ページ番号1007747 更新日 平成31年4月12日

原油市場他:サウジアラビアによる積極的な原油供給削減方針の情報等により上振れする原油価格

レポート属性
レポートID 1007747
作成日 2019-03-18 00:00:00 +0900
更新日 2019-04-12 13:24:43 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 市場
著者 野神 隆之
著者直接入力
年度 2018
Vol
No
ページ数 29
抽出データ
地域1 グローバル
国1
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 グローバル
2019/03/18 野神 隆之
Global Disclaimer(免責事項)

このwebサイトに掲載されている情報は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含まれるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

※Copyright (C) Japan Oil, Gas and Metals National Corporation All Rights Reserved.

PDFダウンロード2.0MB ( 29ページ )

概要

  1. 米国では、製油所の春場のメンテナンス作業実施に伴う稼働低迷もあり、石油製品生産活動が鈍化したことにより、ガソリン在庫は減少傾向となったものの、平年幅上限を超過する状況は継続している。また、留出油についても製油所での生産鈍化に加え、気温低下で暖房向け需要が堅調となったと見られることで、当該製品在庫は減少したが、平年幅上限を超過する状態となっている。原油については、製油所での精製処理活動が抑制されたものの、サウジアラビアやベネズエラからの原油輸入が減少したこともあり、比較的限られた範囲で在庫量は推移した。
  2. 2019年2月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国での増加を欧州及び日本での減少で相殺して余りあったことから、OECD全体での当該在庫水準は低下したが、平年幅を超過する状態は継続している。また、石油製品在庫については、欧州では微減となった他、米国でも製油所の稼働低迷に伴う石油製品生産活動鈍化もあり、在庫は減少した。日本においても、気温が低下したことに伴い暖房向けに灯油等の需要が増加した他、年度末を控え重機類向けの軽油需要が増加したと見られることから、これら製品の在庫が減少した結果、石油製品全体の在庫水準は低下した。この結果、OECD諸国全体として石油製品在庫は減少し、量としては平年並みとなっている。
  3. 2019年2月中旬から3月中旬にかけての原油市場では、3月中旬初頭前後までは、米国のトランプ大統領による原油価格上昇及びOPEC産油国等の減産措置実施を牽制する旨の発言に加え、米国及び中国等の経済が減速しつつある旨示唆する経済指標類の発表が原油相場に下方圧力を加えた一方で、米国及び中国との間での貿易紛争を巡る首脳会談が3月下旬頃に実施される可能性がある旨の報道に加え、トランプ大統領の原油価格上昇等の牽制発言に対しサウジアラビアのファリハ エネルギー産業鉱物資源相が反論したこと等が、原油相場に上方圧力を加えたことから、原油価格はWTIの終値ベースで1バレル当たり55~58ドルと比較的限られた範囲内で変動した。しかしながら、その後サウジアラビアの積極的な原油供給削減方針の情報やベネズエラでの大規模停電に伴う原油出荷への支障発生もあり、原油相場は3月半ばには58ドルを超過する場面も見られている。
  4. 今後夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期到来への意識が強まることにより、季節的な石油需給の引き締まり感が市場で発生すること、米国によるイランやベネズエラに対する制裁により両国からの原油供給が低下するとの懸念が市場で継続すると見られる他、サウジアラビアやロシア等のOPEC及び一部非OPEC産油国の減産により、石油需給の引き締まり感が少なくとも当面は市場で継続すると思われること等が原油相場に上方圧力を加える反面、原油相場が上昇を続けるようであれば、米国のトランプ大統領による価格上昇を牽制する旨の発言がなされるかもしれないことに対し市場が神経質になることが原油相場の上昇を抑制する結果、原油価格は比較的限られた範囲を中心に推移する可能性があるものと考えられる。

(IEA、OPEC、米国DOE/EIA他)

1.原油市場を巡るファンダメンタルズ等

2018年12月の米国ガソリン需要(確定値)は日量922万バレルと前年同月比で0.3%程度減少した(図1参照)が、速報値(前年同月比で2.4%程度減少の日量902万バレル)からは上方修正されている。同月のガソリン小売価格が1ガロン当たり2.457ドルと前年同月比で0.137ドル(約5.3%)、前月比で0.279ドル(約10.2%)、それぞれ下落したことに加え、同月の同国個人可処分所得が前年同月比で4.6%伸びたことから、当該需要が刺激されていると見られるものの、11月の同国ガソリン需要が前年同月比で1.5%程度増加した反動が12月に現れた結果、伸びが抑制された可能性がある。他方、2019年2月の同国ガソリン需要(速報推定値)は日量887万バレル、前年同月比で0.6%程度の増加となった。同月のガソリン小売価格が1ガロン当たり2.393ドルと前年同月を0.312ドル(約11.5%)下回ったものの、前月(同2.338ドル)からは0.055ドル(約2.4%)上昇したことが、2月の同国ガソリン需要を比較的小幅の増加にとどめたものと考えられる。他方、2月に入り米国の製油所が春場のメンテナンス作業実施時期に突入したこともあり、稼働率は80%台後半、原油精製処理量は日量1,500万バレル台後半と低迷した(図2参照、因みに2019年1月初頭まで米国原油精製処理量は日量1,700万バレル台後半、稼働率は90%台後半であった)。このため、同国のガソリン製造活動も鈍化したと見られる(最終製品生産量は図3参照)ことから、ガソリン在庫は2月上旬から3月上旬にかけては、総じて減少傾向となったが、平年幅上限を超過する状態は維持されている(図4参照)。

図1 米国ガソリン需要の伸び(2006~19年)

図2 米国の原油精製処理利用(2009~19年)

図3 米国のガソリン(最終製品)生産量(2009年~19年)

図4 米国ガソリン在庫推移(2003~19年)

2018年12月の同国留出油(軽油及び暖房油)需要(確定値)は日量403万バレルと前年同月比で1.3%程度の増加となったが、速報値である日量403万バレル(同1.4%程度の増加)から若干ながら下方修正された(図5参照)。2018年12月の米国の鉱工業生産が前年同月比で3.9%程度の伸び、同月の同国の物流活動も同3.0%の拡大となり、11月の同国鉱工業生産の前年同月比4.3%増加、及び物流活動の同5.5%拡大から減速している旨明らかになったものの、11月の留出油需要が前年同月比で0.7%の減少となった反動が12月に発生した他、11月後半に米国の暖房用留出油需要の中心地である北東部の気温が平年及び前年同期を相当程度下回って低下したことで暖房向け需要が喚起された影響が12月まで引き継がれたと見られることにより、12月の留出油需要が前年同月比で増加した可能性がある。また、2019年2月の留出油需要(速報推定値)は日量407万バレルと、前年同月比で2.7%程度の増加となった。同月の同国非農業部門雇用者数が前月比で2万人の増加と2016年5月以来の低い伸びを記録したうえ、2月の鉱工業生産が前年同月比で3.5%の増加にとどまるなど、同国の経済減速感が強まったことから、同国の物流活動の伸びが鈍化していると見られる(因みに2019年1月の同国鉱工業生産は前年同月比で3.9%の伸びと2018年12月と同率で11月からは減速したうえ、物流活動は同4.7%の増加と2018年12月からは伸び率は回復しているものの11月のそれは下回っている)ため、この面では同国の留出油需要を抑制する方向で作用するところであるが、2019年1月の留出油需要が前年同月比で1.4%程度の減少となっていることの反動に加え、2019年2月は米国北東部で気温が平年を相当程度下回る場面が見られるとともに前年同月よりも冷え込んだことから、暖房のための留出油需要が増加したものと考えられる。他方、米国の製油所で春場のメンテナンス作業実施等により稼働が低迷するとともに留出油生産活動が抑制された(図6参照)ことに加え、2月後半から3月上旬にかけ、米国北東部では平年を割り込んで気温が低下したことから、2019年2月上旬から3月上旬にかけ留出油在庫は減少傾向となったが、3月上旬時点では平年幅を超過する量となっている(図7参照)。

図5 米国留出油需要の伸び(2006~19年)

図6 米国の留出油生産量(2009~19年)

図7 米国留出油在庫推移(2003~19年)

