ページ番号1007748 更新日 平成31年3月19日

ロシア:石油ガス産業を巡る最近のトピックス(短報)

レポート属性
レポートID 1007748
作成日 2019-03-19 00:00:00 +0900
更新日 2019-03-19 12:21:55 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 基礎情報
著者 原田 大輔
著者直接入力
年度 2018
Vol
No
ページ数 7
抽出データ
地域1 旧ソ連
国1 ロシア
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 旧ソ連,ロシア
2019/03/19 原田 大輔
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概要

  • 2018年、日本向けロシア産原油輸入量は4.8%(4329億円/数量では前年比22%減)に、LNG輸入量は堅調に8.1%(3583億円)となった。ロシア産原油減少の原因は、露中間で2013年に締結され、2015年から契約履行となったRosneft及びCNPCとの長期原油供給契約による中国向け原油の増加と、2016年から中国における原油輸入ライセンスの対象が中小の製油企業にも拡大されたことによるロシア産原油調達の急増が影響。
  • 2018年の新たな事象として、ヤマルLNGプロジェクトからコンデンセート(4.9万キロリットル)及びLNG(30万トン)が日本にスポットで販売され、サハリン-2LNGに次ぐロシア産LNGが日本に供給された。
  • 日本向けロシア産原油の牽引役であるESPO原油だが、2013年最大シェアである68.1%(S-1:17.7%、S-2:14.2%)を占めたが、2018年はS-1が最大(40.0%)となり、ESPO原油が39.4%、S-2が20.0%となった。
  • 2019年ESPOパイプラインの輸送タリフは約4%の値上げに。
  • 2016年12月からロシアも参加し、OPECとの協調減産が行われているが、ロシアは巧みにその基準点(2016年10月及び2018年10月)を高い時点で設定することで、減産後もソ連解体後の最高レベルの生産量を達成している。

1.2018年日本の石油ガス調達国におけるロシアの存在感

2006年のサハリン-1からの原油輸出開始、2009年のサハリン-2LNGプロジェクトの稼働開始、同年末のESPO(東シベリア・太平洋)原油パイプライン開通と東シベリア原油の輸出開始と、日本市場におけるロシア産原油・天然ガスの存在感は急速に増してきた。2015年には日本におけるロシア産原油シェアはピークとなる8.8%(7273億円)[1]を、LNGは震災後の需要も受けて、2013年にピークの9.8%を記録。しかし、その後、原油輸入については2015年から下降の一途を辿っており、2018年は4.8%(4329億円)[2]に、LNG輸入は堅調に8.1%(3583億円)[3]となった。ロシア産原油減少の原因は、露中間で2013年に締結され、2015年から契約履行となったRosneft及びCNPCとの長期原油供給契約による中国向け原油の増加と、2016年から中国における原油輸入ライセンスの対象が中小の製油企業(所謂ティーポットと呼ばれる独立系の小規模製油所)にも拡大されたことによるロシア産原油調達の急増が影響していると考えられる。

2018年のウラジオストク(コジミノ港)からのESPO原油輸入国は、中国が78.9%(日量49.4万バレル)で最大となり、日本は9.0%(日量5.6万バレル)で、2015年以降、二番手の買い手となった。過去最大だった2014年の35.3%(日量21.7万バレル)から量で言えば4分の1に減少している。

2018年の新たな事象として、2017年12月に輸出が始まったヤマルLNGプロジェクトから初めて、8月だけだが、日本へ同プロジェクトから生産されたコンデンセートが4.9万キロリットル(約30.6万バレル)輸入されている。また、2018年は、LNGについても、2017年11月の稼働と12月の輸出開始を受けて、同プロジェクトから初めて、合計で30万トン(4カーゴ)が日本にスポットで販売され、サハリン-2LNGに次ぐロシア産LNGが日本に供給された年となった。


