急増する南米のLNG輸入 ~ウルグアイ、コロンビアもLNG輸入開始へ~
レポートID | 1004519 |
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作成日 | 2014-12-16 01:00:00 +0900 |
更新日 | 2018-03-05 19:32:42 +0900 |
公開フラグ | 1 |
媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
分野 | 天然ガス・LNG探鉱開発 |
著者 | 舩木 弥和子 |
著者直接入力 | |
年度 | 2014 |
Vol | 0 |
No | 0 |
ページ数 | |
抽出データ | 更新日:2014/12/16 調査部:舩木弥和子 急増する南米のLNG輸入 ~ウルグアイ、コロンビアもLNG輸入開始へ~ (Platt’s Oilgram News、International Oil Daily、Business News Americas他) ?南米のLNG輸入は2008年に開始された。輸入量は、当初ごく少量であったが、その後急激に増加し、2013年には中南米のLNG輸入量は世界全体の6%を占めるようになった。 ?アルゼンチンでは、2001年の経済危機に際してガス価格が凍結されたことで、ガス需要が増加する一方、探鉱・開発促進策がとられず、在来型ガスの生産量は2004年をピークに減退した。そのため、天然ガス供給量が不足し、同国は2008年にLNG輸入を開始した。Neuquen Basinのシェールガス開発が進展し、天然ガス生産量が増加することが期待されているが、開発は始まったばかりで、当面、LNG輸入が続けられる見通しだ。 ?ブラジルは電力供給量の70~80%を水力に依存しており、2009年以降、降水量が少ない年、少ない時期にLNGを輸入してきた。そのため、南米諸国の中で天候によるLNG受入量の変動が最も大きい国となっており、これまではスポット市場でLNGを調達していた。しかし、2014年は相次いでLNG購入の2年契約を締結し、ブラジルにとってLNG輸入が一時的なものではなくなったことを示す動向なのではないかと注目されている。プレソルトの油・ガス田が開発されることで、国内の天然ガス生産量が増加する見通しであるが、ボリビアからのパイプラインガス輸入とともにLNG輸入は継続される模様だ。 ?チリは、必要とするガスをアルゼンチンからパイプラインで輸入してきたが、そのアルゼンチンでガスが不足し、十分に供給を受けられなくなったために、2009年にLNG輸入を開始した。ガス供給を削減、途絶された経験や気候によるガス需要の変動が少ないことから、チリは南米で唯一ガス購入の長期契約を締結している。国内で生産されるガスの量は限られており、2030年までに同国のLNG需要は倍以上に増加する見通しだ。 ?ウルグアイもチリ同様、アルゼンチンからのパイプラインガスの供給量が減少したため、国営石油会社ANCAP等がモンテビデオ沖合にFSRUを設置しLNGを輸入することとを計画している。2014年初にFSRU等の建設が開始され、2015年7月には操業を開始する予定である。 ?コロンビアの天然ガス生産量は増加を続け、生産されたガスの一部はベネズエラに輸出されている。しかし、天然ガスの埋蔵量、生産量ともに少なく、2016年にはLNG輸入国となる見通しだ。 米、特に南米南部では、国境をまたぐ天然ガスパイプラインが敷設され、隣り合う国同士で天然ガス 南を供給する関係が成立していた。しかし、2006年頃から、ガス供給国で資源ナショナリズム政策がとられたり、天然ガスの生産量が減少したり、確認埋蔵量が下方修正されたりする等、供給面に不安が生じるようになった。一方で、天然ガス需要が増加したこともあって、2008年にアルゼンチン、2009年にブラジルGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 1 - ニチリがLNG輸入を開始した。輸入量は、当初ごく少量であったが、その後急増し、2013年には中南米のLNG輸入量は世界全体の6%を占めるようになった。また、2015年にはウルグアイ、2016年にはコロンビアもLNGの輸入を開始する計画である。各国別にLNG輸入の状況をまとめ、今後の南米のLNG輸入の見通しを推測する。 