ページ番号1007409 更新日 平成30年4月10日
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概要
- 2017年10月27日に実施された第2次PSラウンドでは、プレソルトで発見された油田の構造が鉱区外まで広がっているため、その隣接4エリアをユニタイゼーションを前提に公開した。3鉱区が隣接する油田既発見鉱区に権益を保有する企業を含むコンソーシアムにより落札された。同日に実施された第3次PSラウンドでは、12年ぶりにプレソルトの探鉱鉱区4鉱区が公開され、3鉱区が落札された。
- 9月27日に実施された第14次ライセンスラウンドと第2次、第3次PSラウンドで、メジャーをはじめとする国際石油会社IOC(International Oil Company)がブラジル沖合プレソルトの鉱区権益を取得、これまでPetrobras中心に行われてきた沖合の探鉱・開発が変化する可能性がある。ブラジルには保有鉱区が少なく生産もしていないExxonMobilは第14次ライセンスラウンド、PSラウンドでCampos、Santosのプレソルト、Sergipe–Alagoasの有望鉱区を落札、その直後には周辺鉱区の権益を取得、南米への積極進出の一環として、ブラジルの探鉱や大規模開発プロジェクトに参画していく方針と見られる。Statoilはブラジルに鉱区権益を多数保有し探鉱、開発、生産に従事しているが、生産が伸び悩んでおり、PSラウンドで開発への移行が確実と考えられる鉱区を取得、その後生産中のRoncador油田の権益を取得した。沖合の探鉱・開発技術を活かし生産増を睨んだ鉱区権益の取得を行っている。ShellはBG買収によりプレソルトの油田権益を増やし、ブラジルではPetrobrasに次ぐ生産を誇っている。3回の入札でも数多く札をいれ、プレソルトの有望鉱区でのさらなる生産増、探鉱活性化を図ろうとしていると考えられる。
- Petrobrasは2017年末に発表した5カ年計画で、2022年までの5年間に745億ドルを投じ、2022年末までにブラジル国内外の生産量を355万boe/d、ブラジル国内石油、NGL生産量を288万b/dに引き上げる計画を示した。同社は、引き続きブラジル国内の探鉱・開発に重点を置き、投資額の81%にあたる603億ドルを探鉱・開発部門に充てるとしている。2018年12月の債務水準は、利払い・税・償却前利益(EBITDA)の2.5倍にするとの目標も維持し、2017~18年に210億ドルの資産を売却する計画や他企業との提携強化の方針にも変更はないという。前回の5カ年計画から投資額や生産目標に大きな変更はなく、同社が汚職問題や原油価格低迷の影響から脱却し事業の立て直しを進めつつあることがうかがえる。
- ブラジルでは2018年にも、3月に第15次ライセンスラウンド、6月に第4次PSラウンド、11月にプレソルトエリアを除いたエリアに位置する過去の入札で付与されなかったり、契約上の義務が果たされずに返還されたりした846鉱区を対象とする入札が実施される。既存契約のローカルコンテンツを緩和することについて検討が続けられており、新規鉱区だけでなく、既存鉱区についても探鉱・開発が進展する可能性が高まっている。ただし、10月の大統領選挙の結果次第では探鉱・開発が停滞し、石油生産量の伸び悩みにつながることもありうる。
1.第2次、第3次PSラウンド
ANPは、法律で定められたプレソルトエリア内の鉱区を対象とする第2次、第3次PSラウンドを2017年10月27日に実施した。
第2次PSラウンドは、プレソルトエリアで発見された油田のうち構造が鉱区外まで広がっているものについて、ユニタイゼーションを前提に隣接エリアに鉱区を設定し、これらの鉱区を対象に実施された。対象鉱区はPetrobrasがオペレーターを務めるSapinhoáとTartaruga Verdeの隣接鉱区Entorno de SapinhoaとSudoeste de Tartaruga Verde、Statoilがオペレーターを務めるCarcaráの北東に隣接するNorte de Carcará、Shellがオペレーターを務めるGato do Matoの南に位置するSul de Gato do Matoの4鉱区である。プレソルト開発法改正法により、Petrobrasは法定プレソルトエリア内の新規鉱区でオペレーターを務め権益の最低30%を保有する義務を免除され、探鉱・開発に参加するか否かを事前に選択することが可能になった。同社は第2次PSラウンドではEntorno de Sapinhoa鉱区に参入することを表明した。Sudoeste de Tartaruga Verdeには札が入らなかったが、Norte de Carcará、Sul de Gato do Mato、Entorno de Sapinhoaの3鉱区が隣接する油田既発見鉱区に権益を保有する企業を含むコンソーシアムにより落札された。
