戸)を上回ったこと、11月20日に米非営利民間調査機関コンファレンス・ボードから発表された10月の同国景気先行指標総合指数(2004年=100)が105.2と前月比で0.9%上昇、市場の事前予想(同0.6%の上昇)を上回ったことで、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.00ドル上昇し、終値は75.58ドルとなった(なお、この日を以てニューヨーク商業取引所(NYMEX)の12月渡しWTI原油先物契約取引は終了したが、2015年1月渡しWTI原油先物契約のこの日の終値は1バレル当たり75.85ドル(前日終値比1.35ドル上昇)であった)。11月21日には、この日中国人民銀行が1年物貸出金利を0.4%引き下げ5.6%とするなどの金利引き下げ策を翌22日より実施する旨発表したことで、同国経済の回復と石油需要の増加加速期待が市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり76.51ドルと前日終値比で0.93ドル上昇した。 ただ、11月24日には、11月27日に開催される予定のOPEC通常総会を前にして持ち高調整が発生したこと、11月25日には、この日サウジアラビア、ベネズエラ、ロシア、メキシコの4ヶ国で、原油市場に関する協議が行われものの、原油産出量削減に関しての合意がなされなかったことから、11月27日に開催される予定のOPEC通常総会での減産決定の見込みに関して悲観的な見方が市場で発生したこと、11月26日においても、翌27日に開催される予定のOPEC通常総会を前にしてOPEC産油国側から減産決定の兆候が見られないことから、当該総会での減産決定の見込みに対する悲観的な見方が市場で増大したこと、11月27日は、米国では感謝祭(サンクスギビングデー)の休日に伴いNYMEX原油先物契約にかかる通常取引は行われなかったが、この日に開催されたOPEC通常総会で、日量3,000万バレルの原油生産上限を据え置きとする旨決定したことから、この先世界石油需給の緩和状況が強まるとの認識が市場で広がったことにより、原油価格はこの週(11月24~28日)はいずれの日においても終値ベースで下落、11月28日の原油価格の終値は1バレル当たり66.15ドルと終値ベースでは2009年9月25日(この日の終値は66.02ドル)以来の低水準となった他、原油価格は4取引日で併せて10.36ドル下落した(特に11月28日は11月26日終値比で7.54ドルの下落と、下落率は10.2%に達した)。 12月1日には、11月28日の原油価格の大幅な下落による値頃感から原油を購入する動きが市場で発生したことに加え、これまでの米ドル上昇に対する利益確定の動きが市場で発生したことにより米ドルが下落したことから、この日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり2.85ドル上昇し、終値は69.00ドルとなったが、12月2日には、この日イラク中央政府とクルド人自治政府との間で、同自治政府から最大で日量55万バレルの原油をジェイハン(トルコ)経由で正式に輸出できるようにする旨両者が合意したGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 17 ? アとで、この先同国での原油生産が増加するのではないかとの観測が市場で発生したこと、また、この日米国連邦準備制度理事会(FRB)のフィッシャー副議長が、原油価格低下が米国経済に多大な恩恵をもたらす旨述べたことに加え、同国が「相当期間」低金利を維持するというFOMCでの方針に関し、「相当期間」という表現を取り下げる時期が接近しつつあることを示唆したことから、米ドルが上昇したことにより、この日の原油価格の終値は1バレル当たり66.88ドルと前日終値比で2.12ドル下落した。12月3日には、この日米国エネルギー省(EIA)から発表された同国石油統計(11月28日の週分)で、原油在庫が市場の事前予想(前週比で38~175万バレル程度の増加)に反し同369万バレル減少していることが判明したことで、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.50ドル上昇し、終値は67.38ドルとなったものの、12月4日には、この日サウジアラビアが2015年1月のアジア及び米国の顧客向け原油販売価格を引き下げた旨報じられたこと、12月5日も、前日のサウジアラビアの米国及びアジア顧客向けの2015年1月の原油販売価格引き下げの流れを引き継いだうえ、12月5日に米国労働省から発表された11月の同国非農業部門雇用者数が前月比で32.1万人の増加と、市場の事前予想(23.0万人)を上回ったことで、金融当局による金利引き上げ時期が早まるのではないかとの見方が市場で発生したことから、米ドルが上昇したことにより、12月5日の終値は1バレル当たり65.84ドルと原油価格は12月4~5日の2日間で併せて1.54ドル下落した。 