ページ番号1007602 更新日 平成30年9月14日

サブサハラアフリカ: 新興LNG輸出国の先駆け、カメルーン ―改造型FLNGのもたらす意義―

レポート属性
レポートID 1007602
作成日 2018-09-14 00:00:00 +0900
更新日 2018-09-14 10:51:49 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 天然ガス・LNG基礎情報
著者 古川 ゆかり
著者直接入力
年度 2018
Vol
No
ページ数 13
抽出データ
地域1 アフリカ
国1 カメルーン
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アフリカ,カメルーン
2018/09/14 古川 ゆかり
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概要

  1. カメルーンは、サブサハラアフリカで4番目にLNGプロジェクトが操業を開始した国であり、生産開始に至ったFLNGプロジェクトとしては、サブサハラで初、世界でもPetronas「PFLNG1(Satu)」(マレーシア)に続き2番目である。また、改造型FLNG船によるLNG輸出プロジェクトとしては世界初となる。
  2. カメルーン政府による上流事業の契約条件緩和策やLNGタンカーの運航会社である「Golar LNG」社のコンセプト(中古LNGタンカーをFLNG船に改造)が後押しとなり、2018年3月生産開始、5月に出荷に至った。従来型のFLNGと比較して、短納期、低コスト化が特徴的である。
  3. カメルーンFLNGに続き、サブサハラでは複数のFLNGプロジェクトが進行中である。また、Golar社の「改造型」FLNGプロジェクトはモーリタニア/セネガル等においても計画されている。さらに、今後種々の課題を克服できるのであれば、サブサハラ、特に気象・海象条件が穏やかである西アフリカの小規模産ガス国にFLNGプロジェクトのビジネスチャンスが訪れる可能性もある。

(AfrOil、IEA、各社HP他)

1.はじめに

エネルギー需要の増加や大気汚染・気候変動対策等の要因から、LNGの需要は近年増加傾向にある。LNG輸入者による国際機関International Group of Liquefied Natural Gas Importers(GIIGNL)が2018年4月に発表した「2017年の世界LNG市場調査報告書(The LNG Industry in 2017)」によると、2017年の世界のLNG取引量は前年比9.9%増の2億8,981万トンで、2010年以来最も高い増加率を記録し、LNG輸入国は合計で40ヵ国となった(2016年は39ヵ国)。

現在、2018年3月に生産を開始したカメルーンの他、サブサハラアフリカ地域(サハラ砂漠以南のアフリカ)では、ナイジェリア、赤道ギニア、アンゴラでLNG生産を行っている(文末表3参照)。モザンビークにも2020年台に生産開始を予定しているプロジェクトが3件ある。

同地域において初めてLNG生産を開始し、現在も牽引しているのはナイジェリアである。Nigeria LNG(NLNG)プロジェクトは、同国で唯一稼働するLNG施設で、2007年に第6液化トレインが操業を開始し、第1~6液化トレイン(生産能力合計2,200万トン/年)が稼働中である。現在、第7液化トレインの増設を検討中で、ナイジェリア国営石油会社NNPCらは2018年第4四半期の最終投資決定(FID)、2024年までの完工を目指している(複数メディアによる)。NNPCによると、同トレインの完成によりNLNGのLNG生産能力は約3,000万トン/年に達する。なお、GIIGNL報告書(前述)によると、ナイジェリアの2017年におけるLNG輸出量は2,034万トン/年で、カタール、豪州、マレーシアに次いで現在世界第4位の輸出国となっている。

また、サブサハラ地域では、複数のFLNGプロジェクトが進行中である。本稿では、先行しているカメルーンのFLNGプロジェクトに焦点を当て、その成功要因について述べる。

