米国のLNG輸出と外交・エネルギー政策を巡る最近の動向(ワシントン事務所)
| レポートID | 1004737 |
|---|---|
| 作成日 | 2017-08-29 01:00:00 +0900 |
| 更新日 | 2018-03-05 19:32:42 +0900 |
| 公開フラグ | 1 |
| 媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
| 分野 | 天然ガス・LNG |
| 著者 | |
| 著者直接入力 | 星康嗣 |
| 年度 | 2017 |
| Vol | 0 |
| No | 0 |
| ページ数 | |
| 抽出データ | 米国のLNG輸出と外交・エネルギー政策を巡る最近の動向 (各組織ホームページ、各種報道ほか) 更新日:2017/8/29 ワシントン事務所:星康嗣 ◯ 米国トランプ政権が誕生して半年が経過し、大統領令や演説などから徐々に政権のエネルギー政策が判明しつつある。トランプ政権は規制緩和や撤廃によって米国エネルギー資源の生産量を増大させ、それを輸出して、米国の雇用につなげようとしている。特にLNGの輸出は、輸出促進にとどまらず、同盟国などのエネルギー安全保障の強化や貿易相手国との通商問題の解決のような外交政策の主要な手段として積極的に活用されようとしている。 ◯ 米国産LNG輸出は2016年2月に本格的に始まり、現在までに25の国と地域に輸出されている。そのなかには日本などとともに中欧のポーランドも含まれ、2017年8月にはバルト三国のリトアニアへの輸出も予定されている。トランプ政権はロシアとの関係改善を模索しつつ、欧州諸国への米国産LNG輸出を拡大するための外交を展開している。米国議会もまた米国産LNG輸出を外交政策の手段とみなす一方で、ロシアへの対抗姿勢を鮮明にし、ノルド・ストリームⅡへの制裁を可能とする新たな法律を成立させた。 ◯ トランプ政権は米国の抱える巨額の貿易赤字を問題視しており、米中経済協力100日計画では牛肉とともに米国産LNGの輸入が言及された。また、韓国大統領の訪米にあわせて複数の米国産LNGの輸入に係るMOUが締結された。このような通商問題において、米国産LNG輸出が貿易赤字削減の手段のひとつとして活用されている。 ◯ 新たなロシア制裁法の成立やFTAの再交渉要求などは、米国の貿易政策の不確実性を増大させてしまい、輸出促進や同盟国のエネルギー安全保障に悪影響を及ぼすおそれもある。一方で、米国議会では米国産LNG輸出を促進する法案が既に複数提出されている。また、公的なファイナンスの活用も議論されているようである。米国産LNGは、他の産ガス国と比較しても、埋蔵量、法制度、ビジネス環境が充実し、不確実性を増大させる要因はありながらも、安定的な供給元として、中長期的にも期待される。 .はじめに 米国は2006年以降いわゆるシェールガス革命により天然ガスの生産量を拡大し、米国エネルギー情報局によれば2017年の平均生産量は73.5Bcf/d(LNG換算約5億6千万トン)と予測されている。そして、この豊富な生産量を背景に米国産LNGの輸出が議論された結果、2016年2月に米国本土ルイジアナ州のSabine Pass LNG基地から初めて米国本土のLNGが輸出された。それ以来2017年7月までに累計で約1千万トン(LNG換算)が日本を含む25の国と地域に輸出された(図1)。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? 1図1 米国産LNGの輸出実績(出所:米国エネルギー省LNG Monthly(2017年7月)) Sabine Pass LNGを含む米本土の稼働中又は建設中のLNG液化基地の合計は、6基地、約7千万トン/年である。また、エネルギー省は合計で約1.5億トン/年のLNG輸出を承認している。さらに、エネルギー省は、経済、エネルギー安全保障、環境影響、さらにマクロ経済分析の結果、米国産LNGの輸出量が約2.2億トン/年以内であれば米国経済にとってプラスであるとしている1。 米国の天然ガス需給について、エネルギー情報局が2017年1月に発表した年次レポート(Annual Energy Outlook 2017)のリファレンスケースでは、米国の天然ガス生産量は2020年まで年率4%で急速に拡大し、それ以降は鈍化して2040年までに約8.4億トンに達する一方で、米国内消費は約6.3億トンと予測されている。