ページ番号1007438 更新日 平成30年4月10日

アンゴラ:Sonangol改革と海外投資動向からみるアンゴラ石油産業の現況

レポート属性
レポートID 1007438
作成日 2018-02-20 00:00:00 +0900
更新日 2018-04-10 09:42:05 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発基礎情報
著者 古川 ゆかり
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年度
Vol
No
ページ数 8
抽出データ
地域1 アフリカ
国1 アンゴラ
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アフリカ,アンゴラ
2018/02/20 古川 ゆかり
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概要

  1. ジョアオ・ロウレンソ(Joao Lourenco)氏は、2017年9月26日大統領就任後、汚職撲滅と石油産業における前大統領一族支配体制の変革を急ピッチで進めている。石油産業は40年近く続いた前大統領ドス・サントス一族によって支配されており、こうした国の方向性を変えることは容易ではないとされてきた。しかし、ロウレンソ大統領は「透明性と機会均等の実現」及び「腐敗撲滅と民間部門促進」を掲げ、前大統領の長女イザベル・ドス・サントス(Isabel dos Santos)氏を国営石油会社Sonangolの総裁から解任したことにみられるように、石油産業改革への動きを着実に進めている。
  2. 近年、2014年以降の油価下落の影響を真正面から受ける形となり、国家収入を石油産業に依存するアンゴラは苦境に立たされている。生産がピーク(約190万バレル/日)に達した2008年以降続く生産停滞を食い止めるため、新規開発プロジェクトの投資を呼び込みたいとしている。
  3. 現状では、低油価による投資決定遅延、探鉱活動の低迷などがみられるが、今後Total、Eniなどのプロジェクトが控えていることから、生産減退は食い止められる可能性も十分あると考えられる。

 

1.Sonangol改革

2017年9月26日、前国防相のジョアオ・ロウレンソ(Joao Lourenco)氏は大統領就任後、汚職撲滅と国内主要産業における前大統領一族支配体制の変革を急ピッチで進めている。

(1)ロウレンソ新大統領による改革

前大統領のジョセ・エデュアルド・ドス・サントス(Jose Eduardo dos Santos)氏は、2017年9月に退任するまで38年間にわたる長期政権を維持した。その間、アンゴラの石油関連政策の決定は大統領が行い、大統領府や石油省(Ministry of Petroleum)が助言するという体制を採るほか、石油産業をはじめとするほぼすべての経済分野において、要職はドス・サントス一族によって独占されてきた。大統領退任後もドス・サントス氏はMPLA政党のトップに留まるなど、その影響力は依然として経済全体に及んでおり、40年近く(=アフリカ大陸で赤道ギニアに続き史上二番目に長い)続いた前大統領時代の国の方向性を変えることは容易ではないとされてきた。アンゴラは、1975年ポルトガルからの独立後2002年までの27年間内戦状態にあり、経済の発展は遅れた。しかしその一方で石油資源に恵まれ、現在では輸出の95%以上、国家収入の約8割を石油が占めている。同国は、形式的には複数政党による民主主義体制にあるものの、実質的には大統領の権限が非常に強く、国家の主要収入源である石油産業においても強い影響力を保持してきた。

ジョアオ・ロウレンソ(Joao Lourenco)大統領は就任後、2015年以降落ち込んでいる原油生産(図1)を増加させたいとし、陸上入札ラウンド実施の意向を示すなど、前大統領が(未だに影響力を保ってはいるものの)退いた今、石油部門に代表される経済成長を加速させるべく改革を進めている(petroleum-economist2017/9/1)。

図1 アンゴラの原油生産量

ロウレンソ大統領は2017年11月15日、国営石油会社Sonangolの総裁、イザベル・ドス・サントス(Isabel dos Santos)氏の解任を発表した。イザベル氏は前大統領ドス・サントス氏の長女で、2016年6月、ドス・サントス前大統領によって総裁に任命された。2004年の石油法改正により政策決定、操業管理など石油省の機能は強化されたが、Sonangolが依然として石油部門における影響力を保持してきたという実情があり、一族内部から自身の後継者を選び、大統領職を移譲するまでの間に石油収入に対するコントロールを握っておきたいというドス・サントス氏の意図があるとも言われてきた。また、大統領の長女が総裁に就任したことで、アンゴラの石油政策は商業的観点からではなく、政治的意図によって方向づけられていく傾向が高まるとの懸念の声も挙がっていた。ロウレンソ大統領はドス・サントス前大統領より祝福を受け大統領職を引き継いでいたことから、イザベル氏の解任発表は驚きをもって受け止められた。しかし、ロウレンソ大統領は2017年10月16日の声明で、「公の入札による透明性と機会均等の実現」及び「腐敗撲滅と民間部門促進」を宣言しており、今般の解任劇が、そうした強い意志の表れであることが窺える(AfrOil2017/11/21)。

また、イザベル氏解任の同日、ロウレンソ大統領はドス・サントス一族が経営する民間企業2社(Westside、Semba Communications)と政府間の全契約を終了すると発表した。さらに、ドス・サントス氏の支持基盤と関係が深いとされる、国営ダイヤモンド企業エンディアマ(Endiama)、中央銀行、国営メディアグループの総裁らの解任も発表された。

