ページ番号1007766 更新日 令和1年5月7日
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1.政治・経済情勢
(1) 国内
政治・経済
ルーブルとウラル産原油価格見通しを引き下げ
- 3月6日、経済発展省のMaxim Oreshkin大臣は、同省の2019年の平均ルーブル相場の予測が1ドルあたり63.9から66.4ルーブルに悪化したことについて、制裁措置の圧力が高まったことに関連していると説明した。また、前回の予測時点から比較して強化された制裁の経緯からすると、現在のレベルから急激なルーブルの上昇は期待できない、と語った。
- また、ウラル産原油価格の予測については1バレルあたり63.4ドルから、62.8ドルに引き下げた。一方、2020年の予測については、1バレルあたり59.7ドル、2021年は1バレルあたり57.9ドルの水準を維持した。
- 財務省によると、2019年1~2月のウラル産原油平均価格は前年同期比6.4%減の1バレルあたり61.76ドルであった。
(2)対外関係
1)米国
米国の制裁は「資産を奪うようなもの」
- ロシアのDmitry Peskov大統領報道官は、3月12日、複数のメディアが、米国がNord Stream 2への新たな制裁を準備していると報じていることについてコメントし、米国の姿勢は国際規模で資産を奪うようなものだと述べた。同氏は、この純粋に経済的なプロジェクトに対する米国の敵対的かつ非競争的な姿勢はよく知られているが、このアプローチは受け入れられないと考えている、と強調した。
外務省は米国とカナダの制裁への対応を約束
- ロシア外務省は米国とカナダによる新しい反ロシア制裁措置の導入に遺憾の意を表し、ロシアがこれらの国に対して、何らかの対応をすること警告した。
- 「私たちは、米国とカナダで、彼らがロシアとの二国間関係の完全な破壊に向かって悲惨な道を追求し続け、ロシア恐怖症の結果として非常に恥ずべき状態にあることを遺憾に思う。」と3月15日の外務省のコメントで述べられている。
- ロシア外務省は、「今日、米国とカナダによって発行された」「欧州連合と調整された制裁」には、新規又は予想外のことは何もないと述べた。また、外務省は「近年、ワシントンとオタワは、見当違いの口実で、ロシアの市民や組織に対して制限的な措置を定期的に課している。その目的は、我が国に圧力をかけることである」とした。
- 「同時に、、制裁措置の数がいくつであっても、米国及びカナダにとって望ましい結果にはつながらないことは、その決定の作成者を除いて、全ての人にとって明らかだ。彼らは絶対的な信念に囚われ、より多くの圧力があるならば、ロシアが彼らに従い始めるであろうと信じている。そのようなことはないだろう。」とロシア外務省は強調した。
- 「規制が課される理由は、ウクライナに対するロシアの攻撃、不当なクリミア半島併合である。今回は、ケルチ海峡での「不当な武力行使」も新たな要素になった」、「Trudeau首相のチームは、ロシア恐怖症のカードで遊ぶよりも、国内の政治問題に集中した方が、より論理的だろう。カナダ当局は、明らかに、病理学的に「制裁中毒」になっており、それを克服することができない。」と外務省はコメントした。
2)EU
2月、ロシアが欧州へのLNGの最大供給者に
- 2月、ロシアは初めて欧州へのLNGの最大の供給者となった。2月はYamal LNGから欧州に141万トンが輸送され、その大部分は欧州北西部に届けられた。一方、2018年5月以来、ロシアからアジアにLNGが輸送されなかったのは初めてとなる。昨年の冬と比較し、アジアでの需要が予想よりも低く、価格が低かったことが、ロシアから欧州のLNG供給の増加をもたらしたとみられる。
- 一方、米国から欧州の供給は、対照的に昨年11月から最も少なく、64万トンであった。また、カタールからの供給は133万トンであった。
3)ウクライナ
ウクライナ経由のガス輸送継続の用意がある
- 3月5日、メドベージェフ首相は、2019年以降、ロシアがウクライナを通じて欧州へのガス供給を継続するために、安定した政治環境と商業的に好ましい条件が必要だと語った。同首相は、我々は2019年以降もウクライナのガス輸送システムを通じてガス供給を続けていく用意があるが、それはもちろん一定の条件が必要だ、と語った。同首相によると、Nord Stream 2とTurk Streamが建設された後も、既存のパイプラインを通じての供給を否定するものではなく、ウクライナ経由と他国経由、両方のパイプラインを利用することになる。