地域別LNG輸入量(左2007年、右2013年) 中南米の天然ガス消費量 中南米のLNG輸入量 (BP統計より作成、単位:10億m3、LNG輸入量のその他にはドミニカ共和国、プエルトリコが含まれる) 1. アルゼンチン アルゼンチンでは、2001年の経済危機以降、景気回復をめざし天然ガス価格が低く据え置かれた。その結果、ガス需要が増加したが、一方で探鉱・開発促進策がとられず、在来型ガスの生産量は2004年をピークに減少し、2004年以降、年間を通してみれば生産量が消費量を上回っているものの、需要がピークとなる 6~8月には天然ガスが不足する状態となった。そこで、政府は2004 年にパイプラインでのボリビアからの天然ガス輸入を再開した。しかし、2007年の冬にガス不足が再び顕著となり、2008年にGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 2 - ahia BlancaにおいてLNGの輸入が開始されることになった。このBahia Blanca Gas Portは、既存の桟橋と Excelerate Energy の EBRV (Energy Bridge Regasification Vessel)を用いることで、2008年中にLNGの受け入れを開始した。Buenos Aires 近郊のEscobar のLNG 受入基地GNL Escobar についても、2010年9月に計画が発表され、2011 年5 月にEBRVを用いて試験操業が行われるという、非常に速いペースで操業が開始されることとなった。 (BP統計より作成) LNG受入ターミナルのオペレーションは国営石油会社のENARSA、YPF とExcelerate Energyが共同で行っている。LNGは当初、スポット市場で購入されていたが、2011年から短期契約が結ばれるようになった。BP統計によれば、LNG輸入量は2008年の4.1億m3から、2009年9.6億m3、2010年17.8億m3、2011年43.8億m3と毎年ほぼ倍増、その後も2012年52億m3、2013年69億m3と増加を続けている。主なLNGの供給国はトリニダード・トバゴとなっており、2013年はトリニダード・トバゴから36億m3、カタールから9億m3、ナイジェリアから5億m3を輸入、米国や欧州、ブラジルから再輸出されたLNGも受け入れている。LNG輸入量が天然ガス消費量に占める割合は、2008年の5%から2013年には16%に増加した。2013年に行われた入札で、2014~2015年はBahia Blancaに BP、Gazprom、Statoil が、EscobarにGas Natural Fenosa等がLNGを供給することになった。2014年は、暖冬でガス需要が減退、Bahia Blanca、Escobarともに貯蔵能力が15万m3と限られていることに加え、10月初めには高潮と強風で入港が困難になり、9月以降LNGタンカー少なくとも9隻がアルゼンチン沖で待機するという事態が生じた。 LNG輸入量の増加を受けて、Bahia Blanca、Escobar以外にもLNG受入基地を立ち上げようとする計画が持ち上がっている。しかし、2013年稼働予定とされていたGNL Puerto Cuatreros、Rio Negro州にカタールが資金の一部を提供することで計画されていた Qatari LNG、ENARSAとPDVSAが共同で陸上に建設を計画していたLNG受入プロジェクトのいずれも、大きな進展はないようだ。 2013年6月にEIAが発表した「世界のシェールガス資源量評価」では、アルゼンチンのシェールガス技術的回収可能量は802Tcfで、世界第2位にあたるとされている。特に、Neuquen Basinの技術的回収可能量は583Tcfとアルゼンチンのシェールガス資源量の過半を占めている。そのNeuquen BasinのVaca Muertaシェールの地質状況は有機物の含有率、層厚、地層圧力のいずれをとっても米国のシェーGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 3 - 拒wと比較しても遜色ないものとされ、天然ガスの生産量が大きく増加することが期待されている。 現在、YPF、Chevron、Dow Chemicalを筆頭にPan American Energy、ExxonMobil、Shell、Tecpetrol、Total、Petronas等がシェールオイル、シェールガスの探鉱・開発に着手している。