英領北海における石油・天然ガス上流産業の動向
| レポートID | 1004741 |
|---|---|
| 作成日 | 2017-09-19 01:00:00 +0900 |
| 更新日 | 2018-02-16 10:50:18 +0900 |
| 公開フラグ | 1 |
| 媒体 | 石油・天然ガス資源情報 1 |
| 分野 | 基礎情報市場 |
| 著者 | 古山 恵理 |
| 著者直接入力 | |
| 年度 | 2017 |
| Vol | 0 |
| No | 0 |
| ページ数 | |
| 抽出データ | 更新日:2017/9/12 調査部:古山 恵理 英領北海における石油・天然ガス上流産業の動向 ? 英領北海では2000年代に入り、探鉱活動、生産量ともに低迷し、投資活動も低調な推移を続けてきた。しかし、100ドル/バレルを超える高油価時に始動したプロジェクトの生産開始により、2016年では、石油・天然ガス共に一時増産に転じている。 ? 英国大陸棚にはいまだ100億バレル以上の資源が残るとされる。これらの資源を最大限効率的に回収するため、英国政府はMaximising Economic Recovery戦略(MER UK 戦略)を策定。独立規制主体であるOil Gas Authority(OGA)を設立、税制の改革を実施して投資を呼び込む構え。 ? 事業者サイドでは、油価下落後、コスト削減を通じ低油価環境への適合が進む。特に、M&A取引の活性化が顕著であり、2017年に入り、額ベースでは過去最高レベルのM&A取引が行われている。資産流動性が高まった背景としては、油価の変動に応じた条件付支払いや、廃坑費用の分担等について、柔軟な取引構造が採用されたことが挙げられる。また新たな動きとしては、プライベートエクイティ(PE)資本を後ろ盾にした中小企業の新規参入が見られる。 ? 今後は事業者間の知見共有により、操業効率のさらなる向上を目指すとともに、技術開発等により、発見はされていたものの開発が進まなかった鉱区の開発が期待されている。 .2017年英領北海1における探鉱・生産活動概要 1過去約15年にわたり、「北海=高コスト」の図式が続き、投資が控えられたことで、英国の石油ガス生産量は減少を続けてきた。2011年から2013年の高油価時には一時投資が過熱し、ものの、その後の油価下落により凍結された案件も多い。また、メジャーズによる大規模な資産売却や新規投資の差し控えも、英国の石油・ガス業界に大きな打撃を与えている。これを受けた規制サイドは、税率の見直しや投資優遇策を導入、また事業者サイドでも、操業効率の改善やコスト削減を進めてきた。結果、2017年現在再び英国石油ガス上流産業に注目が戻っている様子である。 英領北海における石油・天然ガス生産量は、それぞれ2015年、2014年に増加に転じ、投資活動の観点でも、M&Aによる新規事業者の参入など新たな動きが見られている。一方掘削活動は依然として低調であり、新規案件の立ち上がりは少ない。2011年から2013年の高油価時に始動した案件は既にほぼ完成しており、油価下落以降に投資決定(FID)された案件は非常に少ない。今後FIDが予定されてい 1 英領北海のうち、主な生産地域は英国大陸棚に位置していることから、本稿における「英領北海」は「英国大陸棚(UKCS)」を指すものとする。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 1 ? 驤ト件に遅れが生じれば、2020年以降の生産量に大きな影響を及ぼすだろう。 ① 生産量および投資額の動向 英領北海の石油・天然ガス生産量は、油ガス田の成熟化や開発コスト増加による投資減少により減退が続いてきた。BP統計によれば、石油では1999年の日量291万バレル、天然ガスでは2000年の日量1084億m3をピークとして減退が続いてきた。しかし、石油は2015年以降増産に転じており、2016年末では前年比5%増の日量101万バレル、天然ガスも2014年以降増産に転じており、2016年では前年比3.3%増の日量410億m3となっている。増産分の多くは、100ドル/バレルを超える高油価時に投資決定が行われ、2014年以降に生産開始した油ガス田からのものである。英国政府の現在の予測によれば、2018年までは、高油価時に投資決定された油ガス田からの生産が成熟油ガス田の減退分を相殺するものの、その後は再び減産に転じ2022年以降では、石油・天然ガスともに年5%ペースの減産が予測されている。減産の原因は、主要油ガス田の自然減退が進むこと、また現在予定されている新規開発案件が少ないことである。生産量の自然減退は、成熟地域としての英領北海が避けて通れない課題ではあるが、英国政府は、この減産ペースを緩和するため、MER UK戦略(2.以降参照)のもと、回収率の向上2と、新規案件の立ち上げを支援している。 図1)英国大陸棚の石油・ガス生産量実績/予測(2017年2月時点) 出所:UK Oil Gas Authority 2 実際に既存油田(生産開始後2年以上経過のもの)からの減退は緩やかになっており、2014年では12%であったところ、2016年の減退率は約3%(1700万boe相当)となっている。これは、MER UK戦略のもと、OGAを中心として進められた一連の回収率改善施策(生産効率性の改善、特にメンテナンスのための生産停止計画のコントロール)に由来するとされる。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 2 ? A 投資額動向 英領北海への総投資額を見てみると、過去最高額を記録した2014年で266億ポンド、2015年では217億ポンド、2016年では172億ポンドと減少が続いている。