第3次PSラウンドでは、12年ぶりにプレソルトエリア内の探鉱鉱区が公開され、注目を集めた。公開された4鉱区Pau Brasil、Peroba、Alto de Cabo Frio Oeste、Alto de Cabo Frio Centralのうち、PetrobrasはPeroba、Alto do Cabo Frio Centralの2鉱区について権益30%以上を取得しオペレーターとなることを事前に表明した。入札の結果、Peroba、Alto de Cabo Frio Oeste、Alto de Cabo Frio Central の3鉱区が付与されることとなった。Pau Brasil鉱区には札が入らなかったが、これは近隣のBM-S-24鉱区で発見されたJupiterガス田がCO2の含有量が多く、生産される原油も重質油であるため敬遠されたのではないかと見られている。
プレソルトエリアの鉱区を対象とするライセンスラウンドでは、政府引取利益原油の割合が高い企業が鉱区を落札することとなっている。Shellがオペレーターを務めるコンソーシアムがSul de Gato do Mato、Alto de Cabo Frio Oeste鉱区を政府引取利益原油の最低比率で落札した他は、各コンソーシアムともに最低比率を大きく上回る比率で落札した。Fernando Coelho鉱山・エネルギー相は、政府引取利益原油の比率が高いことから、入札は成功であり、満足していると語った。サインボーナスはあらかじめ定められており、6鉱区合計で61.5億レアル(18.7億ドル)となった。政府の試算では、落札した企業が1000億レアル(312.5億ドル)の投資を行い、50万人の雇用が生まれる計画となっている。
図1 第2次、第3次PSラウンド対象鉱区(出所:各種資料より作成)
表1 第2次、第3次PSラウンド結果
|
鉱区 |
落札企業 |
サインボーナス (億レアル) |
政府引取利益原油 |
ローカル コンテンツ |
|
---|---|---|---|---|---|---|
最低比率 |
落札比率 |
|||||
第2次
|
Norte de Carcará |
Statoil*(40%) ExxonMobil (40%) Petrogal (20%) |
30 |
22.08% |
67.12% |
探鉱35% 生産30% |
Sul de Gato do Mato |
Shell* (80%) Total(20%) |
1 |
11.53% |
11.53% |
探鉱38% 生産60% |
|
Entorno de Sapinhoa
|
Petrobras *(45%) Shell(30%) Repsol Sinopec (25%) |
2 |
10.34%
|
80% |
探鉱35% 生産30% |
|
Sudoeste de Tartaruga Verde |
- |
1 |
12.98% |
- |
探鉱55% 生産65% |
|
第3次
|
Pau Brasil |
- |
1 |
14.4% |
- |
探鉱18% 坑井掘削、仕上25% 原油回収、輸送40% 生産設備25% |
Peroba |
Petrobras* (40%) BP (40%) CNODC (20%) |
20 |
13.89% |
76.96% |
||
Alto de Cabo Frio Oeste |
Shell* (55%) CNOOC (20%) QPI (25%) |
3.5 |
22.87% |
22.87% |
||
Alto de Cabo Frio Central |
Petrobras *(50%) BP(50%) |
5 |
21.38% |
75.86% |
(*オペレーター、各種資料より作成)
2.IOCのブラジル沖合での探鉱・開発状況
2017年9月27日に実施された第14次ライセンスラウンド(「ブラジル:第14次ライセンスラウンド、法定プレソルトエリア外のプレソルトをめがけ、サインボーナスは過去最高」参照)と第2次、第3次PSラウンドで、メジャーをはじめとする多くのIOCがブラジル沖合プレソルトの鉱区権益を取得した。その結果、これまで、Petrobras中心に進んでいたブラジル沖合、特にプレソルトの探鉱・開発が変化しつつある。ブラジルで活動中の主要石油会社の状況をまとめた。