生産量は3万boe/d を超える程度であるが、2014年中ごろ以降の油価下落にもかかわらず、探鉱・開発が進みつつあると伝えられている。 南米のLNG受入基地 (各種資料より作成) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 4 - 。後のアルゼンチンのLNG輸入量は、このシェールガスの生産増とボリビアからのパイプラインガスの輸入の状況に左右されることになると考えられる。シェールガスの生産には頻繁に変更される政府の政策、不安定な経済状況等が影響を与えることになると考えられる。また、ボリビアの天然ガスは、生産量は2010年以降増加しているものの、確認埋蔵量は2010年に2005年発表に発表された7,000億m3の約半分にあたる3,600億m3に下方修正されている。後述する通り、ブラジルもボリビアからのガス輸入を継続する計画で、ボリビアで探鉱・開発が順調に進展するのか、アルゼンチンとブラジルがボリビアのガスをどの程度ずつ輸入することになるのか等が、アルゼンチンのLNG輸入量に影響を与えることになるだろう。 .ブラジル 2南米で最初にLNG輸入を計画したのはブラジルで、2008年8月にはFSRU(Floating Storage and Regasification Unit、浮体式貯蔵・再気化設備) Golar Spiritも最初のカーゴもPecemに到着していた。しかし、陸上施設の完成の遅れで、コミッショニングは2009年1月となり、ブラジルのLNG輸入開始時期は後発のアルゼンチンよりも遅くなってしまった。しかし、2009年8月にはGuanabara Bayの受け入れ基地もフル稼働し、輸入量が増加、2009年は合計で9カーゴ、3.5億m3のLNGを受け入れた。ブラジルは電力供給量の70~80%を水力発電に依存しているが、2010年は降水量が少なく、水力の代替としてガス需要が増加、LNG輸入量も増加した。2011年は逆に降水量が多く、ガス需要は減少したが、2012~2013年には再び降水量が減少、LNG輸入量が増加し、2013年は51億m3となった。南米諸国のLNG需要は天候に左右される傾向にあるが、ブラジルはこのように中でも最も降水量の影響を受ける国ということができる。ボリビアからパイプラインで供給されるガスでは、天候等による急な需要の変動に対応することが難しく、ブラジルはLNGに依存せざるを得ない状況にある。 (BP統計より作成) 2014年1月24日には、Petrobrasが北東部Bahia州Todos os Santos湾でLNG受入基地Bahia Regasification Terminal (TRBA)の操業を開始し、現在ブラジル沖合では3基の浮体式LNG受入施設が操業を行っている。Petrobrasは操業上の必要性に応じて受入施設を頻繁に移動させている。例えば、Golar Spiritは、Pecemでコミッショニングを行った後、Guanabara Bayでもコミッショニングを行い、現在はGlobal Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 5 - ecemで操業を行っている。また、Golar WinterはGolar Spirit に代わってGuanabara Bayで操業を行っていたが、短期間、Pecemで操業後、現在はTRBAに移されている1。このように、Petrobrasは、浮体式LNG受入施設であることの利点を生かして、フレキシブルに施設を利用している。 ブラジルは、2013年はトリニダード・トバゴから25億m3、ナイジェリアから9億m3、カタールから3億m3の LNGを輸入した。4~11月の乾季を中心にLNGの輸入が行われているが、水力発電所の貯水量の状況に応じて、アルゼンチン向けに輸入したLNGの再輸出を行っている。 Petrobrasはこれまでスポット市場でLNGを調達してきた。しかし、2014年には相次いで契約期間2年間までのLNG購入契約を締結するようになった。これは、ブラジルの天然ガス生産が需要に追い付かず、LNG輸入がもはや一時的なものではなくなったことを示す動向なのではないかと注目されている。 ブラジルはボリビアから24~32MMm3/dのパイプラインガスの供給を受けているが、ボリビアからのパイプラインは需要の多い南部や南東部向けとなっている。