ページ番号1007556 更新日 平成30年6月22日
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1.政治・経済情勢
(1)国内
政治
・5月7日、クレムリン大宮殿で大統領就任式が行われ、プーチン氏が第4期政権をスタートした。任期は2024年までの6年間となる。同日、戦略的国家目標を定める大統領令「2024年までのロシア連邦発展の国家目標と戦略的課題」(5月指令)を発布した。
大統領令概要
国家目標:①定常的な人口増加、②平均寿命を78歳まで(2030年までには80歳)に伸長させる、③国民の実質所得増加、インフレ率を上回る年金給付額の増大の実現、④貧困率の半減、⑤毎年500万世帯以上の住宅環境の改善、⑥ロシア連邦の技術発展の促進、技術革新を行う組織の数を組織総数の50%まで増大させる、⑦経済および社会分野へのデジタル技術導入の加速化、⑧世界第5位の経済大国入り、インフレ率を4%以内にとどめる等マクロ経済の安定を維持しつつ、世界平均を上回るテンポで経済を成長させる、⑨製造業および農業等の基幹産業で最新技術と高度技能人材によって支えられる生産性の高い輸出志向セクターの創出
連邦政府の課題:①2018年10月1日までに2024年までのロシア連邦政府活動の主要方針および2024年までの社会・経済発展予測を承認する、②国家プロジェクト(人口動態、保険、教育、住宅・都市環境、エコロジー、安全で高品質な自動車道路、労働生産性・雇用支援、科学、デジタル経済、文化、中小ビジネス・個人企業イニシアティブの支援、国際協力・輸出)を策定し、2018年10月1日までにロシア連邦大統領付属戦略的発展および優先プロジェクト会議に提出し検討すること。 (Kremlin.ru,2018/05/07)
・5月7日、プーチン大統領はドミトリーメドヴェージェフ氏を新政府の首相に指名。翌8日、連邦議会下院において賛成374票、反対56票で承認された。(Kremlin.ru,Vedomosti,2018/05/07-8)
・5月18日、メドヴェージェフ首相はプーチン大統領に閣僚候補を提示。同日、大統領が承認し、新内閣が発足した。省庁の主な再編は、教育科学省を「教育省」と「科学・高等教育省」に分割、通信・マスコミ省を「デジタル発展・通信・マスコミ省」に改編、通商代表部が経済発展省から産業貿易省に移管されたことである。新内閣は全33名から成る(副首相10名、連邦大臣21名)。閣僚の平均年齢は51歳で、うち女性は4名。(Kremlin.ru,2018/05/18)
・米国の追加経済制裁に対する対抗措置として、ロシア連邦議会下院に対し4月13日に「対抗制裁法案」、5月14日に「対露制裁支援に対する刑事責任法案」が提出された。(Kommersant,RBC daily,Interfax, 2018/05/14-15)
法案概要
1)対抗制裁法案「米国及びその他の外国の非友好的行為への対抗措置について」
新法を制定し、米国や他の外国からロシアに対して非友好的な行為が行われた場合、大統領の決定に基づいて、非友好国、非友好国の市民、非友好国で設立された法人、これらにより直接又は間接的に支配されている関連会社(以下「制裁対象者」)に対し、下記の活動を禁止又は制限することができる内容。
①国際協力の終了や一時停止、②制裁対象者からロシアへの製品・資材輸入。ただし、生命に関するものでロシアで類似品が生産されていないもの、私的目的で輸入するものに対しては適用されない、③ロシアから制裁対象者への製品・資材の輸出、④制裁対象者による業務やサービス提供、⑤制裁対象者によるロシア連邦政府及び地方自治体の資産民営化への参画やロシア側の代理業務の履行、及び⑥その他の大統領が必要と認める対抗措置を課すことができる。
2)「刑事責任法案」
ロシア連邦刑法の改正を行い、諸外国が発動した対露制裁をロシアで履行する又は新たな制裁導入の促進をした者に対して刑事罰を科すことができる内容。具体的には、外国による対露制裁に基づいて、ロシア企業等の通常の事業活動に制約を課した場合は、最大4年間の収入に相当する金額の罰金(上限60万ルーブル)又は最長4年間の懲役、ロシア企業等に対し新たな制裁の導入を促進した場合は、最大3年間の収入に相当する金額の罰金(上限50万ルーブル)又は最長3年間の懲役が科される可能性がある。(http://duma.gov.ru/news/26936/)