2‐1.ExxonMobil
ExxonMobilは 1990年代終わりにPetrobrasのブラジルでの探鉱・開発独占が終了した後から、ブラジルに参入したが、油田発見に恵まれず、その多くの鉱区から撤退してしまった。プレソルトに関しても、2008年から2010年にかけてHessとともにSantos BasinのBM-S-22鉱区でAzulao、Guarani、Sabia-1号井の3坑を掘削したが、商業規模の油田発見はなく、撤退した。
しかし、第14次ライセンスラウンドでは、PS契約ではなくコンセッション契約を締結しプレソルトの鉱区を取得できる好機と捉え、法定プレソルトエリア外ではあるものの実際にはプレソルトの内側に設定されているCampos盆地の10鉱区のうち南側の6鉱区をPetrobrasと組んで、北側4鉱区のうち東側の2鉱区を単独で落札した。また、Sergipe-Alagoas盆地のSEAL-M-501鉱区とSEAL-M-503鉱区をMurphy Oil (権益保有比率20%)、Queiroz Galvão Exploração e Produção(QGEP)(同30%)と組み落札、ExxonMobilはこれらの鉱区の権益の50%を保有し、オペレーターを務める。なお、ExxonMobilはこのライセンスラウンドの直後に、QGEPが2015年の第13次ライセンスラウンドで取得したSergipe-Alagoas盆地のSEAL-M-351鉱区とSEAL-M-428鉱区の権益50%を取得した。両鉱区はSEAL-M-503鉱区の北に隣接しており、これら4鉱区は、Petrobrasが発見したFarfan、Muriu、Poço Verde、Moita Bonita、Barra、Cumbe油田に近接している。
第2次PSラウンドでExxon MobilはSantos盆地のNorte de Carcará鉱区の権益40%をStatoil (同40%)、Petrogal(同20%)と取得した。第2次PSラウンド終了後には、Statoilより隣接するBM-S-8 鉱区の権益を約13億ドルで取得することで合意し、同鉱区の権益を36.5%保有することになった。
ExxonMobilは、2015年以降、ガイアナ、スリナム、ウルグアイといった南米大西洋岸沖合の大水深に積極的に進出し探鉱を進めている。特に2017年には、ガイアナLiza油田の開発の最終投資決定を行う等、大規模事業にも取り組んでいる。ブラジル沖合プレソルトについても、これらの国での探鉱・開発の一環として行われているものと考えられる。
ExxonMobilは2017年12月14日に、世界各地の探鉱・開発、石油化学プロジェクトについて共同実施することでPetrobrasとMOUを締結したと発表した。ExxonMobilは両社の関係強化とともに、ブラジルでの活動をさらに強化していくものと考えられる。
2-2.Statoil
Statoilは、Campos盆地BM-C-7鉱区について、2005年にEncanaより3.5億ドルで権益50%、2008年にAnadarkoから18億ドルで残りの権益50%を取得した。2010年にはSINOCHEMに31億ドルで同鉱区の権益の40%をファームアウトし、現在、権益の60%を保有している。同鉱区内のPeregrino油田は2011年に生産を開始し、現在の生産量は約10万b/dとなっている。
また、第7次ライセンスラウンドでRepsol YPFと組み権益の50%を取得、2009年にPetrobrasに権益15%をファームアウトしたBM-C-33鉱区やEspirito Santo盆地で探鉱・開発を進めている。
2016年8月には、Petrobrasと協力強化を図ることでMOUを締結した。
上述した通り、Statoilは、第2次PSラウンドでSantos盆地のNorte de Carcará鉱区の権益40%をExxonMobil、Galp Energiaと取得した。同鉱区はStatoilが、2016年11月にPetrobras より25億ドルで権益の66%を取得、2017年7月にQueiroz Galvão Exploração e Produção's (QGEP) より3.79億ドルで権益の10%を取得したBM-S-8鉱区の北に位置している。第2次PSラウンド終了後、ExxonMobil がBM-S-8 鉱区にファームインし、同鉱区の権益保有比率はStatoil36.5%、ExxonMobil36.5%、Galp Energia17%、Barra Energia10%となった。Statoilは両鉱区でオペレーターを務める。すでに両鉱区にまたがるCarcará油田が発見されており、StatoilはNorte de Carcará鉱区で数坑の評価井を掘削、評価作業終了後、ユニタイゼーションを実施する計画だ。