また、可採埋蔵量について、Potential Gas Committeeの2017年7月19日の発表では、2016 年末時点の米国天然ガス(コールベッド・ガスを含む)の技術的可採埋蔵量(technically recoverable resource)は2,817Tcfであり、2014年から12%増加して過去52年間で最大となった(図2)。 1 最近の例として、エネルギー省は2017年6月29日にLake Charles LNGの追加輸出を承認し、検討すべき要素のひとつとして約2億2千万トン/年(28Bcf/d)の基準を明示している。その根拠となるスタディは、2015年に実施された「Center for Energy Studies at Rice University Baker Institute and Oxford Economics, The Macroeconomic Impact of Increasing U.S. LNG Exports」である。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? }2 米国天然ガスの技術的可採埋蔵量(出所:Potential Gas Committee) 2017年1月に就任したドナルド・トランプ大統領は、選挙期間中から天然ガスを含む米国内のエネルギー資源開発への支持を明確にし、オバマ政権が実施していた規制を緩和することで、それら生産量のさらなる拡大を図り、雇用の維持又は創出につなげようとしている。そして、生産量が増大した天然ガスをLNGとして輸出することにより、液化施設の建設や操業に係る雇用も創出されることが期待されている。 その一方で、トランプ政権は、米国産LNGの輸出を通商問題や同盟国のエネルギー安全保障に係る米国の外国政策の手段として積極的に使用し始めている。そして、米国議会が主導して2017年8月に成立した新たなロシア制裁法のように、議会もまたLNG輸出が外国政策の手段として有用であるとみている。 しかし、米国産LNGの輸出について規制する1938年天然ガス法(Natural Gas Act of 1938)は、日本を含む米国と自由貿易協定を締結していない国(非FTA国)へのLNG輸出について米国とのFTA締結国よりも厳格な審査を課している。米国連邦議会では、これが欧州同盟国へのLNG輸出の障害となっていることなどを理由として、非FTA国へのLNG輸出を迅速化するための法案が議論されている。また、天然ガス法は非FTA国向けのLNG輸出についてその承認を取消す権限をエネルギー省に与えており、この政治的リスクもLNG輸出を促進するうえでの障害のひとつとみられている。 2016年に始まったばかりの本格的な米国産LNG輸出が米国外交政策においてどのように位置づけられているのか最近の動向から考察する。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? Q.外交政策の手段としての米国産LNG輸出 トランプ大統領は、2017年6月29日にエネルギー省でエネルギー企業幹部や議員らを前に演説し、「エネルギーの独立(energy independence)」を達成するだけでなく、「アメリカのエネルギー支配(American energy dominance)」が政策目標であると宣言した(図3)。リック・ペリー・エネルギー長官らによれば、「アメリカのエネルギー支配」とは、米国がエネルギーを経済的な武器として利用する外国の地政学的リスクから独立して自由を確保することであり、エネルギーの輸出により米国のグローバルなリーダーシップや影響力を増大することであるとされる。具体的には、米国の国内エネルギー資源の潜在能力の開放、輸出の最大化、開かれた競争的エネルギー市場の支持、米国の雇用創出、グローバルな安全保障の促進、他国が政治的武器としてエネルギーを使用することの阻止が含まれるとされる。 「アメリカのエネルギー支配」演説は、トランプ候補のスピーチライターであり現在は大統領補佐官のスティーブン・ミラー氏の書いた2016年5月のノースダコタでの大統領の演説に由来する。トランプ候補のアメリカ・ファーストと銘打たれたエネルギー政策は、オバマ政権による規制の撤廃、連邦政府所有地での開発の許可、米加国境をまたぐ原油パイプラインであるキーストーンXLパイプラインの建設計画の承認とともに、OPECのようなカルテルや産油国からの石油輸入依存からの脱却と対テロ戦略におけるペルシア湾岸同盟国とのエネルギー協力を宣言する内容であった。