さらに、12月5日の夕方に米大手金融機関モルガン・スタンレーが2015年のブレント原油価格予想をそれ以前の1バレル当たり98ドルから同70ドルへと下方修正した他、43ドルにまで到達する可能性がある旨発表したことに加え、12月8日にクウェート石油(Kuwait Petroleum Corporation)の最高経営責任者(CEO)のアドサニ(Adsani)氏が今後6ヶ月間程度は原油価格は1バレル当たり65ドル前後で推移する可能性がある旨発言したことで、12月8日の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり2.79ドル下落し、この日の終値は63.05ドルとなった。12月9日には、前日の原油価格下落に対して値頃感から買い戻しの動きが市場で発生した他、これまでの米ドルの上昇に対し持ち高調整の動きが市場で発生したことにより米ドルが下落したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり63.82ドルと前日終値比で0.77ドル上昇したものの、12月10日には、この日サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相が同国は原油生産を削減するつもりはない旨改めて示唆した他、同じくこの日に発表されたOPECの月刊オイル・マーケット・レポートでOPECが世界石油需要を下方修正したこと、12月10日にEIAから発表された同国石油統計(12月5日の週分)で原油在庫が市場の事前予想(前週比で220~300万バレル程度の減少)に反し145万バレル増加している旨判明したこと、12月11日も、前日の市場の流れ(サウジアラビアGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 18 ? フヌアイミ石油鉱物資源相が同国は原油生産を削減するつもりはない旨示唆、OPEC月刊オイル・マーケット・レポートでOPECが世界石油需要を下方修正、EIAから発表された同国石油統計で原油在庫が市場の事前予想に反し増加していることが判明)を引き継いだこと、12月12日には、この日国際エネルギー機関(IEA)から発表されたオイル・マーケット・レポートでIEAが2015年の世界石油需要を下方修正したことから、原油価格は12月10~12日の3日間で併せて6.01ドル下落、12月12日の原油価格の終値は1バレル当たり57.81ドルとなったが、これは終値としては2009年5月15日(この時は56.34ドル)石油市場に関連する地政学的リスク要因は、解消しているわけではないが、市場の石油供給途絶懸念を高めるような動きは相対的に目立たなくなってきている(但し一部諸国では火種は存在する)。ウクライナにおいては、11月21日に欧州連合(EU)及び北大西洋条約機構(NATO)加盟を目指し親欧州派政党が連立政権樹立で合意するなど、ロシアの反発を招く恐れのあるような動きを続けている(一方で11月17日にはロシアがウクライナ国内外で軍備を増強しているとの指摘もなされている)。他方、同国東部の親ロシア派勢力であるドネツク人民共和国の(自称)首長であるザハルチェンコ氏は、2015年初めまでに独自の憲法を制定する意向である旨表明するなど、同国政府と親ロシア派勢力との緊張緩和に向けた動きは紆余曲折を経る状態になっている。また、両者間では引き続き戦闘が繰り返されており、12月2日には政府と親ロシア派勢力との間で同日17時を以て再度停戦を行う旨合意したことが明らかになったものの、同日夜には戦闘が再開した旨報じられるなど、同国での停戦状態は不安定なままである。そのような中、12月4日にはポロシェンコ大統領が12月9日を以て同国東部での戦闘を停止する旨のいわば一方的な停戦方針宣言を行った。そして12月9日には同国政府と親ロシア派勢力は停戦に合意したと伝えられる(その後も散発的に戦闘が行われていることを示唆する報道も見られるが、同国政府は12月10日も停戦を継続と表明、また親ロシア派勢力は重火器類を前線から撤去する作業を実施していると言われている)。さらに12月12日には完全な停戦状態の実施につきミンスク(ベラルーシ)でウクライナ政府と親ロシア派勢力、ロシア、OSCE(欧州安全保障協力機構)との間で協議を実施することになった。このようにウクライナ情勢は依然として不安定なままとなっているが、ロシアからの原油及び石油製品供給には支障は発生しておらず、この面ではリスク要因は根本的に除去されたわけではないものの、石油供給途絶懸念は市場では高まっていない状況にある。