ページ番号1007819 更新日 令和1年8月7日

アンゴラ:既存油田周辺での探鉱・開発進展

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レポートID 1007819
作成日 2019-08-07 00:00:00 +0900
更新日 2019-08-07 13:53:50 +0900
公開フラグ 1
媒体 石油・天然ガス資源情報
分野 探鉱開発基礎情報
著者 古川 ゆかり
著者直接入力
年度 2019
Vol
No
ページ数 10
抽出データ
地域1 アフリカ
国1 アンゴラ
地域2
国2
地域3
国3
地域4
国4
地域5
国5
地域6
国6
地域7
国7
地域8
国8
地域9
国9
地域10
国10
国・地域 アフリカ,アンゴラ
2019/08/07 古川 ゆかり
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概要

  • アンゴラでは、2014年以降の原油価格下落に伴い新規油田探鉱への投資が低迷し、深海成熟油田の減退から生産量低下が続いていた。
  • Joao lourenço大統領は、海外投資を呼び込み、生産減少を食い止めようと、汚職撲滅、透明性確保や石油部門の組織改編といった事業環境整備、新エネルギー法制定に取り組んできた。
  • 組織改編や油価上昇のほか、2018年5月に制定された新エネルギー法令制定の影響により、現在、国際石油企業(IOC)による既存油田周辺での探鉱・開発が進展してきている。
  • 政府はさらに海外投資を呼び込みたいとし、今後、同国では入札ラウンドの開催やSonangolの民営化等、石油生産回復に向けた取り組みが続く。

(IEA、AfrOil、Upstream、各社HP他)


1. はじめに

アンゴラはOPEC加盟国(2007年加盟)であり、BP統計によると2019年1月時点の原油確認埋蔵量は84億バレルである。原油生産量は、アフリカでナイジェリア(2018年205万b/d)に次ぐ第2位の153万b/dであり、ほぼ全量が海洋油田における生産となっている。OPEC統計によると2018年の原油輸出量は約142万b/dで、80%がアジア向けであった。製油所は2ヶ所(精製能力計8万b/d)あるが、石油消費の80%以上を輸入に頼っている。また、深刻な燃料不足を解消するため、製油所の建設を急務としている。


2. 低迷するアンゴラの原油生産

同国ではOPECの協調減産ではなく、成熟油田の減退から生産量の低下が続いており、2018年は原油生産量が3年連続で減少の上、2008年のピーク時(180 b/d超)と比べ、2割近く低い水準となった(図1)。2019年6月には、さらに140万b/dにまで落ち込んだ。

図1:アンゴラの原油生産量
図1:アンゴラの原油生産量(IEA Oil Market Reportを元に作成)

アンゴラの油田の多くは減退しており、IEAなどは探鉱開発について政府が魅力的な条件を提示し、十分な投資が行われなければ、2020年以降生産能力は100万b/d未満に落ち込むと見ていた。このような状況を引き継いで2017年9月に就任したJoão Lourenço大統領は、海外からの投資を呼び込み、原油の生産減少を食い止めようと、汚職撲滅、透明性確保や産業組織改編といった事業環境整備、新エネルギー法制定(後述)に取り組んだ。

産業組織改編については、2017年10月に石油省と鉱山省を一本化しMining and Oil Resources (MIREMPET)を設立した他、2019年2月に石油産業の管理監督機能を国営Sonangolから切り離し、石油部門の規制機関として国家石油ガス庁ANPG(National Agency of Oil, Gas and Biofuels)を創設した。これについては、Sonangolを石油・ガスの採掘や精製、流通といった中核事業により特化させるための取り組みであり、「実際に管理監督機能がSonangolからANPGへ移行するまでにどれ程の移行期間を要するかはまだ不明であるが、同機能をSonangolから切り離したことは賢明であり、組織改編のために良いスタートであると言えるだろう」といった見解が国際的な石油企業から挙げられている。


3. メジャーズを中心にIOCが投資再開

3-1. 投資再開の要因

アンゴラ政府は、海外投資を呼び込み、原油生産量減少を食い止めたいとしており、2020年までに185万b/dへ回復させることを目標としている。このため、SonangolのCEO Carlos Saturnino氏[1]はこれまで、同社の再編や石油生産プロジェクト推進を図ってきたが、最近、国際石油企業(IOC)による探鉱開発投資が活性化している。要因としては、油価上昇や上記の組織改編等のほか、アンゴラ政府が同国の石油産業について既存油田周辺(Near-Field)を重視した既開発エリアの拡大といった戦略に基づき2018年に複数制定した大統領令の影響が大きいと言えるだろう。

例えば、“Presidential Legislative Decree No.5/18 of 18 May 2018”では、既開発エリアにおける企業の追加調査が認められた。従来は開発ライセンスを付与された鉱区において生産段階に移行後は、さらなる調査活動が認められなかったが、同大統領令により可能となった。Eniがオペレーターを務めるBlock15/06では2018年6月以降複数の追加発見があり、BPはBlock17のZina油田のFIDを2018年5月に行っている。これらのメジャーズによる追加開発は同大統領令も影響していると考えられる。