Statoil は、2017年12月18日には、Campos Basin、Roncador油田の権益25%を最大29億ドルでPetrobrasより取得したと発表した。同社はまず23.5億ドルを支払い、条件が満たされれば最大5.5億ドルを支払う。Roncador油田は原始埋蔵量100億boe、残存可採埋蔵量10億boe以上とされ、1999年に生産を開始した。2017年11月の生産量は石油が24万b/d、随伴ガスが4万boe/dとなっている。この取引により、Statoilのブラジル生産量は4万boe/dから11万boe/dに増加する。Statoilは Roncador 油田の回収量を少なくとも5%引き上げ、残存可採量を15億boeに引き上げる計画だ。Petrobrasは同油田の権益の75%を保有し、引き続きオペレーターを務める。Statoil は将来BM-C-33鉱区のPao de Acucar油田で生産を開始した際にPetrobras が所有するCabiunasガスターミナルの送ガス能力の一部を利用するオプションを持つことになる。
Statoilはノルウェー領北海を主な活動エリアとしていたが、2007年のNorsk Hydro石油ガス部門の合併で北、西アフリカ、米国メキシコ湾、中央アジア、ブラジル、西シベリア等に事業を展開し、2020年までに石油・ガスの生産量を220万boe/dに引き上げる計画を有している。生産目標達成のため、ノルウェー領北海で築いた沖合での探鉱・開発技術を、ブラジル等南米沖合での増産に活かしていくものと考えられる。特にブラジルに関しては2017年は確実に生産増に繋がる鉱区を取得したと思量される。
表2 Statoilが権益を保有するブラジルの主要鉱区、油田
Basin |
鉱区、油田 |
オペレーター |
Statoil権益 |
その他 |
---|---|---|---|---|
Campos |
BM-C-7 Peregrino |
Statoil |
60% |
2005年にEncanaより3.5億ドルで権益50%、2008年にAnadarkoから18億ドルで権益50%を取得。2010年SINOCHEMに31億ドルで権益40%をファームアウト。2011年生産開始。生産量10万b/d |
BM-C-33 Pao de Acucar |
Statoil |
35% |
第7次LRでRepsol YPFと組み権益50%取得。2009年Petrobrasファームイン |
|
Roncador |
Petrobras |
25% |
1999年生産開始。生産量24万b/d。2017年12月Petrobrasより権益25%を最大29億ドルで取得 |
|
Santos |
BM-S-8 Carcará |
Statoil |
36.5% |
2016年Petrobras より25億ドルで権益66%を、2017年QGEP)より3.79億ドルで権益10%を取得。2017年ExxonMobil がファームイン |
Norte de Carcará |
Statoil |
40% |
第2次PSラウンドで権益取得。Carcaraとともに2020年代中ごろ生産開始予定 |
(各種資料より作成)
図2 Statoilのブラジル沖合鉱区保有状況(出所:Statoil website)
2-3.Shell
Shellは、BC-10鉱区(Parque das Conchasプロジェクト:Abalone、Argonauta、Nautilus、Ostra油田)で2009年に生産を開始、5万b/d程度を生産している。
2013年の第1次PSラウンドでShellが権益の20%を取得したLibra(Mero)油田では、FPSO Pioneiro de Libra(生産能力:原油5万b/d、ガス4MMm3/d)が設置され、2017年11月末に長期生産テストが開始された。12月には同油田開発の最終投資決定が行われ、石油18万b/d、ガス12MMm3/dの生産能力を持つFPSOにより2021年に生産が開始される計画である。
また、BGを買収したことで、プレソルトですでに油田が発見されている Lula-Iracema油田(BM-S-11鉱区)の権益の25%、Sapinhoá油田(BM-S-9鉱区)の権益30%を取得し、Shellはプレソルトでの探鉱・開発の足場を固めた。