2.カメルーンの概況及び事業環境

(1)カメルーンの概況

在日カメルーン大使館ウェブサイト及び駐カメルーン大使 岡村 邦夫「カメルーンの英語圏問題とその歴史的経緯」(2017年10月)によると、同国は、アフリカ諸国、特に中部アフリカ地域の中では、長期政権で一定の経済成長を果たした国として知られているが、その一方で、大統領の独裁・一極集中体制であること、出自地域(南部)の優遇や官僚の汚職、民族間対立などの課題を抱えており、不安定な状況である。

1960年1月に旧仏領8州が、続いて1961年10月に旧英領2州が独立を果たし、両者が「カメルーン連邦共和国」を構成した。1972年5月に連邦制を廃止して「カメルーン連合共和国」として一体化し、1984年に国名を「カメルーン共和国」に変えて今に至っている。現在の人口は約2,400万人、行政区画は10州あり、国の西部でナイジェリアとの国境を接する旧英領2州(北西州と南西州)が、人口ではカメルーンの約20%を占める。その英語圏2州では、これまで仏語圏に比べ冷遇されているとの不満が続いてきた。例として、石油開発は英語圏である南西州の沖合(Duala、Kribi含む)で主に行われているが、同国にとって最も重要な国策会社であるカメルーン炭化水素公社(Societe Nationale des Hydrocarbures、以下SNHと表記)幹部はこれまですべて仏語圏出身者に占められてきた。また、初代大統領アマドゥ・アヒジョ(Ahmadou Babatoura Ahidjo)は仏語圏出身者で仏語圏を優遇していたうえ、1982年に就任したポール・ビヤ(Paul BIYA)現大統領もまた仏語圏の出身者で、仏語圏を優遇する政策を変更することはなかった。旧英領2州の英語話者の住民はカメルーンにおける少数派であるため、就職、教育などの機会の面で不利益を被ってきたと主張し2016年11月以降独立運動に発展。2017年10月1日には政府・治安部隊による独立を求めるデモ隊への実弾射撃や拷問によって多数の死傷者が出る事態となった。こうした少数派弾圧ともいえる政策の他、大統領選挙における不正行為や、治安部隊による拷問・殴打などの虐待行為、警察官による検問所における通行止め及び賄賂要求といった汚職や贈賄の問題があり(Transparency International「Corruption Perceptions Index 2017: Global Scores」において同国は180か国中153位)、これらがカントリーリスクの一つとなっている。

1982年11月、初代アヒジョ大統領が辞任、当時のポール・ビヤ首相が大統領に就任したが、その後36年も政権トップに変わりはなく、独立後58年の間で二人の大統領しかいない。現行憲法では任期は7年であるが再選回数に制限はない。次の大統領選挙を2018年10月7日に控えており、30年以上にわたり大統領を務めてきた現職のビヤ氏は現在80歳代半ばに差し掛かっているが、10月の選挙にも立候補を表明している。同氏が当選すれば2025年まで現政権が維持されることになり、出自地域の優遇や汚職といった前述の問題が続くことが予想される。しかし一方で、ビヤ氏が退き反ビヤ派へと政権交代が行われる場合でも、ビヤ支持派が多いこともあり、ビヤ支持派と反ビヤ支持派の間の衝突が起こる可能性の他、石油業界再編や契約条件の変更など、石油産業への影響が懸念されることから、いずれにしても大統領選挙の行方が注目される。

また、Bakassi地域を含む北部ナイジェリア国境付近ではボコ・ハラムの影響から治安が悪化している。2013年以降、ボコ・ハラムの犯行とみられている外国人の拉致事件が連続して発生し、2015年にはカメルーン国内初の自爆テロ事件等が発生し、現在も断続的に発生している。石油会社社員の誘拐や関連施設への深刻な攻撃も報告されており、注意が必要な状況が続いている。

加えて、同国では従来からカカオ等の一次産品に大きく依存する経済構造の中、政府財政や国内貯蓄が十分でないこともあり、投資額は増加しているとは言われているものの依然不十分である。さらに、道路の多くは未舗装状態であり、電力供給関連施設についても老朽化しており、停電が頻発するなど、インフラが未整備な状態となっている。また、国民の教育水準も高くないことから、基本的技能を持った労働力が不足しているといった問題を抱えている。