また“Presidential Legislative Decree No.6/18 of 18 June 2018”では、限界油田(マージナルフィールド)の定義を簡素化・明確化した上で、生産、取引、所得税やコスト回収等に伴う税制上の優遇措置を設けた。


[1]Carlos Saturnino氏は、アンゴラの燃料不足の責任を問われ、2019年5月、Joao Lourenco大統領によりSonangol総裁の座から解雇された。新総裁には、同社の幹部管理者であったSebastiao Gaspar Martinsが就任した。

3-2. 企業が最近投資を行った主な油田

アンゴラで最近開発投資が行われた主なプロジェクトは以下の通りである(図4、表1参照)。

ExxonMobil(Block 15  Kizombaサテライト・フェーズ2)

Block 15ではExxonMobilによりKizombaサテライト・フェーズ2プロジェクトが実施されている。同Blockでは、ExxonMobilがANPGとの協議の結果、再開発を行う前提で2032年までの権益延長で合意した。また、Sonangolが同鉱区にファームイン(10%)し、権益割合はExxonMobil (オペレーター、36%)、BP (24%)、Eni (18%)、Equinor (12%)、Sonangol (10%)となった。同Blockは40億boeの可採資源量を有し、2003年以降、原油生産量は延べ22億バレル以上に上る。本プロジェクトではKizomba B 油田の海底システム及びMondo FPSOにtie–backが行われ、4万b/dの増産が見込まれる。

Eni(Block 15/06 Ochigufu)

Block 15/06では、Eniにより2018年3月にOchigufu油田で生産が開始され、5月にプラトー生産2.4万b/dに到達した。また、同じ鉱区内ではSangos油田のNear-FieldとしてVandumbu油田が生産を開始しており、2014年よりSangos油田の原油生産を行なってきたN’Goma FPSOへのtie–backにより、West Hubフェーズ2に2万b/dを供給している。同Blockの生産量は、2018年12月時点の15万b/dから2019年第1四半期には約17万b/dに拡大した。

さらに、Block 15/06では2018年6月から1年の間に5件(Kalimba、Afoxe、Agogo、Ndungu、Agidigbo)(原始埋蔵量計18億バレル)の油田が発見されており、今後のさらなる生産増が期待されている。

BP(Block 18 Platina)

Block 18では、BPがPlatina油田についてSonangolと契約を更新した。同油田は2021年末〜2022年初めに生産を開始する予定で、BPがオペレーターを務めるGreater Plutonioプロジェクトの第2フェーズとなる(Greater Plutonio FPSOにtie-backする予定)。

同プロジェクトは1999~2001年に発見された5油田(Galio、Cromio、Cobalto、Paladio、Plutonio)により構成され、合計推定埋蔵量は7.5億バレルとされている。2007年に生産を開始し、2017年の平均生産量は約11.6万b/dであった。

また、契約更新により、BPが生産ライセンスを2032年まで延長した他、Block 18では新たにSonangolが8%の権益を獲得し、権益割合はSonangolとSinopecのJVであるSSI Eighteen (50%)、BP (=オペレーター、42%)、Sonangol (8%)となった。

Total (Block 17 Zinia2)

Block 17では、生産量4万b/d のZinia 2プロジェクトのFIDが2018年5月に行われた。今後Pazflor油田(2011年生産開始)にtie-backされ、同Blockからの生産量維持に貢献することが期待されている。また、開発中である生産量4万b/dのClov 2プロジェクト及び生産量3万b/dのDalia 3プロジェクトもまた、Block 17の生産量を2023年まで約40万b/dの水準に維持することが期待されている。

Total (Block 32)

アンゴラの生産量拡大に最も貢献が期待されているのがTotalのKaomboプロジェクトである。Block32の中央部から南部にかけて800平方キロメートルにおよぶ合計6油田(Gengibre、Gindungo、Caril、Canela、Mostarda、Louro、図2)、59の油井が2隻のFPSOに接続され、世界最大の海底生産システムを構築している(図3)。原油の推定埋蔵量は6.58億バレルである。

図2:Kaomboプロジェクトの6油田 図3:Kaomboプロジェクトの海底システム

同プロジェクトは、2014年4月にFIDが実施され、2018年7月に第1フェーズとしてKaombo Norte FPSO(Gengibre, Gindungo, Carilの3油田)が生産を開始した(生産能力11.5万b/d)。続いて、2019年3月に第2フェーズとしてKaombo Sul FPSO(Canela, Mostarda, Louroの3油田)が生産を開始し(生産能力11.5万b/d)、2019年に生産能力は合計23万b/dに達すると見られている。

Kaomboプロジェクトは、Angolaにおいて2014年に油価が下落する前にFIDが実施された最後のプロジェクトであり、油価下落後生産を開始する油田としては最大のものである。Totalは、同社の技術を集約した、重要プロジェクトの一つであるとしている。

