ページ番号1007686 更新日 平成31年2月1日
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1.政治・経済情勢
(1)国内
政治・経済
Oleg Kozhemyako氏が沿海地方の知事に当選
- 2018年9月に不正の疑いで無効となった沿海地方知事選の再選挙が12月16日に行われ、61.88%の得票率でOleg Kozhemyako氏が当選した。Oleg Kozhemyako氏は、元サハリン州知事で、2018年9月に無効になった選挙の後、プーチン大統領の指名で沿海地方の知事代行を務めていた。9月の選挙で優勢だった共産党のAndrei Ishchenko氏は今回の選挙には立候補しなかった。
- Oleg Kozhemyako知事代行は、2018年10月に沿海地方の経済的インセンティブを主張し、ハバロフスクからウラジオストクへの極東連邦管区首都の移転を提案。プーチン大統領は12月13日に極東連邦管区の首都を移す大統領令に署名している。
- Oleg Kozhemyako知事は、1962年、沿海地方のチェルニゴフカ地区生まれ。2002年にロシア連邦院議員、2005年にカムチャツカ地方コリャーク管区知事、2007年に大統領府長官補佐、2008年にアムール州知事、2015年にサハリン州知事を歴任している。
- 12月24日に開催された、メドベージェフ首相を議長とする大統領府戦略開発評議会では、沿海地方からの輸出を2024年までに現在の約2倍の40億ドルに増やすと意気込みを見せた。(Moscow Times, primorsky.ru, 2018/12/13,17,24)
プーチン大統領がサハリン州知事代行を指名
- 12月7日、プーチン大統領は沿海地方の知事代行となった元サハリン州知事のOleg Kozhemyako氏の後任として、Valery Limarenko氏をサハリン州知事代行に指名した。サハリン州の次の選挙まで、知事代行を務める。
- Valery Limarenko氏は1960年、ウクライナのハルキウ出身。ロシア核センター・全ロシア実験物理学研究所やRosatomなどでの経歴を持つエンジニア。(kremlin.ru, sakhalin.gov.ru, 2018/12/7)
第14回アニュアルプレスカンファレンス開催
- 12月20日、第14回となるアニュアルプレスカンファレンスがモスクワの世界貿易センターで開催された。プーチン大統領は、冒頭で鉱工業を中心とした経済成長、所得向上、健康促進などの成果に触れた後、約1700名のジャーナリストを相手に、約4時間、質問に答え続けた。
- 記者には外国人記者も含まれ、日本の平和条約や、ウクライナ情勢に関する質問もあった他、大統領の結婚に関する質問にまで及んだ。(kremlin.ru, 2018/12/20)

上記写真出典:http://www.kremlin.ru/events/president/news/59455
金融
EUとのエネルギー貿易をユーロ決済にすべき
- 12月24日、Maxim Oreshkin経済発展大臣は、現在EUと主に米ドルで決済しているエネルギー貿易に関して、より両国に一般的な通貨、ユーロにしていくべきだとRTのインタビューに応じた。欧州委員会では12月5日、米ドルに対してユーロの国際決済での利用を拡大していく拘束力を持たない提案を示している。(RT他, 2018/12/24)
(2)対外関係
1.米国
ブエノスアイレスでの米露首脳会談が中止に
- 12月1日にブエノスアイレスでのG20に参加する米ロ両首脳が予定されていたが、11月に黒海でのウクライナ船への攻撃を理由に、米国側が中止した。プーチン大統領は記者会見の中で、米国に対しては事件におけるロシアの立場を米国に説明したと話し、会談が中止されたことは残念だと述べた。米露首脳会談では、中距離核戦力廃棄条約などについて話し合われる予定だった。(kremlin.ru他, 2018/12/1)
米大統領選挙介入等を理由に対露制裁を強化
- 12月19日、米国は2016年の米国大統領選挙への介入や、2018年3月にイギリスで起きた神経剤襲撃事件、世界アンチ・ドーピング機関・化学兵器禁止機関へのサイバー攻撃にロシアが関与したとして、新たにロシア軍関係者等への制裁を課すことを発表した。
- 一方、米国財務省は同日、制裁対象となっているDeripaska氏からの株主としての関与が弱まる見込みとなったため、Rusal 及びEN+グループへの制裁を解除する方針を発表した。(米国財務省、CNN、2018/12/19)
2.EU
欧州委員会は7月31日まで対露制裁を継続
- 欧州委員会は12月21日、ロシアに対する制裁を6か月間延長することを決定し、2019年7月31日まで有効とすることを決めた。EUは、2014年にロシアとウクライナの武力衝突を理由に、ロシアの企業と個人に対する制裁を導入している。これに対し、ロシアはEUからの食糧輸入を制限する措置をとっている。(Prime, 2018/12/21)