このうちCapexは、2015年の117億ポンドから2016年では83億ポンドまで減少、英国の石油・天然ガス産業の業界団体であるOil & Gas UKによれば、2017年度見込みは64億ポンドから69億ポンドと予想され、2018年以降さらに低下する見込みである。実際にFIDがなされた案件は、2016年では2件(約5億ポンド相当)、また2017年予定では1件(約10億ポンド相当)に留まっている。 またOpexは、2014年で98億ポンド、2015年で83億ポンド2016年では70億ポンドと推移してきている。これは、操業効率の改善とコスト削減が大きく寄与している部分である。英領北海におけるプロジェクト全体の平均開発コストは2013年から半分以下に低下、単位当たりの開発コストは2014年油価下落前の$29.7/BOEから$15.3/BOEまで40%以上低下しており、削減率は世界の主要な開発地域で最も大きいとされる 3。油価下落直後は、人員削減、サービスコストの低下がみられたが、今日までのコスト低下分のうち約3分の2が操業効率の改善による削減であるとされている。 しかしコスト削減に関しては現在底打ちといった呈で、2017年以降では進まず、Opexは若干の増加に転じる予想も出ている。油価が低位とはいえ安定している現在、サービスコストが徐々に上昇しているためである。これ以上のコストカットは人員削減次第となるが、現在英国では雇用の問題が大きな争点となっていることもまた事実である。Oil & Gas UKによれば、2014年以降の雇用削減は深刻で、上流産業に従事する人数は、2014年時の46万人から現在では30万人まで減少しており、昨年1年間は約1万3千人の失業があったとされる。 3 Oil & Gas UK ,” Economy Report” (2017) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 3 ? })UKCSにおけるCAPEX、OPEX、廃坑費の推移 OGAデータをもとにJOGMEC作成。※物価の影響を加味しない 表1)201以降生産開始案件 出所:各種資料よりJOGMEC作成 2016年生産開始 オペレータ名称 ー 生産量 資産タイプ 2017年以降生産開始 名称 オペレーター 生産量 資産タイLaggan Tormore Conwy Aviat Cygnus Total 500MMcf/d Gas EOG 2MMb/d Apatche ENGIE Non* 250MMcf/d Oil Gas Gas Schiehallion (Quad204) Callater Stella Shaw Alder Chevron 110MMcf/d Gas Flyndre Enquest 14.6Mb/d Oil Kraken BP 30Mb/d プ Oil Apache Ithaca Repsol Sinopec Maersk(Total) Enquest 19000boed 30000boed 40000boe/Oil/gas Gas/Oil Oil d 10000b/d Oil 50000b/d Oil l(heavy) *Aviatガスは、近隣Forties油田における燃料使用に供される Crathes Scolty Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 4 ? ③ 掘削活動の動向 将来の生産量の減退が懸念される背景には、掘削活動の低調がある。OGAによれば、2016年の探鉱・評価に係る掘削数は、探鉱井が14本、評価井が8本の計22本であった。また2017年度掘削予定では、探鉱井と評価井合わせて13本から16本の予定となっている。 開発井の数は、過去7年ほど年間平均120本から130本を維持してきたが、2016年では前年比30%減少し、88本となった。生産井の減少に関しては、生産活動自体の縮小はさることながら、抗井デザインの改良や開発コンセプトの変化、また巨大油田の減少により、プロジェクトあたりの井戸数が減少傾向にあることも大きな理由である。 探鉱井の掘削数は、2009年の油価下落時までは、油価の動きに合わせて推移していた。しかし、2011年以降ではこの傾向がみられず、油価高騰時でも探鉱井掘削数に大きな増加は見られず、2014年以降の油価下落後はほぼフラットである。 評価井は油価下落後、年々減少している。評価井の数が減少しているのは、低油価の市況にあって、メインの構造の商業的価値が回復しないため、小さな構造の評価を控えることにより、開発前コスト総額を抑えたい意図の表れであると考えられる。 2) 英国大陸棚における掘削活動の推移(掘削坑井数) 出所:Oil&Gas UK、OGA資料を基にJOGMEC作成 図Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 5 ? S体の掘削数が減少していることは事実である。ただし、評価井の本数に関しては、あくまでも市況によるところが大きく、プロジェクト全体のコスト削減努力の一環とみることも可能であり、将来の開発・生産活動の減少と必ずしも直結しない。一方で、、開発井、探鉱井の本数が、油価に関わらず長年低水準にあることは、生産量減退に向き合う英領北海にとっての大きな課題である。 以上のような状況打破のために、英領北海では様々な施策が講じられている。以下ではそれらの施策と関連する動向を紹介する。 2.