[1] 金額では図2の通り、油価の高かった2014年のロシア産原油輸入額が1兆1278億円で最大。

[2] 原油輸入量については金額ベースでは前年比4%増。数量ベースでは前年比22%減。

[3] LNG輸入量については金額ベースでは前年比15%減。数量ベースでも前年比8%減。

図1日本の原油及び天然ガス調達先シェアの推移
図1 日本の原油及び天然ガス調達先シェアの推移 (出典)財務省通関統計から取り纏め
  • 原油についてはロシア産原油の輸入増大に伴って、中東、アジア及びアフリカが日本市場でのシェアを減少させている傾向と、2016年からは中国によるロシア産原油調達の加速を受けて、日本向け中東原油の回復と米国・中米産原油の増加が特徴に。
図2日本の原油調達国の変遷
図2 日本の原油調達国の変遷 (出典)財務省通関統計から取り纏め
  • ロシア産原油の日本への輸入は98年のサハリン-2から始まるが、サハリン-1の原油輸入開始(2006年)とESPO原油パイプラインの稼働開始(2009年)から加速し、輸入国上位にくい込み始める。ピークの2015年にはカタールを抜いて供給国第三位に。
図3日本向けLNG価格の国別順位(2006年~2018年平均)
図3 日本向けLNG価格の国別順位(2006年~2018年平均) (出典)財務省通関統計から取り纏め
  • ロシアは2009年のサハリン-2LNGの日本向け輸出開始以降、同プロジェクトと日本バイヤーの契約条件と地理的な近さを反映して、現在日本へのLNG供給国の中で2番目に安価なLNGを供給。
図4ESPO原油(コジミノ港)の輸出相手国(左図)及び日本向け露産原油の推移(右図)
図4 ESPO原油(コジミノ港)の輸出相手国(左図)及び日本向け露産原油の推移(右図) (出典)筆者取り纏め
  • 通年で輸入が始まった2010年時点ではESPO原油の最大バイヤーは日本であり、輸出量の30.0%(日量9.2万バレル)を占めていたが、RosneftとCNPCの長期原油供給契約が発効する2015年から一位の座を中国に譲っている(2015年で28.7%・日量17.8万バレル。2018年で9.0%・5.6万バレル)。それは日本向けロシア産原油の調達比にも表れており、ESPO原油比率は2013年最大68.1%(S-1:17.7%、S-2:14.2%)を占めたが、2018年はS-1が最大(40.0%)となり、ESPO原油が39.4%、S-2が20.0%となった。また、新たにヤマルLNGプロジェクトからのコンデンセートが0.6%を供給。
図5 ヤマルLNG及びサハリン-2LNGの2018年販売先
図5 ヤマルLNG及びサハリン-2LNGの2018年販売先(黄:西廻り/薄青:アジア向け)

(出典)Vygon Consulting [4]


[4] Vygon Consultingレポート「Мировой рынок СПГ: Иллюзия избытка(世界のLNG市場:過剰の幻想)」(P36/図15「ロシアのLNGプロジェクト及び稼働中のLNGプラントからの輸出先」)http://vygon.consulting/products/issue-1504/

  • 2017年12月に輸出を開始したヤマルLNGプロジェクトは、北極海航路を活用した輸送スキームの特殊性から、どこにLNGが向かうのか1年間の仕向け地実績が注目されていた。2018年の輸出実績では、19.2%がアジア(中印日)に、80.8%がヤマル半島を出て西廻り航路で欧州方面へ向かっていると推察される。同プロジェクトには29.9%に中国(CNPC及びシルクロード基金)が参画しているが、8割超が西廻りへ向かっているとすると、それが欧州市場及び大西洋市場の一時的な市場動向を反映したものか、それとも海氷条件により東廻りでアジアに向かう北極海航路の活用にはハードルがあることを示すものなのか今後も留意が必要。