1隻目のFPSOについては、コスト削減と効率向上を重視したとTotalは述べている。当初は特注の船舶を製造することとしていたが、既存のVLCC(石油タンカー)をFPSOに改造したことでコスト削減を行い(当初予想された200億ドルから160億ドルに削減)、2隻目のFPSOの操業開始に至った。

Totalはアンゴラ最大のオペレーターで、2020年にKaomboプロジェクトがピーク生産量に達すると、アンゴラの生産量の15%を同社が占めることになると予想されている。

図4:IOC参入状況(直近1年で主な動きのあったもの)
図4:IOC参入状況(直近1年で主な動きのあったもの)
(各社HPを基に作成)

表1: アンゴラにおける生産中プロジェクト(2018年現在)


4. 今後の展望

EniのOchigufu油田やTotalのKaomboプロジェクトの生産開始により、アンゴラにおける生産量回復に期待がかかるが、Near-Field以外では探鉱開発は進んでおらず、IEAは2019年には生産量が一旦増加するものの、その後再び減少すると見ている(図5)。しかし、IEAは、減少幅を前回(Oil 2018)の約40万b/dから、Oil 2019では10万b/d程度に修正している。これはメジャーズの探鉱・開発進展の表れであり、アンゴラ政府の事業環境整備による一定の成果であるとして、IEAは評価している。

図5:原油生産実績及び生産能力見通し
図5:原油生産実績及び生産能力見通し
(IEA Oil Market Report、同Oil 2019(Estimated Sustainable Production Capacity)を基に作成)

また、ExxonMobilが、SonangolとBlock 30・44・45(Namibe海盆)の石油探査の覚書(MOU)に署名した[2]他、ChevronがBlock 0のMafumeira Sulプロジェクトについてコスト超過・リスク回避を図った新たな開発戦略を掲げていることなども、今後同国の生産量増加への追い風として注目に値するだろう。

さらに、同国では2025年までに55鉱区を公開予定としており、第1弾として、2019年10月2日締め切りにて10鉱区(Namib Basin 9鉱区、Benguela Basin 1鉱区)を対象とする入札ラウンドを、続いて第2弾として、2020年に9鉱区(Congo Basin 3鉱区、Kwanza Basin 6鉱区)を対象とする入札ラウンドを予定している。

アンゴラは引き続き石油産業の改革を急いでおり、国営石油会社Sonangolについて、石油と関係が薄い資産の一部(通信や建設の子会社)を売却する意向を示している。今後は同社を採掘や精製、流通などの中核事業に専念させる考えで、減少傾向にある石油生産の歯止めにつなげる狙いだとしている。アゼベド鉱物資源・石油相は、Sonangolについて、「民間の資金受け入れの対象となる非中核資産をアンゴラ財務省に提示した」と述べ、売却作業の調整を政府内で始めたことを明らかにした。同社は本業以外に、航空や医療など幅広く手掛けているが、今後は経営の効率化を進め、原油の探査や採掘、給油所運営などに集中するとしている。アゼベド氏は「国内外の企業がこの売却の過程に参加できる」と語り、日本企業の参画に期待感を示した。

アンゴラがSonangolの効率化を進める背景には、石油生産の不振がある。OPECによると、同国は輸出総額の約9割(2017年時点)を原油が占めている。Sonangolは同国内のほとんどの鉱区に出資するなど、非効率な投資を行っている可能性もある。2014年以降の原油価格下落に伴って経営が悪化し、既存油田の生産量が減少するなか新規油田の探査や採掘への投資が低迷し、開発の遅れが指摘されていた。石油開発を規制する機関としてANPGが新設されたことも、改革の一環とされており、新規開発計画の承認を迅速に進めることや透明性を高めて海外投資を呼び込む狙いがあるとみられている。


[2] ExxonMobilは、アンゴラのBlock 30・44・45と隣接するナミビアのBlock 1710・1810・1711・1811Aの探鉱契約を締結しており、この一帯を狙っている可能性がある。


5. まとめ

EniのOchigufu油田やTotalのKaomboプロジェクトの生産開始により生産量回復に期待がかかるが、Near-Field以外では探鉱開発は進んでおらず、短期間で結果が得られるとは考えづらい。しかし、IEAが指摘するように、メジャーズの探鉱・開発の進展からは、アンゴラ政府の事業環境整備が着実に成果を上げつつあることが窺える。

さらに今後、入札ラウンドの開催やSonangolの民営化等、石油生産回復に向けた取り組みが続くアンゴラの動向に、関係者の注目の集まるところとなろう。


<主な参考資料>

  • Oil Market Report(IEA)
  • MarketReportSeries_Oil2019(IEA)
  • AfrOil
  • Upstream
  • International Oil Daily(Energy Intelligence)
  • 「メジャーズのポートフォリオ戦略 ―低油価と『エネルギー移行』―」(古山 恵理、JOGMEC石油・天然ガスレビュー2018.5 Vol.52 No.3)
  • ExxonMobil HP
  • Eni HP
  • BP HP
  • Total HP

以上

(この報告は2019年8月7日時点のものです)

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