・対抗制裁法案「米国及びその他の外国の非友好的行為への対抗措置について」は、下院での5月15日の第一読会、5月17日の第二読会、5月22日の最終(第三)読会を経て、5月30日に上院が可決。6月4日、プーチン大統領が署名し、即日施行された。刑事責任法案については、5月15日に第一読会が行われたが、産業企業家同盟らからの法案の内容に対する強い反発を受け、17日に予定されていた第二読会は延期された。5月23日、下院の全会派、実業界及び学術会の代表が集まり、同案の審議を行った。実業界からは、法案の対象行為を絞り、行政責任等にとどめるべきとの意見や制裁強化を促進したり、公に奨励するような場合のみ刑事責任を問うべきとの意見が出た。第二読会の開催予定日は未定。(Interfax,Kommersant,Vedomosti,他)
その他
・5月24日~26日、サンクトペテルブルグでペテルブルグ国際経済フォーラムが開幕し、143カ国から過去最大の17,000名以上が参加した。国別では、米国が500名と最多で、日本、フランスがそれに続いた。全体会合にはプーチン大統領の他、安倍首相、仏のマクロン大統領および中国の王岐山副主席、ラガルドIMF専務理事が参加。期間中には、過去最多の593件、総額2兆6,250億ルーブルの合意文書が締結された。日露間では、安倍首相とプーチン大統領の立会の下、11件の合意文書が締結された。政府間は、8項目の経済協力プランの具体化のための作業計画等4件、民間及び公的機関は、郵便事業包括契約(日本郵便ロシア郵便)やメタノールプラント建設事業(丸紅・ロシア直接投資基金)等の合計7件。(https://roscongress.org/, 2018/05/30)
(2)対外関係
1.日本
・5月26日、安倍首相はプーチン大統領と21回目となる日露首脳会談を実施。会談後の共同記者会見において、プーチン大統領は、協議は実務的且つ建設的なものであり、露日関係の現状及び見通しについて詳細に議論し、一連の国際問題についても意見交換を行ったと述べた。
共同経済活動については、水産養殖、温室栽培農場、観光、風力発電、廃棄物処理の5分野の事業実現に向けて対話が進んでいることに満足の意を表するとともに、平和条約締結に向けて、両国の国益に適い、且つ両国民が受け入れられる解決策の模索を忍耐強く続けることが重要であると述べた。
また、両首脳は、26日夜、ボリショイ劇場で行われた「ロシアにおける日本年」「日本におけるロシア年」の開会式に出席した。(Kremlin.ru, 2018/05/26)
2.石油ガス産業情勢
(1)原油・石油製品輸出税
・2018年5月、原油輸出税はUSD 16.2/バレルに引き上げ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
・5月の石油製品輸出税はUSD 35.5/トン、ガソリンについてはUSD 65.1/トンに設定された。
(2)原油生産・輸出量
・5月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,637.7万トン(約3億4,046万バレル、平均日量1,096.6万バレル)で、前年同月比0.1%増。1~5月は2億2,581.8万トン(約16億5,775万バレル、平均日量は1,096.2万バレル)で、前年同期比0.7%減。(Interfax, 2018/06/04)
・5月、原油輸出量は2,148.6万トン(約1億5,773万バレル)。1~5月は1億454.2万トン(約7億6,745万バレル)。(エネルギー省HP)
(3)天然ガス生産・輸出量
・5月、天然ガス生産量は581.2億㎥(約2.05TCF)で、前年同月比6.2%増。1~5月は3,109.8億㎥(約11.0TCF)で、前年同期比6.8%増。(Interfax,2018/06/04)
・Gazpromの天然ガス生産量は5月400億㎥(約1.41TCF)で、前年同月比11.0%増。1~5月は2,173億㎥(約7.68TCF)で、前年同期比9.5%増。Gazpromの天然ガス輸出量は、前年同期比4%増の157億㎥(約0.55TCF)。(Interfax,2018/06/04)
(4)協調減産
・5月25日、ロシアのノヴァクエネルギー相とサウジアラビアのファリハエネルギー相は、6月に開催予定のOPEC定期会合で、協調減産の緩和に関する決定がなされる可能性があると述べた。
翌26日、ノヴァク・エネルギー相は、OPEC+の既存合意を調整するための選択肢として、生産量を2016年10月の水準に戻すことが一案としてあがっていると記者団に語った。5月24日付Vedmosti紙によれば、協調減産に参加するOPEC加盟国及び非加盟国による減産量は、2016年に合意した日量180万バレルを上回っており、減産合意の履行率は150%に達している。関係者によると、生産量を日量約100万バレル引き上げると順守率は100%に低下するとのこと。プーチン大統領は、米国が5月にイラン核合意からの離脱を発表し、同国に対する経済制裁を再開する以前よりOPEC +の将来について、サウジアラビアと協議を行っていたと説明した。ロシアは、油価バレル60ドルで満足であり、油価のこれ以上の高騰には関心がないとした。(Prime, 2018/05/26)
