ページ番号1007776 更新日 平成31年5月16日

中国の石油需給 ~原油輸入増、石油製品輸出増、輸送分野の石油代替進展~

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レポートID 1007776
作成日 2019-05-16 00:00:00 +0900
更新日 2019-05-16 15:06:08 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 企業探鉱開発
著者 竹原 美佳
著者直接入力
年度 2019
Vol
No
ページ数 21
抽出データ
地域1 アジア
国1 中国
地域2
国2
地域3
国3
地域4
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国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アジア,中国
2019/05/16 竹原 美佳
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概要

  • 2019年3月、モルガン・スタンレーのアナリストが中国の石油消費は市場のコンセンサスより5年から8年早い2025年にピークを迎えると予想。その要因として交通輸送部門における石油代替を上げた。市場コンセンサスの土台となるIEAやBPはいずれも同国の石油需要のピークを2030年代と見ている。
  • 国有石油企業は国内供給強化策ならびに油価上昇を受けて投資を増加、原油生産は下げ止まりの傾向を示している。ただし成熟油田を抱え、天然ガスの増産を志向する中国において原油生産が急速に上向くことは考えにくい。
  • 国有・非国有の製油所新増設や山東省を中心とする地方製油所の原油精製処理量の増加に伴い、原油輸入の増加が続いている。
  • 原油輸入相手先はロシアが2年連続で首位である。中国においてロシア・米国原油は調達の多角化や対中東バーゲニングとして存在感が増している。
  • 原油輸入、精製処理量増加の一方で供給過剰、ガソリン、軽油、ジェット燃料など余剰の石油製品の輸出が増加している。政府は地方製油所に石油製品の輸出枠を付与せず、整理統合の方針を進める。また国有石油企業に対し石油製品の輸出拡大を容認している。精製処理能力の過剰は緩やかに収れんに向かう見通し。
  • 中国CNPC経済技術研究院(CNPC-ETRI)は2018年に新エネルギー車(主にEV・PHEV)によりガソリン日量4万バレルが代替されたと分析。新エネルギー車の進展以外では、自動車販売の伸びの低迷、高速鉄道の発展による影響などをあげる。またガソリン消費の伸びが鈍化の要因の2割は道路から鉄道へのシフトにあると指摘。
  • 2019年の石油需要についてCNPC、SINOPECともに安定した伸びと指摘。中国最大の石油精製・販売事業者Sinopecのガソリンスタンド数と店舗あたりの給油量は過去3年増加。
  • IEAは2024年までの石油需要について年平均2%増、ガソリンは増加するが燃費基準の厳格化を受けて過去10年に比べ伸びが鈍化、軽油は消費牽引型の産業構造の変化や環境対策のためさらに鈍化と見る。
  • 中国の石油需給の現状と交通輸送分野における石油代替の状況を見ると確かに需要の伸びは鈍化しており、モルガン・スタンレーの指摘通り中国の石油需要ピークは早まるかもしれない。
  • しかし自動車の保有台数(ストック)と航空燃料需要など自動車以外の輸送燃料の伸びを踏まえると、石油消費のピークが早まったとしても中国の石油消費が急速に下落することは考えにくく、世界の石油需要を下支えする状況が2030年代まで続くと考えられる。

はじめに.中国の石油消費ピークが2025年に到来?

2019年3月、モルガン・スタンレーのアナリストが中国の石油消費は市場のコンセンサスより5年から8年早い2025年にピークを迎えると予想。その要因として「中国特有の交通手段の発展モデル」を指摘。発展途上国は交通量が増えるのに伴い、石油需要も増大が続くのが一般的だが中国では電気自動車(BEV・PHEVを中心とする新エネルギー車)の普及や鉄道の利用が急速に進んでいるため、石油需要は大幅に減少するとみる。また同国は今世紀に入り世界の石油需要を牽引してきたが、同国の石油需要の減速は石油市場や価格に影響を及ぼすとの見解を示したと報じられた 。