2018年12月の米国石油需要(確定値)は、前年同月比で0.8%程度増加の日量2,048万バレルとなった(図8参照)。留出油、プロパン/プロピレンの需要増加が石油需要の伸びを牽引している格好となっている。ただ、その他の石油製品の需要が速報値から確定値に移行する段階で下方修正された(速報値の日量411万バレルが確定値では同367万バレルとなった)ことにより、当該需要は速報値(日量2,074万バレル、前年同月比2.0%程度の増加)から下方修正されている。プロパン/プロピレンについては11月後半に米国一部地域の気温が平年及び前年同期を相当程度下回って低下したことで暖房向け需要が喚起された影響が12月まで引き継がれたことで、当該需要が前年同月比で増加した可能性がある。他方、2019年2月の米国石油需要(速報推定値)は、日量2,050万バレルと前年同月から4.5%程度増加した。留出油、プロパン/プロピレン及びその他の石油製品の需要増加が石油製品全体の需要の伸びに寄与している格好となっている。プロパン/プロピレンの需要増加は同月の米国一部地域の気温が前年同月と比べて冷え込んだことから、当該需要が相対的に顕著になったことによるものと考えられる。他方、2019年2月のその他石油製品の需要は日量398万バレルと前年同月比で43万バレルの増加となっているが、当該需要は速報値から確定値に移行する段階で下方修正されることにより同国の石油需要(確定値)が調整されることもありうる。また、製油所でのメンテナンス作業実施もあり稼働の低下とともに原油精製処理活動が低迷した一方で、原油輸入量が減少したり(2019年1月1日から減産を実施しているサウジアラビアや1月28日に米国が制裁実施を発表したベネズエラからの輸入減少が顕著である)、2月中旬以降原油輸出量が堅調になったりした(サウジアラビアによる積極的な原油輸出削減方針の発信やロシアの目標達成に向けた減産努力継続の表明等もあり2019年2月中旬以降ブレント原油価格がWTI原油のそれを上回る度合いが拡大したことが影響していると見られる)ことから、2019年2月上旬から3月上旬にかけ原油在庫は比較的限られた範囲内で変動したが、平年幅上限を超過する状態は続いている(図9参照)。そして、原油、ガソリン及び留出油の在庫が平年幅上限を上回っていることから、原油とガソリンを合計した在庫、そして原油、ガソリン及び留出油を合計した在庫は、いずれも平年幅上限を超過する状態となっている(図10及び11参照)。

図8 米国石油需要の伸び(2006~19年)

図9 米国原油在庫推移(2003~19年)

図10 米国原油+ガソリン在庫推移(2003~19年)

図11 米国原油+ガソリン+留出油在庫推移(2003~19年)

2019年2月末のOECD諸国推定石油在庫量の対前月末比での増減は、原油については、米国では製油所の稼働低下の影響で増加している(2月末に至る時点では、サウジアラビア等の輸入減少及び米国からの輸出増加は、まだ在庫にはそれほど大きな影響を及ぼしていなかった)一方、欧州では製油所の稼働が安定する中で在庫も微減にとどまった。しかしながら、日本では在庫は減少している(3月以降実施される予定である春場の製油所メンテナンス作業実施時期の接近による稼働低下に向け在庫を削減している可能性が考えられる)。結果としてOECD諸国全体では、米国での在庫増加を欧州及び日本での原油在庫減少で相殺して余りあったことから、当該在庫水準は低下したが、平年幅を超過する状態は継続している(図12参照)。また、石油製品については、欧州では安定した製油所の稼働と石油製品生産活動のもと在庫は微減となった(ガソリンの精製利幅低下により当該製品生産が抑制されたことから在庫が減少した反面留出油の精製利幅維持により当該製品生産が拡大したことから在庫が増加したことで両製品の在庫増源が相殺された可能性がある)。また、米国では製油所のメンテナンス作業実施に伴う稼働低迷による石油製品生産活動鈍化もあり、ガソリン、留出油及びその他の石油製品等の在庫が幅広く減少したことにより、同国の石油製品在庫は減少となった。日本においても、気温が低下したことに伴い暖房向けに灯油等の需要が増加した他、年度末を控え重機類向けの軽油需要が増加したと見られることから、これら製品の在庫が減少した結果、石油製品全体の在庫水準も低下した。この結果、OECD諸国全体として石油製品在庫は減少となり、量としては平年並みの水準に位置している(図13参照)。そして、原油在庫が平年幅上限を上回る一方で石油製品在庫が平年並みの量となっていることから、原油と石油製品を合計した在庫は平年幅上限を上回る状態になっている(図14参照)。なお、2019年2月末時点のOECD諸国推定石油在庫日数は60.0日と1月末の推定在庫日数(60.1日)から微減となっている。

図12 OECD諸国原油在庫推移(2005~19年)

図13 OECD諸国石油製品在庫推移(2005~19年)

図14 OECD諸国石油在庫(原油+石油製品)推移(2005~19年)

2月13日に1,600万バレル台半ば程度の量であったシンガポールでのガソリン等の軽質留分在庫は、2月20日は1,700万バレル台前半の量にまで増加、週間統計史上最高水準に到達した。その後2月27日には1,700万バレル弱、3月6日には1,500万バレル台半ばの量へと減少したものの、3月13日には1,600万バレル台半ば程度の水準へと回復した。また、当該在庫量は継続的に前年を超過しているうえ、過去5年平均も上回っている。シンガポールへの軽質留分の流れの相当部分は中国からであるが、中国が2019年の第一弾のガソリン輸出枠として525万トン(推定4,436万バレル)を設定したこと(2019年1月9日に報じられる)に伴い同国からアジア市場に輸出された当該製品(同国ガソリン需要が伸び悩んだことが影響していると見られるが、これは同国の経済減速が影響を及ぼしている可能性がある)がシンガポールに流入した側面がある反面、中国をはじめとするアジア諸国の一部の製油所でメンテナンス作業実施時期に突入し始めたことが軽質留分輸出を抑制したと見られることが、比較的限られた範囲内での軽質留分在庫変動の背景にあると見られる。また、この先の製油所のメンテナンス作業実施時期突入による各国での国外市場への製品輸出の鈍化が市場で意識され始めたことが、当該製品価格に上方圧力を加えた結果、2月中旬から3月中旬にかけガソリン価格はドバイ原油価格よりも顕著な上昇傾向を示した。

ナフサについては、米国での夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期到来が市場関係者の視野に入りつつあることから、ガソリンに混入するナフサの需要が増加することにより、ガソリンを製造し米国に輸出している欧州方面からアジアへのナフサの流れが低下するとの見方が市場で発生したうえ、アジア諸国の製油所が春場のメンテナンス作業実施時期に突入しつつあったことで、地域市場での供給が低下するとの観測がナフサ価格を下支えしたものの、3月から4月にかけ日本や韓国における石油化学部門でのナフサ分解装置がメンテナンス作業実施により停止することに伴い、ナフサの需要が低下するとの見方が市場で発生したことが、ナフサ価格を抑制する方向で作用したことから、2月中旬から3月中旬にかけてのナフサ価格とドバイ原油価格の差(この場合ナフサの価格がドバイ原油のそれを下回っている)は比較的限られた範囲で変動した。

2月13日には1,100万バレル台半ば程度の量であったシンガポールの中間留分在庫は、2月20日には1,200万バレル台前半の量へと増加、2月27日及び3月6日も1,200万バレル台前半の量を維持した。ただ、3月13日には1,200万バレル強の量へ減少している。このようにシンガポールの中間留分在庫は2月中旬から3月中旬にかけ概ね限られた範囲で変動しつつも若干ながら増加傾向となった。中国が2019年第一弾の軽油及びジェット燃料の輸出枠(軽油890万トン(推定6,639万バレル)、ジェット燃料735万トン(同5,792万バレル))設定(1月9日に報じられる)に伴い、同国からアジア諸国方面へ輸出された当該製品(中国での留出油石油需給が緩和していることが背景にあると見る向きもあるが、これは、同国経済の減速が関係している可能性がある)がシンガポールに流入してきていることに加え、韓国からも留出油が流入した(国内経済減速に伴い軽油需要が抑制されつつあることが同国の当該製品輸出に影響している可能性がある)ことが、シンガポールでの在庫を増加させたものの、アジア諸国の一部製油所での春場のメンテナンス作業実施に伴いこれら諸国の国外への輸出が減少していると見られることが、在庫の大幅な増加を阻止する格好となっている。また、この先アジア諸国での製油所のメンテナンス作業実施が活発化するとともに、アジア諸国で輸出される中間留分在庫量が限られた規模になる結果需給が引き締まるとの観測が市場で発生していることもあり、例えばシンガポールでの軽油とドバイ原油の価格差(この場合軽油がドバイ原油価格を上回っている)は上下に変動しながらもどちらかというと拡大する傾向を示している。

