ページ番号1007587 更新日 平成30年7月30日
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1.はじめに
JOGMECは、水圧破砕技術がシェールガス・オイル開発の効率化に向けた重要な技術のひとつと考えています。開発現場では、効率的な開発のために水圧破砕の最適化(仕上げ間隔、圧入量等)が求められていますが、地下深く(例:数千メートル)で形成された水圧破砕亀裂を直接確認することができないため、マイクロサイスミック(水圧破砕時の微小地震の観測)やDAS※(Distributed Acousitic Sensing)等のモニタリング技術を用いて、生産に寄与する領域(SRV: Stimulated Reservoir Volume)等を間接的に推定しています。しかし、現在の最先端モニタリング技術を駆使しても、亀裂進展領域を直接観察できないため、その評価には大きな不確実性があると考えられます。そこで、JOGMECは、小規模ではありますが、シェール岩石試料と熱硬化性樹脂を用いた室内水圧破砕実験を実施し、亀裂を直接可視化するなどして、亀裂進展メカニズムの解明を試みてきております。
※DAS技術については、「石油開発最新事情:北米シェールガス・オイル開発における最先端モニタリング技術」をご参照。
2.室内水圧破砕実験
平成25年度より、岩石試料と熱硬化性樹脂を使った室内実験(一軸載荷条件)を行い、亀裂の可視化および破砕に伴い発生する微小な弾性波(Acoustic Emission: AE)を使った亀裂のモニタリングを実施しています(図1)。具体的には、直接観察した亀裂とAEの震源位置の比較および検討を行い、水圧破砕による亀裂進展やモーメント・テンソルインバージョンによる破砕メカニズムの解明を試みてきました。
平成29年度までに、複数の岩石(黒髪島花崗岩、井内頁岩、イーグルフォード頁岩等)で実験を実施してきており、亀裂進展が岩石性状の違いに起因している可能性を示唆する結果を得ております。今後の新たな取り組みとして、三軸載荷条件に拡張させることも検討しています。
しかし、室内実験とシェール開発現場の間には、水圧破砕の規模に大きなギャップがあります(室内実験:縦6.5センチメートル×横6.5センチメートル×高さ13.0センチメートルの岩石試料を用いて数センチメートルの亀裂を形成、開発現場:2~3キロメートルの水平坑井に100メートル以上の亀裂を形成)。そのギャップを埋めるために、JOGMECでは、数メートル規模の露頭等での水圧破砕実験を計画しています。米国の一部の研究機関では、観測井から圧入されたプロパントを目視で確認する実験を行いましたが、JOGMECが計画している「亀裂可視化とAE測定を組み合わせた水圧破砕実験」は世界で初めての試みとなります。
3.露頭等での水圧破砕可視化実験(本実験)に向けた予備実験概要
JOGMECでは、上記2.でご紹介した水圧破砕可視化の本実験の可能性を検討するため、2018年6月から7月にかけて秋田県にて水圧破砕の予備実験を実施しましたので、その概要をご紹介します。まず、将来行う予定の数メートル規模の実験では、図2のようなイメージの坑井配置を想定しており、水圧破砕孔を中心に、それを取り囲むようにAE観測孔を設置し、AEモニタリングを行うことを予定しています。
本実験に向けた事前検討においては、いくつかの懸念が挙げられておりました。具体的には、深度が浅いことに起因する既存亀裂等により水圧破砕が成功しない可能性、AEの減衰が大きいためにAE観測孔でAEを観測できない等です。そのため、今年度の予備実験では、図3のように水圧破砕孔(40メートル)とAE観測孔(20メートル)の2孔を掘削し、水圧で岩石を破砕できること、AEを観測できることの2つを確認するために、ボーリングによるコアリングとAE観測を伴う水圧破砕実験を行いました。
今回予備実験を実施した場所は、我が国における代表的なシェール層である女川層の模式地とされる秋田県男鹿半島鵜ノ崎近辺の県有地です。今回得られたコア(岩石試料)の分析と詳細な地質評価は女川層に深い知見がある秋田大学に委託する予定です。本コアを用いて研究することで、国内石油開発会社が取り組む評価作業への貢献が期待でき、また学術的知見が深まるものと考えています。
4.まとめ、今後の展望
予備実験にて、深度の浅い硬い岩盤区間で水圧破砕を実施した結果、亀裂が形成され、それに伴うAEを当初の想定通り観測することができました。現在、得られたデータを解析中であり、その結果を基に今後の本実験に向けての評価を行う予定です。なお、予備実験の詳細に関しては、TRCウィークでご報告する予定ですので、ご参加をお待ちしております。今後もJOGMECは、水圧破砕亀裂の進展メカニズムの理解促進に向けた研究を進めていく予定です。
最後に、今回の予備実験を実施するに際し、秋田県をはじめとする関係各所の皆様に、多大なご協力いただき、無事に実験を完了することができました。この場をお借りして、御礼申し上げます。ありがとうございました。
以上
(この報告は2018年7月24日時点のものです)