(2)石油・ガス産業の概況

Oil & Gas Journal(2018年1月)によると、カメルーンの天然ガス確認埋蔵量は4,770Bcfで、世界第47位。サブサハラでは第4位であるが、ナイジェリア(193,351 Bcf)、モザンビーク(100,000 Bcf)、アンゴラ(10,880 Bcf)とは圧倒的な差がある。探鉱開発は主にRio del Rey盆地及びDouala盆地で行われている。両盆地とも浅海に位置しており、同国では鉱区の8割以上が浅海、残りが陸上となっている。天然ガス生産状況は図1のとおりである。同国の天然ガス生産量は油ガス田の自然枯渇により減退傾向にあったが、2013年にPerencoがDouala盆地Sanaga Sud ガス田において生産を開始した他、2014年に米石油ガス開発会社Noble Energyが同盆地のYoyoガス田及びYolandaガス田において生産を開始したことなどにより、生産量が増加した。なお、Sanaga Sudガス田で生産したガスは主に、2013年よりKribi天然ガス火力発電所(発電能力216 MW)に供給されている(後述)。また、Logbabaガス田からのガスは、2014年よりDoualaを拠点とする港湾業、運輸産業等に供給されている。

図1:カメルーン天然ガス生産量推移
図1:カメルーン天然ガス生産量推移(出所:IEA Natural Gas Information、2017年のみGlobal Data)

同国では、入札ラウンドを実施している他、一部の鉱区はオープンにされ、希望企業があれば交渉を通じた参入も可能となっている。これまで、2007年(公開対象鉱区数:1鉱区)、2013年(同5鉱区)、2014年(同8鉱区)、2015年(同6鉱区)、2018年(同8鉱区)に入札ラウンドが行われた。なお、最新の2018年1月に公開された鉱区は以下の8鉱区であるが、その後の状況に関しては明らかになっていない。

表1:カメルーン2018年1月入札ラウンド対象鉱区

盆地

鉱区

面積

浅海Rio del Rey盆地 Bomana 140平方キロメートル
Lungahe 84平方キロメートル
Bakassi East 364平方キロメートル
浅海Douala盆地 Etinde 1,698平方キロメートル
Elombo 2,405平方キロメートル
深海Douala盆地 Ntem 2,319平方キロメートル
Tilapia 3,875平方キロメートル
Mamfe盆地 Manyu 1,209平方キロメートル

各種資料にもとづき作成

また、同国の石油・ガス探鉱開発には中国石油化工集団Sinopecの他、小規模独立系企業(Perenco、Addax Petroleum、Victoria Oil & Gas等)も参加、SNHは探鉱・生産活動を直接営まず、権益シェアを取ることで探鉱・生産事業に間接的に参画している。SNHの資本参加比率については、従来「最大25%」であったが、2015年の入札ラウンドから「最低25%」に引き上げられた。こうした政府権限強化の影響から同国の探鉱開発への関心は低くとどまっており、投資拡大の阻害要因の一つとなっている。

2017年における主なガス生産は、Douala盆地におけるSanaga Sudガス田及びLogbabaガス田によるものであった。なお、2017年は、ナイジェリア北東部を中心に活動しているイスラム武装組織ボコ・ハラム(Boko Haram)による治安悪化の影響により、同国の探鉱開発状況は、オペレーターVictoria Oil & GasによるLogbabaガス田の生産井掘削など、少数にとどまっている。