3.ロシア石油ガス会社の主な動き
(1)Rosneft
・5月4日、スイスのGlencoreは、Rosneftの株式14.16%を中国華信能源有限公司(CEFC)に売却する取引が不成立となり、当該株式をカタール投資庁(QIA)が買い取ることになったと公表した。これに伴い、Rosneftの株式はQIAが18.93%、Glencoreが0.57%を保有することになる。2016年のRosneft民営化の際に、QIAとGlencoreは合計で株式19.5%取得した。そのスキームは、QIAが4.77%、 Glencoreが0.53%をそれぞれ直接購入し、さらに14.16%をロシアの複数の銀行から借り入れた資金(22億ユーロ)とイタリアのIntesa Sanpaoloから借り入れた資金(52億ユーロ)を元手にQIAとGlencoreが設立した合弁企業QHG Oilが取得するというものであった。今般、QHG Oilを解散させ、Rosneft株の14.16%はQIAの子会社に移譲する。QIAは対価としてGlencoreに37億ユーロを支払う予定。その結果、QIAは50%+1株のロシア連邦(ロシア連邦国家資産庁がRosneftegaz経由で保有)、英国BPの19.75%に次ぐRosneftの第3位の株主となる。
なお、2017年11月にRosneftとCEFC間で締結した原油供給契約(5年間で約6,080万トン)は、引き続き有効であるとされている。(Interfax,Kommersant, 2018/05/04-5)
・5月1日、Rosneftは2020年までに20億ドル上限として自社株買いの計画を設け、それに伴い2018年の投資の規模を3月の時点で表明していた9,220億ルーブルから8,000億ルーブルに縮小すると発表した。当該投資額の約80%が上流部門に、残りが製油部門と販売部門に投下されることになっている。5月15日付Kommersant紙によれば、Rosneftは、フョードロフ第一副社長が税制改革の輪郭が明らかになるまで一連のプロジェクトの実現を先送りすると述べた。同氏は先送りの対象となるプロジェクトについて言及していないが、アナリストらは、これまで一貫して同社の投資圧縮措置の対象となってきた製油部門が対象になるのではないかとしている。Rosneftは、輸出関税の撤廃及び鉱物資源抽出税率の引上げが想定されている税制改革に対して懸念を示している。輸出関税の廃止は東シベリアの鉱床に適用されている輸出関税上の特典の廃止を意味し、また撤廃が原油の国内価格の上昇に繋がり、製油所の経済活動に否定的な影響を及ぼす可能性がある。
Rosneftは、ペテルブルグ国際経済フォーラム期間中、ガーナ国営石油会社及びモンゴル系輸入業者12社と供給契約を締結した。モンゴルとの契約総額は21億ドルで、Rosneftはガソリンとディーゼル燃料を供給する。ガーナには今後12年にわたって年間170万トンのLNG供給を行う。また、ガーナ国営石油会社とは石油・ガス田の共同調査、及び石油・石油製品供給に関する枠組み協定を締結した。また、Rosneftはイラク領クルド人自治区にガスパイプラインを建設する協定を締結。さらに、ナイジェリアのOranto Petroleum Limitedとは、アフリカでの石油・ガスプロジェクトの実施における潜在的協力に関する覚書を締結した。同社の既存のポートフォリオ、新規資産の取得、精製、取引、流通、及びガスのマネタイゼーション等に関する検討を行う意向である。また、Fleet Energy and Fleetliner Energy S.A.と協力枠組み協定を締結。エジプト向けのガス供給に関するJV設立を検討する。(Rosneft Press release, Prime, 2018/05/25)
(2)Gazprom
・5月24日、欧州委員会は、Gazpromが中欧東欧で欧州連合の競争法に違反した疑いがあるとして、2012年より行っていた調査を終結した。同委員会は、ポーランドなど5カ国に対し、Gazpromが不当な高価格でガスを販売した他、ポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、ブルガリア、ラトビア、エニトニア、リトアニアの8カ国でEU競争法に触れる取引をしたとの判断を示していた。今回の和解により、Gazpromは罰金を免れたが、競争価格で販売すること、顧客企業のガス販売を制約しないといった義務が課された。違反した場合、欧州委員会は、Gazpromに対し同社の世界での売上高の最大10%を罰金として科す可能性があるとしている。(Prime, Reuters, 2018/05/24)
