ページ番号1007476 更新日 平成30年4月10日

豪州・東ティモール国境とガス田開発の収入の配分に係る条約の調印

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レポートID 1007476
作成日 2018-04-03 00:00:00 +0900
更新日 2018-04-10 09:42:05 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG基礎情報
著者
著者直接入力 山下 宜範
年度
Vol
No
ページ数 10
抽出データ
地域1 大洋州
国1 オーストラリア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 大洋州,オーストラリア
2018/04/03 山下 宜範
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概要

 2018年3月6日、豪州と東ティモールは恒久的な海上の国境を確立する条約に調印した。

両国のティモール海上の国境は両国海岸線からの概ね中間線に定められた。この結果、未開発のグレイターサンライズガス田の多く、及び石油資源共同開発地域(JPDA)内に位置するバユ・ウンダンガス田の全てが東ティモールの領海内に属することになった。

両国の国境をまたぐことになるグレイターサンライズガス田については特別な制度を設けてガス田開発で得られる収入を両国に配分する比率等を取り決めた。

グレイターサンライズガス田からの収入の配分は、ガスがどちらの国に輸送されるのかによって比率が異なる。ガスがパイプラインで東ティモール側に輸送されれば東ティモール側が収入の70%分を得ることになる。またガスがパイプラインで豪州側に輸送されるのであれば東ティモール側が収入の80%分を得ることになる。なお同条約においては同ガス田のオペレーターであるWoodside社等が導入を計画していた浮体式LNG(FLNG)プラントの採用は想定されていない。

現在生産中のバユ・ウンダンガス田は東ティモール領海に属することになるため、条約発効後は同ガス田からの収入の全てを東ティモール側が得ることになる(現行は90%分)。ただし現在同ガス田の権益を有する企業が得ている許認可や現在の事業に影響しないことが条約で定められている。

今後、両国の必要な手続きを経て同条約が発効する予定である。同条約の発効に伴い、従前の両国の海域の油ガス田からの収入配分比率を規定していたティモール海条約等は廃止される。

グレイターサンライズガス田からのガスの輸送先は未決のままであり、また、Woodside社等は浮体式LNGの採用を計画してきたことから、今回の条約に対してこれら企業から不満の声が出ている。一方、Woodside社は従前は新規LNG開発用としていた開発未着手の他のガス田を既設LNG事業のバックフィル用にする等の計画を進行させており、これらを含めた今後の動向が注目される。

インドネシアと豪州との間の海上の国境線は豪州の海岸から伸びた大陸棚の縁を基準にしており豪州側の領海が広い形になっている。このため今後インドネシアからも国境線の見直しの要求が出る可能性がある。また、今回、国連海洋法条約の手続きに基づいて調印に至った今回の条約には中国をけん制するという考えもあると思われる。

(関係機関ホームページ、各種報道、他)

 

1.条約の概要

2018年3月6日、豪州と東ティモールは両国の海上国境を定める「豪州・東ティモール間のティモール海における海上の国境の設定に係る条約(以下、「ティモール海上国境条約」)」を調印した。調印の場所はニューヨークの国連本部であり、署名者は豪州側がジュリー・ビショップ外務大臣、東ティモール側はアジオ・ペレオラ副首相であった。調印式にはアントニオ・グテーレス国連事務総長等が立ち合った。両国の国境線が定められるのはこれが初めてである。この結果、ティモール海上の両国の国境をまたぐことになるグレイターサンライズ(Greater Sunrise)ガス田については特別な制度を設けてガス田開発で得られる収入を両国に配分する比率等を取り決めた。現在生産中のバユ・ウンダン(Bayu-Undan)ガス田については東ティモール領海に属することになった。

(1)ティモール海上の国境について

両国のティモール海上の国境は、両国の海岸線からの中間線を基本として設定された(図1)。ただしこの海域の東西には豪州とインドネシアとの海上国境(1972年に両国設定)が引かれており、これを踏まえた形で国境線が引かれている。かつて豪州側は、東ティモールとの海上の国境線については、インドネシアとの国境線と同様、大陸棚の縁に沿った形にすることを主張していたが、一方、東ティモール側は両国の中間線にすべきだと主張してきた。なお、1994年に発効した「海洋法に関する国際連合条約(国連海洋法条約)」においては、海を挟んだ国同士の国境線は原則として両国の海岸からの中間線にすることとされている(ただし海岸から12海里を超えない範囲である)。

