ページ番号1007624 更新日 平成30年10月12日

ブラジル:対照的な石油・ガス関連政策を打ち出す大統領候補 ―今後の政策変更の可能性から、プレソルト入札にIOCが積極的に参加―

レポート属性
レポートID 1007624
作成日 2018-10-12 00:00:00 +0900
更新日 2018-10-12 11:46:27 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発基礎情報
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2018
Vol
No
ページ数 5
抽出データ
地域1 中南米
国1 ブラジル
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,ブラジル
2018/10/12 舩木 弥和子
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概要

  1. ブラジル大統領選挙の投票、開票が2018年10月7日に行われ、社会自由党のJair Bolsonaro氏が46.03%、労働者党のFernando Haddad氏が29.28%の票を獲得、28日に両者による決選投票が行われることになった。Bolsonaro氏が過半数に近い票を得たこと等から、決戦投票ではBolsonaro氏が優勢との見方が強くなっている。Bolsonaro氏は、国内調達比率緩和、非在来型資源の探鉱にインセンティブ付与、環境規制緩和、環境ライセンス付与の迅速化等を図るとしている。一方、Haddad氏はPetrobras強化、Petrobrasの資産売却中断、ブラジル国民の利益となるようにプレソルトを取り戻すこと等を提案している。
  2. ブラジル国家石油庁は、9月28日、Santos Basin のSaturno鉱区、Tita鉱区、Pau-Brazil鉱区、Campos BasinのSudoeste de Tartaruga Verde鉱区を対象に、第5次PS入札ラウンドの入札を実施、以前の入札では札が入らなかった鉱区を含め全鉱区が落札された。サインボーナスは合計で68.2億レアル (17億ドル)となった。メジャーをはじめとする国際石油企業(IOC)がこの入札に競って札を入れた背景には、大統領選挙の結果次第では、これ以降当面プレソルトの鉱区が公開されなくなる可能性があるとみられていたことや、これまでブラジルでは石油・ガス関連の資産が国有化されたり、既存の探鉱・開発契約が破棄されたりしたことがないことが考慮されたものと思料される。
  3. 陸上とCampos Basinからの原油生産量の落ち込みが著しいこと、新規FPSOの生産開始の遅れ、生産中油田のメンテナンスによる生産停止期間が予定よりも長びく等の理由で、2018年上半期のブラジルの石油生産量は、2017年上半期の260.7万b/dから258.9万b/dに1.2%減少した。大統領選挙を有利に進めているBolsonaro氏が大統領に就任することになれば、探鉱・開発は活発となることが期待されるが、もしもHaddad氏が決選投票で逆転勝利することになれば、投資環境が変化し、今後の生産量に影響を与える可能性もあると思われ、状況を注視していく必要がある。

(Platts Oilgram News、International Oil Daily、Business News Americas他)

1. Bolsonaro、Haddad大統領候補の石油・ガス関連政策

Michel Temer大統領の任期満了に伴うブラジル大統領選挙の投票、開票が2018年10月7日に行われた。高等選挙裁判所の発表によると、候補者13人のうち、社会自由党(PSL)に属する極右のJair Bolsonaro氏が46.03%、左派、労働者党(PT)のFernando Haddad氏が29.28%、中道左派のCiro Gomes氏が12.47%の票を獲得した。Temer大統領が所属するブラジル民主運動党(PMDB)から出馬したMeirelles氏の得票率は1.20%となった。当選に必要な有効票の過半数を獲得した候補者がなかったため、28日に上位2者のBolsonaro氏とHaddad氏による決選投票が行われることになった。

世論調査の支持率でトップを独走していたLuis Inacio Lula da Silva元大統領が、有罪判決を受けたことで出馬が不可能となり、9月にその後継者に指名されたHaddad氏は急速に支持率を伸ばしていたが、汚職撲滅や治安改善を訴えたBolsonaro氏が、長く政権を担当してきた左派に不満を持つ層からの支持を集め、7日の投票で勝利したと伝えられている。この投票でBolsonaro氏が過半数に近い票を得たことや、同時に実施された連邦議会選挙でもPSLが躍進(下院(定数513)での議席数は選挙前の8議席から52議席に増加、これまで議席がなかった上院(定数81)でも4議席を獲得[1])したことから、3位以下の候補者の支持者がどちらの候補を支持するかによるところはあるものの、決戦投票ではBolsonaro氏が優勢との見方が強くなっている。