- また、同首相は、再生可能エネルギーは環境の観点から魅力的であるが、まだエネルギーとしてあまり信頼ができず、北海鉱区での生産の減少、一部の国々での石炭及び原子力の放棄など、いくつかの客観的な理由により、全体として見通しは非常に良好である、と述べ、近い将来、ロシアのガスが欧州諸国のエネルギー需要のかなりの部分を占めるだろう、と語った。
- また、記者からのNord Stream 2建設の動機について聞かれ、メドベージェフ首相は、経済的な便益と輸送リスクの減少だと答えた。同首相は、ロシアは数十年にわたって欧州のガス市場に取り組んできており、信頼できるパートナーとしての評価を重要視し、我々の義務を全うし続けたい、これがガスを供給するための追加の輸送経路を作っている理由だ、と述べた。同首相によると、EUのガス消費におけるロシアのガスの割合は現在約30%であり、Nord Stream 2はこの状況を根本的に変えることはなく、EUが必要とする輸入量の一部のみを提供し、それは既存のものより安定的で安価なものとなるだろう、と説明した。

出典:Gazprom Neft(http://www.gazprom.com/projects/nord-stream2/)
4)ベネズエラ
PDVSA、リスボンの事務所をモスクワに移転
- 3月1日、ベネズエラのDelcy Rodriguez副大統領は、マドゥロ大統領が国営石油会社PDVSAのリスボン事務所をモスクワに移転する指示を出したと述べた。
- Rodriguez副大統領は、ロシアのSergei Lavrov外務大臣との共同記者会見で、マドゥロ大統領が国営石油会社PDVSAのリスボン事務所を閉じ、モスクワに移転する指示を出した、と述べた。また、同副大統領は、ベネズエラは必要な国においては、その法的資産の保護、訴訟及び返還の権利を保証するために必要な措置を取るであろう、と述べた。
PDVSAからの原油購入についてのRosneftへの非難は国際法に準拠していない
- 米国のMichael Pompeo国務長官が、RosneftがベネズエラのPDVSAから原油を購入していることは米国の制裁に反抗している、と述べたことに対し、ロシアのSergei Lavrov外務大臣はこの批判が、国際法に準拠していないと、3月12日の記者会見でコメントした。
- Lavrov大臣は、「最近Pompeo長官が、米国のベネズエラの石油会社への制裁に反していることでRosneftを非難し、ベネズエラの企業から原油を買うことをやめるように要求した。悪い例は伝染し、ベネズエラのGuaido国会議長も、ベネズエラはキューバへの原油販売をやめるべきと述べている。これは国際法に沿っていない。」と強調した。
- 米国の外交当局は、RosneftがPDVSAから原油を買い続けることは、米国の制裁に挑戦していると発言していた。一方、Rosneft自身は、Rosneftは政治的な動機ではなく、株主の利益になるように商業活動をしている、と強調している。加えて、Rosneftは米国の発言の影響を精査し、何らかの被害があれば、自らの権利を守る措置を取る、と述べた。
5)トルクメニスタン
- GazpromのAlexei Miller社長はトルクメニスタンからのガス購入を「近い将来」に再開することを、トルクメニスタンのテレビのインタビューで語った。
- Miller社長は、3月27日にアシガバートで行われたトルクメニスタンのGurbanguly Berdimuhamedow大統領との面談についてコメントし、「Gazpromはガスセクターでの協力を拡大するための大きな展望を持っており、非常に重要な点として、近い将来にトルクメニスタンのガスを購入するための契約に基づく我々の業務を継続するという理解でいる」と語った。また、短期的なガス取引の再開だけではなく、向こう十年にわたる協力の見通しについても議論し、長期の重要かつ戦略的な協力について議論したことも明かした。
- さらに、会談では、ガスの国際市場も議論され、ガス精製、ガス化学製品の輸出を念頭に、意見交換が行われた。
2.石油ガス産業情勢
(1)原油・石油製品輸出税
- 2019年3月、原油輸出税はUSD12.5/バレルに引き上げられ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
- 3月の石油製品輸出税はUSD 27.3/トン、ガソリンについてはUSD 50.1/トンに設定された。
(2)原油生産・輸出量
- 3月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,778万トン(約3億4,879万バレル、平均日量1,130万バレル)で、前年同月比3%増。(Interfax, 2019/4/2)
- 3月、原油輸出量は2,269万トン(約1億6,562万バレル)。前年同月比7.3%増。
(3)天然ガス生産量