確かに中国ではEV(中国では新エネルギー車“NEV”)が急速に普及しており、その他輸送分野における石油代替も進展し石油需要の伸びは2000年代に比べ緩やかになっている。BP統計によると中国の2010年から2017年の石油需要の伸びは4.5%で2000年から2010年の7.2%に比べると伸びが鈍化している(図1)。しかし2010年から2017年にかけて世界の石油需要が年平均日量117万バレル増加する中、中国の増加はその4割(日量47万バレル)を占め、世界の石油需要を牽引してきた(図2)。また中国の原油輸入量は2017年に日量800万バレルを超え、米国の原油輸入量(同790万バレル)を上回り世界最大の原油輸入国となった。

市場コンセンサスの土台となるIEAやBPはいずれも同国の石油需要のピークを2030年代と見ている。IEAは2030年から2040年の中国の石油需要について横ばい(年平均0.0.6%増)、BPは微増(同0.7%増)とし、いずれも大幅な減少とは見ていない(図3)。

筆者は中国の石油需要についてIEAやBPの見方を支持している。また自動車の保有台数(ストック)の積み上がりとガソリンスタンド数、給油量の増加、航空燃料需要など自動車以外の輸送燃料の伸び、石化の需要を反映した精製・石化プラント増設の状況を踏まえると石油ピークが早期に到来したとしても中国の石油消費が急速に下落することは考えにくく、世界の石油需要を下支えする状況が2030年代まで続くと見ている。本稿では中国の石油需給の現状と交通輸送分野における石油代替の状況、短期・中期の石油需要見通しについて整理し、中国の石油需要ピークの早期到来の可能性と一方の需要の底堅さについて示したい。

図 1:石油需要の伸び (年平均、%)

図 2:石油需要の伸び (年平均、万b/d)

図 3:中国の石油需要(IEA・BP)

1.中国の石油需給実績(2018年)

2019年2月28日に発表された中国国家統計局の国民経済・社会発展統計公報(以下、「2018年統計公報」)によると、中国の原油生産は前年比1.3%減の日量378万バレル、原油輸入は同10%増の924万バレル、原油の消費は同6.5%増であった。なお、2019年4月公表のIEA Oil Market Reportによると2018年の中国の石油需要は前年比3.6%増(日量45万バレル増)の1,303万バレル、国内生産(コンデンセートを含む)は同0.5%減(日量2万バレル減)の385万バレルである。

(1)原油生産下げ止まり、国内供給強化、探鉱開発投資額増額

中国の原油生産は2015年にピークアウトしている。2014年下期以降の油価低迷を受けて、中国政府は成熟油田への投資抑制を許容、主要生産事業者である国有石油会社3社(中国石油天然気集団公司<CNPC>、中国石化集団公司<SINOPEC>、中国海洋石油総公司<CNOOC>)は東部の大慶(Daqing)油田や勝利(Shengli)油田など高コストの成熟油田への投資を削減しており、2016年以降同国の生産は減少が続いている。しかし2018年の対前年減少は日量5万バレルで2016年(日量31万バレル)、2017年(同15万バレル)に比べ減少幅が縮小、下げ止まりの傾向にある。これには政策と油価の双方が作用していると思われる。米中貿易摩擦や産油国の供給不安定化を受けて、同国のエネルギーセキュリティ意識が高まり、政府は国内供給強化に方針を転換した。2018年8月には習近平主席が国有石油企業3社に国内供給強化を指示した模様だ。

国有石油企業は相次いで国内供給強化策を打ち出し探鉱開発投資額を増加している。PetroChinaは2019年3月に東部陸上大港(Dagang)油田を対象にシェールオイルの開発実証を行うと表明し、シェールオイルの生産目標を発表した。ただし2025年に日量1万バレルというわずかな量である。Sinopecは2019年4月に東部陸上勝利(Shengli)油田でShellとシェールオイルの調査を行うと表明した。ShellはPetroChinaとの四川におけるシェールガスの探鉱開発から撤退したが、中国がシェールオイルの調査に乗り出すということでデータ収集(スタディ)や国有石油企業との連携という観点から再び参入したのであろうか。Sinopecはまた同年4月に海洋の探鉱開発強化(南シナ海西部Weizhou油田)についても表明した。CNOOCは2018年12月にIOC9社(Chevron、ConocoPhillips、Equinor、加Husky、クウェートKUFPEC、豪Roc Oil、Shell、韓国SK Innovation、TOTAL)と南シナ海における戦略的な提携で合意し、対象海域で開発の機会を模索すると発表した。対象海域は南シナ海珠江堆積盆(Pearl River Mouth Basin)の既に鉱区設定され未契約のArea A・Bなどを含み、係争海域ではない。