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 19 ? 以来の低水準であった。 . 今後の見通し等 4Cランにおいては、核開発を数年間制限する一方で、ウラン濃縮のための遠心分離器の能力を10倍に引き上げ、西側諸国による対イラン制裁の一括解除を望むイランと、最長20年間の核開発制限を行う一方で、1.9万基の遠心分離器を4,000基にまで引き下げ、制裁の段階的解除を望む西側諸国等との間での意見の相違を解消できなかったことから、11月24日の最終合意にかかる期限を2015年6月末にまで延期する旨11月24日に両者が合意した。この中で、2015年3月1日までに両者が枠組みで合意に到達し、6月末までに最終的な合意に到達することを目指すことになる。また2013年11月に到達した両者間での暫定合意は2015年6月末まで継続し、海外で凍結されているイランの原油販売代金のうち月当たり7億ドルを受領することや、イラン産原油輸出時のタンカーに対する欧州企業による再保険の付保等も継続することになる(なお、11月24日にザリフ外相はイランはウラン濃縮活動を放棄するつもりはないが、最終的な合意までに必要な時間はそれほど長くはないとも発言している)。米国では11月24日に共和党議員がオバマ大統領に対し対イラン制裁を強化することでイランからの譲歩を引き出すよう要請したと伝えられるものの、イランのハメネイ師は、11月27日にウラン濃縮問題に関するイランと西側諸国等との協議の延長に反対しない旨発言することにより、イラン国民の当該交渉に対する支持が高まっており、また、国連安全保障理事会理事国5ヶ国にドイツを加えた6ヶ国とイランとはウラン濃縮問題を巡る交渉を12月17日に再開する旨複数の関係者が12月11~12日に明らかにするなど、総じてこれまでの両者の対話路線は維持されている(また、12月17日の協議再開に先立ち12月15~16日には、シャーマン米国務省副長官代行、アシュトン前EU外交安全保障上級代表、及びイラン側代表団との3者で協議を実施する予定である)。従ってイランを巡る地政学的リスク要因についても、根本的に解決されたわけではないが、かといって悪化しているわけでもなく、この面では原油相場の影響としては中立的なものと見ることができる。 リビアについても、2つの議会、2人の首相が存在し、同国国営石油会社NOCや石油資産の支配を巡り対立している模様である(11月26日には東部トブルクを拠点とする暫定政府はNOC会長にアルマブルク・ボウセフ氏を指名した旨明らかにしているが、11月27日には西部トリポリを拠点とする、いわゆる中央政府も、NOCの支配権を主張、NOCを経由せずに同国産原油を購入するものに対して法的措置を実施する旨警告している)。ただ、このような状況にもかかわらず、リビアの原油生産量は日量80万バレルである旨12月7日に明らかになっている。これには現在パイプラインが閉鎖されていることから操業を停止しているエル・シャララ油田(操業停止前の原油生産量は日量30万バレルと言われていた)が含まれておらず、同油田が操業を再開した場合(現在パイプライン閉鎖解除時に備え、油田の操業再開準Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 20 ? sっていると伝えられる)、同国の原油生産量は日量110万バレルと、同国での抗議行動活発化等に伴う原油生産量低下以前の水準(日量145万バレル程度)にさらに接近するものと見られる。このようなことから、リビアについても、両政権間での対立の激化や部族等による抗議行動の再発による石油関連施設への影響につき注意しなければならないが、例えば2014年前半(5月29日には同国の原油生産量は日量15.5万バレルであると伝えられた)から比べれば同国の原油生産は相当程度回復しており、この面では、同国を巡る市場の石油供給途絶懸念は少なくとも現時点ではそれほど強まっていないようにに見受けられる(ただ、12月13日には同国のエス・シデル石油ターミナル(石油出荷能力日量34万バレルとされる)の近隣地域で政府軍が敵対する部隊に対して空爆を実施したことから、当該ターミナルの労働者が避難した結果ターミナルの操業が停止、また翌14日には、同ターミナルに加えラス・ラヌフ石油ターミナル(石油出荷能力日量22万バレル)の石油出荷に対してNOCが不可抗力条項の適用を宣言しており、今後同国の原油生産に影響が出ると考えられることから、当面同国の状況については注意して見る必要があろう。)。 