ページ番号1007734 更新日 平成31年2月28日

ベネズエラ:米国政府による対PDVSA制裁とその影響

レポート属性
レポートID 1007734
作成日 2019-02-28 00:00:00 +0900
更新日 2019-02-28 16:33:33 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発基礎情報
著者 舩木 弥和子
著者直接入力
年度 2018
Vol
No
ページ数 4
抽出データ
地域1 中南米
国1 ベネズエラ
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 中南米,ベネズエラ
2019/02/28 舩木 弥和子
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概要

  1. 米財務省は2019年1月28日、PDVSAを経済制裁の対象に指定した。この制裁により、米国企業はベネズエラから原油を輸入したり、ベネズエラ国内で活動したりできる期限が定められるとともに、ベネズエラ原油購入代金等を米国政府指定の口座に入金しなくてはならないとされた。また、非米国企業であっても、米国の決済システム等との関係次第では、米国の制裁に抵触する可能性がある。
  2. 2018年の米国のベネズエラ原油輸入量は50万b/d。カナダ、エクアドル、メキシコ、サウジ等の原油がベネズエラ原油の代替となる可能性があるが、サウジ以外は即座に対応できず、サウジもOPEC・非OPEC協調減産の急先鋒であるので対応が難しくなることも考えられる。したがって、重質高硫黄原油の需給が引き締まり、価格が上昇している。一方、ベネズエラは、米国に輸出できない原油を主に中国とインドに輸出、イランの場合とは異なり輸出先を失うことにはならないとみられていた。しかし、米国政府指定の口座に入金しなくてはならないことがネックとなり、また、非米国企業も制裁に抵触する可能性が生じたことから、ベネズエラの原油輸出量が激減している模様である。
  3. 米国は戦略石油備蓄(SPR)を6.49億bbl保有しているが、その原油はベネズエラの原油とは性状が異なり、米国メキシコ湾岸の製油所でSPR原油を利用すれば、精製マージンが縮小し、精製業者にとっては不利となる。それにもかかわらず、米Trump政権がSPRを放出する可能性があるとの噂が出ていたが、今のところその動きは収まったように見える。
  4. ベネズエラの石油産業については、希釈剤やPDVSAの資金不足の状況が悪化し、石油生産量がさらに減少することは避けられないと思われる。なお、Guaido氏及び国民議会が、政権交代を見据えて、ベネズエラの石油産業に民間投資を呼び込み、活性化するための戦略を策定しようと動いているという。しかし、長期間にわたり十分な投資が行われてこなかったことから、生産量回復には多額の投資と時間、安定した電力の供給、治安の回復、熟練労働者の復帰等が必要と考えられる。中長期的なベネズエラの見通しについても不安定な状況が続くといった厳しい見方が多い。

(Platts Oilgram News、International Oil Daily、Business News Americas、Business Monitor International他)

1.米国政府による対PDVSA制裁

米国財務省外国資産管理室は2019年1月28日、2018年11月1日付大統領令13850号で制裁対象とした「ベネズエラ政府」にベネズエラの国営石油会社PDVSAを追加し、PDVSAを経済制裁の対象に指定したと発表した。Trump政権は2019年1月23日に、適正な選挙を経ていないMaduro政権を「非正統」であるとし、ベネズエラ憲法に基づいてJuan Guaido国民議会議長をベネズエラの暫定大統領として承認した。米国は、今回の制裁により、Maduro政権への資金流入を阻止し、民主的な選挙で選ばれた政権にベネズエラの石油産業を引き渡せるよう保護するとともに、Maduro政権が存続した場合にはMaduro大統領が石油産業を運営することを困難にすることを狙っていると考えられる。主な制裁の内容は以下の通りとなっている。

  • 米国内のPDVSA資産凍結。
  • 米国企業のベネズエラからの原油輸入停止。ただし、PDVSAの米国精製・販売部門子会社Citgoは7月27日まで、その他の企業は4月28日まで原油輸入を継続することを認める。米国企業は原油購入代金をMaduro政権がアクセスできない米国政府指定の口座に入金しなくてはならない。
  • Chevronとサービス会社Halliburton、Schlumberger、Baker Hughes、Weatherford及びその子会社に対し現在のベネズエラでの操業を7月27日まで継続することを認める。ただし、米国からベネズエラへの希釈剤の輸出は認めない。
  • Citgoは操業を継続できるが、収益はMaduro政権がアクセスできない米国政府指定の口座に入金しなくてはならない。

今回の制裁措置により、ベネズエラは年110億ドルの輸出収入を失い、70億ドルに上る資産を凍結されることとなると、米国は推定している。

さらに、米国財務省は1月31日に、非米国企業であっても米国の決済システムや米国のコモディティブローカーを通じたPDVSAとの取引は4月28日までに終了させなくてはならないとした。

2.市場への影響

米国は2018年に、ベネズエラ原油約50万b/dを輸入している。オリノコ重質油を改質した重質高硫黄の原油が多い。

主要なベネズエラ原油購入企業はValero、Citgo、Chevron、PBFの4社となっている。これらの企業は主に米国のメキシコ湾岸に重質高硫黄原油を処理する精製施設を保有しており、普段は安価な重質高硫黄製品を精製することで高いマージンを得ている。このため、ベネズエラ原油と同様の品質の重質高硫黄原油を手当てしたいところだ。