3.中国・インド
G20のマージンで露中印首脳会談を実施
- 11月30日、プーチン大統領は、G20に参加するためにブエノスアイレスを訪れ、中国の習近平国家主席、インドのモディ首相と3国間会議を開催した。同様の3国間会議は2006年にサンクトペテルブルクで開催されて以来、12年ぶりとなる。
- 会合はロシアの提案で開催され、G20やその他の国際的枠組みに、露中印3国で協力して取り組んでいくことが合意された。(kremlin.ru, 2018/12/1)

上記写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/59278
4.タイ
第2回エネルギー作業部会をモスクワで開催
- 12月7日、Evgeny Grabchakエネルギー省電力運転・運営管理局長は、タイのPrasert Sinsukprasertエネルギー省監察官との間で第二回エネルギー協力作業部会をモスクワで開催した。タイからは国営石油会社、国営電力会社が参加した。
- タイはNOVATEKが進めるArctic LNG2への参加にも関心を示している。(minenergo.gov.ru, 2018/12/7)

上記写真出典:https://minenergo.gov.ru/node/13409
5.日本
ブエノスアイレスで日露首脳会談
- 12月1日、プーチン大統領と安倍首相はブエノスアイレスで開催されたG20のマージンで、24回目となる日露首脳会談を実施した。11月14日にシンガポールで実施された日露首脳会談に続き、平和条約交渉を加速するため、ラヴロフ外務大臣と河野外務大臣を交渉責任者とすることで一致し、年明けの安倍総理訪露前に外相会談を調整することで合意した。(日本外務省, kremlin.ru, 2018/12/1)

上記写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/59287
「貿易経済に関する日露政府間委員会」第14回会合を開催
- 12月18日、河野外務大臣とMaxim Oreshkin経済発展大臣を共同議長とし、「貿易経済に関する日露政府間委員会」第14回会合が東京で開催された。会合では、エネルギーを含む2国間の貿易投資拡大に向けた取り組みが議論された。
- 同委員会は1994年にサスコベッツ第一副首相(当時)の訪日時に河野洋平外務大臣(当時)との間で、貿易経済問題協議の場として両国の閣僚を共同議長とする委員会を設置する覚書に署名し、設置が合意されたもの。(日本外務省, 2018/12/18)
2.石油ガス産業情勢
(1)原油・石油製品輸出税
- 2018年12月、原油輸出税はUSD 18.5/バレルに引き下げ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
- 12月の石油製品輸出税はUSD 40.5/トン、ガソリンについてはUSD 74.3/トンに設定された。
(2)原油生産・輸出量
- 12月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4844.3万トン(約3億5,849万バレル、平均日量1145万バレル)で、前年同月比4.5%増。1~12月は5億5583.8万トン(約41億1,320万バレル、平均日量1116万バレル)で、前年同時期比1.6%増。(Interfax, 2019/1/09)
- 12月、原油輸出量は2299.8万トン(約1億7,019万バレル、約1億6883万バレル)。1~12月は2億5747.3万トン(約19億530万バレル)。(エネルギー省HP)
(3)天然ガス生産・輸出量
- 12月、天然ガス生産量は670.4億立方メートル(約2.4TCF)で、前年同月比4.6%増。1~12月は、7251.7億立方メートル(約25.6TCF)で、前年同月比4.9%増。(Interfax, 2019/1/09)
(4)協調減産
- 12月7日、OPEC及び非加盟国(OPEC+)は、10月の生産量基準で2019年120万バレル/日の減産を決めた。そのうち、80万バレル/日はOPEC、ロシアの23万bbl/日を含む40万バレル/日は非加盟国で減産する。12月12日、Maxim Oreshkin経済発展大臣は減産を決めたOPEC+の決定を、長期的・安定的原油生産、及び経済発展のために歓迎すると述べた。
- Alexander Novakエネルギー大臣は、12月19日にロシアの石油生産企業と会合を持ち、会合の中では世界の原油市場について議論され、企業の自発的な減産により22万8千バレル/日を減産することが確認された。