つまり、トランプ大統領のエネルギー政策は当初から外交政策の一部として位置づけられてきたといえる。 図3 トランプ大統領の「アメリカのエネルギー支配」演説(出所:米国ホワイトハウス) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? gランプ大統領は、6月29日の演説で「アメリカのエネルギー支配」に関連する政権の取り組みの成果として6項目のイニシアチブに言及した。それは、メキシコへの天然ガス輸出パイプラインの建設承認、KOGAS(韓国ガス公社)とSempra EnergyのPort Arthur LNGに関するMOU(覚書)、Lake Charles LNGの輸出承認などであり、LNGに関連するイニシアチブが半分を占めた。また、ペリー・エネルギー長官も、6月27日の演説において、エネルギー政策は米国の外交政策の主要な要素であり、特にLNG輸出の重要性を強調した。トランプ政権において米国産LNGの輸出が外交政策におけるエネルギー政策つまり国際エネルギー政策において重要な手段として認識されていることが窺える。 3.米国産LNG輸出に係る最近の「ディール」 トランプ大統領の国際エネルギー政策は、3つの重点分野において推進されている。それは、①グローバルな貿易の促進、②米国の資源、技術、サービスの輸出促進、③同盟国やパートナー国のエネルギー安全保障である。 まず、通商分野では、トランプ大統領は中国との貿易赤字や米韓FTAについて問題視し、米国製品の購入拡大や対米投資の増加などを求めており、そのなかに米国産LNGの輸入も含まれている。5月10日に発表された米中経済協力100日計画のイニシャル・アクションに関する共同声明では、中国による米国産LNG輸入を歓迎し、中国企業とのLNGの長期契約の交渉も言及された。また、韓国のムン・ジェイン大統領の訪米に合わせて、KOGASは6月28日と29日にアラスカ州政府が進めているアラスカLNG(約2千万トン/年)とPort Arthur LNG(約1千万トン/年)に係るMOUをそれぞれ締結した。6月30日には、ムン大統領がトランプ大統領、ウィルバー・ロス商務長官、ゲイリー・コーン国家経済会議長と通商問題について会談を行い、トランプ大統領はその席で韓国によるアラスカLNGなどの取り組みを評価する発言をしている。 次に、輸出促進においては、米国産の資源である天然ガスの輸出だけでなく、FSRU(浮体式貯蔵再ガス化設備)などの技術や付随するサービスといったバリューチェーン全体の輸出を促進することが目指されている。トランプ大統領はインドのナレンドラ・モディ首相と首脳会談を行い、6月26日の共同プレス発表において、トランプ大統領は、インドの経済成長のために、天然ガスの長期購入契約を含む米国のエネルギー輸出が増加することを期待すると発言した。 同盟国やパートナー国のエネルギー安全保障については、特に天然ガスをロシアから購入する中・東欧諸国のエネルギー供給源の多様化の問題として位置づけられている。7月6日、トランプ大統領は、Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? Iーストリア、ブルガリア、クロアチア、チェコ、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スロベニアの12カ国が参加する「スリー・シーズ・イニシアチブ・サミット」(Three Seas Initiative Summit)に出席した。そこで、トランプ大統領は、ポーランドが米国産LNGを6月に輸入したことを例に、米国がイニシアチブ参加12カ国のエネルギー供給源の多様化の達成に貢献できることを強調し、米国はエネルギーを威圧の手段として使用したことはなく、他国(ロシアを念頭にした発言と思われる)がエネルギーを脅迫の手段として利用することも許さないと発言した。さらに、米国は、グローバルなエネルギー貿易が開かれた、フェアな、競争的マーケットであることに強くコミットし、高品質かつ低コストのエネルギー資源と技術をパートナー諸国に輸出することができるとし、米国の国際エネルギー政策の重点3分野がすべて言及された。中欧諸国への初めての米国産LNG輸出となったポーランドに続き、リトアニアへの輸出が8月に予定されている。エストニアを訪問したマイク・ペンス副大統領は、7月31日、リトアニアへの米国産LNGの輸出が米国の繁栄だけでなく地域の安全保障や安定に貢献するだろうと発言している。 .