Bolsonaro氏は、1955年São Paulo州生まれの63歳、Agulhas Negras Military Academy出身の元軍人で、1991年から下院議員を務めている。同氏は、市場経済推進、省庁の統廃合、国営企業の廃止や民営化、法人税引き下げ、犯罪の取り締まり強化、警察の増強等を図るとしている。石油・ガス関連では、国内調達比率をさらに緩和、非在来型資源の探鉱にインセンティブを設けるとしている。そして、Petrobrasの精製部門を部分売却することにより同部門に競合関係を取り入れるとしている。さらに、環境規制を緩和し、環境ライセンス付与の迅速化を図るとしている。同氏は、プレソルトエリア内の新規鉱区でオペレーターを務め権益の最低30%を保有するPetrobrasの義務を免除したプレソルト開発法改正にあたっては、これを支持するとの立場をとっていた。なお、同氏は、過激な発言で「ブラジルのDonald Trump」とも呼ばれており、反民主主義的な発言や女性や少数派に対する差別的な発言から不支持率も高いという。

一方、Haddad氏は1963年São Paulo州生まれの55歳、São Paulo大学で法律、経済、哲学を学んだ。2005~2012年に教育相を、2013~2017年にはSão Paulo市長を務めた。Lula元大統領から後継者に指名されたPTの候補者であることから、同氏の石油・ガスに関する政策はLula元大統領のとっていたそれに極めて近いものとなっている。同氏は、Petrobrasを強化し、石油・ガス関連の全ての分野にPetrobrasを参加させ、国家開発の一翼を担わせるとしている。また、Petrobrasが実施している資産売却についても、まだ売却に至っていないものについては中断するとしている。プレソルトエリアの鉱区については、すでに締結されたPS契約は維持し、引き続きIOCによる投資の機会を設けるとしているが、外国企業ではなくブラジル国民の利益となるようにプレソルトを取り戻すことを提案している。なお、所属政党であるPTは既存の契約は重視するが、新規の契約については国内調達比率を引き上げる可能性があるとしている。

両候補の掲げている石油・ガス関連政策は、このように対照的なもので、どちらが大統領に選出されるかにより、今後の石油・ガスをめぐる環境は大きく変わってくると考えられる。

[1] AFPBB 2018/10/8

2.第5次PS入札ラウンドの結果

ブラジル国家石油庁 (Agencia Nacional do Petroleo, Gas Natural e Biocombustiveis:ANP)は、2018 年9月28日、Santos Basin のSaturno鉱区、Tita鉱区、Pau-Brazil鉱区、Campos BasinのSudoeste de Tartaruga Verde鉱区を対象に、第5次Production Sharing(PS)入札ラウンドの入札を実施した。

BP、Chevron、CNOOC、CNODC(CNPC)、Ecopetrol、ExxonMobil、Equinor、DEA、Qatar Petroleum International(QPI)、Royal Dutch Shell、Total、Petrobras の12社がPQを取得、このうちEquinor、DEAを除く10社がコンソーシアムを組み、4鉱区全てに札を入れた。サインボーナスはあらかじめ鉱区毎に金額が定められており、合計で68.2億レアル(17億ドル)となった。

図1.第5次PS入札ラウンド対象鉱区(出所:ANP website)

表1.第5次PS入札ラウンド結果(サインボーナスの単位:百万レアル)
鉱区 サインボーナス 政府引取利益原油(最低比率) 落札した企業、コンソーシアム(権益保有比率)*オペレーター
Saturno 3,125 70.20%(17.54%) Shell(50%)*、Chevron(50%)
Tita 3,125 23.49%(9.53%) ExxonMobil(64%)*、QPI(36%)
Pau Brazil 500 63.79%(24.82%) BP(50%)*、CNOOC(30%)、Ecopetrol(20%)
Sudoeste de Tartaruga Verde 70 10.01%(10.01%) Petrobras(100%)*

(各種資料を基に作成)

鉱区別に見てみると、Saturno鉱区は、ShellとChevronからなるコンソーシアムが落札した。両社は、ブラジル国内外でパートナーを組んだ経験があり、速やかに同鉱区の探鉱・開発を進めるとしている。第15次ライセンスラウンドでSaturno鉱区の東部に隣接するS-M-536鉱区とS-M-647鉱区を落札したExxonMobil/QPIのコンソーシアムもSaturno鉱区に札を入れたが、Shell/Chevronのコンソーシアムに、落札企業を決定する政府引取利益原油の割合で約30%引き離され、落札できなかった。ANPはSaturno鉱区の原始埋蔵量を83億bblと推定している。

ExxonMobil/QPIのコンソーシアムは、Saturno鉱区は落札できなかったが、Shell/Ecopetrolのコンソーシアムを破り、Saturno鉱区の北東部に隣接するTita鉱区を落札した。これにより、ExxonMobilがブラジル国内に権益を保有する鉱区の数は26となった。ANPによると、Tita鉱区の原始埋蔵量は39億bblとされている。