2016年11月には今後4年間にブラジルに100億ドルを投資することを明らかにし、Libra油田等でPetrobrasと共に探鉱・開発を行なうことに重点を置くが、入札により新たな機会に参入することにも興味があるとした。
Shellは、第2次、第3次PSラウンドで、落札された6鉱区全てに札を入れ、Sul de Gato do Mato、Entorno de Sapinhoa、Alto de Cabo Frio Oesteの3鉱区を落札した。Sul de Gato do Mato鉱区はGato do Mato鉱区の南に位置し、権益保有比率は両鉱区ともにShell80%とTotal20%となっている。Shellがオペレーターを務める。Entorno de Sapinhoa鉱区はSapinhoa鉱区を取り囲む鉱区で、Petrobrasが入札に先立ってオペレーターとなる権利を主張、Petrobras(権益保有比率45%)、Shell(同30%)、Repsol Sinopec(同25%)が隣接鉱区と同じ権益比率で落札した。Alto de Cabo Frio Oeste鉱区についてはCNOOC (同20%)、 QPI (同25%)と組み落札した。
なお、Shellは第14次ライセンスラウンドで、Repsolとパートナーを組み、4件の札が入りサインボーナスが最も高額となったCampos盆地のC-M-346鉱区とC-M—411鉱区に札を入れたが、Petrobras/ExxonMobilコンソーシアムに敗れている。
BG買収によりプレソルトの権益を増やしたShellは、原油価格が安定してきたことを受け、大水深等の事業を再開し、投資額の20%をメキシコ湾とともにブラジルのプレソルトの探鉱・開発に充てるとしており、プレソルトの開発に引き続き積極的に取り組んでいくと考えられる。
表3 Shellが権益を保有するブラジルの主要鉱区、油田
鉱区、油田 |
オペレーター |
Shell権益 |
その他 |
---|---|---|---|
BC-10 Parque das Conchas |
Shell |
50% |
1999年Petrobrasより35%、2006年ExxonMobilより30%、2013年Petrobrasより23%の権益取得。2006年ONGCに15%、2014年QPに23% の権益ファームアウト。2009年生産開始、生産量5万b/d |
Mero (Libra) |
Petrobras |
20% |
第1次PSラウンドで権益取得。2017年11月長期生産テスト開始。12月FID。2021年生産開始予定 |
BM-S-11 Lula-Iracema |
Petrobras |
25% |
BG買収で権益取得。2009年長期生産テスト開始。10年商業生産開始。17年11月生産量84万b/d |
BM-S-9 Sapinhoá |
Petrobras |
30% |
BG買収で権益取得。2010年長期生産テスト開始。13年商業生産開始。17年11月生産量23.7万b/d |
Entorno de Sapinhoa |
Petrobras |
30% |
第2次PSラウンドで取得 |
BM-S-54 Gato do Mato |
Shell |
80% |
第7次ライセンスラウンドで取得。2010年Gato do Mato油田発見 |
Sul de Gato do Mato |
Shell |
80% |
第2次PSラウンドで取得。2019年掘削開始 |
Alto de Cabo Frio Oeste |
Shell |
55% |
第3次PSラウンドで取得 |
(各種資料より作成)
2-4.Total
Totalはブラジルで、Campos 盆地 BC-2鉱区(Xerelete油田)の権益70%、Santos 盆地Libra鉱区の権益20%を保有する他、Foz do Amazonas、Barreirinhas、Ceará、Espirito Santo、Pelotas盆地で探鉱に従事している。さらに、2016年10月にPetrobrasと提携強化を内容とするMOUに調印、これに基づき、TotalはPetrobrasよりSantos盆地Lapa油田 (BM-S-9鉱区)の権益35%とIara油田群:Berbigao、Oeste de Atapu、Sururu油田(BM-S-11鉱区)の権益22.5%等を22.25億ドルで取得、2018年1月に取引が完了した。
Totalは第14次ライセンスラウンドで、BPとパートナーを組み、Shell/Repsolコンソーシアムと同じく、C-M-346鉱区とC-M—411鉱区に札を入れたが、Petrobras/ExxonMobilコンソーシアムに敗れ、落札できなかった。