2018年1月10日には、50億ドルの同国政府系ファンド総裁ジョセ・フィロメノ・ドス・サントス(Jose Filomeno dos Santos)氏を解任。国際コンサルタントの会計監査の結果、同社には透明性の欠如及びその他重大な落ち度が判明したことが、金融相により明らかにされた。フィロメノ氏はドス・サントス前大統領の長男で、この解任もまた、より効率的かつ透明性の高い国家の戦略的資源管理体制の構築とともに、一連のドス・サントス勢力排除の動きの一つと見られている。

(2)Sonangol元総裁イザベル氏解任の背景

石油収入に依存するアンゴラでは、負債処理を抱えるSonangolに対する新たな舵取りの必要性に迫られていた。

2017年10月13日、大統領は、政府の閣僚、Sonangol、国際石油会社IOCに対し、石油業界の現状を見直すため調査委員会の編成を命じた。当調査委員会は、石油業界の状況を調査し、政府と企業間での新たな協調枠組みを構築するための作業部会であり、元石油省長官カルロス・サトゥルニーノ(Carlos Saturnino)氏によって率いられた。それによると、Sonangolは「麻痺寸前」の状態にあると結論づけている。また、同調査委員会の報告により大統領はSonangolの財務状況を把握。Sonangolが多額の債務を抱え、早急に資金を必要としていることを知り、低い貸付金利を確保するため、中国銀行、南アフリカ・スタンダード銀行、スタンダードチャータード銀行等Sonangolの主要融資先と会談を行ったと伝えられている。

なお、イザベル氏の後任には、調査委員会代表を務めたサトゥルニーノ氏が就任した。サトゥルニーノ氏は石油産業におけるベテランで、2016年までSonangolで執行委員会代表を務めていたが、管理体制についてイザベル氏から叱責を受け、解雇された人物である。また、新石油省長官にはポーリーノ・ジェロニモ(Paulino Jeronimo)氏を発表。彼もまた、ドス・サントス前大統領によってSonangolを解雇された人物である。

なお、2016年6月以来Sonangol総裁を務めてきたイザベル氏は、同社の再編に努めてきたとし、代理人は彼女の功績(130億ドルから70億ドルへの債務削減、148億ドルから156億ドルへの年間収入増加、3億8,000万ドルのコスト削減)について指摘している。イザベル氏の総裁就任時、原油価格の下落によりSonangolが破産寸前の状態にあったことにも言及した。また、イザベル氏のサポーターによると、「現在、同社の財務状態は良好であり、リストラペースの遅さは、雇用規模と、資産売却に際して国から課せられた制約によるものである。イザベル氏の解任は単に政治的なものであり、大統領によるドス・サントス一族排除の動きの一環である」としている。

Sonangol再編を進めてきたイザベル氏であったが、IOCの間では、同社の改革の遅さが問題視されていた。ルアンダの大統領宮殿にて行われた会議で、アンゴラにおけるChevron、Total、BP、Eni、ExxonMobilの最高責任者らは、Sonangolのプロジェクト承認の遅れ及び債務返済残高によるアンゴラの石油部門の荒廃を指摘(石油業界関係者談)。イザベル氏が率いるSonangolの問題に迅速に対処しなければ、アンゴラの生産量は2019年から減少する、とロウレンソ大統領に警告した(REUTERS2017/11/23他)。この約6週間後、イザベル氏はSonangol総裁を解任されている。主要な収入源を石油部門に依存し、欧米石油メジャーを中心として石油探鉱開発を行っている同国にとってこの指摘を看過することはできず、早急な対応を迫られていたことが窺える。

 

2.IOC投資動向

(1)低油価の影響による探鉱活動の低迷

アンゴラはアフリカ有数の産油国であり、2017年の石油生産量は164.9万バレル/日、埋蔵量は95.23億バレルである(OGJ統計)。石油鉱区は、陸上、沖合(Block0、Block1~13)、深海(水深300m以深、Block14~30)、超深海(水深 2,000m 以深、Block31~40)に大別される。主力生産地域は北部Lower Congo盆地の深海鉱区であり、Cabinda(Block0、Chevronがオペレーターを務める)の沖合油田からの原油生産が中心となる。

図2 アンゴラにおける石油開発鉱区
(出所:Sonangol HPを元に作成)

図2 アンゴラにおける石油開発鉱区

アンゴラは1990年に深海鉱区を公開し、最初の深海油田は、99年後半にChevronが操業開始したKuito油田(Block14)である。それ以来、国際石油会社IOCがさらに深海油田の開発を進め(ExxonMobil(Block15)、Total(Block17)、BP(Block18)が合計100億バレルの油田を発見)、アンゴラの原油生産は、2002年から2008年まで年15%のペースで増加した。

