ページ番号1007799 更新日 令和1年6月26日
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1.政治・経済情勢
(1)国内
政治・経済
「ロシア発展国家目標達成統一計画」を策定
- ロシア政府は、5月8日、プーチン大統領の第4期政権の開始とともに2018年5月7日に発布された戦略的国家目標を定める大統領令「2024年までのロシア連邦発展の国家目標と戦略的課題」(5月指令)を実行するため、「ロシア発展国家目標達成統一計画」を策定・承認した。2018年5月の大統領令には、人口増加、平均寿命の向上、国民の所得増加、貧困率の削減、住宅環境の改善、技術発展の促進、デジタル技術導入の加速、経済成長などが含まれる。今回の計画では、目標を達成するための2024年までの数値目標が定められた。
- 同計画によると、計画通りに経済成長が達成されれば、2023年に購買力平価GDPでドイツを追い抜き、世界で5位になると予測されている。一方で、世界経済成長の鈍化、物価の下落、新興国の経済危機、貿易戦争の激化、ロシアへの制裁の強化などが、目標達成のリスクとして挙げられている。
エネルギー安全保障ドクトリンを改定
- プーチン大統領は、5月13日、2012年に制定されたエネルギー安全保障ドクトリンの改定案を承認した。この文書には、燃料・エネルギー産業業界における行政の改善、適切なエネルギー資源の埋蔵量と生産資産の維持、燃料・エネルギー産業の生産構造の改善、技術的独立性の確保、競争力の向上などの方針が示されている。
- ロシアのエネルギー安全保障に影響を与える事象として、世界の経済成長のアジア太平洋地域へのシフト、世界的なエネルギー需要スピードの低下や非石油燃料への代替があるとし、その一方で、エネルギーの輸出国同士での競争が激しくなり、国際的な規制等によりエネルギー産業に対する規制の変化を見通している。また、これから関係を強化していくべき諸外国として、ユーラシア経済同盟、CIS、BRICS、上海協力機構、OPEC、ガス輸出国フォーラムなどが挙げられている。
- 国内でインフラ整備を優先してく地域としては、東シベリア、北極圏、極東地域、北コーカサス、クリミア、カリーニングラードが挙げられている。
- また、ロシアのエネルギー企業が世界的な新たな趨勢に直ちに適応できないことをリスクとして認識しつつ、ロシアのエネルギー企業に対する外国からの差別や、政治的あるいは軍事的なリスクに対する準備不足とならないよう指摘している。
(2)対外関係
1)米国
プーチン大統領とトランプ大統領との電話会談
- プーチン大統領と米国のトランプ大統領は、5月3日、電話会談を行った。会談では相互に有益な貿易投資関係の発展について議論された。また、プーチン大統領は4月25日にウラジオストクで開催された露朝首脳会談の結果を報告し、北朝鮮が義務を履行するには、同時に北朝鮮への制裁を緩和していくことが必要だと強調した。両首脳は、一貫して北朝鮮の非核化を進めていき、調整半島の長期的正常化を達成することの重要さを確認した。
- また、ウクライナ情勢にも触れ、プーチン大統領はウクライナの新大統領がミンスク合意を着実に履行することが、ウクライナでの紛争を解決するために必要だと強調した。ベネズエラ情勢については、プーチン大統領は、ベネズエラの国民だけが、彼らの国の未来を決める権利があると主張し、外部からの力による内政問題への干渉は、政治的解決の可能性を弱めてしまうと語った。
- 最後に、両首脳は、今後もあらゆるレベルで対話を継続することに合意した。
プーチン大統領とPompeo国務長官との会談
- プーチン大統領は、米国のPompeo国務長官とソチで会談を行った。この中で、プーチン大統領は、ロシアは米露関係を改善したいと言い続けてきたが、米国の大統領選挙でのロシアの干渉はなかったとの結論が出たことから、米露関係の回復の条件が整ったことを望む、と語った。
- エネルギー関係については、米国が世界一の原油生産国になったことに触れ、ロシアと米国が世界のエネルギー市場の安定化について議論をしていきたい、と語り、その他の相互作用があると考えられる経済分野についても、すべてが議論の対象になることを願う、と伝えた。
- これに対し、Pompeo国務長官は、米国とロシアには共通の利益があり、北朝鮮やアフガニスタンなどの問題を含め、互いに協力をしていくことができる、と語った。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/60519