2月13日には2,300万バレル台前半の量であったシンガポールの重油在庫は、2月20日には2,000万バレル台半ば程度の量へと減少した。2月27日には2,100万バレル台後半への量へと増加したものの、3月6日には2,000万バレル台前半へと在庫水準は再び低下した。3月13日には2,200万バレル台前半の水準へと回復したものの、2月13日の量は下回っている。欧州方面からシンガポールへの重油流入に伴う市場での在庫増加観測もあり、1月後半以降しばしばアジアの重油価格が欧州のそれを上回る度合いが縮小したことにより、その後欧州方面からアジア諸国への重油の流入が抑制されたことに加え、アジア諸国で春場の製油所メンテナンス作業実施時期に入りつつあることから、国外への重油輸出が鈍化してきていることが、シンガポールでの重油在庫の増加を抑制する格好となっているものと考えられる。他方、製油所での春場のメンテナンス作業実施による石油製品生産活動の鈍化に伴う重油需給の引き締まり感が市場で意識され始めたことが重油価格に上方圧力を加えたものの、海上物流活動が鈍化した(米国と中国の貿易紛争が物流活動に影響を及ぼしている可能性があると見る向きもある)ことに伴う船舶用重油需要の鈍化が重油価格に下方圧力を加えた結果、当該価格差は比較的限られた範囲内で変動している。

2.2019年2月中旬から3月中旬にかけての原油市場等の状況

2019年2月中旬から3月中旬にかけての原油市場では、3月中旬初頭前後までは、原油価格上昇とOPEC産油国等の減産措置実施を牽制する旨の米国のトランプ大統領の発言に加え、米国及び中国等の経済が減速しつつある旨示唆する経済指標類の発表が原油相場に下方圧力を加えた一方で、米国及び中国との間での貿易紛争を巡る首脳会談が3月下旬頃に実施される可能性がある旨の報道に加え、トランプ大統領が原油価格上昇等を牽制する旨発言したことに対しサウジアラビアのファリハ エネルギー産業鉱物資源相が反論したこと等が、原油相場に上方圧力を加えたことから、原油価格はWTI終値ベースで1バレル当たり55~58ドルと比較的限られた範囲内で変動した。しかしながら、その後サウジアラビアの積極的な原油供給削減方針の情報やベネズエラでの大規模停電に伴う原油出荷への支障による市場での石油供給途絶懸念の増大に加え、米国の原油やガソリン在庫の減少もあり、原油相場は58ドルを超過して上昇する場面も見られている(図15参照)。

図15 原油価格の推移(2003~19年)

2月18日には、米国ワシントン大統領誕生記念日(President’s Day)に伴う休日により、米国原油先物市場では通常取引は実施されなかったが、2月19日には、フランスのタンカー追跡データ会社Kplerが、2月前半のサウジアラビアからの原油輸出が日量620万バレルとなっていると見られる旨明らかにしたことで、2月12日にフィナンシャル・タイムスにより報じられた同国の意向であると見られる3月の原油輸出予定量日量690万バレルを下回る旨示唆されたこともあり、世界石油需給の引き締まり感を市場が意識したことから、この日(2月19日)の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.50ドル上昇し、終値は56.09ドルとなった。2月20日も、この日サウジアラビアのファリハ エネルギー産業鉱物資源相が、4月までには石油市場は均衡しており、米国のイラン及びベネズエラ制裁により供給余剰はなくなるであろうと思う旨明らかにしたことで、この先の石油需給引き締まり感を市場が意識したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり56.92ドルと前日終値比で0.83ドル上昇した(なお、この日を以てNYMEXの2019年3月渡し原油先物契約は取引を終了したが、4月渡し原油先物価格のこの日の終値は1バレル当たり57.16ドル(前日終値比0.71ドルの上昇)であった)。この結果原油価格は2月18~19日の2日間で併せて1バレル当たり1.33ドルの上昇となった。2月21日の原油価格の終値は1バレル当たり56.96ドルと前日終値比で0.04ドル上昇したが、4月渡し同士では0.20ドルの下落であった。これは、2月21日に米国エネルギー省(EIA)から発表された同国石油統計(2月15日の週分)で原油在庫が前週比で367万バレルの増加と市場の事前予想(同310~350万バレル程度の増加)を上回って増加した他、同国の原油生産量が前週から日量10万バレル増加し同1,200万バレルに到達した旨判明したこと、2月21日に英国金融情報サービス会社IHSマークイットから発表された2019年2月のユーロ圏製造業購買担当者指数(PMI、50が当該部門拡大と縮小の分岐点)(速報値)が49.2と1月の50.3から低下、2013年6月(この時は48.7)以来の低水準になった他、市場の事前予想(50.3)を下回ったうえ、2月21日に発表された米国フィラデルフィア連銀製造業景況感指数(ゼロが当該部門拡大と縮小の分岐点)がマイナス4.1と市場の事前予想(プラス14.0)を下回ったことに加え、同日米国商務省から発表された2018年12月の同国耐久財受注が前月比で1.2%の増加と市場の事前予想(同1.5~1.7%程度の増加)を下回ったこと、そして、同日全米不動産業協会(NAR)が発表した2019年1月の同国中古住宅販売件数が年率494万戸と前月から1.2%減少、2015年11月(この時は同478万戸)以来の低水準となった他、市場の事前予想(同500万戸)を下回ったこともあり、米国株式相場が下落したことによる。2月22日には、この日にかけ実施されていた米国及び中国の貿易問題に関する交渉において、中国の為替管理問題につき合意に到達した旨同日米国のムニューシン財務長官が明らかにしたうえ、中国が1兆ドル相当の米国製品の輸入拡大を今後6年かけて実施することで合意した他、予定を2日間延長して貿易問題の関する交渉を継続する旨明らかになったことに加え、この日米国のトランプ大統領がそう遠くないうちに中国の習近平国家主席と会談する意向を示したことで、当該問題解決と関税撤廃に対する楽観的な見方が市場で発生するとともに世界経済減速と石油需要の伸びの鈍化に対する懸念が後退したことから、この日(2月22日)の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.30ドル上昇し、終値は57.26ドルとなった。

2月25日には、これまでの原油価格上昇に対し利益確定の動きが市場で発生したことに加え、2月25日朝に米国のトランプ大統領が「原油価格が高騰しつつある。OPECよ、力を抜いて落ち着きたまえ。世界は価格上昇を受け入れられないし、壊れやすい!」旨表明したことで、この先サウジアラビアをはじめとするOPEC及び一部OPEC産油国による減産措置が緩和される可能性があるとの観測が市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり55.48ドルと前週末終値比で1.78ドル下落した。ただ、2月26日には、米国のトランプ大統領の原油価格上昇圧力緩和への要請にもかかわらず、OPEC及び一部OPEC産油国は、在庫水準を現状から5年平均水準へと引き下げるべく減産を当初予定通り実施、減産の高水準の遵守を推進していくことは疑う余地がない他、現在の市場データに基づけば、2019年末まで減産を継続する可能性がある旨OPEC関係筋が2月26日に明らかにしたと同日ロイター通信が報じたことで、石油需給引き締まり感を市場が意識したことが原油相場に上方圧力を加えた一方、リビアで国連が支援する統合政府(トリポリ拠点)が同国国営石油会社NOCとの間で、操業停止に伴う不可抗力条項の発効が続いていたSharara油田(原油生産能力日量31.5万バレル)の原油生産再開と不可抗力条項の解除に向けた方策実施で合意した旨2月26日に統合政府が発表したことで、同国からの原油生産増加に伴う石油需給緩和観測が市場で発生したことが、原油相場に下方圧力を加えたことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.02ドルの上昇にとどまり、終値は55.50ドルとなった。2月27日には、サウジアラビアのファリハ エネルギー産業鉱物資源相が、OPEC産油国は落ち着いており、非常に緩やかで慎重な方法で減産を行っている旨明らかにし、2月25日に米国トランプ大統領がOPEC産油国に対して原油価格が高騰しつつあることで落ち着いて行動するようにとの要請に反論する旨示唆したことで、この先の石油需給の引き締まり感を市場が意識したことに加え、2月27日にEIAから発表された米国石油統計(2月22日の週分)で原油在庫が前週比で865万バレルの減少と市場の事前予想(同280~400万バレル程度の増加)に反し減少していた旨判明したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり56.94ドルと前日終値比で1.44ドル上昇した。また、2月28日には、この日米国商務省から発表された2018年第四四半期の同国国内総生産(GDP)(速報)が年率で前期比2.6%の増加と市場の事前予想(同2.2~2.3%の増加)を上回っていた旨判明したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.28ドル上昇し、終値は57.22ドルとなった。この結果原油価格は2月27~28日の2日間で併せて1バレル当たり1.72ドル上昇した。しかしながら、3月1日には、この日米国供給管理協会(ISM)から発表された2月の同国製造業景況感指数(50が当該部門拡大と縮小の分岐点)が54.2と前月の56.6から低下、2016年10月(この時は51.7)以来の低水準となった他、市場の事前予想(55.5~55.8)を下回ったことに加え、同日発表された2月のミシガン大学消費者信頼感指数(1966年=100)(確定値)が93.8と2月15日に発表された速報値(95.5)から下方修正され、2016年11月(この時は93.8)以来の低水準となった他、市場の事前予想(95.7~95.9)を下回ったことから、米国経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で増大したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.42ドル下落し、終値は55.80ドルとなった。

