ページ番号1007538 更新日 平成30年6月4日

政府の対応に左右されるアルゼンチンのシェール開発

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レポートID 1007538
作成日 2018-06-04 00:00:00 +0900
更新日 2018-06-04 14:56:58 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 非在来型探鉱開発
著者 舩木 弥和子
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年度
Vol
No
ページ数 7
抽出データ
地域1 中南米
国1 アルゼンチン
地域2 中南米
国2 チリ
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,アルゼンチン中南米,チリ
2018/06/04 舩木 弥和子
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概要

Vaca Muertaシェールへの投資を促進し、開発を進めようと、連邦政府、Neuquén州政府、石油会社、石油・ガス部門の労働組合が2017年初めに、Neuquén Basinで生産される非在来型ガスの井戸元価格を高く設定、インフラを整備し、投資額を増やすことに合意した。その結果、同シェール開発に取り組む企業が増加し、投資額も増加している。一方で、開発コストを引き下げる努力が続けられ、インフラの整備も検討されるようになった。

その結果、ガスを中心にシェール生産量の増加が見込まれるようになり、需要に応じてではあるが、アルゼンチンはチリ向けの天然ガス輸出を再開できることとなった。YPFも、2022年の同社の炭化水素生産量70万boe/dの半分をシェールプレイ、タイトプレイ由来とすることを計画している。

ところが、11月に、補助金支払いの対象となるガスの量に制限が設けられ、生産される全ての非在来型ガスが補助金を受けられるわけではなくなった。また、Gas Planに基づいて石油会社に支払われるべき補助金が、Macri政権成立後、滞るようになり、2017年には支払れていないことが明らかになった。さらに、これまでほとんど問題とされていなかった先住民の探鉱・開発妨害行為も表面化してきた。エネルギー省は、Vaca Muertaシェール開発により2030年の天然ガス生産量を175~200MMm3/dに、石油生産量を660,000~770,000 b/dに引き上げるとしているが、実現できるのか行方が注目される。

なお、アルゼンチンは、11月に最初の沖合鉱区入札を実施、12月に鉱区付与を行う計画である。Equinor、Anadarko Petroleum、CNOOC、Petronasがこの入札に関心を示していると伝えられている。

 

政府の対応に左右されるアルゼンチンのシェール開発

世界第2位の技術的回収可能量802Tcfを誇るアルゼンチンのシェールガスの開発を促進しようと、アルゼンチン連邦政府は2017年1月に、YPF、Total、Pan American Energy、Chevron、Shell、Dow Chemical等シェール開発に携わる主要な企業、Neuquén州政府、石油・ガス部門の労働組合と、Neuquén Basinで生産され、国内市場に供給される非在来型ガスの井戸元価格を高く設定、インフラを整備し、投資額を増やすことに合意、3月にこれを官報に掲載した(Resolution 46-E/2017)。非在来型ガスの井戸元価格を引き上げる探鉱・開発促進策Gas Planは2013年より導入されていたが、Resolution 46-E/2017では、期限を限って井戸元価格を高く設定、企業に投資を約束させ、政府がインフラ整備等を行うことを定める一方、労働組合からも生産性を向上させることで合意をとりつけたことで、早い時期に投資を促進し、非在来型ガスの開発を確実に推し進めることが企図された。

表1. Resolution 46-E/2017の主な内容

Vaca Muertaシェールでは、YPFとChevronが携わるLoma Campana鉱区が2014年に生産を開始、YPFとDowChemicalが推進するEl Orejano鉱区が2015年に生産を開始していたが、Resolution 46-E/2017により、同シェール開発に取り組む企業が増加し、投資額も増加している。

開発コストが高いことが、Vaca Muertaシェール探鉱・開発の課題のひとつとされていたが、これを引き下げるための努力が続けられ、インフラの整備も検討されるようになった。

Vaca Muertaシェールで掘削長1,500mの水平坑井(frack stage 20)を掘削・仕上げるコストは、2012年には1,600万ドルであったが、YPFは2016年第3四半期にこれを950万ドルに、2017年には目標としていた800万ドル以下まで引き下げることに成功したという。

水圧破砕の際に用いるプロパントは輸入していたが、2016年からはアルゼンチン各地からプロパントに適した砂をYPFのプロパント集積場に搬入、処理、加工して利用できるようになった。価格は輸入したプロパントに比べ40%安く、YPFは他のオペレーターへプロパントを販売することを計画している[1]