2)ウクライナ
ゼレンスキー大統領がEUにロシアのガス輸送問題への協力を要
- ウクライナのゼレンスキー大統領は、5月20日、キエフでSefcovic欧州議会副委員長(エネルギー同盟担当/スロヴァキア)と会談を行い、ロシアとのクリミア問題への取り組みや、ロシアとのガス輸送契約のためのウクライナ・EU・ロシアの3者間での交渉を含む、ウクライナとEUの協力について議論を行った。
- ゼレンスキー大統領は、2019年以降のロシアとのガス輸送契約について、EUの協力を期待すると述べるとともに、EUの一致したNord Stream 2に反対にウクライナは感謝をする、と述べた。また、同大統領は、クリミア問題においてはEUがロシアに対して制裁を続けることが重要で、制裁を強化することを強く望む、と伝えた。Sefcovic副委員長はゼレンスキー大統領の就任を祝福し、今後の成功を祈るとともに、ガス輸送契約については早急な進捗を望む、と述べた。
- ゼレンスキー大統領は5月20日にキエフで大統領就任式を行い、Sefcovic副委員長等、関係者を招待していたが、ロシアは招待していないとウクライナの外務省は伝えている。

写真出典:https://www.president.gov.ua/news/prezident-ukrayini-volodimir-zelenskij-obgovoriv-spivpracyu-55529
3)ベトナム
露越首脳会談の開催
- プーチン大統領は、5月22日、ベトナムのフック首相とモスクワで会談を行った。ロシアとベトナムは、今年の7月で友好条約を結んでから25周年となり、来年の1月で外交関係樹立から70年となる。プーチン大統領は会談の中で、ロシアとベトナムの貿易が成長しており、政治・経済の分野での協力が拡大し、国際的な舞台で2国間の努力がなされている、と述べた。フック首相は、ロシアとの歴史的な戦略関係を強調し、2国間関係をより生産的なものにしていく、と述べた。
- フック首相の訪問中、ロシアとベトナムの政府・企業の間で10以上の合意がされた。Rosatomとベトナムの科学技術省との間では、原子力科学技術センターをベトナムに設置する旨の覚書に署名を行った。同センターのFSは2018年11月に承認されており、この覚書に基づき、次のセンターの建設に向けた次のステップに移る。また、ロシアのNovatek社は、ベトナムのNinh Thuan省と覚書に署名した。覚書では、同省で新規にLNG受け入れターミナル及びガス発電を建設するプロジェクトを立ち上げることとしている。
- また、2019年は両国で文化交流イベントが開催される「ロシアにおけるベトナム年」及び「ベトナムにおけるロシア年」とされ、5月20日にメドヴェージェフ首相とフック首相が参加し、オープニングセレモニーが開催された。

写真出典:http://kremlin.ru/events/president/news/60565
4)日本
5月に2度の外相会談を開催
- 河野外務大臣はモスクワを訪れ、5月10日にロシアのLavrov外務大臣との会談を行った。2018年11月の両首脳の合意に基づき、平和条約締結について議論を行い、四島における共同経済活動についての課長級作業部会を実施することなどを合意した。また、Lavrov大臣が5月30日から東京を訪れ、日露外務・防衛閣僚協議(「2+2」)を開催することが決められた。
- 5月30日には、外相会談での合意のとおり、東京で河野外務大臣岩屋防衛大臣とLavrov外務大臣・Shoigu国防大臣による、第4回日露外務防衛閣僚協議(「2+2」)が開催された。協議の中では、北朝鮮問題を含む地域情勢等の意見交換も行われた。
- また、5月31日には外相会談も行われ、6月の日露首脳会談に向けた準備として昨年11月のシンガポールでの両首脳の合意に従って平和条約について議論されるとともに、6月の日露首脳会談も念頭に8項目の「協力プラン」の具体化を含む経済や人的交流といった幅広い分野における日露関係について議論が行われた。

写真出典:https://www.mofa.go.jp/mofaj/erp/rss/hoppo/page4_004960.html
2.石油ガス産業情勢
(1)原油・石油製品輸出税