このように全体として、地政学的リスク要因は、色々と動きはあり、懸念は完全には解消してはいないものの、かといって高まっているわけではないことから、原油相場に対しては中立的といったところであり、事態急変による原油相場への影響面ではリスクを抱えているものの、現時点では石油需給状況等他の要因に対抗するほど強力な要因ではなくなってきている。 米国では、非農業部門の雇用者数が前月比で20万人超増加する状態が継続するなど、同国の景気は比較的順調に回復していることが覗われる。しかしながら、同国は経済が成長している一方で石油需要の伸びは限定的であり(2010年から2014年(推定)にかけ、米国の国内総生産(GDP)は年率2.1%で増加したのに対し、同国の石油需要は年率0.2%で減少している)、高水準のガソリン価格と燃費効率の改善が影響したと推定される。また、原油価格の低下に伴いガソリン小売価格は低下してきているので、今後需要が刺激される側面はあるものの、燃費効率の改善の影響はいましばらく継続するものと考えられることから、同国の石油需要は増加に転じたとしても、それは限定的な程度にとどまる可能性が考えられる。また、経済が拡大基調にあることから、かえって、同国の金融当局による金利引き上げの観測が市場で発生しすくなっており、市場での緩和資金の減少と米ドルの上昇に伴う米ドル建て以外の通貨での原油価格の上昇による米国以外の地域での需要抑制効果に対する市場の認識から、原油相場にむしろ下方圧力を加える場面も見られうる。他方、2015年1月12日夕方の米アルミ製造最大手アルコアから、2014年10~12月の米国等の企業業績が発表されることから、この業績が市場の事前予想よりも良けれGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 21 ? ホ経済成長と石油需要の増加期待から原油相場に上方圧力を加えるといった展開もありうるが、反対に米国金融当局による金利引き上げ時期の早まりに対する観測が市場で増大することにより、米ドルが上昇するとともに原油相場に下方圧力を加える可能性もあるので、注意が必要であろう。 一方、欧州での経済はウクライナ問題を巡り7月末~8月上旬に発動された(欧州は7月31日発動、米国は8月6日発動とされる)欧米諸国による対ロシア経済制裁がロシアと欧州諸国との貿易関係を通じて、欧州経済に影響を及ぼすことから、域内経済活動が抑制され、その結果石油需要も低迷したままとなる可能性が考えられる。加えて、欧州では追加金融緩和策が実施される可能性が高いと市場が認識していることから、ユーロが下落しやすく(その意味では、ドラギECB総裁他金融当局関係者の発言には今後も注目すべきであろう)、その反面で米ドルが上昇しやすいといった状態は継続する可能性がある。さらに、中国については、2014年7~9月期のGDPが前年同期比で7.3%の成長と2010年の同10%前後の成長から相当程度鈍化しているうえ、2015年の事実上の同国の経済成長目標が7%前後に引き下げられる(それまでは7.5%)と言われるようになっている。このようなことから、中国での石油需要の伸びも少なくとも大幅な加速は考えにくい(しかしながら、中国では石油備蓄基地が建設途上であり、その過程で石油備蓄用の原油の輸入量が増加することにより、見かけ上同国の石油需要の伸びが見られるといったことは想定される)。このように、欧州や中国での経済減速もしくはそのような市場での観測(もしくは欧州での追加金融緩和策の動き等によるユーロ下落と米ドルの上昇)で、原油価格に下方圧力が加わってくるといったことが想定される。 石油需給ファンダメンタルズ上では、当面は、2015年に向けての世界石油需給緩和感が市場心理に大きく影響する可能性がある。例えば、IEAは2014年12月12日に発表したオイル・マーケット・レポートで、2015年の世界石油需要を日量23万バレル下方修正した結果、同年は前値比で日量90万バレルの増加とした(2015年の世界石油需要を初めて発表した2014年7月には同141万バレルの伸びと予想していた)一方で、非OPEC産油国の石油生産量が日量16万バレル上方修正されたことなどと併せ、2015年の対OPEC産油国原油需要量見込みも日量2,885万バレルと11月時点の同2,919万バレルから引き下げられている。他方OPEC産油国の11月の生産量は日量3,032万バレルと前月比で同31万バレルの減少となっているが、これはリビアでの原油生産量が10月の日量87万バレルが11月には同69万バレルへと低下していることによるところが大きいが、これは同国最大の油田であるエル・シャララ油田の停止(11月5日に武装勢力の襲撃により同油田の操業が停止した旨報じられており、その後同油田に繋がるパイプラインが閉鎖されたため、引き続き当該油田は操業を停止した)が影響している。