ブラジル北部にはパイプラインがほとんど存在せず、PecemとTRBAから輸入されるLNGに大きく依存している。 このようにLNGに対する需要が高まっていることから、ブラジルでも、LNG受入施設の増設が計画されており、Petrobras等がRio Grande do Sul州やSanta Catarina州でのプロジェクト立ち上げを検討している。また、2014年11月には、Bolognesiグループが、1,200MW級のガス火力発電所をRio Grande do Sul州とPernambuco州Suapeに建設し、それぞれの発電所に隣接してLNG受入基地を設置することが明らかになった。受入施設はFSRU(受入能力それぞれ390万トン/年)となる予定で、Excelerate EnergyがFSRUを提供する。各受入基地は、ガス火力発電所のほか、地元企業にもガスを販売する計画である。 LNG輸入を拡大する一方で、ブラジルはプレソルトの油・ガス田を開発することで、LNGの輸入国から輸出国に転じることを検討していた。2009年11月、Petrobras、BG、Galpは、Santos Basinのプレソルトの油田で生産される随伴ガスを利用したFLNGを検討していると発表した。生産されたガスを液化し、国内市場に供給するが、降水量が豊富で発電向けのガス需要が少ない時期には余剰分を輸出するという計画であった。2009年末には、Saipem、SBM Offshore/千代田化工、Technip/日揮/三井海洋開発の3 グループに基本設計業務(FEED)が発注され、2010年末にFEEDが終了、2011年12月にTechnip/日揮/三井海洋開発が同事業を落札した。しかし、国内需要の増加等の理由から、プレソルトで生産されるガスの輸送には新たに敷設されるパイプラインが利用されることとなり、FLNGプロジェクトは2020年以降まで棚上げされることになった2。 今後のブラジルのLNG輸入動向には、ブラジル国内での天然ガス生産とボリビアからのガス供給の 1 Wood Mackenzie Brazil LNG long-term outlook 2014 2 Upstream2013/4/12 - 6 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 オが大きく影響することになろう。 国内での生産については、沖合でのフレアの禁止とプレソルトの油田開発進展による随伴ガスの生産量増大が見込まれることから、国内市場に供給されるガスの量は増加することになると考えられる。これまで、ブラジルでは石油の開発が天然ガスの開発よりも優先され、生産されたガスの約50%は石油回収のため再圧入されてきた。プレソルトの油田の開発ペースやどの程度のガスを再圧入するかが、今後市場に出回るガスの量を決定することになろう。 また、プレソルトの新規鉱区ではPetrobrasがオペレーターを務め、権益の最低30%を保有しなくてはならず、このことが他の石油会社の投資意欲を損ねているとの見方がある。ブラジル沖合の赤道周辺部や陸上の非在来型ガス等ブラジル全体として見た場合にはまだ十分に探鉱は行われていないが、Petrobrasがプレソルトの探鉱・開発に集中せざるを得ない状況から、ライセンスラウンドが以前に比べ頻繁に行われなくなり、Petrpbras以外の石油会社にとっては、探鉱・開発の機会が減少してしまっているとの指摘もある。Petrobrasのみならず、それ以外の石油会社の探鉱・開発状況も、中長期的にはブラジルのLNG輸入に影響を与えることになると考えられる。石油製品の輸入とともにPetrobrasの財政を圧迫しているとされるLNG輸入代金を減らすためにも、ブラジルは探鉱・開発推進策をとる必要があると考えられる。 なお、Petrobrasは、2019年以降もボリビアからのガス輸入を続ける計画であるが、ボリビアの埋蔵量の制約等から将来的には輸入量が減少する可能性も考えられる。 Petrobrasの天然ガス供給計画 (出所:Petrobas 2014-2018Business Plan) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 7 - .チリ チリの天然ガス消費量は1990年代末より増加を続けているが、チリはその大部分をアルゼンチンからのパイプラインでのガス輸入に依存してきた。