- 2019年5月、原油輸出税はUSD14.3/バレルに引き上げられ、東シベリア及びカスピ海北部の油ガス田等に対しては、引き続きゼロ課税となった。
- 5月の石油製品輸出税はUSD 31.3/トン、ガソリンについてはUSD 57.5/トンに設定された。
(2)原油生産・輸出量
- 5月、原油、ガス・コンデンセート生産量は4,700万トン(約3億4,310万バレル、平均日量1,111万バレル)で、前年同月比1.3%増。
- 5月、原油輸出量は2,120万トン(約1億5,473万バレル)。前年同月比0.9%減。
原油品質低下により各国が輸入を中止
- 4月下旬にDruzhbaパイプラインに汚染された原油が流された問題で、ロシア捜査委員会は、複数の犯人が原油の窃盗を隠蔽するために、パイプラインに汚染された規格外の原油を故意に流したことが原因と説明している。汚染された原油は合計で500万トンとも言われており、まだパイプラインの原油の正常化は達成されていない。ロシアは関係国とパイプライン正常化に関して複数回の討議を行い、5月末までにベラルーシ、ウクライナ、スロバキア、チェコ、ハンガリーへの原油輸出を一部復旧させた。ポーランドへの供給は6月中旬に復旧する見通しとなっている。
- 5月15日付けのIEAの石油市場レポートによると、Druzhbaパイプラインの原油汚染の影響で、ハンガリーは4月30日に300万バレル(同国での向こう3か月の原油不足量を補うもの、同国の国家備蓄の半分を超える量)の原油備蓄の放出する意向を発表した。ポーランドは5月2日に590万バレル(同国のパイプライン輸送量の10日分を超えるもの)の原油備蓄を放出した。チェコは150万バレル(同国の10日分の石油精製量に相当)の原油備蓄を放出すると発表した。また、スロバキア、ドイツについては、備蓄を放出したという情報は確認されていない。
- ベラルーシのルカシェンコ大統領は、汚染原油の供給による石油製品販売、製油所及びパイプラインの劣化について、数億ドルの損害があり、ロシアに対して補償を求めると発言している。ロシアのKozak副首相は、5月15日、汚染された原油供給による損害は全てTransneftが補償する用意があると説明しており、補償問題についても各国との調整が行われている。
- Novakエネルギー大臣は、5月7日、再発防止策として、石油の品質管理のための検査指標の拡大し、毎日の測定を目的として任意の石油サンプルを選択して保存する方法を提案。また、政府の部門間委員会では、政府機関による石油検査の実施、分析試験所の政府認定の義務化、規則違反の罰金の引き上げを検討していると説明した。
(3)天然ガス生産量
- 5月、天然ガス生産量は615億立方メートル(約2.2TCF)で、前年同月比5.3%増。
(4)減産合意
OPEC+共同閣僚監視委員会の開催
- Novakエネルギー大臣は、5月19日、サウジアラビアのジッダで開催されたOPEC+の共同閣僚監視委員会に参加した。同大臣は委員会後、現在の不確実性を踏まえ、2019年後半に何が起こるのか、より正確に予測することが必要で、引き続きOPEC+で協力していくことが必要だが、どのようなパラメーターに基づき、どのような数値になるかは、6月に議論する、と記者に語った。また、同大臣は、原油不足や原油需要が増加することがあれば、減産を緩める用意がある、と付け加えた。同大臣は、会議に先駆け、OPEC+では、関係国間での生産量削減や世界の原油市場の監視にとどまらず、共同投資や技術協力にも広げるべきだ、とも語っている。
- OPEC+共同閣僚監視委員会は、サウジアラビア、ロシア、クウェート、アルジェリア、ベネズエラ、アラブ首長国連邦、カザフスタン、イラクがメンバーとなっており、サウジアラビアが共同議長を務める。
- ロシアの5月の生産量では、減産の基準の2018年10月から日量平均31.7バレル削減されており、目標の22.8万バレルを上回ったとされる。
(5)税制・法制
北極圏の投資活動を支援する法案を近く提出
- 極東開発省は、5月29日、北極圏での投資プロジェクトを支援するための法案を6月10日までに提出すると発表した。これは、4月にサンクトペテルブルクで開催されたInternational Arctic Forumで、プーチン大統領が、北極海投資を促す法案を速やかに作成するように政府に指示をしたもの。
- 同省のKrutikov副大臣は、北極圏の社会経済状況はロシアの他の地域よりも厳しく、市民の収入レベルと社会福祉を改善する必要がある、と語った。その上で、高所得雇用を生むような事業を創造し、北極圏を開発にとりかかることが第一の仕事である、と話した。