・5月24日、ミレル会長はペテルブルク国際経済フォーラムのパネルディスカッションで、中国向けガス供給量は2035年までに800億~1,100億m3になるであろうと述べた。中国のガス消費量は現在の2,370億m3から2020年までに3,600億m3に増加する見込みであり、エネルギー資源全体に占めるガスの割合も現在の7%から10%に上がるであろうと語った。(Interfax, 2018/05/24)
(3)Lukoil
・5月25日、ペテルブルグ国際経済フォーラムの枠内で、LukoilとGazpromは、ネネツ自治管区のVaneyvisskoye鉱床及びLayavozhskoye鉱床の共同開発を目的とする合弁事業設立に関する協定を締結した。アレクペロフ社長によれば、両鉱床の炭化水素資源の埋蔵量は合計で約3,000億㎥に達し、投資額は30億ドル以上になるとのこと。(Lukoil Press Release, Vedmosti他、2018/05/25)
・5月29日付ロイター紙によると、Lukoilは、イランでの石油開発計画を当面進めないことを決定したと同社の関係者が明らかにした。同社はこれまでイランとAbe Timur と Mansuri油田の開発事業について、交渉を進めていた。本年5月、米国は2015年のイラン核合意からの離脱を表明しており、同国に新たな制裁を課す計画である。Lukoilの関係者は28日の電話会議で、「最近の動向を考慮するとイランでのわれわれの計画の行方について言及するのは時期尚早だ。基本的には当面、全てを保留することになる」と説明。
(4)Gazprom Neft
・5月24日、ペテルブルグ国際経済フォーラムの枠内で、Gazprom Neftは、アブダビのMubadala Petroleum と西シベリアの油田開発について合意した。Gazprom NeftのPress releaseによれば、子会社の Gazpromneft-Vostokの権益49%をロシア直接投資基金 (RDIF)に5%、Mubadala Petroleumに44%売却する。売却額は3億2,000万ドルとされる。Gazpromneft-Vostokは、西シベリアのトムスクオムスク地域の油田開発に従事しており、同社が保有する鉱床(複)の炭化水素資源の確認及び推定埋蔵量は約4,000万トン(SPE-PRMS基準で約3億バレル)。2017年の石油生産量は160万トン(日量約33,000バレル)。
・5月24日、ペテルブルグ国際経済フォーラムの枠内で、Gazprom Neftと三井物産は、サハリン大陸棚浅海部のAyashisky鉱区の共同開発に関するMOUを締結した。ロシア国内で幅広い海洋資産を保有するGazprom Neftと三井物産は、今後の探鉱・生産プロジェクトの分野でスキルとノウハウを共有する可能性を検討することで合意。Ayashisky鉱区はサハリン島大陸棚北東部のオホーツク海に位置し、55キロ沖にある。当該鉱区は、Sakhalin 3の一部であり、これまで2,150km2以上にわたって三次元地震探鉱が行われている。最初の探査井の水深は62メートル。Gazprom Neftは国内で6つの海上ライセンスを所有しているが、それらはすべて親会社のGazpromから移譲されたものである(北極圏のDolinskoye鉱区、Kheisovskoye鉱区、Severo-Zapadnoye鉱区、Severo-Vrangelevskoye鉱区、およびサハリン近海のAyashisky鉱区)。(Gazprom Neft Press release, Interfax, 2018/05/24)
4.東シベリア・極東・サハリン情勢
(1)極東
・5月18日、ペトロパブロフスクカムチャツキーにて、NOVATEKの取締役会第一副会長のフリードマン氏は、カムチャッカ半島の南東海岸にあるBechevinskaya湾にLNGの積替えターミナルを建設する意向を明らかにした。「ターミナルの設計が始まったところであり、波浪、風、津波によって引き起こされる事象を検討し、対策を講じる必要がある」と同氏は語った。(Interfax, 2018/05/18)
・5月28日、Gazpromは、ウラジオストクLNGプラント建設について、2019年7月までに投資評価を下す予定であることを明らかにした。同社は、7,320万ルーブルでFeasibility Studyを発注。4月に調査を開始し、2019年7月までに完了する予定である。Gazpromは当初、年間生産能力1,000万トン規模のLNGプラントの建設を計画していたが、2016年にプロジェクトを延期。2017年6月、ミレル会長は、プロジェクトを再開し、中規模のプラントを建設すると発言。 同11月に、Gazpromは、プラントの年間生産量は150万トンになると発表していた。(Prime,2018/05/28)