ロシア制裁と欧州への米国産LNG輸出 トランプ大統領は、ロシアとの関係改善を望んでいるとされ、「スリー・シーズ・イニシアチブ・サミット」 4の演説でロシアを名指しで批判することはなかった。一方で、米国の超党派の議員の多くは、ロシアによる2016年の大統領選挙へのサイバー攻撃やウクライナへの干渉、中・東欧の同盟国へのロシアの影響力を懸念している。つまり、議員らはバルト海諸国のエネルギー・インフラがロシアに管理され、ドイツがウクライナを迂回する天然ガス・パイプラインであるノルド・ストリームⅡを建設しようとしている状況を憂慮していた。その結果、ロシアの天然ガス輸出パイプラインへの投資に対する制裁を含む新たなロシア制裁法が4月末に上院に提出された。トランプ大統領は、ロシア制裁の緩和に対して議会の承認が必要となるなどの理由から法案に否定的な見解を表明していたが、議会両院は圧倒的賛成多数でノルド・ストリームⅡへの投資に対し制裁を発動することが可能となる新たなロシア制裁法(Countering America’s Adversaries Through Sanctions Act)を可決し、トランプ大統領が同法に署名し8月2日に成立した。 一方で、トランプ政権もノルド・ストリームⅡには否定的のようである。報道によれば、同法成立前に、国務省高官(国際エネルギー問題担当特使やエネルギー外交担当次官補代理)を相次いで欧州各国に派遣して、ノルド・ストリームⅡに対する米国の懸念を伝えていたとされる。また、レックス・ティラーソン国務長官も、欧州は総合的なエネルギー・バランスと自身のエネルギー安全保障について真剣に検討Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? キる必要があり、ロシアへの依存度を認識すべきであると議会で証言している。ただし、トランプ大統領が直ちにノルド・ストリームⅡに関連する制裁を発動する可能性は低いとみられている。しかし、仮に財務省が同法の規定を積極的に適用する方針をとれば、ノルド・ストリームⅡに対する大規模な投資を行ういかなる企業に対しても制裁の脅威を与えることができる。これは欧州のロシアへの依存を低下させるとともに、米国産LNGの欧州への輸出を促進する可能性がある。ウクライナのエネルギー安全保障について定める同法257条(10)は、米国政府は米国の雇用を創出するため米国のエネルギー資源の輸出を優先すべきであり、米国の同盟国とパートナーを助け、米国の外交政策を強化すべきであると定めている。 .米国議会の米国産LNG輸出促進に係る議論 米国議会では米国産LNGの輸出を促進するための法案がこれまでも議論されてきた。米国産LNG輸出の促進を支持する理由としては、米国雇用の増加、世界的な温室効果ガスの削減、同盟国のエネルギー安全保障への貢献が指摘されている。そのような理由からLNG輸出を規制する天然ガス法の改正については超党派の一定の支持があるとみられる。 5米国産LNGを輸出する場合、一般的に、LNGの液化施設やパイプラインなどの陸上輸送インフラに係る1969年国家環境政策法(NEPA:National Environmental Policy Act of 1969)の環境影響評価と天然ガス法に基づくエネルギー省の輸出承認を得る必要がある。そこで、NEPAの評価を簡略化するような議論もあるが、仮にNEPAを改正した場合、民主党議員の反対や環境保護団体などからの訴訟リスクをエネルギー省やFERC(連邦エネルギー規制委員会)が負うことからも法制化は困難と見られている。 リサ・マコウスキー上院エネルギー・天然資源委員長(共和党、アラスカ州選出)は、6月28日に超党派のエネルギー法案(Energy and Natural Resources Act of 2017、S.1460)を前年度に続き提出した。前年度に提出された同様の法案は上院で可決されたが、下院との協議が難航し、成立には至らなかった。同法案は、エネルギー長官に対しNEPAの評価終了後45日以内に非FTA国向け輸出許可の承認又は不承認を決定することを求めている。業界団体であるLNG Alliesによれば、仮に45日の期限が設定されていれば、2015年にエネルギー省が承認した非FTA国向け輸出承認は5ヶ月から11ヶ月早く承認されたとされる。 また、ビル・カシディー上院議員(共和党、ルイジアナ州選出)が6月22日に上院銀行・住宅・都市委Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? ?