ただ、米国と中国との間での貿易紛争に関し、3月下旬頃に両国の首脳が会談し合意する可能性がある旨3月3日に報じられたことにより、これまで賦課した関税措置が緩和する方向に向かうとの期待が3月4日の市場で増大するとともに、両国等の経済減速と石油需要の伸びの鈍化に対する懸念が後退したことに加え、3月4日にロシアのノバク エネルギー相が減産措置を強化することにより3月末までには日量22.8万バレルの減産目標に到達する旨発言したことで、この先の石油需給引き締まり感を市場が意識したこと、ナイジェリア南部のNembe Creek Trunk Lineパイプライン(通常の原油輸送量日量15万バレル程度)が2月28日以降操業を停止した他、Trans Forcados パイプライン(通常の原油輸送量同20~24万バレル程度)が2月25日の週に発生した原油流出により輸送が削減された結果、Nembe Creek Trunk Line パイプラインにより原油供給を受けるBonny Light原油及びTrans Forcados パイプライン により原油供給を受けるForcados原油の出荷に支障が発生している旨3月4日に報じられたことから、この日(3月4日)の原油価格の終値は1バレル当たり56.59ドルと前週末終値比で0.79ドル上昇した。 ただ、3月5日には、3月4日にロシアのノバク エネルギー相が3月末までには減産目標に到達する旨発言したことで、この先の石油需給引き締まり感を市場が意識した流れを引き継いだことが原油相場に上方圧力を加えた反面、3月4日にリビア国営石油会社NOCが、同国のSharara油田につき操業上の安全が確保できたとして、同油田の生産等を再開、操業に関する不可抗力条項の適用を解除するとともに、同油田の生産は数日中に正常な状態に回復する旨表明したことに加え、3月5日に中国の李克強首相が2019年の同国国内総生産(GDP)成長率目標を6.0~6.5%とする旨明らかにしたことで、2018年のGDP成長率である6.6%から同国経済が減速するとともに石油需要の伸びが鈍化するとの観測が市場で発生したことが、原油価格に下方圧力を加えた一方、米国のポンペオ国務長官が米国及び中国との間の貿易問題を巡る協議につき、順調に進展しているが適切な合意でなければトランプ大統領は受け入れを拒否するであろう旨示唆したと3月5日に明らかになったことで、当該協議を巡る不透明感を市場が意識したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.03ドルの下落にとどまり、終値は56.56ドルとなった。3月6日には、この日EIAから発表された米国石油統計(3月1日の週分)で原油在庫が前週比で707万バレルの増加と市場の事前予想(同120~190万バレル程度の増加)を上回って増加している旨判明したことうえ、3月6日に米国企業向け給与計算サービス会社オートマチック・データ・プロセッシング(ADP)及びムーディーズ・アナリティクスから発表された2月の同国民間部門雇用者数が前月比で18.3万人の増加と1月の同30万人の増加(改定値)から伸びが鈍化した他市場の事前予想(同18.9~19.0万人程度の増加)を下回ったことに加え、同日米国商務省から発表された2018年の米国貿易収支が6,210億ドルの赤字と2008年(この時は7,087億ドルの赤字)以来の大幅な赤字となっていた旨判明したこともあり、米国株式相場が下落したことから、この日(3月6日)の原油価格の終値は1バレル当たり56.22ドルと前日終値比で0.34ドル下落した。3月7日には、3月6日にEIAから発表された米国石油統計でガソリン及び留出油在庫が前週比でそれぞれ423万バレル、239万バレルの減少と、市場の事前予想(ガソリン同200~210万バレル程度の減少、留出油同140万バレル程度の減少)を上回って減少している旨判明したことにより、石油製品需給の引き締まり感を市場が意識した流れを引き継いだことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり0.44ドル上昇し、終値は56.66ドルとなった。3月8日には、この日中国税関総署から発表された2月の同国米ドル建て輸出額が前年同月比で20.7%の減少と2016年2月(この時は同26.7%減少)以来の大幅減少となった他、市場の事前予想(同4.8~5.0%減少)を上回って減少したうえ、米ドル建て輸入額が前年同月比で5.2%の減少と市場の事前予想(同0.6~1.4%減少)を上回って減少している旨判明したことに加え、3月8日に米国労働省から発表された2月の同国非農業部門雇用者数が前月比で2.0万人の増加と2017年9月(この時は同1.8万人の増加)以来の低水準の増加となった他、市場の事前予想(同18.0万人の増加)を下回ったことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり56.07ドルと前日終値比で0.59ドル下落した。

ただ、3月8日に米国石油サービス会社Baker Hughesから発表された同国石油坑井掘削装置稼働数が同日時点で834基と前週比で9基減少(同国石油水平坑井掘削装置稼働数は786基と同5基減少)となったことで、この先の同国原油生産増加ペースの鈍化に対する観測が市場で発生した流れが3月11日の市場に引き継がれたことに加え、4月のサウジアラビアの原油生産量が日量1,000万バレルを相当程度下回るうえ、同月の同国の原油輸出量が日量700万バレル割れとなり、それが需要家からの購入希望量を日量63.5万バレル下回っている旨、3月11日にサウジアラビア石油産業関係者が明らかにしたことで、石油需給引き締まり感を市場が意識したこと、3月7日午後以降発生しているベネズエラの大規模停電により、同国主要原油輸出ターミナルのあるホセ(Jose)港からの原油輸出が停止した他、停電で同国国営石油会社PDVSA等による原油生産に深刻な影響が発生している旨3月11日に報じられたことで、同国からの原油供給が大幅に減少するのではないかとの懸念が市場で増大したことから、この日(3月11日)の原油価格は前週末終値比で1バレル当たり0.72ドル上昇し、終値は56.79ドルとなった。3月12日も、サウジアラビアやベネズエラからの原油供給減少懸念が市場で増大した流れを引き継いだことに加え、3月12日にEIAから発表された短期エネルギー展望(STEO)で、EIAが2019年及び2020年の米国原油生産見通しをそれぞれ日量1,241万バレル、同1,320万バレルから、同1,230万バレル、同1,303万バレルへと下方修正したことが、原油相場に上方圧力を加えたものの、3月12日にEIAから発表されたSTEOで、EIAが2019年及び2020年の世界石油需要見通しをそれぞれ日量1億145万バレル、同1億293万バレルから同1億139万バレル、同1億285万バレルへと下方修正したうえ、3月13日にEIAから発表される予定である米国石油統計(3月8日の週分)で、原油在庫が増加しているとの観測が市場で発生したことが、原油相場に下方圧力を加えたことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり56.87ドルと前日終値比で0.08ドルの上昇にとどまった。3月13日には、この日EIAから発表された米国石油統計(3月8日の週分)で原油及びガソリン在庫が前週比でそれぞれ386万バレル、及び462万バレルの減少と市場の事前予想(原油同270~330万バレル程度の増加、ガソリン同250~350万バレル程度の減少)に反し、もしくは上回って減少していた旨判明したことに加え、3月13日に米国商務省から発表された1月の同国耐久財受注が前月比で0.4%の増加と市場の事前予想(同0.4~0.5%の減少)に反し増加していた旨判明したこともあり、米国株式相場が上昇したことから、この日の原油価格は前日終値比で1バレル当たり1.47ドル上昇し、終値は58.34ドルとなった。3月14日も、3月13日にEIAから発表された米国石油統計で原油及びガソリン在庫が市場の事前予想に反し、もしくは上回って減少していた旨判明した流れを引き継いだことで、この日の原油価格の終値は1バレル当たり58.61ドルと前日終値比で0.35ドル上昇した。この結果原油価格は3月13~14日の2日間で併せて1バレル当たり1.82ドルの上昇となった。3月15日には、3月17~18日にアゼルバイジャンのバクーで開催される予定であるOPEC及び一部非OPEC産油国による共同閣僚監視委員会(JMMC: OPEC-Non-OPEC Joint Ministerial Monitoring Committee)を前にして持ち高調整が市場で発生したことから、この日の原油価格の終値は1バレル当たり58.52ドルと前日終値比で0.09ドルの下落にとどまった。