これらの企業は、世界中にネットワークを持っており、ベネズエラからの原油輸入減少に対し数量を確保することは可能と見られている。ただし、ベネズエラ原油と同様の性質の原油を生産するカナダ、エクアドル、コロンビア、メキシコ、サウジアラビア、イラク、クウェート等のうち、カナダは、増産余力はあるものの、メキシコ湾への輸送インフラが不足している。メキシコは原油生産量が減少中であることに加え、Pemexが生産する原油が契約済みのため、米国向け供給量を増やすことができない。エクアドルやコロンビアも急激な増産は難しい。サウジアラビアは対応可能だが、OPEC・非OPEC協調減産の急先鋒であるので対応が難しくなることも考えられる。

このような状況から、精製マージンの低下を忌避する製油所の稼働率が低下し、石油製品が十分に市場に出回らず、石油製品の価格が上昇し、それにより重質原油の価格が上昇している。

一方、ベネズエラは、米国に輸出できない重質高硫黄原油を中国、インド等に輸出するとみられている。ベネズエラは、2018年10~11月に中国、インドにそれぞれ20万b/d程度を輸出しているが、40万b/d以上を輸出していた時期もあり、両国合わせて追加で40万b/d程度のベネズエラ原油を受入可能と考えられる。したがって、ベネズエラは、多少の割引は行うことになるものの、イランの場合とは異なり輸出先を失うことにはならないと思われた。しかし、原油購入代金を米国政府指定の口座に入金しなくてはならず、また、非米国企業も制裁に抵触する可能性が生じたこともあり、ベネズエラの原油輸出量が激減しており、ベネズエラの石油貯蔵設備は満杯になっているという。さらに、ベネズエラ原油を積んだタンカーがメキシコ湾に停滞しており、その原油の量は700万~800万bblに及んでいるという。

3.今後の見通し

1月に米国がPDVSAを経済制裁の対象に指定した直後には、米国が、SPR(備蓄量6.49億bbl)を放出するのではないかとの議論があった。しかし、SPRは、軽質原油が主体で、残りは中質原油となっている。また、SPR原油の硫黄分による分類については、2016年5月時点で、低硫黄原油が38.3%、高硫黄原油が40%となっている。メキシコ湾岸に製油所を保有する精製業者が、このように重質高硫黄のベネズエラ原油と性状が異なり、高度化された製油所とマッチしない原油に興味を持つとは考えにくい。しかし、Trump大統領がこの点を十分に理解せず、SPRを放出する可能性はあるとの見方もあった。ただし、現時点ではその動きは収まったように見える。

ベネズエラの石油生産に関しては、Chevronやサービス会社は7月27日まで操業を継続できることとなった。しかし、一方で、米国からの希釈剤の輸入が禁止された。ベネズエラは米国から10万b/d程度の希釈剤を輸入している。代わりとなる希釈剤が入手できない場合、IEAによれば、2018年12月時点で125万b/dまで減少しているベネズエラの原油生産量が、さらに大きく落ち込む可能性がある。加えて、今回の制裁によりPDVSAの資金不足の状況は厳しくなると考えられ、Maduro政権に対する抗議行動の激化やMaduro政権が存続するか否かといった問題もあることから、原油生産量の大幅な減少は避けられないと思われる。

なお、Guaido氏及び国民議会が、政権交代を見据えて、ベネズエラの石油産業に民間投資を呼び込み、活性化するための戦略を策定しようと動いている。Guaido氏及び国民議会は、現在の炭化水素法を改正し、PDVSAが全ての石油プロジェクトの過半を所有するとする規則を変更、ロイヤルティの引き下げ、競争力のある税率の設定等を実現しようと検討しているという。また、メキシコのEnrique Peña Nieto前政権のように、PDVSAに保有を希望する鉱区を申請させ、同社の投資能力、技術力等に見合うと判断された鉱区を付与するラウンド0を実施し、PDVSAが返還した鉱区を入札にかけることも検討されている。しかし、長期間にわたり十分な投資が行われてこなかったことの代償は大きく、生産量回復には多額の投資と時間が必要になるだろうと厳しい見方がなされている。加えて、安定した電力の供給、治安の維持や安全の確保、熟練労働者のベネズエラ石油産業への復帰がなければ、石油産業の復興は難しいと考えられる。

軍部の動きに関しては、現時点では、ベネズエラの軍部の太宗はMaduro政権への忠誠を示していると伝えられている。二十数名の兵士により武器庫が襲われる事件があったが、すぐに鎮圧された。また、2月2日朝には空軍のフランシスコ・ジャネス少将が、Guaido氏支持を表明する動画をSNSに投稿したとされる。さらに、2月23日には、Guaido氏及び国民議会派主導で人道支援物資搬入が試みられたが、Maduro大統領が受け取りを拒否するよう指示したことに反抗し百数十名の将兵が離反したとされている。このようにMaduro政権から離反する者が増える傾向にはあるが、依然として軍の大半がMaduro政権を支持しているという。

中長期的なベネズエラの政治、経済、社会状況についても、中国やロシアからの支援を受ける場合、これらの国の企業に石油利権の主導権を取られる恐れがあり、逆に野党の健闘またはアメリカ等の支援で新しい体制となっても、無政府状態と経済危機からのスタートとなり、不安定な状況が続くといった厳しい見通しが多い。Guaido暫定大統領側には米国、ブラジル等リマグループが、Maduro大統領側にはロシア、中国、キューバ、メキシコ、トルコ等独裁政権的、もしくは左派等の反米勢力がついていることから、シリアのように代理戦争・内戦状態に陥ることを懸念する声も聞こえている。

以上

(この報告は2019年2月28日時点のものです)

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