3.カメルーンKribi FLNGプロジェクト

(1)Kribi FLNGプロジェクトの概要

Kribi Fieldは、カメルーンKribi市より西方15キロメートルにあり1979年にMobil(当時)によって発見された。Kribi Field はSanaga Sudガス田およびEbome Marineガス田より構成されており、両ガス田から生産された天然ガスはパイプラインで陸上のBipaga処理プラントに送られ、脱水、液分離が行われた後、ガス成分のみが再度パイプラインで沖合20キロメートルに設置したFLNG船「Hilli Episeyo」号に送られ液化される(図2)。推定可採埋蔵量は0.7Tcf、8年間生産の計画である。なお、Sanaga Sudガス田では上述のとおり2013年から既に生産を行っていたが、2017年に新たに6坑のガス井を追加開発したことで増産した。220MMcf/dのうち180 MMcf/dはGolar FLNG船へ、残りの40MMcf/dはKribi天然ガス火力発電所に送られている。また、沖合ガス田開発に伴いBipaga処理プラントも能力が増強されている。ただ、2020年以降も天然ガス生産量を維持するためにはさらなる掘削が必要になるとの指摘もある。

図2:Kribi FLNGプロジェクト模式図 (出所:Perenco HPに筆者加筆)

Sanaga Sudガス田の上流権益に係る契約はPS契約であり、仏独立系石油開発会社Perencoが75%、SNHが25%の権益を保有している。一方、Ebome Marineガス田はコンセッション契約[1]であり、Perencoが28.5%、SNHが71.5%の権益を保有する(表2)。

同プロジェクトでは、2014年7月、LNGタンカーの運航会社であるGolar LNG社(以下Golar社と表記)が、シンガポールのケッペル造船所に自社保有LNG船「Hilli」号(1975年建造)のFLNG船への改造を発注し、「Hilli Episeyo」号と名付けた。FLNG改造を含め関連費用は12億ドルとされる。同FLNG船はGolar社が保有、液化処理は米Black & Veach社のPRICOプロセスを使用し、上流権益保有者のPerencoとSNHより液化処理代金(Tolling Charge)が支払われることとなった。

Golar 社が独自に開発したFLNG船を設置・操業することで、同社傘下のGolar Hilli/Golarカメルーン、SNH、及びPerencoが、カメルーン政府との間で2015年9月30日に最終的な合意に達し、これによりプロジェクトの最終投資決定(FID)となった。生産されるLNG(120万トン/年予定)は、Gazpromマーケティング&トレーディング・シンガポール(以下、Gazpromと表記)が、全量を8年間に亘りFOB(本船渡し)で引き取る。Gazpromは、アジア(特にインド向け)を中心にポートフォリオ供給を進めるとみられている。なお、Hilli Episeyo FLNG船は、8年間は全液化施設(4トレイン)のうちの半分のみで運転される(生産量120万トン/年はHilli Episeyo号の公称生産能力の約50%)。天然ガス生産及び液化コストは100万Btu当たり8ドル程度との推定もあるが、他のガス田をつなぎ込んでLNG生産量を増やすことにより、液化施設の稼働を引き上げることができれば、その分だけ、コストは低減するものと予想される。

2018年3月にLNG生産開始、5月17日に初カーゴが出荷された。初カーゴはGazprom傭船の「ガリシア・スピリット」号に積載され、6月14日に中国・広匯能源股分有限公司(Guanghui Energy)操業の啓東(Qidong)LNG受入基地に到着。続いて5月26日に2カーゴ目が同じくGazprom傭船の「Golar Maria」号に積載された。

表2:カメルーンKribi FLNGプロジェクト プレーヤー

上流

 

中流

 

下流

Sanaga Sudガス田
(PS契約)
Ebome Marineガス田
(コンセッション契約)
Perenco 75%
SNH 25%
Perenco 28.5%
SNH 71.5%
Golar社 100% Gazprom
全量買取・販売

各種資料にもとづき作成

同プロジェクトは、改造型FLNG船によるLNG 輸出プロジェクトとしては世界初となる。また、生産開始に至ったFLNGプロジェクトとしては、Petronas「PFLNG1(Satu)」(マレーシア)に続き世界で2件目であり、アフリカでは初となった。