3.今後の見通し等

2月14日に、米国のペンス副大統領は、欧州がイランとの貿易維持のために設立した決済制度である特別目的事業体(SPV)「INSTEX」に関し、米国の対イラン制裁から逸脱するものとして欧州を非難、核合意から離脱するよう促したが、同日欧州関係者はこれに対し反対する意を表明している。2月22日に国際原子力機関(IAEA)は、イランが西側諸国等との核合意に基づきウラン濃縮活動等を制限し続けている他旨の報告をまとめた。3月6日にイラン外務省のアラグチ次官は、欧州が設立した「INSTEX」と同様の決済制度を設置する方針であり、今後数週間で稼働できることが望ましい旨明らかにした。他方、原油価格高騰(ブレントで1バレル当たり65ドルを超過すると快適な水準から外れてしまう旨米国関係筋が示唆)を回避することをトランプ大統領が希望していることに基づき、米国政府はイラン産原油輸入国の原油輸入禁止制裁免除更新期限である5月4日以降イランからの原油輸出を現状(日量125万バレル程度とされる)から削減し同100万バレル未満とするものの制裁免除自体は延長する方向で調整する旨3月13日に報じられる。

3月4日には、リビア国営石油会社NOCがそれまで原油生産を停止していたSharara油田の操業に関し、当該施設を封鎖していた警備兵等が退去したことにより、2018月12月18日に発動していた不可抗力条項の適用を解除、原油生産を再開した旨報じられる。同国最大の油田であるSharara油田の原油生産量は3月10日時点で日量18.3万バレルであり、2週間以内に日量30万バレルに到達する旨3月10日に関係者が明らかにしている。

ナイジェリアでは2月23日にナイジェリアで大統領及び議会選挙が実施され(当初の2月16日から延期)、ブハリ大統領が56%の得票率で再選されたと2月26日に報じられる。他方、ナイジェリアのNembe Creek Trunk Lineパイプラインが2月28日以降操業を停止した他、Trans Forcados パイプラインが2月25日の週に発生した原油流出で輸送量が削減された結果、Nembe Creek Trunk Line パイプラインにより原油供給を受けるBonny Light原油及びTrans Forcados パイプラインにより原油供給を受けるForcados原油の出荷に支障が発生している旨3月4日に報じられる。また、3月1日朝にはNembe Creek Trunk Lineパイプラインで原油流出後爆発が発生したと3月2日に伝えられたが、Nembe Creek Trunk Lineパイプラインを操業するAiteo Eastern Exploration and Productionは、3月6日に、当該爆発及び火災はパイプラインではなく油田(Nembe Creek Well 7と3月6日に報じられる)で発生したものであり、3月2日には鎮火している旨説明している(油田関連施設には大きな被害発生していない旨3月4日に明らかになっている)。なお、3月7日には、Nembe Creek Trunk Lineパイプラインは操業を再開した。

他方、2月6~10日に米軍はプエルトリコやドミニカ共和国等に特殊部隊を配置し、ベネズエラへの人道支援を理由とした軍事介入実施を準備している旨2月14日にキューバ政府が明らかにしている。他方ベネズエラ政府は2月19日に、沖合の同国とカリブ諸島との境界を封鎖した。また、ベネズエラのパドリノ国防相は断固として人道支援物資は受け入れない旨2月19日に表明している。加えて、2月21日にマドゥロ大統領は人道支援物資搬入の経路とされるブラジル北部(ロライマ州)で同国と接する国境を封鎖する旨発表した。2月22日には、ベネズエラとブラジルの国境地帯付近で、国境の封鎖に反対しブラジルからの人道支援物資搬入を支援するベネズエラの先住民とベネズエラ軍が衝突し、3名が死亡した(1月28日の米国による対ベネズエラ制裁発動後初めての死者発生とされる)。他方、2月22日にはグアイド国会議長(1月23日に暫定大統領就任を宣言)が人道支援物資を搬入すべくベネズエラとコロンビアとの国境地帯を越えてコロンビア北部のククタに到着、2月23日には同氏の指揮によりククタに搬送された人道支援物資のベネズエラへの搬入を試みたが、ベネズエラ軍により阻止された。他方、2月27日にベネズエラのアレアサ外相はマドゥロ大統領と米国のトランプ大統領との間での会談を望んでいる旨明らかにしたが、米国のペンス副大統領はマドゥロ大統領は退任すべき旨表明するなど会談につき否定的な見解を披露したと2月27日に伝えられる。3月1日には、ロシアのラブロフ外相はベネズエラのロドリゲス副大統領とともに、米国に対しベネズエラへの軍事介入を行わないよう警告するとともに、ロシアはマドゥロ政権を支援する旨表明、4月上旬には両国政府の会合を開催、貿易を含む経済的繋がりをより緊密にする旨協議する予定であることも明らかにした。また、3月1日にはグライド国会議長がベネズエラ軍兵士600人が離反した旨発表した(但し同国軍兵士は11.5万人いる)。なお、同国会議長は3月4日にカラカスの国際空港を経由して帰国したが、当日はマドゥロ大統領側による拘束はなかった(1月29日にベネズエラ最高裁判所はグアイド氏に対し出国禁止命令を発令しているので、帰国後命令違反により治安当局に拘束される可能性があった)。3月6日に米国のボルトン大統領補佐官は、米国外の金融機関がマドゥロ政権への利益供与行為(マドゥロ氏等の資金移動等)に加担した場合には、当該金融機関に制裁を科する恐れがある旨警告したと表明した。また、3月7日には米国のエイブラムス特使(ベネズエラ問題担当)は、マドゥロ政権が欧州銀行に保有する資産にアクセスできないようにするよう欧州金融機関に要請している旨、米国議会上院の公聴会で説明している。さらに、ベネズエラ南部ボリバル州の水力発電所(グリ第二発電所と伝えられる)での発電停止により3月7日夕方に同国23州中15州で停電した。3月11日午前時点においても6州で停電が継続し、12州で電力供給が不安定な状態のままとなっている他、病院での透析患者を含め死者が発生していると3月12日に伝えられる。また、3月11日には米国財務省が大統領令により禁じられているPDVSAの支援に違反したとして、ロシアとベネズエラの合弁金融機関であるエブロファイナンス・モスナルバンク(出資比率はガスプロムバンク25.00%、ロシア政府関連金融機関VTB銀行25.01%、ベネズエラ国家開発基金49.99%とされる)に対し、米国内での資産凍結と米国人との取引禁止を内容とする制裁を科する旨発表した。さらに、3月11日に米国のポンペオ国務長官はロスネフチがPDVSAから原油を購入するなど制裁に違反している旨非難している(ロスネフチは3月12日に、当該非難に対し取引は制裁発動前の契約に基づくものであるため、制裁に抵触しないと反論)。他方、3月10日には、米国のエイブラムス特使がインドに対しベネズエラのマドゥロ政権からの原油の購入を停止するよう米国は圧力を加えている旨明らかにしたと3月10日に報じられる。また、3月11日には米国国務省が駐カラカス米国大使館の職員全員をベネズエラから退去させる方針である旨明らかにしており、3月14日には当該退去が完了した旨ポンペオ国務長官が表明している。なお、ベネズエラの大規模停電は大半が解消した旨3月12日にベネズエラのロドリゲス通信情報相が発表したが、実際には電力供給は完全には回復していない旨同日報じられる他、3月13日には、ベネズエラ東部の重質原油改質施設(Petro San Felixプロジェクト、権益の大半はPDVSAが保有しているが、Chevron、Total、Equinor、及びRosneftが少数権益を保有するとされる)で2基の石油貯蔵タンクが爆発した。