図1:今回の条約で設定された海上国境線とガス田の位置関係

図1:今回の条約で設定された海上国境線とガス田の位置関係(緑線が海上国境、赤色がガス田)
出典:Department of Industry, Innovation and Science

(2)グレイターサンライズガス田

グレイターサンライズガス田は東ティモールの南東の150kmに位置し、豪州のダーウィンの北西450kmに位置する。サンライズ(Sunrise)ガス田とトロウバドア(Troubadour)ガス田の2ヵ所のガス田を合わせてグレイターサンライズガス田 と称されている。権益を保有しているのはWoodside:33.44%(オペレーター)、ConocoPhillips:30%、Shell:26.56%及び大阪ガス:10%のJVである。埋蔵量は5.13TCFのガスと226百万バレルのコンデンセートとされる。同ガス田は1974年にガスが発見されており歴史は古い。これまでWoodside社等によってLNGプロジェクトの実施が検討されてきたものの、豪州と東ティモールとの国境問題に加えて、産出したガスを東ティモールに持ち込んで処理をさせたい同国政府と、浮体式LNG(FLNG)プラントの採用を志向するWoodside社等との間で一致が見られず、最終投資決定に至っていない。

  今回調印されたティモール海上国境条約に基づけばグレイターサンライズガス田の多くは東ティモールの領海に属することになる(図2)。この条約の下では、グレイターサンライズガス田の開発で得られる税収等の収入は、ガスがパイプラインで東ティモール側に輸送されるのであれば豪州が30%分、東ティモールが70%分を得ることになる。しかしガスがパイプラインで豪州に輸送されるのであれば、豪州が20%分、東ティモールが80%分を得ることになる。

なお、2002年5月に調印されたティモール海条約によれば同ガス田の面積の79.9%が豪州の領海内に属し、残り20.1%の面積が石油資源共同開発地域(JPDA)に属するとされていた。しかしながら2006年1月に調印されたティモール海境界線条約(CMATS条約)に基づき、同ガス田の開発によって得られる利益は50:50の割合で両国に配分されることが規定され、かつ、両国の海上国境の設定を巡る協議を50年間凍結することも規定されていた。

その後、2013年になって豪州がCMATS条約の交渉時に盗聴などのスパイ行為をしていた疑惑が明るみになり、かねてより国境線を両国の中間線にすることを主張すると共に、ガス開発からの収入の配分方法についても不満を募らせていた東ティモールは、このスパイ行為について国際司法裁判所に提訴し、国境問題については2016年に国連海洋法条約に基づく強制調停の申請を行うなどの行動を起こした。そして2017年1月には豪州側にCMATS条約の破棄を要求した。両国は同条約を破棄することとし、ティモール海上の国境線の協議を再開することに合意した。その後の協議を経て、今回、ティモール海上国境条約が調印に至っている。

なお、今回の条約の下ではグレイターサンライズガス田で産出されるガスを豪州又は東ティモールに輸送するという2つの選択肢が示されているのみであり、どちらにするのかについては決定されていない。また浮体式LNGプラントは想定されておらず選択肢から除外されている。このためWoodside社等の同ガス田の権益保有企業は今回の条約の内容に対して不満を示している。

これまでWoodside社等は、コスト面を勘案して浮体式LNGを採用することを計画してきた。特に東ティモール側に向けてパイプラインを敷設する場合は、途中、深度約3,000mのティモールトラフ(海盆)を通過する必要があり、Woodside社等は技術的な困難を伴うとの指摘をしてきた。しかしながら、その後も東ティモール側はWoodside社等に対して開発形態の詳細な比較分析を求めると共に、依然として自国にガスを輸送する案を主張し続けており、両者の見解に一致が見られていない。

なお、今後、グレイターサンライズガス田の開発に際し、同ガス田の監督機関として指定機関が設置される予定である。同機関は、現在JPDAのガス田開発の監督を担当する東ティモールのAutoridade Nacional do Petróleo e Minerais (ANPM)になることが予定されている。指定機関の上部機関として両国の代表で構成される管理委員会も設立される予定である。

(3)バユ・ウンダンガス田及びキタン(Kitan)油田

バユ・ウンダンガス田はJPDA内に位置しており、2005年に生産が開始されている。権益を保有しているのはConocoPhillips:57%(オペレーター)、Eni (11%)、 Santos (11%)、INPEX :11%及びTokyo Timor Sea Resources(9%)である。バユ・ウンダンガス田で産出したガスはパイプラインを経由して豪州の北のダーウィンに運ばれ、同地のダーウィンLNG事業の液化プラントにおいてLNGが製造され、輸出されている。ダーウィンLNG事業のオペレーターもConocoPhillipsである。