第2次PSラウンドでは、Shellと組み、隣接する鉱区に権益を保有するSul de Gato do Mato鉱区を落札した。
2-5.BP
BPは第3次PSラウンドでPeroba鉱区をPetrobras、CNODCと、Alto de Cabo Frio Central鉱区をPetrobrasと落札した。同社はブラジル沖合プレソルトでの探鉱・開発の経験に乏しく、Petrobrasと組むことで、経験、知見を得るとともに、ガス輸送インフラや供給チェーンを利用することも可能になる。
3.Petrobrasの5カ年計画
2017年12月21日に発表された2018~22年の5カ年計画「2018-2022Business and Management Plan (BMP)」で、Petrobrasは2022年までの5年間に745億ドルを投じ、2022年末までにブラジル国内外の生産量を355万boe/d、ブラジル国内石油、NGL生産量を288万b/dに引き上げる計画であることを明らかにした。Petrobrasは、引き続きブラジル国内の探鉱・開発に重点を置き、投資額の81%にあたる603億ドルを探鉱・開発部門に充てるとし、その他の部門については操業を維持するための投資を行うとしている。2018年12月の債務水準は、利払い・税・償却前利益(EBITDA)の2.5倍にするとの目標を維持し、2017~18年に210億ドルの資産を売却する計画も変更しないとしている。PetrobrasはBMP2017-2021で生産減退ペース鈍化のため、石油会社やサービス会社と戦略的パートナーシップを組むとしたが、BMP2018-2022でも引き続き他企業との提携を強めるとしている。
図3 PetrbrasBMP2018-2022投資額内訳(出所:Petrobras website)
図4 PetrbrasBMP2018-2022生産見通し(出所:Petrobras website)
2016年9月発表の前5カ年計画BMP2017-2021の5年間の投資額は741億ドル、探鉱・生産部門への投資額は606億ドルで、今回の5カ年計画の投資額は微増、探鉱・生産部門の投資額は微減となった。PetrobrasはBMP2014-2018以降、総投資額を、BMP2015-2019以降、探鉱・生産部門への投資額を削減しており、今回、投資額に大きな変更がなかったことは、同社が汚職問題や原油価格低迷の影響から脱却し事業の立て直しを進めつつあることを示すものと考えられる。2017年11月13日に発表された2017年第3四半期決算でも、Petrobrasは2億6600万レアルと4四半期連続の黒字を計上、2017年第1~3四半期の黒字も50億レアルに達し、前年同期の173億レアルの赤字から大きな改善を見せている。
図5 Petrobras5カ年計画投資額推移(単位:億ドル) (Petrobras website等より作成)
また、BMP2017-2021では、最終年にあたる2021年のブラジル国内外の生産量を341万boe/d、ブラジル国内石油、NGL生産量を277万b/dとしており、生産量についても緩やかに増産を続けるという目標に大きな変更は加えられなかった。
図6 Petrobras新規生産設備導入計画 (Petrobras website等より作成)
Petrobrasは2022年までの5年間に前5カ年計画BMP 2017-2021と同数の19基の生産設備を導入するとしている。しかし、BMP 2017-2021の19基は全てブラジル国内向けであったのに対し、BMP 2018-2022で計画されている生産設備のうち1基はナイジェリアのEgina油田向けとなっている。また、2018年に生産を開始するとされているTartarga Verde e MesticaとLula Norteは、BMP 2017-2021では2017年に生産を開始する計画であった。さらに、BMP 2017-2021では2020年と2021年にそれぞれ4基の生産設備が生産を開始するとされていたが、BMP 2018-2022では2020年生産開始予定の4基と2021年生産開始予定の2基の生産開始時期が1年ずつ先送りされている。
油田毎に見てみると、Petrobrasは、2006年に発見され、2010年に生産を開始したLula油田で、2017年は7基の生産設備から106万boe/dを生産した。Petrobrasは、同油田に対する2018~22年の資本支出を45億ドルとし、2018年に新たに2基の生産設備を導入するとしている。