地政学的リスク要因面での当面の注目点は、まずベネズエラであろう。1月28日に発動された米国の対ベネズエラ制裁、及びベネズエラからの原油(重質高硫黄原油が主流とされる)輸入国に対する米国の圧力により、ベネズエラからの原油輸出の面で制約が強まりつつあり、米国のベネズエラからの原油輸入量(週間速報値)も3月8日の週は日量11万バレルと2017年12月~2018年11月の1年間(月間確定値)の日量47~71万バレルから大幅に減少している。また、2019年2月のベネズエラから中国やインド等への輸出量もそれまでに比べ相当程度減少しているものと推測される。加えて、中質・重質高硫黄原油の生産国であるメキシコやカナダでは、油田への投資不足による生産減退やパイプライン等のインフラ整備不足で米国等への供給拡大が困難な状態である他、米国の制裁によるイランからの事実上の原油輸出制限により、イラン産の中質・重質高硫黄原油供給減少に加え、サウジアラビアをはじめとするOPEC産油国等による減産措置により、割安とされた中質・重質高硫黄原油供給が削減されていると見られることから、世界的に中質・重質高硫黄原油需給に引き締まり感が発生した結果、かえって当該原油価格が軽質低硫黄原油に比べ相対的に割高となる場面も見られるようになっている。ベネズエラのマドゥロ大統領とグアイド国会議長との対立は継続している他、数百人単位でベネズエラ軍兵士が離反しているものの、軍部の大勢はマドゥロ大統領支持のままとなっていることに加え、グアイド国会議長が国外から人道支援物資を搬入しようとしても、人道的問題は存在しないとするマドゥロ大統領傘下の軍により阻止されるなど、同国情勢は少なくともこれまでのところ大幅に好転したとは考えにくい。また、グアイド国会議長を支援する米国が軍事介入も選択肢の一つとして示唆している他、欧州の大半の諸国、中南米の大半の諸国等はグアイド国会議長を承認している一方で、ロシア(米国の軍事介入検討を牽制している)、中国、及びイラン等それなりの数の国がマドゥロ大統領を支援していることが、事態を一層複雑化させている。また、3月7日夕方に発生した同国での全土規模での停電により、国民の生活に大きな影響が及んだことに加え、同国の油田及び石油ターミナル(ホセ港:石油出荷能力日量160万バレルとされるが、最近では日量100万バレル弱程度であったとされている)での操業にも支障が発生していると伝えられる(3月12日には船積みを再開したと見られる)。今後もこのような支障が頻発するようだと(近年のベネズエラ経済混乱等に伴い電力インフラ等への投資も不足気味であると見られることを考慮すれば、そのような事態が再発する確率はそれなりに存在するものと考えられる)、同国から国外への原油供給が減少したままとなり、その分だけ事実上世界石油市場からベネズエラ産原油が排除され続けることになるため、石油需給の引き締まり感が市場で強まる結果、重質高硫黄原油を中心として原油相場に上方圧力を加える可能性がある。そして、停電の頻発により、ベネズエラ国民のマドゥロ大統領に対する不満が高まるとともに、抗議行動から破壊行為へと事態が悪化するようだと、同国の石油関連施設に危害が加えられるとの懸念が市場で発生する結果、原油相場が上昇する場面が見られる可能性も想定される。また、米国がインドに対しマドゥロ政権からの原油購入の停止を迫っている(因みに、3月13日には、インドの民間石油会社Relianceが米国子会社によるベネズエラへの超重質原油希釈剤(大半はナフサと見られる)の輸出を停止する他、制裁発動以降ベネズエラからの原油購入を増加させていない旨明らかにしたと3月13日に報じられる)他、PDVSAと取引しているロシアの銀行に対し制裁を科していることなどもあり、米国は強い意志を持ってマドゥロ政権による原油輸出を削減しようとする意図が垣間見えることから、この面でも同国の原油供給が世界石油市場から相当程度排除されるのではないかとの懸念を市場で発生させやすくしていることにより、ベネズエラ情勢がこの先これ以上悪化しなくても、問題が根本的に解決しなければ、原油価格を下支えする状態は継続する可能性があるものと考えられる。

イランについては、5月4日の米国の同国産原油輸入国の輸入禁止免除の更新期限が迫り始めることから、米国の免除更新を巡る不透明感が漂う中で、同国産原油輸入国は輸入を抑制してくると見られ、そしてそれがタンカー追跡データ等によって確認されるようであれば、イラン産原油供給減少に伴う石油需給の引き締まり感が市場で強まる結果、原油相場が支持される可能性もある。

リビアについては、Sharara油田での原油生産は回復途上にあると伝えられるが、依然西部トリポリを拠点とする統合政府と東部トブルクを拠点とする政府(暫定議会)が対立状態である他、東部の政府を支援するハフタル将軍が指揮する軍隊が進軍し、油田を占拠する場合がありうることに加え、そうでなくても、同国各地に点在する油田や出荷ターミナル等石油関連施設周辺の部族や施設を保護する警備兵が待遇改善等を求めて抗議行動を実施する中で当該施設を封鎖するといった可能性も依然排除できていない。このため、いつまた、それら施設等の操業が妨害されるとともに同国からの原油供給が減少する結果、原油価格にその影響が及ばないとも限らないため、注意が必要であろう。

ナイジェリアでは、1月23日に大統領選挙に伴う投票が実施され、現職のブハリ大統領が再選された。しかしながら、2016年にしばしば同国南部の油田地帯での原油生産関連施設を破壊し、原油供給に影響を与えてきた武装集団であるニジェール・デルタ・アベンジャーズ(NDA:Niger Delta Avengers)(2016年8月29日にナイジェリア政府との間で暫定的に停戦合意に到達して以降、石油関連施設に対する妨害行為は減少)は、ブハリ大統領の再選は同国にとって利益にならない旨表明しているところからすると、NDAによるブハリ政権に対する抗議活動としての原油生産関連施設に対する破壊行為が活発化する結果、同国からの原油供給が低下する場面が見られる可能性も残っている(NDAが関与しているかどうかは不明であり、また出荷に関する不可抗力条項も適用されていないが、2月28日以降国内パイプラインの不具合により同国のBonny Light及びForcados両原油の供給に支障が生じた旨伝えられる)。そして今後破壊行為が頻発した場合には、同国産原油の出荷に対し不可抗力条項が適用されるとともに同国からの原油供給途絶懸念が強まり、それが原油価格に反映されるといった展開も否定できない。

経済面では、米国と中国との間での貿易協議の中で、関税規模の削減で合意できるかどうか、そして削減するとすればどの程度のものになるのか、ということに注目が集まるであろう。米国及び中国との間の貿易問題を巡る協議は順調に進展しているが、適切な合意でなければトランプ大統領は受け入れを拒否するであろう旨示唆したと3月5日に米国のポンペオ国務長官は明らかにしているが、両国等の経済に足枷にならないような程度に関税を削減できる(もしくは撤廃する)ということであれば、両国等の経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化懸念が市場で後退することにより、原油相場に上方圧力を加えることになろう。ただ、両国間で関税削減につき短期的には合意に至らなかったり、合意に至っても関税削減が中途半端であるとの印象を市場に与えたりするようだと、時間の経過とともに残存する関税が両国等の経済を減速させるとともに、石油需要の伸びを鈍化させるとの観測が市場で残ることにより、原油相場に上昇を抑制する可能性もある。また、3月19~20日には米国連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される予定である。当該FOMCでは政策金利は2.25~2.50%に据え置かれる確率が3月15日現在で98.7%あり、この面では、石油市場への影響は限定的と見られるが、FOMC開催の際に米国金融当局者による同国経済及び金融政策に対する考え方が示されれば、同国の金融引き締めペースに関する観測等を市場で発生させることにより、米国株式相場や米ドルが変動することを通じ原油相場にそれが反映されることもありうる。他方、米国及び中国の貿易紛争の影響等もあり、米国、欧州、及び中国等の経済指標類において、それぞれの経済が減速しつつあることを示唆するものが、それなりに発表されるようになっており、引き続きそのような内容を示す指標類がしばしば発表されるようだと、世界経済成長減速と石油需要の伸びの鈍化に対する懸念が市場で増大することや、ユーロが下落する反面米ドルが上昇することにより、原油相場に下方圧力が加わる可能性がある。また、4月に入ると米国主要企業等の2019年1~3月等の業績が発表される予定であるので、それら業績もしくは2019年の業績見通し(もしくは見通しの修正)等の内容によっては米国株式相場が変動する結果、原油相場に影響を及ぼすこともありうる。