(2)サハリン
・5月14日付Interfax紙によれば、Gazpromは6月15日にYuzhno-Kirinskoye鉱床の掘削を開始する意向であるとのこと。同社のマルケロフ副社長は、「Yuzhno-Kirinskoye鉱床の掘削に半潜水型リグPolar Star号とNorthern Lights号を使用し、2つのプラットフォームを同時に稼働させることにより短期間で掘削を終わらせる」と述べた。同鉱床では、4坑の評価井を掘削予定。
5.新規LNG・P/L事業
(1)Nord Stream 2
・5月9日、ポーランドの競争消費者保護局(UOKiK)は、Nord Stream 2プロジェクトに出資を行ったGazprom及び仏Engie、独Uniper、独Wintershall、墺OMV、英蘭Shellの6社を同国の独占禁止法に抵触した疑いで提訴する準備を開始したことを発表した。Gazpromと欧州5社は当初、Gazpromが51%、Engie9%、その他4社が各10%を出資する合弁事業として新パイプラインを建設運営する計画であり、ポーランドで合弁会社の企業登録を申請したが、ポーランド当局は2016年、競争が阻害され独占につながるという理由で却下した。Gazpromがすでにポーランド国内のガス会社として寡占状態にあり、この計画が進めば同国の顧客に対する支配力をさらに増すことになると判断したためである。6社は、合弁以外の協力形態を模索した結果、プロジェクト会社「Nord Stream 2 AG」はGazpromの完全出資会社とし、提携5社と資金協定契約を締結し、Gazpromが費用の50%、欧州5社がそれぞれ10%を負担する形式を取っている。UOKiKは、彼らが当局の承認を受けず、合弁会社設立の合意形成がない事実を巧みに回避しようとしたことは明らかであり、Gazpromと融資を決めた5社を提訴することにしたと述べた。(Prime, 2018/05/9-10)
・5月18日、プーチン大統領はロシア南部のソチで行われたメルケル独首相と会談後の記者会見において、Nord Stream 2 ガスP/Lプロジェクトは現在の参加者のみならず、他国にも門戸を開いていると語った。プーチン氏は、ロシアは当該プロジェクトを完全にビジネスプロジェクトと位置付けており、政治化しないように求めた。また、その上で、当該P/Lの稼働によりウクライナ経由での欧州向けロシア産ガスのトランジット輸送が終結するわけではなく、経済性があれば継続されると述べた。一方、メルケル首相は、ドイツは、Nord Stream 2をビジネスプロジェクトと位置付けているものの、輸送面でウクライナが果たす役割の「戦略的重要性」など、その他の意味合いもあるとし、この関連でウクライナにどのような保証を与えることができるのか協議する必要があると述べた。(RIA Novosti, 2018/05/18)
(2)Turk Stream ガスP/L
・ ノヴァクエネルギー相はテレビ局ロシア24のインタビューで、ブルガリア領域を通ってTurk Stream P/Lを延伸する将来計画に対し、EU規制との整合性、欧州委員会およびブルガリア政府からの保証といった優先事項から順に進めていきたいと考えていると語った。「ブルガリアはトランジット国になることに再び関心を示している。また、同国領内に天然ガスのハブを創ることを望んでいる。ロシアにとっては、ガスのバイヤーによって経済的見込みが保証されること、欧州の規制を遵守すること、欧州委員会およびブルガリア政府からの保証を得ることが重要だ」と述べた。(Interfax, 2018/5/22)
・5月26日、Gazpromとトルコ政府は、Turk Stream ガスP/Lの欧州向けトランジット(第2系列の地上)部分の建設に関するプロトコールに調印した。地上部分の建設はGazpromとBotas(トルコ国営ガス輸送会社) の合弁会社TurkAkim Gaz Tasima A.S.(双方が各50%を保有)が行う。Gazpromは、第2系列の終点がブルガリア国境、或いはギリシャ国境になるかについて明らかにしていないが、ロシアおよびトルコの間では仮合意があるとされ、どちらを終点にするかは、ブルガリアおよびギリシャ政府の意向や消費市場によって決まると見られている(現行のP/Lによりトルコからブルガリアへの逆送供給や建設中の他のP/Lを利用し、南欧東欧市場への供給も可能である)。また、Gazpromは、2015年10月からBotasと係争中であったガス価格に関する和解についても公表した。トルコの報道によると、2015~2016年にトルコに供給されたガス価格の見直しを行い、10.25%値下げした結果、Gazpromが10億ドルを返却するとのこと。この和解と第2系列の建設合意が関係しているかについては、双方ともコメントを拒否している。(Vedomosti, 2018/0526)