英領北海の復権に向けて 1)Maximising Economic Recovery(MER UK戦略の策定)とOGAの設立- 英国大陸棚では、現在まで約435億BOEの石油・天然ガス開発が行われてきたが、英国政府によれば、まだ100億から200億BOEの資源が残されているとされる。このうち生産中若しくは開発中の資源が57億BOE、既発見未開発の資源が32億BOE程度、未発見資源が100億BOE以上も眠っている、という計算である 4。英領北海では、国営企業不在のもと、事業者主体の自由な開発活動が行われてきた。しかし生産量の減退が続き、伴って税収も激減したことで、政府は、市場経済に任せていては残された資源の最大限効率的回収は不可能である、という結論に至った。そこで英Wood Groupの元会長であるSir Ian Wood氏による提言(“Wood Review”)を下敷きとして、2015年、政府は「Maximising Economic Recovery UK戦略(以下、MER UK 戦略)」を策定5した。Wood Reviewの骨子は「強い権能を持つ独立規制主体(“Regulater”)の設立と、政府による投資環境整備」であり、これを実現するため、2016年、独立規制主体であるOil Gas Authority(後述)が設立されている。 MER UK戦略は、英領北海における全てのステークホルダーに対し、「経済的に回収可能な英領北海の石油・天然ガスの価値を最大化するために必要なステップを踏むこと」を求めている(“Central Obligation”)。ここで規定されるステークホルダーは、英国政府(財務省)、Oil Gas Authority、産業界(事業者)であり、「三位一体の努力が不可欠」としたうえで、対象分野として探鉱促進、地域的な開発とインフラ利用の最適化、適切な資産管理(スチュワードシップ)、技術振興、廃坑効率性向上の5分野を列挙する。さらに必要とされる具体的なステップとして、a.コスト削減とb.事業者間協力、が規定されている。 MER UK戦略では、事業者は自身が保有する鉱区における資源回収率のみならず、英領北海全体 4 OGA, “UKCS Unlocking through 30th round opportunities”, Available at https://www.ogauthority.co.uk/media/4090/30th-round-tech-forum-gn.pdf 5 Infrastructure Act 2015によりPetroleum Act1998を修正する形で法制化。規定されるすべての義務は法的拘束力を持つ。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 6 ? ノおける資源回収率向上に寄与する必要がある。この点を、英国政府は「”Maximum recovery within fields and between fields”」と表現している。各事業者が適切な資産管理をすることにより、地質情報や、操業ノウハウを蓄積し、それを産業界全体で共有することでMERを進めていくという意図である。 現在MER UK戦略の管理・運営を担うのは、2016年10月に石油・天然ガス上流事業の独立規制主体として設立されたOil Gas Authority(以下、OGA)である。OGAは、石油・ガスのライセンスの管理(regulate)、投資促進 (promote)、開発事業者間協力の促進・支援(influence)の3つの権能を柱とし、事業者間、また事業者と政府の間のファシリテーター機能を担っている。さらに法的義務に違反した事業者に対する処罰権限を持ち、警告、公式の強制通告、100万ポンド(約130万ドル)を上限とした罰金などによりMERの実効性を担保している。 事業者の側では、業界団体であるOi l& Gas UKを中心に、オペレーションの標準化やベストプラクティスの蓄積などを進め、英領北海全体のコスト削減を目指している6。 また、実際の規制権限をOGAに委譲した政府(財務省)は、投資環境整備を担い、税制改革を実施しMER戦略の実現を後押しする立場にある。この点、以下に詳述する。 図3)OGAの権能 Oil Gas Authority websiteよりhttps://www.ogauthority.co.uk/about-us/what-we-do/ 6 Oil&GAS UKの”Efficiency Hub”にて標準化作業参照可能。英領北海で操業中の油ガス田のうち、いくつかのケースで典型的な案件を取り上げ、オペレーションをモニターし、ベストプラクティスの作成を行っている。https://oilandgasuk.co.uk/category/efficiency-hub/ Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 7 ? Q) 税制と投資優遇措置の見直し 従来、英国の石油・ガス上流事業に適用される税には、通常の法人税(Corporate Tax)20%7に加えリングフェンス法人税(RFCT)、石油ガス生産の利益に課税される追加課税(SCT)、そして1993年以前に承認を受けた油ガス田に課税される石油歳入税(PRT)があった。相次ぐ税率引き上げにより一時は最終税率が80%を超える案件もあり、上流事業の経済性悪化の要因でとなっていた。特に石油歳入税(PRT)は成熟油田を操業する事業者にとって多大な負担であった。また税制優遇措置(field allowance)も、課題領域ごとに様々の規定があり、事業者を混乱させていた部分である。 MER UK戦略では、「国際競争力が高く、簡略で予見可能性の高い税制レジーム」を目標とし、英国政府は、税率の引き下げに加え、税制の簡略化、油ガス田開発の生涯に渡り適用可能な投資優遇策を導入した。