- 1月、天然ガス生産量は676億立方メートル(約2.4TCF)で、前年同月比2.5%増。
(4)協調減産
ロシアは4月初めまでに合意された減産を達成
- Alexander Novakエネルギー大臣は、3月4日、OPEC+での合意の一部である2018年10月時点から22.8万バレル/日を減産することは一つの目標指標だ、と述べ、3月はこの合意のパラメーターで高い数値が達成できると理解している、3月末から4月初めには計画値、22.8万バレルを到達できるだろう、と語った。この数字は月の平均ではなく、3月の最後での減産の数値と理解で正しいか、という記者の質問に対し、同大臣は、そうだ、我々は徐々に目標数値に向かっている、と回答した。また、我々は減産を最大化しようとしている、それは2月より高く、2月の数字と22.8万の間だろう、と付け加えた。ロシアの1月の平均減産量は、2018年10月比で4.7万トンに達し、2月は9.7万トンで、2月末では、11.8万トンの削減量だった。
- OPEC+は2017年から開始されている原油の生産を削減する合意について、2018年末に更新することを決めた。参加国は、2018年10月時点の生産量の水準から、合計で120バレル/日を削減することを決めた。新たな合意は2019年前半までに達成することとされている。この合意の義務の一部として、ロシアは徐々に原油生産を削減し、2018年10月水準で22.8万バレル/日まで削減し、生産量1,142.1万バレル/日とする。
(5)税制・法制
7月から石油・石油製品の輸出ライセンスを導入
- Dmitry Kozak副首相は3月21日、石油・石油製品の国内への安定供給を確保するため、輸出ライセンスを導入することを決めた、と記者に語った。昨年10月31日、政府は国内石油価格を安定させるため、2018年の5月末又は6月初旬の価格を固定することで、石油生産者と合意した。この内容は2019年3月末まで有効だったが、この価格メカニズムを4月~6月の間延長し、関係企業と調整の上、輸出ライセンスは7月から導入する予定。
- Kozak副首相は、輸出ライセンスは緩やかな制度だと述べ、「輸出量を制限するのではなく、国内市場に一定量の製品を出荷して、国内市場に常に均衡の取れた供給ができるような義務を想定している」と説明した。
(6)北極海航路
政府は15年以上の契約に限り、外国船籍のLNG輸送を容認
- メドベージェフ首相は、 ロシアで生産され、Sabetta港で積み込みされ、最初の荷卸し、又は積み替えの地点までのLNGとガスコンデンセートの国際海上輸送許可決議に署名をした。決議によると、15年以上のチャーター契約をしている外国船籍の船28隻を限定列挙し、それらの使用が2044年まで許可されることになる。
- Yamal LNGでは、この船舶に該当する15基のガスタンカーが建設中である。
(7)その他
天然資源省は初めて鉱物の埋蔵量価値を推定
- 天然資源環境省は、ロシアの会計と国家統計制度に関する連邦法に基づいて2008年5月に制定された作業計画に従い、初めてロシアにおける鉱物埋蔵量価値を推定した。最初の評価は2017年末時点で行われ、データは毎年更新されていく予定。2017年末のデータは以下の通り。
- 全てのエネルギーと鉱物資源の総価値は55.24兆ルーブルで、2017年のGDPの60%に達する。埋蔵量のデータについては以下の通り。
- メディアの指摘では、同省の評価手法では、通常使われる埋蔵量の総量よりも少なくなるとされる。他の統計資料と比較すると、BP統計では、2017年末の原油埋蔵量は145億トン、ガスは35兆立方メートル。米国地質調査所の統計では、2017年末の金の埋蔵量は5,500トンとなる。
3.ロシア石油ガス会社の主な動き
(1)Gazprom
初のルーブル電子決済でのガス販売
- Gazprom Exportは、3月7日、ルーブル建ての電子販売プラットフォームで、西欧州のガス販売を初めて行った。この取引はNetConnect Germanyの配送地点で、balance-of-month契約、売却したガスの容量は、8,000万立方メートル。
- Gazprom ExportのElena Burmistrova社長は、「今日の実験的取引は商業的ではないが、象徴的な意味が強い。これまで、長期的な予測をするのは早すぎた。Gazprom Exportの歴史で初めて、西欧州の企業がガスをルーブルで購入した。まだ我々はロシアのルーブル建ての電子販売プラットフォームの更なる発展を計画している。」と語った。
GazpromがKyrgyzneftegazの資産買収を検討