2.2019年ESPO輸送タリフは約4%の値上げへ

ESPO原油はウラジオストクから4700キロメートル内陸の東シベリア油田群の原油を輸送するESPO原油パイプラインを通じて輸送されている。2009年当初は30.6万バレルだった供給量は、現在、中国支線で60万バレル、ウラジオストクから太平洋へ100万バレル、合計160万バレルの容量まで拡張中である。しかし、実際には東シベリア油田群の生産量では追い付かず、現在は、約8000キロメートルも離れた西シベリア堆積盆に属するヴァンコール油田からも原油を輸送しなければならない。他方、ESPO原油パイプラインの稼働によって、ロシア国内原油パイプラインの東西接続も実現し、例えば、西シベリアにしか資産を有さないLUKOILがウラジオストク・コジミノ港からESPO原油をアジア太平洋市場へ輸出するといったビジネスチャンスの拡大ももたらしていると言えるだろう。 他方、これだけ長距離のパイプラインを運営するに当たっては、当然ながら相応の輸送コスト(タリフ)が掛かる。中東から日本まで3週間でタンカー輸送する場合のコストはバレル当たり約1~3ドルと言われている一方、ESPO原油パイプラインを利用する場合には東シベリアからドル換算で、6ドル~15ドル程度のレンジでの輸送コストがかかると見積もられる(図6)。また、2019年はインフレを加味する形で、2018年度比で4%の値上げとなり、過去上昇傾向が継続している。このコストは各原油生産会社がパイプライン運営国営企業であるTransneftに支払うことになるが、それら原油生産企業に対して投資意欲を持たせ、当地の石油開発を促進させるように、また、アジアで対中東産原油に競争力を持たせるべく、ロシア政府は優遇税制を設け、開発企業にインセンティヴを与え、投資誘致を行っている。言い換えればESPO原油パイプラインはロシア政府が身を切る形で運営されているインフラとも言える。このような長大なインフラに伴う輸送コストの上昇リスクは、ESPO原油パイプラインだけでなく、北極海航路を活用するヤマルLNG及びアルクチクLNG-2や、今年12月に稼働する対中ガス供給パイプラインである「シベリアの力」パイプラインにも共通するロシアの特徴と言えるだろう。

図6ロシアによる東方シフトの原動力となったESPO原油パイプライン
図6 ロシアによる東方シフトの原動力となったESPO原油パイプライン (出典)連邦タリフ局及びTransneft資料から筆者取り纏め

3.OPEC協調減産合意と実際のロシアの生産量:減産のカラクリ

2016年からOPECとの協調減産が報道上でもクローズアップされてきた。しかし、余り注目されていないが、ロシアは減産を表明しながら、巧みにその基準点を高い時点で設定することでソ連解体後の最高レベルの生産量を達成している。

元々、ロシアは一国で一つの国営石油ガス会社ではなく、複数の垂直統合型石油ガス会社による、一部独占も認めている特殊な石油ガス産業構造を有しており、政府による生産調整は関連税の増減を通して行われるもので、その効果にもタイムラグが生じる。また、これら企業は株式上場しており、政府の一存で減産命令を出しても株価に影響が出ることや、冬季においては生産停止により井戸が凍結してしまい、生産再開にメンテナンスが必要となる特殊な事情もあることから、おいそれと従うわけにもいかない。そのような事情を抱えるロシアが、どのように協調減産を行ってきたのかを生産量推移とともに示した(図7)。

2016年12月の第一回協調減産合意の際には2016年10月にその基準生産量を設定しているが、同8月から2カ月で急に日量34万バレルも生産量が急増していることが分かる。同合意では日量30万バレルの減産であったので、実際は差し引き4万バレルの増産となっていた。その後、2017年8月までに自然減もあり日量33万バレルまで減産したが、その後、2018年10月までに日量51万バレルまで増産し、ソ連時代を含め史上最高の生産量(日量1143万バレル)を記録した。第二回合意ではこの最高点を基準生産量として設定し、ここから22.8万バレル減産することに合意しており、言い換えれば、ロシアは減産するものの、実際は2016年来の最高生産水準を維持することができる合意内容となっている。

図7OPEC協調減産合意前後のロシアの原油生産量の推移
図7 OPEC協調減産合意前後のロシアの原油生産量の推移 (出典)エネルギー省統計から取り纏め

以上

(この報告は2019年3月19日時点のものです)

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