参考までに、カメルーン鉱区図(図3)を以下に示す。

 

[1] Ebome Marineガス田の権益付与は1996年、Sanaga Sudガス田の権益付与は2006年に行われ、Sanaga Sudガス田権益付与の時期に、カメルーンではコンセッション契約に代わりPS契約が導入された。

図3:カメルーン鉱区図
図3:カメルーン鉱区図(出所:SNHサイトに筆者加筆)

(2)Kribi FLNGプロジェクトの成功要因

Kribi FLNGプロジェクトを成功させた要因とは何だったのであろうか。

まず、カメルーン政府が行った契約条件の緩和が挙げられる。2012年ガス綱領(2012 Gas Code)(2012年4月制定)において、天然ガス液化プロジェクトについては、10年間にわたり法人税、付加価値税、及び関税が免除されることになった。このため、Kribi FLNGプロジェクトは8年間の全生産期間につき大きな税優遇を受けられる。なお、条件緩和に伴う政府収入減は液分(コンデンセート、LPG)の政府取り分を高めることで補うこととしている。

また、カメルーンKribi FLNGプロジェクトの成功は、Golar社の改造型FLNG船採用が大きく寄与している。ケッペル造船所によれば、既存LNGタンカーをFLNG船へ改造することで、FLNG船を最初から建造する場合に比べて大幅にコスト競争力が増し、安全性・処理能力は同等のまま、建造期間も短縮できるという。その結果、FIDから初出荷までの期間の短縮につながったことは、加藤 望・一丸 義和「FLNGの可能性について」(石油・天然ガスレビュー 2018. 3 Vol.52 No.2)25頁「3. FLNGの可能性の考察」においても言及した通りである。FLNG施設を新規に建造したShell PreludeはFIDから初出荷まで約7年経過しているが、現時点でまだ出荷に至っておらず、また同じくFLNG施設を新規に建造したPetronas PFLNG1においても5年であった。また、同様に2017年にFIDを迎えたEniのCoral FLNGプロジェクトもFLNG施設を新造するが5年程度のプロジェクト期間を予定している。これらに対し、Golar社 FLNG船によるカメルーンKribi FLNGプロジェクトではFIDから3年足らずで生産開始に持ち込むなど相対的にプロジェクトの期間が短かったことが特徴的である(表4参照)。特にKribi FLNGプロジェクトでは先行的に中古LNG 船の改造をFID前に実施していたことによるところが大きい。これについては、上流権益保有者であるPerencoとSNHが初出荷までのリードタイム短縮を重要視していたことから、Golar社はこうした「勇敢な」経営判断に至ったとしている。因みに、Golar社の2隻目のFLNG船(Gimi号)を投入する予定のモーリタニア/セネガル沖の Tortue/Ahmeyimプロジェクトでも、1隻目のカメルーンプロジェクトと同様にFIDから初出荷まで3年の期間を予定している。一般に陸上LNG基地の建設には最低5年程度はかかることを考慮すれば、Golar社のFLNGモデルは極めて開発期間の短いプロジェクトであり、早期の資金回収が可能になることから、採算性が向上することになる。

そして、カメルーンは政治的不安定性、インフラ未整備、及び労働力不足等必ずしも事業環境が良好なわけではなく、また、沖合天然ガス田の埋蔵量規模が限定的であったことについても、陸上で液化施設を建設することを困難にさせていた。さらに、カメルーン沖合は気象・海象条件が穏やかであり、FLNG施設の設置には適していた。これらの要因も、沖合での天然ガス液化施設(つまりFLNG)建設を促した側面があるものと考えられよう。