米国では、3月に入り夏場のドライブシーズン到来(2019年は5月25日から9月2日まで)に伴うガソリン需要期が視野に入り始めている。ガソリン先物価格が上昇する一方で製油所の春場のメンテナンス作業実施も峠を越えつつあるとともに製油所が稼働を上昇、原油精製処理活動を増進するとともに原油購入を活発化するものと考えられる。このため、季節的な石油需給の引き締まり感が市場で強まってくる。この面では原油相場に上方圧力を加えてくるものと考えられる。他方、2月25日にトランプ大統領が原油価格上昇を巡りOPEC産油国を牽制する発言をしている。これに対しサウジアラビアはトランプ大統領の牽制に反論する旨示唆している。また、4月のサウジアラビアの原油生産量が日量1,000万バレルを相当程度下回るうえ、同月の同国の原油輸出量が日量700万バレル割れとなる他、それが需要家からの購入希望量を日量63.5万バレル下回っている旨、3月11日サウジアラビア石油産業関係者が明らかにしているなど、トランプ大統領の意向に逆行するような、石油需給の引き締めを企図する意向も示されている。しかしながら、OPEC及び一部非OPEC産油国の中で減産を自発的かつ積極的に推進するサウジアラビアを含む中東湾岸産油国は対イラン包囲網の形成等のために米国の支援を必要としていることもあり、原油相場に関する米国の要請を完全に無視することはできないものと見られ、それは既に現時点で市場の心理にも少なくとも暗示的には刷り込まれているものと考えられる。このようなことから、当面は2月25日のトランプ大統領の発言直前の原油価格(WTIで1バレル当たり57ドル台後半)を大幅に超過するような水準にまでは原油価格は上昇しにくい状態となっていると見られ、仮に価格上昇要因が重なることにより価格が大幅に上昇したとしても、そのような大幅に上昇した水準は持続しにくいものと考えられる。また4月17日には、OPEC総会、4月18日にはOPECおよび一部非OPEC産油国による閣僚会合が開催される予定であるが、米国のベネズエラに対する制裁、及び米国のイランに対する制裁とそれに伴う同国産原油輸入国の原油輸入禁止免除の更新、米国のトランプ大統領の原油価格上昇に対する牽制発言など、夏場のドライブシーズン到来に伴うガソリン需要期に向け石油需給と原油価格を巡っては流動的な側面とともに不透明感が漂う状況となっていることから、4月の会合で生産方針を決定することは時期尚早であり、6月末までの減産実施を維持することになろう旨サウジアラビアのファリハ エネルギー産業鉱物資源相が3月10日明らかにした(別途6月25~26日に予定されるとされるその次のOPEC産油国等による会合まで原油生産方針については決定を見送くる旨OPEC関係筋も3月4日に明らかにしている)こともあり、次回総会等では、世界石油市場の状況次第では迅速に対応する旨表明することはありうるものの、2019年後半の原油供給方針については6月に開催される総会等まで決定を延期する可能性が相当程度あるものと見られる。そして、そのような中で、米国原油生産、原油在庫、石油坑井掘削装置稼働数等の統計によっても、石油需給バランス面での観測を市場で発生させることにより、原油価格が左右される場面が見られることもありうる。

市場では、夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期到来への意識が強まることにより、季節的な石油需給の引き締まり感が市場で高まること、米国によるイランやベネズエラに対する制裁により両国からの原油供給が低下するとの懸念が市場で継続すると見られる他、サウジアラビアやロシア等のOPEC及び一部非OPEC産油国の減産により、石油需給の引き締まり感が少なくとも当面は市場で継続すると思われること等が原油相場に上方圧力を加える反面、原油相場が上昇を続けるようであれば、米国のトランプ大統領による価格上昇を牽制する旨の発言がなされるかもしれないことに対し市場が神経質になることが原油相場の上昇を抑制する結果、原油価格は比較的限られた範囲を中心に推移する(仮に価格上昇要因が重なることにより大幅な上昇が見られてもそのような大幅に上昇した水準は持続が困難となる)可能性があるものと考えられる。そのような中で、OPEC産油国等の減産方針、米国及び中国との間での貿易協議の成り行きを含む米国等の経済情勢、米国の原油生産状況等により、原油価格が変動していくものと考えられる。

4.過去1年間程度の世界のガソリンの流れに関する考察

世界のガソリン需給の趨勢は過去1年間かなり大きく変化してきた。ここではガソリン(もしくは軽質留分)の流れの変化と世界の主要地域(米国、欧州、シンガポール等)での需給状況、そして当該製品と原油の価格差(精製利幅の代替的指標)の推移につき説明することとしたい。

2017年1~8月は欧米及びシンガポールのガソリン(もしくは軽質留分、以下同様)在庫は概ね5年平均を超過するなど潤沢にある状態であった。変化が見られ始めたのは2017年8月下旬以降である。この時期にハリケーン「ハービー(Harvey)」が米国メキシコ湾岸地域に来襲した。もっともこれはメキシコ湾沖合の油田地帯はかすめるようにして通過したことから、同国の原油生産に対する影響は限定的であった。しかしながら、メキシコ湾岸地域の石油精製の中心地域(コーパス・クリスティ(Corpus Christi)、ヒューストン(Houston)、ポート・アーサー(Port Arthur)等)をほぼ直撃する格好となったことから、これらの地域に位置する製油所が冠水等で操業を停止、その規模は最大で日量327万バレルと同国の原油精製処理能力(当時日量1,832万バレル)の18%弱を占めるに至った(この数字は完全に操業を停止した製油所の精製能力であり、ハリケーンの来襲に伴う部分的な製油所での操業削減は含まれていない)。そしてハリケーン来襲に伴う製油所の操業停止に加えその他の製油所での操業不具合もあり、2017年8月25日には日量1,773万バレル(そしてこれは1982年後半以降の週間統計史上最高水準)であった原油精製処理量も9月1日には同1,447万バレルと325万バレル減少、そして9月8日には1,408万バレルと8月25日の水準に比べ365万バレルの減少、即ちこの分だけ石油製品の生産に支障が発生することになった。そして、2018年9月は米国の製油所でガソリン生産が前月比で日量39.8万バレル減少(それととともに留出油の生産も同48.4万バレルの減少となった)、これに伴いガソリン在庫水準も低下した。ハリケーン「ハービー」の米国の製油所の操業への影響は10月上旬頃まで続いた。加えて、米国メキシコ湾岸でハリケーンの影響を受けなかった製油所が秋場のメンテナンス作業を実施したことから、その分だけ製油所での稼働が低下するとともに石油製品生産も制限されることになった。さらに、メキシコ等中南米諸国へのガソリン輸出が活発化した(メキシコではこれまでも製油所の老朽化と投資不足による原油精製処理上の問題(メキシコは重質高硫黄原油の生産が主流であるが、同国の製油所は必ずしもそのような原油の品質に対応しきれていない)から、国外からのガソリン輸入が特に近年は増加傾向であったものの、2017年9月7日23時49分(現地時間)に同国南部沿岸(チアパス(Chiapas)州ピヒヒアパン(Pijijiapan)から南西に約87キロメートルの地点)を震源とするマグニチュード8.1の地震の発生に伴い震源から近い同国南部サリナ・クルス(Salina Cruz)に位置する同国最大のアントニオ・ドバリ・ハイメ(Antonio Dovali Jaime)製油所(原油精製処理能力日量33万バレル)が操業を停止したことにより、石油製品の生産が困難となった(操業再開は2017年11月24日とされるが、その後も同国では2018年3月にかけ製油所のメンテナンス作業等がしばしば実施されたことにより原油精製処理量とともにガソリン等の生産も低迷したままとなった)ことにより、2017年11月から2018年4月にかけ米国からメキシコへのガソリン輸出が旺盛になった(図16参照)。

図16 米国からメキシコへのガソリン輸出(2017~18年)