まず税率については、2016年度予算において、PRTは完全撤廃、SCTの税率も20%から10%まで引き下げられた。これにより現在の最終税率は一律40%となっている(下表参照)。英財務省によれば、PRT撤廃に伴い一時税収は激減したものの、2018年以降では、新規生産開始油ガス田からの生産量増加に伴い回復を見込んでいる。 表2) 英国の石油・天然ガス上流産業に適用される税率(2017年8月現在) 出所:各所資料よりJOGMEC作成 税種別 ① リングフェンス法人税 (Ring Fence Corporation Tax: RFCT) ② 追加課税(Supplementary Charge Tax:SCT) ③ 石油歳入税(Petroleum Revenue Tax:PRT) ・1993年3月16日以前に承認を得た油・ガス田 ・1993年3月16日以降に承認を得た油・ガス田 ④ 合計(最終税率※) ・1993年3月16日以前に承認を得た油・ガス田 ・1993年3月16日以降に承認を得た油・ガス田 従来 30% 30% 2016年度1月1日以降 20% 35% 0% 10% 0% 撤廃 67.5% 40%(-27.5%) ※最終税率④=③+(100%-③(控除分))×(①+②)/100。②は③を控除した後課税。 また、従来油ガス田の地域や種類、生産段階ごとに規定されていた税制優遇制度(field allowance)を置き換える形で、油ガス田の開発段階に関わらず、支出額(Capexなど8)の62.5%相当の控除を規定す 7 2016年秋に発表された”Driving Investment Plan”によれば、一般法人税率も2020年までに17%までの引き下げが予定されている。 Available at https://www.gov.uk/government/uploads/system/uploads/attachment_data/file/382785/PU1721_Driving_investment_-_a_plan_to_reform_the_oil_and_gas_fiscal_regime.pdf 8 特定の条件においてはopexも計上可能。詳細は以下参照のこと。https://www.ogauthority.co.uk/media/1380/expansion_of_investment_expenditure.pdf Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 8 ? 髏Vたな税制優遇措置(Basin-Wide Cost-Wide Investment Allowance)が導入された。 更に、投資促進策として、開発段階の初年度支出を実質的非課税にする規定(FYA:First Year Allowance)と、廃坑コストの税制優遇策が導入されている。開発段階の初期費用と最終費用が控除対象となるため、事業者にとって非常に有利な施策であるが、廃坑コストの控除に関しては、対象油ガス田操業期間の納税記録(tax history)に基づく計算がなされる点、注意が必要である。資産売却の際に納税記録は移転されないため、新規参入者が成熟資産を購入した場合、当該資産取得時から、生産終了時までの納税記録による起算となるため、元々の事業者と比較して控除額が低くなる。M&A活動において、流動性を阻害する要因として認識される課題である(後述)。 この点につき、英国のハモンド財務大臣は、2017年3月の春の予算演説において「英国の石油・天然ガス上流産業に適用される税制は、すでに世界的に見て競争力があるもの」としながらも、「MER達成のためには、成熟油田の取引活性化を財務面からも支援する必要がある」と発言し、成熟資産の買い手と売り手の間の納税記録移転について、財政法案の提出とあわせて公的なディスカッションペーパーを設置した。本案については現在審議中であり、2017年秋のプレバジェット・レポート 9提出の際に報告される予定である。 3.プレイヤーの再編 次に事業者サイドの動向を見ていく。英領北海では、油価下落後投資が落ち込み、資産売却による事業者の撤退等がみられた一方、前述のMER UK戦略の元、投資環境が大きく改善したことでM&A活動が活性化。件数こそ減少しているものの、取引額で言えば、油価が100ドル/バレルを超えた2011年から2012年を上回るペースである。2014年から2016年までの3年間のM&A総額は約80億ドル強であったが、2017年に入り、上半期ですでに60億ドルを超えるM&Aが行われている。 この理由としては、第一に足元の油価が比較的安定したことで将来の採算性について予見可能性が高まったこと、第二に、北海地域全体の開発コストが大幅に低下したことで、フロンティアへの投資に比較して短期の投資回収を見込める成熟資産が多い英領北海の有望性が確認され、妥当な資産評価が行われるようになったことが挙げられる。 キャッシュを求める売り手が性急に資産売却を行うのではなく、あくまで採算性の低い、もしくは自社の戦略に合致しない資産(ノンコア資産)を妥当な価格で売却する、という姿勢が見受けられる。そのた 9 1998年財政法により、財務省が作成し議会に提出することが義務付けられた法定の予算関係文書であり、会計年度開始 (4 月)に先立ち、主要な経済問題を取り上げるとともに、新年度の予算見込額を示すもの。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 9 ? ゚、ただ価格を下げるのではなく、将来の油価に基づく条件付き支払いなど、柔軟な取引形態が採用されている。以下、具体的な動向を紹介する。 