しかし、2004年以降、アルゼンチンは自国のガス不足を理由に、チリへのガス供給を制限した。チリ政府はアルゼンチンのガスに大きく依存しているエネルギー需給態勢を改善したいと考え、探鉱の活発化や水力発電所建設とともに、LNG輸入を計画、推進した。 (BP統計より作成) 他の南米諸国に比べ気候によるガス需要の変動が少なく、また、ガス供給が制限、途絶された経験から、チリは長期契約を締結しLNGを輸入しており、南米でLNGの長期契約を締結している唯一の国となっている。 チリ国内のLNG受入ターミナル数は、現在2基となっている。 2009年8月に操業を開始したQuintero湾のLNG受入施設GNL Quinteroは、チリ中部にガスを供給している。受入能力は250万t/年となっているが、2012年8月に拡張の許可を取得し、375万t/年に受入能力を増加させる拡張工事中で、2015年第1四半期にはこれが完成する予定である。受入能力は500万t/年まで拡張可能で、2015年中に最終投資決定を行い、さらに拡張を行う計画だ。貯蔵能力は14,000m3であったが、2010年に2基のタンクが建造された。2007年6月に、BGとガス売買契約を締結し、2030年までLNG 170万t/年を購入することとなったが、2012年末から2013年にかけ再交渉が行われ、BGが2014年から2030年までLNG210万t/年を供給することで合意に至った。BGは主に赤道ギニア、トリニダード・トバゴからLNGを供給している。2014年4月には、Endesaと親会社のEnelがCheniere Energyと、20年間にわたりCorpus ChristiからLNG150万t/年の供給を受ける契約を締結、パナマ運河を経由してチリにもLNGが供給されるとみられる。 MejillonesのLNG受入施設GNL Mejillonesは、受入能力が150万t/年で、2010年2月に最初のカーゴを受け入れた。主にチリ北部の鉱業部門にガスを供給している。当初、貯蔵能力162,400m3のLNGタンカー、BW GDF Suez Brusselsを貯蔵用に利用していたが、2014年初に陸上に175,000m3の貯蔵タンクが完成した。2010年から2013年まではGDFSuezがエジプト、トリニダード・トバゴ、イエメン等からLNGを供給していたが、現在は、ターミナルオペレーターのGNLMejillonesにレンタルフィーを支払うことで施設を利用可能とするオープンアクセスモデルが導入されている。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 8 - `リ南部Magallanes地方では、国営石油会社のENAPやGeoParkがガス田を発見し、探鉱・開発を進めているが、ガス田の規模はいずれも大きくなく、地域的な需要を満たすに過ぎないとみられており、今後もチリのLNG需要は増加を続ける見通しである。そのため、新たにLNG受入基地を建設することが計画されている。 Andes Mining EnergyとCheiere Energyは、FSRUを南部Conceptionに設置するGNL Penco-Lirquenを計画している。両社は2013年4月に環境影響評価を申請し、2014年第1四半期に建設を開始する計画であったが、2013年11月に一度、環境影響評価を差し戻し、2014年10月に再提出している。現在は2015年に最終投資決定、2018年末から2019年初に最初の輸入を行う計画である。 また、Gas AtacamaはMejillones沖合に、ColbunとAESはQuintero近郊の沖合にFSRUを設置しLNGを輸入することを計画している。 チリはFTAを締結しており、また、2016年にはパナマ運河の拡張工事が完了する予定であることから、米国からのLNG輸入が頻繁に行われるようになる可能性が高いと考えられる。 4.ウルグアイ ウルグアイでは陸上を中心に、1970年以降、国営石油会社ANCAP(Administracion Nacional de Combustibles, Alcohol y Portland)等により地震探鉱が行われ、陸上で数十坑、沖合でも2坑の坑井が掘削されたが、これまでのところ商業規模の油・ガス田の発見はなく、石油、ガスの生産は行われていない。そのため、ウルグアイは必要とする石油、ガスを輸入しているが、ガスは全量をアルゼンチンからパイプラインで輸入してきた。