- GazpromのAlexey Miller社長は、3月28日、キルギスのKubatbek Boronov第一首相と、GazpromがKyrgyzneftegazの資産を買収するためのロードマップに署名をした。署名式にはロシアのプーチン大統領とキルギスのジェーンベコフ大統領も同席した。ロードマップは相互の義務と行動計画を定め、Kyrgyzneftegazの評価と財務的な実現可能性の検討することになっている。
- Kyrgyzneftegazは年間75,000トンから80,000トンの石油を生産しており、キルギス政府はその株式の85%を保有している。同社は、キルギスタン南部のBatken地域とJalal-Abad地域の35の小規模な油田及びガス田で操業している。
(2)Novatek
Murmanskの造船場建設で優遇税措置
- Murmansk州の投資環境改善委員会は、NovatekのBelokamenkaでの大規模設備の建設施設に対し、所得税と資産税の減税を決定したとウェブサイトで発表した。所得税の減税は2023年1月1日まで、資産税の減税は5年間とされている。
- 会議での報告によると、2022年までのプロジェクトの投資額は少なくとも1,028.5億ルーブルとなる。この投資の結果、Murmansk州の歳入成長の合計は、308億ルーブルと見積もられている。この場合、投資者側の優遇は、118億ルーブルとなる見込み。
- この施設ではLNG・ガスコンデンセートの生産、貯蔵、輸送のための重力式プラットフォームの製造を計画している。
(3)Gazprom Neft
Neptune及びTriton鉱区の生産2026~2028年に開始
- Gazprom Neftはオホーツク海のNeptune及びTriton鉱区の生産を2026~2028年に開始する計画だと、戦略・イノベーション部のSergei Vakulenko氏部長が、3月13日、米国で開催されたカンファレンス「CERA Week」で語った。同氏によると、Gazprom Neftの2030年までの新たな開発計画が1~2か月の間に発表される。計画では、Nadym-Pur-Tazovskaya、Yamal半島、Orenburg、Khantos、西シベリア、それに有望なサハリン島を含む主要な地域に焦点が当てられている。
- Gazprom Neftは2017年にNeptune鉱区、2018年にTriton鉱区を発見し、当初はNeptune鉱区の生産開始時期を2025年としていた。
4.東シベリア・極東・サハリン情勢
(1)サハリン
極東LNGのFEED実施を年内に決定する可能性
- Exxon NeftegazのAlexander Popov副社長は、3月20日、ExxonMobilがRosneftと極東LNGプロジェクトのFEED実施を年内に決定する可能性について、モスクワで開催されたカンファレンス「LNG Congress」で言及した。
- 一方で、同氏は、Sakhalin-2プロジェクトがLNG生産を拡大するために必要としているガスについて、Sakhalin-1プロジェクトから供給する議論を、関係者と継続しているとも語った。
(2)カムチャツカ
カムチャツカLNG基地建設は1年内に開始
- 政府は、3月14日、「カムチャツカでのLNG積み替えコンプレックス」プロジェクトへの投資計画を承認した。計画では、年内に実際の建設を開始するために全ての関係者が迅速に手続きを行うことが求められる。投資計画の技術監査等の基本的な文書作成は、3月末までに準備される。同時に、カムチャツカのBechevinskaya湾の一部と、陸上基地の建設予定地について、カムチャツカ地方の境界線を変更する法令が必要になる。
- 建設のオペレーターであるNovatekの100%子会社のNovatek-Kamchatka社は、建設に関わる文書を10月までに終える必要がある。2019年第4四半期中には政府の審査が終わる予定で、2020年初頭には、Novatekは積み替え基地の建設許可を得られるだろう。最初の基地の建設は2022年、2番目の建設は2023年に完成するとされている。
- 政府は積み替え施設が2026年までにフル稼働し、2017年は970万トンだった北極海航路の輸送量を、3,170万トンに増加することを期待している。2023年~2025年にはNovatekはArctic LNG-2プロジェクトの第3段階までの稼働を計画している。すでに稼働しているYamal LNGを考慮すると、2026年のNovatekのプロジェクトの合計LNG生産能力は年間約3,800万トンとなる。
- Novatekは、カムチャツカでの積み替え基地は、彼らの狙っているアジア太平洋市場にLNGを輸送するためのコストを最適化する一つの手段である。Novatekの資料によると、アイスクラスタンカーから標準タンカーへの積み替えは、直接輸送するよりも、アジアへのLNG輸送のコストを0.2ドル/MMBTU削減できるとされている。積み替え量が年間2,110万トンだとすると、2,250万ドルの削減となる。