- 同省によると、法案の作成にあたっては、極東の開発政策が参考にされているが、いくつか重要な点が異なる。極東の場合は、優遇税措置は期間の制約があり、開発優先地域とウラジオストク自由港に限定されていた。しかし、現在議論中の北極圏の法案は、優遇税措置は投資プロジェクトの全期間を対象とし、Kola半島からChukotka自治管区の北極圏全域が対象になる、とKrutikov副大臣は説明した。一方、軽減税率は、どのような経済活動かによって異なり、最低投資額は50万ルーブルという制約もある。同法案は、他にも極東でも採用されている建設許可、運転許可などの行政手続きの簡素化も含まれている。
3.ロシア石油ガス会社の主な動き
(1)Rosneft
極東の石油化学工場プロジェクトを中止
- RosneftのFedorov第一副社長は、5月13日に開催した投資家向けの電話会議で、Eastern Petrochemical Company(VNKhK)プロジェクトは、現在の税制では非経済的であるため、Rosneftの投資計画から外された、と説明した。同プロジェクトは沿海州で石油化学コンプレックスを作る構想で、第一ステージでは1,200万トンの石油精製工場の建設、第二ステージでは340万トンの石油化学工場を建設する計画だった。
- また、5月15日には同社のウェブサイトで、同プロジェクトの立場を説明する声明を掲載した。これによると、同プロジェクトの投資額は全体で最大1.5兆ルーブルと見積もられており、この巨額のプロジェクトは安定的で魅力的な財務体制や、周辺社会インフラの建設などの政府の支援が必要となっていた。しかし、政府の支援は得られず、プロジェクトへ影響を及ぼす50もの税制変更がされてきており、現段階では、上場会社としてプロジェクトの中止を決定せざるを得なかった、としている。
- 一方、同社は同プロジェクトについて、政府との対話を継続するとも明言しており、安定的で優れた規制条件が示されれば、Rosneftはこのプロジェクトを再開する準備がある、と付け加えている。
(2)Gazprom
Yamal半島で500bcmの天然ガス埋蔵量を新たに発見
- Gazpromは5月17日、国家鉱量委員会のYamal半島のDinkov、Nyarmeyskoyeでの炭化水素の発見に関する専門家意見が、連邦鉱物資源庁によって承認されたと発表した。
- DinkovはKara海のRusanovsky鉱区に位置し、C1+C2埋蔵量で合計390.7bcmが確認されている。Nyarmeyskoyeは同じくKara海にあるNyarmeysky鉱区に位置し、C1+C2埋蔵量は120.8bcmとされている。
Chayandaskoyeガス田で2019年に1.5bcmを生産開始
- Gazpromは5月28日、アジア太平洋市場への戦略を発表するプレスカンファレンスをサンクトペテルブルクで開いた。その中で、Gazpromは「シベリアの力」パイプラインのガスの供給源となるYakutiaのChayandaskoyeで、1.5bcmのガスの生産を開始すると説明した。Gazpromは2024年までに同生産量を年間25bcmまで引き上げる計画。今後、必要なインフラを建設することになるが、一部の施設は作業が開始されている。同鉱区では、1,200bcmのB1+B2埋蔵量が発見されている。
- また、Koviktinskoyeガス田では、2022年12月にガス生産を開始し、2025年には年間25bcmに引き上げる。同鉱区では、2,710bcmのB1+B2埋蔵量が発見されている。
- これらのガスの一部は「シベリアの力」パイプラインで中国に輸出される予定。パイプラインの年間輸出能力は38bcmで、運用開始は2019年12月1日を予定している。

地図出典:http://www.gazprom.com/f/posts/82/400428/presentation-press-conf-2019-05-28-en.pdf
(3)Novatek
Krasnoyarskで新たに5つのライセンスを取得