同じくJPDA内に位置するキタン油田の権益を保有している企業はEni:40%(オペレーター)、INPEX:35%、Talisman Resources :25%である。同油田は2015年12月に生産を停止している。

2002年5月に調印されたティモール海条約ではJPDA内の油ガス田開発によって得られた税収等の収入は東ティモールが90%、豪州が10%の割合で配分することが取り決められた。しかし今回のティモール海上国境条約で設定された国境に基づくとこれらの油ガス田は東ティモールの領海上に属することになる(図2)。このため同条約発効後はバユ・ウンダンガス田、キタン油田等、現在JPDA内に位置する油ガス田からの収入は、東ティモール側が100%分を得ることになる。ただし、バユ・ウンダンガス田及びキタン油田については、移行措置として、企業が得ている作業計画、支出計画などの許認可に変更はなく、ガス販売、輸送、処理等にも影響しないことが同条約において定められている。

現在JPDA内において唯一生産が行われているのはバユ・ウンダンガス田であるが、同油ガス田は2022年までにガスの生産が減退することが予想されている。現在、ConocoPhillipsはティモール海に位置するバロッサ(Barossa)ガス田をバックフィル用のガス田として開発する計画を有している。このバロッサガス田は今回の条約の発効後も豪州の領海に属している。

(4)バッファロー(Buffalo)油田

バッファロー油田はJPDA枠外の西側に位置しており、これまで豪州の領海に属していたが、今回の条約の下では東ティモールの領海に属することになった(図2)。このため同油田からの収入についても東ティモール側が100%分を得ることになる。同油田はCarnarvon Petroleum社が100%の権益を保有している。

図2 ティモール海上国境上条約の発効後の取り決め概要

図2 ティモール海上国境上条約の発効後の取り決め概要
出典:Department of Industry, Innovation and Scienceのウェブサイトに掲載の地図を基に筆者作成

(5)条約の発効について

ティモール海上国境条約は、今後、豪州、東ティモールは両国内において所用の手続きが行われた後に発効となる。同条約が発効すればティモール海条約(2002年調印)、グレイターサンライズガス田に係る国際合同開発協定(IUA。2003年3月調印)は失効する。

 

2.経緯

過去の経緯を時系列でまとめると以下のとおりである。

1972年:豪州とインドネシアが両国間の海上の国境を設定。

1989年:豪州とインドネシアが「ティモール・ギャップ条約」に調印。ティモールに共同石油開発地域(JPDA)を設定。両国の油ガス田からの収入の配分比率は豪州:インドネシア=50:50。

2002年:東ティモールがインドネシアから独立。東ティモール民主共和国が誕生。

2002年:豪州と東ティモールが「ティモール海条約」に調印。JPDAにおける油ガス田からの収入の両

国による配分比率に合意。収入の配分比率は豪州:東ティモール=10:90。また、グレイターサンライズガス田の79.9%が豪州領海内に属し、残り20.1%がJPDAに属すると規定した。

2003年:豪州と東ティモールがグレイターサンライズガス田に係る国際合同開発協定(IUA)に調印。両国によるグレイターサンライズガス田の一体的な開発に合意。

2006年:豪州と東ティモールが「ティモール海境界線条約(CMATS条約)」に調印。グレイターサンライズガス田からの収入の両国の配分比率を、豪州:東ティモール=50:50とした。また今後50年間両国は国境線の協議を凍結することに合意した。

2013年:CMATS条約の交渉の際、豪州が東ティモールにおいて盗聴などのスパイ行為をしていた疑惑が発覚し、東ティモールが国際司法裁判所に提訴。

2014年:国際司法裁判所は豪州に対して東ティモールにおけるスパイ活動の停止を命じた。

2016年:東ティモールがティモール海上の国境問題に関して国連海洋法条約(UNCLOS)に基づく強制調停の実施を申請。常設仲裁裁判所において調停委員会の審理を開始。

2017年1月:東ティモールはCMATS条約の破棄を要求。CMATS条約は破棄され、豪・東ティモール両国は国境線の協議を再開することに合意。

2017年8月:豪・東ティモールは両国の海上の国境に関して包括合意。またグレイターサンライズガス田に関して特別制度を設けることやガス田からの収入の配分方法についても合意。