国有石油企業3社(PetroChina、Sinopec、CNOOC)の探鉱開発投資額は2016年に317億ドルで底を打ち、その後上昇が続いている。3社の2018年の探鉱開発投資額は前年比23%増の約450億ドルであり、2019年の予算は2割増の約530億ドルの見通しである(図4)。2014年の660億ドルを依然下回ってはいるが、過去5年でもっとも高い。

ただし成熟油田を抱え、天然ガス需要の増大に対しその増産を志向する中国において今後原油生産が大幅に上向くことは考えにくい。国有石油企業の原油・天然ガスの生産実績を見ると、原油に比べ天然ガスの増産が図られて、2019年の原油生産見通しはいずれも横ばいという状況である。年次報告においてPetroChinaは「原油生産の安定、天然ガスの増産」を、Sinopecは「原油の効率的な開発と生産回復」を表明している。

図 4:国有石油企業3社探鉱開発投資額推移

(2)原油輸入、精製処理量

中国海関統計(国家統計局)によると原油輸入量は前年比10.1%増(日量85万バレル増)の924万バレルで原油輸入額は約2,408億ドル、平均輸入価格は1バレルあたり71ドルであった。中国は石油消費の7割を輸入する石油純輸入国だが、日本や韓国他に原油を少量輸出しており、原油の純輸入量は日量919万バレルである。またガソリンや軽油などの石油製品の輸出入を合わせた石油の純輸入量は同10.7%増(日量86万バレル増)の日量886万バレルである。精製処理量は同6.3%増の日量1,207万バレルである。原油生産の減少よりも国有・非国有の製油所新増設や山東省を中心とする地方製油所の原油精製処理量の増加に伴い、原油輸入の増加が続いている状況である(図5、参考(1))。

図 5:中国精製処理量および原油生産・輸入の推移

参考(1)中国の地方製油所について

  • 主に山東省に位置。山東省は小規模の油田群により構成される勝利油田が存在していたため、大手国有企業による製油所以外に地方政府等が製油所を設立、保持する余地があった特異な地域。地方製油所の多くは1970年代に誕生したが、いわゆる釜式(ティーポット)からタワー式に変化して久しい。
  • 地方製油所の多くは民間企業だが、地方政府系(地方政府企業が民営化)、国有企業系、その他に大別できる。国有企業系では元化学工業部系の中国化工(ChemChina)や国有軍需系企業Norinco傘下の製油所も存在する。
  • 1社あたりの精製処理能力は5万b/d~15万b/d
  • 2015年まで輸入原油使用権を取得できず、輸入原油の使用は限定的(製油所稼働率は3割程度にとどまり硫黄分の高い重油を加工し国家基準に合致しない軽油などを生産。小規模・老朽化設備による非効率かつ環境負荷の高い操業が問題に)
  • 2015年2月、中国政府は国有石油企業の独占打破と環境問題改善の観点からに「輸入原油使用管理の問題に関する通知」を発行。地方製油所は国家基準に合致したガソリン・軽油の生産や小規模・老朽化設備の廃棄などの条件を満たせば輸入原油の使用権取得が可能に。
  • 2016年に約20社が原油輸入ライセンス(約150万b/d)と輸入原油使用権を取得、その後地方製油所による原油輸入量が急増、稼働率は5割前後に上昇(精製処理量の3割、原油輸入の2割を占める存在に)。
  • 2016年2月、最大手の東明石化を中心に輸入原油共同調達連盟設立
  • 2017年10月、東明石化を中心に「山東煉化能源有限公司」設立
  • 2018年8月、日照海右石化が裁判所に破産申請
  • 2018年11月、山東省政府、集約化に向けた通達