- Alexander Novakエネルギー大臣はインタビューで、2016年にOPECとロシアの減産合意により、ロシアは1,200億ドル以上の利益があったと説明しており、減産により市場を安定させることが重要だと述べている。(Prime, 2018/12/8, Interfax, 2018/12/13, 21、Kommersant, 2018/12/25)
3.ロシア石油ガス会社の主な動き
(1)Rosneft
2019年~2020年のCAPEXは1.2~1.3兆ルーブル
- ロスネフチは、2019年~2020年にいくつかの新規プロジェクトを立ち上げ、上流・下流・技術開発の分野を合わせてCAPEXが1.2~1.3兆ルーブルになると見積もった。
- ロスネフチの2018年の炭化水素生産量は2017年比で2%増加する見込みで、ロシア国内の石油製品売上は12%増加する見込み。(Interfax, 2018/12/21)
(2)Gazprom
政府はLNGの規制価格を撤廃
- 政府は12月11日、GazpromがLNGを自由価格で国内民間消費者に販売することを許可したと発表した。これまでのガス販売価格はLNGかその他のガスかの区別はなく、GazpromはLNG特有の液化・ガス化コストや輸送コストを販売価格に含めることができなかった。
- Dmitry Kozak副首相は、この規制緩和によりガス供給の競争性が高まり、市場に好影響をもたらすと述べている。 (Prime, 2018/12/11)
Gazpromは過去5年で最高の利益を達成か
- Gazpromは12月18日、2018年はEBITDAベースで60%の成長を記録するだろうと発表した。Andrei Kruglov副社長は、2018年は厳しい石油市場や増税、新規制など、多くの困難を克服してきた、と述べている。Gazpromは投資の合理化により、フリーキャッシュフローが50億ドルを超える見込み。
- Gazpromは2019年~2021年にかけて毎年1兆から1.3兆ルーブルの投資を見込んでいるが、2018年~2019年をピークに、向こう10年間の投資は減少すると見込まれている。(Interfax, 2018/12/20)
(3)Gazprom Neft
2019年の投資額は3,740億ルーブルの見込み
- Gazprom Neftは、2019年の投資額が3,740億ルーブルになる見込みだと発表した。2017年の投資額は3,710億ルーブル、2018年の投資額は3,510億ルーブルとされている。2019年の主な投資先は、製油所の建設や新規上流開発プロジェクトとなる。
- Gazprome Neftの2018年の石油・天然ガス生産量は前年比で3.4%増加し、石油換算92.8百万トンとなる見通しで、精製量、販売量もともに増加している。(Interfax, 2018/12/17)
(4)NOVATEK
Totalから二人目の役員を派遣
- Totalのロシア代表であるArnaud Le Foll氏がNOVATEKの役員候補に挙がっていると、NOVATEKが発表した。NOVATEKの役員は9名で、9人の候補者が登録されており、現在の役員であるAndrei Sharonov氏の名前は候補から外れている。TotalのMichael Borrell氏は役員を継続するため、Arnaud Le Foll氏が二人目の役員となる。(Interfax, 2018/12/24)
Forbes社の「億万長者の勝者と敗者2018」にランクイン
- 12月21日に発表されたForbes社の「億万長者の勝者と敗者2018」の勝者部門で、NOVATEKのLeonid Mikhelson社長が5位に、役員のGennady Timchenko氏が6位にランクインした。この2名は2018年にそれぞれ40億ドル、38億ドルの資産を増やしたとされる。
- 同ランキングの1位にはAmazonのJeff Bezos社長、2位にはファーストリテイリングの柳井正社長、3位にはLukoilのVagit Alekperov社長の名前が連なっている。(Forves, 2018/12/21)
4.新規LNG・P/L事業
(1)Nord Stream 2
米国政府がNord Stream 2への反対決議を採択
- 米国議会は、欧州のエネルギー供給に対するロシア政府の支配を強めることを理由に、Nord Stream 2に反対する決議案を採択した。米国政府は、新たなパイプラインの建設は欧州のエネルギー安全保障に逆行するものであり、また、ガス生産国であるウクライナが欧州市場に進出することも妨げるロシアの狙いもあると指摘している。米国政府は、同プロジェクトに関与している欧州企業への制裁も検討している。(米国議会, Bloomberg, 2018/12/12)
欧州委員会がNord Stream 2の建設中止を求める決議を採択