2017年10月:豪・東ティモール両国は「豪州・東ティモール間のティモール海における海上の国境の設定に係る条約(ティモール海上国境条約)」の条文に合意。

2018年3月:豪と東ティモールは「豪州・東ティモール間のティモール海における海上の国境の設定に係る条約」に調印。

表1:豪・東ティモール国境設定までの経緯概略

1972年

豪・インドネシア、海上国境設定

1989年

豪・インドネシア、JPDA設定(収入配分は50:50)(ティモールギャップ条約)

2002年

東ティモール独立。

2002年

豪・東ティモール、JPDA設定(収入配分は豪:東ティモール=90:10)(ティモール海条約)

2003年

豪・東ティモール、グレイターサンライズガス田の一体的な開発に合意(IUA協定)

2006年

豪・東ティモール、グレイターサンライズガス田からの両国の収入配分は50:50と取り決め。
また今後50年間の国境協議の凍結に合意(CMATS条約)

2016年

東ティモール、豪との国境問題に関して国連海洋法条約に基づく調停申請

2017年

豪・東ティモール、CMATS条約破棄し国境協議再開

2018年

豪、東ティモール、海上国境設定に合意。グレイターサンライズガス田からの収入配分は
豪:東ティモール=20:80(豪州にガス輸送)又は30:70(東ティモールにガス輸送)
(ティモール海上国境条約)

 

3.今後の展開

(1)グレイターサンライズガス田と他のガス田の開発との関係

前述のとおり、グレイターサンライズガス田の開発については、同条約においては下記の2つの選択肢しか示していない。

1.同ガス田のガスをパイプラインで東ティモールに輸送(東ティモールの収入配分比率は70%)

2.同ガス田のガスをパイプラインで豪州に輸送(東ティモールの収入配分比率は80%)

これまで同ガス田の権益を保有するWoodside社等のJV企業はコストの観点から浮体式LNGの採用を目指してきたが、浮体式LNGプラントについては条約には記載がなく、選択肢から除外された形になっている。

仮に豪州にガスを輸送するとした場合、現在、豪州北部で操業中のダーウィンLNG事業の既存のガスパイプラインへの繋ぎこみが想定される。前述のとおりダーウィンLNG事業にガスを供給するバユ・ウンダンガス田はJPDA内の唯一の操業中の油ガス田である。現在、東ティモールはこれらの油ガス田からの収入のうち90%分を得ているが、今回の条約発効後は100%分の収入を得ることになる。ただしバユ・ウンダンガス田は2022年までにガスの生産が減退することが予想されている。このためConocoPhillipsは既にバロッサガス田をバックフィル用のガス田として開発する計画を進めている。同ガス田は今回の条約の発効後も豪州の領海に属することになる。同ガス田から新たに260~290kmのガスパイプラインを敷設してバユ・ウンダンガス田からの既設のガスパイプラインと接続させる予定である(図3)。一方、グレイターサンライズガス田については、これからガスを開発してダーウィンLNG事業にガスを供給するという具体的な計画は見当たらない。

図3 バユ・ウンダン、グレイターサンライズ及びバロッサの各ガス田の位置関係

図3 バユ・ウンダン、グレイターサンライズ及びバロッサの各ガス田の位置関係
出典:Barossa Area Development Offshore, Project Proposal, ConocoPhillips Australia社ウェブサイト

いずれにしろ今回の条約においてはグレイターサンライズガス田のガスの輸送先は決定されておらず、また、Woodside社等の同ガス田の権益を有する企業が採用を計画してきた浮体式LNGプラントは選択肢として挙げられていない。このためWoodside社等からは今回の条約に対する不満の声が出ている。

豪州全体における大規模なガス開発の動きを見てみると、まず、Woodside社がオペレーターを務めるノースウェストシェルフ(NWS) LNG事業にガスを供給するガス田が2020年代に生産が減退することから、同じく同社がオペレーターとして新規LNG事業の実施を計画していたブラウズ(Browse)プロジェクトにおける豪州沖合の未開発のガス田からのガスをノースウェストシェルフLNG事業に供給する計画を進めており、2021年に最終投資決定の見込みである。