Petrobrasは2017年11月26日に生産を開始したLibra油田北西部の名称をポルトガル語でスズキ科ハタを意味するMero油田に変更した。同社は、Mero油田の可採埋蔵量を33億bblと推定しており、2018~22年に資本支出23億ドルを投じ、2021年と22年に生産設備を2基導入する計画である。Petrobrasは同油田のBreakeven priceを35ドル/bbl以下としている。
Buzios油田には、2018~22年に資本支出114億ドルを投じ、2021年までにFPSO5基(生産能力75万b/d)を導入、45坑から生産を行う計画である。
生産量が減退しているCampos盆地については、2018~22年に資本支出189億ドルを投じ、2022年までに新たに生産設備4基を導入するほか、第14次ライセンスラウンドで取得したプレソルトが狙える6鉱区での探鉱も行う。
終わりに
ブラジルには保有鉱区が少なく生産もしていないExxonMobilは第14次ライセンスラウンド、PSラウンドでCampos、Santosのプレソルト、Sergipe–Alagoasの有望鉱区を落札、その直後には周辺鉱区の権益を取得、南米への積極進出の一環として、ブラジルの探鉱や大規模開発プロジェクトに参画していく方針と見られる。Statoilはブラジルに鉱区権益を多数保有し探鉱、開発、生産に従事しているが、生産が伸び悩んでおり、PSラウンドで開発への移行が確実と考えられる鉱区を取得、その後生産中のRoncador油田の権益を取得した。沖合の探鉱・開発技術を活かし生産増を睨んだ鉱区権益の取得を行っている。ShellはBG買収によりプレソルトの油田権益を増やし、ブラジルではPetrobrasに次ぐ生産を誇っている。3回の入札でも数多く札をいれ、プレソルトの有望鉱区でのさらなる生産増、探鉱活性化を図ろうとしていると考えられる。置かれた状況や戦略は各社それぞれだが、いずれもブラジル沖合進出に積極的と考えられる。
表4 ExxonMobil、Statoil、Shellの比較
|
ExxonMobil |
Statoil |
Shell |
---|---|---|---|
状況 |
保有鉱区少ない 生産なし |
Campos、Santos等で探鉱・開発・生産中 ブラジル生産伸び悩み (2017年11月3.5万b/d) |
BG買収によりプレソルト権益増加 Petrobrasに次ぐ生産量 (2017年11月31.5万b/d) |
第14次ライセンスラウンド |
Camposプレソルト、Sergipe–Alagoas有望鉱区取得 |
― |
Camposプレソルト激戦2鉱区に札を入れ、敗れる |
PSラウンド |
Norte de Carcará鉱区落札 |
Norte de Carcará鉱区落札 |
6鉱区に入札、3鉱区落札 |
その他 |
Sergipe–Alagoas有望鉱区、Norte de Carcará鉱区の周辺鉱区権益も取得 |
Roncador油田権益取得 |
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戦略 |
南米積極進出(探鉱、大規模開発プロジェクトに参画)の一環 |
沖合技術活用 生産増を睨んだ権益取得 |
プレソルトの権益追加に積極的 生産増も探鉱も重視 |
(各種資料より作成)
このような状況から、IOCは今後も着実に石油生産を増やしていくと考えられ、Petrobrasも緩やかに石油生産を増やしていく計画であるため、ブラジルの石油生産量は引き続き増加していくと見ることができる。90%を超えていたブラジル石油生産に占めるPetrobrasの生産量の割合は、2017年11月には77.7%まで落ちており、この傾向は今後さらに強まると考えられる。
ブラジルでは2018年にも、3月29日に70鉱区を対象とする第15次ライセンスラウンドが、6月7日にプレソルトエリアの5鉱区を対象とする第4次PSラウンドが、11月には過去の入札で付与されなかったり、契約上の義務が果たされずに返還されたりした13堆積盆地の846鉱区を対象とする入札が実施される。また、既存契約のローカルコンテンツを緩和することについて検討が続けられており、新規鉱区だけでなく、既存鉱区についても探鉱・開発が進展する可能性が高まっている。ただし、10月には大統領選挙が予定されており、その結果次第では探鉱・開発に影響が及び、再び石油生産の伸び悩みにつながることもありうると考える。
以上
(この報告は2018年1月29日時点のものです)