図4)北海におけるM&A取引額と件数の推移(2017年9月1日現在) 各所資料によりJOGMEC作成 *英領に限らず、北海全体の数値。 *2006年のStatoilのNorsk Hydro買収分(32億ドル)と2017年8月のTotalのMaersk Oil買収分(75億ドル)を除く。 ① メジャーズの動向 ―低油価適合戦略としてのポートフォリオ再編― 最も大きな動きとしては、長く北海の開発を牽引してきたメジャーズの動向がある。メジャーズは、油価下落後、キャッシュフロー確保を最優先に、各社、投資額縮小を発表した。新規探鉱案件への出資を中止し、ノンコア資産の売却によるポートフォリオ合理化を進めるとともに、新規投資先としては2、3年以内にキャッシュフローを産む「ショートサイクル資産 10」を選択している。北海は、コストの高さから優先順位が低く、メジャーズ5社11の北海へのCapexは、過去最高の140億ドルを記録した2013年から、2016年では約60%低下し、50億ドルに留まっている。2014年以降のメジャーズによる主な資産売却事 10 ショートサイクル資産 (”Short-Cycle Asset“)について、ExxonMobil社は「3年以内にキャッシュフローを産むもの」、Chevron 社は「2年以内にキャッシュフローを産むもの」と定義する。具体的な投資先としては、北米シェール案件、メキシコ湾浅海の在来型、また既存事業の拡張案件などを指している。 11 ExxonMobil、Royal Dutch Shell、BP、Total、Chevronの5社。 ? 10 ? Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 痰ニしては、Royal Dutch Shellが英Chrysaorに複数の英領北海資産12を総額38億ドルで売却した例がある。英国の地元企業であるBPもまた、2016年、FortiesパイプラインをIneosに2億5千万ドルで売却、さらにSullom Voe ターミナルやMagnusフィールドなどの権益を英EnQuestに約3億ドルで売却するなどし、それぞれ主要なインフラや油ガス田の権益であったことから、同地域からの完全撤退の噂まで報道された13。 このように、一時、メジャーズの資産売却事例を列挙し、英領北海の将来を嘆く報道が各所で見られたが、実際には、メジャーズは企業として全体の投資額を削減しているに過ぎず、英領北海における資産売却は、あくまでポートフォリオ合理化のための一手に過ぎない。現実に、ClairやSchiehallionといった生産量の多い巨大油ガス田には継続的な投資14が行われており、撤退の兆しは見られない。 メジャーズの資産売却の動きがみられるのは、決して北海に限られず、彼らは世界中で、ノンコア資産を処分して得たキャッシュフローを使い、配当を維持するとともに、バランスシートの健全性回復や、有望な資産の更なる資産価値向上を進め、現状の低油価水準への適合を進めている。 このような施策が功を奏し、2017年上半期の決算では、各社フリーキャッシュフローの増加を発表し、新規投資先拡大も示唆している。各社が新規投資に前向きな姿勢を見せていることに伴って、栄浪北海への投資にも、希望が見え始めたというところだ。例えば、Chevronは、2017年8月、開発コストの高騰とその後の油価下落により開発を見合わせていた、西シェットランド沖のRosebankフィールドについて、開発段階に移行する意思を示し、現在生産設備(FPSO)の入札準備中という報道15があり、2018年初頭にはFIDを行う見込みである。また仏Totalは、2017年8月、デンマークの複合企業AP Maersk Mollerの石油ガス上流部門であるMaersk Oilの買収を発表した。Maersk Oilの保有資産は大半が北海地域に位置し、生産中の有望油ガス田も多い。今回の買収によりTotalは、ノルウェーのStatoilに次ぐ北海第2位のプレイヤーとなった。Total全体の生産量としても、2019年までには日量300万バレルに達する見込16で、長年のライバルであったChevronを抜き、メジャーズ3位の地位に上る予測である。 12 多くは2016年に併合したBGの保有資産。ShellのCEOは、「Shellとしてはノンコア資産に当たる」と発言している。 13,”BP said to be shopping Its North Sea Oil Fields”, Wall Street Journal , July 20 ,2017 14 ClairはオペレーターBP、Shell、Chevronが参加。油価下落以降に大掛かりな新設備導入が発表されているものの、現在アクシデントにより稼働停止中。現在SchiehallionはオペレーターBP、Shellがメジャーシェアを保有し、2017年にフェーズ4(Quad204) が生産開始している。 15 “Chevron prepares to confirm commitments to North Sea fields”, Finantial Times, Aug 14, 2017 他 16 Total Press Release. Aug 21 ,2017 http://www.total.com/en/media/news/press-releases/total-acquiert-maersk-oil-pour-7-45-milliards-de-dollars-dans-le-cadre-dune-transaction-en-actions-et Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 11 ? \3)2017年のメジャーズの北海動向(主に英領北海) 各社資料よりJOGMEC作成 社名 ExxonMobil Shell BP Total Chevron 2017年の英領北海における動向 ・2017年3月、ノルウェー上流事業をSiccar Point Energyに売却。