5.新規LNG・P/L事業
(1)Nord Stream 2
欧州議会は、「Nord Stream - 2」がEUへの脅威であることを認識
- 3月12日、欧州議会はNord Stream 2の建設はEUの国内市場を脅かすとの決議を採択した。欧州議会のメンバーは、Nord Stream 2がEUのロシアのガスの依存を増大させ、さらにEUの国内市場を脅かす可能性があることへの懸念を表明する、と述べた。
- 決議の全文は公表されていないが、投票にかけられたドラフトはNord Stream 2が欧州の国内市場の脅威になるなど、厳しい言葉を含んでおり、その作成者は、パイプラインの構築はやめなければならない、と強調した。
- 欧州議会のメッセージは、1997年に締結されたロシアとEUの協力とパートナーシップ協定の見直しを求める、としている。議会議員は、モスクワとの関係では選択が必要だと考えており、気候変動、エネルギー安全保障、デジタリゼーション、人工知能、テロとの戦いのような問題では協力が可能だが、より緊密な関係は、ロシアがウクライナ東部の紛争におけるミンスク和平合意をはじめ、国際法の規範を守る必要がある、と強調した。
- 議会議員は、ロシアの国際法の違反を考慮し、特に個人に適用される新しい制裁を受け入れる準備が必要だと述べた。公表文では、「制裁はロシアがしかけている脅威に比例するべきである」と記されている。
デンマークは追加の環境調査を要求
- 3月27日、デンマークは、Nord Stream 2プロジェクトのパイプライン敷設を拒否しなかったが、環境専門家による追加レビューを要求した、とNord Stream 2のオペレーターであるNord Stream 2 AG社がメディアに語った。同社は、この要求を受け取ったばかりであり、慎重に評価していく、と述べた。
- デンマークはパイプラインの領海内の建設許可を出していない唯一の国である。同プロジェクトの申請書は2018年1月から検討されてきたが、Nord Stream 2は先んじて、デンマークの領海を通らない代替ルートの検討もしていた。
- Nord Stream 2は2019年末に操業を開始する予定となっている。パイプラインはロシアからバルト海を通り、ドイツに繋がり、ロシアのガス資源を欧州の顧客に届けるもので、プロジェクトの総費用は99億ユーロと見積もられている。
(2)Turk Stream
陸上と沖合パイプライン接続を完了
- 3月19日、トルコでTurkStreamガスパイプラインの沖合と陸上セクションを結ぶ最終的なパイプが溶接され、黒海でガスパイプラインシステムを構築することを目的とした一連の作業の完了の象徴だ、と同プロジェクトのオペレーターのウェブサイトで発表された。ロシア側の作業は1月~2月に完了し、トルコ側の作業が3月に行われた。
- ロシア側は、パイプラインの上陸部だけでなく、黒海経由のガス輸送に必要な圧力を供給するRusskayaコンプレッサー基地も、操業開始の準備が整っている、と同社は述べた。
- 今後、トルコのKiyikoyに受入側のターミナルを建設した後、Turk Streamパイプラインの運用準備が行われる。パイプラインの運用開始
(3)Arctic LNG-2
Totalとのプロジェクト権益売買に合意
- Novatekは、3月5日、Arctic LNG-2プロジェクトの10%の権益をフランスのTotal社に売却することで契約を締結したと発表した。プロジェクトへの参入の条件には、Arctic LNG-2の10%の参加持分の支払いとプロジェクトへの融資が含まれる。
- また、NovatekとTotalは、Yamal半島とGydan半島での将来の全てのNovatekのLNGプロジェクトで、Totalが10%から15%を購入する機会を持つことを合意した。
- Arctic LNG-2のLNG生産容量は19.8百万トンで、生産開始は2022-2023年を予定している。
NovatekはSaudi Aramcoに権益を売る検討の準備ができている
- 3月17日、NovatekのLeonid Mikhelson社長は、もし良い条件が示されれば、Saudi AramcoがArctic LNG-2プロジェクトの権益を30%まで買う可能性を検討する準備ができていると、記者に語った。同社長によると、Saudi Aramcoは「(Arctic LNG-2プロジェクトの30%までの)権益を買いたいと考えている」とし、また、「もし全てがうまくいけば、我々は(Sauti Aramcoが30%の権益を買いたいという要請を)検討するだろう」と付け加えた。
以上
(この報告は2019年4月19日時点のものです)