(3)原油輸入相手先(2018年)

中国の原油輸入を国別に見るとロシアからの輸入が最大であり、前年比20%増の日量143万バレル(2018年の原油輸入の15%)であった。ロシアは2年連続でサウジアラビア(前年比9%増の日量116万バレル、原油輸入の12%)を上回った。地方製油所が、ロシア原油を距離が近く柔軟性が高いという理由で選好していることに加え、イランやベネズエラからの輸入減少もロシアからの原油輸入拡大につながった模様である。た、米国の対イラン制裁の影響でイランからの輸入は同6%減の日量59万バレルとなった(2019年1月の同国からの原油輸入量は前年同月比50%減<日量37万バレル減>の日量37.7万バレル)。ベネズエラからの輸入は同国における政治・経済的混乱で原油生産および出荷が減少したことにより同24%減の日量33万バレルとなった(2019年1月の同国からの原油輸入量は前年同月比7%減の日量41万バレル)。ベネズエラからの原油は主に中国への融資返済にあてられているとされる。米国からの輸入は同60%増の日量25万バレルであった。米国からの原油輸入には2018年8月23日から25%の追加関税が課されるはずであったが、中国政府は8月8日に対象から外した。Sinopecは2018年7月以降輸入の見合わせあるいは慎重な調達に転じたようだが、割安な価格で推移していたこともあり2018年通年では前年比60%増の日量25万バレルと大幅な増加であった。中国においてロシア原油と米国原油は調達の多角化や対中東バーゲニングとして存在感が増しているようだ。

一方、サウジアラビア国営Aramcoはフレキシブルな契約を求める独立系精製企業に対し、スポット契約やクレジット条件緩和などで中国市場への対応を強化している模様だ。2016年4月には地方製油所向けに初めて原油を供給(山東京博石油化工に73万バレル)した。その後2017年2月には北方華錦化学工業集団公司(North Huajin Chemical Industries、北方華錦)と通年の原油売買契約を締結した(期間1年、Arab Extra Light、数量未詳)。北方華錦は中国最大の中国兵器工業集団公司(North Industries Group;Norinco)子会社で、2017年3月のサルマン国王訪中の際NorincoとAramcoは精製・石化分野における協力機会を模索することについて覚書(MoU)を締結した。

その後2017年から2018年にかけてAramcoは中海石油煉化、浙江石油化工有限公司(ZPC)、恒力石化(大連)煉化と原油供給契約を交わした。

また2019年2月にAramcoは浙江石油化工有限公司(ZPC)の株式9%取得ならびに浙江省での合弁による石油製品販売会社設立に関する MoU に調印した。浙江石油化工は民間の企業グループ栄盛石化(51%出資)、巨化集団(20%)、浙江桐昆投資(20%)、舟山海洋総合開発投資(9%)が出資しており、浙江省舟山に精製処理能力年2000万トン(日量40万バレル)の製油所、年140万トンのエチレンプラントなどの精製石化プラントを建設中である。今般Aramcoは舟山海洋総合開発投資の9%を引き継ぐことになる。また浙江石油化工は2017年9月に浙江省政府傘下の浙江能源集団有限公司と官民共同出資の石油販売企業「浙江省石油株式有限公司」を設立している。Aramcoは浙江省能源集団有限公司との間で合弁石油製品販売会社設立に関するMoUに調印した。浙江省で石油製品販売とEVへの充電を行うサービスステーション(SS) ネットワークを構築、2025年までに500のSSを開設する計画である。

図 6:中国の国別原油輸入(2018年)

(4)石油製品(ガソリン・軽油等)輸出

中国では石油消費の約4割が交通輸送分野で使われており、ガソリンよりも軽油の消費量が多い。原油の輸入、精製処理量が増加する一方で中国の精製処理能力は供給過剰に陥っており、ガソリン、軽油、ジェット燃料など余剰の石油製品の輸出が増加している(図7)。