英領北海資産の売却はなし。 ・2017年、Shellの英領北海における生産量の約50%に相当する資産を合計38億ドルで英Chrysaorに売却。 ・この取引につき、SPE Offshore Europe 2017の席上で「短期的なキャッシュを産むこと以上に、ポートフォリオの合理化によって、(Shellの英領北海における活動に)長期的な恩恵をもたらすものである。」と発言し、英領北海における活動継続を示唆。 ・シェットランド沖Penguinsフィールドについて今後18ヶ月以内にFIDを行うと発表。 ・「成熟資産(”Late-Life“)」資産に関しては合理的な判断に基づき売却。(FortlineパイプラインやSullom Voeハブ、Magnusフィールドなど売却済)。 ・2017年にはQuad204(Schiehallon油田再開発)生産開始。 ・北海における生産量を2020年までに現在の2倍、日量20万バレルまで増やすとする。 ・2016年西シェットランド沖のLaggan-Tormoreガス田(9万3千boe/d)で生産を開始。 ・2017年8月には、同じく西シェットランド沖Edradour & Glenlivetガス田(56,000boe/d)でも生産開始。 ・2017年8月Maersk Oilを買収。生産量ベースで北海ナンバー2のプレイヤーに。 ・2017年9月にはノルウェーGina Krogガス田の権益をすべて売却するなど、北海地域のポートフォリオの整理を進めている。 ・2017年8月、油価下落後見合わせていた、西シェットランド沖のRosebank油田(回収可能資源量3億バレル)開発の再始動を発表。 ・またノルウェーでも、CaptainフィールドのEOR(Enhanced Oil Recovery)について2017年度中のFIDを予定。 ② 中小企業の動向 ―取引形態の多様化による新規参入者の台頭― 低油価市況において、メジャーズほど体力のない中小企業は様々な戦略を導入し生き残りを図っている。英領北海の主要プレイヤーの1グループであった欧州の電力会社(サプライヤー)は次々に上流事業から撤退した。ドイツのRWEとE.onは2015年から2016年にかけて上流ビジネスを売却して、英領北海から撤退している。デンマークのDong Energyも、2017年5月にスイスIneosに北海上流事業を約10億ドルで売却して撤退 17、風力発電に注力する意向を発表した。フランスのENGIEもまた、英Neptune Energyに上流事業の70%を総額39億ドルで売却している。 合併により競争力向上を狙う企業もある。2017年7月には英国のユーティリティCentricaとドイツのBayerngas NorgeがJVを形成した。Centricaの資産は成熟資産が多く、廃坑費用が経営上の課題となっていたところ、Bayerngas Norgeは比較的若い資産/生産前鉱区が多く、合併によりシナジー効果を狙 17 北海における洋上風力発電事業は継続。(参考)http://www.dongenergy.co.uk/uk-business-activities/wind-power/offshore-wind-farms-in-development Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 12 ? 、。両者の生産量合計は日量13万から15万BOEに達し、近年北海における非メジャー1番手であったAkerBP18の日量生産14万BOEを超える見込みである。 また、売却される資産の買い手として新たに登場したのが、プライベートエクイティ(PE)ファンドを後ろ盾にした中小企業である。PEファンドによる資本提供と一口に言っても、それぞれの企業には特色があり、また資本規模にもバラつきが見られる。英領北海ではこれまでもPE資本の流入は見られたものの、投資額は総じて小規模で、探鉱プロジェクトへの出資が中心であった。しかし油価下落以降、PEファンドによる資本提供を受けた中小企業が生産段階まで担う事案もみられ、英領北海におけるM&Aの新たな潮流を作り出している。 これらの中小企業のうち英領北海で活動する主な企業としては、Zennor Petroleum、Siccar Point Energy、Neptune Energy、Chrysaorなどが挙げられるが、それぞれに特徴があるようである。例えばZennor PetroleumやSiccar Point Energyは有望性が確認されている既発見未開発鉱区の権益を多く取得し、評価・開発段階までを主な事業としているが、一方でChrysaorは探鉱から生産まで、開発の全段階を事業としており、前述のShellとの取引でも、生産中鉱区のみならず、探鉱鉱区の権益も取得した。 英領北海における資産流動性を高める一因となっているのは、柔軟な取引構造の採用である。入口の支出を抑えるため、将来の油価や生産量、探鉱の成果などに依拠する条件付の支払い、また、成熟資産に関しては、売り手が廃坑に関する負債を引き受ける条項など、特別の取り決めを含む取引形態が採用されている。代表的な例として、ShellがChrysaorに資産売却を行なった事例では、取引総額は約38億ドルだが、最初の支払い額は約30億ドルで、残りは条件付支払い分であり、2018年から2021年の油価と新規発見に基づき、最大で7億8000万ドルまでの支払いを受ける。