- 欧州委員会は、12月12日、Nord Stream 2の建設中止を求める決議を採択した。欧州はウクライナとの良好な関係を重視し、欧州のエネルギー安全保障に脅威をもたらすロシアの政治的プロジェクトであるNord Stream 2に反対することを表明した。決議の中で、11月25日に発生したケルチ海峡でのロシアのウクライナ船への攻撃を改めて非難し、ケルチ海峡の航行の自由を求めるとともに、船員の迅速な解放を要求することも記されている。
- Nord Stream 2は複数の国の領土と領海を通る計画だが、そのうち建設許可を出していないのはデンマークのみで、デンマークはプロジェクトの否認または延期を求めることを検討している。Gazpromはデンマークの領海を避けるルートを検討中。(欧州委員会, Tass, 2018/12/12)
(2)Turk Stream
トルコは陸地部分のパイプの建設を開始
- 12月13日、トルコのエルドアン大統領は、Turk Streamの陸地での建設を開始し、2019年末までに建設を終える見込みであると述べた。TurkStreamは2つの支線があり、一つはトルコへ、もう一つはトルコを通って欧州へガスを輸送する。トルコ陸上部分の総延長は180km。(Prime, 2018/12/13)
(3)「シベリアの力」ガスP/L
建設作業の大半を完了
- GazpromのCEO、Alexei Miller氏は、「シベリアの力」ガスパイプラインの建設作業の大半が完了し、パイプライン建設の重要なマイルストーンに達したと語った。ハバロフスクとウラジオストクを経由する東ルートのガスの供給は、2019年後半となる見通し。 (TASS 2018/12/21)
(4)Yamal LNG
第3トレインの運転を開始
- NOVATAKは12月11日、Yamal LNGの第3トレインが予定されていた16.5百万トン/年の生産能力に達したと発表した。12月11日には、メドベージェフ首相やプロジェクトの関係者を招いた式典が開催された。
- Yamal LNGは第2トレインに続き、この第3トレインもスケジュールを前倒ししての運転開始となっている。当初は第3トレインまでの予定であったが、現在、NOVATEKのLNG技術を利用した100万トン規模の第4トレインが準備されている。
- ・ Yamal LNGからは2017年12月から、既に100隻のカーゴにより7.5百万トンのLNGが輸出されている。(Novatek, government.ru, 2018/12/11)

上記写真出典:http://government.ru/en/news/35055/
フランス政府が債務保証の強化を決定
- 12月17日、フランスのBruno Le Maire経済大臣は、ロシアのMaxim Oreshkin経済発展大臣との面談のあと、記者に対してプロジェクトに対するフランスの謝意を示すためにYamal LNGに対する保証を強化する決定をしたと発表した。フランス政府はYamal LNGの債務に対する返済猶予を延長する。また、Oreshkin大臣はフランス政府が政府保証の要件を変更し、Yamal LNGの利益をArctic LNG 2に再投資できるように変更すると述べた。Maire大臣はArctic LNG 2においてもフランス企業が大きな役割を果たすことを希望するとも述べた。(Interfax, Prime, 2018/12/17)
(5)Arctic LNG- 2
着底式プラットフォームの設計・建設及びガスタービン供給の契約締結
- 12月21日、NOVATEKは着底式プラットフォーム(GBS)の設計・建設と、設備供給の契約を締結したと発表した。GBSはHeavy Industries Russia (RHI Russia B.V.) とSAIPEM S.p.A,のJV、SARENが請け負う。本契約は管理・設計・調達・建設が含まれ、合計3基のGBSを建設する。ガスタービンとガスタービンコンプレッサーの供給は、Nuovo Pignoneと契約を締結した。Nuovo PignoneはYamal LNGにもガスタービンを供給している。(Novatek, government.ru, 2018/12/21)
(6)Baltic LNG
ShellがBaltic LNGの大きなシェアの獲得に関心
- 12月12日、Shellのロシア代表Cederic Cremers氏が Kommersant紙のインタビューで、GazpromのBaltick LNGプロジェクトで大きなシェアを獲得することに関心を示した。一方、Gazpromが他の企業とも交渉していることにも触れ、パートナーとも喜んで協力するとコメントした。また、Cederic Cremers氏はBaltic LNGの設備は13百万トンにもなり得ると語った。
- Gazpromは9月に三井物産と覚書に調印しており、12月13日には伊藤忠商事とも覚書に調印したと発表した。(Kommersant 2018/12/12, Gazprom, 2018/12/13)
以上
(この報告は2019年1月22日時点のものです)