そのアルゼンチンのガス不足から、ウルグアイはしばしば十分にガスの供給を受けられない事態に追い込まれるようになった。そこで、ウルグアイ政府はエネルギーの安定供給をめざし、沖合鉱区を公開し探鉱・開発の促進を図るととともに、LNG輸入を行うこととした。 当初、ANCAPと国営電力公社UTEがアルゼンチンのENARSAと協力して、モンテビデオ沖合にFSRU(受入能力270万t/年)を設置し、輸入したLNGの半量をウルグアイで利用し、半量を既存のパイプラインを逆送してアルゼンチンに輸出するというGNL del Plataプロジェクトが検討された。2012年にENARSAがアルゼンチン国内の投資に重点を置きたいとして同プロジェクトから撤退することとなったが、ANCAPとUTEが各50%を出資して設立したGas Sayago S.A.が11億ドルを投じ、同プロジェクトを推進、2014年初に建設が開始され、2015年7月に操業開始を予定している。 このFSRUのLNG受入能力はウルグアイの天然ガス需要を上回っており、2013年8月には、余剰分をアルゼンチンに供給することでYPF とANCAPが覚書を調印した。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 9 - .コロンビア 天然ガス生産量は2000年以降増加を続けているが、コロンビアの2013年の天然ガス生産量は112億m3、2013年末の天然ガス確認埋蔵量は1,622億m3と多くはない。ガスは主にカリブ海岸のGuajiraとCusiana-Cupiagua油田で生産されている。 Guajiraはコロンビアの主要なガス生産地域であり、生産されたガスの一部はAntonio Ricaurteパイプラインを経由してベネズエラのMaracaiboに輸出されている。2007年に締結された最初の契約では、2012年からこのパイプラインを逆走し、ベネズエラからコロンビアにガスを供給する計画であった。しかし、ベネズエラからのガス輸出は始まらず、現在はコロンビアがベネズエラに2016年までガスを供給することとなっている。Guajiraのガス生産量は減退傾向にあり、2015年までにカリブ海岸のガス需要を賄えなくなる見通しとされている3。 (BP統計より作成) また、Cusiana-Cupiagua 油田で生産される随伴ガスの1/3は増進回収等に利用されており、市場に販売される量に影響を与えている。 2014年12月に、Petrobras (オペレーター、40%)/Ecopetrol (30%)/Repsol (30%)が、カリブ海沖合のTayrona鉱区の水深674mの海域でOrca-1 号井を掘削(掘削長4,240m)、天然ガスを確認した。コロンビア深海での初のガス田発見であり、Petrobrasは2015年に2坑、2016年に2~3坑を掘削するとしている。評価の結果が期待されるところではあるが、開発されたとしても沖合ガス田は発見から生産開始までに7~10年かかる。陸上では、Middle Magdalena Basinで非在来型ガスの探鉱が行われており、開発が進む可能性はあるが、現時点では先行きは不透明である。 一方、コロンビアは発電の80%を水力に依存している。El Nino現象による降水量の減少に対処するため、火力発電所も整備されており、渇水時にはガスや石油を必要とする。2014年5月にもコロンビアはEl Ninoを懸念し、ベネズエラへのガス輸出中止を含む緊急計画を発表した。 このように主要なガス生産地域であるGuajiraの生産量が減少する見通しであるにもかかわらず、沖合ガス田や非在来型ガスの開発には時間がかかり、いつ訪れるかわからない渇水時にはガスが必要となることから、最良の対応策として検討されたのがLNG輸入である。 3 Wood Mackenzie The rationale for Colombia’s LNG import-export strategy - 10 - Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 romigasは電力会社3社のジョイントベンチャーGrupo TermicoにLNGを供給するため、CartagenaにLNG受入基地を建設、操業し、降水量に応じてLNGを輸入する計画である。2014年11月初めにPromigasはHoegh LNGにFSRUを発注し、2016年中ごろからの操業開始を目指している。