しかし近年、2014年以降の油価下落の影響を受け、上流開発投資はここ10年のうちで最低レベルにまで落ち込んでいる。こうした厳しい状況を反映し、MaerskのChissonga深海プロジェクト(Block16、生産能力10万バレル/日)などは延期を余儀なくされた。新規プロジェクトの延期及び中止により、SonangolはIOCパートナー企業に対し数億ドルという負債を負うこととなり、同国は苦境に立たされている。なお、協調減産枠組みにおいて同国に課せられている原油生産目標は167万バレル/日(OPEC他より推定)であるが、同国の最近の生産量は159万バレル/日(2017年11月)、162.6万バレル/日(2017年12月)、161.5万バレル/日(2018年1月)(OPEC Monthly Oil Market Report)と推移しており、減産遵守率は100%を超えている状況である。

IEAは、2016年から2022年にかけてアンゴラで4万バレル/日の生産減少を予測している。同国は2008年(約190万バレル/日)をピークに低迷している生産(図1)を回復させるべく、新規開発プロジェクトの投資を呼び込みたいとしている。

表1:アンゴラにおける主要各社のCapex及び生産中鉱区(2017年)

企業

Capex

生産中鉱区

Sonangol

約26億ドル

Block 2/85 offshore, Block 3 offshore,

Block 4/05 deepwater

Total

約13億ドル

Block 17 deepwater

Exxon Mobil

約11億ドル

Block 15 deepwater

Chevron

約9.5億ドル

Block 0-AreaA offshore, Block 0-AreaB offshore, Block 14 deepwater

Eni

約9億ドル

Block 15/06 deepwater

(各種資料より作成)

(2)苦境を脱するためのアンゴラの模索

輸出による石油収入が国家収入全体の約8割を占める同国では、原油生産を維持することは、国家の命脈にかかわっている。IOCの多くは、開発の低コスト化を検討するほか、PS契約の延長を投資の条件として掲げており、アンゴラ政府もまた、財政上・操業上のインセンティブを提示することでこれに応えようとしている。こうした取り組みの甲斐があり、延期を余儀なくされたものの生産を開始した油田には以下のものが挙げられる。

ChevronをオペレーターとするBlock 0のMafumeira Sulプロジェクトは 2016年10月に生産を開始した。本プロジェクトはMafumeira Sul油田(Cabinda州から約24km、水深60m)において、北部のMafumeira Norte(2009年7月生産開始、生産量4万バレル/日)に続く第二弾目の開発となる。開発費用56億ドルで、現行生産量は15万バレル/日である。権益比率は、オペレーターを務めるChevronが39.2%、Sonangol 41%、Total 10%、ENI 9.8%となっている。

また、2017年2月にはEniのEast Hubプロジェクト(Block15/06)が生産を開始した。本プロジェクトはCabaca South East油田(ルアンダから北西に350km、Soyoから西に130km、水深450m)において行われ、Sangos、Cinguvu、Mpungi油田において既に生産が開始されているWest Hubプロジェクトに続く追加プロジェクトである。East Hubプロジェクトでは8万バレル/日の生産能力が見込まれており、Block 15/06全体で合計15万バレル/日の生産が見込まれている。権益比率は、Eni 35%、Total 15%、Sonangol 15%、SSI(SinopecとSonangolの合弁会社) 25%、Statoil 5%、Falcon Oil Angola Investimentos 5%となっている。

さらに、TotalのKaombo油田(Block32)が2018年に生産開始予定となっている。権益比率は、Total 30%、Sonangol 30%、Sonangol Sinopec International 20%、Esso Exploration and Production Angola (Overseas) Limited 15%、Galp Energia 5%である。本プロジェクトは開発費160億ドルで、生産量20万バレル/日を見込んでいる。これにより、超深海油田全体で23万バレル/日の生産量増加が見込まれており、2014年油価下落以後最大規模となる同プロジェクトには大きな期待がかかっている(IEA OIL2017)。報道によると、Sonangolは、低油価や開発コスト高を補うため、PS契約のコスト回収等の見直しを行ってきたといい、それが奏功した形であるといえるだろう(upstream2017/11/24他)。

さらに、2017年11月及び12月にTotalとEniの代表がロウレンソ大統領及びSonangol新総裁を訪問し、上流下流事業、並びに再生可能エネルギー分野における新規契約を締結した。TotalはBlock17におけるZinia Phase2プロジェクト(生産能力4万バレル/日)を承認、FIDの可能性にも言及した。また、EniはCabinda North Blockにおける権益を15%から48%に拡大し、Sonangolから同鉱区のオペレーターとしての権利を引き継いだ。これに続き、英Socoもまた、Cabinda North Blockにおける権益を17%から22%へと拡大した。これらの動きは、新規投資を呼び込みたいとしているSonangolにとって歓迎すべき流れとなっている。

 

3.終わりに

油価回復傾向にある今、この流れに乗って、アンゴラの石油産業は2014年以前の勢いを取り戻すことができるか。その可否は、海外投資の動向に大きく左右される。現状では、低油価による投資決定遅延、探鉱活動の低迷などがみられるが、今後Total、Eniなどのプロジェクトが控えていることから、生産減退を食い止められる可能性も十分あると考えられる。

以上

(この報告は2018年2月20日時点のものです)

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