・5月30日、プーチン大統領はクレムリンでブルガリアのボリソフ首相と会談を行った。会談後の記者会見においてボリソフ首相は、Turk Stream ガスP/Lの延伸について協議したことを明らかにし、プーチン大統領がトルコのエルドアン大統領と前日に電話協議し、ブルガリア向けTurk Stream ガスP/Lの延伸に異論はないと話したことについて言及した。同氏は、South Streamの二の舞とならないために、我々は、Gazpromが他の国と契約してガスを再配給し、販売し、地域の他の国に輸送する方法を見つけることを確信しているとし、今後Gazpromとガスの購入やトランジット輸送について協議する予定であると述べた。(Kremlin.ru, 2018/05/30)
(3)Arctic LNG 2
・NOVATEKのGyetay取締役副会長は、Arctic LNG 2プロジェクトに関して、ロシア政府に資金援助を申請しない方針であることを明らかにした。Flame Gas Conferenceの後に記者団に対し語ったもの。「われわれは現在資金援助を必要としていない。資金援助を受ければ、米国から制裁を課されるリスクがある。それならば、自力でプロジェクトを進めた方がいい」と述べた。同社の最初のLNGプロジェクトであるYamal LNGは国から大きな税制支援を受けた。プラントの資源基盤であるYuzhno-Tambeyskoyeガス田は生産開始から12年間に亘ってガスの資源抽出税を免除されている他、2015年には政府がロシア国民福祉基金から1,500億ルーブルを投じてYamal LNGの社債を購入することを承認。また、サベッタの貨物港建設の一部には国費があてがわれている。ミヘルソン会長は、Arctic LNG 2に関してはYamal LNGのときのような恩恵、特に国民福祉基金からの資金援助を受けるような可能性は否定したものの、他の形の援助であれば受ける可能性もあるとした。またArctic LNG 2のプラントモジュール建設予定地のムルマンスク造船所が「戦略的投資プロジェクト」に採用されたことも明かした。これは約63億ルーブルの税制優遇措置を受けられる可能性があることを意味している。(Tass, 2018/05/14)
・5月25日、プーチン露大統領とマクロン仏大統領の立会の下、NOVATEKとフランスのTotalは、北極圏ギダン半島のArctic LNG 2プロジェクトへの出資に関する法的拘束力のある合意文書を締結した。ミヘリソン会長によれば、売買取引合意書では、プロジェクトの総額は255億ドルと見積もられているが、これは投資額ではなく、プロジェクトの価値を算出したものとのこと(プロジェクトの投資総額は200億ドルとの評価)。10%の権益を取得するTotalは25億5,000万ドルを支払うことになる。
事業会社の持ち株比率は、NOVATEK60%、Total10%、その他30%になるが、NOVATEKが権益比率を60%未満に下げる場合は、Totalは比率を最大で15%まで引き上げることが可能となっている。NOVATEKとTotalはまた、NOVATEKが今後新しいLNGプロジェクトを立ち上げた場合、Totalがそのプロジェクトの権益の10~15%を買収する可能性についても合意した。
Arctic LNG 2プロジェクトはギダン半島にあるガス埋蔵量が1兆6,000億㎥、コンデンセート埋蔵量は6,500万トンと評価されるUtrenneye鉱床を資源基盤とするLNGプラント建設プロジェクトである。プラントはそれぞれ年間660万トンの生産能力を持つ3つのトレインから成り、最初のトレインは2023年末に稼働を開始予定である。プロジェクトのFEEDはまだ完了していないが、NOVATEKはヤマルLNG(生産能力1,650万トンで270億ドルの投資)よりも約30%投資額を縮小することを目指しており、プロジェクト総額は約200億ドルになると見込まれている。コスト削減は、ムルマンスクの造船所で建造された後にオビ湾の設置場所まで曳航される重力着底型構造のプラットフォーム上にプラントのラインを設置することによって行う計画。Totalは、投資決定が正式に採択される前に参入を決断したが、後から参入する外資より有利な条件が与えられているとのこと。(Kommersant, 2018/05/25)
以上
(この報告は2018年6月20日時点のものです)