また廃坑費用約10億ドルに関してはShellが負担する契約である。他には英Siccar Point EnergyによるオーストリアOMVの上流事業買収の例がある。OMVの資産はStatoilのMarinerフィールドや、BPのSchiehallionフィールド、ChevronのRosebankフィールドといった有望油ガス田の権益であり、総額は約10億ドルであるが、Siccar Pointは、まず8億7000万ドルを支払い、ChevronのRosebank フィールドへのFIDが行われ次第、1億2500万ドルまでの追加的支払いをするという契約が結ばれている。Rosebankフィールドのような、有望油ガス田の立ち上がりが支払い条件に係る例は、他にも見られ、前述のIneosによるDong 18 AkerBPもまた再編によるシナジー効果を体現する企業である。AkerBPは2016年12月、ノルウェーのDet NorskeとBPのノルウェー上流事業部門が合併したもの。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 13 ? nergyの上流事業買収では、Rosebankフィールド開発に係る1億ドルの条件付支払い19が約束されている。またここでは、ShellとChrysaorの事例とは逆に、買い手であるIneosが約10億ドルの廃坑費用を引き継ぐことが決定された。 成熟資産の廃坑費用に関しては、税制改革の項(2.(2)参照)で紹介した通りであるが、納税記録の移転が認められていない現在、事業者は様々な取引形態を採用し、当事者間での解決を図っている。納税記録の移転が認められれば、煩雑な契約手続きを経ることなく、廃坑費用の負担が軽減でき、北海における資産流動性は一層高まるだろう。今秋のバジェットレポート提出が待たれるところである。 表4) 2016年―2017年の北海における条件月支払いを含む主要な取引 各所資料よりJOGMEC作成 買い手 売り手 取引総額* Total Maersk Oil 74億5千万ドル 資源量(2P)MMboe 555 INEOS DONG Energy 13億ドル 238 Neptune Energy Chrysaor ENGIE Royal Dutch Shell 51億2千万ドル 38億ドル 672 350 Siccar Point Energy OMV 10億ドル n.a. 取引の構造 49.5億ドル分を株式で支払い、25億ドル分はMaerskの負債引き受け。将来の廃坑費用引き受け。 RosebankのFIDにより1億ドルの追加支払い。 12億ドルの廃坑費用引き受け。 油価動向と新規発見により最大7億8千万ドルの追加支払い。廃坑費用約10億ドルをShellが引き受け。 RosebankのFIDにより1億2500万ドルの追加支払い。 *条件付支払い分を加味した額 ※対象資産が主に英領北海に賦存している取引の例 OGAは折りに触れて、MER実現のためには「適切な買い手に適切な資産を渡す“right assets to the right hands”」ことが重要であると述べている。英領北海で台頭し始めた中小企業は基本的には北海地域に活動を限定しており、プロジェクトの開発移行に積極的である。また、企業規模が小さいことで意思決定が容易であることから機動性が高く、サプライチェーンとの協力や新技術の利用に積極的であるなど、特有の利点がある。一方で、新規参入であることから技術的に疑問が残ることや、財務基盤の脆弱性、PE資本による資金回収(M&A、IPO等)のタイミングが読めないなどの指摘もあり、かならずしも「適切な買い手」ではないとする見方もある。この点OGAは、一連の税制改革による投資環境整備に加え、地質データの提供や事業者間のベストプラクティスの共有、また既存インフラの適切な利用促進を通じ、 19 RosebankへのFID実施を条件とする。当取引には、他にDongEnergyが進めていたデンマークのコージェネレーション設備(Fredericiaプラント)建設に係る1.5億ドルの条件付支払いも規定されている。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 14 ? V規参入事業者を支援していく意向である。 3.まとめ―今後の展望― 以上、英国石油・天然ガス上流産業における動向を見てきたが、最後に英領北海に残された資源の最大限効率的な回収(MER)のため、重要なトピックスを確認して、結びとする。第一に、重点開発地域の設定、第二に技術的進歩による開発の進展、最後に既発見未開発の小さな油ガス田の効率的な開発である。 まず重点開発地域について、OGAは年度ごとの優先開発地域を設定し、重点的な支援を実施している。2017年度はシェットランド沖ガス、南北海のタイトガス開発などである。このうち特にシェットランド沖ガスは2020年以降の生産量減退を補うものとして有望視され、具体的なプロジェクトとしては、ChevronのRosebankフィールドが挙げられている。Rosebankは前述の通り、現在生産設備調達段階(EPC)にあり、生産が開始されれば日量生産9万3千BOEが見込まれている。西シェットランド沖は、海象条件が非常に厳しく、地質構造も複雑であり、また既存インフラに乏しい未探鉱鉱区の多く残るフロンティアであるが、2016年のラウンド 20の結果111鉱区が新たにリースされている。OGAは、探鉱活動促進のため、2015年に政府の資金提供の元実施された地震探査データや地質情報等を公開するとともに、新たな生産ハブの建設支援等を実施しており、今後、英領北海における重点エリアとなっていくだろう。 