トリニダード・トバゴのAtlantic LNGやコロンビアがFTAを締結国であることから米国から、LNGが供給されることになると考えられる。 なお、コロンビアでは、LNGの輸出も計画されている。Pacific Rubiales EnergyとExmarは、ExmarがFLRSU(Floating Liquefaction, Regasification & Storage Unit)を建造、操業し、Pacific Rubiales Energyが全長88kmのパイプラインを建設し、La Crecienteガス田から15年間にわたりガスを供給、液化するという内容の天然ガス液化、再ガス化、貯蔵、輸送サービスに関する契約を2012年3月に締結した。同年6月には、Wison Offshore & MarineがExmarよりFLRSUのEPCIC(設計/資材調達/建造/設置/試運転)を受注した。現在、このCaribbean LNGプロジェクトは、再ガス化を含まないFLNGのプロジェクトLa Creciente FLNGに変更されている。液化能力50万t/年、貯蔵容量16,000m3と小規模なプロジェクトで、2014年11月にはWisonの造船所で進水式が行われた。機械設備は建設工事中で、プレコミッショニングもこれからとなっている。工事完了後、コロンビアに移動、2015年第2四半期に操業を開始する予定である。貯蔵容量拡大のために別のLNG船(貯蔵容量130,000~170,000m3)を傭船することについても見込んでいる。 国 アルゼンチン LNG受入基地(船名) Bahia Blanca Gas Port (Express) 稼働時期 受入能力 2008.6 380万t/年 ブラジル チリ GNL Escobar (Exemplar) Pecem (Golar Spirit) Guanabara Bay (Experience) Bahia(TRBASalvador)(Golar Winter) Quintero 2011.5 2009.1 2009.3 2014.1 2009.8 380万t/年 190万t/年 600万t/年 380万t/年 250万t/年 Mejillones 2010.2 150万t/年 ウルグアイ コロンビア Montevideo Cartagena (Hoegh Challenger) (2015.7) (2016) 270万t/年 300万t/年 参加企業 ENARSA、YPF Excelerate Energy ENARSA、YPF Petrobras Petrobras Petrobras BG、Endesa、 ENAP、Metrogas Codelco、 GDF Suez ANCAP、UTE Promigas、 Grupo Termico 南米のLNG受入基地 (各種資料より作成) おわりに アルゼンチンではシェールガス、ブラジルではプレソルトの油・ガス田でガスが生産され、天然ガスの生産量が増大する見通しであるが、生産量がそれぞれの国のガス需要を上回るにはまだ時間がかかり、Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 11 - 「ずれの国も当面はLNG輸入を継続する見通しである。チリでは天然ガス生産量の大幅な増加は見込めず、LNG需要はさらに増大する模様だ。そして、2015年にはウルグアイ、2016年にはコロンビアがLNG輸入を開始する。このように状況は国により異なっているものの、南米全体として見た場合、天候に左右されながらも、今後しばらくはLNG輸入量が増加すると考えられ、動向が注目される。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 - 12 - |
地域1 | 中南米 |
国1 | アルゼンチン |
地域2 | 中南米 |
国2 | ブラジル |
地域3 | 中南米 |
国3 | チリ |
地域4 | |
国4 | |
地域5 | |
国5 | |
地域6 | |
国6 | |
地域7 | |
国7 | |
地域8 | |
国8 | |
地域9 | |
国9 | |
地域10 | |
国10 | 国・地域 | 中南米,アルゼンチン中南米,ブラジル中南米,チリ |
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