さらに、アルゼンチンは資機材輸送コストを引き下げるため、Bahia Blancaの港とVaca Muertaの中心部Neuquén州Aneloを鉄道で結ぶことを計画しており、入札を実施する予定だ[2]

現在Neuquén州で生産される原油の大部分はOldelvalパイプライン網(輸送能力25万b/d)で市場に輸送されているが、今後数年で同パイプライン網の輸送能力はいっぱいになる可能性がある。ShellはNeuquén Basinからのパイプライン建設を評価中で、YPFはLoma Campana鉱区で生産される原油をこのパイプラインを利用して輸送する可能性を検討している。

[1] Petroleum Intelligence Weekly 2017/7/10
[2] Platts Oilgram News 2018/4/19

表2. Resolution 46-E/2017発表後の主なシェール開発計画

図1.Neuquén州主要鉱区図

さらに探鉱・開発を促進しようと、2017年8月には、連邦政府が、8月11日から2019年6月30日までの間、リグ等資機材を国内でタイミングよく調達できず輸入する場合、建造後10年以内の中古資機材については輸入税率を0~14%に削減するとした(Decree 629/2017)。

このような状況から、ガスを中心にシェール生産量の増加が見込まれるようになった。

一方、シェールオイルに関しては、2014年に導入した国際市場価格よりも高い価格で購入する制度を10月1日以降廃止すると、9月末に政府が発表した。

Juan Jose Arangurenエネルギー・鉱業大臣は、Vaca Muertaシェールのガス生産量増加で2018~19年の夏(12~2月)にはガス輸出が可能となることを期待すると語っていたが、2018年初めにはエネルギー・鉱業省が、ExxonMobilとYPFがチリに天然ガスを輸出することを承認した。ExxonMobilはチリ南部Bio Bioのガスパイプライン企業Innergy Soluciones Energeticasに天然ガス30Mm3/d、合計900Mm3を売却。YPFはチリ南部Punta Arenasでメタノールを製造するカナダ企業Methanexに天然ガス1MMm3/d、合計115MMm3を売却する。両社は、チリから同量のガスを輸入することを義務付けられており、チリのガス需要ピーク時にはアルゼンチンからガスを供給、アルゼンチンのガス需要ピーク時にはチリからガスを供給する。このように需要に応じてではあるが、アルゼンチンは天然ガスの輸出を再開できるようになった。

YPFも5ヵ年計画で、300億ドル(うち215 億ドルをYPF、85億ドルをパートナーが負担)を投じ、炭化水素生産量を年率5%ずつ引き上げ、2022年に70万boe/dとするとしているが、特に非在来型の生産量を5年間で150%増加させ、2022年には同社の炭化水素生産量の半分がシェールプレイ、タイトプレイ由来になるようにする計画だ。2017年のYPFの生産量は前年比3.9%減の55.5万boe/d であったが、シェール生産量は前年比16.5%増の38,100boe/dであった。引き続きシェール生産量を増加させることで、生産量全体を増加させる構想で、2018年は、YPF単独で40億ドルを投じるが、そのうちの多くをVaca Muertaシェールに投じ、12油田で100坑以上を掘削する計画であるという。すでに本格的な開発が進んでいるLoma CampanaとEl Orejanoのシェール生産量については2018年中に35%増加させるとしている。

表3.YPFの石油・天然ガス・NGL生産量

2017年11月2日には、Resolution 46-E/2017を修正したResolution 419-E/2017が官報に掲載された。Resolution 46-E/2017では、補助金により井戸元価格が高く設定されるのはパイロット段階のプロジェクトだけであったが、開発段階のプロジェクトについてもこの措置を拡大するとした。その一方で、補助金の対象となるガスの量に制限が設けられ、生産される全ての非在来型ガスが補助金を受けられるわけではなくなった。Gas Planは複雑な制度でこれまでも何度か変更が行われてきたが、2015年12月10日に就任したMauricio Macri大統領がシェール開発に外資を積極的に参入させ投資を促進する政策をとってきたことから、業界関係者にはこの制度変更に驚き、将来のガス価格に不安を抱いている者もあるという。生産が増加しつつあるVacaMuertaシェールのプロジェクトへの投資が減少し、アルゼンチンのガス生産量の伸び悩みにつながるのではないかとみる向きもある一方で、生産コストが下がり、タイトガス、シェールガス井のほとんどは補助金無しでも収支が見合っているとされており、シェール開発がうまく回り始めたことからとられた措置ではないかとの見方もある。