ノ提出した法案(LNG Now Act of 2017、S.1415)は、天然ガス法3条(a)を改正し、「公共の利益の基準」を撤廃したうえで、エネルギー省は米国とのFTAの有無に拘らず天然ガスの輸出入を自動的に許可することを定めている。 この「公共の利益の基準」は別の問題である輸出承認の取り消しリスク(リボケーション・リスク)とも関係している。エネルギー省は、天然ガス法3条(a)及び16条に基づき、非FTA国向けLNG輸出承認について「公共の利益」(public interest)を考慮して事後に取り消す権限を有する。FTA国向けの輸出は公共の利益に反しないとみなされる(3条(c))一方で、非FTA国向けの輸出は、公共の利益に反しない限りにおいて許可されることから、事後に公共の利益に反するおそれがある状況が生じた場合、エネルギー省は必要な措置(16条の輸出許可の修正、取り消しなど)を講じることができるとされている。しかし、エネルギー省によれば(2013年10月13日のポーラ・ガント・エネルギー省次官補代理からマコウスキー上院議員宛書簡)、輸出承認を受けた企業の承諾なしで取り消した事例はこれまでないとされる。上述のカシディー上院議員の法案は、天然ガス輸出の制限に関する大統領の権限として、スタッフォード災害救援緊急支援法(Robert T. Stafford Disaster Relief and Emergency Assistance Act)による90日間の輸出量の制限、国際緊急経済権限法(International Emergency Economic Powers Act)202条による特定国への輸出禁止(いわゆる経済制裁)を定めている。一方で、天然ガス法16条の規定はそのままであり、エネルギー省は輸出許可を修正又は取消す権限を維持している。しかし、公共の利益という基準を失ったことにより、エネルギー省が天然ガス法に基づき輸出許可を取り消すことは難しいと思われる。同法案2条では米国産天然ガスの輸出は米国の国益に適うと宣言しており、輸出制限は災害や経済制裁のような例外的措置として位置づけられている。 6.おわりに 米国議会で議論されている上述のような法案が成立したとしても、その輸出促進効果は大きくないと思われる。オバマ政権が議論の末に米国産LNGの輸出を認め始めた頃と比べて、エネルギー省は概ね議会で議論されている期限内に輸出承認を行っている。また、ペリー・エネルギー長官も米国産LNG輸出を支持していることから、今後も遅滞なく決定が行われることが想定され、これら法案の意義はあくまで将来に備えた保険とみなされうる。 米国産LNGのアドバンテージは、ヘンリーハブ価格に連動した価格決定方式や仕向地条項のない契約の柔軟性にあるが、アジアや欧州への輸出においてはともに厳しい価格競争に直面している(競合Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? ニしては、カタール・東アフリカ・パプアニューギニアなど)。特に昨今の低油価の状況下においては、ヘンリーハブ価格に連動した米国産LNGが相対的に高値となることもある。報道によれば、GAIL(インドガス公社)は米国Cheniereとの長期契約について値下げの再交渉を検討しているようであり、6月の首脳会談で話し合われたインドとの新規の長期契約はこの交渉次第と思われる。また、KOGASとアラスカ州のMOUについても詳細は不明であるが、具体的な投資決定には未だ至っていないものと思われる。 米国産LNGの競争力を維持し、その輸出を促進するためにはコスト削減の継続とともに、国際開発金融機関(Multilateral Development Banks)や米国輸出入銀行(Export-Import Bank of the United States)のファイナンスの活用なども議論されている。一方で、NAFTA(北米自由貿易協定)や米韓FTAの再交渉そして新たなロシア制裁法の成立などは、米国の貿易政策の不確実性を増大させてしまい、輸出促進や同盟国のエネルギー安全保障に悪影響を及ぼすおそれも指摘されるものの、米国産LNGは、他の産ガス国と比較しても、埋蔵量、法制度、ビジネス環境が充実し、そのような不確実性を増大させる要因はありながらも、安定的な供給元として、中長期的にも期待される。 以上 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? |
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