図 7:ガソリン、軽油輸出推移

経済・製造業の発展に伴う物流規模の拡大、発電用石炭の輸送増加などにより2012年頃まで中国の石油消費は軽油が牽引してきた。その後軽油は産業構造の変化、電化、天然ガス自動車等(省エネ・エネルギー代替)、石炭抑制(環境規制)政策等により横ばいから微減傾向となっている。ガソリン消費は中間層の増加、ライフスタイルの変化(マイカー志向、レジャー需要の高まり)とともに2011年以降一貫して伸びており、軽油に代わり石油消費の牽引役となった(図8)。国有2社(Sinopec・PetrroChina)のガソリン・軽油生産比は2010年の2.2から2018年には1.1に縮小した(図9)。しかし燃費規制強化、EV促進政策、天然ガス自動車や高速鉄道の普及・発展による代替でガソリンの消費の伸びも鈍化に転じている。

図 8:中国の軽油消費と貨物輸送ならびにガソリン消費と自家用車保有台数

2018年の石油製品輸出は前年比12%増の5,863万トン(日量約120万バレルでうちガソリンが2割、軽油が3割)であった。2018年に政府は国有石油企業3社の他国有石油トレーダーのSINOCHEM、国有航空燃料会社China National Aviation Fuel Corpに輸出枠計4,050万トンを付与した。2019年1期も前年同期を上回る輸出枠を付与している。政府は地方製油所に石油製品の輸出枠を付与せず、整理統合の方針。国有石油企業に対し石油製品の輸出拡大を容認。精製処理能力の過剰は今後緩やかに収れんしていくと思われる。

図 9:ガソリン・軽油生産比(PetroChina・Sinopec)

2.交通輸送分野における石油代替

CNPC-ETRIは「石油ガス産業報告」において、2018年は新エネルギー車によりガソリン4万b/dが代替されたと分析。新エネルギー車の進展以外では、乗用車販売の伸びの低迷、製造業や建築部門における軽油消費の代替、輸送部門における天然ガス自動車の利用拡大、高速鉄道の発展を含む都市公共交通による影響をあげている。

(1)自動車販売の低迷

中国自動車工業協会によると2018年の中国の自動車販売台数は前年比2.8%減の2,808万台であり、このうち乗用車は同4.1%減の2,371万台であった。乗用車販売の49%(1,153万台)を占めるのがセダンで、SUVがこれに次ぐ42%(1,000万台)である(図10)。乗用車販売が前年を割り込んだのは販売が伸び始めたここ20年来初めてのことである。中国では自動車の購入や走行について北京、上海などの大都市を中心に厳しい規制が設けられている。例えば北京市ではナンバープレートが抽選となっており入手は絶望的に困難である。運よく入手できたとしても走行可能日がナンバープレートの奇数、偶数日により規定される。また上海市のナンバープレートは入札制であり価格は約150万円と車体価格を上回る状況だという。新エネルギー車は走行可能日が限定されず、公共バス優先レーンを走って良いなどの優遇措置が設けられている。ただし北京市では新エネルギー車のナンバープレートも数年待ちの状態であるという。これらの規制が乗用車販売の伸びを抑制する構造的な要因だが、2018年の販売低迷については排気量1.6リットル以下の小型車購入税減税が2017年末に終了したことに伴う駆け込み需要の反動や中国経済の減速が影響したと見られる。とはいえ同国の自動車販売台数はなお世界第1位(米国約1,730万台、日本は約530万台)である。

図 10:中国の自動車販売台数推移(2011~18年)

(2)高速鉄道の進展

中国の鉄道敷設距離は世界2位の約13万キロで、高速鉄道(最高時速200キロメートル以上)の敷設距離は世界1位の2.4万キロメートルである(中国国民経済・社会発展統計公報によると2018年単年で4,100キロメートルを新設している)。鉄道の旅客取扱量は2010年の8,762億人キロから2018年は14,147億人キロに増加した(図11)。一方道路輸送における旅客取扱量は2010年の15,021億人キロから2018年は9,276億人キロへと減少しており、鉄道の旅客取扱量が2013年以降道路輸送を上回っている(図12)。CNPC-ETRIは高速鉄道の急速な発展によりその経済的、時間的な優位性が発揮され、短中距離旅客輸送において道路輸送から鉄道へのシフトが進んだ。また道路の旅客輸送は5年連続対前年比で減少しており、ガソリン消費の伸びが鈍化した要因の2割程度は道路から鉄道へのシフトにあると指摘している。