ただ、その後米国製油所での石油製品生産は回復したうえ、製油所での石油製品生産鈍化期間中に石油製品在庫が減少したことから、留出油のみならずガソリンと原油との価格差(いわゆる精製利幅に相当するもの)も比較的維持された(例年ガソリンについては不需要期であることから冬場においては米国のガソリンと原油との価格差は縮小する場面がしばしば見かけられる)(図17参照)ことから、石油製品生産を巡る採算性が向上したこともあり製油所の稼働が上昇、原油精製処理量も軒並み前年を上回ることとなった他、ガソリンの生産も活発であった。また、留出油の場合と異なり、ハリケーン来襲前のガソリン在庫はどの地域も比較的潤沢に賦存していたうえ、留出油のように冬場の需要期を控えている、といったこともなく、むしろ夏場のドライブシーズンに伴う需要期は終了に向かいつつあったことから、ガソリン在庫水準は減少したといっても、概ね平年並みか平年を多少割り込む程度の減少にとどまった(図18参照)。2018年2月下旬(ガソリン在庫の季節的な山の時期)においては、米国のガソリン在庫は前年同期比で減少しているが、これは2017年11月の季節的なガソリン在庫の底が2016年の同時期に比較して低かったことによる。それでも2017年11月初頭の季節的な在庫の底の水準は前年同期を1,143万バレル下回っていたが、2018年2月下旬のガソリン在庫水準の前年同期を下回る水準は407万バレルとその幅は縮小している。

図17 米国ガソリン精製利幅(2017~19年)

図18 米国ガソリン在庫(2017~19年)

また、2018年の春~夏場(4~7月)には欧米諸国、特に米国の製油所におけるガソリン製造装置を中心とした精製装置でメンテナンスに加え不具合が発生したことから、稼働が比較的頻繁に停止したことにより、ガソリン生産が低迷した。このため、米国のガソリン在庫が前年同期を下回る幅が拡大する場面が見られた。それでも、在庫が大幅に平年を割り込んだ留出油の原油との価格差がそれなりの幅を維持したことに加え、米国が夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期に突入しつつあったこともあり、製油所のメンテナンス作業実施終了に伴うガソリン製造装置の操業回復とともに製油所の稼働が上昇、原油精製処理量も増加、8月10日 の処理量は日量1,798万バレルと1982年後半以降の同国原油精製処理統計史上最高水準に到達した。これによりガソリン製造も活発化した。このようなことに加え、欧州(英国、オランダ、スペイン等)及びアジア(インド等)などからの輸入量が増加した(図19参照)。他方、2017年8月下旬のハリケーン「ハービー」の来襲以降の米国原油価格上昇に伴いガソリン小売価格も上昇したことが、同国の自動車運転距離数に影響(図20参照)、ガソリン需要の伸びを圧迫することになった。このため、2018年5月以降米国ガソリン在庫は前年同期の割込み幅をさらに縮小、6月下旬以降は前年同期を上回るとともに、8月初頭には平年幅をも上回るようになった。

図19 米国ガソリン輸入(2017~18年)

図20 全米ガソリン小売価格と自動車運転距離増加率(2016~18年)

米国での留出油在庫は2018年9月には一時平年並みの水準にまで回復したものの、秋場の製油所のメンテナンス作業時期突入に伴う石油製品生産活動の鈍化と秋場の穀物収穫時期到来に伴う農機具向け留出油需要の盛り上がり等により、当該製品在庫は再び平年を割り込む状態となった。そして製油所での稼働低下とともに製品生産活動が鈍化したこともあり、同国のガソリン在庫も減少傾向となった(それでも前年同期は上回る状態であった)。ただ、冬場の暖房シーズンに伴う需要期を控えた留出油と原油の価格差が拡大したことから、秋場のメンテナンス作業実施を完了した製油所の稼働が上昇するとともに原油精製処理量も増加、2018年12月28日の原油精製処理量は日量1,776万バレルとこの時期としては週間統計上最高水準に到達、留出油とともにガソリンの生産も活発化となった。このため、2018年10月から12月にかけ原油価格とともに米国のガソリン小売価格が下落、特に2018年12月は全米平均価格が1ガロン当たり2.457ドルと前年同月(同2.594ドル)を下回るようになった中で年末の休暇シーズンに突入したものの、同国のガソリン在庫は増加傾向となった結果、2019年1月後半以降は概ね平年幅上限付近に位置する量となっており、これによりガソリン価格は伸び悩み、原油価格との差は圧迫されることになった。それでも3月に入り米国での夏場のドライブシーズンに伴うガソリン需要期が市場の視野に入り始めたことにより、ガソリン価格が上昇するとともに、原油価格との差が拡大する兆候が見られる。

また、2017年8月下旬のハリケーン「ハービー」の米国メキシコ湾岸来襲とその後のメンテナンス作業実施に伴う製油所の操業停止に伴う石油製品生産活動の鈍化によるガソリン在庫の減少で、米国のガソリン価格が欧州のそれに対し相対的に割高になったことから、欧州から米国に向けガソリン(混合基材が主流)が相当程度輸出された。加えて、2018年3~6月は欧州、特にドイツで製油所のメンテナンスが比較的大規模に実施された他、フランス等で製油所の不具合が発生したことから、操業が大幅に低下したことにより、ガソリン生産が影響を受けた。このため欧州でのガソリン在庫は2018年夏場において平年を割り込んだままとなった(図21参照)。それでも、ガソリン及び留出油在庫が平年を割り込んだこともあり、両石油製品と原油との価格差が拡大(図22参照)、メンテナンス作業実施等の終了後、製油所でのガソリン生産が回復、欧州でのガソリン在庫もそれなりに増加したため、これがかえって欧州でのガソリン価格を抑制することとなった結果、ガソリンと原油との価格差は縮小、このようなこともあり2019年2月にはガソリン在庫は伸び悩み気味になったものと見られる。そして2019年3月に入り欧州での製油所のメンテナンス作業実施時期突入に伴う当該製品の生産鈍化と米国での夏場のガソリン需要期が視野に入りつつあることから、欧州から米国へのガソリン輸出が活発化するとの観測が市場で発生したこともあり、当該地域でのガソリンと原油との価格差も拡大する傾向が見られる。

図21 欧州ガソリン在庫(2017~19年)

図22 ロッテルダムガソリン精製利幅(2017~19年)

さらに、アジアにおいても、2017年8月下旬のハリケーン「ハービー」の米国メキシコ湾岸来襲に伴う石油製品生産活動の鈍化等により、米国ガソリン在庫が前年同期水準を割り込んだことから、インド等からガソリンが米国に向かったことに加え、当該地域での春場及び秋場においてガソリン不需要期に突入した反面地域の製油所のメンテナンス作業に伴う操業停止等により、2018年11月頃までシンガポールでのガソリンを含む軽質留分在庫は比較的限られた範囲内で変動していた他、前年及び平年(過去5年平均)を超過はしていたものの、その幅は限定的な状態で推移していた。しかしながら、米国でのガソリン在庫が平年幅上限に向けて増加傾向となった他、欧州でのガソリン在庫も回復基調になったこともあり、大西洋圏でのガソリン需給に緩和感が醸成されたことにより、2018年10月以降アジアのガソリン価格が欧米諸国のそれに比べて割高になる場面がしばしば見られたことから、特に欧州諸国のガソリンの一部が米国ではなくアジア諸国に向け輸出されるようになったことに加え、中国が概ね2018年11~12月の期間につき204万トン(推定1,724万バレル)のガソリン輸出枠を設定したこと(2018年10月26日及び11月27日等に報じられる)に加え、2019年の第一弾のガソリン輸出枠として525万トン(推定4,436万バレル)を設定したこと(2019年1月9日に報じられる)に伴い同国から輸出された当該製品がシンガポールに流入したこともあり、2019年1月以降シンガポールのガソリンを含む軽質留分在庫は増加傾向となり2019年2月20日には1,700万バレル台前半と統計史上最高水準に到達したと伝えられる他、前年同期比及び平年比を上回る幅も拡大した。このようなことから、アジアでのガソリンと原油との価格差は低迷する格好となった(図23参照)が、3月に入りアジア地域での製油所のメンテナンス作業実施時期突入に伴うガソリン生産鈍化とともに、夏場のガソリン需要期が市場で意識され始めたことにより、ガソリンと原油との価格差は拡大する兆候を見せている。

図23 シンガポールガソリン精製利幅(2017~19年)

以上

(この報告は2019年3月18日時点のものです)

アンケートにご協力ください
1.このレポートをどのような目的でご覧になりましたか?
2.このレポートは参考になりましたか?
3.ご意見・ご感想をお書きください。 (200文字程度)
下記にご同意ください
{{ message }}
  • {{ error.name }} {{ error.value }}
ご質問などはこちらから

アンケートの送信

送信しますか?
送信しています。
送信完了しました。
送信できませんでした、入力したデータを確認の上再度お試しください。