4.まとめ

Golar社の低コストFLNGソリューションが、これまで投資機会に恵まれなかったサブサハラ、特に西アフリカの産ガス国に影響を与える可能性がある。開発期間の短縮や中小規模ガス田の利用といった従来型のFLNG船がもつ強みに加え、中古船を改造することにより、短納期、低コストを可能にし、カメルーンのような石油ガス産業やインフラが未整備な産油ガス国にも投資の道を開いたことは確かだ。ただし、改造型を含めFLNG船は産ガス国以外の造船所でそのほとんどが建造されるため、産ガス国が要求するローカルコンテンツの達成、ガス生産施設の建設を通じた技術移転と技術要員の教育など産業育成が難しい点があり、産ガス国から抵抗を受ける場合がある点は留意しておく必要がある。また、特に西アフリカにおいては、政情不安、資源ナショナリズム等に伴う政府による資産接収のリスクや法制・税制等の変更の他、紛争、エボラ出血熱等の感染症といったリスクへの注意も必要となる。

さらに、改造型FLNG船の場合は、FLNG施設に転用できるような、積載量が手頃な中古のLNGタンカーが調達可能なこと、安定操業と係留の観点から現場の海気象条件が穏やかであること、産出された天然ガスの処理が陸上もしくは船上で容易に行えること等の条件を満たす必要がある。

こうした点を考慮すると、西アフリカという比較的穏やかな海域において、主に浅海に係留される場合は今後改造型FLNG船の需要が期待できると思われる。実際に、前述の通りモーリタニア/セネガル、赤道ギニアで、Golar社の改造型FLNG船を導入したプロジェクトが進行している。また、New AGE社による、カメルーンEtinde FLNGプロジェクトやコンゴ共和国のFLNGプロジェクトといった、競合他社による事業も検討されている。

Golar社は、改造型FLNGプロジェクトにおいて今回得られた教訓をもとに今後さらに技術の向上に努めることを掲げている。上記のように、改造型FLNGプロジェクトについては、なお乗り越えなければならない種々の制約が存在するなど、さらなる発展に向けては紆余曲折を経ることも予想されるが、Golar社等によるさらなる取り組みによってはサブサハラ、特に西アフリカの小規模産ガス国においてFLNGプロジェクトに関するビジネスチャンスが訪れる可能性もある。

参考までに、サブサハラにおける陸上LNGプロジェクト(表3)及び世界のFLNGプロジェクト(表4)の現況を以下に示す。

表3:サブサハラにおける陸上LNGプロジェクト(計画段階のものを含む/2018年7月現在)

プロジェクト名

参画企業

生産能力

操業開始

買主

ナイジェリアLNG
(第1-6液化トレイン)

NNPC 49%, Shell 25.6%,
Total 15%, Eni 10.4%
2,200万トン/年 1999年10月 仏ENGIE,
葡Galp Energia
等10社
赤道ギニアLNG Marathon Oil 60%, Sonagas[2] 25%,
三井物産 8.5%, 丸紅ガス開発 6.5%
370万トン/年
(可採埋蔵量4.4Tcf)
2007年5月 Shell
アンゴラLNG AngolaLNG(Chevron 36.4%,
Sonangol 22.8%, BP 13.6%,
Total 13.6%, Eni 13.6%)
520万トン/年 2013年6月 仏EDF Trading,
RWE, Vitol,
Glencore
モザンビークLNG
(Area1)
Anadarko 26.5%,
MEPMOZ(三井物産 50%,
JOGMEC 50%)20%, ENH[3] 15%,
Bharat PetroResources 10%,
ONGC 16%, Oil India 4%, PTTEP 8.5%
1,288万トン/年
(可採埋蔵量75Tcf)
2020年代(予定) タイPTT,
仏EDF,
東北電力,
東京ガス,
英Centrica
モザンビークロブマLNG
(Area4)
Eni 24.99%, ExxonMobil 24.99%,
CNPC 20.02%, Galp Energia 10%,
KOGAS 10%, ENH 10%
1,520万トン/年
(原始資源量
約35兆立方フィート)
2024年(予定)

各種資料にもとづき作成

 