図 11:中国高速鉄道新設、旅客輸送取扱量(鉄道)推移

図 12:旅客取扱量推移(鉄道・道路)

(3)新エネルギー車(BEV・PHEV)の普及

自動車販売が低迷する一方で新エネルギー車販売(BEV・PHEV)の伸びは著しい。IEA Global EV outlook 2018(2018年5月発表)によると、中国のEV保有台数は2009年の約500台から2017年には約120万台に増加(2016年の中国の自動車保有台数1.9億台の0.6%)した。特に2015年以降急速に普及した(図10)。中国汽車工業協会によると、新エネルギー車の販売台数は2014年の7.5万台から2018年には125.6万台(前年比62%増)に増加した。内訳はBEVが78.8万台、PHEVが26.5万台である。2018年は公共交通機関におけるEVバスの導入が拡大した模様である。また中国の新エネルギー車累計保有台数は172.9万台(このうちBEVは80.1万台)であり、中国の自動車保有台数の0.9%に相当する。

またIEA Global EV outlook 2018によると、2017年の世界のEV保有台数は311万台であり、世界の自動車保有台数約13.2億台の0.23%に相当する(図11)が、同レポートにおいて中国の保有台数は123万台、新規登録台数58万台となっておりいずれも世界1位である。中国の新エネルギー車保有台数が同国の自動車保有台数に占めるシェアは1%に満たないとは言え世界のそれに比べかなり高い水準にある。

図 13:中国におけるBEV・PHEV保有台数推移(千台)

図 14:電気自動車(BEV+PHEV) 国別普及実績推移

参考(2)中国の新エネルギー車(NEV)主な政策

中国は製造業振興の観点から政策的に新エネルギー車の普及推進を図っている。2015年5月に公表された「中国製造2025」では戦略目標として製造大国から製造強国への実現に向けた3段階の目標が明示されている。第1段階は、2025年までに製造強国に仲間入りすること、第2段階は、2035年までに製造業全体の実力を世界の製造強国の中位のレベルに引き上げること、第3段階は、中華人民共和国設立100周年(2049年)までに、総合的な実力を世界の製造強国の上位のレベルにすることであると定められている。10の重点分野((1)次世代情報通信技術産業、(2)先端デジタル制御工作機械とロボット、(3)航空・宇宙設備、(4)海洋建設機械・ハイテク船舶<深海探査や資源開発利用、海洋作業設備、LNG船などを含む>、(5)先進軌道交通設備、(6)省エネ・新エネルギー自動車、(7)電力設備、(8)農業用機械設備、(9)新材料、(10)バイオ医薬・高性能医療機器)が設定されている。

新エネルギー車については2025年までの目標として中国自主ブランドの新エネルギー車の年間販売台数を300万台とすることや国内での販売比率を80%以上とすること、累計生産台数を1,700万台とすることが示された。

また2017年4月に公表された「自動車産業中長期発展計画」では2020年の目標として自動車の年間生産台数を3,000万台前後、このうち新エネルギー車の生産台数を200万台(約7%)とすること、2025年の目標として自動車の年間生産台数を3,500万台前後、このうち新エネルギー車の生産台数を700万台(20%)とする目標が設定されている。また新車の平均燃費の目標については2020年に5.0リットル/100キロメートル、2025年に4.0リットル/100キロメートルとする目標が設定されている。

これまで中国政府は新エネルギー車購入に対する補助金を支給し、新エネルギー車の販売が伸びてきた。しかし2018年に市場拡大、競争力向上を図るため、連続航続距離や搭載する車載電池の性能により補助金を調整する政策が出された。連続航続距離が300キロ未満のEV・PHEVへの補助金額は引き下げられる。EVの場合150キロメートル未満は2017年の2万元(約30万円)から2018年はゼロとなる一方で300キロメートル以上引き上げられ、特に400キロメートル以上の高性能車種は2017年の4.4万元から5万元(約80万円)へと13.7%引き上げられる。