- Novatekは、5月24日、Krasnoyarskで新たに5つのライセンスを取得したと発表した。Krasnoyarskは同社がガス田開発を進めるGydan半島に近い。ライセンスを取得したのは、Novatekの子会社のNOVATEK-YurkharovneftegasとNOVATEK-Tarkosaleneftegasで、それぞれKhalmeryahskiy、Dorofeevskiy、West-Dorofeevskiyの3鉱区、South-KhalmeryahskiyとSouth-Dorofeevskiyの2鉱区の探査権を取得した。
- これらの鉱区の取得は、Yamal・Gydan半島の資源基盤を拡大し、天然ガスとLNG生産を増加させる同社の戦略の一環だと説明されている。NovatekはすでにKrasnoyarskで4つのライセンスを保有しており、同社のGydan半島の鉱区の付近に位置している。
4.新規LNG・P/L事業
(1)Arctic LNG-2
LNGの生産コストは合計700~750ドル/トン
- Arctic LNG-2のLNGの生産コストは、1トンあたり約1,050ドル、埋蔵量の開発を除けば、1トンあたり700~750ドルであると、Novatek社のCFOのGvetvay氏は、5月13日、アムステルダムで開催された天然ガスのカンファレンス「Flame」で明かした。
- また、同社はこれまで2030年時点のLNGの生産能力目標を5,700万トンとしてきたが、現在は7,000万トンにすることを目標としている、と語った。Novatek社は2017年12月にYamal LNGプロジェクトの生産を開始し、同プロジェクトの第3トレインまでの生産能力は1,650万トン/年とされる。また、Arctic LNG-2の生産能力は1,980万トンとされている。同社は他にも多くの鉱区をYamal・Gydan半島に有しており、この地域での開発を進めていく方針。
(2)Baltic LNG
Linde社のガス液化技術を検討中
- GazpromのMarkelov副社長は、5月14日、Baltic LNGプロジェクトで、産業ガス大手のLinde社のガス液化技術を使うことを検討していると明かした。また、Gazpromは既にBaltic LNGコンプレックスの設計を開始したとも話した。
- Baltic LNGプロジェクトでは、当初、Shellが参画することになっていたが、液化ガス工場と併せてガス精製工場が建設されることになり、Shellは4月にこのプロジェクトから撤退を決定した。Shellは同プロジェクトにガス液化技術のライセンスを提供することはしない、と語っていた。
(3)Nord Stream 2
Gazpromが計画の遅延に言及
- GazpromのMiller社長は、5月19日、2019年末までに予定していたNord Stream 2のパイプライン完成について、予測不可能な事態が起これば、わずかに変更される可能性がある、と語った。Gazpromが計画の遅延に言及したのは初めてとなる。
- 現在、パイプラインの敷設許可が得られていないのはデンマークのみ。デンマーク領海の北西側の排他的経済水域を通る2つ目のルート案も承認の見通しが立たない中、Nord Stream 2の事業会社Nord Stream 2 AGは、4月15日、デンマーク領海の南東を通る3つ目のルート案をデンマーク政府に提出した。6月19日には、デンマーク政府による同ルートに関する公聴会が開催される予定となっている。
- 既に各国の承認が得られている地域でのパイプラインの敷設は進められており、5月までに計画の50%以上が完成している。

地図出典:https://www.nord-stream2.com/permitting-denmark/danish-permitting-process/
米国エネルギー庁長官が制裁に言及
- 米国のペリー・エネルギー庁長官は、5月21日、ウクライナの新大統領の就任式のために訪れたキエフでの記者会見で、Nord Stream 2に関わる企業に対する制裁法案が遠くない将来に立案されるだろう、との見通し述べた。ペリー長官は、Nord Stream 2への反対派は米国でいまだ健在だと述べ、制裁法案が上院・下院を通過し、大統領が署名した後にはNord Stream 2に制裁を課す、と説明した。
- Nord Stream 2はロシアからウクライナ経由で欧州に輸出されているガスを減らし、ロシアがウクライナへの圧力を強める恐れがあるとして、米国や欧州の複数の国から非難を受けており、米国のNord Stream 2への制裁への可能性は以前から示唆されていた。
以上
(この報告は2019年6月21日時点のものです)