また技術的進歩による開発の進展について、英領北海に残された重質油田の開発が進んでいる。英領北海の重質油田の発見は1970年代に遡り、ChevronのCaptainフィールド(API19-21°)などが開発されてきたが、API16°以下の、より重質な油田に関しては、技術的課題と開発コストの高さにより長く開発が進まなかった。しかし、水平掘削や回収率改善技術(EOR)に代表される技術進展と、低油価を契機に進展したコスト削減により、プロジェクトが動き始めている。直近では2017年にEnQuestがKraken油田で生産を開始している。Krakenは、API14°の重質油田であるが、ピーク生産で日量5万BOEに達し、2018年以降、英領北海の生産量増加に寄与する見込みである。また、Statoilが開発を進めるMarinerも、API14°の重質油であるが、2018年中には生産開始を予定している。OGAによれば、現在残されている重質油の資源量は10億バレル以上とされ、2020年代には日量20万バレルの生産量追加が期待されている。 最後に、既発見未開発の小さな油ガス田の効率的開発についてであるが、OGAによれば、100億か 20 2016年第29回ラウンドは、約20年ぶりのフロンティア鉱区のみを対象にした入札ラウンドであった。113鉱区に24企業からの申請があり、2017年3月23日、17企業に、25のライセンス(111鉱区)の権益が付与されている。 Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 15 ? ?200億BOEといわれる英領北海の未開発資源のうち、約24億BOEが、3万から50万BOEの資源量の小さな油ガス田(”small pool”)である。これら225の油ガス田のうち大半が成熟地域に位置し、近隣にパイプラインや生産ハブなど稼働中のインフラがある。OGAはこれらの小さな油ガス田開発に向け、Oil & Gas Technology Centreと共同で、つなぎ込みによる開発コンセプト(”Tie-back for the Future”)を検討している21。当コンセプトはMER UK戦略のうちの「地域的開発の促進と既存インフラ利用の最適化」を体現するものであり、将来の生産量確保にむけた新規探鉱促進策の一つである。2017年7月25日に開始された第30回入札ラウンドでも、これらの小さな油ガス田が多く公開されており、合計で11億BOE相当の資源量となっている。OGAは、今回のラウンド対象鉱区公開に先立ち、過去に返納されたライセンスの坑井、地震探査データなどを含む無償のデータパッケージ、また未開発地域についても同様のデータを公開22、既存インフラの利用環境整備を進めることで、少しでも多くの資源を回収したい意向である。パイプラインやハブの多くはメジャーズが所有するものだが、MER UK戦略実現の観点、またキャッシュ確保の観点からも、これら設備の共用化は進むと考えられている。OGAは主要生産設備への第三者アクセスの適正化を事業の重点領域に定め、適切な利用料金の設定等について調査とコンサルテーションを進めている。これらの小油ガス田は、資本規模の小さい中小企業にとって、魅力的な投資先といえるかもしれない。 昨今石油・天然ガスの上流業界において注目を集めることの少なくなっていた英領北海であるが、本来は成熟地域であることから、経験やノウハウの蓄積があり、充実したインフラが確保できるという点で有望性を評価することができる。政府、産業界が一丸となって英領北海の復権に向けて邁進する現在、新規参入事業者にとっても、投資先としての魅力が高まっているのではないだろうか。一方本稿では触れなかったEU離脱(Brexit)に係る不定要素により、投資活動の先行きに不安が残ることもまた事実であり、廃坑コストなど成熟地域特有の課題も多く残されている。今後も注視していきたい。 以上 21 コンセプトにつき、Oil& Gas UK ウェブサイト参照https://theogtc.com/media-centre/insights/2017/small-pools-and-big-wins/ また、英領北海の”Small Pools”についてのOGAのスタディは以下で参照可。https://www.ogauthority.co.uk/about-us/mer-uk-forum-task-forces/technology-leadership-board/key-themes-small-pools/ 22 第30回ラウンドの対象鉱区を含む各公開データはOGAサイトで閲覧可能。https://www.ogauthority.co.uk/news-publications/news/2017/the-oga-launches-30th-offshore-licensing-round-focusing-on-mature-areas-of-the-ukcs/ また英領北海全体の地質データ等については、Common Data Access(CDA)データベースにて参照可能。http://cdal.com/ Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 16 ? Q考:英国大陸棚地図 (JOGMEC作成) Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ? 17 ? |
| 地域1 | 欧州 |
| 国1 | 英国 |
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