さらに政府は自動車メーカーに対する新エネルギー車生産促進策として2017年9月に「燃費・新エネルギー車並行クレジット管理弁法」を発表した。同弁法は生産・輸入台数が年間3万台以上の自動車メーカーを対象に企業平均燃費目標(2020年5.0リットル/100キロメートル<2015年比27%向上>、2025年4.0リットル/100キロメートル)に加え、新エネルギー車の生産(2019年10%、2020年12%)を義務付けている。新エネルギー車の生産に応じクレジットが得られる。新エネルギー車のクレジットの算出方法は、EVが純電動航続距離に0.012を乗じ0.8を加えるというもの。PHEVは一律2ポイント、FCVは0.16に燃料電池系統の定格出力を乗じる(燃料電池の性能に応じて生産1台につき最大5ポイントのクレジットの獲得が可能)。燃費および新エネルギー車の生産比率が未達の場合生産停止や減産措置がなされるが他社の余ったクレジットを購入して補填することが可能となる。当初2018年に施行予定であったが企業の準備が整わないため2019年に開始することとなった。日本のメーカーも新エネルギー車専用の工場建設を含む現地生産・販売計画を相次いで打ち出している。

3.石油需要見通し(短期・中期)

(1)中国企業による石油製品需要・販売見通し(2019年、中国CNPC-ETRI、Sinopec)

2019年4月公表のIEA Oil Market Reportによると2019年の中国の石油需要は前年比3.8%増(日量44万バレル増)の1,347万バレル、供給(コンデンセートを含む)は同0.8%減(日量3万バレル減)の382万バレルである。中国CNPC-ETRIは中国経済の成長と精製処理能力の増強により、2019年の石油見かけ消費を前年比6.9%増の日量1,363万バレルと予測。また、工業生産が相対的に好調で、石油需要も小幅に増加し主要石油製品(ガソリン・軽油・灯油・ジェット燃料)の消費は前年比1.9%増の日量715万バレルと予測している。

中国最大の石油精製・販売事業者Sinopecのガソリンスタンド数と店舗あたりの給油量は過去3年増加。同社は2019年の中国経済は穏やかな成長(6~6.5%)で石油製品の需要も相対的に安定。主要石油製品総販売量について前年比1%増の日量371万バレルと予測している。

図 15:短期石油需要見通し(IEA、CNPC-ETRI)

図 16:中国主要石油製品需要見通し(CNPC-ETRI)

(2)IEAによる石油需要見通し(2018~2024年、IEA Oil2019)

IEAは2018年から2024年にかけて石油需要は年平均2%増(日量33万バレル増)の日量1,490万バレルに増加すると見ている。ガソリンは予測期間中に年平均日量9万バレル増加するが、燃費基準の厳格化を受けて過去10年(2007~2018年)に比べ伸びが鈍化する。軽油は予測期間中年平均日量2万バレル増加と過去数年に比べさらに伸びが鈍化する。その背景として消費牽引型の産業構造の変化や環境対策のため地方政府がEVバスなどよりクリーンな輸送手段を選好していることを指摘している。

図 17:中国石油需要見通し(IEA)

図 18:中国製品別石油需要増減推移(IEA、千b/d)

さいごに.

筆者は中国の石油需要についてIEAやBPの見方を支持している。中国の石油需給の現状と交通輸送分野における石油代替の状況を見ると確かに需要の伸びは鈍化しており、モルガン・スタンレーの指摘通り中国の石油需要ピークは早まるかもしれない。

しかし販売規制を受けてなお毎年3,000万台販売される自動車の保有台数(ストック)の積み上がりとガソリンスタンド数、給油量の増加、航空燃料需要など自動車以外の輸送燃料の伸びを踏まえると、石油消費のピークが早まったとしても中国の石油消費が急速に下落することは考えにくく、世界の石油需要を下支えする状況が2030年代まで続くと考えられる。

以上

(この報告は2019年5月14日時点のものです)

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