ただ、前Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 22 ? qの通り、12月7日にリビア国営石油会社NOCは、同国の原油生産量は80万バレル程度にまで増加しており、それはエル・シャララ油田の生産は考慮されていない旨明らかにしている。つまりエル・シャララ油田が操業を再開した場合同国の原油生産量は日量110万バレル程度にまで増加することになり、市場での需給緩和感が一層強まることになる。また、イラクにおいても同国の原油生産の中心地である南部の油田や、同国中央政府との間で国外輸出につき合意したクルド自治政府支配地域内での油田で増産される可能性もあることから、市場の石油需給緩和感がさらに強まりやすい状況にもある。一方で、サウジアラビア、クウェート、イラク等がアジアや米国向けの自国産原油価格の引き下げを実施している。OPEC総会での原油生産上限見送りの決定もあり、原油価格下落の中で産油国は収入を確保しようと減産しないことになり、ここに値下げ競争が発生しやすくなる。このようなことから、市場における原油相場の先安観が醸成され先物市場では原油先物契約を売却する動きが活発化しやすくなっている。そして、例えば米国大手金融機関のモルガン・スタンレーは2015年のブレント原油価格予想をそれまでの98ドルから70ドルへと引き下げるとともに、一時的には43ドルにまで到達する可能性がある旨指摘しているが、このような原油価格予想の下方修正もまた、原油先物契約の売却を一層誘発することになり、その結果、実際に原油価格が下落するといった展開となりうる。また、このような原油価格の下落が続くと、例えば銀行等による原油価格予想がさらに下方修正され、それがさらなる原油先物契約売却を招く、といったように、下落のスパイラルに陥りやすい状態になると考えられる。加えて現時点では、12月10日にはサウジアラビアが減産に否定的な見解を明らかにしていることから、OPEC産油国間等で減産の動きが近々見られるとも考えにくい他、米国での暖房用石油製品消費の中心地である北東部においては、現在12月下旬にかけ平年並みか平年を超過する気温が予想されており、この面でも暖房用需要が旺盛になるとの観測も市場では発生しにくい(但し、天気予報は大きく転換することがあるのでこの先注意が必要であろう)。強いて言えば、今後12月末にかけ、米国メキシコ湾岸の主要製油所に通じるヒューストン運河(Houston Ship Channel)等において濃霧の影響で原油輸送タンカーの航行にしばしば支障が生じることにより当該製油所での原油在庫の積み上げが鈍化することがありうる他、年末の課税対策から精製業者等が原油在庫等を相当程度減少させる可能性がある(例えば原油在庫については年末に向け週当たり7~800万バレル、場合によっては1,000万バレルを超過する規模で減少することもありうる)(米国の一部の州では年末の石油在庫評価額に対して固定資産税等が課税されることから、課税額を低減させるために精製業者等は必要以上の在庫を保有することを敬遠することに伴い在庫が減少に向かうものとされるが、1月以降は製油所等での原油等の受入が再開されることから在庫が増加する光景がしばしばGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 23 ? ゥられる)。このようなことから、年末にかけて発表される米国石油統計では原油在庫等が減少傾向を示す場面が発生することにより、これが市場で石油需給の引き締まりの兆候と受け取られ、原油価格に上方圧力が加えられる、といったことは想定されるが、これは一時的な在庫の減少と見られることから、原油相場への影響はあったとしても、比較的短期間でその影響力が低減する可能性もある。 全体としては、今後OPEC産油国、特にサウジアラビアを含めた湾岸OPEC産油国からの減産を示唆する発言が出てきたり、地政学的リスク要因面での変化により市場の石油供給途絶懸念が極度に高まったり、また、米国北東部での気温が極端に低下したりする、といったことがない限り、11月27日開催のOPEC総会での原油生産上限引き下げの見送りに伴う、石油需給緩和感の払拭は困難な状況にあり、原油相場においては、継続的に上昇するきっかけがつかめず、たとえ原油先物価格が一時的に上昇しても、それがさらなる原油先物売却の機会となる場合もしばしば見られるであろうと考えられる一方で、OPEC産油国による原油販売価格の引き下げや、市場関係者による原油価格見通しの下方修正などが行われることをきっかけとして、短期的には、さらに原油価格が下落するといった展開となることも否定できないものと考えられる。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 24 ? |
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