Pau-Brazil鉱区はBP、Ecopetrol、CNOOCからなるコンソーシアムが、Petrobras/CNODC/Totalのコンソーシアムを破って、落札した。同鉱区は2017年10月実施の第3次PS入札ラウンドで公開されたものの、札が入らなかった鉱区である。その際には、近くのJupiterガス田で生産されるガスが二酸化炭素を多く含むことから、敬遠されたのではないかと見られていた。BPは二酸化炭素が多く含まれることは問題ではあるが、構造の大きさを重視して高評価をつけたとされる。BPがブラジルに権益を保有する鉱区の数は、Pau-Brazil鉱区で25となるが、プレソルトでBPがオペレーターを務めるのは同鉱区が初めてとなる。ANPはPau-Brazil鉱区の原始埋蔵量を39億bblとしている。

Sudoeste de Tartaruga Verde鉱区はPetrobrasが単独で落札した。他企業の応札はなかった。プレソルト開発法の改正により、Petrobrasはプレソルトエリア内の新規鉱区でオペレーターを務めたり、権益の最低30%を保有する必要がなくなり、探鉱・開発に参加するか否かを事前に選択できるようになった。Petrobrasは、今回の入札では、Sudoeste de Tartaruga Verde鉱区でオペレーターを務めることを事前に表明、その他の鉱区については札を入れるとしても、他企業と同じ立場で参加する意向を示していた。Sudoeste de Tartaruga Verde鉱区は、Petrobrasが権益100%を保有し、6月に生産を開始したTartaruga Verde鉱区の南西に位置しており、同鉱区と統合開発を行う。Sudoeste de Tartaruga Verde鉱区は、第3次PS入札ラウンドと同日に実施された第2次PS入札ラウンドで公開されたものの、札が入らなかった鉱区である。Petrobrasは第2次PS入札ラウンドでは入札を見送ったものの、第2次PS入札ラウンドで公開された時よりも面積が広げられたこと、サインボーナスが1億レアルから7,000万レアル(1,780万ドル)に減額されたこと、政府引取利益原油の最低比率が12.98%から10.01%に引き下げられたことから、今回は応札に踏み切ったものとみられている。なお、ANPは、Sudoeste de Tartaruga Verde鉱区の原始埋蔵量は12.9億bbl、生産される原油のAPI比重は27度と発表している。

今回の第5次PS入札ラウンドにメジャーをはじめとする主要なIOCが積極的に参入した背景には、大統領選挙の結果に対する不安感とともにブラジルに対する一定の信頼感もあったと考えられる。Haddad氏やGomes氏等左派の大統領候補は、Temer大統領が進めてきたプレソルト開発法の改正や国内調達比率の緩和といった改革を逆行させる方針だった。したがって、大統領選挙の結果によっては、当面プレソルトの鉱区が公開されなくなる可能性があるとの見方がなされていた。一方で、これまでブラジルでは石油・ガス関連の資産が国有化されたり、既存の探鉱・開発契約が破棄されたりした実例は一切ない。Lula元大統領やRousseff前大統領のPT政権下でも、新たに法律を制定し、新規の契約についてその内容を変更することはあっても、既存の契約は尊重されてきた。このような状況から、多くの石油企業は、今回の入札はプレソルトの鉱区を取得する貴重な機会であり、ここで鉱区を落札し、契約を締結すれば、その契約は重んじられると考えたと推測される。

終わりに

ANPによると、2018年上半期のブラジルの石油生産量は、2017年上半期の260.7万b/dから258.9万b/dに1.2%減少した。陸上とCampos Basin ポストソルトの生産量の落ち込みが著しいこと、新規FPSOの生産開始の遅れ、生産中油田のメンテナンスによる生産停止期間が予定よりも長いことが原因と考えられる。IEAは当初、ブラジルの石油生産量は2018年に26万b/d増加すると見込んでいたが、ブラジルの生産量の伸び悩みを受け、9月13日発表のレポートではブラジルの2018年の石油生産量の伸びを3万b/dに修正した。IEAは 遅れているプロジェクトの生産開始により2019年については生産量が35万b/d伸びるとしている。

大方の見通しの通り、Bolsonaro氏が大統領に就任することになれば、ブラジルの探鉱・開発は引き続き活発に行われ、生産量の増減に関する懸念は杞憂に終わることになると思われるが、Haddad氏が決選投票で勝利することになれば、投資環境が変化し、今後の生産量の伸びに影響を与えることもあると考えられ、状況を注視していく必要がある。

以上

(この報告は2018年10月10日時点のものです)

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