連邦政府は11月17日には、Resolution 447-E/2017を発布し、Gas PlanをAustral Basinにも適用することとした。Austral Basinのタイトガスはまだ探鉱・開発のごく初期段階で、地理的にも遠隔地にあることから開発が難しいとされている。

2017年末には、Gas Planに基づいて石油会社に支払われるべき補助金の支払いが滞っていることが明らかになった。Gas Planは2013年に開始されたインセンティブだが、政府は当初より補助金支払いに苦慮していたという。Macri 大統領就任後に補助金の支払いが遅れはじめ、政府は2017年には一切補助金を支払っていないと報じられている。補助金支払いの滞りは、YPFに7.92億ドル、Pan American Energyに1.63億ドル、Totalに1.6億ドル、Wintershallに1.21億ドル、Pampa Energia に9,090万ドルとなっている[1]。2018年4月に、連邦政府は、滞っている天然ガスに対する補助金16億ドルを2019年1月より支払う計画であると発表した。

2017年以降は、これまでほとんど問題とされていなかった先住民の動向もクローズアップされるようになってきた。Loma la Lata 鉱区の一部は政府が認めた先住民Mapuche 族のテリトリーである。Mapuche族Kaxipayinコミュニティーは2017年初よりLoma la Lata鉱区の坑井14坑へのアクセスを遮断していたが、9月に金銭の支払いを求めて油井を閉鎖した。Kaxipayinコミュニティーのリーダーは掘削に反対しているわけではなく、汚染を除去してほしいのだと主張していたが、YPFは汚染について否定している[2]。2018年3月には探鉱を再開することでYPFとKaxipayinコミュニティーの間で合意が成立した。しかし、Kaxipayinコミュニティーは再びYPFの探鉱を妨害し、YPFはLoma La Lata鉱区で計画している探鉱井21坑の掘削のうち2坑しか掘削できていない。Kaxipayinコミュニティーは、裁判所の命令を拒否しLoma La Lata鉱区の一部のエリアの道路封鎖も行っている。YPFはKaxipayin コミュニティーに2014年の2倍以上にあたる5,500万ペソ(300万ドル)を2016年に支払い、2018年には2,800万ペソ(110万ドル)支払った[3]。Chevron、ExxonMobil、Shell等外資がVacaMuertaシェールに参入する際の検討要素の一つとして、先住民との係争が生じていなかったことがあったとみられており、今後同様の動きが広がることが懸念されている。

非在来型ガスに補助金を拠出するResolution 46-E/2017等の探鉱・開発促進策がとられ、開発コストが引き下げられ、インフラの整備にも手が付けられるようになったものの、補助金の対象となるガスの量に制限が加えられたり、補助金の支払いが滞ったり、先住民が探鉱・開発を阻止したりと、Vaca Muertaシェール開発は引き続き課題を抱えている。エネルギー・鉱業省は、Vaca Muertaシェール開発によりアルゼンチンの天然ガス生産量は2017年の122.2MMm3/d から2030年には175~200MMm3/dに、石油生産量は479,310 b/d から660,000~770,000 b/dに増加するとしている[4]が、その行方が注目される。

なお、アルゼンチンは、Austral Marina Basin(5,000km2)、Western Malvinas Basin(90,000km2)、North Argentine Platform (130,000km2)を対象に11月に同国初の沖合鉱区入札を実施、12月に鉱区付与を行う計画である。アルゼンチン沖合で生産が行われているのはTierra del Fuego州沖合のみで、他の海域ではほとんど探鉱・開発が進んでいない。政府は、今回の沖合鉱区を対象とする入札を実施するため、Spectrum、Searcher Seismic、YPFに大西洋岸沖合で地震探鉱を行わせてきた。Equinor(Statoil)、Anadarko Petroleum、CNOOC、Petronasがこの入札に関心を示しているという。アルゼンチンは、2019年に2回目の沖合鉱区入札を実施することも計画している。

[1] BNamericas2018/4/3
[2] LatAmOil2017/9/12
[3] Platts Oilgram News 2018/5/30
[4] Platts Oilgram News 2018/2/5

以上

(この報告は2018年6月4日時点のものです)

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