[2] Sonagas:赤道ギニア国営ガス会社

[3] ENH:モザンビーク炭化水素公社

表4:世界のFLNGプロジェクト(サブサハラにおいては計画段階のものを含む/2018年7月現在)

プロジェクト名
(国・地域)

shore

参画企業
(オペレーター
太字)

FLNG
所有者
新造/
改造

ガス推
定可採
埋蔵量

生産能力

FID

出荷開始
(FIDからの
経過期間)

買主

Prelude
豪州
off Shell 67.5%,
INPEX 17.5%,
KOGAS 10%,
CPC[4] 5%
Shell
(IOC)
新造
2.7Tcf 360万トン/年 2011年5月 2018年第3四半期(予定)(7年程度) KOGAS,
CPC,
大阪ガス,
JERAなど
PFLNG1
(Satu)
マレーシア
off Petronas 100% Petronas
(NOC)
新造
1.1Tcf 120万トン/年 2012年6月 2017年4月
(5年程度)
韓S-Oil
Kribi 
カメルーン
near Perenco 75%,
SNH 25%
Golar
(船会社)
改造
0.7Tcf 120万トン/年
(Hilli Episeyo号の生産能力の約50%)
2015年9月
アフリカで初
2018年5月
(3年未満)
アフリカで初
Gazprom
Coral
モザンビーク(Area 4)
off Eni 24.99%,
ExxonMobil 24.99%,
CNPC 20.02%,
KOGAS 10%,
ENH 10%
Eni(IOC)
新造
4.7Tcf 340万トン/年 2017年6月
アフリカで2番目
2022年(予定)(5年程度) BP
Fortuna
赤道ギニア
off Ophir Energy 80%, GEPetrol[5] 20% Golar
(船会社)
改造
2.5Tcf~3.0Tcf 220~250万トン/年 2018年(予定) 2021~2年
(予定)(3~4年)
Gunvor
Group
Tortue/
Ahmeyim 
モーリタニア/セネガル
near BP, Kosmos Energy,SMHPM[6],
Petrosen[7]
Golar
(船会社)
改造
25Tcf[8] 460万トン/年 2018年(予定) 2021年(予定)(3年程度) BP
Etinde
カメルーン
off New Age 30%,
Lukoil 30%,
Bowleven 20% ,
SNH 20%
New Age
(インディペンデント)
1.2Tcf 130万トン/年 2018年(予定) 2023年(予定)(5年程度)
Congo- Brazzaville 
コンゴ共和国
off Eni 65%,
New Age 25%,
SNPC[9](10%)
New Age
(インディペンデント)
5.5Tcf 100万トン以上/年 2018年(予定) 2021年(予定)(3年程度)

各種資料にもとづき作成

 

[4] CPC:台湾中油股分有限公司

[5] GEPetrol:赤道ギニア国営石油会社

[6] SMHPM:モーリタニア国営炭化水素公社。モーリタニア側の権益比率:BP 62%, コスモス・エナジー 28%, SMHPM 10%。

[7] Petrosen:セネガル国営石油会社。セネガル側の権益比率:BP 60%、コスモス・エナジー 30%、Petrosen 10%。

[8] フェーズ1(Tortue-1、可採埋蔵量15Tcf)にGolarによるFLNG Gimi号を起用する計画。

[9] SNPC:コンゴ共和国国営石油会社

<主な参考資料>

・AfrOil
・「The LNG Industry in 2017」(GIIGNL)
・「Corruption Perceptions Index 2017: Global Scores」(Transparency International)
・IEA Natural Gas Information
・International Oil Daily (Energy Intelligence)
・在日カメルーン大使館ウェブサイト
・駐カメルーン大使 岡村 邦夫「カメルーンの英語圏問題とその歴史的経緯」(2017年10月)
・Golar LNG社ウェブサイト
・加藤 望・一丸 義和「FLNGの可能性について」(石油・天然ガスレビュー 2018. 3 Vol.52 No.2)

以上

(この報告は2018年9月3日時点のものです)

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