また、同じくWoodside社がオペレーターを務めるプルート(Pluto)LNG事業は生産設備を拡張する計画を有しており、これにガスを供給する新たなガス田の確保が必要であることから、こちらも当初は新規LNG事業の実施を計画していた豪州沖合の未開発のスカボロー(Scarborough)ガス田からのガスをプルートLNG事業に供給する計画である。Woodside社ではBHP Billitonが保有していた同ガス田の50%分の権益のうち25%分を2016年に取得するとともに、ExxonMobilが保有する50%分の権益も買収することで2018年2月に合意している。この買収が完了すればWoodside社が同ガス田のオペレーターとなる予定である。このようにWoodside社は着々とガス田の手当てに動いているが、同じく同社がオペレーターを務めるグレイターサンライズガス田は、前述のとおり同社が実施を計画する浮体式LNGプラントの導入の実現が困難な状況にある。

なお、グレイターサンライズガス田から一番近い距離にある既設のLNGプラントはダーウィンLNG事業のものとなる。ダーウィンLNG事業も前述のとおりガス供給源のバユ・ウンダンガス田は今後生産が減退することが予想されるが、既に同LNG事業のオペレーターであるConocoPhillipsはティモール海 の豪州領海内にあるバロッサガス田からのガスをバックフィル用として用いる計画を進めている。

一方、バユ・ウンダンガス田の生産減退は東ティモール側にとっても問題である。同油ガス田は現在JPDA内で唯一操業している油ガス田である。今後、同油ガス田の生産が減退していくなか、今後の収入源の確保は重要な課題になるであろう。しかしバックフィルのガス田は豪州領海内のバロッサガス田である。東ティモールは浮体式LNGを計画するWoodside社との間で意見が食い違っているが、他方でWoodside社は別のガス権益取得や開発計画を進めており、また、一方、東ティモール側はグレイターサンライズガス田の開発を早く進めたいものと思われる。

このような状況の下、東ティモール政府とWoodside社、そしてグレイターサンライズガス田の開発の今後の行方が注目されるところである。

表2:豪州における主要なガス開発計画の現状

ガス開発の事業名

当初計画

 

現在の計画

説明

ブラウズ

(オペレーター:

Woodside)

新規LNGの

開発を計画

他の既設LNGのバックフィル用として開発

ノースウェストシェルフ(NWS)LNG(オペレーター:Woodside社)のバックフィルとするべく検討中(NWS LNGのガス田は2020年代初めに生産減退の見込み)。

スカボロー

(オペレーター:

Woodside)

新規LNGの

開発を計画

他の既設LNGの拡張用として開発

プルートLNG(オペレーター: Woodside社)拡張用とするべく検討中。2019年にFID予定。

バロッサ

(オペレーター:

ConocoPhillips)

(新規LNG開発は計画せず)

他の既設LNGのバックフィル用として開発

ダーウィンLNG事業(オペレーター:ConocoPhillips)のバックフィル用とするべく検討中。2019年までにFID予定。(バユ・ウンダンガス田は2023年までに生産減退の見込み)

サンライズ

(オペレーター:

Woodside)

新規LNGの

開発を計画

未定

グレイターサンライズガス田からのガスを豪、東ティモールのどちらにガスを輸送するのか未定。また浮体式LNGはティモール海上国境条約条約の中で選択肢とされていない。

(2)他国との関係

今回、豪州と東ティモールとの国境は両国海岸からの中間線となった。しかしながら東ティモールの隣国であるインドネシアと豪州との間においては海上の国境線は豪州の海岸から伸びた大陸棚の縁に近い場所に引かれている。すなわち東ティモールの場合と比べると豪州側の領海が広くなっているため今後インドネシアからも国境線の見直しの要求が出る可能性があると思われ、一部のメディア報道もそのように報じている。なお署名式後の記者会見において豪州のビショップ外務大臣は記者からの質問に答えて、交渉のプロセスについてはインドネシア側に情報提供を行ってきたと述べている。

さらにビショップ外務大臣や外務貿易省は、今回の条約については国際的なルールに基づいて行われたこと、また、ルールに基づいた対応により紛争の平和的解決を図ることが出来ることの証左だと強調している。今回豪州は、これまで主張してきた大陸棚を基準とした海上国境ではなく、両国海岸からの中間線とすることで合意した。これは国連海洋法条約に準拠したものであるとは言え、豪州が譲歩したようにも感じられるところである。今回の豪州の対応については一部のメディア報道は、南シナ海に進出しようとしている中国を牽制する意味合いもある旨の見方もしているところである。

以上

(この報告は2018年3月20日時点のものです)

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